特許第6970879号(P6970879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6970879-シームレスジャケット及びその製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6970879
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】シームレスジャケット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 27/00 20060101AFI20211111BHJP
   A41H 43/04 20060101ALI20211111BHJP
   A41D 27/02 20060101ALI20211111BHJP
   A41D 27/20 20060101ALI20211111BHJP
   A41D 1/02 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   A41D27/00 Z
   A41H43/04
   A41D27/02
   A41D27/20 A
   A41D1/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2021-24395(P2021-24395)
(22)【出願日】2021年2月18日
【審査請求日】2021年3月12日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.令和2年10月21日に展示会PLUG INにて公開 2.令和2年11月2日に株式会社マクアケのウェブサイトにて公開 3.令和2年11月1日にアパレル工業新聞にて公開 4.令和2年12月7日に株式会社テレビ東京のワールドビジネスサテライトにて公開 5.令和3年1月4日に繊研新聞にて公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508321007
【氏名又は名称】株式会社ベントスデザインオフィス
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】230121430
【弁護士】
【氏名又は名称】安井 友章
(72)【発明者】
【氏名】昼田 泰平
(72)【発明者】
【氏名】新谷 紘孝
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−067708(JP,A)
【文献】 特開2017−222969(JP,A)
【文献】 実開昭49−010708(JP,U)
【文献】 特開2007−138327(JP,A)
【文献】 特開2007−119930(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3189326(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 1/02− 1/04
A41D 3/00− 3/08
A41D 29/00
A41D 27/00−27/28
A41H 43/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の生地パーツから形成されているジャケットであって、
前記複数の生地パーツは、前身頃を形成している表地及び裏地を備え、
前記表地及び裏地は、前記裏地の下襟部分、前裾部分及び裾部分を含む外縁部分にわたる貼合面において、前記表地の対応する貼合面と互いに貼り合わされており、
前記表地及び裏地は、前記表地と裏地との間にポケットを形成している、
シームレスジャケット。
【請求項2】
前記表地及び裏地は、前記ポケットの開口部分を除き、前記裏地の外縁部分の全周にわたる貼合面において、前記表地の対応する貼合面と互いに貼り合わされている、
請求項1に記載のシームレスジャケット。
【請求項3】
前記生地パーツでは、折返部分が、本体部分に折り返されて重ね合わされ、当該折返部分にわたる貼合面において、前記本体部分の対応する貼合面と互いに貼り合わされている、
請求項1に記載のシームレスジャケット。
【請求項4】
複数の生地パーツから形成されるジャケットの製造方法であって、
前記複数の生地パーツの前身頃を形成する表地及び裏地を、前記裏地の下襟部分、前裾部分及び裾部分を含む外縁部分にわたる貼合面において、前記表地の対応する貼合面と互いに貼り合わせ、前記表地と裏地との間にポケットを形成する、
シームレスジャケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャケット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のジャケットについては、生地パーツを縫合することにより製造されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−528816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生地パーツを縫合することにより製造されるジャケットについては、ジャケットの見栄えを良くするために補強用の芯地が必要であり、芯地の重量によりジャケットの重量が重くなってしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量で見栄えの良いジャケット及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1実施態様は、複数の生地パーツから形成されているジャケットであって、前記生地パーツは、所定の貼合面の全面において貼り合わされている、シームレスジャケットである。
【0007】
本実施態様では、生地パーツを貼合面の全面において貼り合わせてジャケットを形成しており、貼合面においては補強用の芯地がなくともジャケットの見栄えを良くすることができるため、ジャケットの見栄えを維持しつつ芯地を省略してジャケットを軽量化することが可能となっている。
【0008】
本発明の第2実施態様は、前記複数の生地パーツは、前身頃を形成している表地及び裏地を備え、前記表地及び裏地は、前記裏地の下襟部分、前裾部分及び裾部分を含む外縁部分にわたる貼合面の全面において、前記表地の対応する貼合面の全面と互いに貼り合わされている、第1実施態様のシームレスジャケットである。
【0009】
本実施態様では、前身頃の表地及び裏地を、裏地の下襟部分、前裾部分及び裾部分を含む外縁部分にわたる貼合面の全面において、表地の対応する貼合面の全面と互いに貼り合わせているため、比較的大きな前身頃の表地又は裏地の芯地を省略することができ、ジャケットを充分に軽量化することが可能となっている。また、前身頃の表地と裏地とが一体化されているため、シームレスジャケットの裏側について、一枚布のようなすっきりとした外観及び着心地が実現されている。
【0010】
本発明の第3実施態様は、前記表地及び裏地は、前記表地と裏地との間にポケットを形成している、第2実施態様のシームレスジャケットである。
【0011】
本実施態様では、前身頃の表地及び裏地によって表地と裏地との間にポケットを形成しているため、表地の裏側のポケット布を省略することができ、ジャケットを充分に軽量化することが可能となっている。また、シームレスジャケットの裏側について、一枚布のようなすっきりとした外観及び着心地が実現されている。
【0012】
本発明の第4実施態様は、前記生地パーツでは、折返部分が、本体部分に折り返されて重ね合わされ、当該折返部分にわたる貼合面の全面において、前記本体部分の対応する貼合面の全面と互いに貼り合わされている、第1実施態様のシームレスジャケットである。
【0013】
本実施態様では、生地パーツにおいて、折返部分を、本体部分に折り返して重ね合わせ、当該折返部分にわたる貼合面の全面において、本体部分の対応する貼合面の全面と互いに貼り合わせているため、折返部分の芯地を省略することができ、ジャケットを充分に軽量化することが可能となっている。
【0014】
本発明の第5実施態様は、複数の生地パーツから形成されるジャケットの製造方法であって、前記生地パーツを所定の貼合面の全面において貼り合わせる、シームレスジャケットの製造方法である。
本実施態様では、第1実施態様と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、軽量で見栄えの良いジャケットが実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態のシームレスジャケットの生地パーツを示す模式図。
図2】本発明の一実施形態のシームレスジャケットの前身頃の表地及び裏地を示す模式図。
図3】従来のジャケットの生地パーツを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1乃至図3を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0018】
図3を参照して、従来のジャケットについて説明する。従来のジャケットについては、生地パーツを縫合糸によって縫合することにより製造されている。
【0019】
図3に示されるように、ジャケットは、複数の生地パーツにより形成されている。複数の生地パーツは、前身頃パーツ40a−40f、後身頃パーツ42a,42b、袖パーツ44a,44b、胸ポケットパーツ46a,46b、腰ポケットパーツ48a,48b、上襟パーツ50a,50bを備え、外縁端部分において縫合糸により互いに縫合され、前身頃、後身頃、袖、胸ポケット、腰ポケット、上襟等を形成している。複数の生地パーツとして、ジャケットの見栄えを良くするために、補強用の芯地40d−40f,42b,44b,46b,48b,50bが用いられている。
【0020】
前身頃パーツ40a−40fにおいて、裏地40bに芯地40dが重ね合わされて接着されており、表地40aの外縁部分において表地40aと裏地40bとが互いに縫合されて、裏地40bにより見返しが形成されている。なお、表地40aにも芯地を重ね合わせて接着するようにしてもよい。前身頃パーツ40a−40fの表地40aの裏側に、胸ポケットパーツ46a及び腰ポケットパーツ48aからなる袋状の胸ポケット布及び腰ポケット布が縫合され、胸ポケット及び腰ポケットが形成されている。前身頃パーツ40a,40cの裾部分60、後身頃パーツ42aの裾及びベント部分62、袖パーツ44aの袖口部分64、胸ポケットパーツ46a及び腰ポケットパーツ48aのポケット口部分66,68では、夫々、折返部分に芯地40e,40f,42b,44b,46b,48bが重ね合わされて接着されており、当該折返部分は本体部分に折り返されて重ね合わされて縫合されている。襟パーツ50aでは、襟パーツ50aの全体に芯地50bが重ね合わされて接着されている。
【0021】
このように、従来のジャケットでは、縫合糸自体の重量に加えて、ジャケットの見栄えを良くするための補強用の芯地40d−40f,42b,44b,46b,48b,50bの重量が追加されるため、ジャケットの重量が重くなっている。特に、前身頃パーツ40a−40fの表地40a又は裏地40bの芯地40dについては、比較的大きくなるため、ジャケットの重量が重くなっている。さらに、従来のジャケットでは、前身頃パーツ40a−40fにおいて、表地40aに対して裏地40bからなる見返しが分離された形態となっており、また、表地40aの裏側に袋状の胸ポケット布又は腰ポケット布が配設されることになるため、ジャケットの裏側の外観が雑然としたものとなり、着心地も悪くなっている。加えて、従来のジャケットについては、生地パーツを縫合糸によって縫合することにより製造されているため、ジャケットの表面に縫合糸が表れる箇所があり、クリーンさや洗練さの欠けたものとなっている。
【0022】
図1及び図2を参照して、本実施形態のシームレスジャケットについて説明する。
本実施形態のシームレスジャケットについては、生地パーツを所定の貼合面の全面において熱圧着、接着等により貼り合わせるシームレス(無縫製)製法により製造されるものである。
【0023】
図1及び図2に示されるように、本実施形態のシームレスジャケットは、複数の生地パーツにより形成されている。複数の生地パーツは、前身頃パーツ10a−10c、後身頃パーツ14、袖パーツ16、胸ポケットパーツ18、襟パーツ20を備え、外縁端部分にわたる貼合面の全面において互いに貼り合わされて、前身頃、後身頃、袖、胸ポケット、上襟等を形成している。
【0024】
前身頃パーツ10a−10cにおいて、表地10aと裏地10bとが、裏地10bの下襟部分22、前裾部分23及び裾部分24を含む外縁部分にわたる貼合面の全面において、表地10aの対応する貼付面の全面と互いに貼り合わされて、一体化されている。また、前身頃パーツ10a−10cの表地10a及び裏地10bは、腰ポケットの開口部分においては互いに貼り合わされておらず、表地10aと裏地10bとの間に腰ポケットを形成している。なお、図2においては、表地10a及び裏地10bと他の生地パーツとの貼合面については、図示していない。前身頃パーツ10a−10cの裾部分26及び腰ポケットのポケット口部分28、後身頃パーツ14の裾部分30及びベント部分32、袖パーツ16の袖口部分34、胸ポケットパーツ18のポケット口部分38においては、折返部分が、本体部分に折り返されて重ね合わされ、当該折返部分にわたる貼合面の全面において、本体部分の対応する貼合面の全面と互いに貼り合わされている。
【0025】
生地パーツの貼り合わせには、熱圧着、接着等が用いられる。生地パーツの素材としては、フラットな素材が好ましく、天竺、スムース、ダンボールニット、ポプリン、平織等の素材が用いられる。接着剤としては、ホットメルト等が用いられる。
【0026】
本実施形態のシームレスジャケットは以下の効果を奏する。
本実施形態のシームレスジャケットでは、生地パーツを所定の貼合面の全面において貼り合わせており、貼合面においては補強用の芯地がなくともジャケットの見栄えを良くすることができるため、ジャケットの見栄えを維持しつつ、縫合糸自体に加えて芯地を省略して、ジャケットを軽量化することが可能となっている。
【0027】
特に、前身頃パーツ10a−10cにおいて、表地10a及び裏地10bが、裏地10bの下襟部分22、前裾部分23及び裾部分24を含む外縁部分にわたる貼合面の全面において、表地10aの対応する貼付面の全面と互いに貼り合わされているため、比較的大きな前身頃パーツ10a−10cの表地10a又は裏地10bの芯地を省略することができる。また、表地10a及び裏地10bが、表地10aと裏地10bとの間に腰ポケットを形成しているため、表地10aの裏側の腰ポケット布を省略することができる。さらに、前身頃パーツ10a−10cの裾部分26及び腰ポケットのポケット口部分28、後身頃パーツ14の裾部分30及びベント部分32、袖パーツ16の袖口部分34、胸ポケットパーツ18のポケット口部分38において、折返部分を、本体部分に折り返して重ね合わせ、当該折返部分にわたる貼合面の全面において、本体部分の対応する貼合面の全面と互いに貼り合わせているため、折返部分の芯地を省略することができる。このため、ジャケットを充分に軽量化することが可能となっている。
【0028】
例えば、紳士物のMサイズのジャケットについて、従来のジャケットについては、約400gの重量であったところ、本実施形態のシームレスジャケットについては、168gの重量となっている。ここで、最新式のスマートフォンであるiphoneX(登録商標)の重量については174gとなっており、本実施形態のシームレスジャケットについては、最新式のスマートフォンよりも軽いという圧倒的な軽量化を実現している。
【0029】
さらに、シームレスジャケットでは、前身頃パーツ10a−10cにおいて、表地10a及び裏地10bが、裏地10bの下襟部分22、前裾部分23及び裾部分24を含む外縁部分にわたる貼合面の全面において、表地10aの対応する貼付面の全面と互いに貼り合わされて、一体化されており、また、表地10a及び裏地10bが、表地10aと裏地10bとの間に腰ポケットを形成しているため、表地10aの裏側の腰ポケット布を省略することができる。このため、シームレスジャケットの裏側について、一枚布のようなすっきりとした外観及び着心地が実現されている。
【0030】
加えて、シームレスジャケットについては、生地パーツを所定の貼合面の全面において熱圧着、接着等により貼り合わせるシームレス製法により製造されているため、ジャケットの表面に縫合糸が表れることを回避でき、クリーンで洗練された外観となっている。
【0031】
本発明の一実施形態のシームレスジャケットの製造方法では、前身頃パーツ10a−10c、後身頃パーツ14、袖パーツ16、胸ポケットパーツ18、襟パーツ20を、外縁端部分にわたる貼合面の全面において互いに貼り合わせて、前身頃、後身頃、袖、胸ポケット、上襟等を形成する。前身頃パーツ10a−10cにおいて、表地10a及び裏地10bを、裏地10bの下襟部分22、前裾部分23及び裾部分24を含む外縁部分にわたる貼合面の全面において、表地10aの対応する貼付面の全面と互いに貼り合わせて、一体化する。ここで、前身頃パーツ10a−10cの表地10a及び裏地10bは、腰ポケットの開口部分においては互いに貼り合わされず、表地10aと裏地10bとの間に腰ポケットを形成する。前身頃パーツ10a−10cの裾部分26及び腰ポケットのポケット口部分28、後身頃パーツ14の裾部分30及びベント部分32、袖パーツ16の袖口部分34、胸ポケットパーツ18のポケット口部分36において、折返部分を本体部分に折り返して重ね合わせ、当該折返部分にわたる貼合面の全面において、本体部分の対応する貼合面の全面と互いに貼り合わせる。本実施形態のシームレスジャケットの製造方法については、上述した本発明の一実施形態のシームレスジャケットと同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0032】
10a−10c…前身頃パーツ 10a…表地 10b…裏地
14…後身頃パーツ 16…袖パーツ 18…胸ポケットパーツ 20…襟パーツ
22…下襟部分 23…前裾部分 24…裾部分
【要約】

【課題】 軽量で見栄えの良いジャケットを提供する。
【解決手段】 シームレスジャケットは、複数の生地パーツから形成されているジャケットであって、生地パーツは、所定の貼合面の全面において貼り合わされている。
【選択図】 図1
図1
図2
図3