特許第6970791号(P6970791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970791
(24)【登録日】2021年11月2日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20211111BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H01L21/30 572B
   H01L21/304 647Z
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 648G
   H01L21/304 648F
   H01L21/304 648K
   H01L21/304 651M
   H01L21/304 651B
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-121223(P2020-121223)
(22)【出願日】2020年7月15日
(62)【分割の表示】特願2019-136250(P2019-136250)の分割
【原出願日】2015年8月21日
(65)【公開番号】特開2020-181993(P2020-181993A)
(43)【公開日】2020年11月5日
【審査請求日】2020年7月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-201483(P2014-201483)
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 邦浩
(72)【発明者】
【氏名】南 健治
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 裕次
(72)【発明者】
【氏名】林 航之介
【審査官】 今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−004879(JP,A)
【文献】 特開2008−004878(JP,A)
【文献】 特開2013−074090(JP,A)
【文献】 特開2007−165842(JP,A)
【文献】 特開2000−195835(JP,A)
【文献】 特許第6587865(JP,B2)
【文献】 特許第6736735(JP,B2)
【文献】 特許第5460633(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30、21/304
G03F 7/26−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸溶液及び過酸化水素水の混合液を用いて基板を処理する基板処理装置であって、
前記過酸化水素水の沸点以上で所定の基板処理温度以上の温度の硫酸溶液を前記基板の処理対象面とは反対面に供給する硫酸溶液供給部と、
前記基板の処理対象面とは反対面に供給される前記硫酸溶液の温度より低い温度の前記混合液を前記基板の処理対象面に供給する混合液供給部と、
制御部とを有し、
前記制御部は、前記硫酸溶液供給部に対し、前記基板の温度を前記基板処理温度以上とするように前記過酸化水素水の沸点以上で前記所定の基板処理温度以上の温度の硫酸溶液を前記基板の処理対象面とは反対面に供給させ、前記混合液供給部に対し、前記基板処理温度以上になった前記基板に対して、前記硫酸溶液の温度より低い温度の前記混合液を前記基板の処理対象面に供給させることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記混合液の温度は、前記過酸化水素水の沸点より低いことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記硫酸溶液供給部に対し、前記基板の処理対象面とは反対面への前記硫酸溶液の供給を継続させつつ、前記混合液供給部に対し、前記硫酸溶液の温度より低い温度の前記混合液を前記基板の処理対象面に供給させることを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記硫酸溶液を貯留する第1の貯留部と、
前記第1の貯留部内の前記硫酸溶液を循環させる循環管と、
前記過酸化水素水を貯留する第2の貯留部と、
前記第1の貯留部に貯留される前記硫酸溶液を加熱する第1の加熱部と、
前記循環管に個別に接続され、前記第1の貯留部に貯留される前記硫酸溶液が流れる第1の供給管と第2の供給管とを有し、
前記混合液を供給する液供給部は前記第1の供給管を含み、
前記硫酸溶液を供給する液供給部は前記第2の供給管を含み、
前記2の供給管には、その内部を流れる前記硫酸溶液を加熱する第2の加熱部を有し、
前記第1の供給管には、前記第2の貯留部に貯留される前記過酸化水素水が流れる混合管が接続されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
硫酸溶液及び過酸化水素水の混合液を用いて基板を処理する基板処理方法であって、
前記過酸化水素水の沸点以上で所定の基板処理温度以上の温度の硫酸溶液を前記基板の処理対象面とは反対面に供給し、前記基板の温度を前記基板処理温度以上とする工程と、
前記基板処理温度以上になった前記基板に対して、前記硫酸溶液の温度より低い温度の前記混合液を前記基板の処理対象面に供給する工程と、
を有することを特徴とする基板処理方法。
【請求項6】
前記混合液の温度は、前記過酸化水素水の沸点より低いことを特徴とする請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記混合液を前記基板の処理対象面に供給する工程では、前記基板の処理対象面とは反対面への前記硫酸溶液の供給を継続させることを特徴とする請求項5または6に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶パネルなどの製造工程では、ウェーハや液晶基板などの基板の処理対象面に処理液を供給し、処理対象面を処理する基板処理装置が用いられている。この基板処理装置の中には、基板を水平状態で回転させて処理対象面の略中央に処理液を供給し、その処理液を遠心力によって処理対象面に広げるスピン処理装置が開発されている。さらに、一度利用した処理液を回収して再利用するスピン処理装置も開発されている。
【0003】
このような基板処理装置により、例えば、基板の処理対象面上のレジストを除去する場合には、処理液としてSPM(硫酸溶液及び過酸化水素水の混合液)を使用するSPM処理が用いられる。このSPM処理を用いた基板の枚葉処理では、硫酸溶液及び過酸化水素水を混合してから基板上に供給する方法や硫酸溶液及び過酸化水素水を基板上で混合する方法などがある。なお、レジスト除去後の基板は水洗及び乾燥され、あるいは、その水洗後に別の処理液で処理されて再度水洗及び乾燥された後、次の工程に運ばれる。
【0004】
前述のSPMを用いるだけのSPM処理では、処理が不十分となることがある。例えば、基板の処理対象面にイオン注入が行われている場合には、そのイオン注入後にレジスト膜の表面が硬化(変質)するため、この硬化したレジストをSPM処理により除去することは困難であり、基板上にはレジストの残渣が生じてしまう。そこで、処理性能の向上のため、高温(例えば160℃など)のSPMを用いて基板を処理することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−165842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、過酸化水素水は高温になればなるほど寿命が短くなるため、硫酸溶液に混合されて高温になると、基板上に到達する前に分解が進み、処理性能の向上が不十分となる。そこで、過酸化水素水が残存するように大量の過酸化水素水を硫酸溶液に混合すると、硫酸溶液が薄まるため、処理液を再利用することが難しくなり、トータルの処理液使用量が増加してしまう。また、高温の硫酸溶液と、過酸化水素水を混合すると、それらが十分に混ざらず過酸化水素水の突沸、すなわちHのHOの突沸(激しい沸騰)が起こり、過酸化水素水が消失してしまう。詳しくは、高温の硫酸溶液(160℃)が過酸化水素水と接することで、硫酸溶液の温度で過酸化水素水の成分のHOが急激に沸騰してしまう。この現象によって、硫酸溶液と混合する前に過酸化水素水が消失するため、ペルオキソ一硫酸及びペルオキソ二硫酸、つまりレジスト剥離に寄与する酸化性物質が生成されないので、処理性能の向上が不十分となることがある。このようなことから、処理性能の向上及び処理液使用量の低減が望まれている。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、処理性能の向上及び処理液使用量の低減を実現することができる基板処理装置及び基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る基板処理装置は、
硫酸溶液及び過酸化水素水の混合液を用いて基板を処理する基板処理装置であって、
前記過酸化水素水の沸点以上で所定の基板処理温度以上の温度の硫酸溶液を前記基板の処理対象面とは反対面に供給する硫酸溶液供給部と、
前記基板の処理対象面とは反対面に供給される前記硫酸溶液の温度より低い温度の前記混合液を前記基板の処理対象面に供給する混合液供給部と、
制御部とを有し、
前記制御部は、前記硫酸溶液供給部に対し、前記基板の温度を前記基板処理温度以上とするように前記過酸化水素水の沸点以上で前記所定の基板処理温度以上の温度の硫酸溶液を前記基板の処理対象面とは反対面に供給させ、前記混合液供給部に対し、前記基板処理温度以上になった前記基板に対して、前記硫酸溶液の温度より低い温度の前記混合液を前記基板の処理対象面に供給させることを特徴とする。
【0009】
実施形態に係る基板処理方法は、
硫酸溶液及び過酸化水素水の混合液を用いて基板を処理する基板処理方法であって、
前記過酸化水素水の沸点以上で所定の基板処理温度以上の温度の硫酸溶液を前記基板の処理対象面とは反対面に供給し、前記基板の温度を前記基板処理温度以上とする工程と、
前記基板処理温度以上になった前記基板に対して、前記硫酸溶液の温度より低い温度の前記混合液を前記基板の処理対象面に供給する工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、処理性能の向上及び処理液使用量の低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の一形態に係る基板処理装置の概略構成を示す図である。
図2】実施の一形態に係る硫酸溶液の硫酸濃度及び沸点の関係を説明するための説 明図である。
図3】実施の一形態に係るレジスト剥離の実験結果を説明するための説明図である 。
図4】実施の一形態に係る基板処理装置の液吐出タイミングを説明するための説明 図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、実施形態に係る基板処理装置1は、処理液により基板Wを処理する基板処理槽2と、その基板処理槽2に処理液を供給する液供給装置3と、基板処理槽2から排出された処理液を液供給装置3に戻す液戻し部4と、各部2、3及び4を制御する制御部5とを備えている。なお、本実施形態では、処理液として硫酸溶液及び過酸化水素水の混合液(以下、単にSPMという)を用いる。
【0014】
基板処理槽2は、槽内部に設けられたカップ2aと、そのカップ2a内で基板Wを水平状態で支持するテーブル2bと、そのテーブル2bを水平面内で回転させる回転機構2cとを具備している。
【0015】
カップ2aは、円筒形状に形成されており、テーブル2bを周囲から囲んで内部に収容する。カップ2aの周壁の上部は径方向の内側に向かって傾斜しており、テーブル2b上の基板Wの処理対象面Waが露出するように開口している。このカップ2aは、回転する基板Wの処理対象面Waから流れ落ちた処理液、さらに、基板Wの処理対象面Waやその反対面Wbから飛散した処理液などを受け取る。
【0016】
テーブル2bは、カップ2a内の中央付近に位置付けられ、水平面内で回転可能に設けられている。このテーブル2bは、ピンなどの支持部材2b1を複数有しており、それらの支持部材2b1により、ウェーハや液晶基板などの基板Wを挟み込むように支持する。この基板Wは処理対象面Waにマスク用などのレジスト膜(レジスト層)を有している。
【0017】
回転機構2cは、テーブル2bの中央を回転中心としてテーブル2bを回転させる。この回転機構2cは、テーブル2bの中央に連結された回転軸やその回転軸を回転させるモータ(いずれも図示せず)などを具備している。このモータは制御部5に電気的に接続されており、その駆動が制御部5により制御される。
【0018】
液供給装置3は、基板Wの処理対象面Waに第1温度の硫酸溶液を供給する第1の液供給部3aと、基板Wの処理対象面Waに第2温度のSPMを供給する第2の液供給部3bと、基板Wの処理対象面Waの反対面Wbに第3温度の硫酸溶液を供給する第3の液供給部3cと、各部3a、3b及び3cに供給する硫酸溶液を循環させる液循環部3dとを備えている。
【0019】
ここで、第1温度は過酸化水素水の沸点以上の所定の基板処理温度であり、第2温度は第1温度より低い温度である。また、第3温度は第1温度以上の温度である。所定の基板処理温度の範囲は、SPMにより基板Wを処理するときの温度範囲であり、例えば、150℃以上308℃以下の範囲内に設定されている(詳しくは、後述する)。一例として、所定の基板処理温度が150℃に決定された場合には、第1温度は150℃となり、第2温度は150℃未満となり、第3温度は150℃以上となる。また、例えば、所定の基板処理温度が200℃に決定された場合には、第1温度は200℃及び第3温度は200℃以上となるが、第2温度は150℃未満のままである。
【0020】
第1の液供給部3aは、テーブル2b上の基板Wの処理対象面Waに第1温度の硫酸溶液を供給する第1のノズル11と、その第1のノズル11と液循環部3dとを接続する供給管12と、その供給管12を流れる硫酸溶液を加熱する加熱部13と、供給管12を開閉する開閉弁14と、硫酸溶液の流れ方向を液循環部3dから第1のノズル11への一方向に限定する逆止弁15とを有している。
【0021】
第1のノズル11は、テーブル2b上の基板Wの処理対象面Waに向けて第1温度の硫酸溶液を吐出する。この第1のノズル11は、テーブル2b上の基板Wの処理対象面Waに沿って移動可能に設けられおり、そのテーブル2b上の基板Wの処理対象面Waに沿って移動しながら、あるいは、処理対象面Waの略中央に対向する所定位置から、処理対象面Waに向けて硫酸溶液を吐出する。
【0022】
供給管12は、第1のノズル11と液循環部3dとを接続する配管であり、この供給管12に開閉弁14及び逆止弁15が設けられている。開閉弁14としては、例えば、電磁弁などを用いることが可能である。この開閉弁14は制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて供給管12の流路を開閉する。
【0023】
加熱部13は、供給管12の途中にその供給管12を流れる硫酸溶液を加熱可能に設けられている。この加熱部13は制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて供給管12を流れる硫酸溶液を加熱する。この加熱部13としては、例えば、ヒータを用いることが可能である。加熱温度は、供給管12を流れる硫酸溶液の温度が第1温度となるように設定されている。
【0024】
第2の液供給部3bは、テーブル2b上の基板Wの処理対象面Waに第2温度のSPMを供給する第2のノズル21と、その第2のノズル21と液循環部3dとを接続する供給管22と、過酸化水素水を貯留する貯留部23と、その貯留部23と供給管22と接続する混合管24と、供給管22を開閉する開閉弁25と、混合管24を開閉する開閉弁26と、硫酸溶液の流れ方向を液循環部3dから第2のノズル21への一方向に限定する逆止弁27と、過酸化水素水の流れ方向を貯留部23から供給管22への一方向に限定する逆止弁28と、送液力を生じさせるポンプ29とを有している。なお、第2の液供給部3bは硫酸溶液及び過酸化水素水を混合してSPMを生成する混合液生成部として機能する。
【0025】
第2のノズル21は、テーブル2b上の基板Wの処理対象面Waに向けて第2温度のSPMを吐出する。この第2のノズル21は、テーブル2b上の基板Wの処理対象面Waに沿って移動可能に設けられおり、そのテーブル2b上の基板Wの処理対象面Waに沿って移動しながら、あるいは、処理対象面Waの略中央に対向する所定位置から、処理対象面Waに向けてSPMを吐出する。
【0026】
供給管22は、第2のノズル21と液循環部3dとを接続する配管であり、この供給管22に開閉弁25及び逆止弁27が設けられている。開閉弁25としては、例えば、電磁弁などを用いることが可能である。この開閉弁25は制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて供給管22の流路を開閉する。
【0027】
貯留部23は、常温(例えば20〜30℃程度)の過酸化水素水を貯留するタンクである。この貯留部23内の過酸化水素水は、ポンプ29の駆動によって混合管24に送られてその混合管24内を流れていく。ポンプ29は制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて混合管24に貯留部23内の過酸化水素水を送る。
【0028】
混合管24は、開閉弁25より下流側の供給管22と貯留部23とを接続する配管であり、この混合管24に開閉弁26及び逆止弁28が設けられている。開閉弁26としては、例えば、電磁弁などを用いることが可能である。この開閉弁26は制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて混合管24の流路を開閉する。
【0029】
この混合管24は供給管22に過酸化水素水を供給し、供給した過酸化水素水と供給管22内の硫酸溶液とを混合する。このとき、硫酸溶液と過酸化水素水が混合されると、その際の反応熱によってSPMの温度は高くなって第2温度となる(詳しくは、後述する)。
【0030】
第3の液供給部3cは、テーブル2b上の基板Wの処理対象面Waの反対面Wbに第3温度の硫酸溶液を供給する第3のノズル31と、その第3のノズル31と液循環部3dとを接続する供給管32と、その供給管32を流れる硫酸溶液を加熱する加熱部33と、供給管32を開閉する開閉弁34と、硫酸溶液の流れ方向を液循環部3dから第3のノズル31への一方向に限定する逆止弁35とを有している。
【0031】
第3のノズル31は、テーブル2b上の基板Wの処理対象面Waの裏面である反対面Wbに第3温度の硫酸溶液を吐出する。この第3のノズル31は、硫酸溶液を放射状に、あるいは、吐出角度を変えながら吐出することが可能であり、処理対象面Waの反対面Wbの略中央に対向する所定位置から硫酸溶液を吐出する。
【0032】
供給管32は、第3のノズル31と液循環部3dとを接続する配管であり、この供給管32に開閉弁34及び逆止弁35が設けられている。開閉弁34としては、例えば、電磁弁などを用いることが可能である。この開閉弁34は制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて供給管32の流路を開閉する。
【0033】
加熱部33は、供給管32の途中にその供給管32を流れる硫酸溶液を加熱可能に設けられている。この加熱部33は制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて供給管32を流れる硫酸溶液を加熱する。この加熱部33としては、例えば、ヒータを用いることが可能である。加熱温度は、供給管32を流れる硫酸溶液の温度が第3温度となるように設定されている。
【0034】
液循環部3dは、硫酸溶液を貯留する貯留部41と、その貯留部41内の硫酸溶液を循環させる循環管42と、その循環管42を流れる硫酸溶液を加熱する加熱部43と、循環管42の開度(すなわち循環する処理液の流量)を調整する調整弁44と、送液力を生じさせるポンプ45とを備えている。
【0035】
貯留部41は、例えば60℃以上120℃以下の硫酸溶液を貯留するタンクである。この貯留部41内の硫酸溶液は、ポンプ45の駆動によって循環管42に送られてその循環管42内を流れていく。ポンプ45は制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて循環管42に貯留部41内の硫酸溶液を送る。
【0036】
循環管42は、貯留部41から延びてその貯留部41に戻り、硫酸溶液を循環させる配管であり、この循環管42に調整弁44が設けられている。調整弁44としては、例えば、電磁弁などを用いることが可能である。この調整弁44は制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて循環管42の開度、すなわち流量を調整する。また、循環管42には、第1の液供給部3aの供給管12、第2の液供給部3bの供給管22及び第3の液供給部3cの供給管32が個別に接続されている。
【0037】
加熱部43は、循環管42の途中に設けられており、その循環管42を流れる硫酸溶液を加熱することが可能になっている。この加熱部43は制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて循環管42を流れる硫酸溶液を加熱する。この加熱部43としては、例えば、ヒータを用いることが可能である。加熱温度は、循環管42を流れる硫酸溶液の温度が硫酸溶液の沸点より小さく、例えば60℃以上120℃以下の範囲内、一例として80℃になるように設定されている。
【0038】
液戻し部4は、基板処理槽2のカップ2aから液体を回収する回収管4aと、その回収管4aを流れる回収液を冷却する冷却部4bとを備えている。回収管4aは、カップ2aの底面と液循環部3dの貯留部41とを接続する管であり、この回収管4aに冷却部4bが設けられている。冷却部4bとしては、例えば、ペルチェ素子や熱交換器などを用いることが可能である。この冷却部4bは制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて、回収管4a内を流れる回収液を冷却する。冷却温度は、回収液が例えば60℃以上120℃以下の範囲内、一例として80℃になるように設定されている。なお、SPMが基板Wの処理対象面Wa上で反応するとき、過酸化水素水が分解して水やペルオキソ一硫酸(過硫酸)、ペルオキソ二硫酸になるため、回収液は硫酸溶液となる。
【0039】
ここで、硫酸溶液及び過酸化水素水の反応熱は高くなるため、前述のように冷却部4bを設けているが、これに限るものではなく、硫酸溶液及び過酸化水素水の反応熱が問題とならない程度、すなわち回収液が例えば60℃以上120℃以下の範囲内になる場合には、回収液を冷却する必要が無くなるため、冷却部4bを設けなくても良い。
【0040】
制御部5は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、基板処理に関する基板処理情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部と(いずれも図示せず)を備えている。この制御部5は、基板処理情報や各種プログラムに基づいて基板処理槽2や液供給装置3、液戻し部4などの各部を制御する。例えば、基板処理槽2及び液供給装置3による基板処理や液循環、液戻し部4による液回収などの制御を行う。
【0041】
ここで、前述の処理液はSPMであるため、所定の基板処理温度範囲が150℃以上308℃以下になっていることが望ましいが、この範囲の上限温度及び下限温度について説明する。
【0042】
図2に示すように、硫酸溶液の硫酸濃度(wt%:質量パーセント濃度)と沸点(℃)との関係が示されている。なお、質量パーセント濃度とは、(溶質の質量/溶液の質量)×100である。この硫酸溶液の硫酸濃度と沸点との関係が図3にグラフA1として示されており、レジスト剥離の実験結果(○印又は×印)が硫酸溶液の硫酸濃度及びSPMの温度の組み合わせ毎に示されている。
【0043】
図3に示すように、レジスト剥離が可能である場合には(剥離可能)、○印(丸印)が示されており、レジストが残ってレジスト剥離が不完全である場合には(剥離残り)、×印(バツ印)が示されている。硫酸濃度が約65wt%から約96wt%の範囲以内であり、SPMの温度が150℃以上であれば、レジスト剥離が可能となっている。なお、硫酸濃度が65wt%であるとき、硫酸溶液の沸点は150℃であり、SPMの沸点も同じく150℃である。この実験結果から、所定の基板処理温度範囲の下限温度は150℃以上であることが望ましい。
【0044】
なお、図2からわかるように、硫酸溶液の沸点を150℃以上とするためには、硫酸溶液の硫酸濃度を65wt%以上とする必要があるが、硫酸溶液の硫酸濃度が65wt%より薄まるまでは、基板処理槽2から排出された排液を回収し、その回収液を硫酸溶液として使用することができる。
【0045】
次いで、所定の基板処理温度範囲の上限温度は、レジストを剥離することが可能である温度から決定される。ここで、レジスト剥離が可能な範囲は、図3において○印が付いている範囲である。○印が付いている範囲の硫酸濃度は、65wt%から96wt%の範囲である。このとき、図2に示すように、硫酸溶液の沸点の温度範囲は150℃以上308℃以下の範囲となり、それに伴い、SPMの温度範囲も硫酸溶液の沸点と同様、150℃以上308℃以下となる。この硫酸溶液の沸点とSPMの温度範囲の上限値から、所定の基板処理温度範囲の上限温度は308℃となる。このため、所定の基板処理温度範囲の上限温度は308℃以下であることが望ましい。
【0046】
ただし、前述の硫酸溶液及び過酸化水素水の混合液の比率は、除去プロセスにより変化するが、過酸化水素水の濃度が減ってしまうと剥離性が低下するため、例えば、硫酸溶液:過酸化水素水の体積比で100:1〜3:1の比率である(硫酸溶液の体積は過酸化水素水の体積に対して例えば3倍以上100倍以下である)。また、より好ましくは、HSO(98wt%):H(35wt%)=7:3〜20:1という比率である。
【0047】
なお、第2の液供給部3bにおいて、供給管22や混合管24の太さを変えたり、あるいは、供給管22の開閉弁25や混合管24の開閉弁26を調整弁に換えて管の開度を調整したりすることで、硫酸溶液及び過酸化水素水の混合液の比率を変えることが可能である。
【0048】
次に、前述の基板処理装置1が行う基板処理動作について図4を参照して説明する。制御部5は、基板処理情報や各種プログラムなどに基づいて基板処理を実行する。一例として所定の基板処理温度は150℃に決定されている。このとき、第1温度は150℃となり、第2温度は150℃未満となり、第3温度は150℃以上となる。また、硫酸溶液の硫酸濃度は65wt%以上である。
【0049】
まず、テーブル2b上の基板Wが回転機構2cにより所定の回転速度で回転し、その後、図4に示すように、ステップS1において、第1の液供給部3aの第1のノズル(第1ノズル)11から第1温度の硫酸溶液が基板Wの処理対象面Waに吐出され、さらに、第3の液供給部3cの第3のノズル(第3ノズル)31から第3温度の硫酸溶液が基板Wの処理対象面Waの反対面Wbに吐出される。
【0050】
このとき、第1のノズル11から硫酸溶液が基板Wの処理対象面Waの略中央に供給されると、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの処理対象面Waの全体に広がっていき、その表面に液膜が形成される。同じように、第3のノズル31から硫酸溶液が基板Wの処理対象面Waの反対面Wbの略中央に供給されると、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの処理対象面Waの反対面Wbの全体に広がっていき、その表面に液膜が形成される。なお、第3のノズル31を第1のノズル11に対向した位置に設けているが、これに限るものではなく、例えば、基板Wの回転軸に対して対称的に設置しても良い。
【0051】
ここで、基板Wの処理対象面Waの中心からずらした位置に処理液を供給するオフセットを行う場合には、基板Wの処理対象面Waの中心に処理液を供給する場合と比較すると、処理液が常に同じ基板W上の位置に供給されず、つまり、基板Wが回転していることで、基板Wに到達する処理液の位置が変化して、基板Wの広範囲を加熱することができる。さらに、処理液を放射状に吐出すれば、処理液が基板Wに供給される範囲が拡大されるので、基板Wの処理対象面Waの中心から外周にかけての加熱の均一性を向上させることができる。
【0052】
第1の液供給部3aでは、加熱部13により硫酸溶液が加熱され、その第1温度は150℃となっており、同様に、第3の液供給部3cでも、加熱部33により硫酸溶液は加熱され、その第3温度は150℃以上となっている。このような第1温度の硫酸溶液及び第3温度の硫酸溶液が基板Wに向けて吐出され、それらの硫酸溶液によって基板Wが温められる。
【0053】
ステップS1の液供給開始から所定時間t1が経過し、基板Wが十分に温まって所定の基板処理温度、すなわち150℃になると、ステップS2において、第1のノズル11からの硫酸溶液吐出が止められ、第2の液供給部3bにおいて硫酸溶液及び過酸化水素水が混合され、第2のノズル(第2ノズル)21から第2温度のSPMが基板Wの処理対象面Wa上に吐出される。
【0054】
このとき、第2のノズル21からSPMが基板Wの処理対象面Waの略中央に供給されると、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの処理対象面Waの全体に広がっていき、その表面に液膜が形成される。なお、第3のノズル31からの硫酸溶液吐出は継続されている。
【0055】
第2の液供給部3bでは、60℃以上120℃以下の硫酸溶液と常温(例えば20〜30℃程度)の過酸化水素水が混合されると、その際の反応熱によってSPMの温度は高くなって第2温度となるが、この第2温度は、所定の基板処理温度、すなわちSPMの沸点より低くなっているので、突沸を防止することができる。加えて、SPMが基板Wの処理対象面Wa上に到達するまで過酸化水素水の分解、すなわちペルオキソ一硫酸及びペルオキソ二硫酸の反応の促進を抑えることができる。また、基板Wの処理対象面Wa上では、加熱された基板Wの温度により過酸化水素水が分解し、酸化力の強いペルオキソ一硫酸及びペルオキソ二硫酸の反応が促進するので、レジスト剥離性を向上させることができる。
【0056】
なお、第1のノズル11からの硫酸溶液吐出が止められても、第3のノズル31からの硫酸溶液吐出が継続されているので、第3温度の硫酸溶液が基板Wの処理対象面Waの反対面Wbに供給され続け、基板Wの温度が維持されている。このため、第2のノズル21から吐出された第2温度のSPMによって基板Wの温度が低下することを抑止することができる。
【0057】
ただし、第3のノズル31からの硫酸溶液吐出は必ずしも必要なものではなく、例えば、第2のノズル21から吐出された第2温度のSPMによって基板Wの温度が低下しても、その基板Wの温度が所定の基板処理温度以上となる場合など、第3のノズル31からの硫酸溶液吐出を実行しないことも可能である。
【0058】
ここで、第2温度は過酸化水素水の沸点より低いことが望ましいが、これに限るものではなく、第2温度は過酸化水素水の沸点より高くても第1温度より低ければ良い。
【0059】
次に、ステップS2の液供給開始から所定時間t2が経過し、基板Wの処理対象面Waの全体が硫酸溶液からSPMに置換されると、ステップS3において、第2のノズル21からのSPM吐出が止められる。さらに、基板Wの回転速度が処理対象面Wa上のSPMが回転による遠心力によって飛散しない程度に遅くされ、基板Wの処理対象面Wa上のSPMがパドル状態(液溜まり状態)にされる。
【0060】
このパドル状態では、基板Wの処理対象面Waに対するSPMの供給が止められているため、基板Wの処理対象面Wa上のSPMの温度は基板Wの温度まで確実に上昇する。また、基板Wの処理対象面Waの反対面Wbには第3のノズル31から硫酸溶液が吐出され続けているため、基板Wの温度が維持され、基板Wの温度低下は防止されている。
【0061】
ステップS3の液供給停止から所定時間t3が経過すると、ステップS4において、再び、第2のノズル21から第2温度のSPMが基板Wの処理対象面Waに吐出される。さらに、基板Wの回転速度が処理対象面Wa上のSPMが回転による遠心力によって飛散する程度に速くされ、基板Wの処理対象面Wa上のSPMが新しいSPMに置換される。なお、基板Wの回転数を上げなくても良く、例えば、新しいSPMで、基板上にあるSPMを押し流しても良い。
【0062】
その後、ステップS4の液供給開始から所定時間t2が経過し、基板Wの処理対象面Wa上のパドル状態のSPMが新しいSPMに置換されると、ステップS5において、第2のノズル21からのSPM吐出が止められる。さらに、再び、基板Wの回転速度が処理対象面Wa上のSPMが回転による遠心力によって飛散しない程度に遅くされ、基板Wの処理対象面Wa上のSPMがパドル状態(液溜まり状態)にされる。
【0063】
このようにSPMの吐出及びパドル状態がn回(n=1以上)繰り返され、ステップS5の液供給停止から所定時間t3が経過すると、ステップS6において、第3のノズル31からの硫酸溶液吐出が止められる。さらに、基板Wの回転速度が処理対象面Wa上のSPMが回転による遠心力によって飛散する程度に速くされ、基板Wの処理対象面Wa上のSPMが飛ばされ、その後、基板Wの回転が停止される。
【0064】
なお、前述では、液供給の開始及び停止を所定時間で決定しているが、その他の手段としては、基板Wに供給される処理液の液膜厚を測定し、その液膜厚に応じて実施するようにしても良い。例えば、処理液を供給して膜厚が所定膜厚になれば液供給を停止し、所定膜厚より低くなると液供給を行う。また、基板W上に供給される処理液の温度を温度計により測定し、液温度に応じて液供給の開始及び停止を行うようにしても良い。
【0065】
ここで、第2温度のSPMは基板Wから排出されるとき、少なくとも反対面Wbに吐出された温度が高い硫酸溶液と混ざるため、過酸化水素水の分解が進み、硫酸溶液となる。この硫酸溶液は、カップ2aから回収管4aを流れて冷却部4bにより冷却され、その後、貯留部41に回収される。なお、SPMにおいては、ペルオキソ一硫酸及びペルオキソ二硫酸が生成されると、過酸化水素水は水に分解される。レジスト剥離時には、ペルオキソ一硫酸及びペルオキソ二硫酸の酸化力が働くが、高温状態(基板温度)により反応が促進されて消失する。つまり、残りの硫酸と水が基板表面から飛散し、基板Wの反対面に吐出している硫酸溶液と混合する。
【0066】
このようなSPMによるレジスト除去が完了すると、次に水洗が行われる。レジスト除去と水洗を同じ基板処理槽2で行う場合には、基板Wから排出された硫酸溶液と水洗用の水が混ざらないように二つの液受け部及びそれらの液受け部を切り換える機構を設け、処理液に応じて液受け部を切り換えることが望ましい。水洗後には、同一の基板処理槽2内で別の処理液での処理を行っても良く、その際には処理液が混合しないように処理液を切り換える処理液切り替え機構を設けることが望ましい。また、別の基板処理槽に基板Wを移動し、そこで他の処理液での処理を行っても良い。最終水洗後、基板Wを乾燥させて処理が終了する。
【0067】
以上説明したように、実施形態によれば、基板Wの処理対象面WaにSPMを供給する前に、基板Wが過酸化水素水の沸点以上の第1温度の硫酸溶液によって過酸化水素水の沸点以上に温められている。したがって、第1温度よりも低い第2温度のSPMが基板Wの処理対象面Wa上に供給されると、その処理対象面Wa上で過酸化水素水の沸点以上に温められる。このとき、SPM中の過酸化水素水が効率良く分解し、強い酸化力を有するペルオキソ一硫酸及びペルオキソ二硫酸が生成されるため、確実にレジストを除去することが可能となり、処理性能を向上させることができる。
【0068】
さらに、硫酸溶液及び過酸化水素水を混合してから基板Wの処理対象面Waに供給するが、SPMが基板Wの処理対象面Wa上に到達するまで、SPMの温度は第1温度よりも低い第2温度であるため、SPMが基板Wの処理対象面Wa上に到達するまで過酸化水素水の分解を抑えることが可能となる。つまり、SPMの温度を第1温度よりも低い第2温度にすることで、SPMが基板Wの処理対象面Wa上に到達するまで過酸化水素水の消失を防止することが可能となり、加えて、SPMが基板Wの処理対象面Wa上に到達するまで過酸化水素水の分解、すなわちペルオキソ一硫酸及びペルオキソ二硫酸の反応の促進を抑えることが可能となる。このため、大量の過酸化水素水を硫酸溶液に混合する必要もなくなり、過酸化水素水の使用量が減り、さらに、硫酸濃度低下が抑えられて再利用が容易となるので、トータルの処理液使用量を低減することができる。
【0069】
なお、前述のように硫酸溶液により基板Wを加熱することが重要である。例えば、基板Wをヒータで加熱した場合、ヒータは、赤外線を照射して加熱するが、基板W(半導体ウエハ)は赤外線を吸収せずに透過してしまう。基板Wが光を吸収しないで透過すると、基板W自体が加熱されない。また、基板Wの上に処理液があると、処理液がヒータからの赤外線を吸収することになる。つまり、基板Wが加熱されず、処理液だけが加熱される。したがって、基板Wは、加熱された処理液を媒介として加熱されていく。しかし、この場合だと、基板Wを加熱するため、処理液を高温に加熱するまでに時間を要する。また、処理液がSPMであれば、基板Wが加熱されずに先にSPMが加熱される。この場合には、SPMのペルオキソ一硫酸及びペルオキソ二硫酸の反応が促進するため、強い酸化力が一瞬のうちで消失してレジストを剥離することができなくなってしまう。
【0070】
ところが、高温の硫酸溶液を加熱媒体として使用すると、硫酸溶液の熱が基板Wに伝達するので、時間を要することなく基板W自体を加熱することができる。その結果、基板Wは高温状態になり、その上に供給される低温のSPMには基板Wの熱が伝わって、反応が促進されることで、レジストを良好に剥離することができる。このように硫酸溶液により基板Wを温めることがレジスト剥離に寄与する。この点から考えれば、加熱媒体として、硫酸溶液以外にも、高温の液体を用いることが可能である。また、加熱媒体として液体を用い、基板Wの処理対象面Waに直接、高温の液体を供給することによって、基板Wの処理対象面Waを直接加熱することができる。したがって、ヒータなどによる間接加熱に比べ、基板Wの処理対象面Waの加熱効率を向上させることができる。
【0071】
ここで、加熱媒体に硫酸溶液を採用した理由は、SPMを基板Wの処理対象面Wa上で反応させたとき、過酸化水素水が分解して水やペルオキソ一硫酸(過硫酸)、ペルオキソ二硫酸になるため、SPMを硫酸溶液として回収することができるからである。つまり、この硫酸溶液を加熱媒体として、あるいは、SPM生成のための硫酸溶液として再利用することが可能である。例えば、加熱媒体として硫酸溶液以外の加熱液を用いた場合、排液の再利用のためには、排液を加熱液と硫酸溶液に分離して回収する必要がある。ところが、前述のように加熱媒体として硫酸溶液を用いることで、排液が硫酸溶液となるため、排液を分離して回収する必要は無くなる。これにより、硫酸溶液用の配管を設けるだけで、分離回収機構を設ける必要は無くなるので、装置の簡略化を実現することができる。
【0072】
(他の実施形態)
前述の実施形態においては、第1の液供給部3aにより基板Wの処理対象面Waに第1温度の硫酸溶液を供給しているが、これに限るものではなく、その基板Wの処理対象面Waに対する硫酸溶液の供給を無くし、例えば、第3の液供給部3cにより、基板Wの処理対象面Waの反対面Wbに第3温度の硫酸溶液、つまり第1温度以上の硫酸溶液を供給して基板Wを温めるようにしても良い。すなわち、第1温度以上の硫酸溶液により基板Wを温めることが可能であれば、基板Wの処理対象面Wa及びその反対面Wbのどちらに硫酸溶液を供給しても良い。
【0073】
また、前述の実施形態においては、加熱した硫酸溶液により基板Wを温めているが、これに限るものではなく、その硫酸溶液による加熱に加え、基板Wを加熱する補助として、光を照射するランプや発熱するヒータ、電磁波を用いる電磁加熱器、また、ホットプレートなどの加熱部を用いることも可能である。なお、硫酸溶液による加熱よりも先に加熱部による加熱を実行すると、基板Wの処理対象面Wa上のレジストが炭化して除去し難くなることがあるため、加熱部による加熱よりも先に硫酸溶液による加熱を実行することが望ましい。
【0074】
また、前述の実施形態において、基板処理槽2のカップ2a内の硫酸溶液の硫酸濃度、あるいは、液戻し部4の回収管4aを流れる硫酸溶液の硫酸濃度を検出する濃度検出部を追加し、第2の液供給部3bによる液供給中、濃度検出部により検出された硫酸濃度に応じて制御部5により第1の液供給部3aの液供給(すなわち開閉弁14)を制御するようにしても良い。例えば、制御部5は、硫酸濃度が所定値(例えば65wt%)より低くなった場合、第1の液供給部3aに第1温度の硫酸溶液を供給させ、硫酸濃度が所定値以上となった場合、第1の液供給部3aに第1温度の硫酸溶液の供給を停止させる。これにより、回収液となる硫酸溶液の硫酸濃度、すなわち貯留部41内の硫酸溶液の硫酸濃度を所定値に維持することができる。
【0075】
また、前述の実施形態において、基板Wの処理対象面Waに第2温度のSPMを供給する際、基板Wの処理対象面Waに沿って第2のノズル21を移動させる場合には、基板Wの処理対象面Waの外周から中心に向けて移動させることが望ましい。この場合には、基板Wの処理対象面Waの外周から順次基板Wの温度が低下するため、基板Wの処理対象面Waの略中心に第2温度のSPMを供給する場合、あるいは、基板Wの中心から外周に向けて第2のノズル21を移動させながら供給を行う場合と比べ、基板Wの処理対象面Waの全体が第2温度のSPMによって一気に冷えてしまうことを抑止することができる。
【0076】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1 基板処理装置
3a 第1の液供給部
3b 第2の液供給部
3c 第3の液供給部
5 制御部
W 基板
Wa 処理対象面
Wb 処理対象面の反対面
図1
図2
図3
図4