(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6970851
(24)【登録日】2021年11月2日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】消石灰の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 2/04 20060101AFI20211111BHJP
C01F 11/02 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
C04B2/04
C01F11/02 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2021-83450(P2021-83450)
(22)【出願日】2021年5月17日
【審査請求日】2021年5月17日
(31)【優先権主張番号】特願2020-178290(P2020-178290)
(32)【優先日】2020年10月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520415982
【氏名又は名称】角森 道人
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】角森 道人
(72)【発明者】
【氏名】高津 淑人
【審査官】
山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−43356(JP,A)
【文献】
特開2008−290940(JP,A)
【文献】
特開2008−239372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F
C04B
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオディーゼル燃料製造工程で除去されたグリセリンを含む廃液1〜5重量部の存在下で、生石灰100重量部と水とを反応させる工程を含み、
前記グリセリンを含む廃液は、カリウム系触媒またはナトリウム系触媒の存在下で廃食用油とアルコールとを反応させて得られた廃液である、消石灰の製造方法。
【請求項2】
前記アルコールは、1価アルコールである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記アルコールは、メタノールである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記カリウム系触媒またはナトリウム系触媒は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記廃液には、メチレングリコール、2,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルグリコール、及び1,3−ブチレングリコールからなる群から選択される1または2以上、及び/又はモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンからなる群から選択される1または2以上が添加されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記廃液には、グリセリンモノ・ジステアレート、グリセリンモノステアレート、オレイン酸メチル、リノール酸ナトリウム、およびパルミチン酸からなる群から選択される1または2以上の化合物が添加されている。請求項1〜5のいずれか1項のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消石灰の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消石灰(水酸化カルシウム)は、他のアルカリ薬剤に比較して安価であって、且つ、酸性を示すガスや液体との反応性にすぐれていることから、排ガスの浄化剤や廃水の中和剤として利用されている。たとえば、ゴミ焼却施設の排ガス中に含まれる有害ガスである塩化水素や硫黄酸化物の除去に、粉末状の消石灰が利用されることが多い。このような用途について、特に、比表面積が広く(35m
2/g以上)、細孔容積が大きい(0.15cm
3/g以上)ことにより、一般的な工業薬品の消石灰よりも反応性の高い、高反応性消石灰が用いられることが多い。
【0003】
消石灰は、通常、生石灰(酸化カルシウム)を水と反応させて製造することができる。一方、高反応性消石灰は、従来、以下のようにして製造されている。例えば、特許文献1においては、生石灰を水と反応させる際、オキシカルボン酸及びその塩、糖類、エチレングリコール類、エタノールアミン類、グリセリン、コハク酸、金属コハク酸塩、リグニンスルホン酸塩の中から選ばれた少なくとも1種の添加物を0.1〜10重量%添加し、生成した水酸化カルシウムの含有水分が3〜30重量%となるよう、消化水量ないし反応温度を調節することで、23.8〜35.5m
2/gの比表面積を有する高反応性消石灰を製造している。特許文献2においては、30℃以下の水に1価アルコール類、2価アルコール類、3価アルコール類、1級アミン類及び2級アミン類の中から選択される1種以上の添加物を、消石灰理論量(消石灰と酸性成分の規定度が等しくなる消石灰の量)100重量%に対し0.1〜20重量%含ませることで29.3〜56.0m
2/gの比表面積を有する高反応性消石灰を製造している。特許文献3においては、ポリアミン類化合物とアルキレングリコール類化合物の両物質の存在下で生石灰を水と反応させることによって、比表面積が増大した消石灰を製造している。このとき、ポリアミン類化合物とアルキレングリコール類化合物の両物質の存在比が1:1の時に比表面積が最大値を示し、28〜44m
2/gの比表面積を有する消石灰が得られている。特許文献4においては、安価に高反応性消石灰を得るために、生石灰と水の反応時の添加剤としてジエチレングリコールを用い、生成する消石灰100重量%に対してジエチレングリコールの添加率が2.5重量%以下であって、消化後含水率を20重量%程度とした後に含水消石灰を取り出し別途乾燥機にて乾燥させることで、比表面積が51.4〜53.7m2/gの高反応性消石灰を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−278435号公報
【特許文献2】特開平10−25112号公報
【特許文献3】特開2003−26420号公報
【特許文献4】特開2007−197319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、浄化効率の良い新規な高反応性消石灰の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様は、バイオディーゼル燃料製造工程で除去されたグリセリンを含む廃液1〜5重量部の存在下で、生石灰100重量部と水とを反応させる工程を含み、前記グリセリンを含む廃液は、カリウム系触媒またはナトリウム系触媒の存在下で廃食用油とアルコールとを反応させて得られた廃液である、消石灰の製造方法である。前記アルコールは、1価アルコールであってもよい。前記アルコールは、メタノールであってもよい。前記カリウム系触媒またはナトリウム系触媒は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムであってもよい。前記廃液には、メチレングリコール、2,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルグリコール、及び1,3−ブチレングリコールからなる群から選択される1または2以上、及び/又はモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンからなる群から選択される1または2以上が添加されていてもよい。前記廃液には、グリセリンモノ・ジステアレート、グリセリンモノステアレート、オレイン酸メチル、リノール酸ナトリウム、およびパルミチン酸からなる群から選択される1または2以上の化合物が添加されていてもよい。
【0007】
本発明の他の実施態様は、グリセリン0.4〜3重量部と、炭素数12〜18の脂肪酸、炭素数12〜18の脂肪酸アルカリ金属塩、炭素数12〜18の脂肪酸メチルエステル、炭素数12〜18の脂肪酸エチルエステル、炭素数12〜18の脂肪酸モノグリセリド、炭素数12〜18の脂肪酸ジグリセリド、炭素数12〜18の脂肪酸油脂の群より選ばれた1あるいは2以上の添加剤1〜5重量部との存在下で、生石灰100重量部と水とを反応させる工程を含む、消石灰の製造方法である。前記グリセリン及び/又は前記添加剤は、個別に又は混合して、前記生石灰と前記水との混合前に前記生石灰中または前記水中に添加されてもよい。前記添加剤は、1価アルコールを含有してもよい。前記添加剤は、グリコール、及び/又はエタノールアミンを含んでもよい。前記添加剤は、グリセリンモノ・ジステアレート、グリセリンモノステアレート、オレイン酸メチル、リノール酸ナトリウム、およびパルミチン酸からなる群から選択される1または2以上の化合物であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、浄化効率の良い新規な消石灰の製造方法を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の比較例2において、副生グリセリン相の製造に際し、水酸化カリウムに代えて酸化カルシウムを用いたときの、2層分離時の様子(上図)と重液からメタノールを除去し、反応水を添加した後の懸濁液の様子(下図)を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、実施例を用いて詳細に説明するが、必ずしもこれに限定するわけではない。なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0011】
<消石灰の製造方法>
本発明の一実施形態は、グリセリン0.4〜3重量部と、炭素数12〜18の高級脂肪酸、炭素数12〜18の高級脂肪酸アルカリ金属塩、炭素数12〜18の高級脂肪酸メチルエステル、炭素数12〜18の高級脂肪酸エチルエステル、炭素数12〜18の高級脂肪酸モノグリセリド、および炭素数12〜18の高級脂肪酸ジグリセリドからなる群から選ばれた1種あるいは2種以上の添加剤1〜5重量部の存在下で、生石灰100重量部と水とを反応させる工程を含む、消石灰の製造方法である。
【0012】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、(9,12,15)−リノレン酸、(6,9,12)−リノレン酸、エレオステアリン酸などが例示できる。高級脂肪酸アルカリ金属塩、高級脂肪酸メチルエステル、高級脂肪酸エチルエステル、高級脂肪酸モノグリセリド、高級脂肪酸ジグリセリドは、これらの脂肪酸に由来する。
【0013】
消石灰の製造方法は、公知の方法で行うことができるが、グリセリンと添加物を、どの段階でどのように添加するかは、特に限定されない。例えば、グリセリンと添加物を、個別に又は混合して水に加えて、さらに混合した後、この水と生石灰とを混合し攪拌してもよい。または、グリセリンと添加物を、個別に又は混合して生石灰に加えて、さらに混合した後、この生石灰と水とを混合し攪拌してもよい。あるいは、グリセリンと添加物を、生石灰と水に別々に加え、それぞれを混合した後、生石灰と水とを混合し攪拌してもよい。
【0014】
グリセリンの添加量は、生石灰100重量部に対して、0.4〜3重量部が好ましいが、0.8〜3重量部がさらに好ましい。
【0015】
添加剤の添加量は、生石灰100重量部に対して、1〜5重量部が好ましいが、2〜5重量部がさらに好ましい。
【0016】
なお、生石灰に、上記添加剤に加え、1価アルコール、グリコール類、またはエタノールアミン類をさらに加えてもよい。1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノールなどが例示できる。グリコール類としては、メチレングリコール、2,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルグリコール、1,3−ブチレングリコールが例示できる。エタノールアミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが例示できる。その添加量は、生石灰100重量部に対して、1〜5重量部が好ましいが、2〜5重量部がさらに好ましい。
【0017】
使用する水の量は生石灰100重量部が反応する理論水量の1倍以上であれば特に限定されないが、例えば、理論水量の1.2〜10倍量であればよく、2〜5倍量であることが好ましい。すなわち、生石灰100重量部に対しては、約33重量部以上、例えば約40〜330重量部あるいは約66〜166重量部の水を加えればよい。体積に換算すると、生石灰100gに対して、約33mL以上、例えば、約40〜330mLあるいは約66〜166mLの水を加えればよい。
【0018】
また、グリセリン及び上記添加剤の代わりに、バイオディーゼル燃料(Bio Diesel Fuel;BDF(登録商標))の製造過程で生じるグリセリンを含む廃液、すなわちBDF(登録商標)の製造工程において除去された副生グリセリン相を用いてもよい。副生グリセリン相には、グリセリン(40〜50重量%)および油分(脂肪酸メチルエステル、モノグリセリド、ジグリセリドなど)が含まれており、従って副生グリセリン相の添加量は、生石灰100重量部に対して、1〜5重量部が好ましいが、2〜5重量部がさらに好ましい。
【0019】
このグリセリンを含む廃液は、カリウム系触媒またはナトリウム系触媒の存在下で、廃食用油とアルコールとを反応させて製造することができる。触媒として、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、などが利用できる。アルコールは、1価アルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノールなどが例示できる。
【実施例】
【0020】
(1)グリセリンを含む廃液の製造
本実施例では、グリセリンモノ・ジステアレート、グリセリンモノステアレート、オレイン酸メチル、リノール酸ナトリウム、およびパルミチン酸、並びにバイオディーゼル燃料の製造過程で生じるグリセリンを含む廃液を用いた。
【0021】
バイオディーゼル燃料は生物由来のディーゼル燃料を意味し、植物油にメタノールやエタノールを加えて化学反応させた後、グリセリンを除去して燃料化したものである。この化学反応はエステル交換反応であり、原料となる油脂中の脂肪酸グリセリンエステルをメチルエステルやエチルエステルに変換することを目的とする。例えば、アルコールとして、メタノールやエタノールを用いた場合、脂肪酸メチルエステルや脂肪酸エチルエステルが燃料として使用される。原料の植物油としては、菜種油、パーム油、オリーブ油、ひまわり油、大豆油、コメ油などの植物油、及び廃食用油(使用後の天ぷら油等)が利用される。表1に各種油脂の脂肪酸構成を記載する。
【0022】
表1に示すように、BDF(登録商標)の製造工程において除去された副生グリセリン相、すなわちグリセリンを含む廃液には、グリセリンと共に本明細書で開示している添加剤が含まれていることになる。
【0023】
【表1】
実際、表2に示すように、BDF(登録商標)の製造工程において除去された副生グリセリン相、すなわちグリセリンを含む廃液は脂肪酸メチルエステル、モノグリセリド、ジグリセリドなどを含むことが報告されている。
【0024】
【表2】
1)使用済み天ぷら油を用いてバイオディーゼル燃料を合成したとき
2)脂肪酸メチルエステル、モノグリセリド、ジグリセリドなどを含む
(日本エネルギー学会誌 第90巻 第6号 pp.526〜532より)
そこで、本実施例では、バイオディーゼル燃料の製造過程で生じるグリセリンを含む廃液を高反応消石灰の原料に用いた。具体的には、株式会社アドバン製副生グリセリン相を用いた。得られた日付と各サンプルの組成を表3に示す。各組成の割合はほぼ一定していたので、このうち、サンプルAとサンプルBを以下の実施例に用いた。
【0025】
【表3】
【0026】
表3に記載の副生グリセリン相は、以下のようにして得られた。まず、廃食油1Lに対し、メタノール200mL及び水酸化カリウム15gを添加し、40℃で40分反応させた。その後、2時間〜1晩放置すると、軽液(BDF)と、透明な重液に2層分離したので、重液を回収し、副生グリセリン相とした。
【0027】
(2)高反応性消石灰の製造
本実施例では、副生グリセリン相以外に、グリセリンモノ・ジステアレート、グリセリンモノステアレート、オレイン酸メチル、リノール酸ナトリウム、およびパルミチン酸を添加剤として用いた。表4に、各サンプルの構成を示す。なお、各重量部は、用いる生石灰を100重量部とした時の割合(重量部)を示す。
【0028】
【表4】
まず、表4に示した量(生石灰100重量部が反応する理論水量の3倍量、約96mL)の水に対し、グリセリンおよび添加物を添加し、混合した。副生グリセリン相には、表3で示したように、40重量%以上の油分が含まれているため、消化水と混合した際に2相分離する可能性が考えられたが、実際には、透明な均一相を形成し、時間経過後もその状態を維持し2相分離に至らなかった。
【0029】
次に、粉末炭酸カルシウム(新見化学工業株式会社製)を900℃2時間焼成することによって得た生石灰を粒径1mm以下に粉砕し、その生石灰100重量部を小型ホバートミキサーに入れ、この生石灰に対して、グリセリンおよび添加物を混合した水を添加し、60rpmで混合した。得られた消石灰を105℃で2時間乾燥させて含有水分を0.5%以下とし、さらに粉砕器を用いて粒度を、200メッシュパス80%以上になるように調整した。
【0030】
なお、比較例2として、副生グリセリン相の製造に際し、水酸化カリウムに代えて、酸化カルシウムを用いたところ、重液に、カルシウムを含むと考えられる白い塊の沈殿が生じた(
図1上図)。この重液を沈殿ごと回収し、減圧下で加熱することによって、メタノールを除去しても沈殿が残存し、その後実施例と同様に3倍量の水にこの副生グリセリン相を添加し攪拌しても、沈殿が懸濁したままであった(
図1下図)。このように、副生グリセリン相の製造に触媒として酸化カルシウムを用いると、カルシウムの持ち込みによって、副生グリセリン相にカルシウムを含む沈殿を生じる。この沈殿のため、生石灰に対する、添加剤と消化水の噴霧に支障が生じる。また、あらかじめ副生グリセリン相を消化水と混合しても沈殿は溶解せず、生石灰に対して副生グリセリン相と消化水の混合液を噴霧する場合であっても、同様の問題が生じる。
【0031】
(3)比表面積、細孔容積、流動性、噴流性の測定
表4のサンプルA〜Vについて、比表面積、細孔容積、流動性、噴流性を調べた。結果を表5に整理した。比表面積、細孔容積はQantachrome社製Autosorb-1-c/MK2を用いて測定し、流動性指数および噴流性指数は、ホソカワミクロン株式会社製パウダーテスタPT−Sを用いて測定した。
【0032】
【表5】
参考例は、グリセリンも添加剤も含まない原料を用いて消石灰を作製したもので、比表面積は低かったが、グリセリン及び/又は添加剤を添加したすべてのサンプルで、高比表面積消石灰が得られた。
【0033】
また、添加剤を添加することで、流動性指数や噴流性指数も、グリセリンのみの比較例1(I)に対して改善された指数が得られた。
【0034】
(4)酸性ガスとの反応性
酸性ガスとの反応性は、模擬ガスを用いてHCl及びSO
2の除去率で判定した。
【0035】
反応管(内径1cm、長さ10cmの円筒状)内に3600メッシュのステンレス網を敷き、各消石灰を0.05g入れ、160℃に加熱した。一方、N
2中にHCl:450ppmおよびSO
2:120ppmを含有させ、水蒸気を内割り30%とした混合ガスを作製し、160℃に加熱して空搭速度1.5m/分の速度で30分、消石灰を入れた反応管を通過させて、酸性ガスを消石灰に吸収させた。消石灰に吸収されなかったHClガスは冷却トラップで回収し、SO
2ガスは過酸化水素水で回収した。回収された酸性ガスの量をNaOHで滴定することにより測定し、混合ガス中の酸性ガスの量に対する、消石灰に吸収されたガスの量の割合(酸性ガス除去率)を求めた。表6に結果をまとめた。
【0036】
【表6】
表6に示されているように、グリセリンと添加剤を加えた高反応性石灰では、グリセリンだけの比較例1に対し、より高い塩酸除去率とSO
2除去率が得られた。
【要約】
【課題】効率の良い新規な消石灰の製造方法を提供する。
【解決手段】 バイオディーゼル燃料製造工程で除去されたグリセリンを含む廃液1〜5重量部の存在下で、生石灰100重量部と水とを反応させる工程を含み、前記グリセリンを含む廃液は、カリウム系触媒またはナトリウム系触媒の存在下で廃食用油とアルコールとを反応させて得られた廃液である、消石灰の製造方法とする。
【選択図】なし