(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面と共に本発明に係る椅子の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。説明中、「上」、「下」、「前」、「後」、「側面」等の方向を示す語は、図面に示された状態に基づいた便宜的な語である。また、本実施形態において、x方向が第2の方向に、y方向が第1の方向に、z方向が第3の方向に該当する。
【0018】
図1及び2に、本実施形態に係る椅子の概略図を示す。
図1は、椅子1の斜視図を示す。
図2(a)、(b)、(c)、及び(d)は、それぞれ椅子1の正面図、背面図、側面図、及び上面図を示す。
図1、2に示すように、椅子1は、座部2と、座部2を支持する脚部13と、座部2の後部に配置され、枕部5を保持するための支持部6を有する。
図1に示すように、本実施形態において、支持部6は、上下方向に延伸している。枕部5は、例えば円柱形状を有しており、支持部6が延伸する方向と交差する方向(図においては、左右方向)に延伸することができる。枕部5には、ハンドル部3(3a、3b)が一体に形成され、枕部5の側面から突出するように形成されている。
【0019】
図1に示すように、座部2と枕部5との間には、空隙30(30a、30b)が設けられている。空隙30は、
図20で示したように、椅子5に着座する際に、着座者が股関節を伸展させて、下肢を挿通可能なように形成されている。このとき、臀部が空隙30を介して、後方に露出する状態で、着座できるように、座部2と枕部5と空隙30を有して配置されている。
【0020】
図1、2に示すように、脚部13は、例えば、周知のガスシリンダーによる昇降機構とキャスターを有する脚部13を設置することができる。
図2(a)、(b)に示すように、周知のガスシリンダーによる昇降機構とキャスターを有する脚部を設ける際は、座部2の底面には、支持基部14を設けることができる。また、支持基部14には、脚部13が接続されていると共に、支持部6が接続固定されている。また、座部2は、回動可能に支持基部14に固定されている。
【0021】
図2(b)(c)に示すように、座部2の第2の領域の後部には、支持部6が第3の方向の上方に延伸するように接合されている。
また、該接合は、座部2の底面に前記支持基部14を設けることにより、リクライニング機構90を接合することができる。支持基部14と支持部6をリクライニング機構90により接合することにより、支持部6を角度調整可能に固定することができる。
【0022】
また、支持部6は、着座者が股関節を伸展に可動するための空隙30(30a、30b)を広く確保するために、充分な強度を保持できる範囲で、第2の方向の横幅を狭く形成することができる。
【0023】
図3〜10は、座部2の形状、構造を説明するために示す概略図である。
図3は座部2の上面図である。
図3に示すように座部2は、第1の方向に第1の領域101(101a、101b、101c)の前部と、第2の領域102(102a、102b)の後部により構成することができる。
【0024】
座部2の第1の領域101cは、着座時に股関節が屈曲の状態となる通常の座位姿勢で、脚を置く領域である。
【0025】
座部2の第1の領域101a、101bは、着座時に股関節が外転の状態となる座位姿勢で、脚を置く領域である。
【0026】
座部2の第2の領域102(102a、102b)は、第1方向に突出した凸形状を有しており、着座時に股関節が伸展の状態となる座位姿勢で脚を置く領域である。
【0027】
図3に示すように、座部2の第2の領域102(102a、102b)の形状は、R部24(24a、24b)からなる凸形状を有することができ、座部2の、第1の領域101a、101bに、着座者が股関節を外転に可動した脚を置くための第1の足掛部22(22a、22b)と、第2の領域102(102a、102b)に、着座者が股関節を伸展に可動した脚を置くための第2の足掛部23(23a、23b)は、丸縁またはテーパ状を形成することができる。
【0028】
また、R部24(24a、24b)の形状により、着座者の股関節の伸展動作をガイドするよう支えることができる。
【0029】
図4は
図3の上面図に示すI−I線に沿った断面図である。座部2を構成する着座部本体21aは外縁部に設けるテーパ状または丸縁状を保持するために、圧力をかけても沈み切らない硬さを有したゴム材、高反発部材、木材等を着座部本体21aと、その上面と外周壁及び座受け20の側面(外周壁)を覆い隠し得る寸法を有するゴム材、ウレタン素材など比較的柔らかく、クッション性を有した緩衝部材21bを配置するよう構成することができる。ポリエステル等のプラスチック樹脂、布、合皮生地、皮革から成る布材を主体に構成された張地を、着座部本体21aの全域を覆い隠し得る寸法を有し、張地の端部を着座部本体21の外周縁に止着してもよい。
【0030】
前記構成は、着座部本体21aと座受け20が好適に接合されていればよく、張地の接合は、機械的接合によらず、化学的接合、材料的接合により接合することができ、座受け20と緩衝部材の接合部は、張地による支持によらず、化学的接合、材料的接合により接合することができる。
【0031】
図4の(a)に示すように、座部2の外縁部は着座者が股関節を外転および伸展に可動した際の大腿部との接触面積を広げ、接触圧力を和らげるため、テーパ状を形成した着座部本体21aと、着座部本体21aの底面には座受け20が接合され、その上面と外周壁及び座受け20の側面(外周壁)を覆い隠し得る寸法を有する緩衝部材21bを配置するよう構成することができる。
【0032】
また、
図4(b)に示すように座部2の外縁部は着座者が股関節を外転および伸展に可動した際の大腿部と接触圧力を和らげるため、丸縁状に形成された着座部本体21aと、着座部本体21aの底面には座受け20が接合され、その上面と外周壁及び座受け20の側面(外周壁)を覆い隠し得る寸法を有する緩衝部材21bを配置するよう構成することができる。
【0033】
また、
図4(c)に示すように、座部2に有する着座部本体21aの外縁部は着座者が股関節を外転および伸展に可動した際の大腿部と座部2の外縁部との接触面積を広げ、接触圧力を和らげるため、テーパ状を形成した着座部本体21aと、着座部本体21aの底面には座受け20が接合され、その上面と外周壁及び座受け20の側面(外周壁)を覆い隠し得る寸法を有する緩衝部材21bを配置するよう構成することができる。
【0034】
また、緩衝部材21bの外縁部を丸縁状に形成することにより、着座部本体21aのテーパ状を有する第1の足掛部22(22a、22b)および第2の足掛部23(23a、23b)と緩衝部材21bの間に厚みが増した緩衝部材補強部21cのクッション性により大腿部との接触圧力を和らげることができる。
【0035】
前記緩衝部材21bの設置状態により、座部2の側縁部の形状が異なるため、
図5〜10の座部に関わる形状の説明は、座部2と着座部本体21aの形状について示すものとする。
【0036】
図5は、座部2または着座部本体21aの変形例の形状と構成を説明するために示す図である。
図5(a)(b)(c)に示すように、
【0037】
図3に示すように、座部2または着座部本体21aの第2の領域102(102a、102b)の形状は、R部24(24a、24b)からなる凸形状を有することができる。また、座部2または着座部本体21aの第1の領域101a、101bに、着座者が股関節を外転した際に大腿部と座部2の外縁部との接触面積を広げ、接触圧力を和らげるための丸縁またはテーパ状を形成した第1の足掛部22(22a、22b)と、第2の領域102(102a、102b)に、着座者が股関節を伸展した際に大腿部と座部2または着座部本体21aの外縁部との接触面積を広げ、接触圧力を和らげるための傾斜部を有した第2の足掛部200(200a、200b)を有することができる。
【0038】
また、
図5(a)(b)に示すように、第2の足掛部200(200a、200b)は、R部24(24a、24b)からなる凸形状と、着座部上面から傾斜が始まる平面の端部となるR25(25a、25b)からなる凸形状の中間領域に形成することができ、第1の方向に行くほど中間領域が漸次幅広になることにより、傾斜角度が緩やかに形成することができる。
【0039】
図5(c)は
図5(a)の上面図に示すII−II線に沿った断面図である。
図5(c)に示すように、第2の足掛部200(200a、200b)を設けることにより、、着座者が股関節を伸展に可動した際の大腿部と着座部本体21aの外縁部との接触面積を広くするとともに、緩衝部材21bの外縁部を丸縁状に形成することにより、着座部本体21a外縁部の傾斜と緩衝部材21bの間に厚みが漸増する緩衝部材補強部21dが形成され、クッション性が増加することにより大腿部との接触圧力を和らげることができる。
【0040】
更に、R部24(24a、24b)の形状と第2の足掛部200(200a、200b)に形成された漸次緩やかな傾斜により、着座者が股関節の伸展動作をガイドするよう支えることができる。
【0041】
図6は、座部2または着座部本体21aの変形例の形状と構成を説明するために示す図である。
図6(a)(b)(c)に示すように、座部2または着座部本体21aは、第1の方向に第1の領域101(101a、101b、101c)の前部と、第2の領域102(102a、102b)の後部により構成することができる。
【0042】
座部2または着座部本体21aの第1の領域101cは、着座時に股関節が屈曲の状態となる通常の座位姿勢で、脚を置く領域である。
【0043】
座部2または着座部本体21aの第1の領域101a、101bは、着座時に股関節が外転の状態となる座位姿勢で、脚を置く領域である。座部2に有する着座部本体21aの第1の領域101a、101bは、着座者が股関節を外転した際に大腿部と座部2または着座部本体21aの外縁部との接触圧力を和らげるための傾斜部を有した第1の足掛部200(201a、201b)を有することができる。
【0044】
また、座部2または着座部本体21aの第2の領域102(102a、102b)は、着座者が股関節を伸展した際に大腿部と座部2または着座部本体21aの外縁部との接触面積を広げ、接触圧力を和らげるための傾斜部を有した第2の足掛部202(202a、202b)を有することができる。
【0045】
また、
図6(a)(b)に示すように、第1の足掛部201(201a、201b)は、第1の領域101(101a、101b)の外縁部29(29a、29b)と、着座部上面から傾斜が始まる平面の端部となるR26(26a、26b)の中間領域に形成することができ、第1の方向に行くほど中間領域が漸次幅広になることにより、傾斜角度が緩やかに形成することができる。
【0046】
また、第2の足掛部202(202a、202b)は、R部24(24a、24b)からなる凸形状と、着座部上面から傾斜が始まる平面の端部となるR部27(27a、27b)からなる凸形状の中間領域に形成することができ、第1の方向に行くほど中間領域が漸次幅広になることにより、傾斜角度が緩やかに形成することができる。
【0047】
図6(c)は
図6(a)の上面図に示すII−II線に沿った断面図である。
図6(b)(c)に示すように、座部2または着座部本体21aの第1の領域101(101a、101b)に第1の足掛部201(201a、201b)、第2の領域102(102a、102b)に第2の足掛部202(202a、202b)を設けることにより、着座者が股関節を外転および伸展に可動した際の大腿部と座部2の外縁部との接触面積を広くするとともに、緩衝部材21bの外縁部を丸縁状に形成することにより、着座部本体21a外縁部の傾斜と緩衝部材21bの間に厚みが漸増する緩衝部材補強部21eが形成され、クッション性が増加することにより、着座者が股関節を外転および伸展に可動した際の大腿部との接触圧力を和らげることができる。
【0048】
更に、外縁部29(29a、29b)からR部24(24a、24b)からなる着座部本体21aの外縁部と、着座部上面から傾斜が始まる平面の端部となるR26(26a、26b)からR部27(27a、27b)からなる凸形状の中間領域に形成する第1の足掛部201(201a、201b)から第2の足掛部202(202a、202b)の漸次緩やかな傾斜により、着座者が股関節の外転から伸展動作をガイドするよう支えることができる。
【0049】
図7は、座部2または着座部本体21aの変形例の形状と構成を説明するために示す図である。
図7(a)(b)(c)に示すように、座部2または着座部本体21aは、第1の方向に第1の領域101(101a、101b、101c)の前部と、第2の領域102(102a、102b)の後部により構成することができる。
【0050】
座部2または着座部本体21aの第1の領域101cは、着座時に股関節が屈曲の状態となる通常の座位姿勢で、脚を置く領域である。
【0051】
座部2または着座部本体21aの第1の領域101a、101bは、着座時に股関節が外転の状態となる座位姿勢で、脚を置く領域である。
【0052】
座部2または着座部本体21aの、第1の領域101(101a、101b)に、着座者が股関節を外転した際に大腿部と座部2の外縁部との接触面積を広げ、接触圧力を和らげるための傾斜部を有した第1の足掛部22(22a、22b)と、座部2または着座部本体21aの第2の領域102(102a、102b)は、着座者が股関節を伸展した際に大腿部と座部2の外縁部との接触面積を広げ、接触圧力を和らげるための傾斜部を有した第2の足掛部203(203a、203b)を有することができる。
【0053】
また、
図7(a)(b)に示すように、第2の足掛部203(203a、203b)は、R部24(24a、24b)からなる凸形状と、第2の領域最後部に有する平面部210の両側の傾斜角度が緩やかに形成することができる。
平面部210は、支持部6の第2方向の幅の長さと接合する位置に合せて形成することができる。
【0054】
図7(c)は
図7(a)の上面図に示すII−II線に沿った断面図である。
図7(c)に示すように、座部2または着座部本体21aに第2の足掛部203(203a、203b)を設けることにより、着座者が股関節を伸展に可動した際の大腿部と座部2の外縁部との接触面積を広くするとともに、緩衝部材21bの外縁部を丸縁状に形成することにより、着座部本体21a外縁部の傾斜と緩衝部材21bの間に厚みが漸増する緩衝部材補強部21dが形成され、クッション性が増加することにより大腿部との接触圧力を和らげることができる。
【0055】
更に、R部24(24a、24b)の形状と第2の足掛部203(203a、203b)に形成された傾斜により、着座者が股関節の伸展動作をガイドするよう支えることができる。
【0056】
図8は、座部2または着座部本体21aの変形例の形状と構成を説明するために示す図である。
図8(a)(b)(c)(d)に示すように、座部2または着座部本体21aは、第1の方向に第1の領域101(101a、101b、101c)の前部と、第2の領域102(102a、102b)の後部により構成することができる。
【0057】
座部2または着座部本体21aの第1の領域101cは、着座時に股関節が屈曲の状態となる通常の座位姿勢で、脚を置く領域である。
【0058】
座部2または着座部本体21aの第1の領域101a、101bは、着座時に股関節が外転の状態となる座位姿勢で、脚を置く領域である。
【0059】
着座者が股関節を伸展した際に大腿部と座部2または着座部本体21aの外縁部との接触圧力を和らげるために、丸縁またはテーパ状を形成することができるとともに、座部2または着座部本体21aの第2の領域102(102a、102b)には角度調整部28(28a、28b)を有することができ、座部2または着座部本体21aの第2の領域102(102a、102b)に有するR部24(24a、24b)からなる凸形状の両側に設けることができる。
【0060】
また、
図8(b)(c)(d)の側面図に示すように、座部2の第1の領域101(101a、101b)と第2の領域102(102a、102b)の境界線近傍に有するスリット部には、第2の方向に延伸する軸心92(92a、92b)と、前記軸心92(92a、92b)に挿通される軸受93(93a1、93a2、93b1、93b2)と、前記軸受93(93a1、93a2、93b1、93b2)に固定され、前記軸心92(92a、92b)を支点により構成したリクライニング機構91(91a、91b)に軸支された角度調整部28(28a、28b)を上下方向に回転可能に設けることができる。上下方向に回転可能に設けられた角度調整部28(28a、28b)を有することにより、着座者の股関節伸展時の可動域に応じて大腿部と座部2の外縁部との接触圧力を調整することができる。
【0061】
図9は、座部2または着座部本体21aの変形例の形状と構成を説明するために示す図である。座部2または着座部本体21aは、
図9(a)(b)(c)に示すように、座部2または着座部本体21aは、第1の方向に第1の領域101(101a、101b、101c)の前部と、第2の領域102(102a、102b)の後部により構成することができる。
【0062】
座部2または着座部本体21aの第1の領域101cは、着座時に股関節が屈曲の状態となる通常の座位姿勢で、脚を置く領域である。
【0063】
座部2または着座部本体21aの第1の領域101a、101bは、着座者が股関節を外転した大腿部をホールドするための凹部を形成した第1の足掛部206(206a、206b)を有することができる。第1の足掛部206(206a、206b)に脚を支持するための凹部が設けられているので、着座者が足掛部の凹部で脚を支持させながら容易に股関節の外転状態を維持することができる。また、座部2または着座部本体21aの側縁部はテーパ状に設け、着座者の大腿部との接触面積を広くするよう設けることにより、接触圧力を和らげることができる。
【0064】
座部2または着座部本体21aの第2の領域102(102a、102b)は、着座者が股関節を伸展した大腿部をホールドするための凹部を形成した第2の足掛部204(204a、204b)を有することができる。第2の足掛部204(204a、204b)に脚を支持するための凹部が設けられているので、着座者が足掛部の凹部で脚を支持させながら容易に股関節の伸展状態を維持することができる。また、座部2または着座部本体21aの側縁部はテーパ状に設け、着座者の大腿部との接触面積を広くするよう設けることにより、接触圧力を和らげることができる。
【0065】
図9(c)は
図9(a)の上面図に示すII−II線に沿った断面図である。
図9(c)に示すように、着座部本体21aの第2の領域102(102a、102b)に有する第2の足掛部204(204a、204b)の側縁部にテーパ状を設けることにより、着座者が股関節を伸展に可動した際の大腿部と座部2の外縁部との接触面積を広くするとともに、緩衝部材21bの外縁部を丸縁状に形成することにより、着座部本体21a外縁部の傾斜と緩衝部材21bの間に厚みが漸増する緩衝部材補強部21dが形成され、クッション性が増加することにより、着座者の大腿部との接触圧力を和らげることができる。
【0066】
図10は、座部2または着座部本体21aの変形例の形状と構成を説明するために示す図である。
図10(a)(b)(c)に示すように、座部2または着座部本体21aは、第1の方向に第1の領域101(101a、101b、101c)の前部と、第2の領域102(102a、102b)の後部により構成することができる。
【0067】
座部2または着座部本体21aの第1の領域101cは、着座時に股関節が屈曲の状態となる通常の座位姿勢で、脚を置く領域である。
【0068】
座部2または着座部本体21aの第1の領域101a、101bは、着座者が股関節を外転した際に大腿部と座部2の外縁部との接触圧力を和らげるための傾斜部を有した第1の足掛部207(207a、207b)を有することができる。また、第1の足掛部207(207a、207b)は、側縁部29(29a、29b)と、着座部上面から傾斜が始まる平面の端部となるR部27(27a、27b)からなる中間領域に形成する傾斜からなることができる。
【0069】
座部2または着座部本体21aの第2の領域102(102a、102b)は、着座者が股関節を伸展した際に大腿部と座部2の外縁部との接触圧力を和らげるための傾斜部を有した第2の足掛部200(200a、200b)を有することができる。前記第2の足掛部200(200a、200b)は、R部24(24a、24b)からなる凸形状と、着座部上面から傾斜が始まる平面の端部となるR部25(25a、25b)からなる凸形状の中間領域に形成することができ、第1の方向に行くほど中間領域が漸次幅広になることにより、傾斜角度が緩やかに形成することができる。
【0070】
また、座部2または着座部本体21aの第1の領域101(101a、101b、101c)は、着座者が股関節を外転または伸展した際、もう片方の股関節が屈曲している大腿部と座部2の外縁部との接触圧力を和らげるための傾斜部を有した第3の足掛部205(205a、205b)を有することができる。前記第3の足掛部205(205a、205b)は、座部2または着座部本体21aの着座部本体21aの側縁部と、着座部上面から傾斜が始まる平面の端部となるR部27(27a、27b)との中間領域に形成することができ、座部2または着座部本体21aの第1の領域の最前部の第1の方向と第2の方向が交わる両側角部に行くほど中間領域が漸次幅広となることにより、傾斜角度が緩やかに形成することができる。
【0071】
図10(c)は
図10(a)(b)の上面図に示すIII−III線に沿った断面図である。
図10(c)に示すように、着座部本体21aの第2の足掛部200(200a、200b)を設けることにより、大腿部の接触面積を広くするとともに、緩衝部材21bの外縁部を丸縁状に形成することにより、着座部本体21a外縁部の傾斜と緩衝部材21bの間に厚みが漸増する緩衝部材補強部21dが形成され、クッション性が増加することにより、股関節を伸展した際の座部2の外縁部と大腿部との接触圧力を和らげることができる。
【0072】
また、R部24(24a、24b)の形状と第2の足掛部200(200a、200b)に形成された漸次緩やかな傾斜により、着座者が股関節の外転から伸展動作をガイドするよう支えることができる。
【0073】
また、着座部本体21aの第3の足掛部205(205a、205b)に、緩衝部材21bの外縁部を丸縁状に形成し、接合することにより、着座部本体21a外縁部の傾斜と緩衝部材21bの間に厚みが漸増する緩衝部材補強部21gが形成され、クッション性が増加することにより、着座者が片方の股関節を外転および伸展した際に、もう片方の股関節の屈曲を維持する側の大腿部と座部2の外縁部との接触圧力を和らげるとともに、両股関節を屈曲した通常の座位姿勢から片方の股関節を外転に可動する際の座部2の外縁部と大腿部との接触圧力を和らげることができる。
【0074】
また、R部27(27a、27b)の形状と第3の足掛部205(205a、205b)に形成された傾斜により、着座者が股関節の屈曲から外転動作をガイドするよう支えることができる。
【0075】
図11は、枕部5とハンドル部3(3a、3b)の構成と、支持部6に設置する枕部5の高さ調整の実施例について説明するための図である。
図11に示すように、支持部6から第1の方向に前方向に突き出した凸形状を有する枕部5が備えられており、例えば枕部5は第2の方向に横方向に延伸する円柱形状を有し、円柱形状周壁の凸部を腰背部に接触することができる。枕部5から第3の方向の上部には、領域31と領域32が設けられており、
図19に示すように、領域31は、胸腰部を後屈に可動することができる。また、
図20に示すように、領域32は、着座者は肩甲帯を伸展、肩関節を伸展に可動することができる。また、枕部5から第3の方向の下部には、座部2との間に形成される空隙30(30a、30b)が設けられており、枕部5を高さ調整することにより、空隙30(30a、30b)の大きさを調整することができる。
【0076】
枕部5は円柱形状を有するが、枕部はアーチ状の周壁が腰背部に接触できればよく、半円柱を有することができる。また、楕円柱形を有することができる。楕円柱形を有することにより、アーチがなだらかになることにより腰背部の接触面が広がり、圧力を和らげることができる。また、接触面の広さを狭くすることにより、腰背部との接触圧力を強くすることができる。
【0077】
枕部5は、腰背部との接触圧力を受けても凸形状を保持するために、枕部の本体にはある程度剛性を有した金属、硬質樹脂、木材等を用いることができる。
【0078】
また、腰背部が接触する該本体の前部または該本体の全体を覆うように、ゴム材、ゲル状部材、ウレタン素材など比較的柔らかい緩衝部材を配置することで、接触部の皮膚と枕部本体との圧迫を和らげることができる。
また、ポリエステル等のプラスチック樹脂、布、合皮生地、皮革から成る布材を主体に構成された張地を、本体、緩衝部材の全域を覆い隠し得る寸法を有し、張地を、ファスナー等で着脱可能に被着してもよい。
【0079】
前記構成は、本体と緩衝部材は好適に接合されていればよく、張地の接合は、機械的接合によらず、化学的接合、材料的接合により接合することができる。
【0080】
また、
図11に示すように、支持部6と枕部5は、接合部10により、後面中央に従来の接合にて接合することができる。また、支持部6は、金属、硬質樹脂、木材等から成ることができる。
【0081】
また、枕部5の高さ調整の実施例を
図11(c)(d)に示す。接合部10の中央には雌ネジが設けられており、固定ノブ11を螺着することにより、枕部5を支持部6に固定することができる。また、枕部5には、第2の方向に両側の横方向に延伸する、ハンドル部3(3a、3b)を設けることができる。
【0082】
ハンドル部3(3a、3b)、接合部10は、金属、硬質樹脂、木材等によりなることができ、ハンドル部3(3a、3b)は、ゴム、ポリウレタン、樹脂製のグリップを被着することができる。
【0083】
また、枕部5の第3の方向の上部に、胸腰部の後屈可能な領域31と、枕部5の第3の方向の上方向に、着座者の腕を後方に可動させ、肩関節、肩甲帯の伸展可能な領域32を有することができる。
【0084】
図12は、本実施形態の椅子1に有する支持部6の頂部に着座者の頭部を支持するための枕部7を設置するとともに、ハンドル部の変形例を示す。
【0085】
図12に示すように、ハンドル部は、着座者の股関節の可動を妨げない範囲であれば、いずれの方向に弯曲してもよい。例えば、ハンドル部8(8a、8b)は、第2の方向に延伸し、第1の方向に前方向に弯曲することができる。また、枕部7は支持部6の頂部に、高さ調整可能に接合することができる。
【0086】
枕部7は、枕部本体に金属、硬質樹脂、木材等を用いることができる。また、本実施形態の椅子1に着座した着座者の背部から頭部が接触する該枕部本体の前部または該本体の全体を覆うように、ゴム材、ゲル状部材、ウレタン素材など比較的柔らかい緩衝部材を配置することで、枕部本体に圧迫される皮膚を損傷することを防ぐことができる。また、ポリエステル等のプラスチック樹脂、布、合皮生地、皮革から成る布材を主体に構成された張地を、枕部本体、緩衝部材の全域を覆い隠し得る寸法を有し、張地を、ファスナー等で着脱可能に被着してもよい。
【0087】
前記構成は、枕部本体と緩衝部材は好適に接合されていればよく、張地の接合は、機械的接合によらず、化学的接合、材料的接合により接合することができる。
【0088】
図13〜15は、枕部とハンドル部がそれぞれ接合部を備えることを説明するために示す図である。
【0089】
図13は、枕部とハンドル部がそれぞれ接合部を備えた本実施形態の椅子1の斜視図である。
【0090】
図14は、枕部5とハンドル部80が支持部6に接合する状態を説明するために示す図である。
図14(a)(b)に示すように、枕部5に接合する接合部40の穴部と、ハンドル部80に接合する接合部70の穴部に支持部6が挿通するとともに、固定ノブ41、71により固定することができる。
【0091】
また、
図14(c)(d)に示すように接合部70、固定ノブ71を操作することにより、ハンドル部80の高さを調整することができる。
【0092】
また、
図14(e)(f)に示すように、支持部6に設置する枕部5とハンドル部80の上下の配置を入れ替えて設置することができる。
【0093】
図15は、本実施形態の椅子1に枕部5とハンドル部80がそれぞれ接合部を備えた状態を示す前面図、後面図、側面図、上面図である。
【0094】
図16は、本実施形態の椅子1に、支持部、枕部、ハンドル部が一体に備えた背もたれ部4の設置例を示す斜視図である。
図16に示すように、座部2の第2の方向の後部に取り付けられ、上方に延伸する背もたれ部4は、腰背部との接触部は、第1の方向に前方向に凸形状を有する凸部が設けられており、前記凸部から第2の方向から第1の方向に前方向に弯曲して延伸する把持部を設けることができる。腰背部との接触部となる前記凸部は、形状、硬さを変更できるよう着脱可能に接合してもいよい。背もたれ部4の前記凸部の第3の方向の上部には、領域31と領域32が設けられており、
図19に示すように、領域31は、胸腰部を後屈に可動することができる。また、
図20に示すように、領域32は、着座者は肩甲帯を伸展、肩関節を伸展に可動することができる。
【0095】
図17は、本実施形態の椅子1に、支持部、枕部、ハンドル部が一体に備えた背もたれ部4の設置例を示す前面図、後面図、側面図、上面図である。
【0096】
図18〜25は、本実施形態の椅子1の使用方法を説明するために示す概略図である。
【0097】
図18に示すように、本実施形態の椅子1に着座した着座者は、両股関節を屈曲させて、座部2の第1の領域101cに脚を置いた通常の座位姿勢において、腰背部に、円柱形が第2の方向の横方向に設置された枕部5の周壁に接触することにより、胸椎および腰椎が生理的弯曲に保たれている。枕部5は、ある程度剛性を有した素材により構成することにより、接触部の形状が大きく変形することなく背骨に対して前方向に圧力をかけることができる。
【0098】
図19は、支持部6に支持された円柱形状の枕部5の周壁に、着座者の腰背部310が接触している状態を示す。腰背部と接触する枕部5の第3の方向の上部に、胸腰部後屈領域31を有することにより、座位姿勢で枕部5が脊椎を支えながら腰背部311の状態に可動(後屈)することができる。
【0099】
長期的に固定した関節に起こる、筋委縮および筋柔軟性の低下による可動制限により、胸椎が過後弯、腰椎が過小前弯に変位し、猫背姿勢となる従来の椅子における背骨の課題を解決するために、枕部5により胸椎、腰椎を接触するとともに、胸腰部後屈領域31を設け、胸腰部の後屈を可能にすることにより、背骨の生理的弯曲を維持、調整することができる。
【0100】
図20は、従来の椅子における肩関節および肩甲帯の課題に対する解決を説明するために示す概略図である。
図20に示すように、本実施形態の椅子1に着座した着座者は、枕部5の第3の方向の上方向に領域32を有することにより、着座者の腕部を第1の方向の後方へ挿通し、両肩関節および肩甲帯を伸展に可動することができる。
【0101】
長期的に固定した関節に起こる、筋委縮および筋柔軟性の低下による可動制限により、肩関節および肩甲帯の屈曲状態に変位し、猫背姿勢となる従来の椅子における課題を解決するために領域32を設け、両肩関節および肩甲帯を伸展への可動を可能にすることにより、肩関節、肩甲帯の屈曲状態による胸椎の過後弯を予防し、生理的弯曲を維持することができる。
【0102】
図21は、従来の椅子における股関節の課題に対する解決を説明するために示す概略図である。
図21に示すように、本実施形態の椅子1に着座した着座者は、横方向に延伸するハンドル部3(3a、3b)を把持また肘に掛けることにより体を支えながら股関節を外転に可動することができる。
【0103】
また、ハンドル部3(3a、3b)を把持また肘に掛けながら肩関節および肩甲帯を伸展することにより、枕部5により腰背部を第1の方向の前方へ押圧する作用を強めることができる。
【0104】
また、座部2外縁部に形成したテーパ状、または丸縁状の外転時足掛部22aにより、股関節を外転に可動した際に大腿部との接触する圧力を和らげることができる。
【0105】
また、腰背部と接触する枕部5の第3の方向の上部に、胸腰部後屈領域31を有することにより、座位姿勢で枕部5が脊椎を支えながら腰背部を可動(後屈)することができる。胸腰部後屈の強度により、股関節の筋群のストレッチを加減することができる。
【0106】
図22は、本実施形態の椅子1に着座者が着座した状態を説明するために示す図である。
図22に示すように、座部2と枕部5の上下の間に設けられ空隙部30の空間により、臀部が後方に露出することができ、股関節を伸展に可動することができる。
【0107】
また、座部2外縁部に形成したテーパ状、または丸縁状の外転時足掛部22a、伸展時足掛部23aにより、股関節を外転から伸展に可動した際に大腿部との接触する圧力を和らげることができる。
【0108】
また、本実施形態の椅子1に着座した着座者は、横方向に延伸するハンドル部3(3a、3b)を肘にかけて身体を支えながら股関節を外転および伸展に可動した姿勢を示す。横方向に延伸するハンドル部3により体を支えることで、背骨の生理的弯曲を保ちながら、安定した体勢で股関節を外転および伸展することができる。更に、肩関節および肩甲帯を伸展することができるとともに、枕部5による腰背部への押圧を加減することができる。
【0109】
また、腰背部と接触する枕部5の第3の方向の上部に、領域31を有することにより、座位姿勢で枕部5が脊椎を支えながら腰背部を可動(後屈)することができ、胸腰部後屈の強度により、股関節の筋群のストレッチを加減することができる。
【0110】
図21、20および21は、本実施形態の椅子1に設置する座部2の形状を説明するために示す図である。
図23は、着座者の股関節の骨格の動きを概略的に示す図である。
図21は
図23に示す(a)〜(c)の脚の位置、
図22は
図23に示す(d)〜(f)の脚の位置に照合するように示す。
【0111】
図23に示す本実施形態の椅子1に着座した着座者の股関節の動きによる脚の位置(a)〜(f)は、着座者の股関節の可動を分かりやすくするために、寛骨臼、大腿骨頭300およびその他の骨格を同じ位置に固定して図に示した。
【0112】
(可動1)
図21(a)、
図23(a)は、本実施形態の椅子1に着座した着座者の股関節が屈曲の座位姿勢での脚の位置を示す。着座者の股関節が屈曲することにより、脚は第1の領域101cに位置し、座位姿勢を保つ状態を示す。
【0113】
(可動2)
図21(b)、
図23(b)は、本実施形態の椅子1に着座した着座者の股関節を浅く外転に可動した脚の位置を示す。着座者の股関節が外転することにより、脚は第1の領域101aに位置し、大腿部は第1の足掛部22aに接触しており、股関節は外転しているが、股関節の屈曲と、膝関節の屈曲も保たれた状態を示す。
【0114】
(可動3)
図21(c)、
図23(c)は、本実施形態の椅子1に着座した着座者の股関節を外転に可動した脚の位置を示す。着座者の股関節が外転することにより、脚は第1の領域101aに位置し、大腿部は第1の足掛部22aに接触しており、股関節は外転しているが、膝の屈曲が保たれた状態を示す。
【0115】
(可動4)
図22(a)、
図23(d)は、本実施形態の椅子1に着座した着座者の股関節を外転および伸展に可動した脚の位置を示す。着座者の股関節が外転および伸展することにより、脚は第2の領域102aに位置し、大腿部は第2の足掛部23aに接触しており、空隙部30aに着座者の臀部を移動させることにより、股関節は外転、伸展に可動することができる。その際、R部24による座部の凸形状により、
図23(c)から(d)の可動がガイド、サポートされることを示す。
【0116】
(可動5)
図22(b)、
図23(e)は、本実施形態の椅子1に着座した着座者の股関節を外転および伸展に可動した脚の位置を示す。着座者の股関節が外転および伸展することにより、脚は第2の領域102aに位置し、大腿部は第2の足掛部23aに接触しており、空隙部30aに着座者の臀部を移動させることにより、股関節は外転、伸展に可動することができる。その際、R部24による座部の凸形状により、
図23(d)から(e)の可動がガイド、サポートされることを示す。
【0117】
(可動6)
図22(c)、
図23(f)は、本実施形態の椅子1に着座した着座者の股関節を大きく伸展に可動した脚の位置を示す。着座者の股関節が深く進展することにより、脚は第2の領域102aに位置し、大腿部は第2の足掛部23aに接触しており、空隙部30aに着座者の臀部を移動させることにより、股関節は深く伸展に可動することができる。その際、R部24による座部の凸形状により、
図23(e)から(f)の可動がガイド、サポートされることを示す。
【0118】
図23(a)〜(f)に示すように、本実施形態の椅子1に着座した着座者の股関節の外転から最大伸展までの可動では、大腿骨頭および寛骨臼300を中心に大腿部が可動しており、
図23(e)〜(f)に示す股関節の伸展の可動では、座部2の後部に有するR部24の凸形状により、好適にガイドおよびサポートされる状態を示す。股関節の伸展動作において、座部後部の形状は、股関節の構造を考慮し、R部24を有することが重要である。
【0119】
長期的に固定した関節に起こる、筋委縮および筋柔軟性の低下による可動制限により、股関節が屈曲状態に変位し、立位および歩行がしにくい状態となる従来の椅子における課題を解決するために、椅子での座位姿勢において、股関節の外転および伸展の可動を可能にすることにより、股関節、腰背部の各筋群の弛緩および収縮が可能となり、股関節の柔軟性を保つことができる。
【0120】
本実施形態の椅子1に着座した着座者の股関節を伸展した際に、大腿部と座部2の外縁部との接触圧力を和らげ、股関節の柔軟性に合せて調整するために、リクライニング機構91を有した座部の構成例を
図24に示す。座部2のと第2の領域102aに有する角度調整部28aを、第3の方向の下方へ角度を調整することにより、着座者の股関節伸展時の可動域に応じて大腿部の接触圧力を調整することができる。
【0121】
本実施形態の椅子1に着座した着座者の股関節を伸展した際に、脚部の高さ調整を行うことにより、股関節の柔軟性に合せて調整する使用例を
図25に示す。
図25に示すように、脚部13に有するガスシリンダー機構による昇降操作により座部2の高さ調整を行うことにより、着座者の股関節の可動(特に伸展)の強度を調整することができる。
図25は、座部2を第3の方向の下方向に位置調整することにより、着座者の股関節の伸展が強くなることを示す。
【0122】
図26は、
図22、22、23に示す、本実施形態の椅子1に着座する着座者が股関節を伸展した状態の上面図を示す。
【0123】
図27は、本実施形態の椅子1に着座者が着座した状態を説明するために示す図である。
図27に示すように、椅子1は、座部2と支持部6の接合にリクライニング機構90を備えることにより、支持部6の角度を後方に調整することができる。本実施形態の椅子1に着座した着座者の腰背部に、円柱形が第1の方向と交差する第2の方向の横方向に設置された枕部5の周壁に接触することにより、胸椎、腰椎が生理的弯曲に保たれている。
【0124】
また、枕部7の位置を着座者の頭部にまで延伸し、リクライニング機構90により、支持部6を第1の方向の後方に倒すことにより、枕部7により頭部を支え、枕部5を腰背部に接触することにより前方向に圧力をかけることにより、座位姿勢で生理的弯曲を保ちながら寛ぐことができる。
【0125】
従来の椅子の課題は、従来の椅子での座位姿勢で引き起こされる身体の不調により、筋委縮および筋柔軟性の低下による可動制限が主にどの部位に現れるかを、骨格調整により回復させる過程で検証した結果、観取できたものである。
【0126】
前記骨格調整とは、骨格の歪みを本来あるべき位置に戻すことにより不調を回復させることを示し、ここで示す骨格の歪みとは、筋肉の委縮、柔軟性の低下により、該筋肉に関わる関節および骨格の接合が、本来あるべき位置に留まることができない事により寄るものを指す。
【0127】
以下に従来の椅子における課題は、主に3つあると考え、その具体例を示す。第1の課題は、デスクワークでは、腕が前に置かれ、肩甲帯と肩関節の屈曲状態が長時間継続される事により、肩甲骨が外側に開いた状態で肩甲帯、肩関節の伸展に対する可動制限が起こり、猫背姿勢から胸を張る肩甲帯、肩関節伸展に可動しにくくなる課題。
【0128】
第2の課題は、デスクワークなどで、頭部を下方に向けることにより、前傾姿勢となり、頭部を支え続ける筋群が、萎縮し、柔軟性の低下による可動制限が起こる。このように、肩甲帯、肩関節の屈曲に加え、頭部が下方に向く姿勢が同時に継続する状態となり、背骨の生理的弯曲が維持できない状態となる背骨の課題。
【0129】
第3の課題は、股関節の屈曲状態が長時間継続される事により、股関節の筋群が骨格系の反応により、股関節伸展に対する可動制限が起こり、立位において、股関節の筋群が硬くなり、歩行において、下肢に負担がかかる状態となる。
この状態で、立位で上体を起こす姿勢では、股関節が伸展できず屈曲しているため、膝関節も伸展できず屈曲した状態となる。立位姿勢で膝関節の屈曲状態が継続されると、大腿部前面と側面の筋群が収縮されることにより、さらに股関節の筋群が硬くなる課題。
【0130】
前記に挙げた複数の課題により、頸椎、胸椎、腰椎の生理的弯曲が失われ、胸椎が過後弯となり、腰椎が過小前弯となる状態が長期間継続すると、座位または立位の状態で体にかかる重力を受け止める際、身体を支える筋肉が弛緩できない状態となり、前記筋骨格系の反応が強化される。例えば、長時間座位姿勢を長期間継続するようなデスクワークにより、立位姿勢や歩行において脚腰の不調を来すようになる。
【0131】
また、高齢者の猫背姿勢による歩行、または杖を用いての歩行では、股関節は伸展できず、前かがみとなり、股関節の屈曲の可動のみで歩行が行われている。この状態は、単に加齢による影響と捉えられることが通常だが、高齢者の生活習慣では、活動量が減少することにより就寝時以外の多くの時間は座位姿勢となる。前記事例はデスクワークではないものの、いずれも、従来の椅子での座位姿勢の前記課題により引き起こされる不調や姿勢の悪化であり、その状態が継続することにより、不調や姿勢の悪化が増強されることになる。
【0132】
このように、長期的に固定した関節に起こる、筋委縮および筋柔軟性の低下により、可動制限が起こる猫背を呈した背骨を回復するには、腰背部への適切な接触を行う必要がある。また、従来の椅子で、股関節が屈曲した姿勢を、長時間維持する事自体を解決すべき従来の椅子における課題である。
【0133】
本実施形態の椅子1は、長時間座位姿勢を取り続けても、立位や歩行が不調なく行える状態を維持するために、従来の椅子では補えない三つの機能を付加することにより、着座における課題を解決する。
【0134】
第1の課題解決は、長時間腕が前に置かれた肩関節の屈曲により、肩甲骨が外側に変位し、胸椎の過後弯の変位を予防するために、腰背部の接触部を除く範囲は、肩関節が伸展可能に背当て部を形成することにより、肩関節、肩甲骨の柔軟性を保つものである。第1の課題解決の使用例を
図20に示す。
【0135】
第2の課題解決は、胸椎が過後弯、腰椎が過小前弯に変位し、この状態で可動制限が起こることにより、猫背姿勢となる。この課題に対して、腰背部に接触する接触部を凸形状に形成することにより、筋骨格系の反応を呈した胸椎、腰椎に対して、適切な圧力をかけるとともに、枕部と腰背部の接触部を支点に、胸腰部を後屈できるよう構成することにより背骨の生理的弯曲に維持、調整するものである。
【0136】
前記変位とは、筋肉の委縮、柔軟性の低下により、該筋肉に関わる関節および骨格の接合が、本来あるべき位置に留まることができない事により寄るものを指す。
【0137】
猫背を呈した脊椎を骨格調整する際、肩関節および肩甲帯が伸展しながら、腰背部を前方に押圧することにより、効果的に生理的弯曲に調整することができる。これは、肩関節および肩甲帯を伸展する第1の方向の後方への動きと、相反する腰背部を押圧する第1の方向の前方への動きにより、胸椎の過後弯および腰椎過小前弯に変位した椎体が、調整するべき第1の方向の前方へ動きやすくなる。一つ目と二つ目の機能を連動させることにより作用を強めることができることが特徴である。第2の課題解決の使用例を
図18、17に示す。
【0138】
第3の課題解決は、座位姿勢を長時間および長期間継続するようなデスクワークにより、股関節の屈曲の状態が継続する事により、股関節屈筋群の筋委縮、柔軟性の低下がみられる。この課題に対して、座部、背当て部の形状を股関節の可動を可能に形成することにより、股関節の柔軟性を保つものである。第3の硬い解決の使用例を
図21〜24に示す。
【0139】
従来の椅子による姿勢における課題解決を一つ一つ個別に行うのであれば、周知のストレッチ法に過ぎないが、本実施形態の椅子1は、
図18から24の使用例に示すように、凸形状を有する枕部による腰背部への接触と、肩関節および肩甲帯の伸展への可動と、股関節の外転、伸展への可動とが関連しあうことにより、同時に調整が可能であることに加え、敢えて立位や床座することなく、椅子による座位姿勢で、デスクワークを行いながら、骨格筋群の柔軟性向上を図ることができる。
【0140】
胸腰部の前屈、股関節の屈曲および膝関節の伸展へのストレッチは、これまで腰痛改善等に対する改善方法として注目されてきた。前記ストレッチは必要であるが、従来の椅子に座り続けた結果として、股関節および膝関節の屈筋群が、筋委縮および筋柔軟性の低下による可動制限を起こした状態で行うと、股関節の屈筋群の収縮が増強すると同時に、強く収縮した膝関節を伸展することにより、股関節や腰椎、胸椎に強い圧力がかかるようになる。この場合、筋肉をストレッチすることへの効果、効能を充分に得られず、股関節や腰椎、胸椎にかかる強い圧力により、身体への負担が強まる状態となり得る。そのため、股関節の可動を多方向に可能にした本実施形態の椅子1により、座位姿勢により引き起こされる筋群の収縮に対して優先にストレッチすることが重要である。
【0141】
座り心地を向上させるための従来の椅子や、姿勢を正すための従来の椅子の座部、背もたれの形状は、同じ姿勢で座り続ける事を前提にするものであり、本実施形態の椅子1は、座位姿勢において、多様な体の動きを行う事を前提にするものであり、その差を見出し、形にしたものである。
【0142】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【課題】椅子による座位姿勢で硬くなる股関節および腰背部を、椅子に座る姿勢で股関節を自由に可動できるとともに、腰背部の猫背を補正する椅子を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る椅子は、第1の方向に配置された第1の領域と第2の領域を有する座部と、座部に取り付けられ、方に伸延する支持部と、支持部に取り付けられ、背中を支持するための枕部と、支持部に取り付けられる、第1の方向と交差する第2の方向に延伸するハンドル部と、座部に取り付けられ、下方に延伸する脚部とを備える。座部は、第2の領域の周縁部に設けられた足掛部を有する。また、座部は、第2の領域と枕部との間に、下肢が挿通可能に設けられた空隙を有する。