特許第6971026号(P6971026)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特許6971026-既存の柱梁架構の補強方法 図000002
  • 特許6971026-既存の柱梁架構の補強方法 図000003
  • 特許6971026-既存の柱梁架構の補強方法 図000004
  • 特許6971026-既存の柱梁架構の補強方法 図000005
  • 特許6971026-既存の柱梁架構の補強方法 図000006
  • 特許6971026-既存の柱梁架構の補強方法 図000007
  • 特許6971026-既存の柱梁架構の補強方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971026
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】既存の柱梁架構の補強方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20211111BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20211111BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   E04G23/02 F
   E04B1/24 F
   E04B1/58 508F
   E04B1/24 J
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-252510(P2016-252510)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-104995(P2018-104995A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】内山 元希
(72)【発明者】
【氏名】野澤 裕和
(72)【発明者】
【氏名】佐分利 和宏
(72)【発明者】
【氏名】河野 隆史
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−057449(JP,A)
【文献】 特開平08−151686(JP,A)
【文献】 特開2013−204270(JP,A)
【文献】 特開2014−111864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04B 1/24
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と梁とで構成される既存の柱梁架構の補強方法であって、
既存の前記柱梁架構の耐力が、柱や梁の曲げ耐力ではなく、パネルゾーンのせん断耐力により決まる場合に、既存の前記柱梁架構のパネルゾーンをパネルゾーン拡張手段にて構面内方向に沿って拡張するパネルゾーン拡張工程を備え
前記パネルゾーン拡張手段が、前記パネルゾーンに隣接する柱、及び、パネルゾーンに隣接する梁の少なくとも一方の延在方向中央側に向かって、パネルゾーンを拡張するように構成され、
前記パネルゾーン拡張手段には、前記パネルゾーンに隣接する柱を横断する状態で当該柱に接合された第1拡張部と、前記パネルゾーンに隣接する梁を横断する状態で当該梁に接合された第2拡張部と、前記柱と前記梁との間に設けられた第3拡張部とが備えられ、
前記第1拡張部と前記第2拡張部と前記第3拡張部が、前記パネルゾーンの拡張ラインに沿って連続する状態で配置され、
拡張後の前記パネルゾーンの内側領域のうち、横方向に延びるウェブとその上下両端のフランジとを備える既存の梁における柱側端部と前記第2拡張部との間の梁端部に、当該梁端部の前記ウェブの略全域にわたる状態で、補強板が前記ウェブに重ねて接合されている既存の柱梁架構の補強方法。
【請求項2】
既存の前記柱において、既存の前記梁に対する下側の柱が上側の柱よりも負担応力が大きい場合には、前記下側の柱に接合される下側のパネルゾーン拡張手段が、前記上側の柱に接合される上側のパネルゾーン拡張手段よりもパネルゾーンを大きく拡張する請求項1に記載の既存の柱梁架構の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱と梁とで構成される既存の柱梁架構の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の建物構造では、柱梁架構の構成材である柱や梁が曲げ応力で降伏する前に、柱と梁との接合部で柱のヒンジ部と梁のヒンジ部との間の領域であるパネルゾーンにせん断破壊が生じるなど、柱や梁の曲げ耐力ではなく、パネルゾーンのせん断耐力により柱梁架構の耐力が決まる場合がある。
このような場合、従来、柱梁架構の構面内方向におけるパネルゾーンの内側領域(以下、単にパネルゾーンの内側領域と略称する。)に変位拘束部材等の補強部材を付設することで、パネルゾーンのせん断耐力を向上させて、柱梁架構の耐力を向上させることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−160594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の技術では、例えば、鉄骨造等の既存の柱梁架構を補強する場合等に以下の不都合がある。
(1)既存の柱梁架構のパネルゾーンの内側領域には、梁を接合するためのガゼットプレートやリブプレートなどが存在するため、複雑な形状となっていることが多い。そのため、パネルゾーンの内側領域に補強部材を付設する作業が難しいものとなる。
(2)建物の外壁に隣接するパネルゾーンを補強する場合、パネルゾーンから外壁に沿って延びる梁が邪魔となり、パネルゾーンの内側領域における当該梁の裏側の部位にアクセスすることができない。そのため、パネルゾーンの内側領域を適切に補強するには、外壁を撤去しなければならない。
これらのことから、上記従来の技術では、既存の柱梁架構を補強する場合等に工事の長期化やコストアップを招く問題があった。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、パネルゾーンの内側領域の状況にかかわらず、パネルゾーンのせん断耐力を簡単に向上させることができ、柱梁架構の耐力の向上を短工期且つ低コストで実現できる既存の柱梁架構の補強方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、柱と梁とで構成される既存の柱梁架構の補強方法であって、
既存の前記柱梁架構の耐力が、柱や梁の曲げ耐力ではなく、パネルゾーンのせん断耐力により決まる場合に、既存の前記柱梁架構のパネルゾーンをパネルゾーン拡張手段にて構面内方向に沿って拡張するパネルゾーン拡張工程を備え
前記パネルゾーン拡張手段が、前記パネルゾーンに隣接する柱、及び、パネルゾーンに隣接する梁の少なくとも一方の延在方向中央側に向かって、パネルゾーンを拡張するように構成され、
前記パネルゾーン拡張手段には、前記パネルゾーンに隣接する柱を横断する状態で当該柱に接合された第1拡張部と、前記パネルゾーンに隣接する梁を横断する状態で当該梁に接合された第2拡張部と、前記柱と前記梁との間に設けられた第3拡張部とが備えられ、
前記第1拡張部と前記第2拡張部と前記第3拡張部が、前記パネルゾーンの拡張ラインに沿って連続する状態で配置され、
拡張後の前記パネルゾーンの内側領域のうち、横方向に延びるウェブとその上下両端のフランジとを備える既存の梁における柱側端部と前記第2拡張部との間の梁端部に、当該梁端部の前記ウェブの略全域にわたる状態で、補強板が前記ウェブに重ねて接合されている点にある。
【0007】
本構成によれば、パネルゾーン拡張手段により、既存の柱梁架構の構面内でパネルゾーンの面積を大きくすることで、パネルゾーンの体積を増大させて、当該パネルゾーンのせん断耐力を向上させることができる。
しかも、パネルゾーンの拡張作業は、当初のパネルゾーンの外側領域に対する作業にて行うことが可能であるので、パネルゾーンの形状やパネルゾーンから外壁に沿って伸びる梁の存在等によりパネルゾーンの内側領域に対する作業が困難な場合でも、パネルゾーンの拡張を容易に行うことができる。
よって、パネルゾーンの内側領域の状況にかかわらず、パネルゾーンのせん断耐力を簡単に向上させることができ、既存の柱梁架構の耐力の向上を短工期且つ低コストで実現できる。
【0009】
本構成によれば、前記パネルゾーン拡張手段により、パネルゾーンのせん断耐力の向上を図りながら、柱や梁とパネルゾーンとの境界である柱や梁のヒンジ部を柱や梁の延在方向中央側に移動させて、柱や梁のヒンジ部間の距離を短くすることができる。このように柱や梁のヒンジ部間の距離が短くなると、柱梁架構に同じ外力が作用している場合のヒンジ部に作用する曲げ応力が小さくなるので、一層大きな外力が柱梁架構に作用しても、ヒンジ部に作用する曲げ応力はヒンジ部の移動前と同程度とすることが可能となる。よって、柱梁架構の耐力の一層の向上を効率的に実現できる。
【0011】
本構成によれば、柱側の第1拡張部、梁側の第2拡張部、柱と梁との間の第3拡張部をパネルゾーンの拡張ラインに沿って連続させることで、頑強な外縁部を形成する状態で、パネルゾーンに隣接する柱、及び、パネルゾーンに隣接する梁の両方の延在方向中央側に向かってパネルゾーンを適切に拡張することができ、柱梁架構の一層の耐力の向上を適切に実現できる。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、既存の前記柱において、既存の前記梁に対する下側の柱が上側の柱よりも負担応力が大きい場合には、前記下側の柱に接合される下側のパネルゾーン拡張手段が、前記上側の柱に接合される上側のパネルゾーン拡張手段よりもパネルゾーンを大きく拡張する点にある。
本発明は、前記第3拡張部が、前記柱梁架構の内部の隅側において、前記柱に接合された前記第1拡張部の端部と前記梁に接合された前記第2拡張部の端部とを斜め姿勢で接続するように構成されていると好適である。
【0013】
本構成によれば、第3拡張部を水平部分と鉛直部分を有するL字姿勢とするのに比べ、柱梁架構の内部側である室内側へのパネルゾーンの張り出し面積が少なくて済み、パネルゾーンの拡張による室内側への影響を極力少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】既存の柱梁架構を模式的に示す正面図
図2】補強後の既存の柱梁架構を模式的に示す正面図
図3】(a)パネルゾーン拡張前の柱や梁に作用する曲げ応力を模式的に示す図、(b)パネルゾーン拡張後の柱や梁に作用する曲げ応力を模式的に示す図
図4】(a)第1パネルゾーン拡張手段の付設箇所の正面図、(b)第1パネルゾーン拡張手段の付設箇所の分解図
図5】第2パネルゾーン拡張手段の付設箇所の正面図
図6】第3パネルゾーン拡張手段の付設箇所の正面図
図7】別実施形態におけるパネルゾーン拡張手段の付設箇所の正面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の建物構造、及び、柱梁架構の補強方法の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明の基本的な考え方を説明し、次いで、本発明の建物構造、及び、柱梁架構の補強方法の詳細を説明する。
なお、柱梁架構のパネルゾーンは、柱と梁の接合部における柱のヒンジ部と梁のヒンジ部の間の領域であり、柱と梁の接合部に存在する数は1つであるが、便宜上、拡張前のパネルゾーンをPとし、拡張後のパネルゾーンをP´として説明する。
【0018】
この建物構造は、図2に示すように、柱1と梁2とで構成される柱梁架構Kと、柱梁架構KのパネルゾーンPを構面内方向(柱梁架構Kの構面に沿う方向)に沿って拡張して拡張パネルゾーンP´とするパネルゾーン拡張手段Fとを備えて構成されている。当該建物構造は、例えば、図1図2に示すように、既存の柱梁架構KのパネルゾーンP(図1参照)を拡張して拡張パネルゾーンP´(図2参照)とするパネルゾーン拡張工程を備えた柱梁架構Kの補強方法を実行して構成することができる。
【0019】
既存の柱梁架構KのパネルゾーンPは、図1に示すように、柱梁架構Kの構面内方向(換言すれば、構面に直交する正面視)において、柱1のヒンジ部Hと梁2のヒンジ部Hとの間の矩形状の領域(図1中のグレー表示部分)にて構成されている。拡張パネルゾーンP´は、図2に示すように、柱梁架構Kの構面内方向において、パネルゾーンPの外側領域に配置されたパネルゾーン拡張手段Fの外縁部を含む多角形状の領域(図2中の横線ハッチング部分)にて構成されている。
【0020】
図2に示すように、パネルゾーン拡張手段Fは、本実施形態において、パネルゾーンPに隣接する柱1の延在方向中央側、及び、パネルゾーンPに隣接する梁2の延在方向中央側に向かって、パネルゾーンPを拡張して拡張パネルゾーンP´とするように構成されている。
【0021】
このように、パネルゾーン拡張手段Fにより、柱梁架構Kの構面内方向に沿ってパネルゾーンPの面積を大きくすることで、パネルゾーンPの体積を増大させて、パネルゾーンPのせん断耐力を向上させることができる。よって、柱1や梁2が曲げ応力で降伏する前にパネルゾーンPにせん断破壊が生じるのを抑制し、柱梁架構Kの耐力を向上させることができる。
【0022】
更に、パネルゾーン拡張手段Fにより、柱1や梁2とパネルゾーンPとの境界であるヒンジ部Hを、図1の位置から図2の位置へ、柱1や梁2の延在方向中央側に向かって移動させて、柱1や梁2のヒンジ部H間の距離を短くすることができ、柱梁架構Kの耐力を更に向上させることができる。以下、図3を参酌して、柱1や梁2のヒンジ部H間の距離を短くすることによる柱梁架構Kの耐力向上作用について説明を加える。
【0023】
図3は、柱梁架構Kに外力が作用した場合の柱1や梁2に作用する曲げ応力の状態を模式的に表現した曲げ応力図であり、図3(a)は、パネルゾーンPを拡張していない状態を示し、図3(b)は、パネルゾーンPを柱1や梁2の延在方向中央部C側(延材方向中央側の一例)に拡張して拡張パネルゾーンP´を形成した状態を示している。
【0024】
図3(a)に示すように、パネルゾーンPを拡張していない状態において、柱1や梁2とパネルゾーンPとの間のヒンジ部Hの位置を非拡張位置Rhとし、ヒンジ部Hにて許容できる曲げ応力をヒンジ部許容曲げ応力Mhとする。
【0025】
これに対して、図3(b)に示すように、パネルゾーンPを柱1や梁2の延在方向中央部C側に拡張して拡張パネルゾーンP´を形成した状態では、柱1や梁2と拡張パネルゾーンP´との間のヒンジ部Hが、非拡張位置Rhよりも長さXだけ柱1や梁2の延在方向中央部C側に移動した拡張位置Rh´に位置することになる。
【0026】
この場合も、ヒンジ部Hにて許容できる曲げ応力はヒンジ部許容曲げ応力Mhであるが、ヒンジ部H間の距離が短くなるので、その分、ヒンジ部Hは、曲げ応力線の勾配が急傾斜側となる大きな外力を許容できるようになる。よって、パネルゾーンPのせん断耐力を向上させるのとは別の観点からも、柱梁架構Kの耐力を向上させることができる。
【0027】
次に、本発明の建物構造、及び、既存の柱梁架構の補強方法の詳細について説明する。
本実施形態では、既存の柱梁架構KのパネルゾーンP(図1参照)を拡張して拡張パネルゾーンP´(図2参照)とするパネルゾーン拡張工程を備えた柱梁架構Kの補強方法を実行することにより、拡張パネルゾーンP´を備えた建物構造を構成する場合について説明する。
【0028】
図1に示すように、既設の柱梁架構Kは、例えば、鉄骨造にて構成され、隣り合う鉄骨製の柱1どうしの間に鉄骨製の梁2を架設して構成されている。
図4(b)に示すように、既存の柱梁架構Kの柱1は、例えば、縦方向に延びるウェブ1Aの左右端にフランジ1Bを一体的に備えたH型鋼にて構成されている。
また、既存の柱梁架構Kの梁2は、例えば、横方向に延びるウェブ2Aの上下端にフランジ2Bを一体的に備えたH型鋼にて構成されている。
パネルゾーンPは、柱梁架構Kの構面内方向において、柱1のヒンジ部Hと梁2のヒンジ部Hの間の矩形状の領域、具体的には、柱1と梁2との接合部で柱1の一対のフランジ2Aと一対の水平スチフナ2aとで囲まれた矩形状の領域にて構成されている。このパネルゾーンPの内側領域には、柱梁架構Kの構面外方向の一例であるパネルゾーンPの板厚方向(図中の奥行き方向)に延びる梁2等が接合されている。
【0029】
そして、パネルゾーン拡張工程では、このような既設の柱梁架構Kに対して、図2に示すように、既設の柱梁架構Kの各階の第1〜第3パネルゾーンP1〜P3の外側領域に第1〜第3パネルゾーン拡張手段F1〜F3を設けることで、第1〜第3拡張パネルゾーンP1´〜P3´を形成して既存の柱梁架構Kの耐力を適切に向上させる。以下、第1〜第3パネルゾーン拡張手段F1〜F3について説明を加える。
【0030】
(第1パネルゾーン拡張手段)
第1パネルゾーン拡張手段F1は、図2に示すように、例えば、既設の柱梁架構Kにおける最上部の外周側等に設けられる。この第1パネルゾーン拡張手段F1は、図4(a)に示すように、柱梁架構Kの構面内方向に沿って、柱1が隣接する下側、梁2が隣接する左側、斜め左下側に向かって第1パネルゾーンP1の面積を拡大するように構成されている。
【0031】
図4(a)、(b)に示すように、第1パネルゾーン拡張手段F1には、第1パネルゾーンP1に隣接する下側の柱1を横断する状態で当該柱1に接合される第1拡張部3と、第1パネルゾーンP1に隣接する梁2を横断する状態で当該梁2に接合される第2拡張部4と、第1パネルゾーンP1に隣接する柱1と梁2との間に設けられた第3拡張部5とが備えられる。
【0032】
第1〜第3拡張部3〜5は、柱梁架構Kの構面内方向に直交する方向(構面に交差する構面外方向の一例)に延びる鋼製の板材にて構成され、第1パネルゾーンP1の拡張ラインLに沿って連続する状態で配置される。
このようにすることで、第1拡張パネルゾーンP1´の頑強な外縁部を構成することができ、第1パネルゾーンP1に隣接する柱1と梁2のヒンジ部Hを拡張ラインLまで適切に移動させて、第1パネルゾーンP1を拡張ラインLまで拡張した第1拡張パネルゾーンP1´を適切に形成することができる。
拡張ラインLは、例えば、パネルゾーンPに隣接する柱1の端部から柱1の延在方向中央側に移動した位置と、柱梁架構Kの内部の隅側の空間と、パネルゾーンPに隣接する梁2の端部から梁2の延在方向中央側に移動した位置とを通るように設定されている。
【0033】
また、第1パネルゾーン拡張手段F1には、第3拡張部5と柱梁架構Kの内部の隅側との間の隙間を埋める状態で、柱梁架構Kの内部の隅側に接合される隅側補強部6が備えられる。隅側補強部6は、柱梁架構Kの構面内方向に沿って延びる鋼製の板材にて構成されている。この隅側補強部6により、第1拡張パネルゾーンP1´のせん断耐力を更に向上させることができる。
【0034】
第1拡張部3は、例えば、柱1のウェブ1Aと一対のフランジ1Bとで構成される表裏の凹部の形状に対応した輪郭形状の板材にて構成されている。当該第1拡張部3は、柱1のフランジ1B間に亘る状態で、柱1のウェブ1Aと一対のフランジ1Bとで構成される表裏の凹部の夫々に溶接等の接合手段(図示省略)にて接合される。
【0035】
第2拡張部4は、例えば、梁2のウェブ2Aと一対のフランジ2Bとで構成される表裏の凹部の形状に対応した輪郭形状の板材にて構成されている。当該第2拡張部4は、梁2のフランジ2B間に亘る状態で、梁2のウェブ2Aと一対のフランジ2Bとで構成される表裏の凹部の夫々に溶接等の接合手段(図示省略)にて接合される。
【0036】
第3拡張部5は、例えば、柱1側の第1拡張部3の端部と梁2側の第2拡張部4の端部とに亘る長さ、且つ、柱1のフランジ1Bや梁2のフランジ2Bの幅に対応した幅を有した帯状の板材にて構成されている。当該第3拡張部5は、柱梁架構Kの内部の隅側において、柱1側の第1拡張部3の端部と梁2側の第2拡張部4の端部とを斜め姿勢で接続する状態で、柱1のフランジ1Bにおける第1拡張部3の端部の接合部位、及び、梁2のフランジ2Bにおける第2拡張部4の端部の接合部位に溶接等の接合手段(図示省略)にて接合される。
【0037】
隅側補強部6は、例えば、第3拡張部5と柱梁架構Kの内部の隅側との間の隙間に対応した三角形状等の輪郭形状の板材にて構成され、第3拡張部5の幅方向の中央部位に一体的に備えられている。当該隅側補強部6は、第3拡張部5と柱梁架構Kの内部の隅側との間の隙間を埋める状態で、柱梁架構Kの隅側に溶接等の接合手段(図示省略)にて接合される。
【0038】
更に、必要に応じて、第1拡張パネルゾーンP1´の内側領域、且つ、第1パネルゾーンP1の外側領域において、柱1のフランジ1B、梁2のフランジ2B、隅側補強部6の表側や裏側に鋼製の補強板7を重ねて接合することができる。このようにすれば、第1拡張パネルゾーンP1´の部材体積を更に向上させて、第1拡張パネルゾーンP1´のせん断耐力を更に向上させることができる。
【0039】
(第2パネルゾーン拡張手段)
第2パネルゾーン拡張手段F2は、図2に示すように、例えば、既存の柱梁架構Kにおける柱1を上下に有した上下中間部の外周側等に設けられる。この第2パネルゾーン拡張手段F2は、図5に示すように、柱梁架構Kの構面内方向に沿って、梁2が隣接する左側、上下の柱1が隣接する上下両側、斜め左下側、斜め左上側の夫々に向かって第2パネルゾーンP2の面積を拡大するように構成されている。
【0040】
そのため、第2パネルゾーン拡張手段F2は、第1パネルゾーン拡張手段F1に対して、上側の柱1を横断する状態で上側の柱1に接合される上側の第1拡張部3と、上側の柱1と左側の梁2との間に設けられる左上側の第3拡張部5及び隅側補強部6とが付加されたものとなっている。
【0041】
そして、第1〜第3拡張部3〜5は、第2パネルゾーンP2の拡張ラインLに沿って連続する状態で配置される。よって、第2パネルゾーン拡張手段F2は、第2拡張パネルゾーンP2´の頑強な外縁部を構成することができ、第2パネルゾーンP2に隣接する上下の柱1と左側の梁2の各ヒンジ部Hを拡張ラインLまで適切に移動させて、第2パネルゾーンP2を拡張ラインLまで拡張した第2拡張パネルゾーンP2´を適切に形成することができる。
【0042】
拡張ラインLは、例えば、第2パネルゾーンP2に隣接する上下の柱1の端部から上下の柱1の延在方向中央側に夫々移動した位置と、柱梁架構Kの内部における第2パネルゾーンP2の左上及び左下の隅側の空間と、第2パネルゾーンP2に隣接する左側の梁2の端部から梁2の延在方向中央側に移動した位置とを通るように設定されている。
【0043】
(第3パネルゾーン拡張手段)
第3パネルゾーン拡張手段F3は、図2に示すように、第2パネルゾーン拡張手段F2と同様、例えば、既設の柱梁架構Kの上下中間部の外周側等に設けられるが、特に、上側の柱1と下側の柱1とで負担応力が異なる箇所に設けられる。図示の例では、下側の柱1が、上側の柱1よりも負担応力が大きくて大断面に構成されている。
【0044】
この第3パネルゾーン拡張手段F3は、図6に示すように、第2パネルゾーン拡張手段F2(図5参照)に対して、下側の柱1に接合される下側の第1拡張部3を下方に移動し、この下側の第1拡張部3の下方移動に対応して、左下側の斜め姿勢の第3拡張部5の傾斜角度を大きくし、更に、左下側の隅側補強部6を下方に拡大したものとなっている。
【0045】
そして、第1〜第3拡張部3〜5は、第3パネルゾーンP3の拡張ラインLに沿って連続する状態で配置される。よって、第3パネルゾーン拡張手段F3は、第3パネルゾーンP3に隣接する上下の柱1の負担応力が異なることに対応して、上下の柱1と左の梁2の各ヒンジ部Hを拡張ラインLまで適切に移動させて、第3パネルゾーンP3を拡張ラインLまで拡張した第3拡張パネルゾーンP3´を適切に形成することができる。
【0046】
〔別実施形態〕
(1)前述の実施形態では、パネルゾーン拡張手段Fが、柱梁架構Kの構面内方向において、左右方向の一方側(図中、左側)に梁2が接続されている外周側のパネルゾーンPを拡張する場合を例に示したが、柱梁架構Kの適宜の箇所のパネルゾーンPを拡張することが可能である。
【0047】
例えば、パネルゾーン拡張手段Fは、左右両方向(図中、左側と右側)に梁2が接続されている中央側のパネルゾーンPも好適に拡張することができる。
この場合、図7に示すように、パネルゾーン拡張手段Fが、柱梁架構Kの構面内方向に沿って、左右の梁2が隣接する左右両側、上下の柱1が隣接する上下両側、斜め左下側、斜め左上側、斜め右下側、斜め右上側の夫々に向かってパネルゾーンPの面積を拡大するように構成されている。
【0048】
そのため、この別実施形態のパネルゾーン拡張手段Fは、第2パネルゾーン拡張手段F2に対して、右側の梁2を横断する状態で右側の梁2に接合される右側の第2拡張部4と、上側の柱1と右側の梁2との間に設けられる右上側の第3拡張部5及び隅側補強部6と、下側の柱1と右側の梁2との間に設けられる右下側の第3拡張部5及び隅側補強部6とが付加されたものとなっている。
【0049】
そして、第1〜第3拡張部3〜5は、パネルゾーンPの拡張ラインLに沿って連続する状態で配置される。よって、このパネルゾーン拡張手段Fは、上下の柱1と左右の梁2の各ヒンジ部Hを拡張ラインLまで適切に移動させて、パネルゾーンPを拡張ラインLまで拡張した拡張パネルゾーンP´を適切に形成することができる。
【0050】
拡張ラインLは、例えば、パネルゾーンPに隣接する上下の柱1の端部から上下の柱1の延在方向中央側に夫々移動した位置と、柱梁架構Kの内部におけるパネルゾーンPの斜め左上、斜め右上、斜め左下、斜め右下の隅側の空間と、パネルゾーンPに隣接する左右の梁2の端部から左右の梁2の延在方向中央側に夫々移動した位置とを通るように設定されている。
【0051】
(2)前述の実施形態では、パネルゾーン拡張手段Fを構成する第1拡張部3が、柱1のウェブ1Aと一対のフランジ1Bとで構成される表裏の凹部の夫々に設けられている場合を例に示したが、表裏の凹部のいずれか一方に設けられていてもよい。同様に、パネルゾーン拡張手段Fを構成する第2拡張部4も、梁2のウェブ2Aと一対のフランジ2Bとで構成される表裏の凹部のいずれか一方に設けられていてもよい。
【0052】
(3)前述の実施形態では、パネルゾーン拡張手段Fを構成する第3拡張部5が、柱梁架構Kの内部の隅側において、柱1側の第1拡張部3の端部と梁2側の第2拡張部4の端部とを斜め姿勢で接続するように構成されている場合を例に示したが、水平部分と鉛直部分を有するL字姿勢等の他の姿勢にて柱1側の第1拡張部3の端部と梁2側の第2拡張部4の端部とを接続するように構成されていてもよい。
【0053】
(4)前述の実施形態では、パネルゾーン拡張手段Fにより、既存の柱梁架構KのパネルゾーンPを拡張する場合を例に示したが、パネルゾーン拡張手段Fは、新設の柱梁架構KのパネルゾーンPを拡張する場合にも好適に用いることができる。
【0054】
(5)前述の実施形態では、柱梁架構Kが鉄骨造である場合を例に示したが、勿論、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造等の各種の構造であってもよい。
【0055】
(6)パネルゾーン拡張手段Fの具体的構成は、前述の実施形態で説明した第1〜第3拡張部3〜5に限らず、柱梁架構Kの構造等に応じて適宜に変更することが可能である。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1 柱
2 梁
3 第1拡張部
4 第2拡張部
5 第3拡張部
K 柱梁架構
F パネルゾーン拡張手段
L 拡張ライン
P パネルゾーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7