特許第6970513号(P6970513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970513
(24)【登録日】2021年11月2日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】光電変換装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/08 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   H03F3/08
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-28419(P2017-28419)
(22)【出願日】2017年2月17日
(65)【公開番号】特開2018-133784(P2018-133784A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 政範
(72)【発明者】
【氏名】塩道 寛貴
【審査官】 竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−085376(JP,A)
【文献】 特開2010−178043(JP,A)
【文献】 特開2009−118457(JP,A)
【文献】 特開2008−148233(JP,A)
【文献】 特開2012−080247(JP,A)
【文献】 特開2006−109434(JP,A)
【文献】 特開平5−299995(JP,A)
【文献】 特開平11−306578(JP,A)
【文献】 特開2007−066469(JP,A)
【文献】 特開2006−332796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00−3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子を含む受光素子部と、
前記受光素子部から出力される単一の信号をそれぞれ電圧に変換するための第1および第2のトランスインピーダンスアンプと、
前記第1および第2のトランスインピーダンスアンプの出力を差動増幅する差動演算部と、
前記受光素子部と前記第1のトランスインピーダンスアンプの入力端子との間に配される1または複数の第1のスイッチと、
前記受光素子部と前記第2のトランスインピーダンスアンプの入力端子との間に配される1または複数の第2のスイッチと、
前記第1のトランスインピーダンスアンプの入力側の容量値を調整するための1または複数の第1のノードと前記第1のトランスインピーダンスアンプの入力端子との間に配される1または複数の第3のスイッチと、
前記第2のトランスインピーダンスアンプの入力側の容量値を調整するための1または複数の第2のノードと前記第2のトランスインピーダンスアンプの入力端子との間に配される1または複数の第4のスイッチと、
制御部であって、
前記1または複数の第1のスイッチおよび前記1または複数の第3のスイッチのうちオン状態のスイッチの数と、前記1または複数の第2のスイッチおよび前記1または複数の第4のスイッチのうちオン状態のスイッチの数と、が同じになり、かつ、
前記1または複数の第1のスイッチおよび前記1または複数の第3のスイッチのうちオフ状態のスイッチの数と、前記1または複数の第2のスイッチおよび前記1または複数の第4のスイッチのうちオフ状態のスイッチの数と、が同じになるように、
前記1または複数の第3のスイッチおよび前記1または複数の第4のスイッチのオン状態およびオフ状態を切り替えることによって、前記第1のトランスインピーダンスアンプの入力側の容量値と、前記第2のトランスインピーダンスアンプの入力側の容量値との差を低減する制御を行う制御部と、を含むことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記受光素子部は、複数の受光素子を含み、
前記複数の受光素子のそれぞれは、前記1または複数の第1のスイッチにおける1つの第1のスイッチ、および、前記1または複数の第2のスイッチにおける1つの第2のスイッチの少なくとも一方に接続されることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記複数の受光素子は、前記1または複数の第1のスイッチにおける1つの第1のスイッチ、および、前記1または複数の第2のスイッチにおける1つの第2のスイッチの両方に接続される受光素子を含むことを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記受光素子部と、前記第1および第2のトランスインピーダンスアンプの入力端子に接続されない第3のノードと、の間に配される1または複数の第5のスイッチをさらに含み、
前記複数の受光素子は、前記1または複数の第1のスイッチにおける1つの第1のスイッチおよび前記1または複数の第2のスイッチにおける1つの第2のスイッチの少なくとも一方と、前記1または複数の第5のスイッチにおける1つの第5のスイッチと、に接続される受光素子を含むことを特徴とする請求項2または3に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記第3のノードが、接地されていることを特徴とする請求項4に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記1または複数の第1のスイッチ、前記1または複数の第2のスイッチ、前記1または複数の第3のスイッチおよび前記1または複数の第4のスイッチのそれぞれのスイッチが、MOSトランジスタを含むCMOSスイッチによって構成され、
前記1または複数の第1のスイッチ、前記1または複数の第2のスイッチ、前記1または複数の第3のスイッチおよび前記1または複数の第4のスイッチのそれぞれのスイッチのオン状態での寄生容量が同じ容量値を有し、
前記1または複数の第1のスイッチ、前記1または複数の第2のスイッチ、前記1または複数の第3のスイッチおよび前記1または複数の第4のスイッチのそれぞれのスイッチのオフ状態での寄生容量が同じ容量値を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記1または複数の第1のスイッチ、前記1または複数の第2のスイッチ、前記1または複数の第3のスイッチおよび前記1または複数の第4のスイッチのそれぞれのスイッチが、同じ構造を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記1または複数の第1のノードおよび前記1または複数の第2のノードが、フローティングであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記光電変換装置が、前記第1および第2のトランスインピーダンスアンプのそれぞれ非反転端子に接続される基準電圧部をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の光電変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
受光素子から出力される電流を電圧に変換するトランスインピーダンスアンプを用いた光電変換装置が知られている。特許文献1には、トランスインピーダンスアンプの構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−109331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される構成において、差動増幅回路に接続される2つのトランスインピーダンスアンプの入力側が互いに異なる構成を有するため、2つのトランスインピーダンスアンプの入力側の寄生容量の値が異なる。光電変換装置に接続される電源電圧が外乱ノイズなどによって変動した場合、寄生容量を伝搬して2つのトランスインピーダンスアンプに入力されるノイズの変動量が、寄生容量値の違いによって異なりうる。2つのトランスインピーダンスアンプに入るノイズの大きさに差が生じた場合、2つのトランスインピーダンスアンプによって電流から電圧に変換され、差動増幅回路から出力される信号に、ノイズの大きさの差に起因する成分が重畳されてしまう。結果として、電源電圧の変動を取り除く能力(電源電圧変動除去比:PSRR)が悪化してしまう。
【0005】
本発明は、光電変換装置において、電源電圧の変動に対して有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態に係る光電変換装置は、受光素子を含む受光素子部と、前記受光素子部から出力される単一の信号をそれぞれ電圧に変換するための第1および第2のトランスインピーダンスアンプと、前記第1および第2のトランスインピーダンスアンプの出力を差動増幅する差動演算部と、前記受光素子部と前記第1のトランスインピーダンスアンプの入力端子との間に配される1または複数の第1のスイッチと、前記受光素子部と前記第2のトランスインピーダンスアンプの入力端子との間に配される1または複数の第2のスイッチと、前記第1のトランスインピーダンスアンプの入力側の容量値を調整するための1または複数の第1のノードと前記第1のトランスインピーダンスアンプの入力端子との間に配される1または複数の第3のスイッチと、前記第2のトランスインピーダンスアンプの入力側の容量値を調整するための1または複数の第2のノードと前記第2のトランスインピーダンスアンプの入力端子との間に配される1または複数の第4のスイッチと、制御部であって、前記1または複数の第1のスイッチおよび前記1または複数の第3のスイッチのうちオン状態のスイッチの数と、前記1または複数の第2のスイッチおよび前記1または複数の第4のスイッチのうちオン状態のスイッチの数と、が同じになり、かつ、前記1または複数の第1のスイッチおよび前記1または複数の第3のスイッチのうちオフ状態のスイッチの数と、前記1または複数の第2のスイッチおよび前記1または複数の第4のスイッチのうちオフ状態のスイッチの数と、が同じになるように、前記1または複数の第3のスイッチおよび前記1または複数の第4のスイッチのオン状態およびオフ状態を切り替えることによって、前記第1のトランスインピーダンスアンプの入力側の容量値と、前記第2のトランスインピーダンスアンプの入力側の容量値との差を低減する制御を行う制御部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記手段によって、光電変換装置において、電源電圧の変動に対して有利な技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る光電変換装置の構成を示す回路図。
図2図1の切替部のスイッチの構成を示す断面図。
図3】本発明の実施形態に係る光電変換装置の構成を示す回路図。
図4図3の光電変換装置の切替部のスイッチの接続例を示す図。
図5図3の光電変換装置の切替部のスイッチの接続例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る光電変換装置の具体的な実施形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面において、複数の図面に渡って共通の構成については共通の符号を付している。そのため、複数の図面を相互に参照して共通する構成を説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。
【0010】
第1の実施形態
図1、2を参照して、本発明の実施形態による光電変換装置の構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態における光電変換装置100の構成を示す回路図である。光電変換装置100は、受光素子111を含む受光素子部101、切替部102、2つのトランスインピーダンスアンプ103、104、および、差動演算部105を含む。
【0011】
受光素子部101は、切替部102を介して受光素子111に入射する光に応じて生成される信号をトランスインピーダンスアンプ103、104に出力する。受光素子部101に配される受光素子111のカソードは、電源電圧に接続され、アノードは、切替部102の出力切替部110のスイッチ112に接続される。(本明細書において、スイッチ112aのように、複数のスイッチ112のうち特定のスイッチを示す場合、参照符号の後に「a」、「b」などの添え字を追加する。またさらに、スイッチ112aが複数存在する場合、特定のスイッチ112aを示すために、スイッチ112a−aのように、「−a」、「−1」などの添え字を追加する。他の構成要素に関しても同様である。)切替部102の構成については後述する。切替部102の出力は、2つのトランスインピーダンスアンプ103、104の入力端子である反転端子に接続される。トランスインピーダンスアンプ103、104の非反転端子には、光電変換装置300に配された基準電圧部106から基準電圧Vrefが供給される。2つのトランスインピーダンスアンプ103、104の出力は、差動演算部105に入力される。
【0012】
切替部102は、出力切替部110と容量調整部120とを含み、それぞれ複数のスイッチによって構成される。出力切替部110は、受光素子部101とトランスインピーダンスアンプ103、104との接続関係を定めるように配される。容量調整部120は、トランスインピーダンスアンプ103、104の入力側の容量値を調整するために配される。図1に示される回路構成において、切替部102は、以下の4つのスイッチを備える。出力切替部110のスイッチ112aは、受光素子部101に配される受光素子111のアノードとトランスインピーダンスアンプ103の入力端子との間に配される。出力切替部110のスイッチ112bは、受光素子部101に配される受光素子111のアノードとトランスインピーダンスアンプ104の入力端子との間に配される。容量調整部120のスイッチ122aは、トランスインピーダンスアンプ103の入力側の容量値を調整するためのノードN1とトランスインピーダンスアンプ103の入力端子との間に配される。容量調整部120のスイッチ122bは、トランスインピーダンスアンプ104の入力側の容量値を調整するためのノードN2とトランスインピーダンスアンプ104の入力端子との間に配される。本実施形態において、ノードN1、N2は、フローティングになっている。ノードN1、N2に接続されるスイッチ122a、122bは、ダミースイッチとして機能しうる。詳細については、後述する。
【0013】
次いで、切替部102の動作について説明する。受光素子部101に配された受光素子111は、受光素子111に入射する光の量に応じた信号(電流信号)を切替部102に出力する。切替部102は、2つのトランスインピーダンスアンプ103、104の何れかに受光素子111で発生した信号を供給するように出力切替部110のスイッチ112a、112bを切替える。例えば、受光素子111で発生した信号をトランスインピーダンスアンプ103へ供給する場合を考える。この場合、受光素子部101とトランスインピーダンスアンプ103の入力端子との間に配されるスイッチ112aがオン状態(導通状態)となる。また、受光素子部101とトランスインピーダンスアンプ104の入力端子との間に配されるスイッチ112bがオフ状態(非導通状態)となる。さらに、容量調整部120のノードN1とトランスインピーダンスアンプ103との間のスイッチ122aがオフ状態、ノードN2とトランスインピーダンスアンプ104との間のスイッチ122bがオン状態となる。
【0014】
トランスインピーダンスアンプ103に入力する信号は、トランスインピーダンスアンプ103に含まれる抵抗素子によって、受光量に応じた電圧に変換され、トランスインピーダンスアンプ103から出力される。一方、トランスインピーダンスアンプ104の反転端子にはアンプの仮想接地によって、基準電圧Vrefが入力され、トランスインピーダンスアンプ104から基準電圧Vrefが出力される。2つのトランスインピーダンスアンプ103、104の出力は、差動演算部105に入力される。差動演算部105は、2つのトランスインピーダンスアンプ103、104の出力を差動増幅し、2つのトランスインピーダンスアンプ103、104の出力の差に応じた出力が得られる。結果として、光電変換装置100は、トランスインピーダンスアンプ103、104の一方に受光素子111から出力される信号を入力することによって、受光素子111の受光量に応じた出力電圧をモニタすることができる。
【0015】
本実施形態において、スイッチ122aはスイッチ112aと、スイッチ122bはスイッチ112bと、それぞれ互いに異なる状態になるよう動作する。そして、トランスインピーダンスアンプ103に接続されるスイッチ112a、122aのうちオン状態のスイッチの数とトランスインピーダンスアンプ104に接続されるスイッチ112b、122bのうちオン状態のスイッチの数とが近づくように動作する。また、トランスインピーダンスアンプ103に接続されるスイッチ112a、122aのうちオフ状態のスイッチの数とトランスインピーダンスアンプ104に接続されるスイッチ112b、122bのうちオフ状態のスイッチの数とが近づくように動作する。本実施形態において、2つのトランスインピーダンスアンプ103、104に接続されるスイッチのうちオン状態のスイッチの数およびオフ状態のスイッチの数が、それぞれ同じ数になるように動作する。
【0016】
ここで、電源電圧に外乱ノイズが入力された場合を考える。外乱ノイズは受光素子部101から切替部102の出力切替部110の寄生容量を伝播し、トランスインピーダンスアンプ103、104に入力され、差動演算部105から出力される。この場合、基準電圧Vrefなど、光電変換装置100の系全体にも同等の外乱ノイズが入力され、切替部102の寄生容量を伝播し、トランスインピーダンスアンプ103、104に入力され、差動演算部105から出力されうる。
【0017】
図2を用いて、切替部102のスイッチ112、122に含まれる寄生容量成分について説明する。図2は、切替部102のそれぞれのスイッチ112、122の構成例を示す断面図である。切替部102の各スイッチは、MOSトランジスタを含むCMOSスイッチによって構成されうる。図2に示す構成は、スイッチにNMOSスイッチ200を用いた場合の断面図である。NMOSスイッチ200は、P型ウエル領域201、N型ドレイン領域202、N型ソース領域203、ゲート電極204、絶縁膜205、P型ウエル電極206を含む。P型ウエル領域201は、例えばP型の半導体層であり、P型ウエル電極206を介して接地電圧に接続されている。N型ドレイン領域202は受光素子111のアノードに接続される。N型ソース領域203は、トランスインピーダンスアンプ103、104の入力端子(反転端子)に接続される。
【0018】
ゲート電極204に電源電圧相当のVonが印加され、NMOSスイッチ200がオン状態となった場合、図2(a)に示すようにNMOSスイッチ200には、対電源電圧側に以下の寄生容量の成分が生じる。ゲート電極204−チャネル間容量Cg1、ゲート電極204−N型ドレイン領域202間容量Cgd1、ゲート電極204−N型ソース領域203間容量Cgs1である。これらの容量が合成され、対電源電圧側の寄生容量Cvd1となり、
Cvd1=Cg1+Cgd1+Cgs1
で表される。また、対接地電圧側には以下の寄生容量の成分が生じる。チャネル−P型ウエル領域201間容量Cg2、N型ドレイン領域202−P型ウエル領域201間容量Cdb1、N型ソース領域203−P型ウエル領域201間容量Csb1である。対接地電圧側の寄生容量Cgnd1は、
Cgnd1=Cg2+Cdb1+Csb1
で表される。
【0019】
ゲート電極204に接地電圧相当の電圧Voffが印加され、NMOSスイッチ200がオフ状態となった場合、図2(b)に示すようにNMOSスイッチ200には、対電源電圧側、対グランド側に以下の寄生容量の成分が生じる。ゲート電極204−N型ドレイン領域202間容量Cgd2、ゲート電極204−N型ソース領域203間容量Cgs2である。対電源電圧側の寄生容量Cvd2は、
Cvd2=Cgd2+Cgs2
で表される。また、対接地電圧側には以下の寄生容量成分が生じる。N型ドレイン領域202−P型ウエル領域201間容量Cdb2、N型ソース領域203−P型ウエル領域201間容量Csb2である。対接地電圧側の寄生容量成分Cgnd2は、
Cgnd2=Cdb2+Csb2
で表される。
【0020】
このとき、Cvd1>Cvd2であり、Cgnd1>Cgnd2である。以上のように、切替部102のスイッチのそれぞれは、オン状態の場合とオフ状態の場合とで寄生容量の容量値が異なる。その結果、トランスインピーダンスアンプ103、104に接続されるスイッチのオン状態の数およびオフ状態の数にそれぞれ違いが生じると、トランスインピーダンスアンプ103、104の入力側の寄生容量の容量値が異なることになる。このため、入力時には同じ大きさの外乱ノイズであるにもかかわらず、寄生容量を伝播して入力されるノイズの大きさが、トランスインピーダンスアンプ103とトランスインピーダンスアンプ104とで異なりうる。トランスインピーダンスアンプ103、104のそれぞれに入力されるノイズの大きさが異なる場合、差動演算部105の反転端子、非反転端子にレベルの異なるノイズが入る。このため、差動演算部105にて同相ノイズ成分が足し合わされ、差動演算部105から出力される信号に、ノイズの大きさの差に起因する成分が重畳されてしまう。
【0021】
そこで、トランスインピーダンスアンプ103、104のそれぞれに接続される切替部102のオン状態のスイッチ112a、112bの数が近づくように、またオフ状態のスイッチ112a、112bの数が近づくようにスイッチ122a、122bを設ける。そして、ダミースイッチとして、スイッチ122a、122bを動作させる。図1に示されるように、トランスインピーダンスアンプ103、104のそれぞれに接続されるオン状態およびオフ状態のスイッチ112、122の数が、それぞれ同じになってもよい。これによって、トランスインピーダンスアンプ103、104のそれぞれの入力側に接続される寄生容量の容量値を近づける。結果として、電源に外乱ノイズが乗り、トランスインピーダンスアンプ103、104の入力にノイズが乗った場合でも、差動演算部105にて同相ノイズを除去することが可能となる。2つのトランスインピーダンスアンプ103、104の入力側の寄生容量の容量値の差を小さくすることによって、電源電圧変動除去比(PSRR)が向上し、外乱ノイズに対して強い光電変換装置100が実現可能となる。
【0022】
図2に示される構成において、切替部102のスイッチをNMOSスイッチで示したが、その限りではなく、PMOSスイッチなど、受光素子部101から出力される信号を伝達できれば、どのような構成でも構わない。また、例えば、切替部102のスイッチ112、122a、122bのそれぞれが、オン状態において同じ容量値を有するように構成してもよいし、オフ状態において同じ容量値を有するように構成してもよい。さらに、例えば、切替部102のスイッチ112a、112b、122a、122bのそれぞれが、同じ構造を有するようにすることによって、それぞれの状態での容量値をそろえるようにしてもよい。また、図2には、NMOSスイッチのオン状態およびオフ状態での寄生容量を記載したが、その他の寄生容量成分が生じてもよい。例えば、受光素子部101からスイッチ112までの配線パターンの寄生容量などが生じうる。この場合、これらの寄生容量を含め、トランスインピーダンスアンプ103、104にそれぞれに接続される寄生容量の容量値を近づけてもよい。また例えば、図1(b)、(c)に示すように、それぞれのスイッチ112、122の寄生容量や配線パターンなどの寄生容量の差を小さくするために、ノードN1、N2に、適宜、容量Cadjや電圧Vadjを供給する電源を接続してもよい。例えば、容量Cadjは、受光素子部101からスイッチ112までの配線パターンの寄生容量に応じた容量値を有していてもよい。また例えば、電圧Vadjは基準電圧Vrefと同じであってもよいし、接地電圧であってもよい。また、容量Cadjや電圧Vadjは、ノードN1とノードN2とで、同じ値を有していてもよいし、それぞれ異なる値を有していてもよい。
【0023】
第2の実施形態
図3〜5を参照して、本発明の実施形態による光電変換装置の構成について説明する。図3は、本発明の第2の実施形態における光電変換装置300の構成を示す回路図である。本実施形態の光電変換装置300は、上述の第1の実施形態の光電変換装置100と比較して、受光素子部101に含まれる受光素子111が複数になり、これに伴って切替部102の構成が異なる。また、切替部102を制御するための制御部301を含む。光電変換装置300のこれ以外の構成は、上述の光電変換装置100と同じであってもよい。
【0024】
次いで、上述の光電変換装置100とは異なる構成を有する光電変換装置300の受光素子部101、切替部102、制御部301について説明する。本実施形態において、受光素子部101には、4つの受光素子111a〜111dが配される。それぞれの受光素子111a〜111dの出力は、切替部102の出力切替部110のスイッチ112の何れか1つを介してトランスインピーダンスアンプ103およびトランスインピーダンスアンプ104の少なくとも一方に供給される。換言すると、受光素子111a〜111dのアノードは、受光素子部101とトランスインピーダンスアンプ103との間のスイッチ112aおよび受光素子部101とトランスインピーダンスアンプ104との間のスイッチ112bの少なくとも一方に接続される。
【0025】
切替部102は、受光素子部101に配される受光素子111の数が複数になったのに応じて、光電変換装置100よりも多くのスイッチが配される。出力切替部110には、受光素子部101とトランスインピーダンスアンプ103の入力端子に接続されるノードS1との間に複数のスイッチ112aが配される。また、出力切替部110には、受光素子部101とトランスインピーダンスアンプ104の入力端子に接続されるノードS2との間に複数のスイッチ112bが配される。容量調整部120には、トランスインピーダンスアンプ103の入力側の容量値を調整するためのノードN1とトランスインピーダンスアンプ103の入力端子との間に複数のスイッチ122aが配される。また、容量調整部120には、トランスインピーダンスアンプ104の入力側の容量値を調整するためのノードN2とトランスインピーダンスアンプ104の入力端子との間に複数のスイッチ122bが配される。さらに、出力切替部110には、受光素子部101と、トランスインピーダンスアンプ103、104の入力端子に接続されないノードS3との間に複数のスイッチ132が配されてもよい。本実施形態において、ノードS3は、接地されている。
【0026】
本実施形態において、受光素子111a〜111dは、スイッチ112aにおける1つのスイッチ、および、スイッチ112bにおける1つのスイッチの少なくとも一方に接続される。具体的には、受光素子111aは、スイッチ112b−aを介してトランスインピーダンスアンプ104に、スイッチ132−aを介してノードS3に、それぞれ接続可能に配される。受光素子111bは、スイッチ112a−bを介してトランスインピーダンスアンプ103に、スイッチ132−bを介してノードS3に、それぞれ接続可能に配される。受光素子111cは、スイッチ112a−cを介してトランスインピーダンスアンプ103に、スイッチ112b−cを介してトランスインピーダンスアンプ104に、それぞれ接続可能に配される。受光素子111dは、スイッチ112a−dを介してトランスインピーダンスアンプ103に、スイッチ132−dを介してノードS3に、それぞれ接続可能に配される。受光素子111cは、スイッチ112aのうちスイッチ112a−c、スイッチ112bのうちスイッチ112b−cの両方に接続され、トランスインピーダンスアンプ103、104の何れにも信号を供給可能に配されている。また、受光素子111a、111b、111dは、スイッチ112aにおける1つのスイッチおよびスイッチ112bにおける1つのスイッチの少なくとも一方と、スイッチ132における1つのスイッチと、に接続される。
【0027】
制御部301は、受光素子部101のそれぞれの受光素子111a〜111dの接続先を切り替える制御を行う。また、制御部301は、出力切替部110のスイッチ112a、112bのそれぞれのオン状態のスイッチの数およびオフ状態のスイッチの数に応じて、容量調整部120のスイッチ122a、122bに含まれるスイッチのオン状態およびオフ状態を切り替える。より具体的には、制御部301は、ノードS1に接続されるスイッチ112a、122aのうちオン状態のスイッチの数とノードS2に接続されるスイッチ112b、122bのうちオン状態のスイッチの数とが近づくように容量調整部120を駆動する。容量調整部120のスイッチ122a、122bのオン状態とオフ状態と切り替えることによって、ノードS1およびノードS2にそれぞれ接続されるオン状態のスイッチの数が制御される。また、制御部301は、ノードS1に接続されるスイッチ112a、122aのうちオフ状態のスイッチの数とノードS2に接続されるスイッチ112b、122bのうちオフ状態のスイッチの数とが近づくように容量調整部120を駆動する。容量調整部120のスイッチ122a、122bのオン状態とオフ状態と切り替えることによって、ノードS1およびノードS2にそれぞれ接続されるオフ状態のスイッチの数が制御される。上述したように、ノードS1およびノードS2にそれぞれ接続されるオン状態のスイッチ112、122の数が同じになるように制御部301は、容量調整部120のスイッチ122を制御してもよい。さらに、ノードS1およびノードS2にそれぞれ接続されるオフ状態のスイッチ112、122の数が同じになるように制御部301は、容量調整部120のスイッチ122を制御してもよい。
【0028】
次に、光電変換装置300の動作について説明する。光電変換装置300において、ノードS1、S2の両方に受光素子部101からの信号が入力される場合、受光素子111a〜111dのそれぞれに入力される光の強弱を差動演算部105で処理し、位置検出を行う回路として動作しうる。また、ノードS1、S2の何れか一方に受光素子部101からの信号が入力される場合は、受光素子111〜111dの受光量に応じた出力電圧をモニタする回路として動作しうる。
【0029】
図4は、位置検出を行う場合の、切替部102のそれぞれのスイッチ112、122、132の接続例を示す回路図である。受光素子部101に光を入射させる前に、制御部301は、切替部102のそれぞれのスイッチ112、122、132の接続を制御する。図4に示される構成において、受光素子111a、111cはノードS2に接続され、トランスインピーダンスアンプ104に信号を出力する。受光素子111b、111dはノードS1に接続され、トランスインピーダンスアンプ103に信号を出力する。2つのトランスインピーダンスアンプ103、104には、同数の受光素子111が接続される。制御部301は、出力切替部110の制御と平行して、容量調整部120のスイッチ132の制御も行う。図4に示される構成の場合、ノードS1に接続されるオン状態のスイッチ112aが2つ、オフ状態のスイッチ112aが1つとなる。また、ノードS2に接続されるオン状態のスイッチ112bが2つ、オフ状態のスイッチ112bが0となる。ノードS1とノードS2とで、オフ状態のスイッチ112a、112bの数が異なる。このため、制御部301は、ノードS1とノードS2とで、オフ状態のスイッチ112a、112b、122a、122bの数が近づくように、容量調整部120のスイッチ122a、122bを制御する。図4に示される構成において、容量調整部120のスイッチ122をすべてオフ状態にすることで、ノードS1とノードS2とに接続されるスイッチ112、122のオン状態のスイッチの数とオフ状態のスイッチの数とを、それぞれ一致させることができる。制御部301が、切替部102のそれぞれのスイッチ112、122、132の接続先を設定した後、受光素子部101に光を入射させる。
【0030】
例えば、発光ダイオードなどの発光部(不図示)から発せられた光を濃淡のある反射スケール(不図示)に照射し、反射スケールを受光素子111の配列方向に動かすと、濃淡のある反射スケールで反射した光が、受光素子111に入射する。このとき、2つのトランスインピーダンスアンプ103、104から、位置検出に必要な信号が出力されるように、事前に制御部301は、受光素子111a〜111dの接続先を指定する。このとき、光電変換装置300を2つ用意し、2つの光電変換装置300のそれぞれ差動演算部105から出力された信号から位置検出を行ってもよい。
【0031】
次いで、受光素子111〜111dの受光量に応じた出力電圧をモニタする回路として光電変換装置300を用いる場合について、図5を用いて説明する。図5は、出力電圧をモニタする場合の、切替部102のそれぞれのスイッチ112、122、132の接続例を示す回路図である。
【0032】
上述の図4の位置検出を行う場合と同様に受光素子部101に光を入射させる前に、制御部301は、切替部102のそれぞれのスイッチ112、122、132の接続を制御する。図5に示される構成において、受光素子111aはノードS3に接続される。また、受光素子111b〜111dはノードS1に接続され、トランスインピーダンスアンプ103に信号を出力する。制御部301は、出力切替部110の制御と平行して、容量調整部120のスイッチ132の制御も行う。図5に示される構成の場合、ノードS1に接続されるオン状態のスイッチ112aが3つ、オフ状態のスイッチ112aが0となる。また、ノードS2に接続されるオン状態のスイッチ112bが0、オフ状態のスイッチ112bが2つとなる。ノードS1とノードS2とで、オン状態およびオフ状態のスイッチ112a、112bの数が異なる。このため、制御部301は、ノードS1とノードS2とで、オン状態およびオフ状態のスイッチ112a、112b、122a、122bの数が近づくように、容量調整部120のスイッチ122a、122bを制御する。図5に示される構成において、容量調整部120のスイッチ122aをすべてオフ状態にし、スイッチ122bをすべてオン状態にする。これによって、ノードS1とノードS2とに接続されるスイッチ112、122のオン状態のスイッチの数とオフ状態のスイッチの数とを、それぞれ一致させることができる。制御部301が、切替部102のそれぞれのスイッチ112、122、132の接続先を設定した後、受光素子部101に光を入射させる。
【0033】
受光素子部101に光を入射させ、それぞれの受光素子111は、受光した光量に応じた信号を切替部102に出力する。図5に示される構成において、ノードS1を介してトランスインピーダンスアンプ103にのみ信号が入力され、ノードS2に接続されるトランスインピーダンスアンプ104には、信号が入力されない。差動演算部105で、2つのトランスインピーダンスアンプ103、104から出力される電圧の差分を取得することによって、受光素子部101に入射した光量をモニタすることができる。
【0034】
本実施形態においても、トランスインピーダンスアンプ103、104の入力側の容量値を調整するためのノードN1、N2に、図1(b)、(c)に示すような容量Cadjや電圧Vadjを供給する電源を接続してもよい。容量Cadjや電圧Vadjは、ノードN1とノードN2とで、同じ値を有していてもよいし、それぞれ異なる値を有していてもよい。また例えば、容量Cadjや電圧Vadjは、ノードN1−1とノードN1−2とで、それぞれ異なる値を有していてもよい。同様に、容量Cadjや電圧Vadjは、ノードN2−1とノードN2−2とノードN2−3とで、それぞれ異なる値を有していてもよい。
【0035】
本実施形態において、受光素子部101に複数の受光素子111が配された場合であっても、2つのトランスインピーダンスアンプ103、104のそれぞれに接続されるオン状態およびオフ状態のスイッチ112、122、132の数を近づけることができる。これによって、2つのトランスインピーダンスアンプ103、104の入力側の寄生容量の容量値の差を小さくすることが可能となり、電源電圧変動除去比(PSRR)が向上し、外乱ノイズに対して強い光電変換装置100が実現可能となる。
【0036】
また、本実施形態において、受光素子部101に配される受光素子111の数が4つの場合を示したが、2または3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。また、スイッチ112、122、132の配置も、上述の構成に限られることはない。2つのトランスインピーダンスアンプ103、104のそれぞれに接続されるオン状態のスイッチ112、122、132の数が近づくように、また、オフ状態のスイッチ112、122、132の数が近づくように構成されればよい。
【0037】
以上、本発明に係る実施形態を示したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態は適宜変更、組み合わせが可能である。例えば、図1に示される構成において、受光素子部101が2つの受光素子111を有し、一方の受光素子111のアノードがスイッチ112aに接続され、他方の受光素子111のアノードがスイッチ112bに接続されていてもよい。この構成において、位置検出を行う場合は、スイッチ112a、112bをオン状態にし、スイッチ122a、122bをオフ状態にしてもよい。また、受光量に応じた出力電圧をモニタする場合は、スイッチ112a、122bをオン状態、スイッチ112b、122aをオフ状態、または、その逆の状態にしてもよい。これによって、2つのトランスインピーダンスアンプ103、104の入力側の寄生容量の容量値の差を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0038】
100、300:光電変換装置、101:受光素子部、102:切替部、103、104:トランスインピーダンスアンプ、105:差動演算部、110:出力切替部、111:受光素子、120:容量調整部
図1
図2
図3
図4
図5