【文献】
Biotechnol. Bioeng.,2011年,Vol. 108, No. 1,p. 93-103
【文献】
Database UniProtKB, [online], Accession No. C0XP92,<http://www.uniprot.org/uniprot/C0XP92.fasta?version=13>, 19-Feb-2014 uploaded, [retrieved on 2017-0
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
前記目的を達成するための一つの様態として、本発明は、配列番号6で表されるアミノ酸配列またはこれと55%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質の活性が導入または強化された、ジアミン生産能を有する微生物を提供する。
【0015】
本発明における用語「ジアミン」とは、アミン基を二つ有する化合物を総称し、具体的な例としてプトレシンとカダベリンが挙げられる。プトレシンはテトラメチレンジアミン(tetramethylenediamine)であり、オルニチンを前駆体として生成することができる。
カダベリンは、1,5−ペンタンジアミン(1,5-pentanediamine)またはペンタメチレンジアミン(pentamethylenediamine)と命名され、リジンを前駆体として生成することが
できる。前記のようなジアミンはポリアミンナイロン、ポリアミドやポリウレタンのよう
な高分子で合成することができる原料物質として重要な価値のある産業応用性を有する基盤化合物である。
【0016】
本発明における用語「配列番号6で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質」とは、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)に存在するタンパク
質であり、CE2495とも命名される。前記タンパク質は、コリネバクテリウムの膜タンパク質であるNCgl2522と高い相同性を有することが見出された。本発明の一実施例では、前記CE2495タンパク質がジアミン生産能を有する菌株内でジアミンの排出に関与していると推定され、ジアミンの生産能を顕著に増加させることが解明された。
【0017】
ここで、前記配列番号6で表されるアミノ酸配列を有するCE2495タンパク質は、代表的なものとして配列番号5で表されるヌクレオチド配列によってエンコードされるタンパク質が挙げられる。ただし、前記CE2495タンパク質をコードするポリヌクレオチドはコドンの縮退性(degeneracy)により、または前記タンパク質を発現させようとする生物において好まれるコドンを考慮し、コード領域から発現されるタンパク質のアミノ酸配列を変化させない範囲内でコード領域に様々な改変がなされることが可能であり、CE2495タンパク質は、前記配列番号5で表されるヌクレオチド配列以外にも、様々なヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0018】
また、本発明において、前記CE2495タンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列だけでなく、前記配列と55%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の相同性を示すアミノ酸配列であって、実質的にジアミン排出能を有するタンパク質であれば制限なく含まれ、このような相同性を有する配列であり、実質的に配列番号6のタンパク質と同一またはそれに相当する生物学的活性を有するアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、改変、置換または付加されたアミノ酸配列を有する場合も、本発明の範疇に含まれることは自明である。
【0019】
本発明における用語「配列番号6で表されるアミノ酸配列と55%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質」とは、配列番号6で表されるアミノ酸配列と55%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むとともに、実質的にジアミン排出能を有するタンパク質である場合、制限なく含まれることを意味する。一例として、配列番号22または配列番号24のアミノ酸配列を含むタンパク質が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0020】
例えば、前記配列番号22で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質は、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)に存在するタンパク質であり、HMPREF0281_01446とも命名される。前記タンパク質は、コリネバクテリウムの膜タンパク質であるNCgl2522とは59%の相同性を有し、コリネバクテリウム・エフィシエンスのCE2495とは61%の相同性を有することが見出された。本発明の一実施例では、前記HMPREF0281_01446タンパク質がジアミン生産能を有する菌株内にジアミンの排出能を有し、ジアミンの生産能を顕著に増加させることが明らかになった。
【0021】
配列番号22で表されるアミノ酸配列を含むHMPREF0281_01446タンパク質としては、代表的なものとして配列番号21で表されるヌクレオチド配列でエンコードされるタンパク質が挙げられる。ただし、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドはコドンの縮退性により、または前記タンパク質を発現させようとする生物において好まれるコドンを考慮し、コード領域から発現されるタンパク質のアミノ酸配列を変化させない範囲内でコード領域に様々な改変がなされることが可能であり、前記配列番号21で
表されるヌクレオチド配列以外にも、様々なヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0022】
また、前記配列番号24のアミノ酸配列を含むタンパク質は、コリネバクテリウム・リポフィロフラバム(Corynebacterium lipophiloflavum)に存在するタンパク質であり、
HMPREF0298_0262とも命名される。前記タンパク質は、コリネバクテリウムの膜タンパク質であるNCgl2522とは52%の相同性を有し、コリネバクテリウム・エフィシエンスのCE2495とは56%の相同性を有することが見出された。本発明の一実施例では、前記HMPREF0298_0262タンパク質がジアミン生産能を有する菌株でジアミンの排出能を有し、ジアミンの生産能を顕著に増加させることが解明された。
【0023】
配列番号24で表されるアミノ酸配列を含むHMPREF0298_0262タンパク質としては、代表的なものとして配列番号23で表されるヌクレオチド配列でエンコードされるタンパク質が挙げられる。ただし、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドはコドンの縮退性により、または前記タンパク質を発現させようとする生物において好まれるコドンを考慮し、コード領域から発現されるタンパク質のアミノ酸配列を変化させない範囲内でコード領域に様々な改変がなされることが可能であり、前記配列番号23で表されるヌクレオチド配列以外にも、様々なヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0024】
本明細書において、配列に関連する用語「相同性」とは、与えられたアミノ酸配列または塩基配列と一致する程度を意味し、パーセンテージで表わすことができる。本明細書において、与えられたアミノ酸配列または塩基配列と同一または類似の活性を有するその相同性配列が「%の相同性」で示される。例えば、スコア(score)、同一性(identity)
及び類似度(similarity)などの媒介変数(parameter)を計算するための標準ソフトウ
ェア、具体的には、BLAST2.0を利用したり、定義された厳格な条件の下でサザンハイブリタイゼーション実験により配列を比較することによって確認することができ、定義される適切なハイブリタイゼーション条件は、該当技術の範囲内であり(例えば、Sambrook et al., 1989, infraを参照)、当業者に公知の方法により決定できる。
【0025】
本発明における用語「ジアミン生産能を有する微生物」とは、ジアミンの生産能を有さない親菌株にジアミンの生産能が付与された微生物、または内在的にジアミン生産能を有する微生物を意味する。具体的にはジアミンの生産能を有する微生物は、プトレシンまたはカダベリンの生産能を有する微生物であってもよい。
【0026】
前記「プトレシン生産能を有する微生物」は、特にそれに限定されないが、グルタメートからオルニチンまでの生合成経路を強化するためにグルタメートをアセチルグルタメート(N-acetylglutamate)に変換するアセチルグルタメートシンターゼ、またはアセチル
オルニチンをオルニチンに変換するオルニチンアセチルトランスフェラーゼ(ArgJ)、アセチルグルタメートをアセチルグルタミルホスフェート(N-acetylglutamyl phosphate)に変換するアセチルグルタメートキナーゼ(ArgB)、アセチルグルタミルホスフェートをアセチルグルタメートセミアルデヒド(N -acetylglutamate semialdehyde)に
変換するアセチルガンマグルタミルホスフェートレダクターゼ(ArgC)、またはアセチルグルタメートセミアルデヒドをアセチルオルニチン(N-acetylornithine)に変換す
るアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(ArgD)の活性を、内在的活性に比べて増加させるように改変することができ、プトレシンの生合成前駆体として用いられるオルニチンの生産性を向上させるように改変されたものであってもよいが、それに限定されるものではない。
【0027】
また、前記プトレシン生産能を有する微生物は、オルニチンにおいてアルギニン合成に関与するオルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(ornithine carbamoyl transfrase
、ArgF)、グルタメートの排出に関与するタンパク質(NCgl1221)、及び/またはプトレシンをアセチル化させるタンパク質(NCgl469)の活性を内在的活性に比べて弱化させるように変異され/変異されたり、オルニチンデカルボキシラーゼ(ornithine decarboxylase、ODC)の活性を導入するように改変されたものであってもよい。
【0028】
ここで、非限定的な一例として、前記アセチルガンマグルタミルホスフェートレダクターゼ(ArgC)は、配列番号14で表されるアミノ酸配列を含むものであってもよい。アセチルグルタメートシンターゼまたはオルニチンアセチルトランスフェラーゼ(ArgJ)は、配列番号15で表されるアミノ酸配列を含むものであってもよい。アセチルグルタメートキナーゼ(ArgB)は、配列番号16で表されるアミノ酸配列を含むものであってもよい。アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(ArgD)は、配列番号14で表されるアミノ酸配列を含むものであってもよい。しかし、各酵素タンパク質のアミノ酸配列は、特にこれに限定されるものではなく、各酵素の活性を有するものであれば、これと80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むことができる。
【0029】
また、非限定的な一例として、前記オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(ArgF)は、配列番号18で表されるアミノ酸配列を含むものであってもよい。前記グルタメート排出に関与するタンパク質は、配列番号19で表されるアミノ酸配列を含むものであってもよい。オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)は、配列番号20で表されるアミノ酸配列を含むものであってもよい。しかし、各酵素タンパク質のアミノ酸配列は、これに限定されるものではなく、各酵素の活性を有するものであれば、これと80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むことができる。
【0030】
一方、前記「カダベリン生産能を有する微生物」とは、特にそれに限定されないが、リジン生産能を有する微生物において、さらにリジンデカルボキシラーゼ(lysine decarboxylase、LDC)の活性を導入または強化させた微生物を意味する。一例としてカダベリン
の生産を高めるためにリジンの生産能を向上させた微生物であってもよい。リジンの生産能を向上させるための方法は、従来公知の方法を活用して当業者が十分に予想可能であり、活用することができる。
【0031】
前記リジンデカルボキシラーゼは、リジンをカダベリンに変換させる活性を有する酵素であり、その活性を導入または強化することにより、効果的にカダベリンを生成することができる。
【0032】
前記リジンデカルボキシラーゼは、配列番号26で表されるアミノ酸配列を含むものであってもよいが、特にこれに限定されるものではなく、前記活性を有するものであれば、これと80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくには95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むことができる。
【0033】
本発明における用語「生産」とは、ジアミンを菌株内で作り出すことだけでなく、ジアミンを細胞外、例えば培養液として排出することをも含む概念である。
【0034】
一方、本発明における用語「タンパク質の活性の導入」とは、内在的タンパク質を有さない微生物に、そのタンパク質が有する活性を外部から付与することを意味し、例えば、外部から遺伝子を導入することによって行われる。また、「タンパク質活性の強化」とは、微生物が保有しているか、または導入されたタンパク質の活性状態を内在的活性状態に比べて向上させることを意味する。
【0035】
前記タンパク質の活性の導入または強化の非限定的な例として、突然変異等により菌株内に存在するタンパク質自体の活性を増大させ、本来の機能以上の効果を導出し/誘導したり、菌株内に存在するタンパク質の内在的遺伝子活性の増加、内部または外部の要因による内在的遺伝子の増幅、遺伝子コピー数の増加、外部からの遺伝子をさらに導入し、プロモーターの交換または改変などにより、その活性が増加することを含むが、それらに限定されるものではない。
【0036】
前記遺伝子コピー数の増加は、特にそれに限定されないが、ベクターに作動可能に連結された形で行われるか、または宿主細胞内の染色体に挿入されることによって行うことができる。具体的には、本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが作動可能に連結された、宿主とは無関係に複製されて機能することのできるベクターを宿主細胞内に導入することによって行われるか、または前記ポリヌクレオチドが作動可能に連結された、宿主細胞内の染色体内に前記ポリヌクレオチドを挿入することのできるベクターを宿主細胞内に導入することによって、前記宿主細胞の染色体内の前記ポリヌクレオチドのコピー数を増加させる方法により行うことができる。
【0037】
本発明において、ポリヌクレオチドの発現が増加するように発現調節配列を改変する方法は、特にこれらに限定されないが、前記発現調節配列の活性を強化するように核酸配列を欠失、挿入、非保存的または保存的置換もしくはこれらの組み合わせによって配列上の変異を誘導して行うか、またはさらに強い活性を有する核酸配列に交換することによって行うことができる。前記発現調節配列は、特にそれに限定されないが、プロモーター、オペレーター配列、リボソーム結合部位をコードする配列、転写及び翻訳の終結を調節する配列などを含むことができる。
【0038】
本発明において、プロモーターの交換または改変は、特にこれらに限定されないが、本来のプロモーターよりも強力なプロモーターに交換または改変することによって行うことができる。前記ポリヌクレオチドの発現単位の上流には、本来のプロモーターの代わりに強力な異種プロモーターが連結され得るが、前記強力なプロモーターの例としては、CJ7プロモーター、lysCP1プロモーター、EF−Tuプロモーター、groELプロモーター、aceAあるいはaceBプロモーターなどがあり、具体的にはコリネバクテリウム由来のプロモーターであるlysCP1プロモーターあるいはCJ7プロモーターと作動可能に連結され、前記酵素をコードするポリヌクレオチドの発現率を向上させることができる。ここで、lysCP1プロモーターは、アスパルテートキナーゼ及びアスパルテートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチドのプロモーター部位塩基配列を置換することにより改良したプロモーターである(特許文献3)。また、CJ7プロモーターは、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスに由来した強力なプロモーターである(特許文献4及び特許文献5)。
【0039】
併せて、染色体上のポリヌクレオチド配列の改変は、特にそれに限定されないが、前記ポリヌクレオチド配列の活性をさらに強化するように核酸配列を欠失、挿入、非保存的または保存的置換またはこれらの組み合わせにより発現調節配列上の変異を誘導したり、またはさらに強い活性を有するように改良されたポリヌクレオチド配列に交換することによって行うことができる。
【0040】
本発明における用語「ベクター」とは、好適な宿主内で目的タンパク質を発現させることができるように、好適な調節配列に作動可能に連結された前記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列を含有するDNA製造物を意味する。前記調節配列は、転写を開始することのできるプロモーター、そのような転写を調節するための任意のオペレーター配列、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び翻訳の終結を調節する配列を含む。ベクターは好適な宿主細胞内に形質転換された後、宿主ゲ
ノムとは無関係に複製または機能することができ、ゲノムそのものに組み込むことができる。
【0041】
本発明において用いられるベクターは、宿主細胞内で複製可能なものであれば特に限定されず、当業界に公知の任意のベクターを用いることができる。通常用いられるベクターの例としては、天然状態または組換えられた状態のプラスミド、コスミド、ウイルス、及びバクテリオファージが挙げられる。例えば、ファージベクターまたはコスミドベクターとしては、pWE15、M13、λMBL3、λMBL4、λIXII、λASHII、λAPII、λt10、λt11、Charon4A、及びCharon21Aなどを用いることができ、プラスミドベクターとしては、pBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系及びpET系などを用いることができる。本発明で使用可能なベクターは、特に限定されるものではなく、公知となった発現ベクターを用いることができる。具体的には、pDZ、pACYC177、pACYC184、pCL、pECCG117、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BACベクターなどを用いることができる。
【0042】
また、細菌内染色体挿入用ベクターを介して、染色体に内在的目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、変異されたポリヌクレオチドに交換することができる。前記ポリヌクレオチドの染色体内への挿入は、当業界に公知の任意の方法、例えば、相同組換えによって行うことができる。本発明のベクターは、相同組換えを起こして染色体内に挿入されるため、前記染色体に挿入するか否かを確認するための選択マーカー(selection marker)をさらに含むことができる。選択マーカーは、ベクターで形質転換された細胞を選別、すなわち目的のポリヌクレオチドを挿入するか否かを確認するためのものであり、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面タンパク質の発現などのような選択可能な表現型を付与するマーカーを用いることができる。選択剤(selective agent
)が処理された環境では、選択マーカーを発現する細胞のみが生存するか、または異なる表現形質を示すため、形質転換された細胞を選別することができる。
【0043】
本明細書における用語「形質転換」とは、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞内に導入して宿主細胞内で前記ポリヌクレオチドがコードするタンパク質が発現することができるようにすることを意味する。形質転換されたポリヌクレオチドは、宿主細胞内に発現することができるものであれば、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置するか、染色体外に位置するかに関係なく、これらすべてを含むことができる。また、前記ポリヌクレオチドは、標的タンパク質をコードするDNA及びRNAを含むことができる。前記ポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現することができるものであれば、どのような形で導入されるものであってもかまわない。例えば、前記ポリヌクレオチドは、それ自体で発現されるのに必要なすべての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形で宿主細胞に導入することができる。
前記発現カセットは、通常、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター、転写終結シグナル、リボソーム結合部位、及び翻訳終結シグナルを含むことができる。前記発現カセットは、それ自体の複製が可能な発現ベクターの形態であってもよい。また、前記ポリヌクレオチドは、それ自体の形で宿主細胞に導入され、宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであってもよい。
【0044】
また、前記用語「作動可能に連結された」とは、本発明の目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介するようにするプロモーター配列と前記遺伝子配列が機能的に連結されていることを意味する。
【0045】
また、前記ジアミン生産能を有する微生物は、ジアミンの生産量を増加させるために、ジアミンアセチルトランスフェラーゼ(diamine acetyltransferase)活性が内在的活性
に比べて弱化したものであってもよい。
【0046】
本発明における用語「ジアミンアセチルトランスフェラーゼ」とは、アセチル−CoAからアセチル基をジアミンに伝達する反応を媒介する酵素であり、その例としてコリネバクテリウム・グルタミクムNCgl1469または大腸菌SpeGであってもよいが、ジアミン生産能を有する微生物の種類に応じて、その名称は変わり得る。前記NCgl1469は、配列番号11または12で表されるアミノ酸配列を含むものであり、SpeGは配列番号13で表されるアミノ酸配列が含まれるが、これらの配列は、微生物の種類に応じて異なってもよく、前記ジアミンアセチルトランスフェラーゼの活性を有するものであれば、前記配列番号のアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むことができる。
【0047】
前記ジアミンアセチルトランスフェラーゼは、ジアミンをアセチル−ジアミン(例えば、N−Ac−プトレシンまたはN−Ac−カダベリン)に変換させるため、その活性を内在的活性よりも弱化させると、ジアミンの生産能を増加させることができる。
【0048】
本発明における用語「内在的活性」とは、本来微生物が天然の状態または非改変状態で有しているタンパク質の活性状態を意味し、「内在的活性よりも弱化するように改変される」という意味は、本来、微生物の天然状態または非改変状態で示すタンパク質活性と比較した時、活性がさらに弱化したことを意味する。
【0049】
このようなタンパク質活性の弱化は、改変されていない菌株に比べてタンパク質の活性が弱化したことを意味し、活性が除去された場合も含まれる。前記タンパク質の活性を弱化させる方法は、当該分野において公知の様々な方法を用いることができる。
【0050】
前記方法の例として、前記タンパク質の活性が除去された場合を含めて、前記酵素の活性が弱化するように突然変異した遺伝子であって、染色体上の前記タンパク質をコードする遺伝子を代替する方法、前記タンパク質をコードする染色体上の遺伝子の発現調節配列に変異を導入する方法、前記タンパク質をコードする遺伝子の発現調節配列を活性の低い配列と交換する方法、前記タンパク質をコードする染色体上の遺伝子の一部または全体を欠損させる方法及び前記染色体上の遺伝子のトランスクリプトームに相補的に結合して前記mRNAからタンパク質への翻訳を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入する方法、前記タンパク質をコードする遺伝子のSD配列の前段にSD配列と相補的な配列を人為的に付加して2次構造を形成させ、リボソームの付着を不可能にする方法及び該当配列のORF(open reading frame)の3’末端に逆転写されるようにプロモーターを付加するRTE(Reverse transcription engineering)方法などがあり、これらの組み合
わせによっても達成することができるが、前記例により特に限定されるものではない。
【0051】
具体的には、タンパク質をコードする遺伝子の一部または全体を欠失させる方法は、細菌内染色体挿入用ベクターを介して、染色体内の内在的目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、一部の核酸配列が欠失したポリヌクレオチドまたはマーカー遺伝子に交換することによって行うことができる。前記「一部」とは、ポリヌクレオチドの種類に応じて異なるが、具体的には、1〜300個、好ましくは1〜100個、さらに好ましくは1〜50個である。
【0052】
一方、本発明の微生物は、ジアミン生産能を有する微生物であって、前記配列番号6で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質が発現される原核微生物を含んでおり、その例としては、エシェリキア属(Escherichia sp.)、シゲラ属(Shigella sp.)、シトロバク
ター属(Citrobacter sp.)、サルモネラ属(Salmonella sp.)、エンテロバクター属(E
nterobacter sp.)エルシニア属(Yersinia sp.)、クレブシエラ属(Klebsiella sp.)
、エルウイニア属(Erwinia sp.)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium sp.)、ラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)
、セレノモナス属(Selenomanas sp.)、ビブリオ属(Vibrio sp.)、シュードモナス属
(Pseudomonas sp.)、ストレプトマイセス属(Streptomyces sp.)、アルカノバクテリ
ウム属(Arcanobacterium sp.)、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)などに属する
微生物であってもよいが、それらに限定されない。具体的には、本発明の微生物は、コリネバクテリウム属に属する微生物またはエシェリキア属微生物であり、より具体的には、コリネバクテリウム・グルタミクムまたは大腸菌(Escherichia coli)であるが、それらに限定されない。
【0053】
具体的な例として、コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032ベースのプトレシン生産菌株KCCM11240P(特許文献6)菌株を用いて、前記菌株からプトレシン排出能を有するタンパク質であるNCgl2522を欠失させた後、CE2495をトランスポゾン遺伝子内に導入する微生物が挙げられる。これにより、前記微生物は、KCCM11240P△NCgl2522 Tn:P(cj7)−CE2495を、CC01−0757と命名し、ブダペスト条約上の国際寄託機関である韓国微生物保存センターに2013年11月15日付で寄託し、受託番号KCCM11475Pが付与された。
【0054】
もう一つの態様として、本発明は、(i)前記配列番号6で表されるアミノ酸配列またはこれと55%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質の活性が導入または強化された、ジアミンの生産能を有する微生物を培養して培養物を得るステップ、及び(ii)前記培養された微生物または培養物からジアミンを回収するステップとを含む、ジアミンの生産方法を提供する。
【0055】
前記配列番号6のアミノ酸配列を含むタンパク質、これと55%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、タンパク質の活性の導入、タンパク質の活性の強化、ジアミン、及びジアミン生産能を有する微生物については、前述した通りである。
【0056】
前記方法において、前記微生物を培養するステップは、特にそれに限定されないが、公知の回分式培養法、連続式培養法、流加式培養法などにより行われることが望ましい。この時、培養条件は、特にそれに限定されないが、塩基性化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニア)または酸性の化合物(例えば、リン酸または硫酸)を用いて適正pH(例えば、pH 5〜9、好ましくはpH6〜8、最も好ましくはpH 6.8)に調節し、酸素または酸素含有ガス混合物を培養物に導入させて好気性条件を維持することができ、培養温度は20〜45℃、好ましくは25〜40℃に維持することができ、約10〜160時間培養することが好ましい。
【0057】
また、前記培養のために用いられる培地は、炭素源としては、糖及び炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、モラセス、デンプン及びセルロース)、油脂及び脂肪(例えば、大豆油、ひまわり油、ピーナッツ油及びココナッツ油)、脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸及びリノール酸)、アルコール(例えば、グリセロール及びエタノール)及び有機酸(例えば、酢酸)などを含むが、これらに限定されず、個別にまたは混合して用いることができる。窒素供給源としては、窒素含有有機化合物(例えば、ペプトン、酵母抽出液、肉汁、麦芽抽出液、トウモロコシ浸漬液、大豆粕粉及びウレア)、または無機化合物(例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウム)などを含むが、これらに限定されず、個別に用いたり、または混合して用いることができる。リン供給源としてリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、これに相応するナトリウム含有塩などを含むが、これらに限定されず、個別にまたは混合して用いることができる。
その他の金属塩(例えば、硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄)、アミノ酸及びビタミンのような必須成長促進物質を含んでもよい。本明細書における前記培地は、培養液と同じ意味で用いられる。
【0058】
本発明における用語「培養物」とは、微生物の培養の結果として得られる物質であって、前記培地、培養された微生物、及び培養された微生物から分泌される物質を全て含むものであってもよい。例えば、菌体を培養するために必要な栄養供給源、例えば、炭素源、窒素源などの外に、無機塩成分、アミノ酸、ビタミン、核酸、及び/またはその他の一般的に培養培地(または培養液)に含有される成分が含まれてもよい。また、例えば、菌体が生産・分泌された目的物質または酵素などが含まれてもよい。
【0059】
培養によって生産されたジアミンは、培地中に分泌されたり、細胞内に残留することがあるので、前記培養物は微生物の培養によって生産されたジアミンを含んでもよい。
【0060】
本発明の前記培養ステップで生産されたプトレシンまたはカダベリンなどのジアミンを回収する方法は、培養方法、例えば、回分式、連続式または流加式培養法などにより、当該分野で公知の好適な方法を用いて、培養液から目的とするアミノ酸を収集することができる。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
参照例1.プトレシン生成能を有するコリネバクテリウム属微生物の製作
プトレシン生成能を有するコリネバクテリウム属微生物であって、コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032ベースのプトレシン生産菌株KCCM11240P(特許文献6)、コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13869ベースのプトレシン生産菌株DAB12−a△NCgl1469(argF欠損、NCgl1221欠損、大腸菌speC導入、argオペロンプロモーター置換、NCgl1469欠損:DAB12−bと命名、特許文献6)からMFS(major facilitator superfamily)に属するパ
ーミアーゼ(permease)であるNCgl2522を欠失させたとき、プトレシン生産量が減少したことを確認した。
【0063】
また、同様にKCCM11240PまたはDAB12−bにNCgl2522遺伝子をトランスポゾン内にさらに導入、または染色体上のNCgl2522のプロモーターをcj7プロモーターに置換してNCgl2522活性を強化したコリネバクテリウム・グルタミクム菌株が、高収率でプトレシンを生産した。また、NCgl2522発現を強化させた菌株内プトレシン含量を測定した結果、対照群に比べてプトレシン量が少ないことを確認することにより、NCgl2522がプトレシンを細胞外に排出する機能があることを確認した。
【0064】
具体的には、コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032のNCgl2522をコードする遺伝子の塩基配列に基づいてNCgl2522のN末端部位の相同組換え断片を得るための配列番号1及び2のプライマー対と、NCgl2522のC末端部位の相同組換え断片を得るための、配列番号3及び4のプライマー対を下記表1の通り用いた。
【0066】
前記コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032のゲノムDNAを鋳型とし、2双のプライマーをそれぞれ用いてPCRを行い、N末端部位とC末端部位のPCR断片をそれぞれ取得した後、これを電気泳動して目的とする断片を得た。この時、PCR反応は、95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で30秒間の伸長過程を30回繰り返した。これから得られたN末端部位の断片を制限酵素BamHI及びSalIで、C末端部位の断片を制限酵素SalI及びXbaIで処理し、処理された断片を制限酵素であるBamHIとXbaIで処理されたpDZベクターにクローニングしてプラスミドpDZ−1’NCgl2522(K/O)を作製した。
【0067】
前記プラスミドpDZ−1’NCgl2522(K/O)を電気穿孔法でコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11240Pに導入して形質転換体を得て、前記形質転換体をカナマイシン(25μg/ml)とX−gal(5-bromo-4-chloro-3-indolin-β-D-galactoside)が含有されたBHIS平板培地(ブレインハートインフュージョン37g/l、ソルビトール91g/l、寒天2%)に塗抹して培養することにより、コロニーを形成させた。これから形成されたコロニーのうち、青色のコロニーを選択することにより、前記プラスミドpDZ−1’NCgl2522(K/O)が導入された菌株を選抜した。
【0068】
前記選抜された菌株をCM培地(グルコース10g/l、ポリペプトン10 g/l、酵
母エキス5g/l、牛肉エキス5g/l、NaCl 2.5g/l、ウレア2g/l、pH6.
8)に接種し、30℃で8時間振とう培養し、それぞれ10
−4から10
−10まで順次希釈した後、X−gal含有固体培地に塗抹し、培養してコロニーを形成させた。形成されたコロニーのうち、相対的に低い割合で現われる白色のコロニーを選択し、NCgl2522をコードする遺伝子が欠失してプトレシンの生産性が弱化したコリネバクテリウム・グルタミクム菌株を作製した。このように製作されたプトレシン排出能が弱化したコリネバクテリウム・グルタミクム菌株をKCCM11240P△NCgl2522と命名した。
【0069】
同様に、コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13869のゲノムDNAを鋳型とし、前記表1表される2双のプライマーそれぞれを用いてPCRを行い、前記記載の方法によりプラスミドpDZ−2’NCgl2522(K/O)を作製した。前記ベクターを用いて、前記に明記された方法によりDAB12−b菌株のNCgl2522をコードする遺伝子が欠失してプトレシンの生産性が弱化したコリネバクテリウム・グルタミクム菌株を作製した。このように製作されたプトレシン排出能が弱化したコリネバクテリウム・グルタミクム菌株をDAB12−b△NCgl2522と命名した。
【0070】
実施例1.コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)にお
けるCE2495の選別
参照例1で確認したところによると、NCgl2522がコードする膜タンパク質がプトレシンを細胞外に排出する機能があることを示した。そこで、本発明者は、NCgl2522のアミノ酸配列に基づいて、米国国立生物情報センター(NCBI、www.ncbi.nlm.nih.gov)のBlastPプログラムを通じて、相同性がある遺伝子を確保した。
【0071】
そのうち、コリネバクテリウム・グルタミクム以外に、コリネバクテリウム属のうち、NCgl2522アミノ酸配列と71%の相同性を有するコリネバクテリウム・エフィシエンスYS−314のCE2495の塩基配列(配列番号5)及びアミノ酸配列(配列番号6)を確保した。
【0072】
また、前記と同様の方法でNCgl2522アミノ酸配列と59%の相同性を示すコリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)DSM20306由来のHMPREF0281_01446塩基配列(配列番号21)及びアミノ酸配列(配列番号22)、及びNCgl2522アミノ酸配列と52%の相同性を示すコリネバクテリウム・リポフィロフラバム(Corynebacterium lipophiloflavum)DSM44291
由来のHMPREF0298_0262の塩基配列(配列番号23)及びアミノ酸配列(配列番号24)を確保した。HMPREF0281_01446のアミノ酸配列とHMPREF0298_0262のアミノ酸配列は、下記表2に示すようにコリネバクテリウム・エフィシエンスYS−314のCE2495アミノ酸配列とそれぞれ61%、56%の相同性を示した。
【0074】
一方、NCgl2522と相同性を示す遺伝子を有するコリネバクテリウム属微生物及びその相同性を下記表3に示した。
【0076】
実施例2.コリネバクテリウム属由来プトレシン生産菌株へのCE2495導入によるプトレシン発酵
<2−1> ATCC13032ベースのプトレシン生産菌株における染色体内トランスポゾン遺伝子内へのCE2495導入
参照例1で作製したプトレシン排出能が減少したKCCM11240P△NCgl2522において、CE2495遺伝子を染色体内に挿入することによるプトレシン排出効果を確認するために、CE2495を下記のような過程でトランスポゾン遺伝子内に導入した。
【0077】
コリネバクテリウム属微生物のトランスポゾン遺伝子部位を用いて染色体内遺伝子導入を可能にする形質転換用ベクターとしてpDZTn(特許文献7)を用い、プロモーターはcj7(特許文献5)を用いた。
【0078】
CE2495遺伝子は、コリネバクテリウム・エフィシエンスYS−314菌株の染色
体を鋳型として、配列番号9及び10のプライマー対(表4を参照)を用いて約1.44kbの遺伝子断片を増幅した。この時、PCR反応は、95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で1分30秒間の伸長過程を30回繰り返した。その後、このPCR結果を0.8%のアガロースゲルで電気泳動した後、所望のサイズのバンドを溶離して精製した。
【0079】
また、cj7プロモーター部位は、p117−Pcj7−gfpを鋳型として、配列番号7及び8のプライマー対(表4参照)を用いて95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で30秒間の過程を30回繰り返して得た。cj7プロモーター遺伝子断片は、0.8%のアガロースゲルで電気泳動した後、所望のサイズのバンドを溶離して精製した。
【0081】
pDZTnベクターは、XhoIを処理し、前記で得られた各PCR産物をフュージョンクローニングした。フュージョンクローニングは、In−Fusion◎HD Cloning Kit(Clontech)を使用した。その結果として得られたプラスミドをpDZTn−P(cj7)−CE2495と命名した。
【0082】
その後、前記プラスミドpDZTn−P(cj7)−CE2495を参照例1に記載のコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11240P△NCgl2522に電気穿孔法(electroporation)を用いて導入することによって形質転換体を取得し、該形質転換
体をCM培地(グルコース10g/l、ポリペプトン10g/l、酵母エキス5g/l、牛肉エキス5g/l、NaCl 2.5g/l、ウレア2g/l、pH6.8)で振とう
培養(30℃、8時間)し、それぞれ10
−4から10
−10まで順次希釈した後、X−gal含有固体培地に塗抹して培養し、コロニーを形成させた。
【0083】
形成されたコロニーのうち、相対的に低い割合で現われる白色のコロニーを選択することにより2次交差(crossover)を行い、CE2495をコードする遺伝子が導入された菌株を最終選抜した。最終選抜された菌株を対象に配列番号7及び10のプライマー対を用いてPCRを行い、CE2495をコードする遺伝子が導入されたことを確認し、前記コリネバクテリウム・グルタミクム変異株をKCCM11240P△NCgl2522 Tn:P(cj7 )−CE2495と命名した。
【0084】
<2−2> ATCC13869ベースのプトレシン生産菌株における染色体内トランスポゾン遺伝子内へのCE2495導入
参照例1で作製したプトレシン排出能が弱化したDAB12−b△NCgl2522において、CE2495遺伝子を染色体内に挿入することによるプトレシン排出効果を確認するために、先に製作したpDZTn−P(cj7)−CE2495を実施例<2−1>と同様の方法でコリネバクテリウム・グルタミクムDAB12−b△NCgl2522に形質転換してトランスポゾン内にCE2495が導入されたことを確認した。
【0085】
これより選抜されたコリネバクテリウム・グルタミクム変異株をDAB12−b△NCgl2522 Tn:P(cj7)−CE2495と命名した。
【0086】
<2−3> CE2495が導入されたコリネバクテリウム属由来のプトレシン生産菌株におけるプトレシン生産能の評価
プトレシン生産菌株において、CE2495導入時にプトレシン生産に及ぼす効果を確認するために、前記実施例<2−1>及び<2−2>で製作されたコリネバクテリウム・グルタミクム変異株を対象に、プトレシン生産能を比較した。
【0087】
具体的には、6種のコリネバクテリウム・グルタミクム変異株(KCCM11240P;KCCM11240P △NCgl2522;KCCM11240P △NCgl2522 Tn:P(cj7)−CE2495;DAB12−b;DAB12−b △NCgl2522;DAB12−b △NCgl2522Tn:P(cj7)−CE2495)をそ
れぞれ1mMアルギニン含有CM平板培地(グルコース1%、ポリペプトン1%、酵母エキス0.5%、牛肉エキス0.5%、NaCl 0.25%、ウレア0.2%、50%N
aOH 100μl、寒天2%、pH6.8、1L基準)に塗抹し、30℃で24時間培
養した。これより培養された各菌株を25mlの力価培地(グルコース8%、大豆タンパク質0.25%、トウモロコシ固形0.50%、(NH
4)
2SO
4 4%、KH
2PO
4 0.1%、MgSO
4・7H
2O 0.05%、ウレア0.15%、ビオチン100μg、チアミン塩酸塩3mg、カルシウム−パントテン酸3mg、ニコチン酸アミド3mg、CaCO
3 5%、pH7.0、1L基準)に一白金耳程度接種した後、これを30℃にて200rpmで98時間振とう培養した。すべての菌株の培養時培地に1mMアルギニンを添加した。各培養物から生産されたプトレシン濃度を測定し、その結果を下記表5に示した。
【0089】
前記表5に示すように、CE2495が導入された2種のコリネバクテリウム・グルタミクム変異株の両方でプトレシンの生産量が増加したことを確認した。
【0090】
実施例3.コリネバクテリウム属由来のリジン生産菌株ベースにおけるCE2495導入、及びリジンデカルボキシラーゼ発現によるカダベリンの発酵
<3−1> L−リジン生産菌株であるコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11016Pにおける染色体内トランスポゾン遺伝子内へのCE2495導入
【0091】
CE2495遺伝子の挿入によるカダベリン排出能を確認するために、リジン生産菌株KCCM11016P(前記微生物は、韓国微生物保存センターに1995年12月18日付で受託番号KFCC10881として寄託された後、ブダペスト条約上の国際寄託機関に再寄託され、KCCM11016Pとして寄託番号が付与された。特許文献8)をベースとしてCE2495遺伝子を染色体内に挿入した。先に製作したpDZTn−P(cj7)−CE2495を実施例<2−1>と同様の方法でコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11016Pに形質転換してトランスポゾン内CE2495が導入されたことを確認した。
【0092】
これより選抜されたコリネバクテリウム・グルタミクム変異株をKCCM11016P
Tn:P(cj7)−CE2495と命名した。
【0093】
<3−2> CE2495が導入されたL−リジン生産菌株への大腸菌由来リジンデカルボキシラーゼ遺伝子導入
実施例<3−1>で製作されたCE2495が導入されたL−リジン生産菌株KCCM11016P Tn:P(cj7)−CE2495にカダベリンを生成するための大腸菌
由来のリジンデカルボキシラーゼ遺伝子をプラスミドの形で導入した。リジンデカルボキシラーゼldcCの塩基配列(配列番号25)及びアミノ酸配列(配列番号26)をNCBIのデータベースから確保した。
【0094】
ldcC遺伝子は、大腸菌W3110菌株の染色体を鋳型としてPCR法により配列番号29と配列番号30のプライマー対(表6を参照)を用いて、95℃で30秒間の変性、52℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で2分間の伸長過程を30回繰り返し、それぞれ2.1kbの遺伝子断片を得た。その後、HindIIIとXbaIを処理した後、0.8%のアガロースゲルで電気泳動した後、所望のサイズのバンドを溶離して精製した。
【0095】
また、cj7プロモーター部位は、p117−Pcj7−gfpを鋳型として、配列番号27及び28のプライマー対(表6参照)を用いて、95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で30秒間の伸長過程を30回繰り返して得た。cj7プロモーター遺伝子断片は、KpnIとHindIIを処理した後、0.8%のアガロースゲルで電気泳動した後、所望のサイズのバンドを溶離して精製した。
【0097】
KpnIとXbaIを処理したpECCG117(非特許文献7) のベクターを0.8
%のアガロースゲルで電気泳動した後、所望のサイズのバンドを溶出して精製した遺伝子断片、 KpnIとHindIIIを処理したcj7プロモーター遺伝子断片、HindIII及びXbaI処理したリジンデカルボキシラーゼldcC遺伝子断片をT4 DN
A lligase(NEB)を用いてクローニングした。前記実験で得られた大腸菌l
dcCをコードしているプラスミドをpECCG117−Pcj7−ldcCと命名した。
【0098】
前記作製したpECCG117−Pcj7−ldcCベクターまたはpECCG117ベクターをKCCM11016P、KCCM11016P Tn:P(cj7)−CE2495に電気穿孔法を用いて導入した。導入された菌株を25μg/mlのカナマイシンが含まれたBHIS平板培地に塗抹して形質転換体を選別した。選別された菌株をKCCM11016P pECCG117、KCCM11016P pECCG117−Pcj7−ldcC、KCCM11016P Tn:P(cj7)−CE2495 pECCG117、KCCM11016P Tn:P(cj7)−CE2495 pECCG117−Pcj7−ldcCと命名した。
【0099】
<3−3> CE2495が染色体に導入されてリジンデカルボキシラーゼがプラスミドに導入されたコリネバクテリウム属由来リジン生産菌株におけるカダベリン生産能の評価
カダベリン生産菌株において、CE2495導入時にカダベリン生産に及ぼす効果を確認するために、前記実施例<3−2>で製作されたコリネバクテリウム・グルタミクム変異株を対象に、カダベリン生産能を比較した。
【0100】
具体的には、4種のコリネバクテリウム・グルタミクム変異株(KCCM11016P
pECCG117; KCCM11016P pECCG117−Pcj7−ldcC; KCCM11016P Tn:P(cj7)−CE2495 pECCG117; KCCM11016P Tn:P(cj7)−CE2495 pECCG117−Pcj7−ldcC )を下記の方法で培養してカダベリン生産能を比較した。
【0101】
それぞれのCM平板培地(グルコース1%、ポリペプトン1%、酵母エキス0.5%、牛肉エキス0.5%、NaCl 0.25%、ウレア0.2%、50%NaOH 100μl、寒天2%、pH6.8、1L基準)に塗抹して30℃で24時間培養した。これより培養された各菌株を種培地(グルコース 2%、ペプトン1%、酵母エキス0.5%、ウレア0.15%、KH
2PO
4 0.4%、K
2HPO
4 0.8%、MgSO
4・7
H
2O 0.05%、ビオチン100μg、チアミンHCl 1000μg、カルシウム
−パントテン酸2000μg、ニコチン酸アミド2000μg、pH7.0、1L基準)25mlを含有する250mlのコーナー−バプルフラスコに接種し、30℃で20時間、200rpmで振とう培養した。
【0102】
その後、生産培地(グルコース4%、(NH
4)
2SO
4 2%、大豆タンパク質2.5%、トウモロコシ浸漬固形分(Corn Steep Solids)5%、ウレア0.3%、KH
2PO
4 0.1%、MgSO
4・7H
2O 0.05%、ビオチン100μg、チアミン塩酸塩1000μg、カルシウム−パントテン酸2000μg、ニコチン酸アミド3000μg、ロイシン0.2g、トレオニン0.1g、メチオニン0.1g、CaCO
3 5%、pH7.0、1L基準)24mlを含有する250mlのコーナー−バプルフラスコに1mlの種培養液を接種し、30℃で72時間、200rpmで振とう培養した。
【0103】
培養が終了した後、HPLCでL−リジンとカダベリンの生産能を測定した。実験した各菌株に対する培養液中のL−リジンとカダベリン濃度は下記表7の通りである。
【0105】
前記表7に示すように、CE2495が導入されたコリネバクテリウム・グルタミクム変異株においてカダベリン生産量が増加したことを確認した。
【0106】
実施例4.ジアミン排出能を有するタンパク質の導入によるジアミン発酵
<4−1> W3110にCE2495、HMPREF0281_01446、またはHMPREF0298_0262導入した菌株の製作
CE2495と併せて、NCgl2522と59%の相同性を示すコリネバクテリウム・アンモニアゲネスDSM20306由来のHMPREF0281_01446タンパク質と、NCgl2522と52%の相同性を示すコリネバクテリウム・リポフィロフラバムDSM44291由来のHMPREF0298_0262タンパク質が大腸菌内でジアミン排出活性を有するか否かを確認した。
【0107】
実施例2−1のpDZTn−P(cj7)−CE2495製作と同様の方法でHMPREF0281_01446とHMPREF0281_01446を導入するためのベクターを作製した。
【0108】
HMPREF0281_01446遺伝子は、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスDSM20306菌株の染色体を鋳型として、配列番号31及び32のプライマー対(表8参照)を用いて約1.4 kbの遺伝子断片を増幅した。
【0109】
同様にHMPREF0298_0262遺伝子は、コリネバクテリウム・リポフィロフラバムDSM44291菌株の染色体を鋳型として、配列番号33及び34のプライマー対(表8参照)を用いて約1.36kbの遺伝子断片を増幅した。
【0110】
この時、PCR反応は、95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で1分30秒間の伸長過程を30回繰り返した。その後、前記PCR結果物を0.8%のアガロースゲルで電気泳動した後、所望のサイズのバンドを溶離して精製した。
【0112】
また、cj7プロモーター部位は、p117−Pcj7−gfpを鋳型として、配列番号7及び8のプライマー対を用いて、95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で30秒間の過程を30回繰り返して得た。cj7プロモーター遺伝子断片は、0.8%のアガロースゲルで電気泳動した後、所望のサイズのバンドを溶離して精製した。
【0113】
pDZTnベクターは、XhoIを処理し、前記で得られた各PCR産物をフュージョンクローニングした。フュージョンクローニングは、In−Fusion◎HD Cloning Kit(Clontech)を使用した。その結果として得られたプラスミドをそれぞれpDZTn−P(cj7)−HMPREF0281_01446、pDZTn−P(cj7)−HMPREF0298_0262と命名した。
【0114】
その後、プトレシン生成能とカダベリン生合成経路を有する大腸菌野生型菌株W3110におけるコリネバクテリウム・エフィシエンスYS−314のCE2495、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス由来のHMPREF0281_01446、またはコリネバクテリウム・リポフィロフラバム由来のHMPREF0298_0262タンパク質発現時にプトレシンとカダベリンの生産増加効果を確認するために、W3110のコリネバクテリウムと大腸菌シャトルベクターベースのpDZTn−P(cj7)−CE2495、pDZTn−P(cj7)−HMPREF0281_01446、またはpDZTn−P(cj7)−HMPREF0298_0262をそれぞれ導入した。
【0115】
大腸菌内形質転換は、2X TSS溶液(Epicentre)を使用し、これをカナ
マイシン(50μg/ml)が含有されたLB平板培地(トリプトン10g、酵母エキス5g、Nacl 10g、寒天2%、1L基準)に塗抹して培養することにより、コロニ
ーを形成させた。これから形成されたコロニーをW3110 pDZTn−P(cj7)
−CE2495、W3110 pDZTn−P(cj7)−HMPREF0281_01446、W3110 pDZTn−P(cj7)−HMPREF0298_0262と命名した。
【0116】
<4−2> CE2495、HMPREF0281_01446、HMPREF029
8_0262が導入された大腸菌におけるジアミン生産能の比較
前記で得られた菌株を対象に、プトレシンとカダベリン生産能を確認した。
具体的には、大腸菌W3110とW3110 pDZTn−P(cj7)−CE2495
、W3110 pDZTn−P(cj7)−HMPREF0281_01446、W31
10 pDZTn−P(cj7)−HMPREF0298_0262をLB固体培地にお
いて37℃で24時間培養した。
【0117】
その後、これをそれぞれ25mL力価培地((NH
4)
2PO
4 2g、KH2PO
4 6.75g、クエン酸0.85g、MgSO
4・7H
2O 0.7g、微量元素0.5%
(v/v)、グルコース10g、AMS 3g、CaCO
3 30g、1L当り)において37℃で24時間培養した。微量金属溶液(Trace metal solution)は、1リットル当たり5M HCl:FeSO
4・7H
2O 10g、ZnSO
4・7H
2O 2.25g、
CuSO
4・5H
2O 1g、MnSO
4・5H
2O 0.5g、Na
2B
4O
7・10H
2O 0.23g、CaCl
2・2H
2O 2g、(NH
4)
6Mo
7O
2・4H
2O 0
.1gを含む。
【0118】
各培養物から生産されたプトレシンとカダベリン濃度を測定し、その結果を下記表9に示した。
【0120】
前記表9に示すように、親菌株W3110に比べて、CE2495が導入されたW3110 pDZTn−P(cj7)−CE2495菌株において培養物内のプトレシン及びカダベリンの量が多く示された。また、HMPREF0281_01446とHMPREF0298_0262がそれぞれ導入されたW3110 pDZTn−P(cj7)−H
MPREF0281_01446とW3110 pDZTn−P(cj7)−HMPRE
F0298_0262菌株の両方でプトレシンとカダベリン生産量が顕著に増加した。
【0121】
即ち、CE2495アミノ酸配列、またはその配列相同性が55%以上であるアミノ酸配列を有するタンパク質の活性強化により培養液にジアミンの生産量が顕著に増加したことが確認された。このような結果は、CE2495アミノ酸配列、またはこれと配列相同性が55%以上であるアミノ酸配列を有するタンパク質の活性強化により、プトレシン及びカダベリンのようなジアミン排出能向上を示唆するものである。
【0122】
このように、本発明者は、プトレシン生成経路はあるものの、排出機能が弱化したコリネバクテリウム属微生物KCCM11240P△NCgl2522にトランスポゾン内CE2495を導入してCE2495活性を強化させたコリネバクテリウム・グルタミクム菌株が、プトレシン排出能増加し、高収率でプトレシンを生成することができることを確認した。
【0123】
これにより、前記菌株をKCCM11240P△NCgl2522 Tn:P(cj7
)−CE2495をCC01−0757と命名した後、これを2013年11月15日付でブダペスト条約上の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(KCCM)に寄託し、寄託番号KCCM11475Pが与えられた。
【0124】
寄託機関名:韓国微生物保存センター(国外)
受託番号:KCCM11475P
受託日:2013年11月15日