特許第6970654号(P6970654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970654
(24)【登録日】2021年11月2日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】磁気記憶装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/8239 20060101AFI20211111BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20211111BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20211111BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20211111BHJP
   H01F 10/16 20060101ALI20211111BHJP
   H01F 10/14 20060101ALI20211111BHJP
   H01F 10/30 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H01L27/105 447
   H01L29/82 Z
   H01L43/08 Z
   H01F10/16
   H01F10/14
   H01F10/30
【請求項の数】11
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2018-222119(P2018-222119)
(22)【出願日】2018年11月28日
(65)【公開番号】特開2020-88222(P2020-88222A)
(43)【公開日】2020年6月4日
【審査請求日】2020年9月4日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人 科学技術振興機構「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」「無充電で長期間使用できる究極のエコIT機器の実現」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】及川 壮一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 侑志
(72)【発明者】
【氏名】與田 博明
【審査官】 加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−096075(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/036753(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/8239
H01L 29/82
H01L 43/08
H01F 10/16
H01F 10/14
H01F 10/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1磁性領域と、
第1対向磁性領域と、
前記第1磁性領域と前記第1対向磁性領域との間に設けられた第1非磁性領域と、
を備え、
前記第1磁性領域は、第1磁性膜と、第2磁性膜と、中間膜と、を含み、前記第1磁性膜は、前記第2磁性膜と前記第1非磁性領域との間に設けられ、前記中間膜は、前記第1磁性膜と前記第2磁性膜との間に設けられ、Ru及びMnを含み、
前記第1磁性膜と前記第2磁性膜との間の前記第1対向磁性領域から前記第1磁性領域への第1方向に沿う距離は、1.8nm以上2.2nm以下である、磁気記憶装置。
【請求項2】
前記第1磁性膜及び前記第2磁性膜の少なくとも1つは、Fe及びCoよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1記載の磁気記憶装置。
【請求項3】
前記第1磁性膜及び前記第2磁性膜の少なくとも1つは、体心立方構造または非晶質構造を含む、請求項1または2に記載の磁気記憶装置。
【請求項4】
前記第1磁性膜は、Mnを含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【請求項5】
磁性部をさらに含み、
前記中間膜と前記磁性部との間に前記第2磁性膜が設けられ、
前記磁性部は、Ir及びPtよりなる群から選択された少なくとも1つと、Mnと、を含む、請求項1〜のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【請求項6】
導電部材をさらに備え、
前記導電部材は、第1部分と、第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分と、を含み、
前記第1部分から前記第2部分への第2方向は、前記第1方向と交差し、
前記第1対向磁性領域は、前記第1方向において、前記第3部分と前記第1磁性領域との間に位置した、請求項1〜のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【請求項7】
制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1部分及び前記第2部分と電気的に接続され、
前記制御部は、
前記第1部分から前記第2部分への第1電流を前記導電部材に供給する第1動作と、
前記第2部分から前記第1部分への第2電流を前記導電部材に供給する第2動作と、
を少なくとも実施する、請求項記載の磁気記憶装置。
【請求項8】
第1磁性領域と、
第1対向磁性領域と、
前記第1磁性領域と前記第1対向磁性領域との間に設けられた第1非磁性領域と、
導電部材と、
制御部と、
を備え、
前記第1磁性領域は、第1磁性膜と、第2磁性膜と、中間膜と、を含み、前記第1磁性膜は、前記第2磁性膜と前記第1非磁性領域との間に設けられ、前記中間膜は、前記第1磁性膜と前記第2磁性膜との間に設けられ、Ruを含み、
前記第1磁性膜と前記第2磁性膜との間の前記第1対向磁性領域から前記第1磁性領域への第1方向に沿う距離は、1.8nm以上2.2nm以下であ
前記導電部材は、第1部分と、第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分と、を含み、
前記第1部分から前記第2部分への第2方向は、前記第1方向と交差し、
前記第1対向磁性領域は、前記第1方向において、前記第3部分と前記第1磁性領域との間に位置し、
前記制御部は、前記第1部分及び前記第2部分と電気的に接続され、
前記制御部は、
前記第1部分から前記第2部分への第1電流を前記導電部材に供給する第1動作と、
前記第2部分から前記第1部分への第2電流を前記導電部材に供給する第2動作と、
を少なくとも実施する、磁気記憶装置。
【請求項9】
第2磁性領域と、
第2対向磁性領域と、
第2非磁性領域と、
制御部と、
をさらに備え、
前記導電部材は、第4部分及び第5部分をさらに含み、前記第2部分は、前記第2方向において前記第3部分と前記第4部分との間にあり、前記第5部分は、前記第2方向において前記第2部分と前記第4部分との間にあり、
前記第2対向磁性領域は、前記第1方向において前記第5部分と前記第2磁性領域との間に設けられ、
前記第2非磁性領域は、前記第2磁性領域と前記第2対向磁性領域との間に設けられ、
前記制御部は、前記第1部分、前記第2部分、前記第4部分、前記第1磁性領域、及び、前記第2磁性領域とさらに電気的に接続され、
第1動作において、前記制御部は、前記第1部分から前記第2部分に向けた第1電流、及び、前記第4部分から前記第2部分に向けた第2電流を供給し、
第2動作において、前記制御部は、前記第2部分から前記第1部分に向けた第3電流、及び、前記第2部分から前記第4部分に向けた第4電流を供給する、請求項記載の磁気記憶装置。
【請求項10】
第1磁性領域と、
第1対向磁性領域と、
前記第1磁性領域と前記第1対向磁性領域との間に設けられた第1非磁性領域と、
導電部材と、
第2磁性領域と、
第2対向磁性領域と、
第2非磁性領域と、
制御部と、
を備え、
前記第1磁性領域は、第1磁性膜と、第2磁性膜と、中間膜と、を含み、前記第1磁性膜は、前記第2磁性膜と前記第1非磁性領域との間に設けられ、前記中間膜は、前記第1磁性膜と前記第2磁性膜との間に設けられ、Ruを含み、
前記第1磁性膜と前記第2磁性膜との間の前記第1対向磁性領域から前記第1磁性領域への第1方向に沿う距離は、1.8nm以上2.2nm以下であ
前記導電部材は、第1部分と、第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分と、を含み、
前記第1部分から前記第2部分への第2方向は、前記第1方向と交差し、
前記第1対向磁性領域は、前記第1方向において、前記第3部分と前記第1磁性領域との間に位置し、
前記導電部材は、第4部分及び第5部分をさらに含み、前記第2部分は、前記第2方向において前記第3部分と前記第4部分との間にあり、前記第5部分は、前記第2方向において前記第2部分と前記第4部分との間にあり、
前記第2対向磁性領域は、前記第1方向において前記第5部分と前記第2磁性領域との間に設けられ、
前記第2非磁性領域は、前記第2磁性領域と前記第2対向磁性領域との間に設けられ、
前記制御部は、前記第1部分、前記第2部分、前記第4部分、前記第1磁性領域、及び、前記第2磁性領域とさらに電気的に接続され、
第1動作において、前記制御部は、前記第1部分から前記第2部分に向けた第1電流、及び、前記第4部分から前記第2部分に向けた第2電流を供給し、
第2動作において、前記制御部は、前記第2部分から前記第1部分に向けた第3電流、及び、前記第2部分から前記第4部分に向けた第4電流を供給する、磁気記憶装置。
【請求項11】
第3動作において、前記制御部は、前記第1磁性領域と前記第2磁性領域との間に電圧を印加し、前記第2部分の電位を検出する、請求項9または10に記載の磁気記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記憶装置において、安定した動作が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−10590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、安定した動作が可能な磁気記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、磁気記憶装置は、第1磁性領域と、第1対向磁性領域と、前記第1磁性領域と前記第1対向磁性領域との間に設けられた第1非磁性領域と、を含む。前記第1磁性領域は、第1磁性膜と、第2磁性膜と、中間膜と、を含む。前記第1磁性膜は、前記第2磁性膜と前記第1非磁性領域との間に設けられる。前記中間膜は、前記第1磁性膜と前記第2磁性膜との間に設けられ、Ruを含む。前記第1磁性膜と前記第2磁性膜との間の前記第1対向磁性領域から前記第1磁性領域への第1方向に沿う距離は、1.8nm以上2.2nm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1(a)及び図1(b)は、第1実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式図である。
図2図2(a)〜図2(c)は、実験結果を例示するグラフ図である。
図3図3(a)〜図3(d)は、第1実施形態に係る磁気記憶装置の特性を例示するグラフ図である。
図4図4は、第1実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式的断面図である。
図5図5は、第2実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式的斜視図である。
図6図6は、磁気記憶装置の特性を例示するグラフ図である。
図7図7は、第2実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式的断面図である。
図8図8は、第3実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式的斜視図である。
図9図9(a)〜図9(c)は、第4実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式的斜視図である。
図10図10は、第5実施形態に係る磁気記憶装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1(a)及び図1(b)は、第1実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式図である。
図1(a)は、断面図である。図1(b)は、斜視図である。
【0009】
図1(a)及び図1(b)に示すように、磁気記憶装置110は、第1磁性領域11、第1対向磁性領域11c、及び、第1非磁性領域11nを含む。この例では、磁気記憶装置110は、導電部材20をさらに含む。図1(b)に示すように、磁気記憶装置110は、制御部70をさらに含んでも良い。
【0010】
第1非磁性領域11nは、第1磁性領域11と第1対向磁性領域11cとの間に設けられる。図1(a)に示すように、第1磁性領域11は、第1磁性膜11a、第2磁性膜11b及び中間膜11mを含む。第1磁性膜11aは、第2磁性膜11bと第1非磁性領域11nとの間に設けられる。中間膜11mは、第1磁性膜11aと第2磁性膜11bとの間に設けられる。中間膜11mは、Ruを含む。
【0011】
図1(a)に示すように、第1対向磁性領域11cから第1磁性領域11への方向(第1方向)をZ軸方向とする。図1(b)に示すように、Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0012】
第1磁性領域11、第1対向磁性領域11c、及び、第1非磁性領域11nは、例えば、X−Y平面に対して実質的に平行な部分を含む。第1磁性膜11a、第2磁性膜11b及び中間膜11mは、例えば、X−Y平面に対して実質的に平行な部分を含む。実施形態において、上記の領域は、X−Y平面に対してカーブしてもよい。実施形態において、上記の膜は、X−Y平面に対してカーブしてもよい。
【0013】
図1(a)に示すように、第1磁性膜11aと第2磁性膜11bとの間の第1方向(例えばZ軸方向)に沿う距離を距離tmとする。実施形態において、距離tmは、例えば、1.8nm以上2.2nm以下である。
【0014】
1つの例について、中間膜11mは、第1磁性膜11aと接し、第2磁性膜11bと接する。この場合、距離tmは、例えば、中間膜11mのZ軸方向に沿う厚さに対応する。後述するように、中間膜11mと第1磁性膜11aとの間、及び、中間膜11mと第2磁性膜11bとの間の少なくともいずれかに別の膜(例えば、別の領域)が設けられても良い。
【0015】
第1磁性膜11a及び第2磁性膜11bの少なくとも1つは、Fe及びCoよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1磁性膜11a及び第2磁性膜11bは、例えば、FeCoを含む。例えば、第1磁性膜11a及び第2磁性膜11bの少なくとも1つは、Bをさらに含んでも良い。例えば、第1磁性膜11a及び第2磁性膜11bは、例えば、FeCoBを含んでも良い。
【0016】
図1(a)に示すように、1つの例において、第1磁性膜11aは、第1部分膜11aa及び第2部分膜11abなどを含んでも良い。第1部分膜11aaは、第2部分膜11abと第1非磁性領域11nとの間に設けられる。第1部分膜11aaは、例えば、CoFeBを含む。第2部分膜11abは、例えば、Coを含む。
【0017】
第1対向磁性領域11cは、Fe及びCoよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1対向磁性領域11cは、Bをさらに含んでも良い。
【0018】
第1非磁性領域11nは、例えばMgOなどを含む。
【0019】
図1(a)に示すように、磁気記憶装置110は、磁性部11pをさらに含んでも良い。中間膜11mと磁性部11pとの間に第2磁性膜11bが設けられる。磁性部11pは、例えば、Mnを含む。磁性部11pは、例えば、Ir及びPtよりなる群から選択された少なくとも1つと、Mnと、を含む。磁性部11pは、例えば、IrMnを含む。磁性部11pは、例えば、反強磁性体である。
【0020】
磁性部11pは、例えば、第2磁性膜11bと接する。例えば、磁性部11pと第2磁性膜11bとの間に交換結合が働く。例えば、磁場中熱処理することで第2磁性膜11bの磁化を特定の方向に向けることができる。
【0021】
第1磁性膜11aは、第2磁性膜11bと反強磁性的に層間結合している。例えば、上記の距離tmが適切な範囲に設定されることで、第1磁性膜11aは、第2磁性膜11bと反強磁性(Synthetic Anti-Ferromagnetic)結合する。第1磁性膜11aの磁化の向きは、第2磁性膜11bの磁化の向きに対して、実質的に反対である。この様に、第1磁性領域11は、例えば、反強磁性結合の構成を有する。第1磁性膜11a及び第2磁性膜11bの組み合わせにより、例えば、漏洩磁界が抑制される。
【0022】
このような構成において、第1磁性領域11の磁化は、磁気記憶装置110の記憶動作において、実質的に安定である。第1磁性領域11の磁化の向きは、実質的に変化しない。
【0023】
一方、第1対向磁性領域11cの磁化の向きは、第1磁性領域11の磁化の向きよりも、変化し易い。第1磁性領域11は、例えば、参照層である。第1対向磁性領域11cは、例えば、記憶層(例えば磁化自由層)である。
【0024】
図1(b)に示すように、第1磁性領域11、第1対向磁性領域11c、及び、第1非磁性領域11nは、第1積層体SB1に含まれる。第1積層体SB1は、例えば、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子である。
【0025】
第1積層体SB1の電気抵抗は、例えば、外部からの影響(電圧または電流など)により変化する。例えば、外部からの影響により、第1対向磁性領域11cの磁化11cM(図1(b)参照)の向きが変化する。これにより、第1対向磁性領域11cの磁化11cMの向きと、第1磁性領域11の磁化11Mの向きと、の間の角度が変化する。これにより、第1積層体SB1の電気抵抗は、外部からの影響により変化する。例えば、複数の電気抵抗の状態が形成される。複数の電気抵抗の状態は、磁気記憶装置110に記憶される複数の情報に対応する。例えば、高抵抗状態は、「0」及び「1」の一方に対応する。例えば、低抵抗状態は、「0」及び「1」の他方に対応する。第1積層体SB1は、1つの磁気素子である。1つの例において、第1積層体SB1は、1つのメモリセルMCに対応する。
【0026】
第1積層体SB1の電気抵抗の状態は、例えば、第1積層体SB1に電気的に接続される導電体を介して、検出できる。
【0027】
図1(a)に示すように、この例では、磁気記憶装置110は、導電部材20及び導電層11eをさらに含む。導電部材20と導電層11eとの間に第1積層体SB1が設けられる。導電層11eは、例えば、RuまたはTaなどを含む。導電層11eの材料は、任意である。例えば、導電部材20及び導電層11eは、記憶された情報の読み出し動作において用いられる。
【0028】
導電部材20は、例えば、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Cu、Ag、Hf及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含んでも良い。
【0029】
1つの例において、導電部材20に流れる電流により、第1対向磁性領域11cの磁化11cMが制御されても良い。このように、導電部材20は、第1積層体SB1(例えば、メモリセルMC)への情報の書き込み動作に用いられても良い。
【0030】
以下、導電部材20を用いた第1積層体SB1への情報の記憶動作の例について説明する。
【0031】
図1(b)に示すように、導電部材20は、第1部分20a、第2部分20b及び第3部分20cを含む。第3部分20cは、第1部分20aと第2部分20bとの間に設けられる。
【0032】
第1対向磁性領域11cは、第1方向において、第3部分20cと第1磁性領域11との間に設けられる。第1方向(Z軸方向)は、第2方向と交差する。第2方向は、第1部分20aから第2部分20bに向かう方向である。この例では、第2方向は、X軸方向である。
【0033】
第1非磁性領域11nは、第1方向(Z軸方向)において、第1磁性領域11と第1対向磁性領域11cとの間に設けられる。
【0034】
制御部70は、例えば、第1部分20a及び第2部分20bと電気的に接続される。例えば、制御部70は、制御回路75を含む。例えば、第1配線70aにより、制御回路75と第1部分20aとが互いに電気的に接続される。例えば、第配線70bにより、制御回路75と第2部分20bとが互いに電気的に接続される。例えば、スイッチSwS1が、制御回路75と導電部材20との間の電流経路に設けられても良い。スイッチSwS1は、制御部70に含まれても良い。
【0035】
例えば、制御部70は、第1動作及び第2動作を実施する。第1動作において、制御部70は、第1部分20aから第2部分20bへの第1電流Iw1を導電部材20に供給する。第2動作において、制御部70は、第2部分20bから第1部分20aへの第2電流Iw2を導電部材20に供給する。
【0036】
このような動作により、第1積層体SB1において、異なる電気抵抗が得られる。電気抵抗の変化は、例えば、第1磁性領域11と第1対向磁性領域11cとの間の抵抗の変化に対応する。電気抵抗の変化は、例えば、第1部分20a及び第2部分20bの一方と、第1磁性領域11との間の抵抗の変化に対応しても良い。電気抵抗の変化は、例えば、第1磁性領域11と、導電部材20、との間の電気抵抗に対応しても良い。
【0037】
例えば、第1電流Iw1が流れたときの第1電気抵抗は、第2電流Iw2が流れたときの第2電気抵抗とは異なる。
【0038】
例えば、第1電流Iw1により、第1対向磁性領域11cの磁化11cMは、1つの向きに制御される。例えば、第2電流Iw2により、第1対向磁性領域11cの磁化11cMは、別の向きに制御される。磁化11cMの向きの制御は、磁気的な作用(例えば、スピンホール効果など)に基づく。このように、磁化11cMの向きが、異なる複数の向きに制御される。これにより、互いに異なる複数の電気抵抗が得られる。
【0039】
例えば、制御部70の制御回路75は、第1磁性領域11と電気的に接続されても良い。電気的な接続は、例えば、導電層11eを介して行われる。制御回路75と第1磁性領域11との間の経路(例えば配線70c)にスイッチSw1が設けられても良い。例えば、制御部70により、第1積層体SB1の電気抵抗が検出されても良い。例えば、制御部70により、第1磁性領域11の電位が制御され、第1積層体SB1の選択または非選択が制御されても良い。
【0040】
磁気記憶装置の製造工程において、上記のような第1積層体SB1を作製した後に、第1積層体SB1を各種の回路と接続する工程(例えば、BEOL工程:Back End of Line)が行われる。この工程において、例えば、400℃などの高温が、第1積層体SB1に加わる。このような高温により、磁気記憶装置において、所望の特性が得難くなる場合があることが分かった。例えば、400℃などの高温により、第1磁性領域11において、所望の状態が変化する(例えば破壊する)場合があることが分かった。第1磁性領域11において、所望の状態が変化すると、第1磁性領域11における反強磁性結合が不安定になり、その結果、所望の電気抵抗の変化を得ることが困難である。
【0041】
発明者の実験によると、第1磁性領域11における距離tm(図1(a))を、例えば、1.8nm以上2.2nm以下にすることで、400℃などの高温処理の後の、所望の状態の変化が抑制できることが分かった。
【0042】
以下、実験結果について説明する。実験においては、第1対向磁性領域11cが設けられない試料が作製される。試料において、基体(SiO基板)の上に、順に、Ta膜(厚さは5nm)、TaB膜(厚さは3nm)、MgO膜(厚さは1.6nm)、CoFeB膜(厚さは1.3nm)、Co膜(厚さは0.7nm)、Ru膜、Co50Fe50膜(厚さは2nm)、及び、Ta膜(厚さは3nm)が設けられる。
【0043】
MgO膜は、例えば、第1非磁性領域11nに対応する。CoFeB膜は、例えば、第1部分膜11aa(図1(a)参照)に対応する。Co膜は、第2部分膜11ab(図1(a)参照)に対応する。第1部分膜11aa及び第2部分膜11abが、第1磁性膜11aに対応する。Ru膜は、中間膜11mに対応する。Co50Fe50膜は、第2磁性膜11bに対応する。このような構成の試料において、Ru膜の厚さは、図1(a)に示す距離tmに対応する。Ru膜の厚さを変更した試料において、300℃、350℃、または、400℃の熱処理が行われる。熱処理の時間は、1時間である。熱処理後の試料において、第1磁性膜11aと第2磁性膜11bとの間の交換結合磁界Hexが評価される。
【0044】
図2(a)〜図2(c)は、実験結果を例示するグラフ図である。
図2(a)は、300℃の熱処理の試料に対応する。図2(b)は、350℃の熱処理の試料に対応する。図2(c)は、400℃の熱処理の試料に対応する。これらの図の横軸は、距離tm(nm)である。距離tmは、Ru膜の厚さに対応する。縦軸は、交換結合磁界Hex(kOe)である。
【0045】
図2(a)に示すように、熱処理の温度Tanが300℃である場合、3つのピークが観測される。距離tmが約0.4nmにおけるピーク(第1ピークp1)における交換結合磁界Hexは、非常に高い。距離tmが約0.84nmにおけるピーク(第2ピークp2)における交換結合磁界Hexは、第1ピークp1におけるそれよりも低い。距離tmが約2nmにおけるピーク(第3ピークp3)における交換結合磁界Hexは、第2ピークp2におけるそれよりも低い。
【0046】
第1ピークp1は、RKKY(Ruderman-Kittel-Kasuya-Yosida)結合の第1ピークに対応すると考えられる。第2ピークp2は、RKKY結合における第2ピークに対応すると考えられる。第3ピークp3は、RKKY結合における第3ピークに対応すると考えられる。
【0047】
図2(a)に示す三角印は、残留磁化が明確に観測されたことを示している。残留磁化は、磁性膜全体が反強磁性結合していれば生じない。三角印に対応する条件は、反強磁性結合が不十分なので、実用的ではない。このため、第1ピークp1を採用しないことが好ましい。一方、第3ピークp3における交換結合磁界Hexは、第2ピークp2における交換結合磁界Hexよりも低い。このため、300℃の熱処理においては、第2ピークp2の条件(例えば、約0.84nmの距離tm)を採用することが好ましいと考えられる。
【0048】
図2(b)に示すように、熱処理の温度Tanが350℃の場合、第1ピークp1は観測されず、第2ピークp2及び第3ピークp3が観測される。図2(b)に示す三角印のように、距離tmが0.6nm〜0.7nmにおいては、残留磁化が明確に観測され、実用的ではない。これに対して、図2(b)における第3ピークp3は、図2(a)における第3ピークp3と実質的に同じである。
【0049】
図2(c)に示すように、熱処理の温度Tanが400℃の場合も、第1ピークp1は観測されず、第2ピークp2及び第3ピークp3が観測される。図2(c)に示す三角印のように、距離tmが0.84nm〜1nmにおいては、残留磁化が明確に観測され、実用的ではない。これに対して、図2(c)における第3ピークp3は、図2(a)及び図2(b)における第3ピークp3と実質的に同じである。
【0050】
このように、第3ピークp3の特性は、熱処理の温度Tanを300℃から400℃に上昇しても実質的に変化しないことが分かった。
【0051】
このことから、距離tmを第3ピークp3の近傍に設定することで、高温での熱処理においても、安定な特性が得られることが分かった。例えば、400℃などの高温での熱処理により、種々の層に含まれる元素の拡散が生じやすくなる。例えば、中間膜11mとなるRu膜の厚さが、400℃などの高温での熱処理により不均一になる可能性がある。第3ピークp3は、Ru膜の厚さの変動の許容幅が広い。第3ピークp3の条件を採用することで、反強磁性結合の特性は、高温での熱処理により生じるRuの厚さの不均一に影響を受けなくなる。
【0052】
実施形態においては、距離tmは、例えば、1.8nm以上2.2nm以下である。これにより、高温での熱処理においても、安定な特性が得られる。実施形態によれば、高い耐熱性が得られる。安定した動作が可能な磁気記憶装置が得られる。
【0053】
実施形態において、距離tmは、例えば、2.0nm±0.2nmである。例えば、中間膜11mの厚さは、例えば、2.0nm±0.2nmである。
【0054】
図2(a)に示すように、第1ピークp1の高さは、第3ピークp3の高さよりも高い。第2ピークp2の高さは、第3ピークp3の高さよりも高い。さらに、第1ピークp1においては、距離tmの変化に対するピークの高さの変化が大きい。これらのことを考慮すると、熱処理の温度Tanを考慮しないで良い場合は、第2ピークp2の条件が採用されるのが一般的である。第3ピークp3の高さが比較的低いため、熱処理の温度Tanを考慮しない場合には、第3ピークp3の条件は採用されない。
【0055】
これに対して、発明者の実験によれば、図2(a)〜図2(c)に示すように、第3ピークp3の特性は、熱処理に対して安定である。実施形態においては、一般には採用されない第3ピークp3の条件を採用することで、高温への耐性が高い磁気記憶装置を提供できる。
【0056】
上記で説明した試料の構成(Ta膜、TaB膜、MgO膜、CoFeB膜、Co膜、Ru膜、及び、Co50Fe50膜)において、さらに、別のCoFeB膜が設けられる。この別のCoFeB膜は、TaB膜とMgO膜との間に設けられる。さらに、Co50Fe50膜の上に、IrMn膜(厚さは8nm)、Ta膜(厚さは5nm)及び、Ru膜(厚さは7nm)が設けられる。この試料において、外部磁界を変化させて、磁性層の磁化の状態を測定することで、第1磁性膜11a及び第2磁性膜11bにおける磁化の固定の程度が評価できる。例えば、距離tmが0.8nm〜1nmの条件は、第2ピークp2に対応する。この試料において、熱処理の温度Tanが300℃の場合には、2つの磁性膜の磁化は、反平行に強く固定される。熱処理の温度Tanが350℃と上昇すると、2つの磁性膜の磁化の固定は、弱くなる。熱処理の温度Tanが400℃にさらに上昇すると、磁化の固定は弱くなり、2つの磁性膜の磁化は実質的に平行になる。
【0057】
一方、距離tmが2.0nm±0.2nmの条件は、第3ピークp3に対応する。この試料においては、熱処理の温度Tanが400℃の場合も、2つの磁性膜の磁化は、反平行を維持する。
【0058】
実施形態において、図1(b)に示すように、第1磁性領域11及び第1対向磁性領域11cにおける磁化容易軸は、X−Y平面に沿っている。例えば、第1磁性膜11aの磁化容易軸、及び、第2磁性膜11bの磁化容易軸の少なくとも1つは、例えば、第1方向(Z軸方向)と交差する。例えば、第1磁性膜11aの磁化容易軸と、第1方向(Z軸方向)と、の間の角度は、例えば、60度以上である。例えば、第2磁性膜11bの磁化容易軸と、第1方向(Z軸方向)と、の間の角度は、例えば、60度以上である。
【0059】
一方、垂直磁化膜を含むMTJ素子において、400℃程度の熱処理においても、Ru膜の厚さが約0.4nmまたは約0.9nmにおいて、安定した反強磁性結合が得られることが報告されている。垂直磁化膜を含むMTJ素子において、厚いRu膜を用いる必要はない。
【0060】
これに対して、面内磁化膜を含むMTJ素子においては、400℃のような高温により、反強磁性結合が不安定になることが分かった。そして、Ru膜の厚さに対応する距離tmを長くすることで、反強磁性結合の安定性が向上することが分かった。
【0061】
垂直磁化膜と面内磁化膜との間の上記のような違いは、磁化膜の材料、及び、磁性膜の材料による結晶構造と関係している可能性がある。実施形態において、第1磁性膜11a及び第2磁性膜11bの少なくとも1つは、体心立方構造または非晶質構造を含む。
【0062】
既に説明したように、第1磁性膜11a及び第2磁性膜11bの少なくとも1つは、Fe及びCoよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。このような磁性膜において、図2(a)〜図2(c)に関して説明した温度依存性が生じやすいと考えられる。
【0063】
以下、実施形態に係る第1積層体SB1における元素のプロファイルの例について説明する。
【0064】
図3(a)〜図3(d)は、第1実施形態に係る磁気記憶装置の特性を例示するグラフ図である。
これらの図は、本実施形態に係る磁気記憶装置110における元素のプロファイルを例示している。これらの図において、横軸は、Z軸方向における位置pZ(nm)に対応する。縦軸は、元素の濃度C1(atom%)に対応する。これらの図は、エネルギー分散型X線分析(EDX:Energy dispersive X-ray spectrometry)により得られる。
【0065】
試料においては、基体(SiO基板)の上に、順に、Ta膜(厚さは5nm)、TaB膜(厚さは3nm)、CoFeB膜(厚さは1.6nm)、MgO膜(厚さは1.6nm)、CoFeB膜(厚さは1.2nm)、Co膜(厚さは0.6nm)、Ru膜(厚さは2.0nm)、Co50Fe50膜(厚さは1.8nm)、IrMn膜(厚さは8nm)、Ta膜(厚さは5nm)、及び、Ru膜(厚さは7nm)が設けられる。
【0066】
Ta膜(厚さは5nm)及びTaB膜(厚さは3nm)は、導電部材20に対応する。CoFeB膜は、第1対向磁性領域11cに対応する。MgO膜は、例えば、第1非磁性領域11nに対応する。CoFeB膜は、例えば、第1部分膜11aa(図1(a)参照)に対応する。Co膜は、第2部分膜11ab(図1(a)参照)に対応する。第1部分膜11aa及び第2部分膜11abが、第1磁性膜11aに対応する。Ru膜は、中間膜11mに対応する。Co50Fe50膜は、第2磁性膜11bに対応する。IrMn膜は、磁性部11pに対応する。Ta膜及びRu膜は、導電層11eに対応する。
【0067】
このような試料において、300℃、350℃または400℃の熱処理が行われる。熱処理の時間は、1時間である。
【0068】
図3(a)は、300℃の熱処理が行われた後の試料に対応する。図3(a)においては、Ru、Ta、Mn、Ir、Fe、Co及びMgのそれぞれの濃度C1のプロファイルが示されている。図3(b)〜図3(d)は、熱処理の温度Tanが300℃、350℃または400℃の時における、一部の元素のプロファイルを示す。図3(b)は、Mnに対応する。図3(c)は、Irに対応する。図3(d)は、Ruに対応する。
【0069】
図3(a)及び図3(d)に示すように、位置pZが約23nmの位置において、Ruのピークが観察される。この位置は、中間膜11mに対応する。図3(a)に示すように、位置pZが約25nmの位置に、Coのピークが観察される。この位置は、第1磁性膜11aに対応する。図3(a)に示すように、位置pZが約21nmの位置に、Coの別のピークが観察される。この位置は、第2磁性膜11bに対応する。
【0070】
図3(a)に示すように、位置pZが約14nm〜約20nmの範囲において、Mn及びIrの濃度C1が高い。この領域は、磁性部11pに対応する。
【0071】
図3(b)に示すように、熱処理の温度Tanが300℃のときにおいて、位置pZが約23nm〜約26nmの範囲におけるMnの濃度C1は、低い。熱処理の温度Tanが350℃のときにおいて、この範囲におけるMnの濃度C1がやや上昇する。熱処理の温度Tanが400℃のときにおいて、この範囲におけるMnの濃度C1は、明確に上昇する。
【0072】
熱処理の温度Tanが400℃のときの、位置pZが約23nm〜約26nmの範囲におけるMnの濃度C1の上昇は、磁性部11pに含まれるMnが、熱処理により第1磁性膜11aなどに移動したことによると、考えられる。
【0073】
図3(c)に示すように、熱処理の温度Tanが300℃及び350℃のときにおいて、位置pZが約23nm〜約26nmの範囲におけるIrの濃度C1は、低い。熱処理の温度Tanが400℃のときにおいて、この範囲におけるIrの濃度C1は、上昇する。
【0074】
熱処理の温度Tanが400℃のときの、位置pZが約23nm〜約26nmの範囲におけるIrの濃度C1の上昇は、磁性部11pに含まれるIrが、熱処理により第1磁性膜11aなどに移動したことによると、考えられる。
【0075】
実施形態に係る磁気記憶装置110は、400℃などのような高温で処理される。磁気記憶装置110においては、第1磁性膜11aは、Mnを含む(図3(b)参照)。磁気記憶装置110において、中間膜11mが、Mnを含んでも良い。さらに、第2磁性膜11bは、Mnを含んでも良い。
【0076】
図3(b)に示すように、第1磁性膜11a(位置pZが約24nm〜約26nmの位置)におけるMnの濃度C1は、10原子%以上である。一方、磁性部11p(位置pZが約14nmから約20nmの範囲)におけるMnの濃度は、約60原子%である。実施形態において、例えば、エネルギー分散型X線分析において、第1磁性膜11aにおけるMnの濃度C1(例えば最大値)は、磁性部11pにおけるMnの濃度C1(例えば最大値)の0.1倍以上である。
【0077】
図3(b)に示すように、中間膜11m(位置pZが約23nm〜約24nmの位置)におけるMnの濃度C1は、7原子%以上である。磁性部11pにおけるMnの濃度は、約60原子%である。実施形態において、例えば、エネルギー分散型X線分析において、中間膜11mにおけるMnの濃度C1(例えば最大値)は、磁性部11pにおけるMnの濃度C1(例えば最大値)の0.1倍以上である。
【0078】
図3(b)に示すように、第2磁性膜11b(位置pZが約22nm〜約23nmの位置)におけるMnの濃度C1は、6原子%以上である。磁性部11pにおけるMnの濃度は、約60原子%である。実施形態において、例えば、エネルギー分散型X線分析において、第2磁性膜11bにおけるMnの濃度C1(例えば最大値)は、磁性部11pにおけるMnの濃度C1(例えば最大値)の0.1倍以上である。
【0079】
実施形態において、製造工程における熱処理などにより、磁性部11pに含まれる元素(例えばMnなど)が第1磁性領域11に移動しても良い。例えば、第1磁性膜11a及び第2磁性膜11bの少なくとも一部にアモルファス領域が設けられても良い。
【0080】
このように、第1磁性領域11は、Mnを含む領域を含んでも良い。Mnを含む領域により、例えば、第1磁性領域11におけるダンピングが強化されても良い。例えば、読み出し動作において、スピントルクの反作用により第1磁性領域11の磁化11Mが揺らぐ場合がある。Mnを含む領域によりダンピングが強化されることで、磁化11Mの揺らぎが抑制される。より安定した動作が得られる。
【0081】
図4は、第1実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式的断面図である。
図4に示すように、第1磁性領域11は、第1膜11am及び第2膜11bmの少なくともいずれかを含んでも良い。第1膜11amは、第1磁性膜11aと中間膜11mとの間に設けられる。第2膜11bmは、第2磁性膜11bと中間膜11mとの間に設けられる。
【0082】
第1膜11am及び第2膜11bmの少なくともいずれかは、Ir、W、Ta、Mo及びBよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1膜11am及び第2膜11bmの少なくともいずれかは、酸素を含んでも良い。
【0083】
第2膜11bmにより、例えば、磁性部11pに含まれる元素(例えばMnなど)が中間膜11mなどに移動することが抑制されても良い。
【0084】
第1膜11amにより、例えば、磁性部11pに含まれる元素(例えばMnなど)が第1磁性膜11aなどに移動することが抑制されても良い。
【0085】
図1(b)に示すように、本実施形態において、第1方向(Z軸方向)と交差する第2方向(X軸方向)に沿う第1磁性領域11の長さを長さLxとする。長さLxは、例えば、10nm以上100nm以下である。第1磁性領域11の第3方向に沿う長さを長さLyとする。長さLyは、例えば、10nm以上200nm以下である。第3方向は、第1方向及び第2方向を含む平面と交差する。第3方向は、例えばY軸方向である。
【0086】
これらの長さは、第1積層体SB1(磁性素子)のサイズに対応する。磁性素子の微細化により、磁性素子の中央部分の静磁エネルギーによる反平行安定性が増加する。例えば、長さLxが10nm以上30nm以下であり、長さLyが10nm以上50nm以下である場合に、例えば、反平行安定性が増加することで、低い交換結合磁界Hexでも安定した動作が得やすい。
【0087】
実施形態において、長さLyは長さLxよりも長くても良い。例えば、形状異方性により、第1磁性領域11の磁化11Mが所望の向きに固定されやすくなる。
【0088】
本実施形態において、制御部70は、以下の第1動作及び第2動作を少なくとも実施しても良い。既に説明したように、制御部70は、第1部分20a及び第2部分20bと電気的に接続される(図1(b)参照)。制御部70は、第1動作において、第1部分20aから第2部分20bへの第1電流Iw1を導電部材20に供給する。制御部70は、第2動作において、第2部分20bから第1部分20aへの第2電流Iw2を導電部材20に供給する。
【0089】
既に説明したように、制御部70は、第1磁性領域11とさらに電気的に接続されても良い。制御部70は、後述する第3動作及び第4動作をさらに実施しても良い。制御部70は、上記の第1動作において、第1部分20aと第1磁性領域11との間の電位差を第1電圧V1(図1(b)参照)とする。制御部70は、上記の第2動作において、第1部分20aと第1磁性領域11との間の電位差を第1電圧V1とする。電圧は、例えば、第1部分20aの電位V0を規準にした電圧である。
【0090】
制御部70は、第3動作において、第1部分20aと第1磁性領域11との間の電位差を第2電圧V2(図1(b)参照)とし、第1電流Iw1を導電部材20に供給する。制御部70は、第4動作において、第1部分20aと第1磁性領域11との間の電位差を第2電圧V2とし、第2電流Iw2を導電部材20に供給する。
【0091】
第1電圧V1は、第2電圧V2とは異なる。第1動作後における第1磁性領域11と第1部分20aとの間の第1電気抵抗は、第2動作後における第1磁性領域11と第1部分20aとの間の第2電気抵抗とは異なる。第1電圧V1は、例えば、選択電位である。
【0092】
例えば、第3動作後における第1磁性領域11と第1部分20aとの間の第3電気抵抗は、第3動作の前の電気抵抗と実質的に同じである。例えば、第4動作後における第1磁性領域11と第1部分20aとの間の第4電気抵抗は、第4動作の前の電気抵抗と実質的に同じである。第2電圧V2は、例えば、非選択電位である。
【0093】
例えば、第1電気抵抗と第2電気抵抗との差の絶対値は、第3動作後における第1磁性領域11と第1部分20aとの間の第3電気抵抗と、第4動作後における第1磁性領域11と第1部分20aとの間の第4電気抵抗と、の差の絶対値よりも大きい。
【0094】
第1動作及び第2動作により、情報の書き換え(例えば書き込み)が行われる。第3動作及び第4動作により、情報の書き換え(例えば書き込み)が行われない。
【0095】
(第2実施形態)
以下の説明において、第1実施形態と同様の部分については、適宜省略する。
図5は、第2実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式的斜視図である。
図5に示すように、磁気記憶装置120は、導電部材20、第1磁性領域11、第1対向磁性領域11c、及び、第1非磁性領域11nを含む。磁気記憶装置120は、制御部70をさらに含んでも良い。
【0096】
導電部材20は、第1部分20a、第2部分20b及び第3部分20cを含む。第3部分20cは、第1部分20aと第2部分20bとの間に設けられる。第1対向磁性領域11cは、第1方向において、第3部分20cと第1磁性領域11との間に設けられる。第1方向は、第2方向と交差する。第2方向は、第1部分20aから第2部分20bに向かう方向である。この例では、第2方向は、X軸方向である。
【0097】
第3部分20cは、第1導電領域21、第2導電領域22及び第3導電領域23を含む。第1対向磁性領域11cは、Z軸方向において、第1非磁性領域11nと、第3導電領域23との間に設けられる。第2導電領域22は、Z軸方向において、第1対向磁性領域11cと、第3導電領域23との間に設けられる。第1導電領域21は、Z軸方向において、第2導電領域22と第3導電領域23との間に設けられる。
【0098】
第1導電領域21は、第1金属を含む。第1金属は、例えば、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Bi、Cu、Ag及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0099】
第2導電領域22は、第2金属及びホウ素を含む。1つの例において、第2金属は、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Bi、Cu、Ag及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1導電領域21は、ホウ素を含まない。または、第1導電領域21におけるホウ素の濃度(第1濃度)は、第2導電領域22におけるホウ素の濃度(第2濃度)よりも低い。第2金属は、第1金属と同じでも良い。
【0100】
第3導電領域23は、第3金属及びホウ素を含む。1つの例において、第3金属は、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Bi、Cu、Ag及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1導電領域21は、ホウ素を含まない。または、第1導電領域21におけるホウ素の濃度(第1濃度)は、第3導電領域23におけるホウ素の濃度(第3濃度)よりも低い。第3金属は、第1金属と同じでも良い。第3金属は、第2金属と同じでも良い。
【0101】
このような導電部材20により、以下に説明するように、良好な書き込み特性が得られる。
【0102】
以下に説明する実験において、第1〜第6試料が作製される。第1〜第6試料において、基体の上に、導電部材20、第1対向磁性領域11c、第1非磁性領域11n及び第1磁性領域11がこの順で設けられる。第1非磁性領域11nは、MgO膜(厚さは、1.6nm)である。第1磁性領域11は、第1磁性膜11a、中間膜11m、及び、第2磁性膜11bを含む。第1磁性膜11aは、Co40Fe4020膜(厚さは、1.8nm)である。中間膜11mは、Ru膜(厚さは、0.8nm)である。第2磁性膜11bは、Co50Fe50膜(厚さは、1.8nm)である。
【0103】
第1〜第4試料においては、導電部材20は、第1〜第3導電領域21〜23が設けられる。
【0104】
第1試料においては、第1対向磁性領域11cは、Co40Fe4020膜(厚さは、1.9nm)である。第2導電領域22は、Hf5050膜(厚さは、1nm)である。第1導電領域21は、W膜(厚さは、3nm)である。第3導電領域23は、Hf5050膜(厚さは、2nm)である。
【0105】
第2試料においては、第1対向磁性領域11cは、Co40Fe4020膜(厚さは、1.85nm)である。第2導電領域22は、Hf5050膜(厚さは、1nm)である。第1導電領域21は、W膜(厚さは、2nm)である。第3導電領域23は、Hf5050膜(厚さは、2nm)である。
【0106】
第3試料においては、第1対向磁性領域11cは、Co40Fe4020膜(厚さは、1.8nm)である。第2導電領域22は、Hf5050膜(厚さは、1nm)である。第1導電領域21は、W膜(厚さは、3nm)である。第3導電領域23は、Hf5050膜(厚さは、1nm)である。
【0107】
第4試料においては、第1対向磁性領域11cは、Co40Fe4020膜(厚さは、1.8nm)である。第2導電領域22は、Hf5050膜(厚さは、1nm)である。第1導電領域21は、W8020膜(厚さは、2nm)である。第3導電領域23は、Hf5050膜(厚さは、1nm)である。
【0108】
第5試料においては、導電部材20は、第1導電領域21及び第導電領域22を含み、第3導電領域23が設けられない。第5試料においては、第1対向磁性領域11cは、Co40Fe4020膜(厚さは、1.5nm)である。第2導電領域22は、Ta5050膜(厚さは3nm)である。第1導電領域21は、Ta膜(厚さは1nm)である。
【0109】
第6試料においては、導電部材20は、ホウ素を含まない。第6試料においては、導電部材20は、第1導電領域21を含み、第2導電領域22及び第3導電領域23を含まない。第6試料においては、第1対向磁性領域11cは、Co40Fe4020膜(厚さは、1.25nm)である。導電部材20(第1導電領域21)は、Ta膜(厚さは、5nm)である。
【0110】
図6は、磁気記憶装置の特性を例示するグラフ図である。
図6は、磁気記憶装置における書き込み効率を例示している。図6の横軸は、第1パラメータP1(×10−4、任意単位)である。第1パラメータP1は、第1対向磁性領域11cの飽和磁化と厚さとの積(Mst)と、第1対向磁性領域11cにおける実効的な垂直異方性磁界Hk_effと、の積の1/2である。第1パラメータP1は、第1対向磁性層11cにおける磁化反転エネルギーに相当する。図6の縦軸は、書き込み効率に関する第2パラメータP2(×10−6、任意単位)である。第2パラメータP2は、「Isw/Δ」と表記される。第2パラメータP2は、単位リテンションエネルギーΔ当たりの第1対向磁性領域11cの磁化11cMの向きの変化のため反転電流Iswに対応する。図6において、同じ第1パラメータP1(横軸)の値について、第2パラメータP2(縦軸)の値が小さいときに、書き込みの効率は、高い。図6には、第1〜第6試料SPL1〜SPL6の特性が示されている。第1パラメータP1と第2パラメータP2との関係は、図6のグラフの原点を通る。図6において、第1パラメータP1に対する第2パラメータP2の傾きが低いときに、書き込みの効率は、高い。
【0111】
図6に示すように、第6試料SPL6においては、書き込み効率が低い。第1〜第試料SPL1〜SPL5においては、書き込み効率が高い。
【0112】
このように、導電部材20がホウ素を含むことで、高い書き込み効率が得られる。
【0113】
これらの試料に関して、複数の磁性素子(第1積層体SB1)が形成され、複数の磁性素子における電気抵抗が評価される。例えば、複数の磁性素子となる積層膜が形成され、この積層膜が加工されて、複数の磁性素子が得られる。この加工の際に、導電部材20の表面部分(例えば第2導電領域22)の一部も除去される。導電部材20の表面部分(第2導電領域22)に含まれた第2金属が、複数の磁性素子の側面に付着する場合がある。付着物は、第2金属を含む化合物である。この付着物(化合物)の絶縁性が高い場合は、第1積層体SB1において、目的とする電気抵抗が得られる。一方、この付着物の絶縁性が低い場合は、この付着物を介して、例えば、導電部材20と第1磁性領域11との間の電気抵抗が異常に低くなる。電気抵抗の異常は、例えば、電気的なショートとなる。付着物の特性は、製造工程における歩留まりに影響を与える場合がある。
【0114】
上記の試料について、電気抵抗の異常を評価したところ、第6試料SPL6においては、電気抵抗の異常の発生率が高い。第5試料SPL5における電気抵抗の異常の発生率は、第6試料SPL6における電気抵抗の異常の発生率よりも低いことが分かった。導電部材20がホウ素を含むことで、例えば、第1積層体SB1の側面への付着物の絶縁性が高くなると考えられる。
【0115】
さらに、第1〜第4試料SPL1〜SPL4における電気抵抗の異常の発生率は、第5試料SPL5における電気抵抗の異常の発生率よりも低いことが分かった。例えば、第2導電領域22がHfを含む場合に、第1積層体SB1の側面への付着物の絶縁性がより高くなると考えられる。
【0116】
第1〜第4試料SPL1〜SPL4においては、第1導電領域21及び第2導電領域22に加えて、ホウ素を含む第3導電領域23が設けられる。このような第3導電領域23により、第3導電領域23の平坦性が向上すると、考えられる。平坦性の良い第3導電領域23の上に、第1導電領域21及び第2導電領域22が設けられることで、これらの領域における平坦性も向上する。このような平坦性の良い導電部材20の上に第1対向磁性領域11cが設けられることで、第1対向磁性領域11cにおける平坦性が向上する。平坦性の良い第1対向磁性領域11cの上に第1非磁性領域11nが設けられることで、結晶品質の高い第1非磁性領域11nが得られる。これにより、より高い磁気特性(例えば、MR比など)が得られる。これにより、より安定した記憶動作が可能になる。
【0117】
本実施形態におい、第1対向磁性層11cの少なくとも一部におけるホウ素の濃度は、第2濃度(第2導電領域22におけるホウ素の濃度)よりも高くても良い。第1対向磁性層11cにおけるホウ素の濃度が高いことで、例えば、第1対向磁性層11cにおける非結晶性の程度が高くなり、高い書き込み効率が得易くなる。
【0118】
図7は、第2実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式的断面図である。
図7に示すように、導電部材20は、基体20sに設けられても良い。例えば、基体20sの上に、導電部材20の第1導電領域21が設けられても良い。第1導電領域21の上に、第2導電領域22が設けられても良い。第3導電領域23は、基体20sと第1導電領域21との間に設けられる。
【0119】
図7に示すように、磁気記憶装置120は、第1化合物領域41aをさらに含んでも良い。第1化合物領域41aは、例えば、第2導電領域22に含まれる第2金属(例えばHfなど)と、酸素及び窒素よりなる群から選択された少なくとも1つと、を含む。第1化合物領域41aは、例えば、Hf及び酸素を含む。第1化合物領域41aは、第2金属及び酸素を含む化合物を含む。第1化合物領域41aは、さらにホウ素(B)を含んでも良い。
【0120】
第1非磁性領域11nから第1化合物領域41aへの方向は、第2方向(例えば、X軸方向)に沿う。この例では、第1対向磁性領域11cから第1化合物領域41aへの方向は、第2方向(例えば、X軸方向)に沿う。第1磁性領域11から第1化合物領域41aへの方向は、第2方向(例えば、X軸方向)に沿う。
【0121】
磁気記憶装置120は、第2化合物領域41bをさらに含んでも良い。第2化合物領域41bは、第2金属と、酸素及び窒素よりなる群から選択された少なくとも1つと、を含む。第2化合物領域41bは、例えば、Hf及び酸素を含む。第2化合物領域41bは、第2金属及び酸素を含む化合物を含む。第2化合物領域41bは、さらにホウ素(B)を含んでも良い。
【0122】
第1非磁性領域11nは、第2方向(例えばX軸方向)において、第1化合物領域41aと第2化合物領域41bとの間に設けられる。第1対向磁性領域11cは、第2方向(例えばX軸方向)において、第1化合物領域41aと第2化合物領域41bとの間に設けられても良い。第1磁性領域11は、第2方向(例えばX軸方向)において、第1化合物領域41aと第2化合物領域41bとの間に設けられてもよい。
【0123】
磁気記憶装置120は、例えば、以下のようにして形成される。例えば、基体20sの上に、導電部材20が設けられる。導電部材20の上に、第1対向磁性領域11cとなる膜、第1非磁性領域11nとなる膜、及び、第1磁性領域11となる膜が形成される。この後、これらの膜が加工される。この加工により、第1積層体SB1が得られる。
【0124】
この加工により、導電部材20の表面が露出する。この際、導電部材20の第2導電領域22に含まれる元素の一部が、第1積層体SB1の側面に付着する場合がある。この付着物は、第2導電領域22に含まれる第2金属(例えばHf)の化合物を含む。化合物は、酸化物、窒化物、または酸窒化物を含む。この化合物は、第2金属を含む。このような付着物が、第1化合物領域41a及び第2化合物領域41bなどに対応する。
【0125】
上記の第1〜第4試料SPL1〜SPL4においては、この付着物が安定した絶縁物である。これにより、第1積層体SB1において、適切な動作が維持される。
【0126】
磁気記憶装置120において、第1実施形態に関して説明した構成が適用されても良い。例えば、第1磁性領域11において、中間膜11mがRuを含み、距離tmが1.8nm以上2.2nm以下でも良い。
【0127】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式的斜視図である。
図8に示すように、本実施形態に係る磁気記憶装置210においては、複数の積層体(第1積層体SB1、第2積層体SB2及び積層体SBxなど)が設けられる。そして、複数のスイッチ(スイッチSw1、スイッチSw2及びスイッチSwxなど)が設けられる。磁気記憶装置210におけるこれ以外の構成は、磁気記憶装置110または120と同様である。
【0128】
複数の積層体は、導電部材20に沿って並ぶ。例えば、第2積層体SB2は、第2磁性領域12、第2対向磁性領域12c及び第2非磁性領域12nを含む。第2磁性領域12は、導電部材20の一部と、第1方向(Z軸方向)において離れる。第2対向磁性領域12cは、導電部材20のその一部と、第2磁性領域12と、の間に設けられる。第2非磁性領域12nは、第2磁性領域12と第2対向磁性領域12cとの間に設けられる。
【0129】
例えば、第2磁性領域12は、第2方向(例えばX軸方向)において、第1磁性領域11から離れる。第2対向磁性領域12cは、第2方向において、第1対向磁性領域11cから離れる。第2非磁性領域12nは、第2方向において、第1非磁性領域11nから離れる。
【0130】
例えば、積層体SBxは、磁性領域11x、対向磁性領域11cx及び非磁性領域11nxを含む。磁性領域11xは、導電部材20の別の一部と、第1方向(Z軸方向)において離れる。対向磁性領域11cxは、導電部材20のその別の一部と、磁性領域11xと、の間に設けられる。非磁性領域11nxは、磁性領域11xと対向磁性領域11cxとの間に設けられる。
【0131】
例えば、第2磁性領域12の材料及び構成は、第1磁性領域11の材料及び構成と同じである。例えば、第2対向磁性領域12cの材料及び構成は、第1対向磁性領域11cの材料及び構成と同じである。例えば、第2非磁性領域12nの材料及び構成は、第1非磁性領域11nの材料及び構成と同じである。
【0132】
複数の積層体は、複数のメモリセルMCとして機能する。
【0133】
スイッチSw1は、第1磁性領域11と電気的に接続される。スイッチSw2は、第2磁性領域12と電気的に接続される。スイッチSwxは、磁性領域11xと電気的に接続される。これらのスイッチは、制御部70の制御回路75と電気的に接続される。これらのスイッチにより、複数の積層体のいずれかが選択される。
【0134】
磁気記憶装置210の例においては、第2導電領域22は、第2方向(例えば、X軸方向)に沿って延びる。複数の積層体の間に対応する領域において、第2導電領域22が設けられなくても良い。
【0135】
(第4実施形態)
図9(a)〜図9(c)は、第4実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式的斜視図である。
図9(a)に示すように、本実施形態に係る磁気記憶装置220は、導電部材20、第1積層体SB1及び第2積層体SB2を含む。既に説明したように、第1積層体SB1は、第1磁性領域11、第1対向磁性領域11c及び第1非磁性領域11nを含む。
【0136】
第2積層体SB2は、第2磁性領域12、第2対向磁性領域12c及び第2非磁性領域12nを含む。
【0137】
導電部材20は、第1部分20a、第2部分20b及び第3部分20cに加えて、第4部分20d及び第5部分20eをさらに含む。第2部分20bは、第2方向(例えば、X軸方向)において、第3部分20cと第4部分20dとの間にある。第5部分20eは、第2方向(例えば、X軸方向)において、第2部分20bと第4部分20dとの間にある。第2対向磁性領域12cは、第1方向(Z軸方向)において、第5部分20eと第2磁性領域12との間に設けられる。
【0138】
第2積層体SB2においても、導電部材20を流れる電流により、第2対向磁性領域12cの磁化12cMの向きが制御される。一方、第2磁性領域12の磁化12Mの向きは、実質的に固定される。第2積層体SB2の構成は、第1積層体SB1の構成と同様で良い。
【0139】
この例では、第1部分20aに第1端子T1が電気的に接続される。第2部分20bに第3端子T3が電気的に接続される。第4部分20dに第2端子T2が電気的に接続される。第1磁性領域11に第4端子T4が電気的に接続される。第2磁性領域12に第5端子T5が電気的に接続される。
【0140】
制御部70(図1(b)参照)は、第1〜第5端子T1〜T5と電気的に接続される。
【0141】
図9(a)及び図9(b)に示すように、制御部70は、例えば、第1動作OP1及び第2動作OP2を実施する。
【0142】
図9(a)に示すように、第1動作OP1において、制御部70は、第1端子T1から第3端子T3に向けた第1電流I1、及び、第2端子T2から第3端子T3に向けた第2電流I2を供給する。
【0143】
図9(b)に示すように、第2動作OP2において、制御部70は、第3端子T3から第1端子T1に向けた第3電流I3、及び、第3端子T3から第2端子T2に向けた第4電流I4を供給する。
【0144】
第1動作OP1により、2つの磁性素子(2つの積層体)の組みにおいて、1つの抵抗状態が得られる。第2動作OP2により、2つの磁性素子の組みにおいて、別の1つの抵抗状態が得られる。第1動作OP1は、例えば、「1」及び「0」の一方の書き込み動作に対応する。第2動作OP2は、例えば、「1」及び「0」の他方の書き込み動作に対応する。
【0145】
図9(c)に示すように、第3動作OP3において、制御部70は、第4端子T4と第5端子T5との間(第1磁性領域11と第2磁性領域12との間)に電圧を印加し、第3端子T3(第2部分20b)の電位を検出する。複数の抵抗状態において、第3端子T3(第2部分20b)の電位が異なる。第3端子T3(第2部分20b)の電位を検出することで、複数の抵抗状態(複数の記憶状態)が検出できる。
【0146】
定電流を積層体(磁気抵抗素子)に供給して磁気抵抗素子の2つの磁性領域の間の電圧(電位差)を測定する場合に比べて、上記の読み出し動作OP3においては、例えば、読み取り時の消費エネルギーを低減できる。上記の読み出し動作OP3においては、例えば、高速読み出しを行なうことができる。
【0147】
(第5実施形態)
図10は、第5実施形態に係る磁気記憶装置を示す模式図である。
図10に示すように、本実施形態に係る磁気記憶装置310においては、メモリセルアレイMCA、複数の第1配線(例えば、ワード線WL1及びWL2など)、複数の第2配線(例えば、ビット線BL1、BL2及びBL3など)、及び、制御部70が設けられる。複数の第1配線は、1つの方向に延びる。複数の第2配線は、別の1つの方向に延びる。制御部70は、ワード線選択回路70WS、第1ビット線選択回路70BSa、第2ビット線選択回路70BSbと、第1書込み回路70Wa、第2書き込み回路70Wb、第1読出し回路70Ra、及び、第2読出し回路70Rbを含む。メモリセルアレイMCAにおいて、複数のメモリセルMCが、アレイ状に並ぶ。
【0148】
例えば、複数のメモリセルMCの1つに対応して、スイッチSw1及びスイッチSwS1が設けられる。これらのスイッチは、複数のメモリセルMCの1つに含まれる、と見なしても良い。これらのスイッチは、制御部70に含まれる、と見なしても良い。これらのスイッチは、例えば、トランジスタである。複数のメモリセルMCの1つは、例えば、積層体(例えば第1積層体SB1)を含む。
【0149】
図8に関して説明したように、1つの導電部材20に、複数の積層体(第1積層体SB1、第2積層体SB2及び積層体SBxなど)が設けられても良い。そして、複数の積層体に、複数のスイッチ(スイッチSw1、スイッチSw2及びスイッチSwxなど)がそれぞれ設けられても良い。図10においては、図を見やすくするために、1つの導電部材20に1つに対応して、1つの積層体(積層体SB1など)と、1つのスイッチ(スイッチSw1など)と、が描かれている。
【0150】
図10に示すように、第1積層体SB1の一端は、導電部材20に接続される。第1積層体SB1の他端は、スイッチSw1のソース及びドレインの一方に接続される。スイッチSw1のソース及びドレインの他方は、ビット線BL1に接続される。スイッチSw1のゲートは、ワード線WL1に接続される。導電部材20の一端(例えば第1部分20a)は、スイッチSwS1のソース及びドレインの一方に接続される。導電部材20の他端(例えば第2部分20b)は、ビット線BL3に接続される。スイッチSwS1のソース及びドレインの他方は、ビット線BL2に接続される。スイッチSwS1のゲートは、ワード線WL2に接続される。
【0151】
複数のメモリセルMCの他の1つにおいて、積層体SBn、スイッチSwn及びスイッチSwSnが設けられる。
【0152】
メモリセルMCへの情報の書込み動作の例について説明する。
書込みを行なう1つのメモリセルMC(選択メモリセル)のスイッチSwS1がオン状態とされる。例えば、オン状態は、この1つのスイッチSwS1のゲートが接続されたワード線WL2が、ハイレベルの電位に設定されて形成される。電位の設定は、ワード線選択回路70WSにより行われる。上記の1つのメモリセルMC(選択メモリセル)を含む列の他のメモリセルMC(非選択メモリセル)におけるスイッチSwS1もオン状態となる。メモリセルMC(選択メモリセル)内のスイッチSwS1のゲートに接続されるワード線WL1、及び、他の列に対応するワード線WL1及びWL2は、ロウレベルの電位に設定される。
【0153】
書込みを行なうメモリセルMC(選択セル)に接続されたビット線BL2及びBL3が、選択される。選択は、第1ビット線選択回路70BSa及び第2ビット線選択回路70BSbにより行われる。この選択されたビット線BL2及びBL3に、書込み電流が供給される。書き込み電流の供給は、第1書込み回路70Wa及び第2書き込み回路70Wbによって行われる。書き込み電流は、第1ビット線選択回路70BSa及び第2ビット線選択回路70BSbの一方から、第1ビット線選択回路70BSa及び第2ビット線選択回路70BSbの他方に向けて流れる。書込み電流によって、MTJ素子(第1積層体SB1など)の記憶層(第2磁性領域12など)の磁化方向が変化可能になる。第1ビット線選択回路70BSa及び第2ビット線選択回路70BSbの他方から、第1ビット線選択回路70BSa及び第2ビット線選択回路70BSbの一方に向けて書込み電流が流れると、MTJ素子の記憶層の磁化方向が、上記とは反対方向に変化可能となる。このようにして、書込みが行われる。
【0154】
以下、メモリセルMCからの情報の読出し動作の例について説明する。
読出しを行なうメモリセルMC(選択セル)に接続されたワード線WL1がハイレベルの電位に設定される。上記のメモリセルMC(選択セル)内のスイッチSw1がオン状態にされる。このとき、上記のメモリセルMC(選択セル)を含む列の他のメモリセルMC(非選択セル)におけるスイッチSw1もオン状態となる。上記のメモリセルMC(選択セル)内のスイッチSwS1のゲートに接続されるワード線WL2、及び、他の列に対応するワード線WL1及びWL2は、ロウレベルの電位に設定される。
【0155】
読出しを行なうメモリセルMC(選択セル)に接続されたビット線BL1及びBL3が、選択される。選択は、第1ビット線選択回路70BSa及び第2ビット線選択回路70BSbにより行われる。この選択されたビット線BL1及びビット線BL3に、読出し電流が供給される。読み出し電流の供給は、第1読出し回路70Ra及び第2読み出し回路70Rbにより行われる。読み出し電流は、第1ビット線選択回路70BSa及び第2ビット線選択回路70BSbの一方から、第1ビット線選択回路70BSa及び第2ビット線選択回路70BSbの他方に向けて流れる。例えば、上記の選択されたビット線BL1及びBL3の間の電圧が、第1読出し回路70Ra及び第2読み出し回路70Rbによって、検出される。例えば、MTJ素子の、記憶層(第2磁性領域12)の磁化と、参照層(第1磁性領域11)の磁化と、の間の差が検出される。差は、磁化の向きが互いに平行状態(同じ向き)か、または、互いに反平行状態(逆向き)か、を含む。このようにして、読出し動作が行われる。
【0156】
実施形態は、例えば、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
(構成1)
第1磁性領域と、
第1対向磁性領域と、
前記第1磁性領域と前記第1対向磁性領域との間に設けられた第1非磁性領域と、
を備え、
前記第1磁性領域は、第1磁性膜と、第2磁性膜と、中間膜と、を含み、前記第1磁性膜は、前記第2磁性膜と前記第1非磁性領域との間に設けられ、前記中間膜は、前記第1磁性膜と前記第2磁性膜との間に設けられ、Ruを含み、
前記第1磁性膜と前記第2磁性膜との間の前記第1対向磁性領域から前記第1磁性領域への第1方向に沿う距離は、1.8nm以上2.2nm以下である、磁気記憶装置。
【0157】
(構成2)
前記第1磁性膜は、前記第2磁性膜と反強磁性結合している、構成1記載の磁気記憶装置。
【0158】
(構成3)
前記第1磁性膜の磁化容易軸、及び、前記第2磁性膜の磁化容易軸の少なくとも1つは、前記第1方向と交差した、構成1または2に記載の磁気記憶装置。
【0159】
(構成4)
前記第1磁性膜及び前記第2磁性膜の少なくとも1つは、Fe及びCoよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1〜3のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0160】
(構成5)
前記少なくとも1つは、Bをさらに含む、構成4記載の磁気記憶装置。
【0161】
(構成6)
前記第1磁性膜及び前記第2磁性膜の少なくとも1つは、体心立方構造または非晶質構造を含む、構成1〜3のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0162】
(構成7)
前記第1磁性膜は、Mnを含む、構成1〜6のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0163】
(構成8)
前記中間膜は、Mnを含む、構成1〜7のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0164】
(構成9)
前記第2磁性膜は、Mnを含む、構成1〜8のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0165】
(構成10)
磁性部をさらに含み、
前記中間膜と前記磁性部との間に前記第2磁性膜が設けられ、
前記磁性部は、Ir及びPtよりなる群から選択された少なくとも1つと、Mnと、を含む、構成1〜9のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0166】
(構成11)
エネルギー分散型X線分析において、前記第2磁性膜におけるMnの濃度は、前記磁性部におけるMnの濃度の0.1倍以上である、構成10記載の磁気記憶装置。
【0167】
(構成12)
エネルギー分散型X線分析において、前記第1中間膜におけるMnの濃度は、前記磁性部におけるMnの濃度の0.1倍以上である、構成10記載の磁気記憶装置。
【0168】
(構成13)
前記第1方向と交差する第2方向に沿う前記第1磁性領域の長さは、10nm以上30nm以下である、構成1〜12のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0169】
(構成14)
前記第1方向及び前記第2方向を含む平面と交差する第3方向に沿う前記第1磁性領域の長さは、10nm以上50nm以下である、構成13記載の磁気記憶装置。
【0170】
(構成13)
前記第1対向磁性領域は、Fe及びCoよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1〜12のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0171】
(構成14)
前記第1対向磁性領域は、Bをさらに含む、構成13記載の磁気記憶装置。
【0172】
(構成15)
導電部材をさらに備え、
前記導電部材は、第1部分と、第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分と、を含み、
前記第1部分から前記第2部分への第2方向は、前記第1方向と交差し、
前記第1対向磁性領域は、前記第1方向において、前記第3部分と前記第1磁性領域との間に位置した、構成1〜14のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0173】
(構成16)
制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1部分及び前記第2部分と電気的に接続され、
前記制御部は、
前記第1部分から前記第2部分への第1電流を前記導電部材に供給する第1動作と、
前記第2部分から前記第1部分への第2電流を前記導電部材に供給する第2動作と、
を少なくとも実施する、構成15記載の磁気記憶装置。
【0174】
(構成17)
前記制御部は、
前記第1磁性領域とさらに電気的に接続され、
前記制御部は、少なくとも第3動作及び第4動作をさらに実施し、
前記制御部は、
前記第1動作において、前記第1部分と前記第1磁性領域との間の電位差を第1電圧とし、
前記第2動作において、前記第1部分と前記第1磁性領域との間の電位差を前記第1電圧とし、
前記第3動作において、前記第1部分と前記第1磁性領域との間の電位差を第2電圧とし、前記第1電流を前記導電部材に供給し、
前記第4動作において、前記第1部分と前記第1磁性領域との間の電位差を前記第2電圧とし、前記第2電流を前記導電部材に供給し、
前記第1電圧は、前記第2電圧とは異なり、
前記第1動作後における前記第1磁性領域と前記第1部分との間の第1電気抵抗は、前記第2動作後における前記第1磁性領域と前記第1部分との間の第2電気抵抗とは異なり、
前記第1電気抵抗と前記第2電気抵抗との差の絶対値は、前記第3動作後における前記第1磁性領域と前記第1部分との間の第3電気抵抗と、前記第4動作後における前記第1磁性領域と前記第1部分との間の第4電気抵抗と、の差の絶対値よりも大きい、構成16記載の磁気記憶装置。
【0175】
(構成18)
第2磁性領域と、
第2対向磁性領域と、
第2非磁性領域と、
制御部と、
をさらに備え、
前記導電部材は、第4部分及び第5部分をさらに含み、前記第2部分は、前記第2方向において前記第3部分と前記第4部分との間にあり、前記第5部分は、前記第2方向において前記第2部分と前記第4部分との間にあり、
前記第2対向磁性領域は、前記第1方向において前記第5部分と前記第2磁性領域との間に設けられ、
前記第2非磁性領域は、前記第2磁性領域と前記第2対向磁性領域との間に設けられ、
前記制御部は、前記第1部分、前記第2部分、前記第4部分、前記第1磁性領域、及び、前記第2磁性領域とさらに電気的に接続され、
第1動作において、前記制御部は、前記第1部分から前記第2部分に向けた第1電流、及び、前記第4部分から前記第2部分に向けた第2電流を供給し、
第2動作において、前記制御部は、前記第2部分から前記第1部分に向けた第3電流、及び、前記第2部分から前記第4部分に向けた第4電流を供給する、構成15記載の磁気記憶装置。
【0176】
(構成19)
第3動作において、前記制御部は、前記第1磁性領域と前記第2磁性領域との間に電圧を印加し、前記第2部分の電位を検出する、構成18記載の磁気記憶装置。
【0177】
(構成20)
前記第1磁性領域は、350℃よりも高い温度で熱処理された、構成1記載の磁気記憶装置。
【0178】
(構成21)
第1部分と、第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分と、を含む導電部材と、
第1磁性層と、
前記第1部分から前記第2部分への第2方向と交差する第1方向において前記第3部分と前記第1磁性層との間に設けられた第1対向磁性層と、
前記第1磁性層と前記第1対向磁性層との間に設けられた第1非磁性層と、
を備え、
前記第3部分は、第1導電領域、第2導電領域及び第3導電領域を含み、前記第2導電領域は、前記第1方向において前記第3導電領域と前記第1対向磁性層との間にあり、前記第1導電領域は、前記第1方向において前記第2導電領域と前記第3導電領域との間にあり、
前記第1導電領域におけるホウ素の第1濃度は、前記第2導電領域におけるホウ素の第2濃度以下であり、前記第3導電領域におけるホウ素の第3濃度よりも低い、磁気記憶装置。
【0179】
(構成22)
前記第1対向磁性層の少なくとも一部におけるホウ素の濃度は、前記第2濃度よりも高い、構成21記載の磁気記憶装置。
【0180】
(構成23)
第1化合物領域をさらに備え、
前記第2導電領域は、第2金属を含み、
前記第1化合物領域は、前記第2金属と、酸素及び窒素よりなる群から選択された少なくとも1つと、を含み、
前記第1非磁性層から前記第1化合物領域への方向は、前記第2方向に沿う、構成21または22に記載の磁気記憶装置。
【0181】
(構成24)
前記第2金属と、酸素及び窒素よりなる群から選択された少なくとも1つと、を含む第2化合物領域をさらに備え、
前記第1非磁性層は、前記第2方向において、前記第1化合物領域と前記第2化合物領域との間に設けられた、構成23記載の磁気記憶装置。
【0182】
(構成25)
前記第2金属は、Hfを含む、構成23または24に記載の磁気記憶装置。
【0183】
(構成26)
前記第1導電領域は、第1金属を含み、
前記第1金属は、例えば、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Bi、Cu、Ag及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成21〜25のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0184】
(構成27)
前記第2導電領域は、第2金属及びホウ素を含み、
前記第2金属は、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Bi、Cu、Ag及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成21または22または26に記載の磁気記憶装置。
【0185】
(構成28)
前記第3導電領域は、第3金属及びホウ素を含み、
前記第3金属は、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Bi、Cu、Ag及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成21または22または26または27に記載の磁気記憶装置。
【0186】
(構成29)
制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1部分及び前記第2部分と電気的に接続され、
前記制御部は、
前記第1部分から前記第2部分への第1電流を前記導電部材に供給する第1動作と、
前記第2部分から前記第1部分への第2電流を前記導電部材に供給する第2動作と、
を少なくとも実施する、構成21〜28のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0187】
(構成30)
前記制御部は、
前記第1磁性領域とさらに電気的に接続され、
前記制御部は、少なくとも第3動作及び第4動作をさらに実施し、
前記制御部は、
前記第1動作において、前記第1部分と前記第1磁性領域との間の電位差を第1電圧とし、
前記第2動作において、前記第1部分と前記第1磁性領域との間の電位差を前記第1電圧とし、
前記第3動作において、前記第1部分と前記第1磁性領域との間の電位差を第2電圧とし、前記第1電流を前記導電部材に供給し、
前記第4動作において、前記第1部分と前記第1磁性領域との間の電位差を前記第2電圧とし、前記第2電流を前記導電部材に供給し、
前記第1電圧は、前記第2電圧とは異なり、
前記第1動作後における前記第1磁性領域と前記第1部分との間の第1電気抵抗は、前記第2動作後における前記第1磁性領域と前記第1部分との間の第2電気抵抗とは異なり、
前記第1電気抵抗と前記第2電気抵抗との差の絶対値は、前記第3動作後における前記第1磁性領域と前記第1部分との間の第3電気抵抗と、前記第4動作後における前記第1磁性領域と前記第1部分との間の第4電気抵抗と、の差の絶対値よりも大きい、構成29記載の磁気記憶装置。
【0188】
(構成31)
第2磁性領域と、
第2対向磁性領域と、
第2非磁性領域と、
制御部と、
をさらに備え、
前記導電部材は、第4部分及び第5部分をさらに含み、前記第2部分は、前記第2方向において前記第3部分と前記第4部分との間にあり、前記第5部分は、前記第2方向において前記第2部分と前記第4部分との間にあり、
前記第2対向磁性領域は、前記第1方向において前記第5部分と前記第2磁性領域との間に設けられ、
前記第2非磁性領域は、前記第2磁性領域と前記第2対向磁性領域との間に設けられ、
前記制御部は、前記第1部分、前記第2部分、前記第4部分、前記第1磁性領域、及び、前記第2磁性領域とさらに電気的に接続され、
第1動作において、前記制御部は、前記第1部分から前記第2部分に向けた第1電流、及び、前記第4部分から前記第2部分に向けた第2電流を供給し、
第2動作において、前記制御部は、前記第2部分から前記第1部分に向けた第3電流、及び、前記第2部分から前記第4部分に向けた第4電流を供給する、構成21〜28のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0189】
(構成32)
第3動作において、前記制御部は、前記第1磁性領域と前記第2磁性領域との間に電圧を印加し、前記第2部分の電位を検出する、構成31記載の磁気記憶装置。
【0190】
実施形態によれば、安定した動作が可能な磁気記憶装置が提供できる。
【0191】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0192】
以上、例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの例に限定されるものではない。例えば、磁気記憶装置に含まれる磁性領域、非磁性領域、導電部材及び制御部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0193】
各例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0194】
本発明の実施の形態として上述した磁気記憶装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての磁気記憶装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0195】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0196】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0197】
11…第1磁性領域、 11M…磁化、 11a…第1磁性膜、 11aa…第1部分膜、 11ab…第2部分膜、 11am…第1膜、 11b…第2磁性膜、 11bm…第2膜、 11c…対向磁性領域、 11cM…磁化、 11cx…対向磁性領域、 11e…導電層、 11m…中間膜、 11n…第1非磁性領域、 11nx…非磁性領域、 11p…磁性部、 11x…磁性領域、 12…第2磁性領域、 12M…磁化、 12c…第2対向磁性領域、 12cM…磁化、 12n…第2非磁性領域、 20…導電部材、 20a〜20e…第1〜第5部分、 20s…基体、 21〜23…第1〜第3導電領域、 41a、41b…第1、第2化合物領域、 70…制御部、 70BSa、70BSb…第1、第2ビット線選択回路、 70Ra、70Rb…第1、第2読出し回路、 70WS…ワード線選択回路、 70Wa、70Wb…第1、第2書き込み回路、 70a〜70c…配線、 75…制御回路、 110、120、210、220、310…磁気記憶装置、 BL1〜BL3…第1〜第3ビット線、 C1…濃度、 Hex…交換結合磁界、 I1〜I4…第1〜第4電流、 Iw1、Iw2…第1、第2電流、 Lx、Ly…長さ、 MC…メモリセル、 MCA…メモリセルアレイ、 OP1〜OP3…第1〜第3動作、 P1、P2…第1、第2パラメータ、 SB1、SB2…第1、第2積層体、 SBn、SBx…積層体、 SPL1〜SPL6…第1〜第6試料、 Sw1、Sw2、SwS1、SwSn、SwnSwx…スイッチ、 T1〜T5…第1〜第5端子、 Tan…温度、 V0…電位、 V1、V2…第1、第2電圧、 WL1、WL2…第1、第2ワード線、 p1〜p3…第1〜第3ピーク、 pZ…位置、 tm…距離
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