(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970989
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】改良型ワッシャー
(51)【国際特許分類】
F16B 43/00 20060101AFI20211111BHJP
F16B 41/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
F16B43/00 Z
F16B43/00 C
F16B41/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-120514(P2020-120514)
(22)【出願日】2020年7月14日
(65)【公開番号】特開2021-17980(P2021-17980A)
(43)【公開日】2021年2月15日
【審査請求日】2020年7月14日
(31)【優先権主張番号】108125607
(32)【優先日】2019年7月19日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】520227961
【氏名又は名称】光柘企業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蘇 富誠
【審査官】
大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/106935(WO,A1)
【文献】
特開2009−115213(JP,A)
【文献】
米国特許第06036013(US,A)
【文献】
実開昭52−006972(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 43/00
F16B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良型ワッシャーであって、ネジ保持ベルト上に保持されると共に、リング本体と、該リング本体の頂面に接着するように覆い被さる金属シェルを備え、
前記リング本体は、前記頂面を上部に備える小径筒状部と当該小径筒状部における下部に連なる大径筒状部とからなり、該大径筒状部における頂面が規制底壁とされるとともに、該リング本体の中央において頂面から底面まで貫通する挿通孔とを備え、
前記金属シェルは、前記リング本体の頂面から外周側に向かって延在すると共に、その底周縁に前記規制底壁と対向する規制部が構成され、当該規制部と前記規制底壁と前記小径筒状部とで環状溝を構成するとともに、該金属シェルの中央に、前記挿通孔と対応する孔穴が形成されることを特徴とする改良型ワッシャー。
【請求項2】
前記金属シェルが、前記孔穴から周囲に向かって下方に傾斜するテーパ状を呈することを特徴とする請求項1に記載の改良型ワッシャー。
【請求項3】
前記リング本体が、ゴム或はシリコーンゴムからなることを特徴とする請求項1に記載の改良型ワッシャー。
【請求項4】
前記リング本体は、該リング本体の表面を被覆する塗装層を有し、該塗装層の色は、前記金属シェルの色と同一であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の改良型ワッシャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結用のワッシャーに関し、特にネジ保持ベルト上に強固に保持することが可能な改良型ワッシャーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ネジは、二つの締結対象物を貫通して締結するための締結部品として幅広い用途で利用されており、ネジでの締め付け作業においての固定効果や防水効果を高めるために、通常は、予めにネジにワッシャーを噛ませてから締め付け作業を行う。このようにすれば、ネジが締結対象物にねじ込まれ、ワッシャーが、ネジの頭部と締結対象物との間に挟まれるように、締結対象物の表面に密着することにより、優れた固定効果や防水効果をもたらす。
【0003】
締め付け作業を繰り返し行う場合においては、ネジを一本ずつ手に取りワッシャーを噛ませてから締め付け作業をするので、非常に面倒であった。この課題の解決するために、その後、複数のネジを順に組み付けることができるネジ保持ベルトが開発された。その構造においては、該ネジ保持ベルトが、ベルト体と、該ベルト体上に一定間隔で配列される複数の保持孔を備え、該各保持孔の開口周縁に複数の屈曲可能な支持片が設けられることから、ネジが該保持孔に差し込まれると、当該ネジ上において噛んでいるワッシャーが、該複数の保持片に当接するように支持され、そのワッシャーは、ベルト体とネジの頭部との間に介在することから、当該ネジが、ネジ先端部から保持孔を通り抜けることなくネジ保持ベルト上に保持される。故に、使用者は、一度に複数のネジを携帯することができ、且つワッシャーが着脱自在に保持孔に保持されているので、ワッシャー付きのネジを容易にネジ保持ベルトから取り外すことができる。
【0004】
ワッシャー付きのネジが、複数の保持片に支持されるワッシャーを介して、ネジ先端部から保持孔を通り抜けることがないように保持されているが、不注意により、ネジ保持ベルトを上下逆さまに持ち運んでしまった場合、保持孔に支持されているワッシャーは、その表面が平らで滑らかであり、且つネジ保持ベルトとの間に固定手段もないことから、保持孔内に強固に保持されず、保持孔からずれ落ちる可能性があるので、改善する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】台湾登録実用新案第M449879U号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、ネジ保持ベルトとの間に固定手段が設けられ、保持孔内に強固に保持されて、保持孔からずれ落ちることのない改良型ワッシャーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は
、改良型ワッシャーであって、ネジ保持ベルト上に保持されると共に、リング本体と、該リング本体の頂面に接着するように覆い被さる金属シェルを備え、
前記リング本体は、
前記頂面を上部に備える小径筒状部と当該小径筒状部における下部に連なる大径筒状部とからなり、該大径筒状部における頂面が規制底壁とされるとともに、該リング本体の中央において頂面から底面まで貫通する挿通孔とを備え、
前記金属シェルは、前記リング本体の頂面から
外周側に向かって延在すると共に、その底周縁に前記規制底壁と対向する規制部が
構成され、当該規制部と前記規制底壁と前記小径筒状部とで環状溝を構成するとともに、該金属シェルの中央に、前記挿通孔と対応する孔穴が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る改良型ワッシャーは、リング本体上に環状溝が形成されることにより、使用者がネジをリング本体に挿着して、ネジ保持ベルトの保持孔に取り付けると、該保持孔の保持片が、該リング本体の環状溝に嵌め込まれて、該リング本体の両保持壁面によって制限されることから、使用者が、ネジ保持ベルトを上下逆さまに持ち運んでも、本発明の改良型ワッシャーは依然として、ネジ保持ベルト上に強固に保持され、保持孔からずれ落ちることがないので、使用上の利便性が向上する。
【0009】
さらに、本発明に係る改良型ワッシャーの他の形態においては、リング本体上に環状溝と金属シェルが設けられることで、使用者がネジをリング本体に挿着して、ネジ保持ベルトの保持孔に取り付けると、該保持孔の保持片が、該リング本体の環状溝に嵌め込まれて、該リング本体の両保持壁面によって制限されることから、使用者が、ネジ保持ベルトを上下逆さまに持ち運んでも、本発明の改良型ワッシャーは依然として、ネジ保持ベルト上に強固に保持され、保持孔からずれ落ちることがないので、使用上の利便性が向上すると共に、該金属シェルが設けられることにより、当該ネジをトタン張りの建物の屋根や外壁に直接に締め付ける場合において、空気や水の漏れ防止効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る改良型ワッシャーの好適な実施例の斜視図である。
【
図2】本発明に係る改良型ワッシャーの好適な実施例の側面図である。
【
図3】本発明に係る改良型ワッシャーの好適な実施例の平面図である。
【
図4】本発明に係る改良型ワッシャーの好適な実施例において、複数のワッシャー付きのネジがネジ保持ベルト上に挿着された状態を示す部分分解図である。
【
図5】本発明に係る改良型ワッシャーの好適な実施例において、ワッシャー付きのネジがネジ保持ベルト上に挿着された状態を示す一部断面図である。
【
図6】本発明に係る改良型ワッシャーの他の好適な実施例の斜視図である。
【
図7】本発明に係る改良型ワッシャーの他の好適な実施例の平面図である。
【
図8】本発明に係る改良型ワッシャーの更に他の好適な実施例の斜視図である。
【
図9】本発明に係る改良型ワッシャーの更に他の好適な実施例の側面図である。
【
図10】本発明に係る改良型ワッシャーの更に他の好適な実施例において、ワッシャー付きのネジがネジ保持ベルト上に挿着された状態を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1、
図4、
図6及び
図8には、本発明に係る改良型ワッシャーの三つの好適な実施例がそれぞれ開示されており、それらの図面からも分かるように、該改良型ワッシャーは、ネジ保持ベルト上に取り付けられるために用いられると共に、リング本体10A、10B、10Cを備える。
【0012】
図1から
図3は、本発明に係る改良型ワッシャーの複数の好適な実施例のうちの一つを示しており、それによると、リング本体10Aは、環状溝12Aと、二つの保持壁面13Aと、挿通孔14Aを含み、該環状溝12Aが該リング本体10Aの外周壁面11A上に形成され、該二つの保持壁面13Aが、対向するように該環状溝12A内に位置し、そのうちの一つが該環状溝12Aのリング本体10A頂面寄りの側面に位置すると共に、もう一つが底面寄りの側面に位置し、該挿通孔14Aが、該リング本体10Aの中央において頂面から底面まで貫通する。尚、前記リング本体10Aは、ゴム或はシリコーンゴムからなることが好ましい。
【0013】
図6及び
図7は、本発明に係る改良型ワッシャーの他の好適な実施例を示しており、当該リング本体10Bは、その挿通孔14Bの内周壁面上に、間隔をおいて囲繞するように配置される複数の突起15Bを含む。
【0014】
図8及び
図9は、本発明に係る改良型ワッシャーの更に他の好適な実施例を示しており、当該改良型ワッシャーは、リング本体10Cと、該リング本体10Cの頂面に接着されて覆い被さる金属シェル20Cを備え、該リング本体10Cは、
前記頂面を上部に備える小径筒状部50と、当該小径筒状部50における下部に連なる大径筒状部60とからなるとともに、環状溝12Cと、
該大径筒状部60における頂面からなる規制底壁16Cと、挿通孔14Cを含み、該環状溝12Cは、該リング本体10Cの外周壁面11C上に形成され、該規制底壁16Cは、該環状溝12Cのリング本体10C底面寄りの側面に位置し、該挿通孔14Cは、該リング本体10Cの中央において頂面から底面まで貫通し、前記金属シェル20Cは、前記リング本体10Cの頂面に接着されて覆い被さると共に、該リング本体10Cの頂面から
外周側に向かって延在し、その底周縁に、前記規制底壁16Cと対向する規制部22Cが設けられ、該金属シェル20Cの中央に、前記挿通孔14Cと対応する孔穴23Cが形成され、
当該規制部22Cと前記規制底壁16Cと前記小径筒状部50とで前記環状溝12Cを構成するとともに、該金属シェル20Cは、該孔穴23Cから周囲に向かって下方に傾斜するテーパ状を呈する。尚、前記リング本体10Cは、ゴム或はシリコーンゴムからなることが好ましく、また、該リング本体10Cは、該リング本体10Cを被覆する塗装層17Cを有し、該塗装層17Cの色は、前記金属シェル20Cと同色であることが好ましい。
【0015】
図1、
図4及び
図5に示すように、本発明に係る改良型ワッシャーの複数の好適な実施例のうちの一つにおいては、ネジ30を該改良型ワッシャーの挿通孔14Aに差し込んでから、ネジ保持ベルト40の保持孔に取り付けるものであり、該ネジ保持ベルト40は、ベルト体41と、該ベルト体41上に一定間隔で配列される複数の保持孔42を備え、該ネジ保持ベルト40上に、複数の、該改良型ワッシャーと組み付けられているネジ30が取り付けられる。また、前記ネジ30を前記ネジ保持ベルト40に取り付ける際には、まず、該ネジ30をその先端部から該ネジ保持ベルト40の保持孔42に、該改良型ワッシャーが当接するまで差し込み、その後、該ネジ30の頭部を押し続けるようにして、該改良型ワッシャーを該保持孔42内に嵌め込む。すると、前記保持孔42の開口周縁に設けられる複数の保持片が、該改良型ワッシャーの環状溝12A内に嵌め込まれて、該環状溝12A内の二つの保持壁面13Aによって制限されることで、該改良型ワッシャーが、該ベルト体41上に係止される。この構成によれば、使用者が当該ネジ保持ベルト40を上下逆さまに持ち運んでも、本発明の改良型ワッシャーは依然として、前記ベルト体41上に強固に保持され続けることから、前記保持孔42からずれ落ちることはないので、使用上の利便性が向上する。
【0016】
図4、
図6及び
図7に示すように、本発明に係る改良型ワッシャーの他の好適な実施例においては、前記リング本体10Bの挿通孔14B内に複数の突起15Bが設けられることにより、ネジ30が該挿通孔14Bに差し込まれる際に、該複数の突起15Bが当該ネジ30の胴体部を挟持するように保持することにより、該挿通孔14B内においてネジ30を安定的に保持できるので、ネジ保持ベルト40の使い勝手や携帯性が一層向上する。
【0017】
図8〜
図10は、本発明に係る改良型ワッシャーの更に他の好適な実施例を示すものであり、当該改良型ワッシャーは、金属シェル20Cを備え、前記ネジ保持ベルト40に取り付ける際には、まず、ネジ30に当該改良型ワッシャーを噛ませ、その後、該ネジ30を該ネジ保持ベルト40の保持孔42に、該改良型ワッシャーを当接させるまで差し込み、さらに、該ネジ30の頭部を押し続けて、該改良型ワッシャーを該保持孔42内に嵌め込ませる。すると、前記保持孔42の開口周縁に設けられる複数の保持片が該改良型ワッシャーの環状溝12C内に嵌め込まれて、該環状溝12Cの規制底壁16C及び該金属シェル20Cの規制部22Cによって制限されることで、該改良型ワッシャーが該ベルト体41上に係止される。この構成によれば、使用者が、当該ネジ保持ベルト40を上下逆さまに持ち運んでいたとしても、本発明の改良型ワッシャーは依然として、前記ベルト体41上に強固に保持され続けることから、前記保持孔42からずれ落ちることはないので、使用上の利便性が向上する。一方、前記金属シェル20Cを設けて、当該ネジをトタン張りの建物(図示せず)の外壁や屋根(図示せず)に直接に締め付ける場合、空気や水に対する漏れ防止効果をもたらす。さらに、前記リング本体10Cは、前記金属シェル20Cと同じ色の塗装層17Cを有することから、当該改良型ワッシャー全体にわたって均一性と美観性が向上するが、必ずしも、該リング本体10Cの表面の色を、該金属シェル20Cの色と同じにする必要はない。
【0018】
また、本発明に係る改良型ワッシャーのリング本体は、ゴム或はシリコーンゴムから構成されることから、良好な弾性を持ち、使用者が締め付け作業を行う際に、ネジの頭部と締結対象物との間に挟まれる改良型ワッシャーが適切に弾性変形することにより、良好な密封性をもたらすので、締結箇所の漏れを防止できる。更に、ゴム或はシリコーンゴムなどの材料は、高温に強い特性を有することから、本発明に係る改良型ワッシャーは耐熱性が要求される用途にも適用できる。
【0019】
上述した技術特徴によれば、本発明に係る改良型ワッシャーは、リング本体上に環状溝が形成されることにより、使用者がネジをリング本体に挿着して、ネジ保持ベルトの保持孔に取り付けると、該保持孔の保持片が、該リング本体の環状溝に嵌め込まれて、該リング本体の両保持壁面によって制限されることから、使用者が、ネジ保持ベルトを上下逆さまに持ち運んでも、本発明の改良型ワッシャーは依然として、ネジ保持ベルト上に強固に保持され、保持孔からずれ落ちることがないので、使用上の利便性が向上する。
【符号の説明】
【0020】
10A、10B、10C リング本体
11A、11C 外周壁面
12A、12C 環状溝
13A 保持壁面
14A、14B、14C 挿通孔
15B 突起
16C 規制底壁
17C 塗装層
20C 金属シェル
22C 規制部
23C 孔穴
30 ネジ
40 ネジ保持ベルト
41 ベルト体
42 保持孔
50 小径筒状部
60 大径筒状部