特許第6970988号(P6970988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970988
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】振動補助ワイヤ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23H 7/10 20060101AFI20211111BHJP
   B23H 7/02 20060101ALI20211111BHJP
   B23H 1/10 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B23H7/10 C
   B23H7/02 B
   B23H1/10 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-82640(P2020-82640)
(22)【出願日】2020年5月8日
(65)【公開番号】特開2020-183034(P2020-183034A)
(43)【公開日】2020年11月12日
【審査請求日】2020年5月8日
(31)【優先権主張番号】108115924
(32)【優先日】2019年5月8日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】520160901
【氏名又は名称】國立高雄科技大學
【氏名又は名称原語表記】National Kaohsiung University of Science and Technology
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】許 文政
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−501786(JP,A)
【文献】 特開昭53−101795(JP,A)
【文献】 特開昭56−119317(JP,A)
【文献】 特公昭56−14408(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 7/12−7/10
B23H 7/36−7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースに対するワイヤ加工時に振動補助を提供するための振動補助ワイヤ加工装置であって、
該ワークピースに対するワイヤ加工のための金属ワイヤと、
該金属ワイヤを該ワークピースまで延在するように案内するための中核振動構造であって、交差する第一軸方向と第二軸方向とを有する中核振動構造と、
該中核振動構造と結合され、該中核振動構造の該第一軸方向で該金属ワイヤに第一弦波振動を提供して、該金属ワイヤを該第一軸方向に沿って振動させるための第一軸発振器と、
該中核振動構造と結合され、該中核振動構造の該第二軸方向で該金属ワイヤに第二弦波振動を提供して、該金属ワイヤを該第二軸方向に沿って振動させるための第二軸発振器と、を含み、
該第一弦波振動と該第二弦波振動との間に90度の位相差が維持され、該第一軸発振器と該第二軸発振器とが同期され、該中核振動構造を介して該金属ワイヤのワイヤ加工部位が軌跡で移動され
振動キャリアを更に含み、該振動キャリアと結合され、該振動キャリアの重心位置と該中核振動構造上の該金属ワイヤの中心位置とが実質的に同じになるようにして、ワイヤ加工に対する振動補助の安定性を維持するウエイト構造を更に含む
振動補助ワイヤ加工装置。
【請求項2】
ワークピースに対するワイヤ加工時に振動補助を提供するための振動補助ワイヤ加工装置であって、
該ワークピースに対するワイヤ加工のための金属ワイヤと、
該金属ワイヤを該ワークピースまで延在するように案内するための中核振動構造であって、交差する第一軸方向と第二軸方向とを有する中核振動構造と、
該中核振動構造と結合され、該中核振動構造の該第一軸方向で該金属ワイヤに第一弦波振動を提供して、該金属ワイヤを該第一軸方向に沿って振動させるための第一軸発振器と、
該中核振動構造と結合され、該中核振動構造の該第二軸方向で該金属ワイヤに第二弦波振動を提供して、該金属ワイヤを該第二軸方向に沿って振動させるための第二軸発振器と、を含み、
該第一弦波振動と該第二弦波振動との間に90度の位相差が維持され、該第一軸発振器と該第二軸発振器とが同期され、該中核振動構造を介して該金属ワイヤのワイヤ加工部位が軌跡で移動され
振動キャリアを更に含み、該振動キャリアは、上部チャンバー及び下部チャンバーを含み、該中核振動構造は該上部チャンバー内に収容され、該第一軸発振器及び該第二軸発振器は、それぞれ該上部チャンバーで該中核振動構造と結合され、該下部チャンバーは、加工液を該下部チャンバー内に導入する加工液導入構造と、該加工液を円周接線方向に沿って該下部チャンバー内で流動するように案内する加工液案内構造と、該加工液を該下部チャンバーに流出させる加工液導出構造と、を有し、
該上部チャンバーは、該上部チャンバー内に液体が溜まることによる該第一軸発振器及び該第二軸発振器の両方の動作への影響を避けるために、該上部チャンバー内の液体を排除する排液チャネルを含み、
該加工液案内構造は、該下部チャンバー内の加工液を円周接線方向に沿って該下部チャンバー内で流動するように案内するための案内弧面を有し、該加工液導出構造は、該下部チャンバー内の加工液流動範囲の下方に位置しており、該下部チャンバー内の加工液を受け入れて導出するために、円周に沿って配置された少なくとも1つの貫通孔を有し、
該振動キャリアと結合され、該下部チャンバーに隣接し且つ該加工液導出構造に連通する導流管を更に含み、該金属ワイヤは、該導流管を通過し、該加工液導出構造から導出された該加工液は、該導流管を介して所定の十分な液体圧力の下で該金属ワイヤを被覆する
振動補助ワイヤ加工装置。
【請求項3】
該第一弦波振動の波形と該第二弦波振動の波形とは同一の振幅を有し、該第一弦波振動は第一変位を有し、該第二弦波振動は第二変位を有し、
該第一軸方向と該第二軸方向とは互に垂直であり、該第一変位と該第二変位とが同期され、該中核振動構造を介して該金属ワイヤのワイヤ加工部位が該振幅を半径とする実質的な真円軌跡で移動される
請求項1又は2に記載の振動補助ワイヤ加工装置。
【請求項4】
加工主軸及び振動キャリアを更に含み、該金属ワイヤは、該加工主軸から該振動キャリアにおける該第一軸方向と該第二軸方向との交わる箇所へ延在して該振動キャリアを通過し、該振動キャリアは、該加工主軸と結合され、該中核振動構造、該第一軸発振器及び該第二軸発振器をサポートする
請求項1から3のいずれか一項に記載の振動補助ワイヤ加工装置。
【請求項5】
該ワークピースに供給される加工液を更に含み、該加工液には、該金属ワイヤによる該ワークピースのワイヤ加工時に、カット又は研削に対する二軸方向振動補助を提供するために、硬質砥粒によって形成された砥粒スラリーが含まれている
請求項1又は2に記載の振動補助ワイヤ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工分野に属し、振動補助ワイヤ加工装置に関するものであり、特に、ワークピース上での金属ワイヤによるワイヤカット放電加工について、断線の防止及び放電加工の除去率の向上を達成可能で、厚肉ワークピースのクラウニング量の誤差を改善可能な振動補助ワイヤ加工装置に関する。また、金属ワイヤと砥粒含有加工液とを組み合わせてワークピース上でワイヤカット加工又はワイヤ研削加工を行うことで、加工除去率及び加工精度を向上させる振動補助ワイヤ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の機械で切削が困難な材料の加工には、非伝統的な加工が広く使用されている。中でも、放電加工は、一般の非伝統的加工の一種であり、放電加工の際、加工液は、金属ワイヤとワークピースとの隙間でアーク放電現象が発生してワークピースに熱作用を与えることで、ワークピースは溶融して放電痕が生じる。これを繰り返していけば、ワークピースの放電加工が徐々に完了するため、切削が困難な特殊材料や硬質導体なら、いずれも放電加工によって除去加工を達成可能である。
【0003】
しかしながら、ワイヤカット放電加工中には、屑滓の排除の難しさ及び放電集中により断線が発生することが多い。特に、厚肉ピースのワイヤカットの場合、排屑し難いこと及び放電点がワイヤ電極の一部の表面に集中することに起因して断線がよく発生し、加工効率及び表面モフォロジに深刻な影響を与えてしまう。過去には、ワイヤカット放電加工に対する振動補助についての研究文献が披露されているが、一軸方向振動源を採用し、主に金属ワイヤを駆動して振動させることで腹を形成するものが一般的であり、このような腹は、放電パルスを受ける金属ワイヤの位置を分散させる効果が確かにあるものの、放電パルス列が1次元のワイヤ長手方向にのみ分散されるため、必ず振動軸方向に沿う孔拡大現象が発生し、放電加工により形成された幾何学的形状が精度の要求を満たせない。例えば丸孔の真円度が不十分となり、更には、厚肉ワークピースの放電加工の場合、材料除去率の低下及びクラウニング量の誤差が発生し易く、その振動補助対象となるワイヤカット放電加工では、高精度な加工品質が得られない。従って、従来技術における加工速度、精度及び表面品質の様々な問題を克服するために、現在の放電集中及び断線の関連技術問題を如何に改善するかは、本願が解決しようとする課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術における放電集中及び断線の関連技術問題と、それに起因した加工速度、精度及び表面品質等の問題とを解決するための振動補助ワイヤ加工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的及び他の関連目的を達成するために、本発明は、ワークピースに対するワイヤ加工時に振動補助を提供するための振動補助ワイヤ加工装置であって、ワークピースに対するワイヤ加工のための金属ワイヤと、金属ワイヤをワークピースまで延在するように案内するための中核振動構造であって、交差する第一軸方向と第二軸方向とを有する中核振動構造と、中核振動構造と結合され、中核振動構造の第一軸方向で金属ワイヤに第一弦波振動を提供して、金属ワイヤを第一軸方向に沿って振動させるための第一軸発振器と、中核振動構造と結合され、中核振動構造の第二軸方向で金属ワイヤに第二弦波振動を提供して、金属ワイヤを第二軸方向に沿って振動させるための第二軸発振器と、を含み、第一弦波振動と第二弦波振動との間に90度の位相差が維持され、第一軸発振器と第二軸発振器とが同期され、中核振動構造を介して、金属ワイヤのワイヤ加工部位が軌跡で移動される振動補助ワイヤ加工装置を提供する。
【0006】
好ましくは、第一弦波振動の波形と第二弦波振動の波形とは同一の振幅を有し、第一弦波振動は第一変位を有し、第二弦波振動は第二変位を有し、第一軸方向と第二軸方向とは互に垂直であり、第一変位と第二変位とが同期され、中核振動構造を介して金属ワイヤのワイヤ加工部位が振幅を半径とする実質的な真円軌跡で移動される。
【0007】
好ましくは、本発明は、加工主軸及び振動キャリアを更に含み、金属ワイヤは、加工主軸から下へ延在して振動キャリアを通過し、振動キャリアは、加工主軸と結合され、中核振動構造、第一軸発振器及び第二軸発振器をサポートする。
【0008】
好ましくは、本発明は、該振動キャリアと結合され、振動キャリアの重心位置と中核振動構造上の金属ワイヤの中心位置とが実質的に同じになるようにして、ワイヤ加工に対する振動補助の安定性を維持するウエイト構造を更に含む。
【0009】
好ましくは、振動キャリアは、上部チャンバー及び下部チャンバーを含み、中核振動構造は上部チャンバー内に収容され、第一軸発振器及び該第二軸発振器は、それぞれ上部チャンバーで中核振動構造と結合され、下部チャンバーは、加工液を下部チャンバー内に導入する加工液導入構造と、加工液を円周接線方向に沿って下部チャンバー内で流動するように案内する加工液案内構造と、加工液を下部チャンバーに流出させる加工液導出構造と、を有し、上部チャンバーは、上部チャンバー内に液体が溜まることによる第一軸発振器及び第二軸発振器の両方の動作への影響を避けるために、上部チャンバー内の液体を排除する排液チャネルを含み、加工液案内構造は、下部チャンバー内の加工液を円周接線方向に沿って下部チャンバー内で流動するように案内するための案内弧面を有し、加工液導出構造は、下部チャンバー内の加工液流動範囲の下方に位置しており、下部チャンバー内の加工液を受け入れて導出するために、円周に沿って配置された少なくとも1つの貫通孔を有する。
【0010】
好ましくは、本発明は、該振動キャリアと結合され、該下部チャンバーに隣接し且つ該加工液導出構造に連通する導流管を更に含み、金属ワイヤは、導流管を通過し、加工液導出構造から導出された加工液は、導流管を介して所定の十分な液体圧力の下で金属ワイヤを被覆する。
【0011】
好ましくは、本発明は、ワークピースに供給される加工液を更に含み、加工液には、金属ワイヤによるワークピースのワイヤ加工時にカット又は研削に対する補助を提供するために、硬質砥粒によって形成された砥粒スラリーが含まれている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、金属ワイヤを駆動して二軸方向振動させる振動波形に形成された複数の腹により、放電パルスを受ける金属ワイヤの位置を分散させ、特に、二軸同期高周波振動により、放電点を分散させることで、放電集中現象を低減して金属ワイヤの断線問題及び一軸方向振動の孔拡大現象を解消するためのものである。本発明は、断線のリスクを低減することでワイヤカットの送り速度を向上させ、ひいては、ワイヤカット放電加工の相対的な安定性及びワークピースの放電加工の除去率を向上させることができる。また、放電加工によって形成された幾何学的形状が精度(例えば:丸孔の真円度)の要求を満たすことも可能にするとともに、ワークピース(例えば:厚肉ワークピース)の放電加工後のクラウニング量の誤差を低減して、本発明に係る振動補助ワイヤ加工装置により、ワークピースに対し高効率及び高精度な放電加工を行うことを可能にしている。
【0013】
そして、本発明は、該ワークピースに供給される加工液を更に含み、該加工液には、該金属ワイヤによる該ワークピースのワイヤ加工時にカット又は研削に対する補助を提供するために、硬質砥粒によって形成された砥粒スラリーが含まれているため、加工が高効率及び高精度となる利点を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る振動補助ワイヤ加工装置の放電加工作業の模式図である。
図2図1に示す振動補助ワイヤ加工装置における符号Aで示した領域の拡大模式図である。
図3図2に示す部材におけるB−B線に沿って切断した断面模式図である。
図4図3に示す部材においける符号Cで示した領域の拡大模式図である。
図5】本発明に係る振動補助ワイヤ加工装置の使用状態模式図である。
図6】本発明に係る振動補助ワイヤ加工装置の平面模式図である。
図7図6に示す部材におけるD−D線に沿って切断した断面模式図である。
図8図7に示す部材における符号Eで示した領域の拡大模式図である。
図9】本発明に係る振動補助ワイヤ加工装置における金属ワイヤの円を描く軌跡の模式図である。
図10】本発明に係る振動補助ワイヤ加工装置における一軸方向金属ワイヤの振動状態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図10に示すように、本発明に係る振動補助ワイヤ加工装置1は、ワークピース2に対するワイヤ加工時に振動補助を提供するためのものであり、なお、該振動補助ワイヤ加工装置1は、例えば、ワイヤカット又はワイヤ研削に対し振動補助を提供する放電加工装置、又は、他の非放電加工に対し振動補助を提供するワイヤ加工装置である。該振動補助ワイヤ加工装置1は、中核振動構造11、金属ワイヤ12、第一軸発振器13及び第二軸発振器14を含む。また、該金属ワイヤ12は、例えば電極ワイヤであってもよい。該振動補助ワイヤ加工装置1は、加工主軸15、振動キャリア16及びウエイト構造17を更に含む。なお、第一軸発振器13及び第二軸発振器14は、本実施例の二軸方向振動源とされてもよく、該中核振動構造11は、例えば、該金属ワイヤの流れを案内するためのダイスである。
【0016】
振動キャリア16は、加工主軸15と結合され、加工主軸15を介して振動キャリア16を支持及び位置決めする。中核振動構造11、ウエイト構造17、第一軸発振器13及び第二軸発振器14は、いずれも振動キャリア16に設けられており、振動キャリア16により、中核振動構造11、ウエイト構造17、第一軸発振器13及び第二軸発振器14がそれぞれサポートされる。金属ワイヤ12は、加工主軸15から延びて振動キャリア16を通過し、ワークピース2まで延在してワークピース2に対する例えばワイヤカット放電加工によるワイヤ加工に供される。ウエイト構造17は、振動キャリア16の重心位置と中核振動構造11上の金属ワイヤ12の中心位置とが実質的に同じになるようにして、ワイヤ加工に対する振動補助の安定性を維持する。
【0017】
好ましくは、図6に示すように、第一、第二軸発振器13、14の両者の中心線の間の交角は90度であり、ウエイト構造17と第一軸発振器13との両者の中心線の間の交角は135度であり、ウエイト構造17と第二軸発振器14との両者の中心線の間の交角は135度である。こうして、振動キャリア16の重心位置と中核振動構造11上の金属ワイヤ12の中心位置が実質的に同じになる。
【0018】
図5に示すように、中核振動構造111は、金属ワイヤ12を作動させるためのものであり、例えば、中空ブロック体をなして金属ワイヤ12の流れを案内するためのダイスであり(該ダイスの内孔尺寸は、該金属ワイヤを収めて、すきまばめ公差で通過させることが可能)、又は、拘束機能付きの案内材又は治具である。中核振動構造111は、垂直に交差する第一軸方向A1及び第二軸方向A2を有する。金属ワイヤ12は、加工主軸15から、振動キャリア16における第一、第二軸方向A1、A2の交わる箇所へ延在して振動キャリア16を通過し、中核振動構造11内の穿孔を通ってワークピース2まで延在して、例えば放電加工によるワークピース2のワイヤ加工に供される。第一軸発振器13は、中核振動構造111の第一位置に結合され、中核振動構造111の第一軸方向A1で金属ワイヤ12に第一弦波振動を提供して、金属ワイヤ12を作業時間中に第一軸方向A1に沿って振動させる。第二軸発振器14は、中核振動構造111の第二位置に結合され、中核振動構造111の第二軸方向A2で金属ワイヤ12に第二弦波振動を提供して、金属ワイヤ12を該作業時間中に第二軸方向A2に沿って振動させる。図10には、金属ワイヤ12に第一弦波振動及び第二弦波振動が同期して作用する状態の模式図が示されている。図5に示すように、中核振動構造111は、第一軸案内ロッド191及び第二軸案内ロッド192を有する。第一軸案内ロッド191は、第一軸方向A1に延在しており、第一軸発振器13は、第一軸案内ロッド191を介して金属ワイヤ12に第一弦波振動を提供する。第二軸案内ロッド192は、第二軸方向A2に延在しており、第二軸発振器14は、第二軸案内ロッド192を介して金属ワイヤ12に第二弦波振動を提供する。好ましくは、第一、第二軸発振器13、14は、それぞれ、例えば超音波振動子であり、第一、第二軸案内ロッド191、192は、それぞれ、例えば超聲波増幅ロッドである。
【0019】
好ましくは、第一、第二弦波振動は同一の振幅Rを有し、ワークピース2上での金属ワイヤ12による放電加工の際、断線が生じる問題が回避されるとともに、一軸方向の孔拡大現象が解消される。例を挙げると、図9に示すように、第一弦波振動は第一変位Xを有し、第二弦波振動は第二変位Yを有し、例えば、もし第一変位Xが振幅RとCOS(ωt)との積に相当するようにした場合、第二変位Yが振幅Rとsin(ωt)との積に相当するようにして、第二弦波振動と第一弦波振動との間に90度の位相差を維持し、第一、第二変位X、Yを同期させて中核振動構造111を介して、金属ワイヤ12のワイヤ加工部位を軌跡で移動させ、好ましくは、第一、第二変位X、Yが互いに垂直になるように同期させて中核振動構造111を駆動し、振幅Rを半径とする実質的な真円軌跡で金属ワイヤ12を移動させるようにする。好ましくは、ω=2πfであり、ωは振動角周波数、fは振動周波数、tは振動時間である。好ましくは、fは、振動波形の複数の腹により、放電パルスを他のワークピース位置に分散させるために、10KHz以上とされる一方で、振幅Rの尺寸は、ワークピース2に対する放電加工の放電ギャップ幅未満である。
【0020】
図7図8に示すように、好ましくは、振動キャリア16は、上部チャンバー161及び下部チャンバー162を含み、金属ワイヤ12は、上部チャンバー161から下部チャンバー162まで延在してもよい。中核振動構造11は、上部チャンバー161内に収容され、第一、第二軸発振器13、14は、それぞれ上部チャンバー161内で中核振動構造11と結合される。図7に示すように、上部チャンバー161内に液体が存在すると、第一、第二軸発振器13、14の両者の動作に影響を与える恐れがあるので、上部チャンバー161には、上部チャンバー161内に液体が溜まることを避けるために、上部チャンバー161内の液体を排除するための排液チャネル1611が選択的に増設されてもよい。
【0021】
下部チャンバー162は、加工液導入構造1621、加工液案内構造1622及び加工液導出構造1623を有する。加工液導入構造1621は、例えば硬質砥粒によって形成された砥粒スラリーを含んでいる加工液を、外から下部チャンバー162内に導入して、後続の砥粒スラリーを介してワークピースに対し例えばワイヤカット又はワイヤ研削によるワイヤ加工を行うことに供する。加工液案内構造1622は、下部チャンバー162内の加工液を円周接線方向に沿って流動するように案内する。図4に示すように、好ましくは、加工液案内構造1622は、下部チャンバー162内の加工液3を円周接線方向に沿って渦状で流動するように案内するための案内弧面16221を有する。加工液導出構造1623は、下部チャンバー162内の加工液3を導出して、加工液を下部チャンバー162に素早く流出させる。図4に示すように、好ましくは、加工液導出構造1623は、下部チャンバー162内の加工液流動範囲の下方に位置しており、加工液を受け入れて導出し、加工液が金属ワイヤ12を被覆してからワークピース2に入るようにするために、円周に沿って配置された少なくとも1つの貫通孔16231を有する。
【0022】
好ましくは、振動補助ワイヤ加工装置1には、加工液の流動のために導流管18が更に増設され、導流管18は、振動キャリア16と結合され、下部チャンバー162に隣接し且つ加工液導出構造1623に連通する。図8に示すように、金属ワイヤ12は、導流管18を通過し、加工液導出構造1623から導出された加工液3は、導流管18を介して所定の液体圧力の下で所定の経路に従って金属ワイヤ12を被覆するように流動し、例えばワイヤカット又はワイヤ研削によるワイヤ加工中に加工液3が金属ワイヤ12に供給される。
【0023】
以上を纏め、本発明に係る振動補助ワイヤ加工装置によれば、放電加工によるワイヤカット又はワイヤ研削等のワイヤ加工中に、金属ワイヤは、交差する二軸方向弦波振動源によって駆動され、二軸方向の弦波振動の波形は同一の振幅を有し、好ましくは、二軸方向の弦波振動の波形は同期されて、その振動位相差が90度に維持される。こうして、一軸方向の孔拡大現象が低減され、例えば放電加工によるワイヤカット又はワイヤ研削等のワイヤ加工製品が精度の要求を満たすようになる。
【0024】
また、従来技術には、一軸方向振動補助によるワイヤカット放電加工が研究されているが、一軸方向振動により、必ず振動軸方向の孔拡大が発生するため、実際の加工精度の要求を満たせない。これに対して、本発明は、金属ワイヤを駆動して二軸方向振動させる振動波形に形成された複数の腹により、放電パルスを受ける金属ワイヤの位置を分散させ、特に、二軸同期高周波振動により、放電点を分散させることで、放電集中現象を低減して金属ワイヤの断線問題及び一軸方向振動の孔拡大現象を解消するためのものである。本発明は、従来技術における様々な欠点を効果的に克服しており、高い産業上の利用価値を持っている。
【0025】
好ましくは、本発明は、ワークピースに供給される加工液を更に含み、加工液には、金属ワイヤによるワークピースのワイヤ加工時にカット又は研削に対する補助を提供するために、硬質砥粒によって形成された砥粒スラリーが含まれている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10