特許第6971037号(P6971037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特許6971037三次元積層造形用金属粉末の製造方法及び三次元積層造形方法
<>
  • 特許6971037-三次元積層造形用金属粉末の製造方法及び三次元積層造形方法 図000002
  • 特許6971037-三次元積層造形用金属粉末の製造方法及び三次元積層造形方法 図000003
  • 特許6971037-三次元積層造形用金属粉末の製造方法及び三次元積層造形方法 図000004
  • 特許6971037-三次元積層造形用金属粉末の製造方法及び三次元積層造形方法 図000005
  • 特許6971037-三次元積層造形用金属粉末の製造方法及び三次元積層造形方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971037
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】三次元積層造形用金属粉末の製造方法及び三次元積層造形方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/34 20210101AFI20211111BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20211111BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20211111BHJP
【FI】
   B22F10/34
   B22F1/00 A
   B33Y70/00
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-13713(P2017-13713)
(22)【出願日】2017年1月27日
(65)【公開番号】特開2018-119202(P2018-119202A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】谷川 秀次
(72)【発明者】
【氏名】北村 仁
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宏介
(72)【発明者】
【氏名】原口 英剛
(72)【発明者】
【氏名】小熊 英隆
(72)【発明者】
【氏名】大原 利信
(72)【発明者】
【氏名】中村 真大
(72)【発明者】
【氏名】種池 正樹
(72)【発明者】
【氏名】畑中 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 伸彦
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/020128(WO,A1)
【文献】 特開平11−029802(JP,A)
【文献】 特開2015−151586(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/090052(WO,A1)
【文献】 特開2012−101532(JP,A)
【文献】 特開2017−110294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−1/02,3/105,3/16,
9/00−9/30,10/00−12/90,
B33Y 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末及び高分子系の分散剤をエッチング液に添加するステップと、
前記エッチング液に添加された前記金属粉末を撹拌しながら、前記金属粉末の酸化膜の少なくとも一部を除去するステップと、
を備えることを特徴とする三次元積層造形用金属粉末の製造方法。
【請求項2】
前記金属粉末の酸化膜の少なくとも一部を除去するステップでは、前記エッチング液に添加された前記金属粉末を超音波加振によって撹拌することを特徴とする、請求項1に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法。
【請求項3】
前記金属粉末の酸化膜の少なくとも一部を除去するステップでは、前記金属粉末と前記エッチング液とが入った処理槽内に設けられた撹拌機によって前記エッチング液を撹拌し、前記撹拌機より下方にのみ設けられた超音波振動子によって前記金属粉末を撹拌する、請求項1又は2に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法。
【請求項4】
三次元積層造形装置から使用済みの前記金属粉末を回収するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法。
【請求項5】
前記酸化膜の除去後、前記金属粉末を前記エッチング液から分離するステップと、
前記エッチング液から分離した前記金属粉末を洗浄するステップと、
前記金属粉末の洗浄後、前記金属粉末を真空乾燥するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法。
【請求項6】
前記金属粉末の真空乾燥後、前記金属粉末を不活性ガスが封入された容器内で保管するステップをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法。
【請求項7】
前記酸化膜の膜厚が3nm以下になるように、前記金属粉末が添加された前記エッチング液を撹拌することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法。
【請求項8】
前記金属粉末と前記エッチング液とが入った処理槽と、前記エッチング液が入った調整槽との間でエッチング液を循環させるステップと、
前記調整槽内のエッチング液のpH及び溶存酸素濃度が規定の範囲内となるように、エッチング原液槽から前記調整槽へのエッチング原液の供給と、溶媒槽から前記調整槽への溶媒の供給と、前記調整槽からの廃液の排出とを自動的に行うステップと、
を備える、請求項1乃至7の何れか1項に記載の三次元積層造形用粉末の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至の何れか1項に記載の方法により、前記酸化膜の少なくとも一部が除去された前記金属粉末を製造するステップと、
前記酸化膜の除去後、前記金属粉末を三次元積層造形装置に投入するステップと、
前記三次元積層造形装置により前記金属粉末を選択的に固化させて造形物を得るステップと、
を備えることを特徴とする三次元積層造形方法。
【請求項10】
前記金属粉末を製造するステップでは、前記三次元積層造形装置から回収した使用済み金属粉末の前記酸化膜の少なくとも一部を除去して前記金属粉末を得ることを特徴とする請求項に記載の三次元積層造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元積層造形用金属粉末の製造方法、三次元積層造形方法及び三次元積層造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元積層造形が種々の製品の製造方法として利用されている。例えば、ガスタービン製品の高温部品の製造には、SLM(Selective Laser Manufacturing)方式やLMD(Laser Metal Deposition)方式等の各方式でNi基超合金の粉末による三次元積層造形が利用される場合がある。
【0003】
一部の金属粉末で三次元積層造形を行う場合、造形物の高温クリープ寿命が鋳物に比べて低下する。この低下原因の一つとして、三次元積層造形物内の酸素濃度が、鋳物の酸素濃度より高いことが考えられる。
【0004】
金属粉末は例えばガストアトマイズ法で製粉されており、粉末表層部が酸化膜で覆われている。例えばNi基超合金の粉末表層には、酸化膜としてAl(アルミナ)の層が形成されている。このため、この酸化膜が厚いほど金属粉末の酸素濃度が高くなり、金属粉末を用いた三次元積層造形物の酸素濃度も高くなる。
【0005】
特許文献1には、アルミニウム合金粉末を酸性溶液に浸漬して粉末表面の酸化膜を除去し、粉末表面に化成皮膜を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許2566433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示される方法によって酸化膜を除去した金属粉末を用いて三次元積層造形を行う場合、酸化膜を均一に除去できず、金属粉末の球形状を維持できなくなり、金属粉末の流動性が低下する。このため、三次元積層造形装置を用いて三次元積層造形を行う際に、金属粉末を均一に敷いて適切な粉末層を形成することが困難になりやすい。
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述したような従来の課題に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、流動性の低下を抑制しつつ酸素濃度を低減可能な三次元積層造形用金属粉末の製造方法並びにこれを用いた三次元積層造形方法及び三次元積層造形物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る三次元積層造形用金属粉末の製造方法は、金属粉末をエッチング液に添加するステップと、前記エッチング液に添加された前記金属粉末を撹拌しながら、前記金属粉末の酸化膜の少なくとも一部を除去するステップと、を備える。
【0010】
上記(1)に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法によれば、金属粉末の酸化膜の少なくとも一部の除去を、エッチング液に添加された金属粉末を撹拌しながら行っているため、酸化膜を均一に除去して金属粉末の球形状を維持することができる。したがって、金属粉末の流動性の低下を抑制しつつ、金属粉末の酸化膜の厚みを低減することができる。よって、金属粉末の流動性の低下を抑制しつつ、金属粉末の酸素濃度を低減することができる。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法において、前記金属粉末の酸化膜の少なくとも一部を除去するステップでは、前記エッチング液に添加された前記金属粉末を超音波加振によって撹拌する。
【0012】
上記(2)に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法によれば、エッチング液に添加された金属粉末を超音波加振によって撹拌することにより、酸化膜を均一に除去して金属粉末の球形状を維持する上記(1)の効果を高めることができる。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法において、前記エッチング液に分散剤を添加するステップをさらに備える。
【0014】
上記(3)に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法によれば、エッチング中における金属粉末同士の凝着を分散剤によって抑制することにより、酸化膜を均一に除去して金属粉末の球形状を維持する上記(1)の効果を高めることができる。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法において、三次元積層造形装置から使用済みの前記金属粉末を回収するステップをさらに備える。
【0016】
上記(4)に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法によれば、回収した使用済みの金属粉末に対して上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の方法により酸化膜の少なくとも一部を除去することで、使用済みの金属粉末の流動性の低下を抑制しつつ該金属粉末の酸素濃度を低減し、三次元積層造形に好適な金属粉末として再利用することができる。
【0017】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法において、前記酸化膜の除去後、前記金属粉末を前記エッチング液から分離するステップと、前記エッチング液から分離した前記金属粉末を洗浄するステップと、前記金属粉末の洗浄後、前記金属粉末を真空乾燥するステップと、をさらに備える。
【0018】
上記(5)に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法によれば、金属粉末をエッチング液から分離して洗浄し、洗浄後に真空乾燥することにより、金属粉末に吸着したエッチング液及び分散剤を除去することができる。
【0019】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法において、前記金属粉末の真空乾燥後、前記金属粉末を不活性ガスが封入された容器内で保管するステップをさらに備える。
【0020】
上記(6)に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法によれば、金属粉末の真空乾燥後に金属粉末を不活性ガスが封入された容器内で保管することにより、金属粉末と雰囲気ガスとの反応を抑制し、金属粉末における酸化膜の膜厚増大を抑制することができる。
【0021】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れか1項に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法において、前記酸化膜の膜厚が3nm以下になるように、前記金属粉末が添加された前記エッチング液を撹拌する。
【0022】
上記(7)に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法によれば、金属粉末の酸化膜の膜厚を3nm以下にすることで、高品質かつ長い高温クリープ寿命を有する造形物を製造可能な三次元積層造形用金属粉末を製造することができる。
【0023】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る三次元積層造形用金属粉末の製造方法は、金属粉末をドライエッチングして、前記金属粉末の酸化膜の少なくとも一部を除去するステップを備える。
【0024】
上記(8)に記載の三次元積層造形用金属粉末の製造方法によれば、超音波加振等によって金属粉末の撹拌を行わなくとも、金属粉末の流動性の低下を抑制しつつ金属粉末の酸化膜の厚みを低減することができる。よって、超音波加振等によって金属粉末の撹拌を行わなくとも、金属粉末の流動性の低下を抑制しつつ金属粉末の酸素濃度を低減することができる。
【0025】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る三次元積層造形方法は、上記(1)乃至(8)の何れか1項に記載の方法により、前記酸化膜の少なくとも一部が除去された前記金属粉末を製造するステップと、前記酸化膜の除去後、前記金属粉末を三次元積層造形装置に投入するステップと、前記三次元積層造形装置により前記金属粉末を選択的に固化させて造形物を得るステップと、を備える。
【0026】
上記(9)に記載の三次元積層造形方法によれば、上記(1)乃至(8)の何れか1項に記載の方法により、酸化膜の少なくとも一部が除去された金属粉末を製造するため、金属粉末の流動性の低下を抑制しつつ金属粉末の酸素濃度を低減した金属粉末を用いて三次元積層造形を行うことができる。このため、高品質かつ長い高温クリープ寿命を有する造形物を製造することができる。
【0027】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)に記載の三次元積層造形方法において、前記金属粉末を製造するステップでは、前記三次元積層造形装置から回収した使用済み金属粉末の前記酸化膜の少なくとも一部を除去して前記金属粉末を得る。
【0028】
上記(10)に記載の三次元積層造形方法によれば、回収した使用済みの金属粉末に対して上記(1)乃至(8)の何れか1項に記載の方法により酸化膜の少なくとも一部を除去することで、使用済みの金属粉末の流動性の低下を抑制しつつ該金属粉末の酸素濃度を低減することができる。このため、使用済みの金属粉末を、三次元積層造形に好適な金属粉末として再利用することができる。
【0029】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る三次元積層造形物は、酸素濃度が100ppm以下である金属成形体を備える。
【0030】
上記(11)に記載の三次元積層造形物によれば、三次元積層造形物の高温クリープ寿命を長寿命化することができる。
【0031】
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係る三次元積層造形用の金属粉末は、三次元積層造形に用いられる金属粉末であって、酸化膜の厚さが3nm以下である。
【0032】
上記(12)に記載の三次元積層造形用の金属粉末を用いて三次元積層造形を行うことにより、長い高温クリープ寿命を有する三次元積層造形物を製造することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、流動性の低下を抑制しつつ酸素濃度を低減可能な三次元積層造形用金属粉末の製造方法並びにこれを用いた三次元積層造形方法及び三次元積層造形物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】一実施形態に係る三次元積層造形のプロセスフローを説明するための図である。
図2】酸化膜除去プロセスの一例を説明するための図である。
図3】オージェ分析によって得られる、酸化膜除去プロセスを行う前の新品の金属粉末におけるスパッタ深さと酸素の強度との関係を示す酸素濃度分布図である。
図4】オージェ分析によって得られる、酸化膜除去プロセスを行う前の使用済みの金属粉末(32回ビーム照射を受けた金属粉末)におけるスパッタ深さと酸素の強度との関係を示す酸素濃度分布図である。
図5】酸化膜除去プロセスを行うためのエッチング処理設備の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0036】
図1は、一実施形態に係る三次元積層造形のプロセスフローを説明するための図である。
まず、S11において、新品の金属粉末(本実施形態ではNi基超合金の粉末)を準備する。次に、S12において、金属粉末をエッチング液に添加し、エッチング液に添加された金属粉末を撹拌しながら、金属粉末の酸化膜の少なくとも一部を除去する(以下、「酸化膜除去プロセス」という。)。
【0037】
酸化膜除去プロセスでは、例えば、図2に示すように、S121において、金属粉末及び高分子系の分散剤をエッチング液に添加し(分散剤を添加したエッチング液に金属粉末を浸漬し)、S122において、エッチング液に添加された金属粉末を超音波加振によって撹拌しながら、金属粉末の酸化膜の少なくとも一部を除去する。そして、S123において、金属粉末をエッチング液から篩又は濾紙を用いて分離する。
【0038】
なお、エッチング液には、例えばグラード液(塩酸に酸化鉄及び水等の溶媒を添加した液)又はその他の酸化皮膜除去剤(例えばエスクリーンS−105 佐々木化学薬品株式会社製)を使用することができる。
【0039】
次に、S13において、酸化膜の少なくとも一部が除去された金属粉末を洗浄する。金属粉末の洗浄は、例えば水洗であってもよいし、超音波洗浄等であってもよい。また、一実施形態では、S12とS13の間において、分級機によって金属粉末の分級を行うことで金属粉末の粒径を揃えてもよい。
【0040】
次に、S14において、金属粉末の真空乾燥を行い、真空乾燥後の金属粉末を不活性ガスが封入された容器内で保管する。不活性ガスは、例えばAr(アルゴン)ガスであってもよい。
【0041】
次に、S15において、S14で保管していた金属粉末を三次元積層造形装置に投入し、S16において、三次元積層造形装置により金属粉末を選択的に固化させて造形物を得る。次に、S17において、三次元積層造形装置から使用済みの金属粉末を回収する。そして、再びS12に戻り、回収した使用済みの金属粉末をエッチング液に添加し、エッチング液に添加された金属粉末を撹拌しながら、金属粉末の酸化膜の少なくとも一部を除去して再利用のための金属粉末を得て、再びS13以降を繰り返す。
【0042】
なお、回収した金属粉末に対するS12〜S14までの処理は、必ずしも三次元積層装置による造形物の製造毎に行う必要はない。例えば、三次元積層造形装置によって所定回数の造形処理が行われ、金属粉末の酸化膜が一定の膜厚を超えたと判断できるタイミングでS12〜S14までの処理を行ってもよい。これにより、効率的に酸化膜の除去を行うことができる。
【0043】
以上に示したフローでは、酸化膜除去プロセスにおいて、エッチング液に添加された金属粉末を超音波加振によって撹拌しながらエッチングを行っている。これにより、酸化膜を均一に除去して金属粉末の球形状を維持することができるため、金属粉末の流動性の低下を抑制しつつ、金属粉末の酸化膜の厚みを低減することができる。このため、高品質かつ長い高温クリープ寿命を有する造形物を製造することができる。なお、金属粉末の流動性は、例えば安息角測定又はホールフローメータによって評価可能である。
【0044】
また、オージェ分析によれば、図3及び図4に示すように、上記酸化膜除去プロセスを行う前の新品の金属粉末には5nmの厚みを有する酸化膜が形成されており、上記酸化膜除去プロセスを行う前の使用済みの金属粉末には43nmの厚みを有する酸化膜が形成されていた。これに対し、上記酸化膜除去プロセスを行うことにより、新品の金属粉末及び使用済みの金属粉末の何れにおいても、酸化膜の厚みを3nm以下に低減することができる。なお、ここでの「酸化膜の厚み」は、オージェ分析における酸素の強度が最大値の1/2となるスパッタ深さを意味する。
【0045】
また、上記酸化膜除去プロセスを行う前の新品の金属粉末の酸素濃度は235ppmであり、上記酸化膜除去プロセスを行う前の使用済みの金属粉末の酸素濃度は2000ppmであった。これに対し、上記酸化膜除去プロセスを行うことにより、新品の金属粉末及び使用済みの金属粉末の何れにおいても、金属粉末の酸素濃度を150ppm以下にすることができた。なお、ここでの「金属粉末の酸素濃度」は、下記式(1)で算出した推定値である。
(金属粉末の酸素濃度)={(酸化膜中の酸素の重量比率)×(酸化膜の体積)×(酸化膜の密度)}/{(金属粉末の体積)×(金属粉末の密度)} (1)
【0046】
また、酸化膜の厚みを低減した金属粉末を用いて三次元積層造形を行うことにより、造形物の酸素濃度を低減することができる。なお、造形中には金属粉末表層の酸化膜の一部が除去(飛散、蒸発等)されるため、100ppm以下の金属成形品を含む三次元積層造形物を製造できることが推定される。
【0047】
次に、S12における酸化膜除去プロセスを行うためのエッチング処理設備の構成例を図5を用いて説明する。
図5に示すエッチング処理設備100は、処理槽2、超音波振動子4、調整槽6、エッチング原液槽8、溶媒槽10、循環ポンプ12、供給ポンプ14,16、廃液ポンプ18、PHセンサ20、溶存酸素濃度センサ22、及び撹拌機24,26を備える。
【0048】
超音波振動子4は、エッチング液に添加された金属粉末を撹拌(振動)するように、処理槽2の底面2a及び側面2bの下部2b1に沿って設けられている。図示する例示的形態では、簡素な構成でエッチングを効果的に促進するため、超音波振動子4は撹拌機24より下方にのみ設けられている。また、撹拌機24は、処理槽2内に設けられており、エッチング液を撹拌して金属粉末とエッチング液との反応を促進するよう構成されている。
【0049】
処理槽2と調整槽6とは循環流路28によって接続されている。循環ポンプ12は、循環流路28に設けられており、処理槽2のエッチング液の濃度が一定になるように、処理槽2と調整槽6との間でエッチング液を循環させるように構成されている。
【0050】
調整槽6とエッチング原液槽8及び溶媒槽10とは供給流路30によって接続されている。供給ポンプ14は、供給流路30におけるエッチング原液槽8と調整槽6との間に設けられており、エッチング原液槽8内のエッチング原液を調整槽6へ供給可能に構成されている。供給ポンプ16は、供給流路30における溶媒槽10と調整槽6との間に設けられており、溶媒槽10内の溶媒(水等)を調整槽6へ供給可能に構成されている。
【0051】
調整槽6には、エッチング液を排出するための排出流路32が接続されている。廃液ポンプ18は排出流路32に設けられており、調整槽6からエッチング廃液を排出可能に構成されている。
【0052】
撹拌機26は、調整槽6内に設けられており、調整槽6内のエッチング液を撹拌するよう構成されている。PHセンサ20は、調整槽6内に設けられており、調整槽6内のエッチング液のPHを計測するよう構成されている。溶存酸素濃度センサ22は、調整槽6内に設けられており、調整槽6内のエッチング液の溶存酸素濃度を計測するよう構成されている。
【0053】
供給ポンプ14によるエッチング原液の供給、供給ポンプ16による溶媒の供給及び廃液ポンプ18による廃液の排出は、調整槽6内のエッチング液のPH及び溶存酸素濃度が規定の範囲内となるように自動的に行われる。
【0054】
以上に示したエッチング処理設備100によれば、処理槽2において、エッチング液に添加された金属粉末を超音波振動子4による超音波加振によって撹拌しながら、金属粉末の酸化膜の少なくとも一部を除去することができる。これにより、酸化膜を均一に除去して金属粉末の球形状を維持することができるため、金属粉末の流動性の低下を抑制しつつ、金属粉末の酸化膜の厚みを低減することができる。したがって、図1及び図2を用いて上述した酸化膜除去プロセスを簡素な方法で効果的に行うことができる。
【0055】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0056】
例えば、上述した実施形態では、エッチング液として、グラード液やエスクリーンS−105を例示したが、エッチング液はこれに限らず、例えばフッ化水素や王水であってもよい。
【0057】
また、上述した実施形態では、ウエットエッチングによって金属粉末の酸化膜の少なくとも一部を除去する方法を例示したが、他の実施形態では、金属粉末をドライエッチングすることによって金属粉末の酸化膜の少なくとも一部を除去してもよい。例えば、BCl(三塩化ホウ素)ガス、Cl(塩素)ガス及びAr(アルゴン)ガスを含む混合ガスを用いたドライエッチングによって、金属粉末の酸化膜の少なくとも一部を除去することができる。この場合、上述した超音波加振による金属粉末の撹拌を行うことなく、金属粉末の流動性の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0058】
2 処理槽
2a 底面
2b 側面
2b1 下部
4 超音波振動子
6 調整槽
8 エッチング原液槽
10 溶媒槽
12 循環ポンプ
14,16 供給ポンプ
18 廃液ポンプ
20 センサ
22 溶存酸素濃度センサ
24,26 撹拌機
28 循環流路
30 供給流路
32 排出流路
100 エッチング処理設備
図1
図2
図3
図4
図5