【文献】
Gideon Wackers,Array Formatting of the Heat-Transfer Method (HTM) for the Detection of Small Organic Molecules by Molecularly Imprinted Polymers,Sensors,2014年06月20日,14,11016-11030,doi:10.3390/s140611016
【文献】
Kasper Eersels,Selective Identification of Macrophages and Cancer Cells Based onThermal Transport through Surface-Imprinted Polymer Layers,ACS Appl. Mater. Interfaces,ACS publications,2013年,5,7258-7267,dx.doi.org/10.1021/am401605d
【文献】
M. Peeters & P.,Heat-transfer-based detection of L-nicotine, histamine, and serotonin using molecularly imprinted polymers as biomimetic receptors,Anal Bioanal Chem,Springer,2013年05月18日,405,6453-6460,DOI 10.1007/s00216-013-7024-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱電対と電気的に接触した処理装置(223)をさらに含み、前記処理装置は、前記アッセイポリマーに結合した前記被検物質の量を計算するようにプログラム化されている請求項1に記載の被検物質の検出用装置。
前記処理装置が、前記アッセイポリマーに結合した前記被検物質の量に少なくとも一部基づいて、アッセイポリマーと接触した液体中の前記被検物質の濃度を計算するようにプログラム化されている請求項2に記載の被検物質の検出用装置。
前記処理装置が、熱伝達要素での熱波と前記熱電対での減衰した熱波との間の位相シフトを検出するようにプログラム化されている請求項3に記載の被検物質の検出用装置。
前記処理装置が、前記熱伝達要素での熱波と前記熱電対での減衰した熱波との間の振幅の違いに少なくとも一部基づいて、前記液体中の前記被検物質の濃度を計算するようにプログラム化されている請求項4に記載の被検物質の検出用装置。
前記アッセイポリマーが、DNA、RNA、タンパク質、並びにそれらの一部およびアナログからなる群より選択される材料を含む請求項1に記載の被検物質の検出用装置。
前記被検物質が液体に含まれており、前記アッセイポリマーは、前記液体が前記アッセイポリマーと接触した際に、前記液体に含まれる前記被検物質に結合するように処方される請求項1に記載の被検物質の検出用装置。
前記液体中の前記被検物質の濃度を計算するステップが、前記液体と前記アッセイポリマーとの界面での熱波と、前記熱電対での減衰した熱波との間の振幅の違いを決定することを含む請求項15に記載の被検物質の検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に示される図は、いずれの特定の装置または方法の実際の図ではなく、本開示の例示の実施形態を表すのに使用される理想的な表現に過ぎない。図面間で共通の要素は、同じ数字表示を取り続け得る。
【0010】
本明細書で、「テンプレート分子」は、分子インプリントポリマー(MIP)または表面インプリントポリマー(SIP)を形成するのに使用される分子を指す。そのようなMIPまたはSIPは、MIPまたはSIPを形成するのに使用されるテンプレート分子に少なくとも部分的に対応する形状を有する「標的分子」または「結合パートナー」を検出できる。
【0011】
本明細書で、「得る(may)」は、「できる(can)」を包含し、「であり得る(may be)」は、文脈に応じて「である(is)」または「である(are)」を包含する。さらに、「得る(may)」の存在は、限定することなく、開示を実施または実行する選択肢を説明するものである。
【0012】
図1は、被検物質を検出する装置200を示す略式図である。一部の実施形態では、装置200は、標的分子、DNAおよび/またはRNAなどの核酸、DNAおよび/またはRNAの単一ヌクレオチド多型(SNP)、小分子、タンパク質などを検出するように構成され得る。
【0013】
装置200は、任意の基材212およびアッセイポリマー214を表面上に被覆した熱電対210を含み得る(例えば、熱電対210の表面上に直接、または熱電対210の表面上の別の材料上に形成される)。例えば、基材212は、熱電対210の概して円筒状の表面上で、熱電対210のすべての端が囲まれるように形成され得る。一部の実施形態では、熱電対210の外面は、円、四角、長方形などのいずれの適切な断面形状を有し得る。すなわち、熱電対210は、円筒状である必要はなく、「リボン」形状などを有し得る。熱電対210は、電気的接触216、218の間の温度依存性電圧を与えるように処方される2つの材料の間の接合を含み得る。一部の実施形態では、熱電対210は、1種以上の金属(例えば、白金、金、イリジウム、パラジウムなど)または合金(例えば、ニッケル合金、銅合金、ロジウム合金、レニウム合金、鉄合金、モリブデン合金など)を含み得る。熱電対210は、例えば、タイプE熱電対(すなわち、クロメルおよびコンスタンタン);タイプJ熱電対(すなわち、鉄およびコンスタンタン);タイプK熱電対(すなわち、クロメルおよびアルミニウム);タイプM熱電対(すなわち、ナイクロシルおよびナイシル);タイプT熱電対(すなわち、銅およびコンスタンタン);タイプB、R、またはS熱電対(すなわち、白金−ロジウム合金);タイプC、D、またはG熱電対(すなわち、タングステン−レニウム合金);タイプP熱電対(すなわち、パラジウム−金−白金合金)などのいずれの市販の標準の熱電対であり得る。
【0014】
基材212は、PLLAと当分野で称し得るポリ乳−(L)−酸などのポリマー材料であり得る。PLLAは、透明であり、環境的に再生可能な資源(例えば、デンプンまたは糖含有農産物)から安価に製造され、生分解性であり、生体適合性である。さらに、PLLAは、クロロホルムに可溶であり、熱電対210への塗布を可能にする。基材212は、PLLAの代わりに、望ましい特性に基づいて別の材料であるように選択され得る。一部の実施形態では、基材212は、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリ(乳酸グリコール酸共重合体)、ポリ(D,L−ラクチド−Co−グリコリド)、または別の選択されるポリマーを含み得る。基材212は、熱電対210の外装上の薄い、滑らかな、均質のコーティングの形態であり得る。基材212の均一性は、装置200が再現性のある結果を得ることを可能にし得る。基材212の厚さは、熱電対210に対するまたは熱電対210から離れた熱流量に対する基材212の耐熱性で比例的に変動し得る。したがって、より薄い基材212が、速い応答が望ましいか、または温度差動が小さい用途に有益であり得る。
【0015】
基材212は、装置200が、基材212を破壊することなく熱電対210の曲げを可能にするように柔軟であり得るような弾性であるように選択され得る。これは、装置200を、密な間隔または曲げを必要とする用途(例えば、カテーテルでの生体内での使用)に使用できるようにし得る。
【0016】
アッセイポリマー214は、基材212の表面上にあり得る。一部の実施形態では、アッセイポリマー214は、熱電対210の表面に直接結合し得、基材212は省略し得る。すなわち、アッセイポリマー214は、熱電対210の上にあり得、かつ接触し得る。典型的には、アッセイポリマー214は、熱電対210を取り囲み得る。アッセイポリマー214は、熱伝達特性が結合した被検物質の量に応答して変動する材料を含み得る。例えば、アッセイポリマー214の熱伝導性、熱拡散率、熱容量、または別の特性は、その表面上の被検物質の濃度で変動し得る。
【0017】
一部の実施形態では、アッセイポリマー214は、分子インプリントポリマー(MIP)または表面インプリントポリマー(SIP)などのインプリントポリマーを含み得る。また、MIPおよびSIPは、当分野で「プラスチック」抗体とも称し得る。MIPは、典型的には特定の結合パートナーに対する高い親和性を有し、それ故に、そのような結合パートナーがMIPと接触した際に、分子がMIPと結合する。MIPは、それらのそれぞれの標的分子に対する高い親和性のナノキャビティを含有する合成受容体である。インプリンティング(すなわち、ナノキャビティの形成)は、多くの場合、重合プロセスの一部である。MIPは、小さいイオンから複雑なマトリックスの大型細胞までの異なる標的を特異的に結合することができる。分子のMIPへの結合は、熱特性、機械的特性、電気的特性などのMIPのいくつかの特性を変化し得る。したがって、MIPを使用して、そのような分子を比較的低い濃度で検出し得る。MIPは、例えば、2009年11月12日に公開された米国特許出願公開第2009/0281272A1号(“Monodisperse Molecularly Imprinted Polymer Beads”)に記載されており、そのすべての開示内容を参照により本明細書に援用する。
【0018】
同様に、SIPは、典型的には特定の結合パートナーに対する高い親和性を有するが、MIPの孔を通して素早く拡散しない比較的より大きい物体(例えば、細胞、細菌など)に典型的には結合する。SIPは、表面上へ形成されたポリマー材料であり得、その後、ポリマーの軟化による重合後にインプリントされ得る。
【0019】
装置200は、被検物質を持つ液体と接触し、被検物質の一部はアッセイポリマー214に結合し得、それらの熱伝達特性を変化させる。
【0020】
特定の実施形態では、アッセイポリマー214は、DNA、RNA、タンパク質、またはそれらの一部もしくはアナログ(例えば抗体)を含み得る。例えば、装置200は、DNA、RNA、タンパク質、ポリペプチド、核酸ポリマー、プローブ、またはそれらの一部もしくはアナログ(例えば相補的DNA)などのアッセイポリマー214で官能化された基材212(例えば、菱形表面)を含み得る。アッセイポリマー214は、特定の結合パートナーに対する高い親和性を有するように構成され得、それ故に、そのような結合パートナーが熱電対210の表面と接触した際に、分子がアッセイポリマー214と結合する。一部の実施形態では、アッセイポリマー214は、10個の繰り返し単位またはそれより多いといった少なくとも約7個の繰り返し単位を含み得る。
【0021】
一部の実施形態では、装置200は、熱電対210と電気的に接触し、アッセイポリマー214に結合した被検物質の量を計算するようにプログラム化された処理装置223を含み得る。処理装置223は、アッセイポリマー214に結合した被検物質の量に少なくとも一部基づいて、装置200と接触した液体中の被検物質の濃度を計算し得る。例えば、処理装置223は、2014年1月9日公開の米国特許出願公開第2014/0011198A1号明細書(“Heat−Transfer Resistance Based Analysis Bioparticles”)、または2014年8月28日公開の米国特許出願公開第2014/0242605A1号明細書(“Heat−Transfer Resistance Based Analysis of Bioparticles”)に開示される方法によって、被検物質の量を計算し得、それぞれのすべての開示内容を参照により本明細書に援用する。特定の実施形態では、処理装置223は、ヒートシンクでのまたはヒートシンクから生じる熱波と、熱電対210での減衰した熱波との間の位相シフトを検出するのに使用され得る。その後、処理装置223は、ヒートシンクでの熱波と熱電対210での減衰した熱波との間の振幅の違いに少なくとも一部基づいて液体中の被検物質の濃度を計算する。
【0022】
図2A〜
図2Cは、
図1に示される装置200が液体124中の被検物質132を検出するのにどのように使用され得るかを図示する。液体124は、熱電対210の近傍を通過し得る。液体124は、アッセイポリマー214に特異的に結合する被検物質132を含み得、上記のようにそれらの熱特性を変化させる。ヒートシンク230は、液体124に熱を与え得る。簡潔さのためにヒート「シンク」と称されるが、ヒートシンク230は、液体124に熱を与えるか、または熱を除去するように構成され得、それ故に、熱伝達要素230とも特徴付けられ得る。ヒートシンクまたは熱伝達要素230は、遷移金属(例えば、銅、銀など)またはそれらの合金もしくは混合物などの高い熱伝導性を有する材料であり得る。ヒートシンク230は、ヒートシンク230の温度を検出するように構成された温度センサ232(例えば、熱電対または別の装置)、およびヒートシンク230の温度を維持するように構成された温度変更装置234に熱的に連結し得る。ヒートシンク230の特性が既知である場合(例えば、変更装置234への制御信号とヒートシンク230の温度との間の関係がよく特徴付けられている場合)、温度センサ232は省略し得る。一部の実施形態では、温度センサ232は温度変更装置234に不可欠であり得る。例えば、温度変更装置234の抵抗自体を測定して、その温度を決定し得る。温度変更装置234としては、例えば、熱電装置、熱交換器、ファン、抵抗ヒーターなどが挙げられ得る。温度センサ232は、温度によって変化する抵抗を有するレジスタであり得る。液体124の温度は、ヒートシンク230の温度と異なり得、被検物質132の存在または非存在および液体124中のその濃度に少なくとも一部基づいて変動し得る。
【0023】
温度センサ232および温度変更装置234は、温度変更装置234を制御して、ヒートシンク230から液体124を通じて熱電対210まで発生する熱波をヒートシンク230に生じさせるようにプログラム化した処理装置236に接続し得る。例えば、処理装置236は、電気信号を受け取り、かつ提供するように構成された入出力カードを有するコンピュータ、またはいずれの他の適したコントローラであり得る。処理装置236は、ヒートシンク230の温度を比較的短い時間スケールで少量変更することが可能である比例・積分・微分(PID)制御器であり得る。例えば、処理装置236は、ヒートシンク230の温度を約0.5℃以下、約0.2℃以下、または約0.05℃以下変化させるようにプログラム化され得る。したがって、熱波は、約1.0℃以下、約0.4℃以下、または約0.10℃以下の振幅を有し得る。処理装置236は、温度変更装置234により1つの設定点から別の設定点まで、かつ約0.005〜約0.1Hz、または約0.01〜約0.05Hzといった約0.001〜約0.5Hzの周波数を有する熱波を形成するように戻るようにヒートシンク230の温度を変更することが可能であり得る。一部の実施形態では、処理装置236、温度変更装置234、およびヒートシンク230は、一緒に可変の周波数を有する熱波を生じ得る。温度センサ232(存在する場合)からの測定に基づいて、温度変更装置234への既知の入力、または他の手段、熱波の特性は既知であり得る(例えば、相、振幅、特定の時間での周波数、周波数変化率など)。
【0024】
図2Aに示されるように、液体124は、所定の被検物質132をある時点で実質的に含まなくてもよく、アッセイポリマー214もその時被検物質132を実質的に含まなくてもよい。したがって、被検物質132と結合していないアッセイポリマー214の熱伝達特性に関係している速度で、熱(
図2A中矢印で示す)をヒートシンク230から液体124を通して熱電対210へ、熱電対210に沿って移し得る(熱電対210それ自体が最小の耐熱性を与え得るので)。
【0025】
図2Bに示される別の時点では、液体124は、非ゼロ濃度の被検物質132を有し得、被検物質132の一部がアッセイポリマー214に結合し得る。したがって、ヒートシンク230から液体124を通して熱電対210へ、
図2Aに示されるのと異なる速度で熱を移し得る(
図2B中矢印で示す)。
図2Cに示されるさらに別の時間では、液体124は、
図2Bに示されるものより高い濃度の被検物質132を有し得、被検物質132のより多くがアッセイポリマー214に結合し得る。したがって、ヒートシンク230から液体124を通して熱電対210へ、
図2Aおよび
図2Bに示されるのと異なる速度で熱を移し得る。例えば、アッセイポリマー214に結合した被検物質の量132が増加すると、アッセイポリマー214を通しての熱電対210への熱伝達速度が減少し得る。
【0026】
液体124中の被検物質の濃度132は、アッセイポリマー214の熱伝達特性に少なくとも一部基づいて計算し得る(例えば、時間の関数として熱電対210へ移した熱量に基づいて推定し得る)。
【0027】
比較のために、
図3A〜
図3Cは、被検物質132に対する親和性を有さないポリマー214’(例えば、非インプリントポリマー)を有する熱電対210’が
図2A〜
図2Cに示されるものと類似の条件下でどのように振る舞い得るのかを図示する。
図3Aでは、液体124は、所定の被検物質132をある時点で実質的に含まなくてもよく、ポリマー214’もその時点で被検物質132を実質的に含まない。
図3Bに示される別の時間では、液体124は、非ゼロ濃度の被検物質132を有し得るが、被検物質132の相当量は、ポリマー214’に結合しなくてもよい。したがって、熱(
図3A中矢印で示す)を、ヒートシンク230から液体124を通して熱電対210へ、
図3Aに示されるのと同じ速度で移し得る。
図3Cに示されるさらに別の時間では、液体124は、
図3Bに示されるものより高い被検物質132の濃度を有し得るが、被検物質132の相当量は、依然としてポリマー214’に結合してなくてもよい。被検物質132のある程度の部分が、特に液体124中の被検物質132の高い濃度で、ポリマー214’に結合し得るが、結合した被検物質132の量は、類似の濃度で、アッセイポリマー214に結合した量よりはるかに小さいものであり得る(
図2C)。ヒートシンク230から液体124を通して熱電対210’へ、液体124中の被検物質132のどの濃度でも実質的に同じ速度で熱を移し得る。
【0028】
再び
図2A〜
図2Cを参照すると、処理装置236(
図1に示される処理装置223であり得るか、処理装置223を含み得、または処理装置223と電子通信し得る)は、液体124を通して発生する熱波に少なくとも一部基づいて、液体124中の被検物質132の濃度を計算するようにプログラム化され得る。例えば、ヒートシンク230は、液体124の温度の変化を引き起こし得、液体124を通して熱波を生じ得る。処理装置236は、ヒートシンク230によって与えられる熱波と、熱電対210での減衰した熱波との間の振幅および/または相の違いを決定し得る。振幅および/または相の違いを使用して、アッセイポリマー214に結合した被検物質の量132を決定し得、次にそれを使用して、液体124中の被検物質132の濃度を決定する。
【0029】
一部の実施形態では、処理装置236は、ヒートシンク230によって生成した熱波の周波数変化を実行し得る。その後、処理装置236は、熱波がアッセイポリマー214および基材212を通して熱電対210まで通過した後の、ヒートシンク230によって生成した熱波と液体124中の減衰した熱波との間の位相シフトを検出し得る。
【0030】
図4は、
図1の装置200内へ、および装置200内にて熱波がどのように移動し得るかを示す概略図である。
図4は、
図1および
図2A〜
図2Cに示される構成要素の一部を含むが、構成要素を通して、および構成要素の間を移動する熱波の表現を可能にするように分離されたそれらを示す。特に、
図4は、処理装置236に接続される、温度変更装置234および温度センサ232に熱的に連結したヒートシンク230を示す。
【0031】
ヒートシンク230は、熱波202を生成し得、熱波202を液体124へ、熱電対210上のアッセイポリマー214に向けて移し得る。例えば、ヒートシンク230が37℃の一定の温度で最初に維持されている場合、熱波202は、ヒートシンク230を37.1℃の温度に加熱し、その後、ヒートシンク230を36.9℃の温度に冷却することによって生成し得る。温度変更装置234によって駆動される、ヒートシンク230の加熱および冷却は、アッセイポリマー214および熱電対210を対応する様式で加熱させ得、冷却させ得る。熱波202は、振幅α
1および周波数φ
1を有し得る。振幅α
1および/または周波数φ
1は、時間とともに変動し得る。例えば、熱波202は、連続的に変動する周波数φ
1を有し得る。
【0032】
上述したように、アッセイポリマー214上の被検物質132の存在または非存在が、アッセイポリマー214の熱伝導性、熱拡散率、熱容量、または別の特性を変化し得る。アッセイポリマー214は、少なくとも被検物質の一部132と相互作用するように適合しているキャビティをアッセイポリマー214中に定め得る。いずれの特定の理論に縛られるものではないが、キャビティは、被検物質132を特異的に結合するように作用するように構成され得る。したがって、アッセイポリマー214は、液体124中の被検物質132の濃度に基づいて、複数のキャビティの一部において、液体124から被検物質132の粒子または分子を受け取り得る。液体124およびアッセイポリマー214は、被検物質132が等しい比率でアッセイポリマー214に結合し、分離するように、所与の温度で平衡に達し得る。アッセイポリマー214の熱特性は、被検物質132の粒子または分子に結合したキャビティの部分に一部依存し得る。
【0033】
アッセイポリマー214および/またはその上の被検物質132は、それらを通過する熱波202を変化させて、減衰した熱波204を形成し得る。減衰した熱波204は、熱電対210によって検出し得、処理装置236によって記録し得る。減衰した熱波204は、熱波202の振幅α
1および周波数φ
1と異なり得る振幅α
2および周波数φ
2を有し得る。振幅α
1、α
2および/または周波数φ
1、φ
2の違いは、アッセイポリマー214に結合した被検物質の量132と相関し得、したがって、液体124中の被検物質132の濃度と相関し得る。振幅α
1、α
2および/または周波数φ
1、φ
2の違いの測定によって、熱電対210の温度を定常状態で測定する方法と比べて、装置200が、アッセイポリマー214に結合した被検物質132の比較的より低い量(液体124中の被検物質132のより低い濃度に対応する)を検出できるようにし得る。
【0034】
再び
図1を参照すると、装置200を形成するために、熱電対210は、基材212で被覆し得る。例えば、熱電対210は、熱電対210の一部を基材212またはその前駆体を含有する液体に浸漬することによって、基材212で浸漬被覆し得る。浸漬被覆は、他の方法と比較して比較的高い均一性で効率的に実施し得、大量のものを製造するように調整され得る。ワイヤの浸漬被覆は、例えば、1990年5月8日に許可された米国特許第4,924,037号明細書(“Electrical Cable”)に記載されており、そのすべての開示内容を参照により本明細書に援用する。浸漬被覆は、基材212がポリマーのより厚い層より比較的低い固有の熱抵抗率を有するように、基材212を比較的薄く形成し得る。例えば、基材212は、約0.05mm〜約0.5mmなどの約0.01mm〜約1mmの厚さを有し得る。
【0035】
熱電対は、基材212上および基材212に固定されるか(例えば、基材212の表面上に直接または基材212の表面上の別の材料上に)、または熱電対210の表面上へ直接、アッセイポリマー214を用いて被覆し得る。一部の実施形態では、熱電対210上に基材212を有する熱電対210は、基材212が軟化するように加熱され得る。例えば、基材212は、そのガラス転移温度(Tg)を超える温度に加熱され得る。その後、熱電対210および基材212のコーティングは、アッセイポリマー214の粉末中で転がされて、アッセイポリマー214を基材212に付着させ得る。次に、基材212は、例えば基材212をTg未満の温度に冷却することによって、アッセイポリマー214の粒子を保持するように冷却され得る。アッセイポリマー214の粒子の付着と基材212の冷却との間の時間は、ポリマー212で覆われるようにならずに、アッセイポリマー214の粒子が基材212にしっかりと埋め込まれるように、比較的短く保たれ得る。例えば、熱電対210は、冷蔵庫に入れられて、アッセイポリマー214でのコーティングから約1秒〜約60秒の時間内で、基材212を冷却し得る。熱電対210は、基材212が固体相(例えば、結晶性)になるまで冷蔵庫内にとどまり得る。例えば、熱電対210は、約1分間〜約20分間、冷蔵庫内にとどまり得る。冷却後、熱電対210は、液体(例えば、水、アルコールなど)で洗浄して、緩く結合した、または結合していないアッセイポリマー214の粒子を基材212の表面から除去し得る。
【0036】
いずれの特定の理論に縛られるものではないが、Tgを超えると、ポリマーは軟化し、可塑化すると思われ、これは、熱電対210がTgを超えている時間によって、アッセイポリマー214の粒子が基材212に浸透できるか、または結合できるようにし得ることを意味する。
【0037】
処理装置236(例えば、PID制御器)は、温度変更装置234に電気的に接続して、ヒートシンク230の温度を駆動し、温度変更装置234にヒートシンク230の温度を変化させて熱波202を生成するのに十分な動力を与え得る(
図4)。
【0038】
熱電対210は、測定されるべき液体124の流れ中に配置され得る。ヒートシンク230は、液体124が通過する導管に固定され得るか、または液体124の流れ中に配置され得る。処理装置236は、熱電対210および温度センサ232の温度を連続的に検出し、ヒートシンク230によって生成した熱波202(
図4)と熱電対210での減衰した熱波204(
図4)との間の位相シフトに少なくとも一部基づいて液体124中の被検物質132の濃度を計算するように構成され得る。
【0039】
本明細書に示され、説明されている装置200は、幅広い範囲の選択される被検物質132のいずれも検出するように構成され得る。例えば、装置200は、液体124中の生物学的な被検物質または他の化学物質を検出するか、感知するか、または定量するのに使用され得る。被検物質132は、液体124に溶解しているか、または混合されているガス、液体、または固体であり得る。例えば、装置200は、被検物質、抗体、抗原、特定の配列の核酸(例えば、SNP)を含む核酸(例えば、DNA、RNAなど)、タンパク質、小分子(例えば、ドーパミン、ヒスタミンなど)または他の物質を検出し、感知し、定量するのに使用され得る。一部の実施形態では、装置200は、ヒスタミン、ドーパミン、セロトニン、アドレナリン、メチルフェニデートなどを検出するのに使用され得る。
【0040】
本明細書に開示される分子インプリンティング法の多くの魅力的な特徴の1つは、多様な被検物質に適用できる方法である。小さい有機分子(例えば、医薬品、殺虫剤、アミノ酸およびペプチド、ヌクレオチド塩基、ステロイド、糖など)のインプリンティングは、例えば、K.HauptおよびK.Mosbach,“Molecularly Imprinted Polymers and Their Use in Biomimetic Sensors,”Chem.Rev.100,2495−2504(2000);並びにG.MustafaおよびP.Lieberzeit,“MIP Sensors on the Way to Real−World Applications,”in Springer Series on Chemical Sensors and Biosensors,vol.12,pp.167−187(Springer,2012)に記載されている。幾分大きい有機化合物(例えば、ペプチド)も同様のアプローチによりインプリントできる。タンパク質、細胞、および鉱物結晶などのより大きい構造物のインプリンティングのためのプロトコールは、例えば、M.Kempe,M.Glad,and K.Mosbach,“An Approach Towards Surface Imprinting Using the Enzyme Ribonuclease A,”J.Molecular Recognition,8,35−39(1995);S.Hjerten et al.,“Gels Mimicking Antibodies in Their Selective Recognition of Proteins,”Chromatographia 44,227−234(1997);H.Shi et al.,“Template−Imprinted Nanostructured Surfaces for Protein Recognition,”Nature 398,593−597(1999);A.Aherne et al.“Bacteria−Mediated Lithography of Polymer Surfaces,”J.Am.Chem.Soc.118,8771−8772(1996);並びにS.M.D’Souza,et al.,“Directed Nucleation of Calcite at a Crystal−Imprinted Polymer Surface,”Nature 398,312−316(1999)にて提案されている。薬物の先進薬物送達への橋渡しとしての分子インプリンティングが、B.Sellergren and C.Allender,“Molecularly Imprinted Polymers:A Bridge to Advanced Drug Delivery,”Advanced Drug Delivery Reviews 57,1733−1741(2005)に記載されている。本段落で引用された文献それぞれのすべての開示内容を参照により本明細書に援用する。
【0041】
被検物質132を検出するために、被検物質132を含有する液体124は、熱電対210上のアッセイポリマー214に隣接した導管を通過し得る。被検物質132の粒子または分子がアッセイポリマー214に結合し、アッセイポリマー214の1つ以上の熱特性を変化させる。液体124は、検出の間、アッセイポリマー214の近傍で連続的に流れ得るか、または検出開始前に流れが終了し得る。液体124が流れていても、停滞していても、熱波202(
図4)および減衰した熱波204が、液体124を通して移動し得る。液体124の熱特性は、流れおよび液溜まり124によって異なり得るが、流動特性に基づいて決定し得る。一部の実施形態では、液体124は、被検物質132の検出前に試験温度になり得る。上述したように、アッセイポリマー214は、所定の特定の被検物質132を結合するように処方される分子インプリントポリマーであり得る。
【0042】
熱波202(
図4)が、調整可能なヒートシンク230から熱電対210へアッセイポリマー214を通して提供される。処理装置236(例えば、PID制御器)は、例えばヒートシンク230の温度を事前に選択した量および事前に選択した周波数で上昇させ、低下させることによって、温度変更装置234によりヒートシンク230の温度を変化させ得る。ヒートシンク230の温度の変化は、同時に発生し得る他の測定を顕著に妨げないほど十分に小さいものであり得る。例えば、たとえヒートシンク230の温度が変動していても、平均温度測定の時間スケールが変動の周波数より長いか、かつ/または温度変動の量が、被検物質132とアッセイポリマー214との相互作用によって誘導される温度変化と比較して小さい限り、液体124の平均温度は測定し得る。一部の実施形態では、ヒートシンク230は、約0.005〜約0.1Hz、または約0.01〜約0.05Hzなどの約0.001〜約0.5Hzの周波数を有する熱波202をもたらし得る。さらに、熱波202の周波数は、試験の間変動し得る(例えば、周波数は、低い周波数から高い周波数へ連続的に変動し得、逆もまた同様である)。熱波202は、約1.0℃以下、約0.4℃以下、または約0.10℃以下の振幅を有し得る。
【0043】
熱電対の温度210を試験し得、結果をヒートシンク230の温度(熱電対232で測定される)と比較し得る。
【0044】
液体124中の被検物質132の濃度は、ヒートシンク230によって生成した熱波202と熱電対210での減衰した熱波204との間の位相シフトに少なくとも一部基づいて計算し得る。熱波202と減衰した熱波204の比較は、既知の濃度の液体の応答に基づいて、処理装置236によって実施し得る。一部の実施形態では、熱波202と減衰した熱波204との比較は、振幅、位相シフト、または別の特性に少なくとも一部基づき得る。
【0045】
熱波の測定は、アッセイポリマー214の全体の温度を顕著に変えることなく耐熱性の測定を可能にする。いずれの特定の理論に縛られるものではないが、そのような測定は、電子装置の分野におけるキャパシタンスまたはインダクタンスの測定との熱的な類似物であるようにみえる。例えば、抵抗の測定は、電子装置または材料についてのいくつかの情報を明らかにするが、キャパシタンスまたはインピーダンスの測定は、装置または材料が負荷にどのように応答するかなど、追加の情報を明らかにする。同様に、本明細書に開示される方法による耐熱性の測定は、定常状態の温度の違いが測定できない追加の情報を明らかにし得る。
【0046】
例えば、熱波を適用する場合、異なるタイプの情報が、標的の受容体への結合時の振幅、周波数および/または減衰した熱波の相の変化という形で利用可能である。位相シフトは、入力の周波数に基づいて変動し得る。熱波によって提供された情報の量は、定常状態分析より多く、情報は、さらなる様々な材料の検出または区別を可能にし得る。
【0047】
さらに、再びいずれの特定の理論に縛られるものではないが、アッセイポリマー214の熱質量の増加が、被検物質132のその受容体(すなわち、アッセイポリマー中のキャビティ)上への結合時に起こり得る。被検物質132の結合前に、キャビティを液体で満たし得る。被検物質132のその受容体への結合時、液体は、被検物質132で置換され得、したがって、すべての被覆した熱電対210の熱質量が増加する。
【実施例】
【0048】
実施例1:ドーパミンを検出するテンプレートを有するMIPの調製。
エチレングリコールジメタクリレート(EGDM)、メタクリル酸(MAA)、ドーパミン塩酸塩(99%)、およびメタノールをAcros Organics社(Loughborough,英国)から購入した。重合前に、MAAおよびEGDMの安定化剤をアルミナでの濾過によって除去した。4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸酸)およびセロトニンクレアチニン硫酸塩一水和物(98%)をSigma−Aldrich社(Gillingham,英国)から購入した。
【0049】
MAA(0.54g、6.6mmol)、EGDM(2.96g、14.9mmol)、および4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸酸)(65mg)の混合物をメタノール(3.67ml)および水(0.57ml)に、ドーパミン(0.063g、0.33mmol)、テンプレート分子と共に溶解した。この混合物をN
2で脱気し、加熱して、重合を開始した。反応の十分な完了を可能にするために、混合物を65℃で12時間保持した。重合後、バルクポリマーをすりつぶし、篩分けして、直径10μm未満の微粒子を得た。ドーパミンをメタノールおよび水の50/50混合物での連続した抽出によってMIP粉末から除去した。6時間後、Thermo Scientific社(Loughborough,英国)のNICOLET(商標)380FT−IR装置を用いるAT−IR分光法によって検証したところ、MIPは、ドーパミンを実質的に含まなかった。その後、MIP粉末をオーブンで12時間、100℃で乾燥した。対照として、非インプリントポリマー(NIP)を、同じ方法に従うが、ドーパミンなしで合成した。
【0050】
実施例2:ドーパミンを検出するMIPの試験
MIPおよびNIP粒子の特異性および結合等温線をAgilent 8453 UV−可視分光光度計(Santa Clara、California)を用いる光学的バッチ再結合実験によって決定した。再結合実験のために、20mgのMIPまたはNIP粉末を5mlの水性ドーパミン溶液に0.3〜1.0mMの濃度で添加した。生じた懸濁液を、揺動テーブル上で、室温で12時間振盪した。その後、懸濁液をろ過し、ドーパミンの遊離濃度(Cf)をUV−vis分光法によって決定した。ドーパミンの結合した濃度(Sb)をMIPおよびNIPのg当たりで計算し、結合等温線を
図5に示す。結合等温線を適合させることによって、テンプレートドーパミンに対するMIPの特異性を決定した。選択性を試験するために、構造がドーパミンに非常に類似していることから、競合分子セロトニンを使用した。これらの実験のために、20mgのMIP粉末を5mlの水性セロトニン溶液に添加し、結合等温線を懸濁液の濾過後に決定した。
【0051】
図5は、MIPとその参照であるNIPとの間で、結合における顕著な違いがあることを示す。特異性を決定するために、インプリント・ファクター(imprint factor)(IF)を使用した。これは、参照NIPに選択される濃度で結合した量で割ったMIPに結合した量である。結合等温線を以下のタイプの2パラメータ適合で適合させて、インプリント・ファクターを特定の濃度で分析した(等式1):
【数1】
【0052】
等式1は、フロイントリッヒ等温線に対応し、結合部位および親和性定数の分布が異種であると仮定される場合、MIP結合等温線の適合に使用され得る。Cf=0.3mMでは、IFは3.1±0.1であり、一方で、より高い濃度では、結合部位の飽和によりわずかに低いIF値(~2.5)が得られた。結果は、文献での他のドーパミンのMIPと同等であった。競合セロトニンは参照と有意に異なるものではなく、これは、システムの選択性を実証する。
【0053】
実施例3:MIP被覆熱電対の調製
PLLAを、60℃、水の還流の下で120分間クロロホルムと混合して、PLLAの分解を確実にし、クロロホルムの損失を無視できるようにした。生じた溶液の濃度は200μg/mLであった。
【0054】
直径0.5mm、長さ30cmの鉱物絶縁タイプK熱電対をTC Direct社(Nederweert,オランダ国)から得た。熱電対をPLLA−クロロホルム溶液に10秒間浸漬し、0.39cm/分の速度で引き抜いた。クロロホルムを蒸発させて、熱電対上に厚さ約0.09mm(90μm)PLLAのコーティングを残した。
【0055】
PLLA被覆熱電対を、PLLAポリマーのガラス転移温度、65℃〜75℃に加熱した。熱電対を手動で転がして、実施例1で形成したMIPまたはNIP粉末で被覆した。その後、被覆した熱電対を4℃の冷蔵庫に約5分間入れて、PLLAポリマーがその結晶状態に戻るようにした。次に、緩く結合しているか、または過剰なMIPまたはNIP粒子を洗い流して、しっかりと結合したMIPまたはNIP粒子を残すために熱電対をイソプロパノールで洗浄した。
【0056】
実施例4:MIP被覆熱電対によるドーパミンの熱伝達による検出方法
1xリン酸緩衝食塩水(PBS)溶液を、Oxoid Limited社(Basingstoke,英国)から入手したダルベッコタブレットで調製した。MIP被覆およびNIP被覆の熱電対を、一定濃度のドーパミンのリン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝液溶液に、フロー・セル中で連続的に曝した。0.5μM、1μM、2μM、5μM、10μM、15μM、20μM、25μM、および50μMの濃度のドーパミンの溶液を、上昇する並びで注入した。最初に、フロー・セルをPBSで洗い流し、少なくとも45分間放置して、温度が安定化するようにした。その後、3mlの最も低い濃度(0.5μM)のものを0.25ml/分の一定速度で12分にわたって添加した。次の濃度の添加前に、フロー・セルを放置して30分間平衡化した。したがって、一定な注入による12分の添加および30分の安定化のパターンを各測定の間中保った。溶液と接触したフロー・セルの銅加熱要素を、銅加熱要素と熱的に接触するレジスタを通る電圧を制御することによって37℃に維持した。温度を維持するのに必要な電圧の変化を記録し、
図6Aに示す。
【0057】
図6Bで見られるように、ドーパミンの濃度の増加は、MIP被覆熱電対の温度(T
2 MIP)増加に対応する。さらに、銅要素を37℃に維持するのに必要な(V MIP)電圧は、ドーパミン濃度の増加と同時に減少する。銅加熱要素を37℃の温度に維持した場合、フロー・セル中の緩衝液溶液が約32.5℃の温度に維持され、MIPコーティング上の受容体部位が空いている。また、
図6Bに示されるように、NIP被覆熱電対の温度(T
2 NIP)は、実験の間中一定に維持された。さらに、銅要素を37℃に維持するのに必要な電圧(V NIP)が、ドーパミンの濃度が増加した際に低下しなかった。MIP実験を2回以上繰り返して、使用した結合法の再現性を調べ、同様の結果が得られた。
【0058】
図6Aおよび6Bは、いずれのドーパミン−PBS添加に対するNIP被覆熱電対による有意な応答がないことを示す。これは、MIPコーティングが、MIP被覆熱電対とNIP被覆熱電対との間で見られた温度バリエーションの源であることを示す。
【0059】
MIP被覆熱電対(T
2 MIP)での温度は、最初のドーパミン−PBSの4つの添加では約32.5℃で一定であった。10μMドーパミンの添加により、T
2の有意な増加があり、後のより高い濃度で続いた。これは、MIPの受容体の耐熱性の変化によって説明できる。熱損失が空いている受容体を通じて生じ、これは、MIP被覆熱電対への最初の4つのドーパミン−PBS添加に加えて、NIP被覆熱電対へのすべての添加について存在するように見える。ドーパミンによるMIPの占有により、絶縁体層が生成され、熱電対を通じての熱損失が減少するように見える。それ故に、フロー・セルの全体の温度が、20μMを超えるDA濃度で最大33.5℃に上昇する。MIP被覆熱電対によって測定された温度の増加は、絶縁層による熱エネルギーの保持によって説明され得る。
【0060】
測定した温度の増加(T
2)は、電力レジスタ(V MIP)上での電圧の減少を伴い、これは、フロー・セルからの熱損失が減少したことから、一定の37℃に銅要素を保つのに、より少ない力が必要とされることを意味する。一方で、V NIPは、実験の間中一定のままである。周囲温が室温で安定であることが見られ、これは、T
2の変化が、周囲温度の変化に起因できたものではないことを意味する。したがって、T
2の増加が、ドーパミンによるMIPの占有に対応するように見える。
【0061】
さらに、V MIPがT
2の変化と関連していることから、液体中のドーパミンの濃度が、V MIP単独、T
2単独、またはV MIPおよびT
2両方の組み合わせの測定に基づいて推定され得る。
【0062】
図7は、様々な濃度のドーパミンに曝された際のMIPおよびNIPで被覆した熱電対についての用量反応曲線を比較する。MIPでは、ドーパミン濃度の増加による応答の増加がある。データは、実施例3で調製したMIP被覆熱電対によるドーパミンの検出の限界が約5μMのドーパミンであり得、MIPの飽和が約20μM〜25μMのドーパミンに到達し得ることを示唆する。NIP被覆熱電対は、ドーパミン濃度の増加に対するいずれの有意な応答を示さなかった。
【0063】
本明細書に記載の熱電対およびセンサは、従来のセンサと比較して利点をもたらし得る。例えば、浸漬被覆などの方法の製造量、均一な(再現性のある)特性を保ちつつ、拡大し得ることから、熱電対は、調製が比較的より容易であり得る。さらに、熱電対は、平坦状基材よりはるかに小さい表面領域を有し得るが、表面の単位当たりの熱電対の検出感度が、平坦状基板の検出感度より高くなり得る。したがって、熱電対は、より小さく、かつより敏感であり得る。したがって、熱電対およびセンサは、平坦状基板が実用的ではない可能性があるマイクロ流体工学および生体内試験に使用され得る。熱電対のコーティングは、液体の容積がより小さいものであり得ることから、平坦状基板のコーティングより比較的容易であり得る。
【0064】
本明細書にて本開示を特定の実施形態を例示して説明したが、当業者であれば、それらに本開示が制限されないことを認識し、理解する。むしろ、例示した実施形態への多くの付加、削除、および改変を、法的な均等物を含む特許請求の範囲に記載の本開示の範囲を逸脱することなく行うことができる。加えて、1つの実施形態からの特徴は、本発明者らによって検討される本開示の範囲内に依然として含まれながら、別の実施形態の特徴と組み合わせ得る。さらに、本開示の実施形態は、異なるおよび様々な検出装置および方法との有用性を有する。