特許第6971029号(P6971029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971029
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   C03C27/12 D
   C03C27/12 F
【請求項の数】1
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-531718(P2016-531718)
(86)(22)【出願日】2016年4月13日
(86)【国際出願番号】JP2016061915
(87)【国際公開番号】WO2016167287
(87)【国際公開日】20161020
【審査請求日】2019年1月11日
【審判番号】不服2020-4331(P2020-4331/J1)
【審判請求日】2020年4月1日
(31)【優先権主張番号】特願2015-83432(P2015-83432)
(32)【優先日】2015年4月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 和彦
【合議体】
【審判長】 宮澤 尚之
【審判官】 末松 佳記
【審判官】 後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0220286号明細書(US,A1)
【文献】 特開2000−203901号公報(JP,A)
【文献】 特開平6−198809号公報(JP,A)
【文献】 特開2007−22089号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C27/12
B32B17/06-17/10
B29C59/04
B60J1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表面に多数の凸部を有する合わせガラス用中間膜であって、
前記凸部の配置密度が3個/mm以上、80個/mm以下であり、かつ、前記凸部が表面中に占める面積の比率が15〜75%であり、
凸部の表面におけるISO 25178に準拠して測定される面算術平均粗さSaが200nm以上、500nm以下である
ことを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層した状態で保管しても自着せずに、容易に剥離可能な合わせガラス用中間膜、及び、該合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
2枚のガラス板の間に、可塑化ポリビニルブチラールを含有する合わせガラス用中間膜を挟み、互いに接着させて得られる合わせガラスは、特に車両用フロントガラスとして広く使用されている。
【0003】
合わせガラスの製造工程においては、ガラスと合わせガラス用中間膜とを積層する際の脱気性が重要である。このため、合わせガラス用中間膜の少なくとも一方の表面には、合わせガラス製造時の脱気性を確保する目的で、多数の凹部が形成されている。とりわけ、該凹部を、底部が連続した溝形状を有し、隣接する該刻線状の凹部が平行して規則的に形成される構造とすることにより、極めて優れた脱気性を発揮することができる。
【0004】
合わせガラスの製造方法では、例えば、ロール状体から巻き出した合わせガラス用中間膜を適当な大きさに切断し、該合わせガラス用中間膜を少なくとも2枚のガラス板の間に挟持して得た積層体をゴムバックに入れて減圧吸引し、ガラス板と中間膜との間に残留する空気を脱気しながら予備圧着し、次いで、例えばオートクレーブ内で加熱加圧して本圧着を行う方法等が行われる。(例えば、特許文献1。)
【0005】
このような合わせガラスの製造方法では、製造の効率化のために、予め所定の形状に切断した合わせガラス用中間膜を恒温恒湿室内に積層して保管しておくことが行われる。しかしながら、保管中に積層した合わせガラス用中間膜同士が接着(自着)してしまい、合わせガラス用中間膜を搬送する機械や人力では剥離できなくなってしまうことがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−26789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、積層した状態で保管しても自着せずに、容易に剥離可能な合わせガラス用中間膜、及び、該合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも一方の表面に多数の凸部を有する合わせガラス用中間膜であって、前記凸部の配置密度が3個/mm以上であり、かつ、前記凸部が表面中に占める面積の比率が15〜75%である合わせガラス用中間膜である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の合わせガラス用中間膜は、少なくとも一方の表面に多数の凸部を有する。これにより、合わせガラスの製造時における脱気性を確保することができる。
上記凸部の形状は特に限定されず、球状、ブロック状、円錐状、角錐状、円錐台状、角錐台状、角柱状、円柱状等が挙げられる。上記凸部の形状はエンボスロールが転写された形状であってもよい。
図1に、表面に多数の球状の凸部を有する合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図を示した。また、図2に、表面に多数のブロック状の凸部を有する合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図を示した。
【0010】
本発明の合わせガラス用中間膜では、上記凸部の配置密度が3個/mm以上であり、かつ、上記凸部が表面中に占める面積の比率が15〜75%である。上記凸部の配置密度及び上記凸部が表面中に占める面積がこの範囲内であると、積層した状態で保管しても自着せずに、容易に剥離可能となる。上記凸部の配置密度の好ましい下限は5個/mm、より好ましい下限は12個/mm、更に好ましい下限は20個/mm、特に好ましい下限は26個/mmである。上記凸部の配置密度が上記好ましい下限以上であると、合わせガラス用中間膜を積層した状態で保管した際に、点接触が増え荷重が分散することから、より一層自着を防止でき、更に容易に剥離可能となる。上記凸部の配置密度の好ましい上限は80個/mm、より好ましい上限は53個/mm、更に好ましい上限は50個/mm、特に好ましい上限は30個/mmである。上記凸部の配置密度が上記好ましい上限以下であると、凸部を付与する際に所望の粗さに調節することが容易になる。特に表面の十点平均粗さRzを容易に高く、すなわち粗くすることができ、脱気が不十分な状態でガラスと合わせガラス用中間膜の周縁部とがシールすることを防止でき、脱気が十分に行われた状態でガラスと合わせガラス用中間膜の全体とをシールすることができるため、得られる合わせガラスの透明性が向上する。上記凸部が表面中に占める面積の比率の好ましい下限は26%、好ましい上限は65%であり、より好ましい下限は40%、より好ましい上限は58%である。
【0011】
図3に、表面に凸部を有する合わせガラス用中間膜同士を積層した場合を説明する模式図を示した。上記凸部の配置密度及び上記凸部が表面中に占める面積が本発明に規定する範囲内であると、合わせガラス用中間膜を積層したときに、図3(a)に示したように互いの表面の凸部同士が点接触となり、接触面積が最小限となるため、積層した状態で保管しても自着することがない。これに対して、上記凸部の配置密度が小さく、上記凸部が表面中に占める面積が小さいと、合わせガラス用中間膜を積層したときに、図3(b)に示したように互いの表面の凸部同士が互い違いとなって接触して、接触面積が大きくなる。また、上記凸部の配置密度が大きく、上記凸部が表面中に占める面積が大きいと、合わせガラス用中間膜を積層したときに、図3(c)に示したように互いの表面の凸部同士が面接触となって、接触面積が大きくなる。
【0012】
上記凸部の配置密度は、例えば、以下の方法により測定することができる。
3次元白色光干渉型顕微鏡(例えば、ブルカーエイエックスエス社製、ContourGT−K)を用いて測定する。対物レンズの倍率を50倍、内部レンズの倍率を0.5倍、合わせガラス用中間膜表面を4mm四方の視野で測定して画像を得る。この際、光量及びThreshholdは、ノイズが測定に極力入らない、適切な条件で行う。更に平坦化処理及びノイズ除去処理を施したうえで、凸部のみの高さデータを抽出する。次いで、抽出された高さデータから凸部の個数をカウントし、視野面積で割ることにより、1mm当たりの凸部配置密度を測定する。凸部のうち、画像中で全体が表示されていないものは1/2としてカウントする。画像処理には、装置付属の解析ソフトである、「Vision64」を用いることができる。平坦化処理及びノイズ除去処理条件としては、第1の処理として、Analysis Toolbox上の「Terms Removal(F−Operator)」処理を解析条件「Tilt only(Plane Fit)」で行い、第2の処理として、「Statistic Filter」処理を解析条件「Filter type:Sigma」及び「Filter size:5」で行う。凸部のみの面積を抽出する第3の処理として、「Multi Region」処理を解析条件として、Zerolevel設定は「Background」を選択、Region Finding Routine設定は「By Threshhold」を選択し、閾値を1μmとし、Region Finding option設定は「minimum Resion size」を5000μm、「Region Level」をPeaksに設定し、「Exculde Edge Resion」は選択せずに行う。第3の処理によって抽出された凸部の個数を計測し、1mm当たりの凸部配置密度を算出する。凸部の内、画像中で全体が表示されていないものは1/2としてカウントする。
【0013】
上記凸部が表面中に占める面積は、例えば、以下の方法により測定することができる。
3次元白色光干渉型顕微鏡(例えば、ブルカーエイエックスエス社製、ContourGT−K)を用いて測定する。対物レンズの倍率を50倍、内部レンズの倍率を0.5倍、合わせガラス用中間膜表面を4mm四方の視野で測定して画像を得る。この際、光量及びThreshholdは、ノイズが測定に極力入らない、適切な条件で行う。更に平坦化処理及びノイズ除去処理を施したうえで、凸部のみの高さデータを抽出する。抽出した高さデータの凸部の面積を積算し、1mm当たりの凸部面積比率を算出する。
画像処理には、装置付属の解析ソフトである、「Vision64」を用いることができる。平坦化処理及びノイズ除去処理条件としては、第1の処理として、Analysis Toolbox上の「Terms Removal(F−Operator)」処理を解析条件「Tilt only(Plane Fit)」で行い、第2の処理として、「Statistic Filter」処理を解析条件「Filter type:Sigma」及び「Filter size:5」で行う。凸部のみの面積を抽出する第3の処理として、「Multi Region」処理を解析条件として、Zerolevel設定は「Background」を選択、Region Finding Routine設定は「By Threshhold」を選択し、閾値を1μmとし、Region Finding option設定は「minimum Resion size」を5000μm、「Region Level」をPeaksに設定し、「Exculde Edge Resion」は選択せずに行う。第3の処理により凸部1つ当たりの面積が算出されるため、抽出された凸部の面積を積算し、1mm中に凸部が占める面積割合を算出する。
【0014】
上記凸部を有する表面は、底部が連続した溝形状の凹部を有し、隣接する上記凹部が平行して規則的に並列していることが好ましい(以下、「刻線状」ともいう。)。一般に、2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜が積層された積層体を圧着するときの空気の抜け易さは、上記凹部の底部の連通性及び平滑性と密接な関係がある。上記凹部の形状を刻線状とすることにより、該底部の連通性はより優れ、著しく脱気性が向上する。
なお、「規則的に並列している」とは、隣接する上記溝形状の凹部が平行して等間隔に並列していてもよく、隣接する上記刻線状の凹部が平行して並列しているが、すべての隣接する上記刻線状の凹部の間隔が等間隔でなくともよいことを意味する。
【0015】
上記凸部の表面のISO 25178に準拠して測定される面算術平均粗さSa(以下、「頭頂部Sa値」ともいう。)は200nm以上であることが好ましい。
上記頭頂部Sa値は、3次元白色光干渉型顕微鏡を用いて得られた中間膜表面の画像を画像処理して、粗大な凹凸を除去したうえで算出する、面内の算術平均高さを示す3次元形状パラメータ−である。即ち、Saは、大きな凹凸を除去した、微細な凹凸形状を表すパラメータである。上記頭頂部Sa値が200nm以上となるように合わせガラス用中間膜の表面の凹凸形状を制御した場合には、より自着を防止することができる。上記頭頂部Sa値のより好ましい下限は250nmである。
上記頭頂部Sa値の上限は特に限定されないが、合わせガラスの製造時に合わせガラス用中間膜を少なくとも2枚のガラス板の間に挟持して圧着した際に、確実に凹凸が潰れるようにするためには、3000nm程度が実質的な上限である。
【0016】
上記頭頂部Sa値は、具体的には例えば、以下の方法により測定することができる。
即ち、3次元白色光干渉型顕微鏡(例えば、ブルカーエイエックスエス社製、ContourGT−K)を用い、対物レンズの倍率を115倍、内部レンズの倍率を0.5倍、解像度設定をFull resolutionとする条件で、合わせガラス用中間膜表面を1mm四方の視野で測定して画像を得る。この際、光量及びThreshholdは、ノイズが測定に極力入らない、適切な条件で行う。得られた画像について、平坦化処理及びノイズ除去処理を施し、更に、Maskdata処理にて、凸部のみの高さデータを抽出する。抽出されたデータ領域に対してGuaussianフィルターを用いて粗大な凹凸を除去したうえで、ISO 25178で規定される方法により面算術平均粗さSa値を算出する。画像処理には、装置付属の解析ソフトである、「Vision64」を用いることができる。平坦化処理及びノイズ除去処理条件としては、第1の処理として、Analysis Toolbox上の「Terms Removal(F−Operator)」処理を解析条件「Tilt only(Plane Fit)」で行い、第2の処理として、「Statistic Filter」処理を解析条件「Filter type:Sigma」及び「Filter size:5」で行い、更に「data Restore」処理を解析条件「Legacy」を選択し、かつ、RestoreEdge条件を選択、Iteration条件はデータ補完が充分に行われる値に設定して行う。凸部のみの画像データを抽出する第3の処理として、「Mask data」処理を解析条件として、Histogram Mask条件下で表示されるヒストグラムのHeightが0.2〜−0.2μmの間になるように閾値を決定し、「Mask:Left」条件で閾値以上の高さ領域データを抽出する。なお、閾値が0.2〜−0.2μmの間に設定できたかは、抽出後データのヒストグラム表示から確認できる。粗大な凹凸を除去するため、第4の処理として「Gaussian Regression Filter」処理を解析条件「Short wavelength pass条件下、order:2、Type:Regular、Long wavelength cutoff:0.025mm」かつadvace setupは初期条件で行う。第1から第3の処理を行った画像データを第4の処理として「S parameters−height」処理を解析条件「Removal tilt:True」で行った結果得られる「Sa」を面算術平均粗さSa値とする。サンプルとなる合わせガラス用中間膜の10cm四方の中を各測定点が3cm以上離れるようにして9点を測定し、その平均値をSa値とする。
また、測定時の環境は23℃及び30RH%下である。
【0017】
本発明の合わせガラス用中間膜の上記凸部を有する側の表面は、JIS B 0601(1994)に準拠して測定される十点平均粗さRzが15μm以上であることが好ましい。これにより、合わせガラス用中間膜を積層した状態で保管したときの合わせガラス用中間膜同士の接着力(自着力)をより低下させることができる。上記Rzの値のより好ましい下限は25μmである。
上記Rzの値の上限は特に限定されないが、合わせガラス用中間膜を少なくとも2枚のガラス板の間に挟持して圧着する際に確実に凹凸が潰れるようにするためには、70μm以下であることが好ましく、55μm以下であることがより好ましい。
なお、上記Rzは、例えば、表面粗さ測定器(小坂研究所社製、SE1700α等)を用いて測定されるデジタル信号をデータ処理することによって測定することができる。
【0018】
合わせガラス用中間膜の表面に上記形状を付与する方法は特に限定されないが、例えば、樹脂膜の表面に、面算術平均粗さSaを整えて頭頂部Sa値が200nm以上となるようにする第1の工程と、凸部を付与する第2の工程とからなる方法が好適である。
【0019】
合わせガラス用中間膜の表面の面算術平均粗さSaを整えて頭頂部Sa値が200nm以上となるようにする第1の工程は特に限定されないが、例えば、エンボスロール法、カレンダーロール法、異形押出法、メルトフラクチャーを制御したエンボス付与法等により微細な凹凸を付与する方法が挙げられる。
なかでも、例えば、メルトフラクチャーを制御したエンボス付与法において、金型からフィルムを押し出してからの冷却速度を調整する方法が好適である。メルトフラクチャーを制御したエンボス付与法においては、金型から押し出したフィルムは冷却水槽にて冷却されるが、この際のフィルムの冷却速度を調整することにより、付与される凹凸の形状を制御することができる。具体的には例えば、金型から冷却水槽までの距離を短くしてフィルムの冷却速度を速くすることにより、所期の面算術平均粗さSaを達成することができる。その他、エンボスロール法に用いるエンボスロールの表面形状を調整する方法によってもよい。
【0020】
上記凸部を付与する第2の工程は特に限定されないが、例えば、エンボスロール法、カレンダーロール法、異形押出法等が挙げられる。なかでも、エンボスロール法が好適である。
【0021】
本発明の合わせガラス用中間膜は、1層のみの樹脂層からなる単層構造であってもよく、2層以上の樹脂層が積層されている多層構造であってもよい。
本発明の合わせガラス用中間膜が多層構造である場合には、2層以上の樹脂層として、第1の樹脂層と第2の樹脂層とを有し、かつ、第1の樹脂層と第2の樹脂層とが異なる性質を有することにより、1層だけでは実現が困難であった種々の性能を有する合わせガラス用中間膜を提供することができる。
【0022】
上記樹脂層は熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
上記熱可塑性樹脂として、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ三フッ化エチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。なかでも、上記樹脂層はポリビニルアセタール、又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有することが好ましく、ポリビニルアセタールを含有することがより好ましい。
【0023】
上記ポリビニルアセタールは、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70〜99.8モル%の範囲内である。
【0024】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは1700以上、特に好ましくは1700を超え、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、特に好ましくは3000未満である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
【0025】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0026】
上記ポリビニルアセタールに含まれているアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記ポリビニルアセタールを製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記ポリビニルアセタールにおけるアセタール基の炭素数の好ましい下限は3、好ましい上限は6である。上記ポリビニルアセタールにおけるアセタール基の炭素数が3以上であると、中間膜のガラス転移温度が充分に低くなり、また、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。アルデヒドの炭素数を6以下とすることにより、ポリビニルアセタールの合成を容易にし、生産性を確保できる。上記炭素数が3〜6のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド等が挙げられる。
【0027】
上記アルデヒドは特に限定されない。上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
上記ポリビニルアセタールの水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、更に好ましくは18モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0029】
上記ポリビニルアセタールの水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠して又はASTM D1396−92に準拠して、測定することにより求めることができる。
【0030】
上記ポリビニルアセタールのアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.3モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタールと可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0031】
上記アセチル化度は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセタール基が結合しているエチレン基量は、例えば、JISK6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して又はASTM D1396−92に準拠して測定できる。
【0032】
上記ポリビニルアセタールのアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは53モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、特に好ましくは63モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタールと可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタールを製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0033】
上記アセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。
【0034】
上記アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法又はASTM D1396−92に準拠した方法により、アセチル化度と水酸基の含有率とを測定し、得られた測定結果からモル分率を算出し、次いで、100モル%からアセチル化度と水酸基の含有率とを差し引くことにより算出され得る。
【0035】
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。ポリビニルアセタールがポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。
【0036】
上記樹脂層は、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含むことが好ましい。
上記可塑剤としては、合わせガラス用中間膜に一般的に用いられる可塑剤であれば特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機可塑剤や、有機リン酸化合物、有機亜リン酸化合物等のリン酸可塑剤等が挙げられる。
上記有機可塑剤として、例えば、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート等が挙げられる。なかでも、上記樹脂層はトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、又は、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエートを含むことが好ましく、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。
【0037】
上記可塑剤の含有量は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂100質量部に対して、上記可塑剤の含有量は、好ましくは25質量部以上、より好ましくは30質量部以上、好ましくは80質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。上記可塑剤の含有量が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記可塑剤の含有量が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0038】
上記樹脂層は、接着力調整剤を含有することが好ましい。特に、合わせガラスを製造するときに、ガラスと接触する樹脂層は、上記接着力調整剤を含有することが好ましい。
上記接着力調整剤としては、例えば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好適に用いられる。上記接着力調整剤として、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。
上記塩を構成する酸としては、例えば、オクチル酸、ヘキシル酸、2−エチル酪酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸の有機酸、又は、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。合わせガラスを製造するときに、ガラスと樹脂層との接着力を容易に調製できることから、ガラスと接触する樹脂層は、接着力調整剤として、マグネシウム塩を含むことが好ましい。
【0039】
上記樹脂層は、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、接着力調整剤として変成シリコーンオイル、難燃剤、帯電防止剤、耐湿剤、熱線反射剤、熱線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0040】
本発明の合わせガラス用中間膜の厚みは特に限定されない。実用面の観点、並びに遮熱性を充分に高める観点からは、中間膜の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。中間膜の厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。
【0041】
本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されない。該中間膜の製造方法として、従来公知の方法を用いることができる。例えば、熱可塑性樹脂と必要に応じて配合される他の成分とを混練し、中間膜を成形する製造方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0042】
上記混練の方法は特に限定されない。この方法として、例えば、押出機、プラストグラフ、ニーダー、バンバリーミキサー又はカレンダーロール等を用いる方法が挙げられる。なかでも、連続的な生産に適しているため、押出機を用いる方法が好適であり、二軸押出機を用いる方法がより好適である。
【0043】
本発明の合わせガラス用中間膜では、2層以上の樹脂層として、少なくとも第1の樹脂層と第2の樹脂層とを有し、上記第1の樹脂層に含まれるポリビニルアセタール(以下、ポリビニルアセタールAという。)の水酸基量が、上記第2の樹脂層に含まれるポリビニルアセタール(以下、ポリビニルアセタールBという。)の水酸基量と異なることが好ましい。
ポリビニルアセタールAとポリビニルアセタールBとの性質が異なるため、1層だけでは実現が困難であった種々の性能を有する合わせガラス用中間膜を提供することができる。例えば、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、ポリビニルアセタールAの水酸基量がポリビニルアセタールBの水酸基量より低い場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が低くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より軟らかくなり、合わせガラス用中間膜の遮音性が高くなる。また、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、ポリビニルアセタールAの水酸基量がポリビニルアセタールBの水酸基量より高い場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が高くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より硬くなり、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
【0044】
更に、上記第1の樹脂層及び上記第2の樹脂層が可塑剤を含む場合、上記第1の樹脂層におけるポリビニルアセタール100質量部に対する可塑剤の含有量(以下、含有量Aという。)が、上記第2の樹脂層におけるポリビニルアセタール100質量部に対する可塑剤の含有量(以下、含有量Bという。)と異なることが好ましい。例えば、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、上記含有量Aが上記含有量Bより多い場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が低くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より軟らかくなり、合わせガラス用中間膜の遮音性が高くなる。また、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、上記含有量Aが上記含有量Bより少ない場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が高くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より硬くなり、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
【0045】
本発明の合わせガラス用中間膜を構成する2層以上の樹脂層の組み合わせとしては、例えば、合わせガラスの遮音性を向上させるために、上記第1の樹脂層として遮音層と、上記第2の樹脂層として保護層との組み合わせが挙げられる。合わせガラスの遮音性が向上することから、上記遮音層はポリビニルアセタールXと可塑剤とを含み、上記保護層はポリビニルアセタールYと可塑剤とを含むことが好ましい。更に、2層の上記保護層の間に、上記遮音層が積層されている場合、優れた遮音性を有する合わせガラス用中間膜(以下、遮音中間膜ともいう。)を得ることができる。以下、遮音中間膜について、より具体的に説明する。
【0046】
上記遮音中間膜において、上記遮音層は遮音性を付与する役割を有する。上記遮音層は、ポリビニルアセタールXと可塑剤とを含有することが好ましい。
上記ポリビニルアセタールXは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。
上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は5000である。上記ポリビニルアルコールの平均重合度を200以上とすることにより、得られる遮音中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、遮音層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの平均重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。
なお、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0047】
上記ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数の好ましい下限は4、好ましい上限は6である。アルデヒドの炭素数を4以上とすることにより、充分な量の可塑剤を安定して含有させることができ、優れた遮音性能を発揮することができる。また、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。アルデヒドの炭素数を6以下とすることにより、ポリビニルアセタールXの合成を容易にし、生産性を確保できる。上記炭素数が4〜6のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド等が挙げられる。
【0048】
上記ポリビニルアセタールXの水酸基量の好ましい上限は30モル%である。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量を30モル%以下とすることにより、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量のより好ましい上限は28モル%、更に好ましい上限は26モル%、特に好ましい上限は24モル%、好ましい下限は10モル%、より好ましい下限は15モル%、更に好ましい下限は20モル%である。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXの水酸基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0049】
上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量の好ましい下限は60モル%、好ましい上限は85モル%である。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量を60モル%以上とすることにより、遮音層の疎水性を高くして、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、可塑剤のブリードアウトや白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量を85モル%以下とすることにより、ポリビニルアセタールXの合成を容易にし、生産性を確保することができる。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量の下限は65モル%がより好ましく、68モル%以上が更に好ましい。
上記アセタール基量は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXのアセタール基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0050】
上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は30モル%である。上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量を0.1モル%以上とすることにより、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、ブリードアウトを防止することができる。また、上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量を30モル%以下とすることにより、遮音層の疎水性を高くして、白化を防止することができる。上記アセチル基量のより好ましい下限は1モル%、更に好ましい下限は5モル%、特に好ましい下限は8モル%、より好ましい上限は25モル%、更に好ましい上限は20モル%である。上記アセチル基量は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。
【0051】
特に、上記遮音層に遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を容易に含有させることができることから、上記ポリビニルアセタールXは、上記アセチル基量が8モル%以上のポリビニルアセタール、又は、上記アセチル基量が8モル%未満、かつ、アセタール基量が65モル%以上のポリビニルアセタールであることが好ましい。また、上記ポリビニルアセタールXは、上記アセチル基量が8モル%以上のポリビニルアセタール、又は、上記アセチル基量が8モル%未満、かつ、アセタール基量が68モル%以上のポリビニルアセタールであることが、より好ましい。
【0052】
上記遮音層における可塑剤の含有量は、上記ポリビニルアセタールX100質量部に対する好ましい下限が45質量部、好ましい上限が80質量部である。上記可塑剤の含有量を45質量部以上とすることにより、高い遮音性を発揮することができ、80質量部以下とすることにより、可塑剤のブリードアウトが生じて、合わせガラス用中間膜の透明性や接着性の低下を防止することができる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は50質量部、更に好ましい下限は55質量部、より好ましい上限は75質量部、更に好ましい上限は70質量部である。
【0053】
上記遮音層の厚み方向の断面形状が矩形状である場合には、厚さの好ましい下限は50μmである。上記遮音層の厚さを50μm以上とすることにより、充分な遮音性を発揮することができる。上記遮音層の厚さのより好ましい下限は80μmである。なお、上限は特に限定されないが、合わせガラス用中間膜としての厚さを考慮すると、好ましい上限は300μmである。
【0054】
上記遮音層は一端と、上記一端の反対側に他端とを有し、上記他端の厚みが、上記一端の厚みよりも大きい形状を有していても良い。上記遮音層は、厚み方向の断面形状が楔形状である部分を有することが好ましい。この場合、上記遮音層の最小厚みの好ましい下限は50μmである。上記遮音層の最小厚みを50μm以上とすることにより、充分な遮音性を発揮することができる。上記遮音層の最小厚みのより好ましい下限は80μmであり、更に好ましい下限は100μmである。なお、上記遮音層の最大厚みの上限は特に限定されないが、合わせガラス用中間膜としての厚さを考慮すると、好ましい上限は300μmである。上記遮音層の最大厚みのより好ましい上限は220μmである。
【0055】
上記保護層は、遮音層に含まれる大量の可塑剤がブリードアウトして、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性が低下するのを防止し、また、合わせガラス用中間膜に耐貫通性を付与する役割を有する。
上記保護層は、例えば、ポリビニルアセタールYと可塑剤とを含有することが好ましく、ポリビニルアセタールXより水酸基量が大きいポリビニルアセタールYと可塑剤とを含有することがより好ましい。
【0056】
上記ポリビニルアセタールYは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。
また、上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は5000である。上記ポリビニルアルコールの平均重合度を200以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、保護層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの平均重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。
【0057】
上記ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数の好ましい下限は3、好ましい上限は4である。アルデヒドの炭素数を3以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。アルデヒドの炭素数を4以下とすることにより、ポリビニルアセタールYの生産性が向上する。
上記炭素数が3〜4のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド等が挙げられる。
【0058】
上記ポリビニルアセタールYの水酸基量の好ましい上限は33モル%、好ましい下限は28モル%である。上記ポリビニルアセタールYの水酸基量を33モル%以下とすることにより、合わせガラス用中間膜の白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールYの水酸基量を28モル%以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
【0059】
上記ポリビニルアセタールYは、アセタール基量の好ましい下限が60モル%、好ましい上限が80モル%である。上記アセタール基量を60モル%以上とすることにより、充分な耐貫通性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができる。上記アセタール基量を80モル%以下とすることにより、上記保護層とガラスとの接着力を確保することができる。上記アセタール基量のより好ましい下限は65モル%、より好ましい上限は69モル%である。
【0060】
上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量の好ましい上限は7モル%である。上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量を7モル%以下とすることにより、保護層の疎水性を高くして、白化を防止することができる。上記アセチル基量のより好ましい上限は2モル%であり、好ましい下限は0.1モル%である。なお、ポリビニルアセタールA、B、及び、Yの水酸基量、アセタール基量、及び、アセチル基量は、ポリビニルアセタールXと同様の方法で測定できる。
【0061】
上記保護層における可塑剤の含有量は、上記ポリビニルアセタールY100質量部に対する好ましい下限が20質量部、好ましい上限が45質量部である。上記可塑剤の含有量を20質量部以上とすることにより、耐貫通性を確保することができ、45質量部以下とすることにより、可塑剤のブリードアウトを防止して、合わせガラス用中間膜の透明性や接着性の低下を防止することができる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は30質量部、更に好ましい下限は35質量部、より好ましい上限は43質量部、更に好ましい上限は41質量部である。合わせガラスの遮音性がよりいっそう向上することから、上記保護層における可塑剤の含有量は、上記遮音層における可塑剤の含有量よりも少ないことが好ましい。
【0062】
合わせガラスの遮音性がより一層向上することから、ポリビニルアセタールYの水酸基量はポリビニルアセタールXの水酸基量より大きいことが好ましく、1モル%以上大きいことがより好ましく、5モル%以上大きいことが更に好ましく、8モル%以上大きいことが特に好ましい。ポリビニルアセタールX及びポリビニルアセタールYの水酸基量を調整することにより、上記遮音層及び上記保護層における可塑剤の含有量を制御することができ、上記遮音層のガラス転移温度が低くなる。結果として、合わせガラスの遮音性がより一層向上する。
また、合わせガラスの遮音性がより一層向上することから、上記遮音層におけるポリビニルアセタールX100質量部に対する、可塑剤の含有量(以下、含有量Xともいう。)は、上記保護層におけるポリビニルアセタールY100質量部に対する、可塑剤の含有量(以下、含有量Yともいう。)より多いことが好ましく、5質量部以上多いことがより好ましく、15質量部以上多いことが更に好ましく、20質量部以上多いことが特に好ましい。含有量X及び含有量Yを調整することにより、上記遮音層のガラス転移温度が低くなる。結果として、合わせガラスの遮音性がより一層向上する。
【0063】
上記保護層の厚さは、上記保護層の役割を果たし得る範囲に調整すればよく、特に限定されない。ただし、上記保護層上に凹凸を有する場合には、直接接する上記遮音層との界面への凹凸の転写を抑えられるように、可能な範囲で厚くすることが好ましい。具体的には、上記保護層の断面形状が矩形状であれば、上記保護層の厚さの好ましい下限は100μm、より好ましい下限は300μm、更に好ましい下限は400μm、特に好ましい下限は450μmである。上記保護層の厚さの上限については特に限定されないが、充分な遮音性を達成できる程度に遮音層の厚さを確保するためには、実質的には500μm程度が上限である。
【0064】
上記保護層は一端と、上記一端の反対側に他端とを有し、上記他端の厚みが、上記一端の厚みよりも大きい形状を有していても良い。上記保護層は、厚み方向の断面形状が楔形状である部分を有することが好ましい。上記保護層の厚さは、上記保護層の役割を果たし得る範囲に調整すればよく、特に限定されない。ただし、上記保護層上に凹凸を有する場合には、直接接する上記遮音層との界面への凹凸の転写を抑えられるように、可能な範囲で厚くすることが好ましい。具体的には、上記保護層の最小厚みの好ましい下限は100μm、より好ましい下限は300μm、更に好ましい下限は400μm、特に好ましい下限は450μmである。上記保護層の最大厚みの上限については特に限定されないが、充分な遮音性を達成できる程度に遮音層の厚さを確保するためには、実質的には1000μm程度が上限であり、800μmが好ましい。
【0065】
本発明の合わせガラス用中間膜は、一端と、上記一端の反対側に他端とを有していてもよい。上記一端と上記他端とは、中間膜において対向し合う両側の端部である。本発明の合わせガラス用中間膜では、上記他端の厚みが、上記一端の厚みよりも大きいことが好ましい。このような一端と他端の厚みが異なる形状を有することで、本発明の合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスをヘッドアップディスプレイとして好適に用いることができ、その際に、二重像の発生を効果的に抑制できる。本発明の合わせガラス用中間膜は、断面形状が楔形であってもよい。合わせガラス用中間膜の断面形状が楔形であれば、合わせガラスの取り付け角度に応じて、楔形の楔角θを調整することにより、ヘッドアップディスプレイにおいて二重像の発生を防止した画像表示が可能となる。二重像をより一層抑制する観点から、上記楔角θの好ましい下限は0.1mrad、より好ましい下限は0.2mradであり、更に好ましい下限は0.3mrad、好ましい上限は1mrad、より好ましい上限は0.9mradである。なお、例えば押出機を用いて樹脂組成物を押出し成形する方法により断面形状が楔形の合わせガラス用中間膜を製造した場合、薄い側の一方の端部からわずかに内側の領域(具体的には、一端と他端との間の距離をXとしたときに、薄い側の一端から内側に向かって0X〜0.2Xの距離の領域)に最小厚みを有し、厚い側の一方の端部からわずかに内側の領域(具体的には、一端と他端との間の距離をXとしたときに、厚い側の一端から内側に向かって0X〜0.2Xの距離の領域)に最大厚みを有する形状となることがある。本明細書においては、このような形状も楔形に含まれる。
【0066】
上記遮音中間膜を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記遮音層と保護層とを、押し出し法、カレンダー法、プレス法等の通常の製膜法によりシート状に製膜した後、積層する方法等が挙げられる。
【0067】
本発明の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されている合わせガラスもまた、本発明の1つである。
上記ガラス板は、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ガラスの表面に紫外線遮蔽コート層を有する紫外線遮蔽ガラスも用いることができる。更に、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
上記ガラス板として、2種類以上のガラス板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板との間に、本発明の合わせガラス用中間膜を積層した合わせガラスが挙げられる。また、上記ガラス板として、2種以上の厚さの異なるガラス板を用いてもよい。
【発明の効果】
【0068】
本発明によれば、積層した状態で保管しても自着せずに、容易に剥離可能な合わせガラス用中間膜、及び、該合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】表面に多数の球状の凸部を有する合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図である。
図2】表面に多数のブロック状の凸部を有する合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図である。
図3】表面に凸部を有する合わせガラス用中間膜同士を積層した場合を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
(1)合わせガラス用中間膜の調製
平均重合度が1700のポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(PVB、アセチル基量1モル%、ブチラール基量69.1モル%、水酸基量30モル%)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40質量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、押出機を用いて押出すことにより、厚さ760μmの樹脂膜を得た。この際、メルトフラクチャーを制御したエンボス付与法において、金型から冷却水槽の表面までの距離を100mmとすることにより、樹脂膜の表面に微細なエンボスを付与した(第1の工程)。
【0072】
得られた樹脂膜の表面に、下記の手順により多数の球状の凸部を付与した。
ミルを用いて表面に加工を施した金属ロールと45〜75のJIS硬度を有するゴムロールとからなる一対のロールを凹凸形状転写装置として用い、第1の工程後の樹脂膜をこの凹凸形状転写装置に通し、一方の表面に多数の球状の凸部を付与した。このときの転写条件として、合わせガラス用中間膜の温度を70℃、ロール温度を140℃、線速を10m/min、プレス圧を所望の粗さを得られるように調整した。
次いで、樹脂膜の他方の面にも同様の操作を施し、多数の球状の凸部を付与して、合わせガラス用中間膜を得た。
【0073】
(2)合わせガラス用中間膜の表面状態の測定
(2−1)Rz値の測定
JIS B−0601(1994)に準じる方法により、得られた中間膜の両面の十点平均粗さ(Rz)を測定した。測定機として小坂研究所社製「Surfcorder SE300」を用い、測定時の触針計条件を、カットオフ値=2.5mm、基準長さ=2.5mm、評価長さ=12.5mm、触針の先端半径=2μm、先端角度=60°、測定速度=0.5mm/sの条件で測定を行った。測定時の環境は23℃及び30RH%下であった。触針を動かす方向は、刻線形状の溝方向に対して垂直方向とした。
【0074】
(2−2)頭頂部Sa値の測定
3次元白色光干渉型顕微鏡(ブルカーエイエックスエス社製、ContourGT−K)を用い、対物レンズの倍率を115倍、内部レンズの倍率を0.5倍、解像度設定をFull resolutionとする条件で、合わせガラス用中間膜表面を1mm四方の視野で測定して画像を得た。画像処理には、装置付属の解析ソフトである、「Vision64」を用いた。平坦化処理及びノイズ除去処理条件としては、第1の処理として、Analysis Toolbox上の「Terms Removal(F−Operator)」処理を解析条件「Tilt only(Plane Fit)」で行い、第2の処理として、「Statistic Filter」処理を解析条件「Filter type:Sigma」及び「Filter size:5」で行い、更に「data Restore」処理を解析条件「Legacy」を選択し、かつ、RestoreEdge条件を選択、Iteration条件はデータ補完が充分に行われる値に設定して行った。凸部のみの画像データを抽出する第3の処理として、「Mask data」処理を解析条件として、Histogram Mask条件下で表示されるヒストグラムのHeightが0.2〜−0.2μmの間になるように閾値を決定し、「Mask:Left」条件で閾値以上の高さ領域データを抽出した。なお、閾値が0.2〜−0.2μmの間に設定できたかは、抽出後データのヒストグラム表示から確認した。粗大な凹凸を除去するため、第4の処理として「Gaussian Regression Filter」処理を解析条件「Short wavelength pass条件下、order:2、Type:Regular、Long wavelength cutoff:0.025mm」かつadvace setupは初期条件で行った。第1から第3の処理を行った画像データを第4の処理として「S parameters−height」処理を解析条件「Removal tilt:True」で行った結果得られる、「Sa」を面算術平均粗さSa値とした。
【0075】
(2−3)凸部の配置密度の測定
3次元白色光干渉型顕微鏡(ブルカーエイエックスエス社製、ContourGT−K)を用いて、対物レンズの倍率を50倍、内部レンズの倍率を0.5倍、合わせガラス用中間膜表面を4mm四方の視野で測定して画像を得た。この際、光量及びThreshholdは、ノイズが測定に極力入らない、適切な条件で行った。次いで、画像処理には、装置付属の解析ソフトである、「Vision64」を用いた。平坦化処理及びノイズ除去処理条件としては、第1の処理として、Analysis Toolbox上の「Terms Removal(F−Operator)」処理を解析条件「Tilt only(Plane Fit)」で行い、第2の処理として、「Statistic Filter」処理を解析条件「Filter type:Sigma」及び「Filter size:5」で行った。凸部のみの面積を抽出する第3の処理として、「Multi Region」処理を解析条件として、Zerolevel設定は「Background」を選択、Region Finding Routine設定は「By Threshhold」を選択し、閾値を1μmとし、Region Finding option設定は「minimum Resion size」を5000μm、「Region Level」をPeaksに設定し、「Exculde Edge Resion」は選択せずに行った。第3の処理によって抽出された凸部の個数を計測し、1mm当たりの凸部配置密度を算出した。凸部の内、画像中で全体が表示されていないものは1/2としてカウントした。
【0076】
(2−4)凸部が表面中に占める面積の比率の測定
3次元白色光干渉型顕微鏡(ブルカーエイエックスエス社製、ContourGT−K)を用いて測定した。対物レンズの倍率を50倍、内部レンズの倍率を0.5倍、合わせガラス用中間膜表面を4mm四方の視野で測定して画像を得た。この際、光量及びThreshholdは、ノイズが測定に極力入らない、適切な条件で行った。次いで、画像処理には、装置付属の解析ソフトである、「Vision64」を用いた。平坦化処理及びノイズ除去処理条件としては、第1の処理として、Analysis Toolbox上の「Terms Removal(F−Operator)」処理を解析条件「Tilt only(Plane Fit)」で行い、第2の処理として、「Statistic Filter」処理を解析条件「Filter type:Sigma」及び「Filter size:5」で行った。凸部のみの面積を抽出する第3の処理として、「Multi Region」処理を解析条件として、Zerolevel設定は「Background」を選択、Region Finding Routine設定は「By Threshhold」を選択し、閾値を1μmとし、Region Finding option設定は「minimum Resion size」を5000μm、「Region Level」をPeaksに設定し、「Exculde Edge Resion」は選択せずに行った。第3の処理により得られた凸部1つ当たりの面積を積算し、1mm中に凸部が占める面積割合を算出した。
【0077】
(実施例2〜6、比較例1〜5)
表面状態が表1、2に示す値となるように金属ロールの形状及び転写条件を変更した以外は、実施例1に準じた方法により、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0078】
(実施例7〜8)
金型から冷却水槽の表面までの距離を50mmとし、表面状態が表1に示す値となるように金属ロールの形状及び転写条件を変更した以外は、実施例1に準じた方法により合わせガラス用中間膜を製造した。
【0079】
(比較例6)
金型から冷却水槽の表面までの距離を300mmとし、表面状態が表2に示す値となるように金属ロールの形状及び転写条件を変更した以外は、実施例1に準じた方法により合わせガラス用中間膜を製造した。
【0080】
(実施例9〜16)
表面状態が表3に示す値となるように金属ロールの形状及び転写条件を変更した以外は、実施例1に準じた方法により、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0081】
(実施例17、18)
用いるポリビニルブチラールの組成を表3に示すように変更し、且つ、表面状態が表3に示す値となるように金属ロールの形状及び転写条件を変更した以外は、実施例1に準じた方法により、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0082】
(実施例19)
(保護層用樹脂組成物の調製)
平均重合度が1700のポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(PVB、アセチル基量1モル%、ブチラール基量69モル%、水酸基量30モル%)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)36質量部を添加した。ミキシングロールで充分に混練し、保護層用樹脂組成物を得た。
【0083】
(中間層用樹脂組成物の調製)
平均重合度が3000のポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(PVB、アセチル基量12.5モル%、ブチラール基量64.2モル%、水酸基量23.3モル%)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)76.5質量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、中間層用樹脂組成物を得た。
【0084】
(合わせガラス用中間膜の作製)
得られた中間層用樹脂組成物と保護層用樹脂組成物を、共押出機を用いて共押出することにより、保護層用樹脂組成物からなる第1の保護層、中間層用樹脂組成物からなる中間層及び保護層用樹脂組成物からなる第2の保護層がこの順に積層された3層構造の合わせガラス用中間膜を得た。なお、凹凸付与後に得られる合わせガラス用中間膜において、第1の保護層及び第2の保護層の厚みがそれぞれ350μm、中間層の厚みが100μmとなるように押出条件を設定した。
その後、表面状態が表4に示す値となるように金属ロールの形状及び転写条件を変更した以外は、実施例1に準じた方法により、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0085】
(実施例20〜24、比較例7〜8)
表面状態が表4及び表5に示す値となるように金属ロールの形状及び転写条件を変更した以外は、実施例1に準じた方法により、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0086】
(評価)
実施例及び比較例で得られた合わせガラス用中間膜について、以下の方法により評価を行った。結果を表1〜表5に示した。
【0087】
(1)自着力の評価
実施例及び比較例で得られた合わせガラス用中間膜を縦150mm、横150mmの大きさに切断して試験片を得た。得られた試験片2枚を重ね、その上に離型処理として基材の紙にシリコーンコーティングを施した離型紙を介してガラス板(重さ5.8kg)を載せた。この状態で、温度23℃、湿度30%に調整した恒温恒湿層中に168時間放置した。
その後、試験片2枚の端部2cmを剥離させ、2枚の試験片端部をそれぞれ15cm巾のつかみ具にて固定した。JIS K−6854−3(1999)に準拠して、剥離速度を50cm/分とし、温度23℃、湿度30%の環境下で2枚の試験片間の180°剥離強度を測定し、剥離距離が50mmから200mmまでの剥離強度の平均値(N/cm)を算出した。これ以外の条件はJIS K−6854−3(1999)に準拠した。これを合わせガラス用中間膜の自着力とした。
なお、合わせガラス用中間膜を搬送する機械や人力での剥離のためには、自着力は0.5N/cm以下であることが好ましく、0.4N/cm以下であることがより好ましく、0.3N/cm以下であることが特に好ましい。
【0088】
(2)脱気性の評価
実施例及び比較例で得られた合わせガラス用中間膜を23℃、湿度30%の環境下で3時間保管した後に、二枚のクリアガラス板(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)の間に挟み、はみ出た部分を切り取り、こうして得られた合わせガラス構成体(積層体)をゴムバッグ内に移し、ゴムバッグを吸引減圧機に接続し、加熱すると同時に−30kPa(絶対圧力16kPa)の減圧下で10分間保持し、合わせガラス構成体(積層体)の温度(予備圧着温度)が70℃となるように加熱した後、大気圧に戻して予備圧着を終了した。なお、上記予備圧着開始時のガラスの表面の温度(脱気開始温度)は60℃とした。
予備圧着された合わせガラス構成体(積層体)をオートクレーブ中に入れ、温度140℃、圧力1300kPaの条件下で10分間保持した後、50℃まで温度を下げ大気圧に戻すことにより本圧着を終了して、合わせガラスを作製した。
【0089】
得られた合わせガラスを140℃のオーブン中で2時間加熱した。次いで、オーブンから取り出して3時間放冷した後、合わせガラスの外観を目視で観察した。テスト枚数を各20枚とし、合わせガラスに発泡(気泡)が生じた枚数を調べて、以下の基準により脱気性を評価した。
○:発泡が生じた枚数が5枚以下
×:発泡が生じた枚数が5枚を超える
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明によれば、積層した状態で保管しても自着せずに、容易に剥離可能な合わせガラス用中間膜、及び、該合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスを提供することができる。
図1
図2
図3