(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
装着者の脚部に装着される脚部装具と、前記装着者の胴部に装着される胴部装具と、前記脚部装具を移動させて、前記脚部装具を介して前記装着者の脚部に該装着者の前後方向への歩行を補助するアシスト力を生成する動作補助機構とを備え、
前記動作補助機構は、前記胴部装具と前記脚部装具とを連結するアームと、前記アームを介して、前記脚部装具を左右方向に延びる軸線を中心として前記胴部装具に対して前後方向に回動させる駆動源とを有し、
前記胴部装具は、可撓性材料で形成され、少なくとも前記装着者の胴部の側面部を覆う形態のコルセット部と、前記可撓性材料よりも剛性の高い材料で形成され、前記コルセット部の側面部に設けられた剛体部とを有し、
前記剛体部は、上下方向に延び、前後方向に並ぶように配置され、前記コルセット部に固定されている複数の長尺部と、前後方向に延び、前記長尺部を連結する連結部とを有し、
前記アームは、前記剛体部の前記連結部に取り付けられていることを特徴とする歩行補助装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のような従来の歩行補助装置のように腰部装具によってアシスト力を受け止める構成の場合、腰部装具の構成部材の剛性が十分に高いものでなければ、十分にアシスト力を受け止めることができないおそれがあった。一方、腰部装具の構成部材の剛性を高めすぎると、腰部装具の重量が大きくなり、装着者の負担が増加してしまうおそれがあった。
【0008】
また、従来の歩行補助装置では、左右のアシスト力の入力方向、入力のタイミング等を対称性のあるものに制限した場合、アシスト力の設定の自由度が低下してしまい、装着者の歩行を十分に補助できなくなるおそれがあった。
【0009】
さらに、従来の歩行補助装置では、装着者に対してアシスト力を加えた際に、腰部装具にアシスト力の反力としての入力が生じて腰部装具が回動してしまい、装着者の腰部に対して柔軟性の低い腰部装具の一部が強く当接して、その当接している部分に応力集中が生じ、歩行補助装置の利用の快適性が低減するおそれがあった。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、軽量であり、アシスト力の設定の自由度が高く、装着者に対する応力集中が生じにくい歩行補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の歩行補助装置は、
装着者の脚部に装着される脚部装具と、前記装着者の胴部に装着される胴部装具と、前記脚部装具を移動させて、前記脚部装具を介して前記装着者の脚部に該装着者の前後方向への歩行を補助するアシスト力を生成する動作補助機構とを備え、
前記動作補助機構は、前記胴部装具と前記脚部装具とを連結するアームと、前記アームを介して、前記脚部装具を左右方向に延びる軸線を中心として前記胴部装具に対して前後方向に回動させる駆動源とを有し、
前記胴部装具は、可撓性材料で形成され、少なくとも前記装着者の胴部の側面部を覆う形態のコルセット部と、前記可撓性材料よりも剛性の高い材料で形成され、前記コルセット部の側面部に設けられた剛体部とを有し、
前記剛体部は、上下方向に延び、前後方向に並ぶように配置され、前記コルセット部に固定されている複数の長尺部と、前後方向に延び、前記長尺部を連結する連結部とを有し、
前記アームは、前記剛体部
の前記連結部に取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
このように、本発明の歩行補助装置では、脚部装具にアシスト力を伝達するためのアームが、胴部装具の剛体部に取り付けられており、その剛体部は、胴部装具のコルセット部に付設されている。コルセット部は、可撓性材料(例えば、布、化学繊維等)で形成されており、剛体部は、その可撓性材料よりも剛性の高い材料(例えば、金属、合成樹脂等)で形成されている。
【0013】
これにより、アームからアシスト力の反力が伝達された際には、剛体部は、その反力によって、その形状を維持したまま回動される。同時に、剛体部が付設されているコルセット部は、剛体部によってねじれ、たわみ等がある程度抑制されつつ、剛体部に引かれて装着者の胴部上を摺動する。その結果、コルセット部と装着者の胴部との間で摩擦力が生じ、その摩擦力によってアームから伝達された反力が相殺されることになる。
【0014】
したがって、本発明の歩行補助装置によれば、従来の歩行補助装置のように剛性の高い材料で形成されたフレームを備えていなくても、軽量の胴部装具を備えるだけで十分にアシスト力を受け止めることができるので、従来の歩行補助装置よりも重量を軽減することができる。
【0015】
また、本発明の歩行補助装置では、従来の歩行補助装置のように装着者の腰部を覆う腰部装具ではなく、装着者の胴部(具体的には、胸部、腹部及び腰部の少なくとも一部)を覆う胴部装具に、アームが連結されている。
【0016】
これにより、装着者の身体に加わる反力も、胴部装具(すなわち、装着者の体幹)という広い範囲で受け止められることになる。その結果、この歩行補助装置では、従来の歩行補助装置よりも、許容できる反力が大きくなっている。例えば、歩行補助装置が左右の脚部に対してアシスト力を加える構成であったとしても、それらのアシスト力の反力を互いに相殺させなくてもよくなっている。
【0017】
したがって、本発明の歩行補助装置によれば、アシスト力の入力方向、入力のタイミングを制限しなくても、そのアシスト力の反力は装着者の体幹によって受け止められるので、従来の歩行補助装置よりもアシスト力の設定の自由度を向上させることができる。
【0018】
さらに、本発明の歩行補助装置では、装着者の胴部に接する部材である胴部装具のうち、装着者の胴部の側面部を覆う形態のコルセット部が、柔軟性の高い可撓性材料で形成されている。
【0019】
これにより、装着者に対してアシスト力を加えた際にも、胴部装具の一部だけが装着者の身体に強く当接しにくくなっている。その結果、この歩行補助装置では、装着者の身体に対して胴部装具が当接している部分に応力集中が生じにくくなっている。
【0020】
したがって、本発明の歩行補助装置によれば、応力集中に起因する利用時の快適性の低減も抑制することができる。
【0021】
また、本発明の歩行補助装置
では
、前記剛体部は、上下方向に延び、前後方向に並ぶように配置され
、前記コルセット部に固定されている複数の長尺部と、前後方向に延び、前記長尺部を連結する連結部とを有し
、前記アームは、前記剛体部の前記連結部に取り付けられてい
る。
【0022】
脚部装具に連結されているアームは、装着者の脚部に対する脚部装具の当接位置等によって、その形状が異なる。例えば、装着者の大腿部の前面を押圧することによってアシスト力を発生させる構造の場合には、アームは装着者の大腿部の周面に沿って湾曲していることがある。このようなアームから伝達されるアシスト力の反力は、前後方向の成分だけでなく、左右方向の成分も含むものとなる。
【0023】
そこで、このように剛体部を、前後方向に並ぶように配置された複数の長尺部を、連結部で連結する構成にすると、剛体部の重量の増加を抑制しつつ、広範囲においてアシスト力の反力を受け止めるための摩擦力を発生させることができるようになる。これにより、アシスト力の反力が左右方向の成分を含む場合であっても、そのアシスト力の反力を十分に受け止めることができる。ひいては、その結果、アームの設計自由度を向上させることができる。
【0024】
また、本発明の歩行補助装置においては、
前記剛体部は、金属製の平板であることが好ましい。
【0025】
剛体部は、コルセット部を形成する可撓性材料よりも剛性が高い材料で形成されており、且つ、反力を受け止めるための摩擦力を生じさせる程度にコルセット部を摺動させることができる形状であればよい。例えば、剛体部の形状は、棒状であっても、ブロック状であってもよい。しかし、このように剛体部として金属製の平板を用いると、サイズ、重量の増大を抑制しつつ、十分な剛性を容易に得ることができる。
【0026】
また、本発明の歩行補助装置においては、
前記コルセット部は、前記可撓性材料で形成され、前記装着者の左右の側面部を覆う形態の一対の被覆部と、前記一対の被覆部を連結し、前記一対の被覆部同士の距離を調整可能なベルト部とを有していることが好ましい。
【0027】
このように構成すると、胴部装具の被覆部を、ベルト部を締め付けることによって装着者の胴部に十分に固定することができる。これにより、胴部装具と装着者の胴部との間に発生する摩擦力をさらに高めることができるようになる。その結果、さらに軽量の素材であっても、効率良くアシスト力の反力を受け止めることができるようになる。
【0028】
また、本発明の歩行補助装置においては、
前記装着者の肩部に装着される肩部装具を備え、
前記肩部装具は、前記胴部装具の上端部に連結されていることが好ましい。
【0029】
このような肩部装具を設けると、肩部装具によって胴部装具の位置を保持することができるので、アシスト力の反力が胴部装具に加わった際に、そのアシスト力によって胴部装具が装着者の身体に対して下方向にずれてしまうことを防止できる。また、装着時には、まず、肩部装具によって胴部装具がぶら下がった状態になるので、胴部装具の固定等を容易に行うことができる。
【0030】
また、本発明のような歩行補助装置では、アクチュエータは、例えば、装着者の股関節中心に対応する位置に配置されることが望ましいが、毎回の装着毎にその位置関係を調整するのは煩雑である。そこで、このような肩部装具を設けると、肩部装具からアクチュエータまでの距離を事前に決めることができるので、位置関係の調整を容易化して、使い勝手をさらに向上させることができる。
【0031】
また、本発明の歩行補助装置においては、
前記駆動源は、前記軸線を中心として回動する方向の駆動力を発生させるロータリー式のアクチュエータであることが好ましい。
【0032】
駆動源としては、バネ、シリンダー及びピストン、アクチュエータ等、種々様々な機構が採用し得るが、それによって発生する駆動力(ひいては、その反力)も、その駆動源によって、種々様々なものとなる。このうち、ロータリー式のアクチュエータによって発生する駆動力は、所定の軸線を中心として回動するものとなる。そのため、その反力も、所定の軸線を中心として回動するようなものになる。
【0033】
そこで、歩行補助装置の駆動源としてそのようなロータリー式のアクチュエータを採用すると、コルセット部の剛体部によって摺動させられる領域も、所定の軸線を中心として回動することになる。ひいては、他の駆動源を採用した場合比べ、摺動させられる領域を抑制することができるので、装着者に反力を受け止める際の違和感を与えにくくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、実施形態に係る歩行補助装置Aについて説明する。
【0036】
なお、以下の説明において、「前後方向」とは、歩行補助装置Aを装着した装着者Pが直立した状態における、その装着者Pの前後方向(歩行補助装置Aによって補助される歩行の方向)を指し、「左右方向」とは、その装着者Pの左右方向を指す。また、「前後方向に延びる軸線」、「左右方向に延びる軸線」とは、上記の前後方向、左右方向に沿うように伸びる軸線の他、前後方向に延び、且つ、左右又は上下に傾いた軸線、左右方向に延び、且つ、前後又は上下に傾いた軸線も含む。
【0037】
まず、歩行補助装置Aの構成について説明する。
【0038】
図1に示すように、歩行補助装置Aは、装着時に、装着者Pの脚部に装着される脚部装具1と、装着者の胴部に装着される胴部装具2と、脚部装具1を介して装着者Pの脚部に装着者の前後方向への歩行を補助するアシスト力を生成し、装着者Pに付与する動作補助機構3と、装着者の肩部に装着される肩部装具4とを備えている。
【0039】
ここで、本発明における「胴部」とは、胸部、腹部、及び、腰部の少なくとも1つを含む部分を指す。
【0040】
歩行補助装置Aでは、動作補助機構3によって、左右方向に延びる回動軸線aを中心として、胴部装具2に対して左右の脚部装具1を相互に回動させて、装着者Pの脚部に対してアシスト力を付与する。すなわち、歩行補助装置Aにおけるアシスト力は、回動軸線aを中心として、胴部装具2に対して脚部装具1を回動させる方向の力である。
【0041】
そして、そのアシスト力を付与する際には、胴部装具2に対して、回動軸線aを中心として、胴部装具2をねじるような反力(以下、この反力を単に「アシスト力の反力」という。)が加わることになる(
図2において回動軸線aを中心とする左右一対の矢印の方向参照)。
【0042】
なお、本発明の歩行補助装置は、本実施形態の歩行補助装置Aのように、装着者Pの左右の脚部の大腿部の各々に対して、脚部装具1からアシスト力を付与することによって、装着者Pの歩行を補助するものに限定されるものではない。
【0043】
例えば、動作補助機構を一方だけに設け、左右の脚部の一方に対してのみアシスト力を付与するものであってもよい。また、アシスト力を付与する部位は、下腿部、足平部等、装着者の脚部の大腿部以外の部分であってもよい。
【0044】
脚部装具1は、パット状の部材とベルト状の部材とによって構成されており、装着者Pの脚部の大腿部の前面をパッド状の部材で押圧する、又は、ベルト状の部材で引き上げることによって、脚部にアシスト力を伝達する部材である。
【0045】
なお、本発明の歩行補助装置の脚部装具は、このような構成に限定されるものではなく、腹部装具に対して移動可能であり、装着者の脚部にアシスト力を付与できるものであればよい。例えば、アシスト力が脚部を引っ張る方向の力を含む場合には、パッド状の部材ではなく、脚部に固定するような部材を用いてもよい。
【0046】
また、脚部への当接位置は、アシスト力を加える部位に応じて適宜変更してよい。例えば、下腿部にアシスト力を加える構成である場合には、脚部装具が下腿部の前面又は背面に当接するように構成すればよい。
【0047】
胴部装具2は、装着者Pの胴部の側面部を覆う形態のコルセット部20と、コルセット部20の側面部(具体的には、後述する被覆部20a)の外周面上に付設された剛体部21とを有している。
【0048】
図2に示すように、コルセット部20は、装着時に装着者Pの左右の側面部を覆う形態の一対の被覆部20aと、一対の被覆部20aを連結し、一対の被覆部20a同士の距離を調整可能な締結ベルト20b(ベルト部)とを有している。
【0049】
被覆部20aは、布、化学繊維等の可撓性材料で形成されている。被覆部20aの上下方向の長さは、装着者Pの肋骨から腸骨までを覆う長さとなっている。これは、後述するように、アシスト力の反力を装着者Pの体幹によって効率良く受け止めることができるようにするためである。
【0050】
なお、本発明の被覆部はこのような構成に限定されるものではなく、装着時に少なくとも装着者の胴部の側面部を覆うことができるものであればよい。例えば、装着者の胸部、腹部及び腰部の少なくとも一部を覆うものであればよい。
【0051】
締結ベルト20bは、前面側及び背面側に3つずつ上下方向に並ぶように設けられている(
図1A及び
図1C参照)。歩行補助装置Aでは、それらの締結ベルト20bの締め付け度合いを調整することによって、被覆部20aを装着者Pの胴部に密着させることができるようになっている。
【0052】
図1B及び
図2に示すように、剛体部21は、上下方向に延び、前後方向に並ぶように配置された3本の長尺部21aと、長尺部21aの下端部を連結するように前後方向に延びる連結部21bとを有している。長尺部21a及び連結部21bは、一枚の金属製の平板を切り抜くことによって、一体的に形成されている。
【0053】
剛体部21の剛性は、可撓製材料で形成されたコルセット部20よりも高く、且つ、コルセット部20を締結ベルト20bによって装着者Pの胴部に締め付けた際に、変形可能な程度の剛性となっている。
【0054】
3本の長尺部21aの各々は、装着者Pの胴部に密着しやすくなるように、内側に向かって僅かに湾曲している。
【0055】
連結部21bは、その下端部の一部が左右方向に突出しており、その突出した部分に、後述するアクチュエータ30が取り付けられている。
【0056】
長尺部21aの上端部は、装着時に装着者Pの肋骨の一部を覆うような位置に位置する。一方、連結部21bは、装着時に装着者Pの腸骨の上端部を覆うような位置に位置する。具体的には、剛体部21は、被覆部20aの側面部(装着時に装着者Pの脇の下に位置する部分)の上端部から下端部まで延びる形状となっている。
【0057】
動作補助機構3は、胴部装具2の剛体部21の連結部21bに吊り下げられるように固定されたアクチュエータ30(駆動源)と、アクチュエータ30を介して胴部装具2と脚部装具1とを連結するアーム31とを有している。
【0058】
アクチュエータ30は、ロータリー式のアクチュエータである。アクチュエータ30は、発生させた駆動力をアーム31に伝達することによって、アーム31及びアーム31に連結された脚部装具1を、左右方向に延びる回動軸線aを中心として、胴部装具2に対して前後方向に回動させる。
【0059】
アーム31は、装着者Pの大腿部の周面に沿って側方側から前面側に向かって湾曲するように、下方に向かって延設されている。アーム31の上端部は、アクチュエータ30の出力部に連結されており、下端部は、脚部装具1に連結されている。
【0060】
肩部装具4は、装着者Pの肩部を覆うパッド部40と、パッド部40の下端部と胴部装具2のコルセット部20の被覆部20aの上端部とを連結する位置決めベルト41とを有している。
【0061】
歩行補助装置Aでは、この肩部装具4で胴部装具2を吊り下げることによって、胴部装具2の位置を保持している。これにより、アシスト力の反力が胴部装具2に加わった際に、そのアシスト力によって胴部装具2が装着者Pの身体に対して下方向にずれてしまうことを防止している。また、装着時には、まず、肩部装具4によって胴部装具2がぶら下がった状態になるので、胴部装具2の固定等を容易に行うことができるようになっている。
【0062】
また、一般に、アクチュエータ30は、例えば、装着者Pの股関節中心に対応する位置に配置されることが望ましいが、毎回の装着毎にその位置関係を調整するのは煩雑である。そこで、歩行補助装置Aでは、肩部装具4を設けることによって、肩部装具4からアクチュエータ30までの距離を事前に決めておき、位置関係の調整を容易化して、使い勝手をさらに向上させている。
【0063】
次に、歩行補助装置Aによって、装着者Pにアシスト力が伝達された際に発生する反力について説明する。
【0064】
歩行補助装置Aでは、胴部装具2の剛体部21の下端部にロータリー式のアクチュエータ30が取り付けられている。そして、そのアクチュエータ30からの駆動力によって、回動軸線aを中心として、アーム31、及び、アーム31に連結されている脚部装具1が前後方向に回動させられる。
【0065】
これにより、装着者Pの大腿部に対しては、脚部装具1を介して、押圧する、又は、引き上げるようなアシスト力が加えられる。一方、胴部装具2に対しては、アクチュエータ30を介して、アーム31から、アシスト力とは反対方向の反力が加えられることになる。
【0066】
このとき、
図3に示すように、本実施形態とは異なり、胴部装具2の被覆部20aに剛体部21が付設されていない場合、アシスト力の反力が加わった際には(
図3Aの状態から
図3Bの状態になった際には)、そのアシスト力が加わった部分に大きなねじれ、たわみ(具体的には、しわ)が発生する。
【0067】
一方、
図4に示すように、本実施形態のように、胴部装具2の被覆部20aに剛体部21が付設されている場合、アシスト力の反力が加わった際には(
図4Aの状態から
図4Bの状態になった際には)、そのアシスト力が加わった部分に発生するねじれ、たわみは、剛体部21によってある程度抑制される。
【0068】
その結果、コルセット部20と装着者Pの胴部との間で十分な摩擦力が生じ、その摩擦力と剛体部21そのものの剛性とによってアーム31から伝達された反力が相殺されることになる。すなわち、アーム31から伝達された反力がコルセット部20に入力されたときに、装着者Pの胴部で好適に反力を受けることができる。
【0069】
ここで、脚部装具1に連結されているアーム31は、装着者Pの大腿部の周面に沿って前面に向かって湾曲している。そのため、そのアーム31から伝達されるアシスト力の反力は、前後方向に回動する成分だけでなく、複数の回転方向の成分を含むものとなっている。例えば、前後方向に回動する成分の他に左右方向に回動する成分も含むものとなっている。
【0070】
これに対応すべく、歩行補助装置Aでは、剛体部21が、上下方向に延び、前後方向に並ぶように配置された3本の長尺部21aと、長尺部21aの下端部を連結するように前後方向に延びる連結部21bとによって構成されている。
【0071】
剛体部21がこのような形状となっているので、歩行補助装置Aでは、剛体部21の重量の増加を抑制しつつ、広範囲においてアシスト力の反力を受け止めるための摩擦力を発生させることができるようになっている。これにより、歩行補助装置Aは、アシスト力の反力が複数の回転方向の成分を含む場合であっても、そのアシスト力の反力を十分に受け止めることができる。
【0072】
したがって、歩行補助装置Aによれば、従来の歩行補助装置のように剛性の高い材料で形成されたフレームを備えていなくても、軽量の胴部装具2を備えるだけで十分にアシスト力を受け止めることができるので、従来の歩行補助装置よりも重量を軽減することができるようになっている。
【0073】
また、歩行補助装置Aでは、アーム31の連結された胴部装具2が、装着時に、装着者Pの肋骨から腸骨までを覆う構成となっている。
【0074】
これにより、装着者Pに加わる反力も胴部装具2(すなわち、装着者Pの体幹)という広い範囲で受け止められる。その結果、歩行補助装置Aでは、従来の歩行補助装置よりも、許容できる反力が大きくなっている。具体的には、歩行補助装置Aでは、装着者Pの左右の脚部に対して加えるアシスト力の反力を互いに相殺させなくても、胴部装具2によって反力を十分に受け止めることができるようになっている。
【0075】
したがって、歩行補助装置Aによれば、アシスト力の入力方向、入力のタイミングを制限しなくても、そのアシスト力の反力は装着者Pの体幹によって受け止められるので、従来の歩行補助装置よりもアシスト力の設定の自由度が高いものとなっている。
【0076】
さらに、歩行補助装置Aでは、装着者の胴部に接する部材である胴部装具2のうち、装着者の胴部の側面部を覆う形態のコルセット部20が、柔軟性の高い可撓性材料で形成されている。
【0077】
これにより、装着者Pに対してアシスト力を加えた際にも、胴部装具2の一部だけが装着者Pの身体に強く当接しにくくなっている。その結果、この歩行補助装置Aでは、装着者Pの身体に対して胴部装具2が当接している部分に応力集中が生じにくくなっている。
【0078】
したがって、歩行補助装置Aによれば、応力集中に起因する利用時の快適性の低減も抑制することができる。
【0079】
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限られるものではない。
【0080】
例えば、上記実施形態では、コルセット部20の被覆部20aの外周面上に、剛体部21を付設している。これは、被覆部20aと装着者Pの胴部とが摺動する範囲をできるだけ広くして、摩擦力を効率良く発生させるためである。
【0081】
しかし、本発明の剛体部は、このような構成に限定されるものではなく、胴部装具と装着者の胴部との間で十分な摩擦力を発生させることができるのであれば、どのように胴部装具に設けられていてもよい。
【0082】
例えば、上記実施形態のように剛体部が複数の長尺部を有する構成の場合には、その剛体部を被覆部上に付設するのではなく、長尺部同士の間に可撓性材料を設ける(すなわち、長尺部の縁部に可撓性材料を接続する)ようにして、剛体部が装着者の胴部に直接触れるような構成にしてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、コルセット部20を被覆部20aと締結ベルト20bとで構成することによって、被覆部20aを装着者Pの胴部に密着させることができるように構成されている。これは、コルセット部20と装着者Pの胴部との間に発生する摩擦力を高めることによって、効率良くアシスト力の反力を受け止めることができるようにするためである。
【0084】
しかし、本発明の胴部装具のコルセット部は、そのような構成に限定されるものではなく、装着時に少なくとも装着者の胴部の側面部を覆うことができるものであればよい。例えば、全体が弾性を有する可撓性材料で形成された腹巻状の部材であってもよい。また、従来の歩行補助装置に採用されている腰部装具を併用してもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、胴部装具2の剛体部21は、金属製の平板を切り出すことによって、上下方向に延びる3本の長尺部21aとそれらの下端部を連結する連結部21bとを有している。これは、金属製の平板を採用することによって、重量を抑えつつ十分な剛性を得るとともに、アシスト力の反力が伝達されたときに、剛体部に局所的なねじれが生じてしまうことを防止するためである。
【0086】
また、剛体部21は、装着時に装着者Pの側面部に位置するように構成されている。これは、側面部に剛体部を設けると、前方側及び後方側に剛体部を設けた場合に比べ、装着者の身体に対する剛体部のねじれや動きが小さなものとなるので、装着者に違和感を与えにくくなるためである。
【0087】
しかし、本発明の剛体部は、このような構成に限定されるものではなく、コルセット部を形成する可撓性材料よりも剛性が高い材料で形成されており、且つ、反力を受け止めるための摩擦力を生じさせる程度にコルセット部を摺動させることができる形状であれば、どの様な形状であってもよいし、どのような位置に設けてもよい。
【0088】
例えば、剛体部の材料としては合成樹脂を採用してもよい。また、剛体部の形状は、可撓性材料によって発生する摩擦力等を考慮して設計してよく、例えば、棒状であっても、ブロック状であってもよい。また、上記実施系他のようなフォーク状とする場合には、長尺部を2本にしてもよいし、4本以上にしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、駆動源として、ロータリー式のアクチュエータを採用している。これは、コルセット部20の被覆部20aのうち、アシスト力の反力が伝達された際に剛体部21によって摺動させられる領域を、回動軸線aを中心とした範囲に留めて、装着者Pに反力を受け止める際の違和感を与えにくくするためである。
【0090】
しかし、本発明の駆動源は、このような構成に限定されるものではなく、バネの他、シリンダー及びピストンで構成された駆動源等、種々様々な機構を採用してよい。