特許第6971005号(P6971005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6971005
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】木製部品の固定保持具
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/10 20060101AFI20211111BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   F16B5/10 C
   B60J5/00 501B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2021-144886(P2021-144886)
(22)【出願日】2021年9月6日
【審査請求日】2021年9月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521393122
【氏名又は名称】土田 寿恵
(74)【代理人】
【識別番号】100211719
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 和真
(72)【発明者】
【氏名】土田 寿恵
(72)【発明者】
【氏名】土田 重斉
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−316197(JP,A)
【文献】 特開2000−002222(JP,A)
【文献】 特開2006−137062(JP,A)
【文献】 特開2009−073406(JP,A)
【文献】 実開平07−042455(JP,U)
【文献】 国際公開第2015/015857(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/10
B60J 5/00
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の対象部位に対して木製部品を固定するための木製部品の固定保持具であって、
前記木製部品に形成された所定の溝に係止可能に構成されたほぞ部を有する継手部材と、
前記継手部材を収容可能に構成され、且つ前記対象部位に固定される固定部材と、
を備え、
前記継手部材の前記ほぞ部が前記木製部品の前記溝に係止された状態において、更に該継手部材と前記固定部材とが係合されることで、前記対象部位に対して前記木製部品が固定される、
木製部品の固定保持具。
【請求項2】
前記ほぞ部は、前記木製部品に形成された蟻溝に係止可能に構成された蟻ほぞ部である、
請求項1に記載の木製部品の固定保持具。
【請求項3】
前記蟻ほぞ部は、前記継手部材の先端に向かって、
一対の面の間の距離が所定の第1方向に広がる第1蟻ほぞ部と、一対の面の間の距離が前記第1方向と略直交する第2方向に広がる第2蟻ほぞ部と、を有して構成される、
請求項2に記載の木製部品の固定保持具。
【請求項4】
前記継手部材が更に係合突起を有し、前記固定部材が係合溝を有し、該係合突起と該係合溝とが係合することで該継手部材と該固定部材とが係合される、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の木製部品の固定保持具。
【請求項5】
前記木製部品の前記溝には、前記継手部材の前記ほぞ部とともに前記固定部材の先端部が係止され、該ほぞ部及び該先端部が該溝に係止された状態において、該先端部が該ほぞ部の周囲を挟持することで該継手部材と該固定部材とが係合される、
請求項1に記載の木製部品の固定保持具。
【請求項6】
前記木製部品の前記蟻溝には、前記継手部材の前記蟻ほぞ部とともに前記固定部材の先端部が係止され、該蟻ほぞ部及び該先端部が該蟻溝に係止された状態において、該先端部が該蟻ほぞ部の周囲を挟持することで該継手部材と該固定部材とが係合される、
請求項2又は請求項3に記載の木製部品の固定保持具。
【請求項7】
前記継手部材は、その最先端である前記蟻ほぞ部の先端における一対の面の間の距離が前記木製部品の前記蟻溝における溝口の幅以下となるように形成され、
前記固定部材は、前記先端部における一対の側面間の距離が前記木製部品の前記蟻溝における溝口の幅以下となるように形成される、
請求項6に記載の木製部品の固定保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の対象部位に対して木製部品を固定するための木製部品の固定保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両ボディ用パネル(例えば、自動車ボディのフェンダーパネルやフードパネル、ドアアウターパネルなどの外装パネル)には、板金プレス板が用いられるのが一般的である。一方で、近年、市販の工業製品の意匠性を高めるべく、該工業製品の外観をユーザが自由にカスタマイズすることが行われている。
【0003】
そして、例えば、特許文献1には、車両部品を装飾するために使用される木目材としてのウッドパネルが開示されている。このウッドパネルは、基材層の一面に設けられた天然木製で木目を有する木質層と、基材層の他面に設けられた加熱雰囲気下で収縮する収縮層と、を備えている。
【0004】
また、工業製品の意匠性を高めるべく、例えば、車両ボディ用パネルを、プレス加工された金属板に代えて木質系ボード等で予め形成することが知られている。例えば、特許文献2には、天然繊維とバインダーとなる樹脂繊維の混合材等からなる複数の層を積層してなる多層構造の車両ボディ用パネルが開示されている。この技術によれば、車両の外装面を形成する第1の層と内装面を形成する第3の層が細径のラミー繊維を含んで形成されることで、外観に白色で木目の細かな意匠性が付与され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−137062号公報
【特許文献2】特開2009−73406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から、市販の工業製品の意匠性を高めるべく、ユーザが該工業製品の外観を自由に簡単にカスタマイズできる技術が望まれていた。そして、外観をカスタマイズするための材料として木部材が注目されている。このような木部材による外観装飾によれば、木目による模様や、木が有するぬくもり感、雰囲気感、質感等により高度に意匠性が高められる。ここで、特許文献2に記載の技術によれば、ラミー繊維を含んで形成される多層構造の車両ボディ用パネルによって、外観に白色で木目の細かな意匠性が付与されることで、高度に意匠性が高められるようにも思われる。しかしながら、この技術は、車両ボディ用パネルを上記の多層構造で予め形成するものである。そのため、ユーザは、車両の外観を自由に簡単にカスタマイズすることができない。
【0007】
一方、特許文献1に記載の技術によれば、ウッドパネルが、例えば、その内面に突設されたホルダーに嵌め込まれた取着ピンによって対象部位に取着され得る。そのため、既に形成された工業製品の外観がユーザによってカスタマイズされ得る。しかしながら、この技術では、ウッドパネルと取着ピンとが一体化されているため、ウッドパネルのみを自由に簡単に取替えることができない。また、特許文献1に記載の技術では、ウッドパネルが、例えば、車両のステアリングホイールに使用されるため、車両の外装パネル等の風雨に晒される部位に対する使用は想定されていない。そして、木製部品は、表面処理が施された板金プレス板と比較して風雨への耐性が低い傾向にあるため、仮に、特許文献1に記載のウッドパネルを車両の外装パネルに使用して該ウッドパネルが痛んでしまった場合には、ウッドパネルのみを容易に交換することができず、作業性や経済性が損なわれてしまう。このように、ユーザが工業製品の外観を自由に簡単にカスタマイズするための技術については、未だ改良の余地を残すものである。
【0008】
本開示の目的は、工業製品の外観を木製部品で自由に簡単に装飾するための木製部品の固定保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の木製部品の固定保持具は、所定の対象部位に対して木製部品を固定するための固定保持具である。この木製部品の固定保持具は、前記木製部品に形成された所定の溝に係止可能に構成されたほぞ部を有する継手部材と、前記継手部材を収容可能に構成され、且つ前記対象部位に固定される固定部材と、を備える。そして、前記継手部材の前記ほぞ部が前記木製部品の前記溝に係止された状態において、更に該継手部材と前記固定部材とが係合されることで、前記対象部位に対して前記木製部品が固定される。ここで、前記ほぞ部は、前記木製部品に形成された蟻溝に係止可能に構成された蟻ほぞ部であってもよい。
【0010】
ここで、工業製品の外観を木製部品で装飾するためには、該工業製品に該木製部品を直接強固に接合することも考えられる。しかしながら、この場合、木製部品の経年変化等により該木製部品の補修や交換が必要になった際に、木製部品を簡単に脱着できないことが問題となり得る。また、工業製品に木製部品をボルトやビスで締結することも考えられるが、仮に、工業製品と木製部品とを直接締結すると、木製部品の意匠面側に傷をつけてしまう虞がある。これに対して、上記の木製部品の固定保持具では、木製部品の意匠面側に傷をつけることなく、継手部材を蟻継構造を用いて木製部品に係止することができ、且つ、木製部品の板厚が比較的薄かったとしても、該木製部品に蟻溝が形成可能であれば継手部材の蟻ほぞ部をそこに係止することができる。そして、このような構造によれば、継手部材と固定部材との間の係合状態を形成したり解除したりすることで、固定部材に対する継手部材の脱着を容易に行うことができ、以て、対象部位に対する木製部品の取り付けおよび取り外しを容易にすることが可能になる。そうすると、ユーザが工業製品の外観を自由に簡単にカスタマイズすることができるとともに、その際の作業性や経済性も向上させることができる。
【0011】
ここで、本開示の木製部品の固定保持具では、上記の構成において、前記蟻ほぞ部が、前記継手部材の先端に向かって、一対の面の間の距離が所定の第1方向に広がる第1蟻ほぞ部と、一対の面の間の距離が前記第1方向と略直交する第2方向に広がる第2蟻ほぞ部と、を有して構成されてもよい。これによれば、対象部位に木製部品をレイアウトする際の自由度を向上させることができ、以て、工業製品の外観を木製部品で自由に簡単に装飾することができる。
【0012】
そして、以上に述べた木製部品の固定保持具において、前記継手部材が更に係合突起を有し、前記固定部材が係合溝を有し、該係合突起と該係合溝とが係合することで該継手部材と該固定部材とが係合されてもよい。これによれば、係合突起と係合溝との間の係合状態を形成したり解除したりすることで、固定部材に対する継手部材の脱着を容易に行うことができ、以て、対象部位に対する木製部品の取り付けおよび取り外しを容易にすることが可能になる。
【0013】
また、以上に述べた木製部品の固定保持具において、前記木製部品の前記溝には、前記継手部材の前記ほぞ部とともに前記固定部材の先端部が係止され、該ほぞ部及び該先端部が該溝に係止された状態において、該先端部が該ほぞ部の周囲を挟持することで該継手部材と該固定部材とが係合されてもよい。そして、前記木製部品の前記蟻溝には、前記継手部材の前記蟻ほぞ部とともに前記固定部材の先端部が係止され、該蟻ほぞ部及び該先端部が該蟻溝に係止された状態において、該先端部が該蟻ほぞ部の周囲を挟持することで該継手部材と該固定部材とが係合されてもよい。これによれば、固定保持具による木製部品の確実な固定保持と、固定保持具からの木製部品の容易な取り外しと、を実現することができる。更に、この場合、前記継手部材は、その最先端である前記蟻ほぞ部の先端における一対の面の間の距離が前記木製部品の前記蟻溝における溝口の幅以下となるように形成され、前記固定部材は、前記先端部における一対の側面間の距離が前記木製部品の前記蟻溝における溝口の幅以下となるように形成されてもよい。これによれば、固定保持具を木製部品に容易に取り付けることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の木製部品の固定保持具によれば、工業製品の外観を木製部品で自由に簡単に装飾することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態における木製部品の固定保持具の概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態における固定保持具を用いた、ドアハンドルに対する木製部品の固定方法を説明するための図である。
図3】継手部材の蟻ほぞ部について、第1方向に広がる第1蟻ほぞ部と第2方向に広がる第2蟻ほぞ部とを説明するための図である。
図4】第1実施形態の変形例における木製部品の固定保持具の概略構成を示す図である。
図5】第2実施形態における木製部品の固定保持具の概略構成を示す図である。
図6】第2実施形態における、木製部品の蟻溝、継手部材の蟻ほぞ部、および固定部材の先端部を用いた、継手部材と固定部材との間の係合状態の形成および解除を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0017】
<第1実施形態>
第1実施形態における木製部品の固定保持具の概要について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における木製部品の固定保持具の概略構成を示す図である。本実施形態に係る固定保持具1は、車両のドアアウターパネルに設けられたドアハンドル(本開示の対象部位)に対して木製部品を固定するための固定保持具である。
【0018】
固定保持具1は、木製部品に形成された蟻溝に係止可能に構成された継手部材10と、車両のドアハンドルに固定される固定部材20と、備える。
【0019】
継手部材10は、本体部11と、該本体部11の先端に形成された蟻ほぞ部12と、該本体部11の一の側面から突出するように形成された係合突起13と、を有する。ここで、蟻ほぞ部12は、例えば、木造建築物における横断面矩形状の梁材を相互に蟻継するために用いられる蟻ほぞ構造と同様の機能を有する継手構造であって、木製部品に形成された蟻溝に係止可能に構成される。なお、このような継手部材10は、例えば、樹脂材料によって形成される。そうすると、樹脂材料が有する延性によって、継手部材10と木製部品とが強固に接合され得る。また、継手部材10を樹脂材料で形成することで、比較的容易に継手部材10を製造することが可能になり、生産性とコストにおいても利点がある。更に、この場合、継手部材10が、好ましくはエンジニアリングプラスチックによって形成されることで、該継手部材10に所定の機械的特性や環境耐性が付与され得る。ただし、継手部材10の材料をこれに限定する意図はなく、継手部材10は、その機能を満足し得る他の材料によって形成されてもよい。
【0020】
固定部材20は、本体部21と、該本体部21に形成された空間であって継手部材10を収容可能に構成された収容部22と、該本体部21の一の側面に形成された係合溝23と、を有する。なお、固定部材20には、後述するように、該固定部材20をドアハンドルに固定するために用いられる固定部が設けられ得る。また、このような固定部材20も、例えば、樹脂材料によって形成され得る。そうすると、比較的容易に固定部材20を製造することが可能になり、生産性とコストにおいて利点がある。
【0021】
そして、このような継手部材10および固定部材20は、継手部材10の蟻ほぞ部12が木製部品の蟻溝に係止された状態において、更に該継手部材10と固定部材20とが係合されることで、ドアハンドルに対して木製部品が固定される。
【0022】
本実施形態では、継手部材10の係合突起13と、固定部材20の係合溝23と、が係合することで、該継手部材10と該固定部材20とが係合される。
【0023】
ここで、本実施形態における、ドアハンドルに対する木製部品の固定方法について、図2に基づいて説明する。図2は、本実施形態における固定保持具1を用いた、ドアハンドルに対する木製部品の固定方法を説明するための図である。図2に例示する固定方法では、継手部材10と固定部材20とが係合される前に、継手部材10が木製部品に係止され、固定部材20がドアハンドルに固定される。
【0024】
図2(a)は、継手部材10が木製部品に係止される態様を説明するための図である。継手部材10は、蟻ほぞ部12が図2(a)に示す矢印の方向に嵌め込まれることで、木製部品に係止される。ここで、工業製品の外観を木製部品で装飾するためには、該工業製品に該木製部品を直接強固に接合することも考えられる。しかしながら、この場合、木製部品の経年変化等により該木製部品の補修や交換が必要になった際に、木製部品を簡単に脱着できないことが問題となり得る。また、工業製品に木製部品をボルトやビスで締結することも考えられるが、仮に、工業製品と木製部品とを直接締結すると、木製部品の意匠面側に傷をつけてしまう虞がある。
【0025】
そこで、本開示人は鋭意検討を行った結果、木造建築物において使用される蟻継構造を用いることで、木製部品の意匠面側に傷をつけることなく、工業製品の外観を木製部品で装飾できることを見出した。図2(a)に示す態様によれば、木製部品の意匠面側に傷をつけることなく、継手部材10を該木製部品に係止することができ、且つ、木製部品の板厚が比較的薄かったとしても、該木製部品に蟻溝が形成可能であれば継手部材10の蟻ほぞ部12をそこに係止することができる。そして、このような蟻溝は、木造建築物において使用される専用のビット等を用いて容易に形成され得る。また、このような蟻継構造によって係止された継手部材10は、蟻溝に沿って力が加えられることで、木製部品に対して脱着可能に構成される。
【0026】
図2(b)は、固定部材20がドアハンドルに固定される態様を説明するための図である。図2に例示する方法では、固定部材20がドアハンドルに対してボルト締結されることで、該固定部材20が該ドアハンドルに固定される。ここで、固定部材20には、固定部として、上記のボルト締結のためのボルト穴および座面が設けられている。ただし、固定部をこのような構造に限定する意図はなく、固定部材20をドアハンドルに固定できる構造であれば固定部の種類は問わない。
【0027】
図2(c)、図2(d)は、継手部材10と固定部材20とが係合されることで、ドアハンドルに対して木製部品が固定される態様を説明するための図であって、図2(d)は、このときの固定保持具1の縦断面を示す図である。図2(c)に示すように、木製部品に係止された継手部材10と、ドアハンドルに固定された固定部材20と、が係合されることで、ドアハンドルに対して木製部品が固定される。このとき、図2(d)に示すように、継手部材10の係合突起13と、固定部材20の係合溝23と、が係合する。詳しくは、継手部材10の本体部11には切欠き部14が形成されていて、係合突起13が設けられた本体部11の一の側面が該切欠き部14に向かって変形可能に構成されている。そうすると、継手部材10の本体部11が固定部材20の収容部22に挿入されていくときに、継手部材10の係合突起13が該収容部22の壁面から押圧されることになり、該係合突起13が設けられた上記の側面が切欠き部14に向かって変形する。そして、継手部材10の本体部11が固定部材20の収容部22に更に挿入されると、継手部材10の係合突起13が固定部材20の係合溝23に嵌まることで、継手部材10と固定部材20とが係合されることになる。
【0028】
そして、このようにして、木製部品に係止された継手部材10と、ドアハンドルに固定された固定部材20と、が係合されることで、ドアハンドルに対して木製部品が固定されることになる。また、図2(d)に示すように、継手部材10の係合突起13は、固定部材20の係合溝23を貫通するように嵌まっているため、該係合突起13が切欠き部14に向かって変形する方向に押し込まれると、該係合突起13と該係合溝23との係合状態が解除される。そうすると、固定部材20から継手部材10を引き抜くことが可能になり、以て、木製部品をドアハンドルから取り外すことができる。なお、上述したように、蟻溝に沿って力が加えられることで木製部品が取り外されてもよい。
【0029】
このような固定保持具1によれば、係合突起13と係合溝23との間の係合状態を形成したり解除したりすることで、固定部材20に対する継手部材10の脱着を容易に行うことができ、以て、ドアハンドルに対する木製部品の取り付けおよび取り外しを容易にすることが可能になる。そうすると、ユーザが車両の外観を自由に簡単にカスタマイズすることができるとともに、その際の作業性や経済性も向上させることができる。
【0030】
ここで、上述した継手部材10の蟻ほぞ部12は、該継手部材10の先端に向かって、一対の面の間の距離が所定の第1方向に広がる第1蟻ほぞ部12aと、一対の面の間の距離が第1方向と略直交する第2方向に広がる第2蟻ほぞ部12bと、を有して構成されてもよい。これについて、図3に基づいて説明する。
【0031】
図3は、継手部材10の蟻ほぞ部12について、第1方向に広がる第1蟻ほぞ部12aと第2方向に広がる第2蟻ほぞ部12bとを説明するための図である。図3(a)に示すように、第1方向は、係合突起13が設けられた本体部11の一の側面の平面視における横方向であって、第2方向は、上記面の側面視における横方向である。そして、第1蟻ほぞ部12aは、継手部材10の先端に向かって、一対の面の間の距離が上記の第1方向に広がるように形成され、第2蟻ほぞ部12bは、継手部材10の先端に向かって、一対の面の間の距離が上記の第2方向に広がるように形成されている。
【0032】
そうすると、図3(b)に示すように、蟻溝が、木製部品の長手方向に形成されていても該長手方向と直交する方向に形成されていても、継手部材10の係合突起13を同一の方向に向けたまま該継手部材10を木製部品に係止することができる。これによれば、ドアハンドルに木製部品をレイアウトする際の自由度を向上させることができる。
【0033】
以上に述べた固定保持具1によれば、工業製品の外観を木製部品で自由に簡単に装飾することができる。
【0034】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態の変形例における木製部品の固定保持具について、図4を参照しながら説明する。図4は、本変形例における木製部品の固定保持具の概略構成を示す図である。本変形例においても、継手部材10の係合突起13と、固定部材20の係合溝23と、が係合することで、該継手部材10と該固定部材20とが係合される。
【0035】
ここで、本変形例に係る固定保持具1では、図4に示すように、継手部材10が、固定部材20の長手方向に対して斜めにスライドしながら(これは、図4における矢印によって表される。)、該固定部材20の収容部22に挿入される。そして、継手部材10の係合突起13が固定部材20の係合溝23に嵌まることで、継手部材10と固定部材20とが係合されることになる。
【0036】
そして、本変形例に係る固定保持具1では、継手部材10と固定部材20とによって、蟻継構造におけるほぞ側が構成される。つまり、木製部品の蟻溝には、継手部材10の蟻ほぞ部12だけでなく、固定部材20の先端も係止される。詳しくは、木製部品の蟻溝に継手される固定保持具1における蟻ほぞが、上記の斜めのスライド線に沿って切断された継手部材10の本体部11の先端に形成された蟻ほぞ部12と、該継手部材10の本体部11を斜めにスライドせしめる土台を構成する固定部材20の先端と、で分割されていて、これらが木製部品の蟻溝に係止されることになる。
【0037】
このような固定保持具1によれば、上記の土台を構成する固定部材20の先端に継手部材10を乗せた状態において、木製部品の蟻溝に向かって略垂直に(該蟻溝の溝底面に略垂直な方向に)固定保持具1を挿入することができる。そして、この状態において固定保持具1の固定部材20が蟻溝に向かって押し込まれると、継手部材10が斜めにスライドしながら該固定部材20の収容部22に挿入されるとともに、該固定部材20の先端が該蟻溝に挿入されていくことになる。そうすると、継手部材10の蟻ほぞ部12および固定部材20の先端が木製部品の蟻溝に係止されることになる。これによれば、固定保持具1を木製部品に容易に取り付けることが可能になる。
【0038】
<第2実施形態>
第2実施形態における木製部品の固定保持具について、図5および図6を参照しながら説明する。図5は、本実施形態における木製部品の固定保持具の概略構成を示す図である。上記の第1実施形態では、継手部材10の係合突起13と、固定部材20の係合溝23と、が係合することで、該継手部材10と該固定部材20とが係合される例について説明した。これに対して、本実施形態では、継手部材10の蟻ほぞ部12及び固定部材20の先端部24が木製部品の蟻溝に係止された状態において、該先端部24が該蟻ほぞ部12の周囲を挟持することで該継手部材10と該固定部材20とが係合される例について説明する。
【0039】
ここで、本実施形態における固定部材20では、図5に示すように、その先端部24に切欠き24aが形成されている。そうすると、後述するように、固定部材20の先端部24が、該固定部材20の収容部22に収容された継手部材10の蟻ほぞ部12に沿って外側に変形可能に構成されることになる。なお、本実施形態では、上述した第1実施形態とは異なり、継手部材10、固定部材20に、係合突起13、係合溝23が設けられていない。
【0040】
そして、このように先端部24が形成された固定部材20は、継手部材10の蟻ほぞ部12とともに木製部品の蟻溝に係止される。これについて、図6に基づいて説明する。
【0041】
図6は、本実施形態における、木製部品の蟻溝、継手部材10の蟻ほぞ部12、および固定部材20の先端部24を用いた、継手部材10と固定部材20との間の係合状態の形成および解除を説明するための図である。本実施形態では、図6(a)に示すように、継手部材10を固定部材20の収容部22に途中まで収容した状態において、木製部品の蟻溝に向かって矢印の方向(該蟻溝の溝底面に略垂直な方向)に固定保持具1を挿入することができる。なお、継手部材10を固定部材20の収容部22に途中まで収容した上記の状態では、未だ該固定部材20の先端部24が継手部材10の蟻ほぞ部12に沿って外側に変形していない。
【0042】
ここで、図6(a)に示すように、固定部材20の先端部24における一対の側面間の距離d2、または継手部材10の蟻ほぞ部12の先端における一対の面の間の距離d2が、木製部品の蟻溝における溝口の幅d1以下となるように、固定保持具1が構成されてもよい。これによれば、固定保持具1を木製部品に容易に取り付けることが可能になる。
【0043】
そして、継手部材10を固定部材20の収容部22に途中まで収容した上記の状態において木製部品の蟻溝に挿入された固定保持具1の固定部材20が、更に該蟻溝に向かって押し込まれると、該固定部材20の先端部24が、継手部材10の蟻ほぞ部12に沿って外側に変形しながら該蟻溝に挿入されていくことになる。そうすると、図6(b)に示すように、継手部材10の蟻ほぞ部12および固定部材20の先端部24が木製部品の蟻溝に係止されることになる。このとき、継手部材10の蟻ほぞ部12の周囲が固定部材20の先端部24によって挟持されることで、該継手部材10と該固定部材20とが係合される。本実施形態に係る固定保持具1では、このように、木製部品に対する容易な取付と木製部品の確実な固定保持とが実現され得る。
【0044】
また、このようにして木製部品の蟻溝に係止された継手部材10の蟻ほぞ部12および固定部材20の先端部24は、固定部材20が該蟻溝から引き抜かれる方向に力が加えられることで、比較的容易に取り外すことができる。図6(c)に示すように、固定部材20が木製部品の蟻溝から引き抜かれる方向に力が加えられると(矢1)、該固定部材20の先端部24が、蟻溝の溝側面から押圧され内側に変形する(元の形状に戻る)ように力を発生させる(矢2)。そうすると、継手部材10の蟻ほぞ部12のテーパ面に横方向から力が与えられることになり、該テーパ面に対する入力によって継手部材10を縦方向に移動せしめる矢3の方向の力が木製部品に加えられることになる。そして、木製部品がこのようにして継手部材10から押圧されることで、固定保持具1から木製部品を比較的容易に取り外すことが可能になる。
【0045】
以上に述べた固定保持具1によっても、工業製品の外観を木製部品で自由に簡単に装飾することができる。
【0046】
<その他の変形例>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。上記の実施形態では、車両のドアハンドルに対して木製部品を固定する例について説明したが、本開示の固定保持具1は、その他の対象部位に対して木製部品を固定するために用いられてもよい。この場合、本開示の固定保持具1は、例えば、住居の室内外の装飾のための木製部品の固定保持に用いられてもよい。
【0047】
また、上記の実施形態では、蟻継構造によって対象部位に対して木製部品が固定される例を説明したが、木製部品に形成される所定の溝は蟻溝に限定されず、例えば、溝底に対して溝口が絞られた袋形状の溝であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1・・・・・固定保持具
10・・・・継手部材
11・・・・本体部
12・・・・蟻ほぞ部
20・・・・固定部材
21・・・・本体部
22・・・・収容部
【要約】
【課題】工業製品の外観を木製部品で自由に簡単に装飾する。
【解決手段】本開示の木製部品の固定保持具1は、所定の対象部位に対して木製部品を固定するための固定保持具である。この木製部品の固定保持具1は、木製部品に形成された蟻溝に係止可能に構成された蟻ほぞ部12を有する継手部材10と、継手部材10を収容可能に構成され、且つ対象部位に固定される固定部材20と、を備える。そして、継手部材10の蟻ほぞ部12が木製部品の蟻溝に係止された状態において、更に該継手部材10と固定部材20とが係合されることで、対象部位に対して木製部品が固定される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6