(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970959
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】医療用支持固定装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20211111BHJP
A61B 6/04 20060101ALI20211111BHJP
A61G 13/00 20060101ALI20211111BHJP
A61G 13/12 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
A61N5/10 T
A61B6/04 332D
A61B6/04 332E
A61G13/00 Z
A61G13/12 B
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-164424(P2017-164424)
(22)【出願日】2017年8月29日
(65)【公開番号】特開2019-41781(P2019-41781A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】591189812
【氏名又は名称】エンジニアリングシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(72)【発明者】
【氏名】左治木 修
【審査官】
寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0159713(US,A1)
【文献】
特開平06−007463(JP,A)
【文献】
特開2003−284715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
A61B 6/04
A61G 13/00、13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
人体の所定部位を支持し固定するための支持固定手段と、
該基台と該支持固定手段との間に介在され且つ該基台に対して垂直に延びる回動中心軸線を中心として所定角度範囲に亘って回動自在に装着されたヨー角微調整板と、
移動自在に配設されたヨー角微調整用入力部材、及び該ヨー角微調整用入力部材と該ヨー角微調整板との間に介在されたヨー角微調整用伝動手段を含むヨー角微調整板駆動機構と、
を具備し、
該基台には少なくとも2個の弧状長穴が形成されており、該弧状長穴の各々の弧状中心線は単一円上に位置し、該ヨー角微調整板の裏面には該少なくとも2個の弧状長穴に対応して少なくとも2個のピンが配設されており、該ピンの各々を対応する該弧状長穴に夫々挿入することによって、該ヨー角微調整板が該基台に装着されており、
該ヨー角微調整用入力部材を移動すると該ヨー角微調整用入力部材の移動が該ヨー角微調整用伝動手段を介して該ヨー角微調整板に伝動され、該ヨー角微調整板が該回動中心軸線を中心に回動される、
ことを特徴とする医療用支持固定装置。
【請求項2】
該基台には該単一円の周方向に間隔をおいて4個の該弧状長穴が形成されており、該ヨー角微調整板の裏面には4個の該弧状長穴に対応して該ピンが4個配設されている、請求項1記載の医療用支持固定装置。
【請求項3】
該ヨー角微調整用入力部材は該基台に回転自在に装着されており、該ヨー角微調整用伝動手段は減速歯車列を含む、請求項1又は2記載の医療用支持固定装置。
【請求項4】
該ヨー角微調整板駆動機構は該ヨー角微調整用入力部材の回転量を表示する表示器を含む、請求項3記載の医療用支持固定装置。
【請求項5】
更に、該基台と該支持固定手段との間に介在され且つ該基台の上方を該基台の幅方向に延びる回動中心軸線を中心として所定角度範囲に亘って回動自在に装着されたチルト角微調整板と、
移動自在に装着されたチルト角微調整用入力部材、及び該チルト角微調整用入力部材と該チルト角微調整板との間に介在されたチルト角微調整用伝動手段を含むチルト角微調整板駆動機構と、
を具備し、
該チルト角微調整用入力部材を移動すると、該チルト角微調整用入力部材の移動が該チルト角微調整用伝動手段を介して該チルト角微調整板に伝動され、該チルト角微調整板が該回動中心軸線を中心として回動される、
請求項1から4までのいずれかに記載の医療用支持固定装置。
【請求項6】
該ヨー角微調整板の上面には少なくとも2個の案内部材が固定されており、該チルト角微調整板の裏面には該2個の案内部材に対応して2個の被案内部材が固定されており、該案内部材の上面は凹状弧状面であり該被案内部材の下面は凸状弧状面であり且つ該凹状弧状面と該凸状弧状面は単一円筒面上に位置し、該被案内部材の該凸状弧状面を該案内部材の該凹状弧状面に係合させて、該ヨー角微調整板に該チルト角微調整板が装着されており、該支持固定手段は該チルト角微調整板上に装着されている、請求項5記載の医療用支持固定装置。
【請求項7】
該チルト角微調整用入力部材は該ヨー角微調整板に回転自在に装着されており、該チルト角微調整用伝動手段は複数個の減速歯車を含む、請求項6記載の医療用支持固定装置。
【請求項8】
該チルト角微調整板駆動機構は該チルト角微調整用入力部材の回転量を表示する表示器を含む、請求項7記載の医療用支持固定装置。
【請求項9】
基台と、
人体の所定部位を支持し固定するための支持固定手段と、
該基台と該支持固定手段との間に介在され且つ該基台の上方を該基台の幅方向に延びる回動中心軸線を中心として所定角度範囲に亘って回動自在に装着されたチルト角微調整板と、
移動自在に装着されたチルト角微調整用入力部材、及び該チルト角微調整用入力部材と該チルト角微調整板との間に介在されたチルト角微調整用伝動手段を含むチルト角微調整板駆動機構と、
該チルト角微調整板に対して垂直に延びる回動中心軸線を中心として所定角度範囲に亘って回動自在に装着されたヨー角微調整板と、
移動自在に配設されたヨー角微調整用入力部材、及び該ヨー角微調整用入力部材と該ヨー角微調整板との間に介在されたヨー角微調整用伝動手段を含むヨー角微調整板駆動機構と、
を具備し、
該チルト角微調整板には少なくとも2個の弧状長穴が形成されており、該弧状長穴の各々の弧状中心線は単一円上に位置し、該ヨー角微調整板の裏面には該少なくとも2個の弧状長穴に対応して少なくとも2個のピンが配設されており、該ピンの各々を対応する該弧状長穴に夫々挿入することによって、該ヨー角微調整板が該チルト角微調整板に装着されており、
該支持固定手段は該ヨー角微調整板上に装着されており、
該チルト角微調整用入力部材を移動すると、該チルト角微調整用入力部材の移動が該チルト角微調整用伝動手段を介して該チルト角微調整板に伝動され、該チルト角微調整板が該回動中心軸線を中心として回動され、
該ヨー角微調整用入力部材を移動すると該ヨー角微調整用入力部材の移動が該ヨー角微調整用伝動手段を介して該ヨー角微調整板に伝動され、該ヨー角微調整板が該回動中心軸線を中心に回動される、
ことを特徴とする医療用支持固定装置。
【請求項10】
該基台の上面には少なくとも2個の案内部材が固定されており、該チルト角微調整板の裏面には該2個の案内部材に対応して2個の被案内部材が固定されており、該案内部材の上面は凹状弧状面であり該被案内部材の下面は凸状弧状面であり且つ該凹状弧状面と該凸状弧状面は単一円筒面上に位置し、該被案内部材の該凸状弧状面を該案内部材の該凹状弧状面に係合させて、該基台に該チルト角微調整板が装着されている、請求項9記載の医療用支持固定装置。
【請求項11】
該チルト角微調整用入力部材は該基台に回転自在に装着されており、該チルト角微調整用伝動手段は減速歯車列を含む、請求項10記載の医療用支持固定装置。
【請求項12】
該チルト角微調整板駆動機構は該チルト角微調整用入力部材の回転量を表示する表示器を含む、請求項11記載の医療用支持固定装置。
【請求項13】
該チルト角微調整板には該単一円の周方向に間隔をおいて4個の該弧状長穴が形成されており、該ヨー角微調整板の裏面には4個の該弧状長穴に対応して該ピンが4個配設されている、請求項12記載の医療用支持固定装置。
【請求項14】
該ヨー角微調整用入力部材は該チルト角微調整板に回転自在に装着されており、該ヨー角微調整用伝動手段は減速歯車列を含む、請求項12又は13記載の医療用支持固定装置。
【請求項15】
該ヨー角微調整板駆動機構は該ヨー角微調整用入力部材の回転量を表示する表示器を含む、請求項14記載の医療用支持固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の所定部位、例えば頭部、を支持し固定するための支持固定手段を含む医療用支持固定装置、更に詳しくは、人体の所定部位を支持し固定する支持固定手段のヨー角及び/又はチルト角を微調整することができる医療用支持固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の所定部位に放射線を照射する放射線治療或いは診断のために人体の所定部位の画像を取得するCT又はMRIの如き画像診断に際しては、人体の所定部位を充分精密に所要位置に位置付けて支持固定することが重要である。下記特許文献1には、人体の頭部を支持固定する頭部支持固定手段のヨー角及びチルト角が調整自在である、放射線治療に使用される医療用支持固定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−7463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したとおり、上記特許文献1には、人体の頭部を支持固定する支持固定手段のヨー角及びチルト角が調整自在である医療用支持固定装置が開示されている。しかしながら、上記特許文献1には、複数個の構成部材のうちの特定の1個の構成部材はヨー角が調整自在であり、他の1個の構成部材はチルト角が調整自在である旨は記載されているが、ヨー角を調整するための手段乃至機構の具体的構成及びチルト角を調整するための手段乃至機構の具体的構成について全く開示されておらず、ヨー角及び/又はチルト角が調整自在な医療用支持固定装置を具現化するための充分な開示が存在しない。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、ヨー角及び/又はチルト角を微調整することを可能にする具体的構成を備えた、従ってヨー角及び/又はチルト角を微調整自在な医療用支持固定装置として具現化することができる、医療用支持固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、基台と人体の所定部位を支持固定するための支持固定手段との間にヨー角微調整板及び/又はチルト角微調整板を介在せしめ、かかるヨー角微調整板及び/又はチルト角微調整板を所要回
動中心軸線を中心として所定角度範囲に亘って回
動自在に装着すると共に、ヨー角微調整板及び/又はチルト角微調整板に関して、入力部材及び伝動手段を含むヨー角微調整板駆動機構及び/又はチルト角微調整板駆動機構を配設することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0007】
即ち、本発明の一局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する医療用支持固定装置として、
基台と、
人体の所定部位を支持し固定するための支持固定手段と、
該基台と該支持固定手段との間に介在され且つ該基台に対して垂直に延びる回動中心軸線を中心として所定角度範囲に亘って回動自在に装着されたヨー角微調整板と、
移動自在に配設されたヨー角微調整用入力部材、及び該ヨー角微調整用入力部材と該ヨー角微調整板との間に介在されたヨー角微調整用伝動手段を含むヨー角微調整板駆動機構と、
を具備し、
該基台には少なくとも2個の弧状長穴が形成されており、該弧状長穴の各々の弧状中心線は単一円上に位置し、該ヨー角微調整板の裏面には該少なくとも2個の弧状長穴に対応して少なくとも2個のピンが配設されており、該ピンの各々を対応する該弧状長穴に夫々挿入することによって、該ヨー角微調整板が該基台に装着されており、
該ヨー角微調整用入力部材を移動すると該ヨー角微調整用入力部材の移動が該ヨー角微調整用伝動手段を介して該ヨー角微調整板に伝動され、該ヨー角微調整板が該回動中心軸線を中心に回動される、
ことを特徴とする医療用支持固定装置が提供される。
【0008】
該基台には該単一円の周方向に間隔をおいて4個の該弧状長穴が形成されており、該ヨー角微調整板の裏面には4個の該弧状長穴に対応して該ピンが4個配設されているのが好適である。望ましくは、該ヨー角微調整用入力部材は該基台に回転自在に装着されており、該ヨー角微調整用伝動手段は減速歯車列を含む。該ヨー角微調整板駆動機構は該ヨー角微調整用入力部材の回転量を表示する表示器を含むのが好都合である。更に、該基台と該支持固定手段との間に介在され且つ該基台の上方を該基台の幅方向に延びる回動中心軸線を中心として所定角度範囲に亘って回動自在に装着されたチルト角微調整板と、移動自在に装着されたチルト角微調整用入力部材、及び該チルト角微調整用入力部材と該チルト角微調整板との間に介在されたチルト角微調整用伝動手段を含むチルト角微調整板駆動機構と、を具備し
、該チルト角微調整用入力部材を移動すると、該チルト角微調整用入力部材の移動が該チルト角微調整用伝動手段を介して該チルト角微調整板に伝動され、該チルト角微調整板が該回動中心軸線を中心として回動されるのが好ましい。好適には、該ヨー角微調整板の上面には少なくとも2個の案内部材が固定されており、該チルト角微調整板の裏面には該2個の案内部材に対応して2個の被案内部材が固定されており、該案内部材の上面は凹状弧状面であり該被案内部材の下面は凸状弧状面であり且つ該凹状弧状面と該凸状弧状面は単一円筒面上に位置し、該被案内部材の該凸状弧状面を該案内部材の該凹状弧状面に係合させて、該ヨー角微調整板に該チルト角微調整板が装着されており、該支持固定手段は該チルト角微調整板上に装着されている。望ましくは、該チルト角微調整用入力部材は該ヨー角微調整板に回転自在に装着されており、該チルト角微調整用伝動手段は複数個の減速歯車を含む。該チルト角微調整板駆動機構は該チルト角微調整用入力部材の回転量を表示する表示器を含むのが好都合である。
【0009】
本発明の他の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する医療用支持固定装置として、
基台と、
人体の所定部位を支持し固定するための支持固定手段と、
該基台と該支持固定手段との間に介在され且つ該基台の上方を該基台の幅方向に延びる回動中心軸線を中心として所定角度範囲に亘って回動自在に装着されたチルト角微調整板と、
移動自在に装着されたチルト角微調整用入力部材、及び該チルト角微調整用入力部材と該チルト角微調整板との間に介在されたチルト角微調整用伝動手段を含むチルト角微調整板駆動機構と、
該チルト角微調整板に対して垂直に延びる回動中心軸線を中心として所定角度範囲に亘って回動自在に装着されたヨー角微調整板と、
移動自在に配設されたヨー角微調整用入力部材、及び該ヨー角微調整用入力部材と該ヨー角微調整板との間に介在されたヨー角微調整用伝動手段を含むヨー角微調整板駆動機構と、
を具備し、
該チルト角微調整板には少なくとも2個の弧状長穴が形成されており、該弧状長穴の各々の弧状中心線は単一円上に位置し、該ヨー角微調整板の裏面には該少なくとも2個の弧状長穴に対応して少なくとも2個のピンが配設されており、該ピンの各々を対応する該弧状長穴に夫々挿入することによって、該ヨー角微調整板が該チルト角微調整板に装着されており、
該支持固定手段は該ヨー角微調整板上に装着されており、
該チルト角微調整用入力部材を移動すると、該チルト角微調整用入力部材の移動が該チルト角微調整用伝動手段を介して該チルト角微調整板に伝動され、該チルト角微調整板が該回動中心軸線を中心として回動さ
れ、
該ヨー角微調整用入力部材を移動すると該ヨー角微調整用入力部材の移動が該ヨー角微調整用伝動手段を介して該ヨー角微調整板に伝動され、該ヨー角微調整板が該回動中心軸線を中心に回動される、
ことを特徴とする医療用支持固定装置が提供される。
【0010】
好ましくは、該基台の上面には少なくとも2個の案内部材が固定されており、該チルト角微調整板の裏面には該2個の案内部材に対応して2個の被案内部材が固定されており、該案内部材の上面は凹状弧状面であり該被案内部材の下面は凸状弧状面であり且つ該凹状弧状面と該凸状弧状面は単一円筒面上に位置し、該被案内部材の該凸状弧状面を該案内部材の該凹状弧状面に係合させて、該基台に該チルト角微調整板が装着されている。望ましくは、該チルト角微調整用入力部材は該基台に回転自在に装着されており、該チルト角微調整用伝動手段は減速歯車列を含む。該チルト角微調整板駆動機構は該チルト角微調整用入力部材の回転量を表示する表示器を含むのが好都合である
。該チルト角微調整板には該単一円の周方向に間隔をおいて4個の該弧状長穴が形成されており、該ヨー角微調整板の裏面には4個の該弧状長穴に対応して該ピンが4個配設されているのが好適である。望ましくは、該ヨー角微調整用入力部材は該チルト角微調整板に回転自在に装着されており、該ヨー角微調整用伝動手段は減速歯車列を含む。該ヨー角微調整板駆動機構は該ヨー角微調整用入力部材の回転量を表示する表示器を含むのが好都合である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の医療用支持固定装置によれば、入力部材を手動で或いは適宜の電動手段によって移動すると、かかる移動が伝動手段を介してヨー角微調整板又はチルト角微調整板が微細に回転され、かくして支持固体手段のヨー角又はチルト角が微調整される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に従って構成された医療用支持固定装置の好適実施形態を示す斜面図。
【
図2】
図1に示す医療用支持固定装置における基台、ヨー角微調整板及びチルト角微調整板を示す分解斜面図。
【
図3】
図1に示す医療用支持固定装置における基台を示す平面図。
【
図4】
図1に示す医療用支持固定装置におけるヨー角微調整板を裏面側から見た斜面図。
【
図5】
図1に示す医療用支持固定装置におけるヨー角微調整用入力部材及びヨー角微調整用伝動手段を示す部分斜面図。
【
図6】
図1に示す医療用支持固定装置におけるチルト角微調整板を裏面側から見た斜面図。
【
図7】
図1に示す医療用支持固定装置におけるヨー角微調整板とチルト角微調整板との組み合わせ関係を示す側面図。
【
図8】
図1に示す医療用支持固定装置におけるチルト角微調整用入力部材及びチルト角微調整用伝動手段を示す部分斜面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成された医療用支持固定装置の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳述する。
【0014】
図1及び
図2を参照して説明すると、本発明に従って構成された図示の医療用支持固定装置は、基台2及び人体の頭部を支持し固定するための支持固定手段4と共に、基台2と支持固定手段4との間に介在されたヨー角微調整板6及びチルト角微調整板8を具備している。
【0015】
図1及び
図2と共に
図3を参照して説明を続けると、基台2は全体として矩形板形状であり、その中央には矩形状の開口10が形成されている。基台2は、充分な強度を有するが比重が比較的小さく放射線の透過を許容する材料から形成されているのが好都合であり、例えばアクリル樹脂発泡体の如き樹脂発泡体をカーボン繊維強化樹脂で囲繞した複合材料から形成することができる。
図3を参照することによって明確に理解されるとおり、基台2には適宜の間隔をおいて4個の弧状長穴12が形成されている。これらの弧状長穴12の弧状中心線11は共通の仮想単一円13上に位置している。所望ならば、4個の弧状長穴12に代えて2個又は3個の弧状長穴或いは5個以上の弧状長穴を形成することもできる。基台2の上面には、更に、上記弧状長穴12の各々に隣接してその外側に位置する4個の拘束部材14が締結ネジの如き適宜の締結手段(図示していない)によって固定されている。拘束部材14の各々は上記単一円13と同心状の弧状内周面を有する基部14aとこの基部14aの上端から上記弧状長穴12に向けて突出する拘束部14bとを有する。基台2の上面における
図3において左側部には全体を番号16で示すヨー角微調整板駆動機構が配設されている。このヨー角微調整板駆動機構16については、後に更に詳述する。
【0016】
図1及び
図2と共に
図4を参照して説明すると、ヨー角微調整板6も全体として矩形状であり、その中央には矩形状の開口18が形成されている。ヨー角微調整板6も、上記基台2と同様に、充分な強度を有するが比重が比較的小さく放射線の透過を許容する材料から形成されているのが好都合であり、例えばアクリル樹脂発泡体の如き発泡樹脂をカーボン繊維強化樹脂で囲繞した複合材料から形成することができる。ヨー角微調整板6は基台2よりも幾分小さく、その四角部は弧状に設定されている。ヨー角微調整板6に形成されている開口18は基台2に形成されている開口10と実質上同一の大きさであるのが好都合である。
図4に明確に図示するとおり、ヨー角微調整板6の裏面には基台2に形成されている上記弧状長穴12に対応してピン20が締結ネジの如き適宜の締結手段(図示していない)によって固定されている。図示の実施形態においては、4個の弧状長穴12に対応して4個のピン20が固定されている。かようなヨー角微調整板6はその裏面の四角部領域に配設されている4個のピン20を、基台2に形成されている4個の弧状長穴12に挿入して、基台2に積層される。ピン20の直径は弧状長穴12の幅と実質上同一であり、従ってヨー角微調整板6はピン20が弧状長穴12に沿って移動できる角度範囲に亘って、上記単一円13の中心を通って基台2に対して実質上垂直に延びる(
図3において紙面に垂直に延びる)回動中心軸線22を中心として回動自在に基台2に装着されている。ヨー角微調整板6の四角部は、基台2の上面に配設されている拘束部材14の拘束部14bの下方に挿入され、これによって基台2に対してヨー角微調整板6が上方に離隔することが防止される。基台2に対するヨー角微調整板6の回動は弧状長穴12とピン20との協働によって充分精密に規制されるので、ヨー角微調整板6の四角部側面と拘束部材14の基部14aの内周面との間には若干の隙間が存在していてもよい。基台2に対してヨー角微調整板6を回動することなく両者が整合して状態においては、ヨー角微調整板6に形成されている開口18は基台2に形成されている開口10に整合される。
【0017】
基台2に配設されて
いる上記ヨー角微調整板駆動機構16は、ヨー角を微調整するために基台2に対してヨー角微調整板6を上記回動中心軸線22を中心として回動するためのものである。
図1及び
図2と共に
図5を参照して説明を続けると、基台2の上面には支持枠体23が接着剤或いは締結ネジの如き適宜の手段(図示していない)によって固定されている。そして、この支持枠体23には、基台2に対して平行に延在する軸部材24と基台2
に対して垂直に延びる軸部材26が固定されている。軸部材24には円筒状入力部材28と共にウォーム歯車30(
図5においては図面の簡略化のためにウォーム歯車30のウォーム歯の図示を省略している)が回転自在に装着されている。ヨー角微調整用入力部材を構成する入力部材28とウォーム歯車30とは小径円筒形状の接続部材32によって連結されており、入力部材28とウォーム歯車30とは一体に回転する。軸部材24には、更に、機械式表示器34が固定されている。入力部材28は表示器34の表示機構に駆動連結されていて、入力部材28が1回転されると、表示器34に表示される数字が1つ増大される(表示器34自体の構成及び入力部材28と表示器34の表示機構との駆動連結自体は、当業者には周知の構成でよいので、本明細書ではその詳細な説明は省略する)。軸部材26には上記ウォーム歯車30と係合するウォームホイール36(
図5においては図面の簡略化のためにウォームホイール36のウォームの図示を省略している)と平歯車38が回転自在に装着されている。ウォームホイール36と平歯車38とは小径円筒形状の接続部材40によって連結されており、ウォームホイール36と平歯車38とは一体に回転する。一方、ヨー角微調整板6の裏面には弧状平歯車42が締結ネジの如き適宜の締結手段(図示していない)によって固定されており、この平歯車42が上記平歯車38に係合されている。かような次第であるので、入力部材28を手動で回転すると、入力部材28のかかる回転がウォーム歯車30、ウォームホイール36、平歯車38及び平歯車42を介してヨー角微調整板6に伝動されヨー角微調整板6が回動される。入力部材28とヨー角微調整板6との間のヨー角微調整用伝動手段を構成する減速歯車列、即ちウォーム歯車30、ウォームホイール36、平歯車38及び平歯車42による減速比は例えば360:1に設定することができ、かくすると手動にて入力部材28を1回転するとヨー角微調整板6が1度回動され、ヨー角が1度変更される。
【0018】
図示の実施形態においては、入力部材28は手動にて回動されるが、所望ならば電動モータの如き適宜の駆動源によって入力部材28を回動することもできる。また、機械式表示器34に代えて液晶表示器の如き他の適宜の形態の表示器を使用することもできる。
【0019】
再び
図1及び
図2を参照して説明すると、ヨー角微調整板6の上面にはその四角部の夫々に案内部材44が締結ネジの如き適宜の締結手段(図示していない)によって固定されている。
図7を参照することによって明確に理解することができるとおり、4個の案内部材44の各々の上面には凹状弧状面46が形成されており、これらの凹状弧状面46は基台2の上方を基台2の幅方向に延在する(
図7において紙面に垂直に延びる)回動中心軸線48を中心とする仮想単一円筒面50上に位置する。案内部材44の各々の幅方向外側面には、上記凹状弧状面46と同心状に弧状に延在する弧状案内溝52が形成されている。図示の実施形態においては、ヨー角微調整板6の上面に4個の案内部材44を配設しているが、所望ならば適宜に配列した2個又は3個或いは5個以上の案内部材44をヨー角微調整板6の上面に配設することもできる。ヨー角微調整板6の上面片端部には、全体を番号54で示すチルト角微調整板駆動機構が配設されている。このチルト角微調整板駆動機構54については、後に更に詳述する。
【0020】
図1及び
図2と共に
図6及び
図7を参照して説明を続けると、チルト角微調整板8も全体として矩形状である。チルト角微調整板8には開口は形成されていない。チルト角微調整板8も、基台2及びヨー角微調整板6と同様に、充分な強度を有するが比重が比較的小さく放射線の透過を許容する材料から形成されているのが好都合であり、例えばアクリル樹脂発泡体の如き発泡樹脂をカーボン繊維強化樹脂で囲繞した複合材料から形成することができる。
図6に明確に図示する如く、チルト角微調整板8の裏面には、ヨー角微調整板6の上面に配設されている4個の案内部材44に対応して、その四角部の夫々に被案内部材56が締結ネジの如き適宜の締結手段(図示していない)によって固定されている。そして、これらの被案内部材56の下面には凸状弧状面58が形成されている。これらの凸状弧状面58は、上記単一円筒面50上に位置する。被案内部材56の幅方向外側には矩形状の垂下壁部60が一体に形成されており、かかる垂下壁60の幅方向内側面には幅方向内方に突出する被案内ピン62が固定されている。かようなチルト角微調整板8は、
図7に図示するとおり、被案内部材56の凸状弧状面58をヨー角微調整板6の上面に配設されている案内部材44の凹状弧状面46に当接させて、ヨー角微調整板6上に積層される。被案内部材56に配設されている被案内ピン62は案内部材44に形成されている弧状案内溝52に係合される。被案内ピン62の直径は弧状案内溝52の幅と実質上同一であるのが好都合である。かような次第であるので、チルト角微調整板8は上記回動中心軸線48を中心として回動自在にヨー角微調整板6に装着される。
【0021】
ヨー角微調整板6上に配設されているチルト角微調整板駆動機構54は、チルト角を微調整するためにヨー角微調整板6に対してチルト角微調整板8を上記回動中心軸線48を中心として回動するためのものである。
図1及び
図2と共に
図8を参照して説明を続けると、ヨー角微調整板6上には接着剤或いは締結ネジの如き適宜の手段(図示していない)によって支持枠体64が固定されている。そして、この支持枠体64にはヨー角微調整板6の長手方向に延在する軸部材66並びにヨー角微調整板6の幅方向に延びる2個の軸部材68及び70が固定されている。軸部材66には円筒状入力部材72と共にウォーム歯車74(
図8においては図面の簡略化のためにウォーム歯車74のウォーム歯の図示を省略している)が回転自在に装着されている。チルト角微調整用入力部材を構成する入力部材72とウォーム歯車74とは小径円筒形状の接続部材76によって連結されており、入力部材72とウォーム歯車74とは一体に回転する。軸部材66には、更に、機械式表示器78が固定されている。入力部材72は表示器78の表示機構に駆動連結されていて、入力部材72が1回転されると、表示器78に表示される数字が1つ増大される(表示器78自体の構成及び入力部材72と表示器78の表示機構との駆動連結自体は、当業者には周知の構成でよいので、本明細書ではその詳細な説明は省略する)。軸部材68には上記ウォーム歯車74と係合するウォームホイール80(
図8においては図面の簡略化のためにウォームホイール80のウォームの図示を省略している)と平歯車82が回転自在に装着されている。ウォームホイール80と平歯車82とは小径円筒形状の接続部材(図示していない)によって連結されており、ウォームホイール80と平歯車82とは一体に回転する。軸部材70には上記平歯車82と係合する平歯車84が回転自在に装着されている。一方、チルト角微調整板8の下面には弧状平歯車86が締結ネジの如き適宜の締結手段(図示していない)によって固定されており、この平歯車86が上記平歯車84に係合されている。かような次第であるので、入力部材72を手動で回転すると、入力部材72のかかる回転がウォーム歯車74、ウォームホイール80、平歯車82、平歯車84及び平歯車86を介してチルト角微調整板8に伝動されチルト角微調整板8が回動される。入力部材72とチルト角微調整板8との間のチルト角微調整用伝動手段を構成する減速歯車列、即ちウォーム歯車74、ウォームホイール80、平歯車82、平歯車84及び平歯車86による減速比は例えば360:1に設定することができ、かくすると手動で入力部材72を1回転すると、チルト角微調整板8が1度回動され、チルト角が微調整される。
【0022】
ヨー角微調整
板駆動機構16の場合と同様に、チルト角微調整
板駆動機構54においても、入力部材72は手動にて回動されるが、所望ならば電動モータの如き適宜の駆動源によって入力部材72を回動することもできる。また、機械式表示器78に代えて液晶表示器の如き他の適宜の形態の表示器を使用することもできる。
【0023】
図1及び
図2に図示する如く、チルト角微調整板8の上面における片端部には幅方向に間隔をおいて一対の係止ピン88が締結ネジの如き適宜の締結手段(図示していない)によって固定されている。チルト角微調整板8の上面は、人体の所定部位、図示の実施形態においては頭部、を支持し固定するための支持固定手段4が装着される。図示の実施形態における支持固定手段は、矩形板形態の基板90とこの基板90に装着されるカバー部材92を含んでいる。基板90の中央には開口94が形成されており、また基板90の片端部には幅方向に間隔をおいて一対の孔96が形成されている。かような支持固定手段4は基板90に形成されている一対の孔96に上記チルト角微調整板8の上面に配設されている一対の係止ピン88に被嵌することによってチルト角微調整板8上に装着される。支持固定手段4自体は、本発明に従って構成された支持固定装置における新規な特徴を構成するものではなく、当業者には周知の形態でよく、それ故に支持固定手段4の構成についての詳細な説明は省略する。
【0024】
放射線治療或いは画像診断の際には、人体が横たわる適宜の寝台上に本発明に従って構成された医療用支持固定装置が配設される(所望ならば、寝台の一部を本発明に従って構成された医療用支持固定装置の基台として利用することもできる)。そして、寝台上に横たわる人体の頭部が支持固定手段4の基板90に形成されている開口を通してチルト角微調整板8上に位置付けられ、人体の頭部がカバー部材92によって覆われて固定される。人体の頭部の位置を精密に調整するためには、ヨー角微調整板駆動機構16の入力部材28を回転してヨー角微調整板6を回動中心軸線22を中心として微細に回動する。かくすると、ヨー角微調整板6の回動に伴ってチルト角微調整板8及び支持固定手段4も微細に回動され、かくして人体の頭部のヨー角が微細に調整される。また、チルト角微調整板駆動機構54の入力部材72を回転してチルト角微調整板8を回動中心軸線48を中心として微細に回動する。かくすると、チルト角微調整板8の回動に伴って支持固定手段4も微細に回動され、かくして人体の頭部のチルト角が微細に調整される。
【0025】
以上、添付図面を参照して本発明に従って構成された医療用支持固定装置の好適実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能であることは多言を要しない。
【0026】
例えば、図示の実施形態においては、基台2にヨー角微調整板6を装着し、ヨー角微調整板6にチルト角微調整板8を装着し、チルト角微調整板8に支持固定手段4を装着している。しかしながら、基台2にチルト角微調整板8を装着し、チルト角微調整板8にヨー角微調整板6を装着し、ヨー角微調整板6に支持固定手段4を装着することもできる。この場合には、基台2に対するチルト角微調整板8の装着に、図示の実施形態におけるヨー角微調整板6に対するチルト角微調整板8の装着様式を採用し、チルト角微調整板8に対するヨー角微調整板6の装着に、図示の実施形態における基台2に対するヨー角微調整板6の装着様式を採用し、ヨー角微調整板6に対する支持固定手段4の装着に、図示の実施形態におけるチルト角微調整板8に対する支持固定手段4の装着様式を採用することができる。また、図示の実施形態においては、基台2と支持固定手段4との間にヨー角微調整板6と共にチルト角微調整板8を介在しているが、所望ならば基台2と支持固定手段4との間にヨー角微調整板6とチルト角微調整板8とのいずれか一方のみを介在することもできる。
【符号の説明】
【0027】
2:基台
4:支持固定手段
6:ヨー角微調整板
8:チルト角微調整板
12:弧状長穴
16:ヨー角微調整板駆動機構
20:ピン
22:回動中心軸線
28:入力部材(ヨー角微調整用入力部材)
30:ウォーム歯車(ヨー角微調整用伝動手段)
34:表示器
36:ウォームホイール(ヨー角微調整用伝動手段)
38:平歯車(ヨー角微調整用伝動手段)
42:平歯車(ヨー角微調整用伝動手段)
44:案内部材
46:凹状弧状面
48:回動中心軸線
54:チルト角微調整板駆動機構
56:被案内部材
58:凸状弧状面
72:入力部材(チルト角微調整用入力部材)
74:ウォーム歯車(チルト角微調整用伝動手段)
78:表示器
80:ウォームホイール(チルト角微調整用伝動手段)
82:平歯車(チルト角微調整用伝動手段)
84:平歯車(チルト角微調整用伝動手段)
86:平歯車(チルト角微調整用伝動手段)