(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外界の空間認識により空間認識情報を取得する外界空間認識装置と、位置情報を含んだ環境情報を取得する環境情報取得装置と、を搭載した車両に通信ネットワークを介して接続され、前記外界空間認識装置の異常を検出する異常検出装置であって、
前記車両から送信される前記外界空間認識装置により取得された空間認識情報と前記空間認識情報が取得されたときに前記環境情報取得装置により取得された環境情報とを含んだ情報を受信する対車両通信部と、
前記対車両通信部を介して受信された前記空間認識情報と前記環境情報とを含んだ情報に基づき、前記空間認識情報が取得されたときの前記外界空間認識装置による空間認識の成否を判定する空間認識成否判定部と、
前記空間認識成否判定部により空間認識に失敗したと判定された空間認識情報について、その空間認識の失敗が予め設定された環境依存空間認識失敗の類型条件のいずれの類型条件に該当するかを判定して、環境依存空間認識失敗の類型を分類する環境依存認識失敗分類部と、
前記空間認識成否判定部により空間認識に失敗したと判定された空間認識情報のうち、前記環境依存認識失敗分類部により前記環境依存空間認識失敗の類型のいずれの類型条件にも該当しないと判定された空間認識情報を、前記外界空間認識装置の異常検出に利用する異常検出部と、
を備え、
前記類型条件は、
トンネルの出口という環境の前提において、前記トンネルの出口の画像の周辺部の平均輝度が所定の閾値よりも小さいという条件を含むこと、
を特徴とする異常検出装置。
前記空間認識成否判定部により空間認識に失敗したと判定された空間認識情報と、その空間認識情報が取得されたときに前記環境情報取得装置により取得された環境情報と、を対応づけた情報を認識失敗情報として蓄積する認識失敗情報蓄積部と、
前記認識失敗情報蓄積部に蓄積された認識失敗情報を用いて、前記環境依存空間認識失敗の類型を判定するための類型条件を学習し、更新する環境依存認識失敗類型学習部と、
をさらに備えること
を特徴とする請求項1に記載の異常検出装置。
外界の空間認識により空間認識情報を取得する外界空間認識装置と、位置情報を含んだ環境情報を取得する環境情報取得装置と、を備えた車両に搭載され、前記外界空間認識装置の異常を検出する異常検出装置であって、
前記外界空間認識装置により取得された空間認識情報と、前記空間認識情報が取得されたときに前記環境情報取得装置により取得された位置情報を含む環境情報とに基づき、前記外界空間認識装置による空間認識の成否を判定する空間認識成否判定部と、
前記空間認識成否判定部により空間認識に失敗したと判定された空間認識情報について、その空間認識の失敗が予め設定された環境依存空間認識失敗の類型条件のいずれの類型条件に該当するかを判定して、環境依存空間認識失敗の類型を分類する環境依存認識失敗分類部と、
前記空間認識成否判定部により空間認識に失敗したと判定された空間認識情報のうち、前記環境依存認識失敗分類部により前記環境依存空間認識失敗の類型のいずれの類型条件にも該当しないと判定された空間認識情報を、前記外界空間認識装置の異常検出に利用する異常検出部と、
を備え、
前記類型条件は、
トンネルの出口という環境の前提において、前記トンネルの出口の画像の周辺部の平均輝度が所定の閾値よりも小さいという条件を含むこと、
を特徴とする異常検出装置。
外界の空間認識により空間認識情報を取得する外界空間認識装置と、位置情報を含んだ環境情報を取得する環境情報取得装置と、を搭載した車両に通信ネットワークを介して接続されたコンピュータにより、前記外界空間認識装置の異常を検出する異常検出方法であって、
前記コンピュータは、
前記車両から送信される前記外界空間認識装置により取得された空間認識情報と前記空間認識情報が取得されたときに前記環境情報取得装置により取得された環境情報とを含んだ情報を受信する第1のステップと、
前記第1のステップで受信された前記空間認識情報と前記環境情報とを含んだ情報に基づき、前記空間認識情報が取得されたときの前記外界空間認識装置による空間認識の成否を判定する第2のステップと、
前記第2のステップで空間認識に失敗したと判定された空間認識情報について、その空間認識の失敗が予め設定された環境依存空間認識失敗の類型条件のいずれの類型条件に該当するかを判定して、環境依存空間認識失敗の類型を分類する第3のステップと、
前記第2のステップで空間認識に失敗したと判定された空間認識情報のうち、前記第3のステップで前記環境依存空間認識失敗の類型のいずれの類型条件にも該当しないと判定された空間認識情報を、前記外界空間認識装置の異常検出に利用する第4のステップと、
を実行し、
前記類型条件は、
トンネルの出口という環境の前提において、前記トンネルの出口の画像の周辺部の平均輝度が所定の閾値よりも小さいという条件を含むこと、
を特徴とする異常検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面において、共通する構成要素には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る異常検出装置1の構成の例およびその異常検出装置1が適用される全体システムの構成の例を示した図である。
図1に示すように、異常検出装置1は、インターネットなどの通信ネットワーク3および携帯電話通信網などの基地局4を介して、走行中の複数の車両5それぞれに搭載された通信装置53に接続されている。なお、このように通信装置53を備え、通信ネットワーク3を介して上位のいわゆるクラウドシステムに接続されている車両5は、しばしばコネクティッドカーと呼ばれる。
【0016】
本実施形態では、コネクティッドカーである車両5は、通信装置53の他に外界空間認識装置51および環境情報取得装置52を備えている。
【0017】
外界空間認識装置51は、車両5の外界の様子を認識すなわち空間認識をするカメラやレーザレーダなどの空間認識センサにより構成され、車両5の周囲に位置する他の車両や歩行者、障害物、道路標識、車線などを認識する。なお、外界空間認識装置51は、1つの空間認識センサからなるものに限定されず、複数または複数種の空間認識センサからなるものであってもよい。
【0018】
環境情報取得装置52は、GPS(Global Positioning System)受信器、方位センサ、振動センサ、降雨センサなど複数種のセンサによって構成される。そして、これらのセンサにより、車両5の位置情報(緯度、経度など)、走行方向の情報、路面状況、天気情報(降雨、降雪など)、走行位置に関する属性情報(トンネル走行中など)などの環境情報を取得する。なお、本明細書では、外界空間認識装置51によって取得される情報を空間認識情報と総称し、環境情報取得装置52によって取得される情報(位置情報を含む)を環境情報と総称する。
【0019】
通信装置53は、外界空間認識装置51によって取得される空間認識情報、環境情報取得装置52によって取得される環境情報、および、これらの統計情報などからなる情報を、車両5の空間認識・環境情報として通信ネットワーク3を介して異常検出装置1へ送信する。異常検出装置1は、車両5から送信された空間認識・環境情報に基づき、車両5に搭載された外界空間認識装置51の異常を検出する。
【0020】
異常検出装置1は、対車両通信部11、空間認識成否判定部12、環境依存認識失敗分類部13、異常検出部14、管理者端末IF部15、環境依存認識失敗類型学習部16、空間認識失敗位置表示部17などの機能処理に係るブロックを備える。さらに、異常検出装置1は、空間認識・環境情報記憶部21、高精度地図記憶部22、認識失敗情報蓄積部23、環境依存認識失敗類型記憶部24などの記憶機能に係るブロックを備える。以下、これらのブロックの処理内容や構成について、
図1に加え
図2以下の図面も参照しつつ説明する。
【0021】
なお、以上のような構成を有する異常検出装置1は、演算処理装置と記憶装置とを備えたコンピュータによって実現することができる。すなわち、異常検出装置1を構成する前記の機能処理に係るブロックの機能は、前記コンピュータの演算処理装置が記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。また、前記の記憶機能に係るブロックは、前記記憶装置上に実現される。
【0022】
(1)対車両通信部11および空間認識・環境情報記憶部21
対車両通信部11は、車両5の通信装置53から送信される空間認識・環境情報を受信し、受信した空間認識・環境情報を空間認識・環境情報記憶部21に一時記憶する。
【0023】
図2は、空間認識・環境情報記憶部21に記憶される空間認識・環境情報の構成の例を示した図である。
図2に示すように、空間認識・環境情報は、例えば、「認識日時」、「車両ID」、「車種」、「センサ種別」、「空間認識情報」、「車両位置情報」、「道路環境情報」などの項目によって構成される。
【0024】
ここで、「空間認識情報」は、車両5の外界空間認識装置51による空間認識によって取得された、例えば、「前方60mに先行車両あり」、前方100mに道路標識あり」などの情報をいう。あるいは、「空間認識情報」は、カメラによる撮影画像そのものであってもよい。また、「センサ種別」は、前記「空間認識情報」を取得したステレオカメラ、単眼カメラ、ミリ波レーダ、レーザレーダなどの空間認識センサの種別をいう。従って、「センサ種別」と「空間認識情報」とは互いに対応付けられた組の情報といえるが、1つの空間認識・環境情報の中に「センサ種別」と「空間認識情報」との組が複数含まれていてもよい。
【0025】
「車両位置情報」、「道路環境情報」は、車両5の環境情報取得装置52により取得された環境情報である。環境情報としては、この他にも「走行方向情報」、「天気情報」、「路面情報」など様々な情報が含まれる。なお、これらの環境情報は、「空間認識情報」が取得されたタイミングとほぼ同じタイミング取得されるものとする。
【0026】
「認識日時」は、当該空間認識・環境情報に含まれる「空間認識情報」が取得された日時を表した情報である。また、「車両ID」は、当該空間認識・環境情報を送信した通信装置53を搭載した車両5をユニークに識別する情報である。また、「車種」は、「大型乗用車」、「小型乗用車」など車両5の大きさを表す情報や、「セダン」、「ワンボックス」など車両5の形状などを表す情報である。
【0027】
(2)高精度地図記憶部22
図3は、高精度地図記憶部22に記憶されている高精度地図情報の一部であるオブジェクト位置情報の構成の例を示した図である。
図3に示すように、高精度地図情報のオブジェクト位置情報は、車両5の外界空間認識装置51が認識すべき対象(交通標識など:以下、オブジェクトという)を、そのオブジェクトが設置された位置情報に対応付けた情報である。例えば、オブジェクト位置情報は、「道路名称」、「リンクID」、「車線」、「オブジェクトID」、「オブジェクト種別」、「オブジェクト位置情報」などの項目によって構成される。
【0028】
ここで、「オブジェクトID」は、車両5の外界空間認識装置51が認識すべきオブジェクトを識別する情報、「オブジェクト種別」は、その種別を表す情報(例えば、交通標識の種別など)である。また、「オブジェクト位置情報」は、当該オブジェクトが設置された位置を表す情報、「リンクID」は、当該オブジェクトが設置されている道路の識別情報、「車線」は、当該オブジェクトが認識される車線の識別情報である。なお、リンクとは、交差点と交差点または交差点と分岐点をつなぐ道路部分をいい、「道路名称」は、そのリンクが属する国道、県道などの名称をいう。
【0029】
本実施形態では、以上のような構成を有する高精度地図情報のオブジェクト位置情報は、予め、高精度地図記憶部22に記憶されているものとする。
【0030】
(3)空間認識成否判定部12
空間認識成否判定部12(
図1参照)は、車両5から送信された空間認識・環境情報と、高精度地図記憶部22に記憶されている高精度地図情報に基づき、車両5の外界空間認識装置51により認識された空間認識情報が正しく認識されたものであるか否かを判定する。言い換えれば、外界空間認識装置51が空間認識に成功しているかまたは失敗しているかを判定する。
【0031】
図4は、空間認識成否判定部12による空間認識成否判定の処理フローの例を示した図である。
図4に示すように、空間認識成否判定部12は、まず、車両5から送信される空間認識・環境情報を、対車両通信部11を介して受信する(ステップS11)。続いて、空間認識成否判定部12は、前記受信した空間認識・環境情報(
図2参照)の中から空間認識情報、車両位置情報、走行方向情報(ただし、
図2では図示省略)を取得する(ステップS12)。
【0032】
次に、空間認識成否判定部12は、車両5の車両位置情報、走行方向情報に基づき、高精度地図記憶部22を参照して、前記車両位置情報が表す位置から認識可能な交通標識などのオブジェクトを抽出する(ステップS13)。続いて、空間認識成否判定部12は、前記取得した空間認識情報において前記抽出したオブジェクトが認識されているか否かを判定する(ステップS14)。そして、前記抽出したオブジェクトが認識されていないと判定された場合には(ステップS14でNo)、空間認識成否判定部12は、さらに、前記抽出したオブジェクトと車両5との間に他のオブジェクトが認識されているか否かを判定する(ステップS15)。
【0033】
そして、ステップS15で前記抽出したオブジェクトと車両5との間に他のオブジェクトが認識されていないと判定された場合には(ステップS15でNo)、当該空間認識情報は、空間認識に失敗した空間認識情報であると判定される(ステップS16)。なお、空間認識に失敗した空間認識情報およびそれに付随する環境情報は、認識失敗情報として認識失敗情報蓄積部23(
図1参照)に蓄積される。
【0034】
一方、ステップS14で前記抽出したオブジェクトが認識されていると判定された場合には(ステップS14でYes)、当該空間認識情報は、空間認識に成功した空間認識情報であると判定される(ステップS17)。また、ステップS15で前記抽出したオブジェクトと車両5との間に他のオブジェクトが認識されていると判定された場合にも(ステップS15でYes)、当該空間認識情報は、空間認識に成功した空間認識情報であると判定される(ステップS17)。
【0035】
ステップS15でYesとなるケースは、例えば、先行車両が大型バスなどであって、その大型バスの前方にある交通標識が認識できないような場合に生じる。このようなケースで取得された空間認識情報は、空間認識に成功したものであると判断される。
【0036】
図5は、車両5に搭載された外界空間認識装置51で撮影された前方撮影画像6の例を示した図である。なお、この場合の外界空間認識装置51はステレオカメラであり、この前方撮影画像6の中には、先行車両61、道路標識62、車線63,64、65などが認識されている。この
図5のケースでは、
図4のステップS13において、高精度地図から認識可能なオブジェクトとして道路標識62が抽出される。従って、ステップS14で前方撮影画像6の中に道路標識62が認識されず、さらに、ステップS15で車両5(自車)と道路標識62との間に道路標識62を遮るような他のオブジェクトが認識されていない場合には、ステップS16で道路標識62の空間認識に失敗したと判定される。
【0037】
なお、空間認識成否判定部12による空間認識成否判定は、
図4に示した処理フローに限定されない。高精度地図情報に記憶されているオブジェクトを用いないで空間認識の成否を判定することもできる。例えば、交差点でない道路を所定の速度以上で走行中に、それまで認識されていた先行車両が突然認識されなくなったような場合、そのとき得られた空間認識情報は、空間認識に失敗した情報と判定することができる。
【0038】
また、車両5で取得された空間認識情報を、前後を走行する他の車両5で取得された空間認識情報と比較することによっても、外界空間認識装置51による空間認識の失敗を判定することができる。ただし、これは、前後を走行する他の車両5も
図1に示した構成を有するコネクティドカーである場合に限定される。このような場合、本実施形態に係る異常検出装置1は、複数の車両5の外界空間認識装置51により、時刻はわずかに相違するが、同じ道路位置の複数の空間認識情報、例えば前方撮影画像6を得ることができる。
【0039】
そこで、ある車両5で得られた前方撮影画像6を、例えば前後を走行する他の車両5で得られた前方撮影画像6と比較する。そして、前後を走行する他の2台の車両5で得られた前方撮影画像6において、例えば路上駐車車両が認識されているのに、当該車両5で得られた前方撮影画像6では、その路上駐車車両が認識されていない場合を考える。このような場合、多数決の原理に従い、当該車両5の外界空間認識装置51は、空間認識に失敗したと判定することができる。
【0040】
(4)認識失敗情報蓄積部23
図6は、認識失敗情報蓄積部23に蓄積される認識失敗情報の構成の例を示した図である。
図6に示すように、認識失敗情報は、例えば「認識日時」、「車両ID」、「車種」、「センサ種別」、「空間認識情報」、「車両位置情報」、「道路環境情報」、「・・・」、「失敗類型」などの項目によって構成される。この構成は、
図2に示した空間認識・環境情報の構成に「失敗類型」を追加したものである。
【0041】
ここで、「失敗類型」は、環境依存の空間認識失敗の類型を表した情報であり、この情報は、環境依存認識失敗分類部13で記入される。「失敗類型」については、次の
図7で説明する。
【0042】
(5)環境依存認識失敗類型記憶部24
図7は、環境依存認識失敗類型記憶部24に記憶される環境依存認識失敗類型情報の構成の例を示した図である。環境依存認識失敗類型情報は、環境に依存して空間認識に失敗した空間認識情報をいくつかの類型に分類するための情報である。
図7に示すように、環境依存認識失敗類型情報は、「失敗類型」、「失敗環境情報」、「センサ種別」、「類型条件」、「発生頻度」、「車種」などの項目によって構成される。
【0043】
ここで、「失敗類型」は、環境依存認識失敗の類型を識別する情報であり、文字や数字の羅列であっても名称であってもよい。また、「失敗環境情報」は、環境依存認識失敗が生じたときの環境情報の特徴を表した情報であり、緯度、経度で特定される位置情報、特定のエリア、トンネルなどの走行環境を表す情報、晴れ、雨などの天候などの情報が格納される。また、「センサ種別」は、環境依存空間認識に失敗した空間認識センサの種別を表す情報であり、ステレオカメラ、単眼カメラ、ミリ波レーダなど空間認識センサの名称などが格納される。
【0044】
「類型条件」は、空間認識成否判定部12により空間認識に失敗したと判定された空間認識情報について、その空間認識の失敗がいずれの環境依存認識失敗の類型に属するのか否かを判定する条件を表した情報である。なお、この「類型条件」として用いられる判定モデルは、システム管理者が認識失敗情報蓄積部23に蓄積された認識失敗情報を解析した結果に基づき予め設定する。そして、異常検出装置1を含む
図1に示した全システムが稼働した後には、この「類型条件」で用いられる判定モデルは、適宜、環境依存認識失敗類型学習部16によって更新される。
【0045】
また、「発生頻度」は、当該環境依存認識「失敗類型」が発生した頻度を表す統計情報であり、適宜、環境依存認識失敗類型学習部16によって算出される。また、「車種」は、当該環境依存認識失敗類型が発生した車種を特定する情報であり、これにより、当該環境依存認識失敗類型がどのような車種で多く発生していることなどが分かる。
【0046】
さらに、環境依存認識失敗類型情報の項目として、外界空間認識装置51を構成する空間認識装置のハードウエアのメーカ名、型式番号、バージョン番号、制御プログラムのバージョン番号などが設けられていてもよい。なお、その場合、これらの情報は、車両5から送信される空間認識・環境情報の中に含まれておく必要があることはいうまでもない。
【0047】
図8は、
図7の「類型条件」として用いられる判定モデルの例を示した図である。ここでは、長いトンネルを走行して出口にさしかかったときにステレオカメラなどで発生する環境依存認識失敗を判定する判定モデルを例に説明する。車両5が長いトンネルを走行しているときには、ステレオカメラから得られる撮影画像の輝度は全般的に小さくなる。その後、トンネルの出口が見えてきたときには、その出口に差し込む強い太陽光のため、撮影画像の中心部に露光が合わせられると、中心部が白とび、周辺部が黒つぶれとなり、視差が得られず空間認識に失敗することがある。
【0048】
そこで、長いトンネル走行して出口にさしかかった車両5のステレオカメラにより過去に得られた撮影画像(空間認識情報)について、その画像周辺部の平均輝度と画像中心部の平均輝度との関係を求めると、
図8のような散布図で表されることが分かった。なお、
図8の散布図において、横軸は、画像周辺部の平均輝度、縦軸は、画像中心部の平均輝度であり、白丸印は、空間認識成功、黒丸印は、空間認識失敗を表している。
【0049】
図8のグラフによれば、長いトンネルを走行して出口にさしかかったとき、ステレオカメラで発生する空間認識失敗は、画像中心部の平均輝度には依存せず、画像周辺部の平均輝度がある閾値Lthより小さくなったときに生じていることが分かる。そこで、この場合には、この「失敗類型」の「類型条件」の判定モデルとして、例えば、画像周辺部の平均輝度が所定の閾値Lthより小さいという条件を採用することができる。
【0050】
以上の例のように、「類型条件」の判定モデルは、外界空間認識装置51の検出値や環境情報取得装置52の検出値などの相互の相関関係を表す不等式およびその不等式に含まれるパラメータによって表されるのが好ましい。なお、ここでいう外界空間認識装置51の検出値は、ステレオカメラなど空間認識センサの出力値(画像の輝度)などであり、環境情報取得装置52の検出値は、GPS受信器が出力する位置情報などである。
【0051】
(6)環境依存認識失敗分類部13
環境依存認識失敗分類部13は、空間認識成否判定部12により空間認識に失敗したと判定された空間認識情報について、その空間認識の失敗が予め設定された環境依存認識失敗類型のいずれの類型条件に該当するかを判定して分類する。そして、その分類時には、環境依存認識失敗類型に関する情報は、前記した環境依存認識失敗類型記憶部24に予め記憶されている。
【0052】
図9は、環境依存認識失敗分類部13による環境依存認識失敗分類の処理フローの例を示した図である。環境依存認識失敗分類部13は、空間認識成否判定部12で空間認識失敗と判定された認識失敗情報を取得する(ステップS21)。なお、ここでいう認識失敗情報は、
図6に示したように、車両5から送信された空間認識・環境情報と実質的には同じものである。
図6では、空間認識・環境情報に失敗類型が追加されているが、その追加は、この環境依存認識失敗分類処理の最後に行われる。
【0053】
次に、環境依存認識失敗分類部13は、前記認識失敗情報により特定されるセンサ種別および環境情報を、各環境依存認識失敗類型と比較する(ステップS22)。すなわち、認識失敗情報により特定されるセンサ種別および環境情報を、各環境依存認識失敗類型情報で特定される失敗環境、センサ種別および類型条件と比較する。なお、ここでいう認識失敗情報により特定される環境情報には、その認識失敗情報に含まれる空間認識情報、例えば、ステレオカメラなどで取得された前方撮影画像6(
図5参照)などから導出される画像の所定の領域の平均輝度なども含まれるものとする。
【0054】
次に、環境依存認識失敗分類部13は、認識失敗情報により特定されるセンサ種別および環境情報がいずれかの環境依存認識失敗類型に該当しているか否かを判定する(ステップS23)。その判定の結果、いずれかの環境依存認識失敗類型に該当していると判定された場合には(ステップS23でYes)、当該認識失敗情報に含まれる空間認識情報が取得されたときの空間認識は、環境に依存した空間認識失敗であったと判定される(ステップS24)。そして、その認識失敗情報は、該当した環境依存認識失敗類型に分類され(ステップS25)、その失敗類型の情報は、認識失敗情報(
図6参照)の「失敗類型」の欄に記入される。
【0055】
一方、いずれかの環境依存認識失敗類型にも該当していないと判定された場合には(ステップS23でNo)、当該認識失敗情報に含まれる空間認識情報が取得されたときの空間認識は、環境に依存しない空間認識失敗であったと判定される(ステップS26)。そして、その認識失敗情報は、いずれの環境依存認識失敗類型にも分類されず、認識失敗情報(
図6参照)の「失敗類型」の欄には、環境依存でない空間認識失敗であることを表す例えば「−」などの記号が記入される。
【0056】
(7)異常検出部14および管理者端末IF部15
異常検出部14は、空間認識成否判定部12により空間認識失敗と判定された空間認識情報のうち、環境依存認識失敗分類部13で環境依存認識失敗と判定されたものを除いた情報を、外界空間認識装置51の異常検出情報としてシステム管理者に提供する。すなわち、認識失敗情報蓄積部23に蓄積された認識失敗情報のうち、いずれの環境依存認識失敗類型にも分類されなかった認識失敗情報のみが、管理者端末IF部15および管理者端末2を介してシステム管理者に提供される。
【0057】
つまり、本実施形態では、外界空間認識装置51(空間認識センサ)自体に異常はないが、特定の環境に依存して発生する空間認識失敗は異常とみなされないことを意味する。そのため、システム管理者は、外界空間認識装置51そのものに起因する認識失敗情報だけを用いて、その異常の原因の解明を進めることが可能となる。その結果、本実施形態では、外界空間認識装置51に発生した異常の原因の解明する工数やコストを低減することが可能になる。
【0058】
(8)環境依存認識失敗類型学習部16
環境依存認識失敗類型学習部16は、所定の期間(例えば7日)ごとに、認識失敗情報蓄積部23に蓄積された認識失敗情報を失敗類型別に集計して、各認識失敗情報に含まれる各種センサの検出値(撮影画像の輝度、GPS受信器の出力値など)を統計処理する。そして、その結果に基づき、失敗類型別の環境依存認識失敗類型情報に含まれる類型条件を学習し、その類型条件を更新する。なお、この場合の学習の方法は、どのようなものであってもよいが、例えば、機械学習のアルゴリズムなどを用いることができる。
【0059】
(9)空間認識失敗位置表示部17
空間認識失敗位置表示部17は、認識失敗情報蓄積部23に蓄積された過去に空間認識失敗が発生した位置を管理者端末2の表示装置に地図表示する。
【0060】
図10は、空間認識失敗位置表示部17により地図表示された表示画面の例を示した図であり、(a)は、空間認識に失敗した空間認識センサおよび環境情報を特定した場合の空間認識失敗の発生位置を地図表示した例、(b)は、特定の車両の走行経路に沿って発生した空間認識失敗の位置を地図表示した例、(c)は、特定のエリアで発生したすべての空間認識失敗の位置を地図表示した例である。なお、
図10において、太い実線は、道路、三角印および丸印は、空間認識失敗が発生した位置、細い矢印付き実線は、車両の走行経路を表している。
【0061】
図10(a)の表示画面には、空間認識センサが「AA」で、環境情報が「BCD」であるときに発生した空間認識失敗の位置が三角印で示されている。なお、空間認識失敗は、環境に依存しないものであっても、環境に依存するものであっても、これらを区別しないものであってもよい。さらには、環境依存失敗の類型を特定するものであってもよい。
【0062】
このような地図表示により、システム管理者は、空間認識失敗が、どのような空間認識センサで、どのような環境において、どのような場所で生じやすいかを、視覚的に容易に把握することが可能になる。
【0063】
また、
図10(b)の表示画面には、特定の車両の走行経路に沿って発生した空間認識失敗の位置が地図表示される。そのため、システム管理者は、特定の車両について、空間認識失敗がどこでどのような順序で発生したかを、視覚的に容易に把握することが可能になる。
【0064】
また、
図10(c)の表示画面には、このエリアで生じたすべての空間認識失敗の位置が地図表示される。ここでは、例えば、丸印は、環境依存しない認識失敗、△印は、環境依存した認識失敗を表すとする。このような表示画面からは、環境依存でない認識失敗と判定されたものでも、システム管理者は、その発生位置や環境の特徴などから、新たな環境依存失敗類型の判定モデルを見出すことができる可能性がある。
【0065】
以上のように、空間認識失敗位置表示部17は、過去に発生した空間認識失敗の位置を様々な形で地図表示するので、システム管理者は、とくに環境依存でない認識失敗について、その原因解明の工数が軽減される。さらに、新たな環境依存失敗の判定モデルを見出すことができれば、その分だけの空間認識失敗の原因解明が不要になるので、環境依存でない認識失敗についての原因解明の工数がさらに軽減される。
【0066】
以上、本発明の実施形態によれば、車両5の外界空間認識装置51で発生した空間認識失敗のうち、環境に依存する空間認識失敗は、予め設定した類型条件(判定モデル)に従って、外界空間認識装置51の異常によるものではないとして除外される。つまり、環境に依存する空間認識失敗については、その原因解明をする必要がなくなる。従って、システム管理者は、環境依存の空間認識失敗情報を除いた空間認識失敗情報を用いて外界空間認識装置51の異常の原因の解明をすればよい。よって、外界空間認識装置51の異常の原因解明の工数は低減される。
【0067】
なお、以上に説明した異常検出装置1は、いわばクラウド型の異常検出装置であるが、他の実施形態として、以下、車両5それぞれに搭載される車載型の異常検出装置について補足して説明する。この車載型の異常検出装置(図示省略)は、車両5に搭載され、その構成は、
図1に示した異常検出器1の構成から対車車両通信部11を除外したものに相当する。この車載型の異常検出装置は、同じ車両5に搭載されている外界空間認識装置51および環境情報取得装置52から直接に外界空間認識情報や環境情報を取得することができる。
【0068】
また、異常検出部14による異常検出結果などを表示するためには、
図1でいう管理者端末2に相当する表示装置などが必要となるが、その表示装置としては、例えばカーナビ装置に付属する表示装置を兼用するものであってもよい。
【0069】
また、車載型の異常検出装置の場合、認識失敗情報蓄積部23に蓄積する認識失敗情報があまり集まらないことも懸念される。その場合に備えて、車両5に搭載された通信装置53は、通信基地局4と通信するものではなく、自車の近傍を走行する他の車両5に搭載された他の通信装置53と通信するものであるとする。そして、ある車両5に搭載された異常検出装置は、自車の近傍を走行する他の車両5に搭載された異常検出装置との間で通信することにより、それぞれの異常検出装置に蓄積された認識失敗情報や環境依存認識失敗類型情報を交換するものとする。
【0070】
こうすることにより、車載型の異常検出装置に蓄積される認識失敗情報や環境依存認識失敗類型情報を増加させることができるので、その異常検出装置による異常検出の精度を高めることができる。また、車両5の運転者に異常があることを通知できるようになり、カーナビなどの表示装置に、例えば「修理工場での調整または修理をお勧めします」などの表示をすることができるようになる。
【0071】
本発明は、以上に説明した実施形態および変形例に限定されるものではなく、さらに、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態および変形例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態や変形例の構成の一部を、他の実施形態や変形例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態や変形例の構成に他の実施形態や変形例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態や変形例の構成の一部について、他の実施形態や変形例に含まれる構成を追加・削除・置換することも可能である。