特許第6970909号(P6970909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970909
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】多層容器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 1/02 20060101AFI20211111BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20211111BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20211111BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20211111BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20211111BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20211111BHJP
   B29C 49/08 20060101ALI20211111BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B32B1/02
   B32B27/36
   B65D65/40 D
   B65D1/02 110
   B29C49/06ZAB
   B29C49/22
   B29C49/08
   B29C45/16
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-104761(P2017-104761)
(22)【出願日】2017年5月26日
(65)【公開番号】特開2018-199258(P2018-199258A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187207
【弁理士】
【氏名又は名称】末盛 崇明
(72)【発明者】
【氏名】広 瀬 量 哉
(72)【発明者】
【氏名】高 源 学
(72)【発明者】
【氏名】伊 藤 克 伸
(72)【発明者】
【氏名】宮 脇 琢 磨
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−536172(JP,A)
【文献】 特表2017−527684(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0011631(US,A1)
【文献】 特表2016−532606(JP,A)
【文献】 特開2012−229395(JP,A)
【文献】 特表平02−500846(JP,A)
【文献】 特表2015−516341(JP,A)
【文献】 特表2014−530948(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/166421(WO,A1)
【文献】 PETを超える機能性を持つ100%バイオ樹脂の製造、オランダのバイオベンチャーと合意,東洋紡,2016年09月06日,p.1−2,https://www.toyobo.co.jp/system/files/News_Release/201902/press627.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D 1/00−1/48
65/00−65/46
B29C 45/00−45/24
45/46−45/63
45/70−45/72
45/74−45/84
49/00−49/46
49/58−49/68
49/72−51/28
51/42
51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンフラノエートを含む層を少なくとも備える多層容器であって、
前記多層容器は、炭酸飲料充填用の容器又は加温販売用の容器であり、
前記ポリエチレンフラノエートが、バイオマス由来のポリエチレングリコールと、バイオマス由来のフランジカルボン酸との重縮合物であり、
前記多層容器に含まれる樹脂材料の総量に対し、前記ポリエチレンフラノエートを2質量%以上、10質量%以下含むことを特徴とする、多層容器。
【請求項2】
前記多層容器が、3以上の層を備え、前記ポリエチレンフラノエートを含む層を中間層として備える、請求項1に記載の多層容器。
【請求項3】
バイオマス由来ポリエステルおよび/またはリサイクルポリエステルを含む層を備える、請求項1または2に記載の多層容器。
【請求項4】
ポリエチレンフラノエートを含む樹脂組成物と、バイオマス由来ポリエステルおよび/またはリサイクルポリエステルを含む樹脂組成物とを共射出成形して、多層のプリフォームを製造する工程と、
前記プリフォームを2軸延伸ブロー成形することにより、炭酸飲料充填用の容器又は加温販売用の容器である多層容器を作製する工程と、
を含み、
前記多層容器に含まれる樹脂材料の総量に対し、前記ポリエチレンフラノエートを2質量%以上、10質量%以下含むことを特徴とする、多層容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層容器およびその製造方法に関し、より詳細には、バイオマス由来のポリエチレングリコールと、バイオマス由来のフランジカルボン酸との重縮合物であるポリエチレンフラノエートを含む層を備える多層容器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、その機械的特性、化学的安定性、耐熱性、透明性などに優れ、かつ安価であることから、飲食品等を収容する容器等の製造に使用されている。このような容器には、内容物保存性等の観点から、酸素バリア性、水蒸気バリア性および二酸化炭素バリア性等のガスバリア性が要求されるが、ポリエステル樹脂からなる容器のガスバリア性は十分とは言えず、改善の余地があった。容器の肉厚化によりガスバリア性は向上するものの、肉厚化によりポリエステル樹脂の使用量が増加するため、容器自体の重量が増加するだけでなく製造コストの上昇を招く。そのため、容器の肉厚化を行うことなくガスバリア性を向上させる工夫が種々検討されてきた。例えば、容器の断面を多層とし、ポリエステル樹脂層に加えて、ポリメタキシリレンアジパミド樹脂(ナイロンMXD6)、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリグリコール等の樹脂からなるバリア層を設けたプラスチック製容器が知られている(特開2003−136057号公報等)。また、バリア層として、ポリエステル樹脂にナイロンとコバルト金属とを含有させた混合樹脂からなるバリア層とポリエステル樹脂層とを備えた多層容器とすることで、プラスチック製容器に酸素補修機能を付与できることが知られている(特表平2−500846号公報)。
【0003】
ところで、近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、汎用高分子材料であるポリエステル樹脂をこれらバイオマス原料から製造する試みも行われている。例えば、トウモロコシやサトウキビ等の植物から得られるデンプンや糖類を微生物で発酵させて得られたバイオマスエタノールを用いて工業的にエチレングリコールを製造することが行われており、ポリエステルを構成するジオール成分であるエチレングリコールとして、上記したようなバイオマス由来のエチレングリコールを使用したポリエステル樹脂が使用され始めている(例えば、国際公開2006/115226A1等)。
【0004】
上記したような多層のプラスチック製容器は、ポリエステル樹脂以外の樹脂もバリア層として含むため、ポリエステル樹脂としてバイオマス由来のものを使用しても、化石燃料由来の樹脂の使用量を大幅に削減することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−136057号公報
【特許文献2】特表平2−500846号公報
【特許文献3】国際公開2006/115226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、今般、バイオマス由来のポリエチレングリコールと、バイオマス由来のフランジカルボン酸との重縮合物であるポリエチレンフラノエートを多層容器が備える層の構成材料として使用することにより、予想外にもガスバリア性を容器に付与することができると共に、化石燃料由来の樹脂使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を低減させることを知見した。
また、本発明者らは、上記のような構成の多層容器とすることにより、従来のナイロンMXD6等を含むガスバリア層を備える多層容器に比べ、高温多湿条件下における耐白化性を向上することができると共に、寸法安定性を向上させることができることを知見した。
すなわち、本発明の解決しようとする課題は、カーボンニュートラルな材料を用いたガスバリア性を有する多層容器であって、耐白化性および寸法安定性に優れた多層容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の多層容器は、ポリエチレンフラノエートを含む層を少なくとも備え、該ポリエチレンフラノエートが、バイオマス由来のポリエチレングリコールと、バイオマス由来のフランジカルボン酸との重縮合物であることを特徴とする。
【0008】
上記態様においては、多層容器に含まれる樹脂材料の総量に対し、ポリエチレンフラノエートを2質量%以上、10質量%以下含むことが好ましい。
【0009】
上記態様においては、本発明の多層容器が、3以上の層を備え、ポリエチレンフラノエートを含む層を中間層として備えることが好ましい。
【0010】
上記態様においては、本発明の多層容器が、バイオマス由来ポリエステルおよび/またはリサイクルポリエステルを含む層を備えることが好ましい。
【0011】
上記態様においては、本発明の多層容器の酸素透過率が、満注容量が280mlの場合、0.025cc/m・day以下であることが好ましい。
【0012】
上記態様においては、本発明の多層容器の酸素透過率が、満注容量が350mlの場合、0.035cc/m・day以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の多層容器の製造方法は、ポリエチレンフラノエートを含む樹脂組成物と、バイオマス由来ポリエステルおよび/またはリサイクルポリエステルを含む樹脂組成物とを共射出成形して、多層のプリフォームを製造する工程と、前記プリフォームを2軸延伸ブロー成形する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バイオマス由来のポリエチレングリコールと、バイオマス由来のフランジカルボン酸との重縮合物であるポリエチレンフラノエートを多層容器を構成する層の材料として使用することにより、多層容器のガスバリア性能を損なうことなく、多層容器全体として、化石燃料由来の樹脂使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を低減させることができる。また、本発明によれば、多層容器の耐白化性および寸法安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による多層容器の一例を示す部分垂直断面図である。
図2】本発明による多層容器底部の一例を示す正面図である。
図3】本発明による多層容器の一例を示す部分垂直断面図である。
図4】本発明による多層容器底部の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<多層容器>
本発明による多層容器は、ポリエチレンフラノエートを含む層(以下場合により、単に「ポリエチレンフラノエート層」という)を備えるものであり、該ポリエチレンフラノエートは、バイオマス由来のポリエチレングリコールと、バイオマス由来のフランジカルボン酸との重縮合物である。本発明による多層容器が、ポリエチレンフラノエート層を備えることにより、多層容器に望ましいガスバリア性を付与することができる。また、ガスバリア性に優れることから、高い保香性を有し、内容物の香りを長期間保持することができる。さらに、本発明の多層容器がポリエチレンフラノエート層を備えることにより、多層容器の耐白化性および寸法安定性を向上させることができる。
なお、本発明による多層容器は、このポリエチレンフラノエート層を2層以上備えるものであってもよい。
【0017】
また、本発明の多層容器は、バイオマス由来ポリエステルおよび/またはリサイクルポリエステルを含む層(以下場合により、単に「ポリエステル層」という)を備えることができる。
なお、本発明による多層容器は、このポリエステル層を2層以上備えるものであってもよい。
【0018】
一実施形態において、図1および3に示すように、多層容器10は、ポリエチレンフラノエート層20を中間層として備える。なお、本発明において、「中間層」とは、内容物と接する最内層および外気と接する最外層以外の層のことをいう。
【0019】
一実施形態において、本発明の多層容器10は、3層構造であり、具体的には、ポリエチレンフラノエート層20を中間層とする、ポリエステル層30/ポリエチレンフラノエート層20/ポリエステル層30という構造を有する(図1および3を参照)。
さらに、一実施形態において、本発明の多層容器10は、5層構成であり、具体的には、ポリエステル層30/ポリエチレンフラノエート層20/ポリエステル層30/ポリエチレンフラノエート層20/ポリエステル層30という構造を有する。
多層容器10が、ポリエチレンフラノエート層20を中間層として備えることにより、後述するプリフォーム製造のための射出成形時等の加熱により、ポリエチレンテレフタレート等から発生するアセトアルデヒド等が、内容物中に溶出してしまうことを防止することができる。
【0020】
本発明の多層容器の酸素透過率は、満注容量が280mlの場合、0.025cc/m・day以下であることが好ましく、満注容量が350mlの場合、0.035cc/m・day以下であることが好ましい。
本発明において、酸素透過率は、JIS K 7126(等圧法)に準拠して、23℃、湿度40%RHの条件下、酸素ガス透過率測定装置(例えば、MOCON社製、商品名:OX−TRAN)を用いて測定することができる。
【0021】
本発明の多層容器の水蒸気透過量は、満注容量が280mlの場合、0.47g/30day以下であることが好ましく、満注容量が350mlの場合、0.60g/30day以下であることが好ましい。
本発明において水蒸気素透過量は、22℃、湿度40%RHの条件下、重量法を用いて測定することができる。
【0022】
本発明の多層容器にガスボリューム3.4炭酸水を充填し、キャッピングし、22℃、40%RHの条件下において12週間放置した後の炭酸ガス減少率は、24%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
【0023】
本発明の多層容器の形状は、特に限定されるものではなく、充填する内容物の種類等に応じ適宜変更することが好ましい。
例えば、内容物が天然発泡水(スパークリングウォーター)等の炭酸飲料である場合、図1および図2に示すようなペタロイド形状の底部を有する容器であることが好ましい。
また、内容物の充填後に容器を加温する場合、図3に示すような容器内方へ凹むパネル部を各側面の胴部に有する容器であることが好ましい。
【0024】
多層容器の厚さは、充填する内容物の種類等に応じ適宜変更することが好ましいが、例えば、0.15mm以上、2mm以下とすることができる。また、容器の厚さは、一様であってもよく、部分によって異なるものであってもよい。
【0025】
また、本発明の多層容器は、裁断することにより、層ごとに分離することができ、高いリサイクル適性を有する。
【0026】
<ポリエチレンフラノエート層>
本発明の多層容器が備えるポリエチレンフラノエート層に含まれるポリエチレンフラノエートは、バイオマス由来のポリエチレングリコールと、バイオマス由来のフランジカルボン酸との重縮合物であり、100%バイオマス由来の化合物である。このような化合物を使用することにより、化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷の低減が可能となる。
なお、バイオマス由来のフランジカルボン酸は、グルコースから生産することができ、具体的には、グルコースを異性化し、フルクトースとし、これを脱水し、アルコール化させた後、酸化することにより得ることができる。
また、バイオマス由来のエチレングリコールとは、バイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものである。例えば、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法等により、バイオマス由来のエチレングリコールを得ることができる。
【0027】
フランジカルボン酸とポリエチレングリコールとの重縮合は、従来公知の方法により行うことができ、具体的には、フランジカルボン酸とポリエチレングリコールとのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によって製造することができる。
【0028】
また、重縮合反応は、重合触媒の存在下に行うのが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。
【0029】
重合触媒としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く第1族〜第14族金属元素を含む化合物が挙げられる。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩又はβ−ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が挙げられる。
【0030】
また、多層容器に含まれる樹脂材料の総量に対するポリエチレンフラノエートの含有量は、2質量%以上、10質量%以下であることが好ましく、3質量%以上、6質量%以下であることがより好ましい。これにより、多層容器のガスバリア性をより向上させることができる。また、多層容器の使用後のリサイクル適性をより向上させることができる。
【0031】
ポリエチレンフラノエート層は、本発明の特性を損なわない範囲において、ポリエチレンフラノエート以外の樹脂材料を含んでいてもよく、例えば、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アイオノマー樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
【0032】
ポリエチレンフラノエート層は、本発明の特性を損なわない範囲において、酸素吸収剤、二酸化炭素吸収剤、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、分散剤、紫外線吸収剤、アセトアルデヒド吸収剤(例えば、Color Matrix社製のAA Scavengers)および着色顔料等の添加剤を含んでいてもよい。
【0033】
酸素吸収剤としては、鉄系酸素吸収剤および非鉄系酸素吸収剤を挙げることができ、容器本体の透明性を維持することができるため、非鉄系酸素吸収剤がより好ましい。
【0034】
鉄系酸素吸収剤としては、還元鉄粉、界面鉄粉、噴霧鉄粉、鉄研削粉、電解鉄粉、粉砕鉄などの鉄粉が挙げられる。
【0035】
また、非鉄系酸素吸収剤としては、エチレン系不飽和基含有共重合体などを挙げることができる。エチレン系不飽和基含有共重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリ(2−エチルブタジエン)、ポリ(2−ブチルブタジエン)などのポリジエンであって主として1,4位で重合したもの、ポリオクテニレン、ポリペンテニレン、ポリノルボルネンなどのシクロオレフィンの開環メタセシス重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などのスチレン−ジエン系ブロック共重合体などを挙げることができる。
【0036】
ポリエチレンフラノエート層における酸素吸収剤の含有量は、3質量%以上、20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上、10質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
ポリエチレンフラノエート層の厚さは、5μm以上、100μm以下であることが好ましく、10μm以上、50μm以下であることがより好ましい。ポリエチレンフラノエート層の圧さを上記数値範囲とすることにより、多層容器のガスバリア性をより向上させることができる。
【0038】
<ポリエステル層>
本発明の多層容器は、バイオマス由来ポリエステルおよび/またはリサイクルポリエステルを含む層を備えていてもよい。バイオマス由来ポリエステルおよびリサイクルポリエステルは、ポリエチレンフラノエート同様、環境適性が高く、化石燃料の使用量を削減することができる。
なお、本発明において、「バイオマス由来のポリエステル」とは、バイオマス由来のジオールと、バイオマス由来または化石燃料由来のジカルボン酸との重縮合物である。
また、「リサイクルポリエステル」とは、バイオマス由来または化石燃料由来のポリエステルからなる樹脂製品を使用した後に回収し再利用したものをいうものとする。
【0039】
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコ−ル、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、1,4−ブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール等を使用することができる。
【0040】
ジカルボン酸についても、特に限定されるものではないが、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸およびそれらの誘導体を制限なく使用することができる。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸及びイソフタル酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸ならびにシクロヘキサンジカルボン酸等の、通常炭素数が2以上、40以下の鎖状或いは脂環式ジカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の誘導体として、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等の低級アルキルエステルや例えば無水コハク酸等の上記脂肪族ジカルボン酸の環状酸無水物が挙げられる。
【0041】
ジオールと、ジカルボン酸との重縮合についても従来公知の方法により行うことができ、具体的には、上記したジカルボン酸とジオールとのエステル化反応および/またはエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によって製造することができる。また、重縮合反応は、上記したような重合触媒の存在下において行うことが好ましい。
【0042】
ポリエステル層は、2種以上のバイオマス由来ポリエステルおよび/またはリサイクルポリエステルを含むものであってもよい。
【0043】
ポリエステル層は、ポリエステルの中でも、ポリエチレンテレフタレート、すなわち、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートおよび/またはリサイクルポリエチレンテレフタレートを含むポリエチレンテレフタレート層であることが好ましい。
【0044】
また、ポリエステル層は、本発明の特性を損なわない範囲において、上記したその他の樹脂材料や、添加剤を含んでいてもよい。
【0045】
ポリエステル層の厚さは、100μm以上、600μm以下であることが好ましく、150μm以上、500μm以下であることがより好ましい。
【0046】
<その他>
一実施形態において、本発明の多層容器の内面には、蒸着膜が形成されていてもよい。蒸着層を設けることにより、ガスバリア性をより一層向上させることができる。
【0047】
蒸着膜は、ガスバリア性および透明性という観点から、無機酸化物からなるものであることが好ましい。このような無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等を使用することができる。
【0048】
蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレ−ティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0049】
また、蒸着膜の膜厚としては、膜厚0.005μm〜0.4μm位であることが望ましく、具体的には、その膜厚としては、0.01〜0.1μm位が望ましい。蒸着膜の厚みを、0.1μm、更には、0.4μm以下とすることにより、蒸着膜にクラック等が発生し易くなる不具合を防止することができる。一方、蒸着膜の厚みを0.01μm、更には0.005μm以上とすることにより、ガスバリア性の効果を確実に奏することができる。
【0050】
<多層容器の製造方法>
一実施形態において、本発明の多層容器は、ポリエチレンフラノエートおよび、所望により、その他の樹脂材料や添加剤を含む樹脂組成物と、バイオマス由来ポリエステルおよび/またはリサイクルポリエステルおよび、所望により、その他の樹脂材料や添加剤を含む樹脂組成物と、を共射出成形することにより、プリフォームを製造する工程と、
このプリフォームを、2軸延伸ブロー成形する工程と、を含む。
【0051】
<共射出成形工程>
本発明の多層容器の製造に用いられるプリフォームは、2以上の樹脂組成物を共射出成形することにより、製造することができる。樹脂組成物の射出成形は、従来公知の装置を使用することにより行うことができる。
射出成形時の温度は、260℃以上、310℃以下であることが好ましく、265℃以上、300℃以下であることがより好ましい。
【0052】
<2軸延伸ブロー成形>
本発明の多層容器は、プリフォームを、その表面温度を好ましくは90℃以上、130℃以下、より好ましくは100℃以上、120℃以下に加熱した後、金型内において、2軸延伸ブロー成形することにより得ることができる。
プリフォームの加熱は、温風により行っても、赤外線により行ってもよく、従来公知の装置を使用して行うことができる。
また、プリフォームの2軸延伸ブロー成形も、従来公知の装置、例えば、KHS社製のLB01(商品名)を使用することにより行うことができる。
このように、樹脂組成物の射出成形工程、プリフォームの加熱工程および2軸延伸ブロー工程において、従来の容器の製造に使用していた装置をそのまま使用することができるので、本発明の多層容器を製造するための新たな成形設備を準備する必要が生じない。
【0053】
<その他の製造方法>
他の実施形態において、本発明の多層容器の製造に用いられるプリフォームは、金型内において、樹脂組成物を圧縮成形すること(コンプレッション成形)によっても製造することができる。
【0054】
<用途>
本発明の多層容器に充填する内容物は、特に限定されるものではなく、天然発泡水(スパークリングウォーター)等の炭酸飲料、日本酒、ワイン等のお酒、お茶、果汁飲料、スポーツドリンク、各種調味料等が挙げられる。
特には、本発明の多層容器は、高いガスバリア性を有しているため、炭酸飲料充填用の容器として好適に使用することができる。
また、本発明の多層容器は、高い耐熱性も有しているため、高温の内容物の充填や、内容物充填後の加熱にも耐えることができるため、加温販売用の容器として好適に使用することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
実施例1
<多層容器Aの製造>
多層射出成形機により共射出成形し、ポリエチレンテレフタレート層/ポリエチレンフラノエート層/ポリエチレンテレフタレート層の3層構成を有する多層プリフォームAを得た。なお、多層プリフォームに含まれる樹脂材料の総量に対するバイオマス由来ポリエチレンフラノエートの含有量は、6質量%とした。
【0057】
上記のようにして得られたプリフォームを、KHS社製のブロー成形装置LB01にて表面温度を107℃となるまで加熱した後、金型内において、2軸延伸ブローし、図3に示す形状の多層容器Aを得た。得られた容器の重量は22g、全高は132mmであり、胴径は66mmであり、容器の厚さは0.30mmであった。
【0058】
実施例2
ブロー成形時に使用する金型を変更し、得られる多層容器の形状を図1に示す形状に変更した以外は、実施例1と同様にして多層容器Bを得た。得られた容器の重量は22g、全高は206mmであり、胴径は60mmであり、容器の厚さは0.27mmであった。なお、多層容器に含まれる樹脂材料の総量に対するバイオマス由来ポリエチレンフラノエートの含有量は、実施例1同様、6質量%とした。
【0059】
比較例1
ポリエチレンテレフタレート層のみからなる単層の容器を作成した以外は、実施例1と同様にして単層容器Cを得た。なお、多層容器Aと同様、得られた容器の重量は22g、全高は132mmであり、胴径は66mmであり、容器の厚さは0.30mmであった。
【0060】
比較例2
ポリエチレンテレフタレート層のみからなる単層の容器を作成した以外は、実施例2と同様にして単層容器Dを得た。なお、多層容器Bと同様、得られた容器の重量は22g、全高は206mmであり、胴径は60mmであり、容器の厚さは0.27mmであった。
【0061】
<ガスバリア性評価>
(酸素透過率測定)
実施例および比較例にて得られた容器の酸素透過率を、JIS K 7126(等圧法)に準拠して、酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製、商品名:OX−TRAN)を用いて、23℃、湿度40%RHの条件により測定した。測定結果を表1にまとめた。
【0062】
【表1】
【0063】
表1からも明らかなように、実施例において得られた多層容器は、従来より使用される容器である、比較例において得られた容器と比べ、優れたガスバリア性を有することがわかる。また、実施例の容器と、比較例の容器とは、同じ装置を使用して製造することができ、本発明の容器の製造に使用した樹脂組成物が高い成形性を有していることがわかる。
【0064】
(炭酸ガスバリア性評価)
実施例2および比較例2において得られた図1に示される形状を有する容器に、ビクスル社製のカーボネータPilot Plant BPP−1を用いて、3.4ガスボリュームの炭酸水を充填し、キャッピングした。
22℃、40%RHの条件下において、6週間および12週間放置した後の容器内のGVを、ビクスル社製のDGV−1(商品名)を用いて測定した。測定結果を表2にまとめた。
【0065】
【表2】
【0066】
<高温環境下における耐白化性評価>
実施例1において得られた図2に示される形状を有する容器に常温の水を、天面から25mmのヘッドスペースができるように充填し、キャッピングした。これをカンウォーマー(日本ヒーター機器株式会社製、商品名:TW75−C3)内において、液温が70℃となるように保管した。7日後および17日後の容器を目視により観察し、下記評価基準に従い、評価した。評価結果を表3にまとめた。
また、比較例3として、ポリエチレンテレフタレート層/メタキシレンアジパミド+ステアリン酸コバルト/ポリエチレンテレフタレート層の3層構成を有する多層容器を用いた。
(評価基準)
○:容器の白化が見られなかった。
△:容器の白化が見られた。
×:容器の白化が多く見られた。
【0067】
【表3】
【0068】
<高湿環境下における耐白化試験>
実施例1において得られた図2に示される形状を有する容器および上記比較例3の容器を、40℃、90%RHの環境下において、2週間放置した後、容器の外観を目視により観察し、下記評価基準に従い、評価した。評価結果を表4にまとめた。
(評価基準)
○:容器の白化が見られなかった。
×:容器の白化が見られた。
【0069】
【0070】
<寸法安定性試験>
実施例1と同様にして容器を作製した(実施例3)。該容器の重量は22g、キャップを含む全高は134.42mm、底深さは、17.38mmであった。
また、比較例1と同様にして容器を作製した(比較例4)。該容器の重量は22g、キャップを含む全高は134.35mm、底深さは、16.93mmであった。
上記の容器に常温の水を、天面から25mmのヘッドスペースができるように充填し、キャッピングした。これを、カンウォーマー(日本ヒーター機器株式会社製、商品名:TW75−C3)内において、液温が70℃となるように保管した。
1週間保管後および2週間保管後の容器の寸法変化を測定し、表5にまとめた。
なお、全高の寸法変化は、Mitutoyo製のデジマチックハイトゲージ CodeNo.192−663により、底深さの寸法変化は、Mitutoyo製のデプスゲージ Model ID−C1012XBDにより測定した。
【0071】
【表5】
【符号の説明】
【0072】
10:多層容器
20:ポリエチレンフラノエート層
30:ポリエステル層
図1
図2
図3
図4