(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1のように、仮にアンクルハコと振り石との衝撃を緩和した場合であっても、摩耗粉は少なからず発生する。そのため、アンクルハコの側面上には、アンクルハコと振り石との係脱に伴い、除々に摩耗粉が滞留するおそれがある。
【0007】
また、アンクルハコと振り石との潤滑性能を向上させ、摩耗量を低減させるために、アンクルハコの側面に潤滑油を供給することも考えられる。
しかしながら、仮にアンクルハコの側面上で摩耗粉が発生した場合には、アンクルハコの側面上で潤滑油と摩耗粉とが混ざり合うことで、潤滑油の粘度が増加するおそれがある。そのため、所望の潤滑性能を得ることが難しかった。
【0008】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、摩耗粉の滞留を抑制し、長期に亘って計時精度に優れたアンクル、調速脱進機、ムーブメント及び時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の一態様に係るアンクルは、てんぷの振り石が係脱するアンクルハコの側面に、少なくとも前記側面上で開口する凹部が形成されている。
【0010】
この構成によれば、アンクルハコの側面と振り石との摩耗により、側面上で発生した摩耗粉を凹部内で収容することができる。これにより、摩耗粉がアンクルハコの側面上で滞留するのを抑制し、アンクルハコの側面と振り石との摺動抵抗を長期に亘って良好に維持できる。これにより、長期に亘って優れた計時精度を維持できる。
さらに、本態様では、凹部内に摩耗粉を収容できるため、アンクルハコの側面上に潤滑油を供給したとしても、潤滑油と摩耗粉がアンクルハコの側面上で混ざり合うのを抑制できる。これにより、潤滑油の粘度上昇を抑制し、長期に亘って摩耗量を低減できる。
【0011】
上記態様のアンクルにおいて、前記凹部は、前記側面を含む二面以上で開口していてもよい。
この構成によれば、凹部がアンクルハコの側面以外の部分においても開口していることで、アンクルハコの側面上で発生した摩耗粉が凹部を通過してアンクルから排出される。これにより、アンクルハコの側面と振り石との摺動抵抗を長期に亘って良好に維持できる。
【0012】
上記態様のアンクルにおいて、前記振り石は、前記側面の面内方向のうち第1方向に沿って摺動し、前記凹部は、前記側面における前記第1方向に沿う前記振り石の摺動領域に形成されていてもよい。
この構成によれば、凹部がアンクルハコの側面において摺動領域以外の部分に形成されている場合に比べてアンクルハコの側面上で発生した摩耗粉を速やかに凹部内に収容できる。これにより、アンクルハコの側面上で摩耗粉が滞留するのを確実に抑制できる。
【0013】
上記態様のアンクルにおいて、前記凹部は、前記第1方向に沿って延在していてもよい。
この構成によれば、側面における第1方向に直交する方向(振り石の摺動方向に直交する方向)において、振り石と側面との接触面積を低減できる。また、振り座がアンクルハコの側面上を摺動する際において、振り座と凹部の開口縁との引っ掛かりを抑制できる。これにより、アンクルハコの側面上において、振り石がスムーズに摺動することになるので、動作信頼性の更なる向上を図ることができる。
【0014】
上記態様のアンクルにおいて、前記摺動領域は、前記振り石が接触する摺動面と、前記摺動面に連なり前記振り石との接触を避ける逃げ面と、を有し、前記凹部は、前記逃げ面に形成されていてもよい。
この構成によれば、摺動領域のうち振り石との摺動面との摺動により摺動面上に発生した摩耗粉は、逃げ面の凹部内に収容される。この場合、摺動面上に凹部が開口していないので、摺動面上を振り石がスムーズに摺動することになる。これにより、動作信頼性の向上を図ることができる。
【0015】
本発明の一態様に係る調速脱進機は、上記態様のアンクルと、往復回動可能に構成されるとともに、前記アンクルハコに係脱可能な振り石を有するてんぷと、回転可能に構成されるとともに、前記アンクルのつめ石が係脱可能ながんぎ車と、を備えている。
本発明の一態様に係るムーブメントは、上記態様の調速脱進機を備えている。
本発明の一態様に係る時計は、上記態様のムーブメントを備えている。
この構成によれば、上記態様のアンクルを備えているため、長期に亘って計時精度に優れた、動作信頼性の高い調速脱進機、ムーブメント及び時計を提供できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、摩耗粉の滞留を抑制し、長期に亘って計時精度に優れたアンクル、調速脱進機、ムーブメント及び時計を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
[時計]
図1は、時計1の外観図である。なお、以下に示す各図では、図面を見やすくするため、時計用部品のうち一部の図示を省略しているとともに、各時計用部品を簡略化して図示している場合がある。
図1に示すように、本実施形態の時計1は、ムーブメント2や文字板3、各種指針4〜6等が時計ケース7内に組み込まれて構成されている。
【0019】
時計ケース7は、ケース本体11と、ケース蓋(不図示)と、カバーガラス12と、を備えている。ケース本体11の側面のうち、3時位置(
図1の右側)にはりゅうず15が設けられている。りゅうず15は、ケース本体11の外側からムーブメント2を操作するためのものである。りゅうず15は、ケース本体11内に挿通された巻真19に固定されている。
【0020】
[ムーブメント]
図2は、ムーブメント2を表側から見た平面図である。
図2に示すように、ムーブメント2は、ムーブメント2の基板を構成する地板21に複数の歯車体等が回転可能に支持されて構成されている。なお、以下の説明では、地板21に対して時計ケース7のカバーガラス12側(文字板3側)をムーブメント2の「裏側」と称し、ケース蓋側(文字板3側とは反対側)をムーブメント2の「表側」と称する。また、以下で説明する各歯車体は、何れもムーブメント2の表裏面方向を軸方向として設けられている。
【0021】
地板21には、上述した巻真19が組み込まれている。巻真19は、日付や時刻の修正に用いられる。巻真19は、その軸線周りに回転可能、かつ軸方向に移動可能とされている。巻真19は、おしどり23、かんぬき24、かんぬきばね25及び裏押さえ26を含む切換装置によって、軸線方向の位置が決められている。
巻真19を回転させると、つづみ車(不図示)の回転を介してきち車31が回転する。きち車31の回転により丸穴車32及び角穴車33が順に回転し、香箱車34に収容されたぜんまい(不図示)が巻き上げられる。
【0022】
香箱車34は、地板21と香箱受35との間で回転可能に支持されている。二番車41、三番車42、四番車43は、地板21と輪列受45との間で回転可能に支持されている。
ぜんまいの復元力により香箱車34が回転すると、香箱車34の回転により二番車41、三番車42及び四番車43が順に回転する。香箱車34、二番車41、三番車42及び四番車43は、表輪列を構成する。
【0023】
上述した表輪列のうち、二番車41には、分針5(
図1参照)が取り付けられている。二番車41の回転に伴って回転する筒車(不図示)には、上述した時針4が取り付けられている。また、秒針6(
図1参照)は、四番車43の回転に基づいて回転するように構成されている。
【0024】
<調速脱進機>
図3は、ムーブメント2のうち、調速脱進機51を含む部分(
図2のIII−III線に相当する部分)の断面図である。
図3に示すように、ムーブメント2には、調速脱進機51が搭載されている。調速脱進機51は、てんぷ52、がんぎ車53及びアンクル54を有している。
【0025】
てんぷ52は、がんぎ車53を調速する(がんぎ車53を一定速度で脱進させる。)。てんぷ52は、てん真61、てん輪62及びひげぜんまい63を主に有している。
てん真61は、地板21とてんぷ受65との間で、第1軸線O1回りに回動可能に支持されている。てん真61は、ひげぜんまい63から伝えられた動力によって第1軸線O1回りに一定の振動周期で往復回動する。
【0026】
てん真61における表裏面方向の裏側端部には、振り座67が外嵌されている。振り座67は、第1軸線O1と同軸上に配置された筒状に形成されている。振り座67の大つば67aにおいて、第1軸線O1回りの周方向の一部には、振り石68が設けられている。振り石68は、例えば表裏面方向に延びる半円柱形状に形成されている(
図4参照)。振り石68は、大つば67aから裏側に突出している。なお、振り石68は、てん輪62に設けられていても構わない。
一方、振り座67の小つば67bにおいて、第1軸線O1回りの周方向で振り石68に対応する位置にはツキガタ66が形成されている。ツキガタ66は、小つば67bの一部が第1軸線O1における径方向の内側に窪んで形成されている。
【0027】
てん輪62は、リング状に形成されている。てん輪62は、てん真61における振り座67よりも表側に位置する部分に、圧入等によって固定されている。
【0028】
ひげぜんまい63は、表裏面方向から見た平面視で渦巻状の平ひげである。ひげぜんまい63は、てん輪62よりも表側に配置されている。ひげぜんまい63の内端部は、ひげ玉69を介しててん真61に連結されている。ひげぜんまい63の外端部は、ひげ持70を介しててんぷ受65に接続されている。
【0029】
図4は、調速脱進機51の平面図である。
図4に示すように、がんぎ車53は、がんぎ真71と、がんぎかな72と、がんぎ歯車73と、を有している。
【0030】
がんぎ真71は、地板21と輪列受45(
図2参照)との間で第2軸線O2回りに回転可能に支持されている。
がんぎかな72は、がんぎ真71に形成されている。がんぎかな72は、上述した四番車43(
図2参照)に噛合している。すなわち、がんぎ車53は、四番車43の回転に伴い第2軸線O2回りに回転する。
がんぎ歯車73は、がんぎ真71におけるがんぎかな72に対して裏側に位置する部分に固定されている。がんぎ歯車73には、第2軸線O2の径方向に突出する歯部73aが、第2軸線O2回りの周方向で間隔をあけて複数形成されている。
【0031】
<アンクル>
アンクル54は、てんぷ52とがんぎ車53との間を接続している。具体的に、アンクル54は、アンクル真81と、アンクル体82と、一対のつめ石83と、剣先85と、を備えている。
図3に示すように、アンクル真81は、アンクル受75との間で第3軸線O3回りに回動可能に支持されている。
【0032】
アンクル体82は、アンクル体82は、アンクルビーム91及びアンクルサオ93により、表裏面方向から見た平面視でT字状に形成されている。
アンクルビーム91は、第3軸線O3の径方向に沿って延在している。アンクルビーム91の延在方向における中央部には、上述したアンクル真81が固定されている。アンクルビーム91における延在方向の両端部には、上述したつめ石83がそれぞれ取り付けられている。各つめ石83は、アンクル54の往復回動に伴いがんぎ車53の歯部73aに交互に係合する。
【0033】
アンクルサオ93は、アンクルビーム91の延在方向における中央部から、第3軸線O3の径方向のうちアンクルビーム91に対して交差する方向(以下、単に第1方向という。)に片持ちで延在している。アンクルサオ93は、アンクル54の第3軸線O3回りの回動に伴い、地板21に設けられたドテピン(不図示)に当接する。これにより、アンクル54の回動範囲(作動角)が制限されている。
【0034】
アンクルサオ93の先端部には、アンクルサオ93に対して拡幅した拡幅部95がアンクルサオ93に一体形成されている。拡幅部95には、一対のクワガタ100,101が一体に形成されている。クワガタ100,101は、クワガタ接続部94の幅方向で互いに間隔をあけた状態で、第1方向の外側に向けて延在している。具体的に、クワガタ100,101は、第1方向に沿って直線状に延在した後、第1方向の外側に向かうに従い各クワガタ100,101同士の間隔が漸次広がるように傾斜して延在している。
【0035】
各クワガタ100,101の基端部(直線状に延在している部分)及び拡幅部95で画成された部分は、第1方向の外側に向けて開口するアンクルハコ105を形成している。アンクルハコ105は、上述したてんぷ52が回動することにより振り石68が係脱可能に収容される。具体的に、アンクルハコ105の側面は、拡幅部95により画成された第1側面109と、クワガタ100の基端部により画成された第2側面110と、クワガタ101の基端部により画成された第3側面111と、を有している。
【0036】
第2側面110及び第3側面111は、それぞれ第1方向に沿って直線状に延在している。第2側面110及び第3側面111における少なくとも第1方向の先端部は、てんぷ52の回動により振り石68の外周面が第1方向に沿って摺動する摺動領域となっている。
【0037】
剣先85は、拡幅部95の裏側に固定されている。剣先85は、平面視において、各クワガタ100,101の間に位置する部分(アンクルハコ105の内側)を第1方向の外側に向けて片持ちで延在している。剣先85の幅は、第1方向の外側に向かうに従い漸次縮小している。剣先85は、アンクル54の誤回動を防止するためのものである。すなわち、剣先85は、振り石68がアンクルハコ105から離脱した状態において、振り座67の外周面のうちツキガタ66以外の部分に摺接可能とされている。一方で、剣先85は、アンクルハコ105の何れかの側面110,111と振り石68とが係合しているときに、振り座67のツキガタ66内に収容される。すなわち、ツキガタ66は、剣先85が小つば67bに接触するのを防止する逃げ部として機能する。
【0038】
図5は、アンクルハコ105を示す側面図である。
図6は、
図5のVI−VI線に相当する断面図である。
図5、
図6に示すように、上述したアンクルハコ105の各側面110,111には、側面110,111上でそれぞれ開口する凹部120が形成されている。凹部120は、
図6に示す表裏面方向に沿う断面視で矩形状に形成されている。
図5に示すように、凹部120は、第1方向及び表裏面方向に直交する第2方向(側面110,111の法線方向)から見た側面視で円形状に形成されている。なお、凹部120の開口部(側面110,111上に位置する部分)の直径は、5〜10μm程度に形成されている。但し、凹部120の開口部での直径は、摩耗粉の粒径(例えば、1〜2μm程度)よりも大きく、側面110,111における摺動領域の第1方向での長さ(例えば、60μm程度)よりも小さければ適宜変更が可能である。
【0039】
凹部120は、表裏面方向及び第1方向に間隔をあけて複数形成されている。本実施形態において、各凹部120間の間隔は、表裏面方向及び第1方向において、不定のピッチで形成されている。但し、各凹部120は、一定のピッチで形成されていてもよい。また、各凹部120において、側面視形状及び断面視形状を互いに異ならせても構わない。
【0040】
[作用]
次に、上述した実施形態における時計1の作用を説明する。以下の説明では、主に調速脱進機51の作用について説明する。
本実施形態の時計1では、
図3、
図4に示すてんぷ52の第1軸線O1回りの往復回動により、振り石68がアンクルハコ105に係脱する。具体的に、振り石68がアンクルハコ105から脱出している状態において、てんぷ52が第1軸線O1回りの一方に回動すると、振り石68がアンクルハコ105内に進入する。アンクルハコ105内に進入した振り石68は、アンクルハコ105内において側面110,111のうち一方の摺動面(例えば、第2側面110)に接触する。振り石68は、てんぷ52の一方への回動に伴い第2側面110上を第1方向に摺動することで、アンクル54が第3軸線O3回りの一方へ押圧される。これにより、アンクル54が第3軸線O3回りの一方に回動する。
【0041】
また、てんぷ52が第1軸線O1回りの他方に回動すると、振り石68はアンクルハコ105内において、第3側面111に接触する。振り石68は、てんぷ52の他方への回動に伴い第3側面111上を第1方向に沿って摺動することで、アンクル54が第3軸線O3回りの他方に回動する。これにより、アンクル54が第3軸線O3回りに往復回動する。
【0042】
アンクル54の往復回動に伴い、一対のつめ石83ががんぎ車53のがんぎ歯車73に交互に係脱する。この際、一対のつめ石83のうち、一方のつめ石が歯部73aに係合しているとき、一時的に回転が停止する。また、がんぎ車53は、双方のつめ石83が歯部73aから離脱しているとき、回転する。これらの動作が連続的に繰り返されることにより、がんぎ車53が間欠的に回転する。そして、がんぎ車53が間欠的に回転することで、上述した表輪列や筒車の回転が制御される。これにより、時計1が時を刻む。
【0043】
ところで、上述したようにアンクルハコ105の側面110,111は、てんぷ52の往復回動により振り石68が第1方向に沿って摺動する。この際、側面110,111上には、側面110,111と振り石68との摩耗により摩耗粉が発生するおそれがある。
【0044】
ここで、本実施形態では、アンクルハコ105の側面(側面110,111)上で開口する凹部120が形成されている構成とした。
この構成によれば、側面110,111上で発生した摩耗粉を凹部120内で収容することができる。これにより、摩耗粉が側面110,111上で滞留するのを抑制し、側面110,111と振り石68との摺動抵抗を長期に亘って良好に維持できる。これにより、長期に亘って優れた計時精度を維持できる。
【0045】
さらに、本実施形態では、凹部120内に摩耗粉を収容できるため、側面110,111上に潤滑油を供給したとしても、潤滑油と摩耗粉が側面110,111上で混ざり合うのを抑制できる。これにより、潤滑油の粘度上昇を抑制し、長期に亘って摩耗量を低減できる。
【0046】
本実施形態では、凹部120が側面110,111の摺動領域に形成されているため、凹部120が摺動領域以外の部分に形成されている場合に比べて側面110,111上で発生した摩耗粉を速やかに凹部120内に収容できる。これにより、側面110,111上で摩耗粉が滞留するのを確実に抑制できる。
【0047】
そして、本実施形態の調速脱進機51、ムーブメント2及び時計1によれば、上述したアンクル54を備えているため、長期に亘って計時精度に優れた、動作信頼性の高い調速脱進機51、ムーブメント2及び時計1を提供できる。
【0048】
(変形例)
次に、上述した実施形態の各変形例について説明する。
上述した実施形態では、凹部120が側面視円形状に形成された構成について説明したが、この構成のみに限られない。凹部は、例えば溝状であっても構わない。この場合、凹部は側面110,111上のみで開口していてもよく、側面110,111に加えて側面110,111以外の面(側面110,111を含む少なくとも二面)で開口していても構わない。
【0049】
例えば
図7に示す凹部200は、側面110,111において、アンクルハコ105を表裏面方向に貫通している。すなわち、
図7に示す凹部200は、側面110,111に加えて、クワガタ100,101の表裏面上でも開口している。このように、凹部200がアンクルハコ105の側面以外の部分においても開口していることで、側面110,111上で発生した摩耗粉が凹部200を通過してアンクル54から排出される。これにより、側面110,111上と振り石68との摺動抵抗を長期に亘って良好に維持できる。
【0050】
また、凹部を溝状に形成した場合、凹部の延在方向は、表裏面方向に限られない。例えば
図8に示す凹部210のように、側面110,111の面内方向において、第1方向及び表裏面方向に交差する方向に傾斜して延在しても構わない。また、凹部210は、第2方向でクワガタ100,101を貫通していても構わない。
【0051】
また、
図9に示すように、凹部220が、側面110,111において、振り石68の摺動方向(第1方向)に沿って延在していても構わない。この場合には、表裏面方向において、振り石68と側面110,111との接触面積を低減できる。また、振り石68が側面110,111上を摺動する際において、振り石68と凹部220の開口縁との引っ掛かりを抑制できる。これにより、側面110,111上において、振り石68がスムーズに摺動することになるので、動作信頼性の更なる向上を図ることができる。
【0052】
上述した実施形態では、アンクルハコ105の側面において、振り石68の摺動領域が他の面と同一面上に位置する(滑らかに連なる)構成について説明したが、この構成のみに限られない。
図10に示すように、側面110,111のうち、振り石68の摺動領域230を摺動領域230以外の面に対して第2方向で膨出させ、摺動領域230に例えば上述した凹部200を形成しても構わない。
【0053】
さらに、
図11、
図12に示すように、側面110,111において、少なくとも振り石68との摺動領域240を、断面視で台形状に形成しても構わない。具体的に、摺動領域240は、振り石68が摺動する摺動面240aと、振り石68との接触を避ける逃げ面240bと、を有している。
【0054】
摺動面240aは、摺動領域240のうち表裏面方向の中央部に位置している。摺動面240aは、断面視において、表裏面方向及び第1方向に沿って延びる平坦面とされている。なお、摺動面240aは、湾曲面等であっても構わない。
逃げ面240bは、摺動領域240のうち表裏面方向の両端部にそれぞれ位置している。逃げ面240bは、摺動面240aにおける表裏面方向の両端部から表裏面方向の外側に向かうに従い、クワガタ100,101の厚さが増加する方向に傾斜している。各逃げ面240bには、凹部245が形成されている。凹部245は、表裏面方向に延在するとともに、第1方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0055】
この構成によれば、摺動領域240のうち振り石68との摺動面240aとの摺動により摺動面240a上に発生した摩耗粉は、逃げ面240bの凹部245内に収容される。この場合、摺動面240a上に凹部245が開口していないので、摺動面240a上を振り石68がスムーズに摺動することになる。これにより、動作信頼性の向上を図ることができる。なお、
図13,14に示すように、凹部250は、逃げ面240bにおいて第1方向に沿って延在していても構わない。
【0056】
また、
図11〜
図14の例では、摺動領域240が台形状(中央部に摺動面240aが位置し、両側に逃げ面240bが位置する形状)に形成した場合について説明したが、この構成のみに限られない。すなわち、摺動領域240において、摺動面240aと逃げ面240bとを有する構成であれば構わない。この場合、表裏面方向の一方に摺動面が位置し、表裏面方向の他方に逃げ面が位置する構成であっても構わない。
【0057】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、凹部の断面視形状が矩形状に形成された構成について説明したが、この構成のみに限られない。例えば
図15に示す三角形状の凹部260や、
図16に示す台形状の凹部261、
図17に示す逆台形状の凹部262、
図18に示す半円形状の凹部263等、適宜変更が可能である。但し、凹部は、開口部の寸法が最大になるように形成した方が、摩耗粉が収容され易くなる。
【0058】
上述した実施形態では、アンクルハコ105の側面のうち、側面110,111に凹部を形成した場合について説明したが、この構成のみに限らず、アンクルハコ105の側面における任意の位置(例えば、第1側面109)に凹部を形成することが可能である。
【0059】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。