(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970745
(24)【登録日】2021年11月2日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】無機繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/04 20060101AFI20211111BHJP
C03B 37/07 20060101ALI20211111BHJP
C03C 3/078 20060101ALI20211111BHJP
C03C 3/085 20060101ALI20211111BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20211111BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
C03B37/04
C03B37/07
C03C3/078
C03C3/085
C03C3/087
F16L59/02
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-520365(P2019-520365)
(86)(22)【出願日】2017年10月12日
(65)【公表番号】特表2019-537542(P2019-537542A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(86)【国際出願番号】FR2017052810
(87)【国際公開番号】WO2018069652
(87)【国際公開日】20180419
【審査請求日】2020年9月11日
(31)【優先権主張番号】1659948
(32)【優先日】2016年10月14日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502425053
【氏名又は名称】サン−ゴバン イゾベール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン ブローニエ
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム ゲリー
【審査官】
松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−531439(JP,A)
【文献】
特開2011−247410(JP,A)
【文献】
特表平06−503799(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0111198(US,A1)
【文献】
特表2006−525212(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0112093(US,A1)
【文献】
特表平09−503476(JP,A)
【文献】
特表2013−514961(JP,A)
【文献】
特表2002−518282(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/121400(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00−37/16
C03C 1/00−14/00
F16L 59/00−59/22
D01F 9/08− 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心として一緒に回転するのに適したバスケット及び繊維化スピナーを具備するデバイスを用いた内部遠心による
ミネラルウールの形成方法であって、
ここで、前記バスケットは、複数のオリフィスが穿孔された環状壁を有し、かつ前記繊維化スピナーは、複数のオリフィスが穿孔された環状壁を有し、
この方法は、以下を含み:
−繊維化される材料を、前記バスケットに温度T
aでフィードすること、
−前記繊維化される材料を、前記バスケット及び繊維化スピナーの同時回転によって遠心すること、
ここで、前記同時回転の影響のもとで、前記繊維化される材料が、前記バスケットから前記繊維化スピナーに投射されるように、前記デバイスが構成されており、
ここで、ファクタFが、2000より大きく、好ましくは5000より大きく、より優先的には10000より大きいことを特徴とし、前記ファクタFは、以下の式により規定される、方法:
【数1】
(上式中、
μ
aは、前記繊維化される材料の温度T
aでの粘度であり、Pa・s単位で表され、
dは、前記バスケットの環状壁と前記繊維化スピナーの環状壁との間の距離であり、m単位で表され、
Nは、前記バスケットのオリフィスの数であり、かつ
Qは、前記繊維化される材料のフィード流速であり、kg/s単位で表される)。
【請求項2】
前記繊維化される材料の温度Taでの粘度が、50〜150Pa・sであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バスケットの環状壁と前記繊維化スピナーの環状壁との間の距離が、0.05〜0.2mであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記バスケットの環状壁が、50〜1000個のオリフィスを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記繊維化される材料のフィード流速が、0.01〜0.5kg/sであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記繊維化される材料が、下記の範囲によって規定される質量割合で、下記の構成要素を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法:
SiO2 35〜80%、
Al2O3 0〜30%、
CaO+ MgO 2〜35%、
Na2O+ K2O 0〜20%。
【請求項7】
前記繊維化される材料が、1000〜1550℃の温度でバスケットに供給されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
回転軸を中心として一緒に回転するのに適したバスケット及び繊維化スピナーを具備するミネラルウールの形成デバイスであって、
前記バスケットは、複数のオリフィスが穿孔された環状壁を有し、前記繊維化スピナーは、複数のオリフィスが穿孔された環状壁を含み、かつ、
前記バスケット及び前記繊維化スピナーの同時回転の影響のもとで、繊維化される材料が前記バスケットから前記繊維化スピナーに投射されるように、前記デバイスが構成されており、
前記バスケットの環状壁が、5個のオリフィス/cmよりも大きい線密度のオリフィスを有すること、
を特徴とする、デバイス。
【請求項9】
前記バスケットのオリフィスが、1.2〜2.9mmの直径を有することを特徴とする、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記バスケットのオリフィスが、1.5〜2.5mmの直径を有することを特徴とする、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるミネラルウール、又は請求項8〜10のいずれか一項に記載のデバイスを用いて得ることができるミネラルウールにおいて、0.4より大きい光散乱LSを有することを特徴とする、ミネラルウール。
【請求項12】
0.5より大きい光散乱LSを有することを特徴とする、請求項11に記載のミネラルウール。
【請求項13】
0.6より大きい光散乱LSを有することを特徴とする、請求項11に記載のミネラルウール。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項に記載のミネラルウールを含むか、又は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法によって得られるミネラルウールを含むか、又は請求項8〜10のいずれか一項に記載のデバイスを用いて得られるミネラルウールを含む、断熱性及び/又は防音性製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部遠心によって無機繊維を形成する方法、この方法の実施に特に適したデバイス、及び、この方法によって得ることができる無機繊維に関する。本発明による方法は、例えば断熱性及び/又は防音性製品の組成物に取り込まれることを意図したグラスウールの工業生産に特に適用される。
【背景技術】
【0002】
溶融ガラス流は、高速で回転している繊維化スピナーであって、その周囲で非常に多数のオリフィスが穿孔されている繊維化スピナーに導入され、該オリフィスを通して、ガラスが遠心力の影響下でフィラメントの形態で突出する。次いで、これらのフィラメントはスピナーの壁に近接して進む環状の高温高速繊細化流の作用を受け、その流れは前記フィラメントを繊細化させそしてそれらを繊維へと転化させる。形成された繊維は、この繊細化ガス流によって受容デバイスへ運ばれ、該受容デバイスは、一般にガス透過性の受容及び搬送ベルトによって形成されている。この方法は「内部遠心」と呼ばれる。
【0003】
この方法は多くの改良がなされており、それらの幾つかは特に繊維化スピナーに関するものであり、他のものは環状繊細化流を発生させるための手段に関するものである。
【0004】
仏国特許第1382917号明細書は、その原理が依然として広く使用されている繊維化部材を記載している。ここで、溶融材料はバスケットに搬送され、その垂直壁はオリフィスを備え、該オリフィスを通して材料は繊維化スピナーの内部壁へとジェットの形態で突出され、該繊維化スピナーはバスケットに取り付けられておりそして多数のオリフィスを備える。この壁は、繊維化スピナーの「バンド」と呼ばれている。良好な品質の繊維化を得るために、オリフィスは環状の列に分布しており、オリフィスの直径はそれらが属する列によって異なり、この直径はバンドの上部からその下部に向かって減少している。操作時に、繊維化スピナーの内部に溶融材料の一定のリザーブを維持することも必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
我々は、バスケットから繊維化スピナーへの溶融材料の投射中に気泡が溶融材料中に形成できることを確認した。繊維化条件によって、溶融材料のジェットが繊維化スピナーの内部のリザーブに衝突する箇所で形成される気泡は、持続することができそして繊維中に見られることができる。本発明は、繊維中に有意な量の気泡を得ることを可能にする繊維化方法を提案することを目的とする。繊維中の気泡の存在は、その特性の幾つか、例えばその密度を変更するのに有利であることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このように、本発明は、回転軸を中心として一緒に回転するのに適したバスケット及び繊維化スピナーを含み、ここで、該バスケットは複数のオリフィスが穿孔された環状壁を含みそして該繊維化スピナーは複数のオリフィスが穿孔された環状壁を含む、デバイスを用いた内部遠心による無機繊維の形成方法であって、
−繊維化される材料を温度T
aで前記バスケットにフィードすること、
−前記繊維化される材料を前記バスケット及び前記繊維化スピナーとの同時回転によって遠心すること、
を含む方法において、
ファクタFは、2000よりも大きいことを特徴とし、ここで、ファクタFは
【0007】
【数1】
【0008】
によって規定され、上式中、
μ
aは、温度T
aでの繊維化される材料の粘度であり、Pa・s単位で表され、
dは、バスケットの環状壁と繊維化スピナーの環状壁との間の距離であり、m単位で表され、
Nは、バスケットのオリフィスの数であり、そして
Qは、繊維化される材料のフィード流速であり、kg/s単位で表される、方法に関する。
【0009】
2000より大きいファクタFの選択は、有意な量の気泡を有する無機繊維を得ることを可能にする。ファクタFが高いほど、繊維中の気泡の量が多い。したがって、多量の気泡を得る目的では、ファクタFは、好ましくは5000超、7000超又は10000超、あるいは、15000超、又は、20000超、25000超、又はさらに30000超である。
【0010】
繊維化される材料の粘度μは、Vogel−Fulcher−Tammannの式に従って決定することができる。
【0011】
【数2】
【0012】
上式中、Tは考慮される温度であり、A、B及びCは、考慮される材料に特有の定数であり、従来的に、考慮される材料についてのμ及びTの3組の測定値から始まる回帰によって当業者によって決定される。バスケットのフィード温度T
aでの粘度μ
aは、一般に、50〜150Pa・s、好ましくは60〜130Pa・sである。
【0013】
バスケットの環状壁と繊維化スピナーの環状壁との間の距離dは、一般に、0.05〜0.2mである。それは、繊維化スピナーの直径φ
aとバスケットの直径φ
pとの間の差の半分によって規定される。バスケット及び繊維化スピナーの直径は、繊維化デバイスが停止しているときに測定される。バスケットの直径φ
pは、その環状壁の回転軸に対する最も外側の点を考慮することによって測定され、一方、繊維化スピナーの直径φ
aは、その環状壁の外側部分の最も高い点を考慮することによって測定される。繊維化スピナーは、一般に、200〜800mm、例えば約200、300、400又は600mmの直径を有する。繊維化スピナーのサイズによって、バスケットは70〜400mm、例えば約70、200又は300mmの直径を有することができる。繊維化スピナーの直径とバスケットの直径との比φ
a/φ
pは、好ましくは2より大きく、又は2.2より大きく、又はさらには2.5より大きい。
【0014】
バスケットの環状壁は、一般に、50〜1000個のオリフィス、好ましくは100〜900個のオリフィス、より優先的には150〜800個のオリフィスを含む。ここでは、繊維化デバイスの操作中に有用なオリフィス、すなわち、それを通してバスケットと繊維化スピナーとの間に繊維化すべき材料のジェットが実際に形成されるオリフィスのみが考慮されることが理解される。オリフィスは、繊維化スピナーの環状壁に対して繊維化される材料を均一に分配するために、環状壁の全高にわたって環状壁の周りの1つ以上の列にわたって、特に2〜6列にわたって形成されうる。オリフィスは、一般に、1.5〜3mmの直径を有する。バスケットの環状壁は、2個のオリフィス/cmよりも大きい、好ましくは3個のオリフィス/cmよりも大きい、又は5個のオリフィス/cmよりも大きい、又は、さらには7個のオリフィス/cmより大きい、線密度、すなわち、オリフィスの数とバスケットの周囲長さとの比のオリフィスを含む。
【0015】
繊維化スピナーの環状壁は、一般に、10000〜60000個のオリフィスを含む。スピナーのオリフィスの数は、もちろんその直径に適合されるであろう。これらのオリフィスは、一般に、0.5〜1.5mmの直径を有する。オリフィスは、一般に、環状壁に沿って数列に分布している。繊維化スピナーのオリフィスは、環状壁全体にわたって一定の直径を有することができる。環状壁はまた、例えば国際公開第02/064520号パンフレットに記載されているように、各々が異なる直径のオリフィスを含む幾つかの環状ゾーンを含むこともできる。
【0016】
バスケット中での繊維化される材料のフィード流速Qは、一般に、0.01〜0.5kg/sである。バスケットのオリフィス当たりの流速、すなわち比Q/Nは、好ましくは0.1g/sより大きく、又は0.8g/sより大きく、最大2g/sまでの範囲でありうる。バスケット内での繊維化される材料のフィード流速は排出量から推定することができる。
【0017】
バスケット及び繊維化スピナーは、一般に、1000〜4000rpmの速度で回転する。
【0018】
本発明は、回転軸を中心として一緒に回転するのに適したバスケット及び繊維化スピナーを含み、ここで、該バスケットは複数のオリフィスが穿孔された環状壁を含みそして該繊維化スピナーは複数のオリフィスが穿孔された環状壁を含む、無機繊維の形成デバイスにおいて、
前記バスケットの環状壁は、5個のオリフィス/cmよりも大きい、好ましくは7個のオリフィス/cmよりも大きい線密度のオリフィスを含むことを特徴とする、デバイスに関する。
【0019】
気泡は、繊維化スピナーにおける溶融材料のリザーブに対するバスケットから生じるジェットの衝突の間に発生するので、一定の流速において、バスケットにて形成されるジェットの数を増やすことは実際に有利である。このためには、本発明によるデバイスは、より高い線密度のオリフィス、したがってより多数のオリフィスを有するバスケットであって、それで無機繊維中の気泡の存在を選好するために慣用的に使用されているバスケットを含む。このようにして、バスケットの環状壁は、例えば直径70mmのバスケットでは110〜210個のオリフィス、直径200mmのバスケットでは310〜620個のオリフィス、又はさらには、直径300mmのバスケットでは470〜940個のオリフィスを含むことができる。
【0020】
バスケットのオリフィスは、慣用的に、1〜4mmの直径を有することができる。1つの特定の実施形態において、しかしながら、バスケットのオリフィスの数の増加が繊維化される材料の流速に及ぼす可能性がある影響を相殺するために、バスケットのオリフィスの直径は従来から使用されているものの直径よりも小さい。直径70mmで2*50のオリフィスを含む従来のバスケットの場合には、オリフィスは、一般に、約3mmの直径を有する。したがって、本発明によるデバイスにおいて、バスケットのオリフィスの直径は、有利には1.2〜2.9mm、又は1.5〜2.5mmの直径を有する。しかしながら、繊維化される材料の粘度又はさらは遠心速度などの他の要因もまた、本発明による方法の実施の間に、必ずしもバスケットのオリフィスの直径を減少させることなく、繊維化される材料の流速を適合させることを可能にできる。
【0021】
バスケット及び繊維化スピナーに関して上述した他の特徴は、明らかに、本発明によるデバイスに有効であり続ける。
【0022】
本発明によるデバイスは、一般に、上述のように、高温繊細化ガスジェットを発生させる環状バーナーを含む。それはまた、バーナーの下方に配置されたブローリングをも含むことができる。ブローリングは、回転軸に対する繊維の大きすぎる分散を防ぐことを可能にする。デバイスはまた、繊維化スピナーの最下部ゾーンを加熱し、繊維化スピナーの環状壁の高さにわたる温度勾配の形成を防止又は制限するために、繊維化スピナーの下方にインダクションリング及び/又は内部バーナーをも含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明による無機繊維を形成するためのデバイスの断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
用語「高」、「低」、「上(トップ)」及び「下(ボトム)」は、デバイスが遠心位置にあるとき、すなわちバスケット及び繊維化スピナーの回転軸が垂直な軸に沿っているときに、垂直軸に対して規定され、繊維化される材料はトップを介してフィードされる。
【0025】
無機繊維を形成するためのデバイスは、繊維化スピナー10、バスケット20及びモータ(図示せず)によって回転されるように意図された軸Xのシャフト30を含む。シャフト30は中空である。その上端で、シャフト30は、繊維化される溶融材料を供給するための手段に接続されている。繊維化スピナー10及びバスケット20は、ハブ31によりシャフト30の下端に一緒に固定されている。繊維化スピナー10は、複数のオリフィス12が穿孔された環状壁11及びウェブ13を含む。ウェブ13は、環状壁10とハブ31との間で繊維化スピナーのトップを形成している。スピナーの直径φ
aは、軸Xと環状壁11の外側部分上の高い点A、すなわち、ウェブ13と環状壁11との間のショルダーとの間の距離により規定される。バスケット20は、複数のオリフィス22が穿孔された環状壁21を含む。バスケットの直径φ
pは、軸Xとの環状壁11の最外点との間の距離によって規定される。バスケット20は、繊維化スピナー10の内部に配置されている。無機繊維を形成するためのデバイスが繊維化姿勢にあるときに、軸Xは垂直である。
【0026】
本発明によるデバイスが作動しているときに、シャフト30、繊維化スピナー10及びバスケット20は一緒に軸Xを中心として回転する。繊維化される溶融材料100は、シャフト30中をフィード手段からバスケットへ流れ、そこで、広がる。回転の影響下で、繊維化される溶融材料はバスケット20の環状壁21上に投射され、バスケット20の複数のオリフィス22を通過しそして繊維化スピナー10の環状壁11上にフィラメント101の形態で投射される。次に、繊維化スピナー10の環状壁11に穿孔された複数のオリフィス12にフィードするための、繊維化される溶融材料の永久リザーブ102は繊維化スピナー10において形成される。繊維化される溶融材料は繊維化スピナー10の複数のオリフィス12を通過してフローコーン103を形成し、プレファイバ104へ、次いで繊維105へと伸長する。
【0027】
本発明による方法の条件は、繊維化スピナー10内に存在するリザーブ102とフィラメント101が衝突する位置において、繊維化される材料中に気泡が形成されるのに好適である。気泡は得られる無機繊維中に気泡を持続させるのに十分である量及びサイズで発生する。
【0028】
内部遠心デバイスは、一般に、高温繊細化ガスジェットを生成する環状バーナー40を含む。環状バーナーは、対称軸として、シャフト30の回転軸Xを有する。環状バーナーのアウトレットは、繊維化スピナー10の環状壁11の上方に位置し、繊細化ガスジェットは繊維化スピナー10の環状壁11の接線方向にある。繊細化ガスジェットは、繊維化スピナー10の環状壁11と、繊維化スピナー10のアウトレットに形成されるフローコーン103との両方を加熱することを可能にする。環状バーナー40の繊細化ガスジェットの作用下に、プレファイバ104は先細化され、その端部はステープル繊維105を生成し、次いで、繊維化スピナー10の下方で回収される。
【0029】
無機繊維を形成するためのデバイスは、バーナー40の下方に配置されたブローリング50をも含むことができる。ブローリング50は、繊維105を軸Xに向けて後退させ、それにより繊維105の分散が軸Xから遠くなりすぎることを防止する効果を有する。
【0030】
繊維化される材料の組成は、内部遠心法によって繊維化することができる限り、特に限定されない。それは、製造される無機繊維に望まれる特性、例えば生体溶解性、耐火性又は断熱特性に基づいて変更しうる。繊維化される材料は、好ましくは、ソーダライムホウケイ酸ガラス組成物である。それは特に、下記の範囲によって規定される質量割合で、下記の構成要素を含む組成を有しうる。
【0031】
SiO
2 35〜80%、
Al
2O
3 0〜30%、
CaO + MgO 2〜35%、
Na
2O + K
2O 0〜20%
であり、一般に、SiO
2 + Al
2O
3は50〜80質量%の範囲内であり、Na
2O + K
2O + B
2O
3は5〜30質量%の範囲内である。
【0032】
繊維化される材料は、特に下記の組成を有してもよい。
SiO
2 50〜75%、
Al
2O
3 0〜8%、
CaO+ MgO 2〜20%、
Fe
2O
3 0〜3%、
Na
2O+ K
2O 12〜20%、
B
2O
3 2〜10%、
【0033】
又はさらには下記の組成
SiO
2 35〜60%、
Al
2O
3 10〜30%、
CaO+ MgO 10〜35%、
Fe
2O
3 2〜10%、
Na
2O+ K
2O 0〜20%。
【0034】
繊維化される材料は純粋な成分から製造されてもよいが、様々な不純物を導入する天然原料の混合物を溶融することによっても得られる。
【0035】
本発明により繊維化される材料は、好ましくは下記の特性を有する。
- 100Pa・sの粘度に対応する温度(Tlog3)が1200℃未満、又は1150℃未満、好ましくは1020℃〜1100℃、又は、1050℃〜1080℃であること、及び、
- Tlog3と液相線温度(T液相線)との間の差が50℃を超えるような液相線温度(T液相線)であり、特に870℃又は900℃〜950℃の液相線温度であること。
【0036】
シャフト30のインレットにおける繊維化される材料のフィード温度T
aは、1000℃〜1550℃で変更しうる。それは多数のパラメータ、特に繊維化される材料の性質及び繊維化デバイスの特性に依存しうる。温度T
aは、一般に、約1000℃〜1200℃、好ましくは1020℃〜1100℃である。
【0037】
本発明による無機繊維の形成方法及び本発明による無機繊維の形成デバイスは、有意な量の気泡を有する無機繊維を得ることを可能にする。無機繊維中に存在する気泡は光散乱測定によって定量化することができる。したがって、本発明はまた、0.4より大きい、好ましくは0.5より大きい、より優先的には0.6より大きい光散乱LSを有する無機繊維、特にミネラルウールにも関する。無機繊維の光散乱LSは、指標液体で満たされた分光光度計キュベット内に配置された無機繊維によって散乱された光度の測定によって決定される。測定プロトコルは下記の通りである。
【0038】
−原理
10mm×10mm×40mmのキュベットを、LEDスポットライトを用いて第一の側面を介して照射し、所定の露光時間にわたって、第一の側面に垂直なキュベットの側面に対して黒色背景上に写真を撮る。全てのサンプルについて同一である露光時間は、検出器が決して飽和しないように選ばれる。次いで、キュベットの端から1.5mm及びキュベットのボトムから3mmで画定された7mm×28mmの領域にわたるピクセルの光度の中央値を画像分析により測定する。
【0039】
−キャリブレーション
測定値を較正するために、指標液体(フタル酸ジメチル)のみを含有するキュベット及び水中で100倍に希釈されたミルクを含有するキュベットについて、2つの参照点を測定する。
【0040】
−測定
バージンミネラルバインダ繊維400mgのサンプルを指標液体で満たしたキュベットに入れる。光度の中央値が測定されると、このサンプルの光散乱は次の式に従って計算される。
【0042】
上式中、I(サンプル)、I(指標液体)及びI(ミルク)は、それぞれサンプル、指標液体及び100倍に希釈されたミルクの強度の中央値である。所与の無機繊維の光散乱LSは、これらの繊維の少なくとも6つのサンプルについて測定された光散乱の平均に対応する。
【0043】
本発明による無機繊維は、好ましくは、繊維化される材料に関して上記で規定されたとおりの組成を有する。
【0044】
最後に、本発明はまた、本発明による無機繊維の形成方法によって、又は、本発明による無機繊維の形成デバイスの助けを借りて得られる本発明による無機繊維を含む断熱性及び/又は防音性製品に関する。
【実施例】
【0045】
本発明を下記の非限定的な実施例を用いて説明する。
【0046】
例
参考例(Ref.)、比較例(C1及びC2)ならびに本発明による例1及び2は質量パーセントで下記の組成を有する、繊維化される材料を用いて製造された。
【0047】
SiO
2 65.3%
Al
2O
3 2.1%
CaO 8.1%
MgO 2.4%
Na
2O 16.4%
K
2O 0.7%
B
2O
3 4.5%
【0048】
使用した繊維化デバイスの特徴及び繊維化条件は、下記の表1に詳細に記載される。
【0049】
参考例については、使用される繊維化デバイスは、ボトムを有する繊維化スピナーを含むバスケットなしのデバイスである。それゆえ、得られた繊維は気泡を含まない。例C1、例1及び例2については、使用される繊維化デバイスは、従来のバスケットを使用する比較例C1と比較して、バスケットが例1及び例2についてはより多数の孔を有することを除いて同一である。
【0050】
【表1】
【0051】
このようにして得られた繊維の光散乱を上記のように測定し、そして下記の表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
例1及び例2からの繊維は、参照繊維及び比較例C1からの繊維よりもはるかに大きい光散乱を有し、これは例1及び例2からの繊維中の気泡の存在を実証している。
<態様1>
回転軸を中心として一緒に回転するのに適したバスケット及び繊維化スピナーを具備するデバイスを用いた内部遠心による無機繊維の形成方法であって、
ここで、前記バスケットは、複数のオリフィスが穿孔された環状壁を有し、かつ前記繊維化スピナーは、複数のオリフィスが穿孔された環状壁を有し、
この方法は、以下を含み:
−繊維化される材料を、前記バスケットに温度Taでフィードすること、
−前記繊維化される材料を、前記バスケット及び繊維化スピナーの同時回転によって遠心すること、
ここで、ファクタFが、2000より大きく、好ましくは5000より大きく、より優先的には10000より大きいことを特徴とし、前記ファクタFは、以下の式により規定される、方法:
【数1】
(上式中、
μaは、前記繊維化される材料の温度Taでの粘度であり、Pa・s単位で表され、
dは、前記バスケットの環状壁と前記繊維化スピナーの環状壁との間の距離であり、m単位で表され、
Nは、前記バスケットのオリフィスの数であり、かつ
Qは、前記繊維化される材料のフィード流速であり、kg/s単位で表される)。
<態様2>
前記繊維化される材料の温度Taでの粘度が、50〜150Pa・sであることを特徴とする、態様1に記載の方法。
<態様3>
前記バスケットの環状壁と前記繊維化スピナーの環状壁との間の距離が、0.05〜0.2mであることを特徴とする、態様1又は2に記載の方法。
<態様4>
前記バスケットの環状壁が、50〜1000個のオリフィスを含むことを特徴とする、態様1〜3のいずれか一項に記載の方法。
<態様5>
前記繊維化される材料のフィード流速が、0.01〜0.5kg/sであることを特徴とする、態様1〜4のいずれか一項に記載の方法。
<態様6>
前記繊維化される材料が、下記の範囲によって規定される質量割合で、下記の構成要素を含むことを特徴とする、態様1〜5のいずれか一項に記載の方法:
SiO2 35〜80%、
Al2O3 0〜30%、
CaO+ MgO 2〜35%、
Na2O+ K2O 0〜20%。
<態様7>
前記繊維化される材料が、1000〜1550℃の温度でバスケットに供給されることを特徴とする態様6に記載の方法。
<態様8>
回転軸を中心として一緒に回転するのに適したバスケット及び繊維化スピナーを具備する無機繊維の形成デバイスであって、前記バスケットは、複数のオリフィスが穿孔された環状壁を有し、かつ前記繊維化スピナーは、複数のオリフィスが穿孔された環状壁を含み 前記バスケットの環状壁が、5個のオリフィス/cmよりも大きい線密度のオリフィスを有することを特徴とする、デバイス。
<態様9>
前記バスケットのオリフィスが、1.2〜2.9mmの直径を有することを特徴とする、態様8に記載のデバイス。
<態様10>
前記バスケットのオリフィスが、1.5〜2.5mmの直径を有することを特徴とする、態様9に記載のデバイス。
<態様11>
態様1〜7のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる無機繊維、又は態様8〜10のいずれか一項に記載のデバイスを用いて得ることができる無機繊維において、0.4より大きい光散乱LSを有することを特徴とする、無機繊維。
<態様12>
0.5より大きい光散乱LSを有することを特徴とする、態様11に記載の無機繊維。
<態様13>
0.6より大きい光散乱LSを有することを特徴とする、態様11に記載の無機繊維。
<態様14>
態様11〜13のいずれか一項に記載の無機繊維を含むか、又は、態様1〜7のいずれか一項に記載の方法によって得られる無機繊維を含むか、又は態様8〜10のいずれか一項に記載のデバイスを用いて得られる無機繊維を含む、断熱性及び/又は防音性製品。