(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正部は、前記ユーザ群に含まれるユーザのうち、前記第2エリアから前記第1エリアに移動する予定のユーザについては前記制御目標値を補正し、それ以外のユーザについては前記制御目標値を補正しない、ことを特徴とする請求項2に記載の空調制御システム。
前記設定部は、前記ユーザ群に含まれるユーザの前記補正部による補正後の前記制御目標値の平均値、中央値、最頻値の少なくともいずれかに基づいて、前記所定日時における前記空調機の運転パラメータを設定する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空調制御システム。
前記複数のユーザのそれぞれにより過去に設定された前記空調機の運転パラメータに基づいて、前記複数のユーザのそれぞれの前記制御目標値を設定する制御目標値設定部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の空調制御システム。
前記設定部は、前記ユーザ群の人数が0である場合には、前記所定日時における前記空調機の運転を停止させるか又は省力運転モードに設定する、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の空調制御システム。
前記設定部は、前記所定日時より所定時間前に、前記空調機について前記運転パラメータを設定して、前記空調機を動作させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の空調制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1乃至
図10に基づき、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る空調制御システム1について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0020】
[建物システムSの全体構成]
図1には、本実施形態に係る空調制御システム1を含む建物システムSの全体構成を示した。
図1に示されるように、建物システムSは、空調制御システム1と建物20を備える。
空調制御システム1は、ユーザデータベース2、スケジュールデータベース3、空調機データベース4を備え、建物20に備えられる空調機30(空調機30A、空調機30B、空調機30C、空調機30D等)を制御するコンピュータシステムである。
なお、以下において、建物20に備えられる空調機30A、空調機30B、空調機30C、空調機30Dに共通する事項については空調機30と表記して説明する。
【0021】
建物20は、第1ワークスペース22、会議室23、第2ワークスペース24、第3ワークスペース25を有するオフィスビルである。なお、建物20には、エントランス21を通じて外部との出入りが可能となっている。
【0022】
第1ワークスペース22は、従業員の作業エリアであり、空調機30Aにより内部の空調が制御される。
会議室23は、会議スペースであり、空調機30Bにより内部の空調が制御される。
第2ワークスペース24は、従業員の作業エリアであり、空調機30Cにより内部の空調が制御される。
第3ワークスペース25は、従業員の作業エリアであり、空調機30Dにより内部の空調が制御される。
なお、上記の第1ワークスペース22や会議室23のように、部屋ごとに担当する空調機30を分けてもよいし、上記の第2ワークスペース24及び第3ワークスペース25のように一部屋を複数のエリアに分けて、エリアごとに担当する空調機30を分けてもよい。
【0023】
第1ワークスペース22、第2ワークスペース24、第3ワークスペース25において、各ユーザは、自席のユーザ端末40により空調制御システム1にアクセスし、各ユーザが所望する空調機30の設定温度等の制御目標値を設定することとしてよい。
また、第1ワークスペース22、会議室23、第2ワークスペース24、第3ワークスペース25のそれぞれのドア22A、ドア23A、ドア24A、ドア25Aに従業員のICカードを読み取るICカードリーダを設け、ICカードリーダにより読み取った入室者の情報に基づいて入室を制御するようにしてもよい。
【0024】
空調制御システム1は、ユーザデータベース2、スケジュールデータベース3、空調機データベース4を記憶する。
【0025】
ユーザデータベース2は、従業員等のユーザの属性情報を格納するデータベースである。例えば、ユーザデータベース2には、
図2に示すユーザ情報テーブル50が記憶される。
【0026】
ユーザ情報テーブル50は、ユーザの各種の属性情報を記憶するテーブルである。
具体的には、
図2に示されるように、ユーザ情報テーブル50には、ユーザの識別情報(ユーザID)、ユーザの氏名、ユーザの年齢、ユーザの役職、優先者フラグ、性別、ユーザの自席位置、自席のあるエリアの識別情報(エリアID)が関連付けて記憶される。
なお、上記の「優先者フラグ」は、空調の設定を他のユーザに比べて優先するか否かを指定する情報である。例えば、「優先者フラグ」は、ユーザが顧客である場合、ユーザが所定以上の役職である場合、ユーザが高齢者である場合、ユーザが身体障害者である場合、ユーザが体調不良である場合等に優先(T)に設定されることとしてよい。
【0027】
スケジュールデータベース3は、ユーザのスケジュール情報を格納するデータベースである。例えば、スケジュールデータベース3には、
図3に示すスケジュール情報テーブル51が記憶される。
【0028】
スケジュール情報テーブル51は、ユーザごとのスケジュール情報を記憶するテーブルである。
具体的には、
図3に示されるように、スケジュール情報テーブル51には、ユーザID、日付、時間帯ごとのスケジュール(行動予定)の情報が関連付けて記憶される。
例えば、スケジュールにおいて、「外出」は建物20の外に出る予定を示し、「自席」はユーザに設定される自席での作業予定を示し、「ミーティング」は建物20内の所定エリア(例えば会議室)での会議予定を示す。このように、スケジュールには、各ユーザが各時間帯にいる場所を特定する情報が含まれることとしてよい。
なお、スケジュール情報テーブル51の記憶内容は、ユーザが操作するユーザ端末40から受け付ける情報に基づいて設定されることとしてよい。
【0029】
空調機データベース4は、建物20内の空調機30に関する情報を格納するデータベースである。例えば、空調機データベース4には、
図4に示すエリア空調機対応テーブル52、
図5に示すユーザ設定履歴テーブル53、及び
図6に示すユーザ制御目標値記憶テーブル54が記憶される。
【0030】
エリア空調機対応テーブル52は、建物20内の各エリアに対応する空調機30の情報を管理するテーブルである。
具体的には、
図4に示されるように、エリア空調機対応テーブル52には、建物20内のエリアを識別するエリアID、エリア名、エリアの空調機を識別する空調機IDが関連付けて記憶される。
【0031】
ユーザ設定履歴テーブル53は、ユーザごとの空調機30の設定履歴を記憶するテーブルである。
具体的には、
図5に示されるように、ユーザ設定履歴テーブル53には、ユーザID、空調機ID、運転パラメータ、設定日時が関連付けて記憶される。
ここで、上記の「運転パラメータ」とは、空調機30の設定情報であり、例えば運転モード(暖房/冷房/送風/除湿等)、設定温度、風量等の値を含む。
なお、本実施形態では、空調制御システム1は、ユーザの操作するユーザ端末40から、空調機30の運転パラメータの指定を受け付けた場合には、受け付けた運転パラメータに基づいて空調機30を制御する。
そして、ユーザ設定履歴テーブル53には、ユーザが操作するユーザ端末40から受け付ける情報が記録される。
【0032】
ユーザ制御目標値記憶テーブル54は、ユーザごとの空調機30の制御目標値(例えば設定温度等)を記憶するテーブルである。
具体的には、
図6に示されるように、ユーザ制御目標値記憶テーブル54には、ユーザID、月ごとの空調機30の設定温度が関連付けて記憶される。
例えば、ユーザ設定履歴テーブル53におけるユーザIDと月ごとの空調機30の設定温度を集計し、その平均値、最頻値、中央値等を、ユーザのその月の設定温度として、ユーザ制御目標値記憶テーブル54に記憶するようにしてよい。
【0033】
[空調制御システム1による処理の概要]
ここで、本実施形態において、空調制御システム1により実行される処理の概要について説明する。以下においては、空調制御システム1により、会議室23の空調機30Bの運転パラメータを設定する例について説明する。
【0034】
まず、空調制御システム1は、スケジュール情報テーブル51を参照して、会議室23の次のスケジュール(第1スケジュール)を参照し、第1スケジュールの日時に会議室23に集まる予定のユーザ(集合ユーザ)を特定する。
なお、
図1に示されるユーザUAとユーザUBは、上記の集合ユーザに含まれることとする。
【0035】
次に、空調制御システム1は、上記の集合ユーザのそれぞれの対象スケジュールの直前のスケジュール(第2スケジュール)を参照し、建物20の外から会議室23に移動するユーザ(移動ユーザ)を特定する。
例えば、ユーザUAについては建物20の外から会議室23に移動するため、上記の移動ユーザに該当する。
一方で、ユーザUBについては建物20の内の移動であるため、上記の移動ユーザには該当しない。
【0036】
そして、空調制御システム1は、上記の移動ユーザ(ユーザUA)について、ユーザ制御目標値記憶テーブル54に記憶される空調機30の制御目標値A0を、建物20の内外の温度差ΔTに基づいて補正した補正値A1を算出する。
例えば、空調制御システム1は、αを係数として、以下の式(1)により補正値A1を算出する。
A1=A0+α・ΔT ・・・(1)
【0037】
そして、空調制御システム1は、集合ユーザのそれぞれの補正後の制御目標値(移動ユーザ以外のユーザ(例えばユーザUB)についてはユーザ制御目標値記憶テーブル54に記憶される制御目標値)に基づいて、会議室23の空調機30Bの運転パラメータを設定する。例えば、上記の運転パラメータは、集合ユーザから選択されたユーザ(全員又は一部としてよい)の補正後の制御目標値の平均値(又は最頻値、中央値でもよい)に基づき設定される。
そして、空調制御システム1は、第1スケジュールの開始の所定時間前(例えば5分前)に、上記の運転パラメータを、会議室23の空調機30Bに設定して、設定した運転パラメータに基づいて空調機30Bを動作させる。
こうすることで、空調制御システム1では、建物20の内外の移動を伴うユーザに対しては建物20の内外の温度差に応じて、ユーザの空調の嗜好値を自動調整できる。
そして、空調制御システム1では、自動調整した空調の嗜好値に基づいてユーザの所在予定のエリアの空調環境を、予定の開始前に構築できる。
【0038】
以下、上記の処理を実現するために、空調制御システム1に備えられる構成について説明する。
【0039】
[空調制御システム1のハードウェア構成]
図7には、空調制御システム1のハードウェア構成を示した。
図7に示されるように、空調制御システム1は、プロセッサ5、記憶装置6及び通信用インターフェース7を備える。
【0040】
プロセッサ5は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアである。そして、プロセッサ5は、記憶装置6に記憶されるプログラムやデータに基づいて各種の演算処理を実行するとともに、空調制御システム1の各部を制御する。
【0041】
記憶装置6は、例えばメモリ、磁気ディスク装置を含み構成され、各種のプログラムやデータを記憶するほか、プロセッサ5のワークメモリとしても機能する。なお、記憶装置6には、フラッシュメモリ、光学ディスク等の情報記憶媒体が含まれていてもよい。
【0042】
通信用インターフェース7は、例えばネットワークインターフェースカードを含み構成され、イントラネット等の通信網を経由して、空調機30、ユーザ端末40等と通信する。
【0043】
[空調制御システム1に備えられる機能の説明]
次に、
図8を参照しながら、空調制御システム1に備えられる機能について説明する。
なお、空調制御システム1は、建物20内の第1エリアの空調機30を制御するシステムである。
ここで、上記の「第1エリア」とは、建物20内の任意の場所であってよい。例えば、建物20の第1ワークスペース22、会議室23、第2ワークスペース24、第3ワークスペース25がそれぞれ上記の「第1エリア」の一例に相当する。
【0044】
図8に示されるように、空調制御システム1は、機能として、スケジュール情報記憶部10、制御目標値記憶部11、制御目標値設定部12、特定部13、判定部14、補正部15、選択部16、設定部17を備える。
【0045】
なお、空調制御システム1に備えられる機能は、空調制御システム1のプロセッサ5が、記憶装置6に記憶されるプログラム及びデータに基づいて、空調制御システム1の各部を制御することにより実現されるものである。なお、空調制御システム1は、上記のプログラムを、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体から読み込むこととしてもよいし、インターネットやイントラネット等の通信網を介して受信してもよい。
以下、空調制御システム1の各部の機能の詳細について説明する。
【0046】
[スケジュール情報記憶部10の機能]
スケジュール情報記憶部10は、複数のユーザのそれぞれのスケジュール情報を記憶する機能である。
スケジュール情報記憶部10は、主に空調制御システム1の記憶装置6により実現される。
具体的には、スケジュール情報記憶部10には、
図2に示すユーザ情報テーブル50が記憶される。なお、ユーザ情報テーブル50に記憶される情報については上述した通りであるため、ここでの説明は省略する。
【0047】
[制御目標値記憶部11の機能]
制御目標値記憶部11は、複数のユーザのそれぞれの空調機30の制御目標値(例えば設定温度等)を記憶する機能である。
制御目標値記憶部11は、主に空調制御システム1の記憶装置6により実現される。
具体的には、制御目標値記憶部11には、
図6に示すユーザ制御目標値記憶テーブル54が記憶される。なお、ユーザ制御目標値記憶テーブル54に記憶される情報については上述した通りであるため、ここでの説明は省略する。
【0048】
[制御目標値設定部12の機能]
制御目標値設定部12は、複数のユーザのそれぞれにより過去に設定された空調機30の運転パラメータに基づいて、複数のユーザのそれぞれの空調機30の制御目標値(例えば設定温度等)を設定する機能である。
【0049】
制御目標値設定部12は、主に空調制御システム1のプロセッサ5及び記憶装置6により以下のように実現される。
具体的には、空調制御システム1のプロセッサ5は、記憶装置6に記憶されるユーザ設定履歴テーブル53の中から、ユーザIDが共通するレコードを抽出する。そして、プロセッサ5は、上記抽出したレコードの設定日時に基づいて、上記抽出したレコードを月ごとに分類する。そして、プロセッサ5は、上記月ごとのレコードに記憶される設定温度の平均値(又は中央値や最頻値)を、上記ユーザIDの制御目標値として、記憶装置6のユーザ制御目標値記憶テーブル54に記憶する。
【0050】
なお、各ユーザの空調機30の制御目標値の設定処理は上記の例に限定されない。例えば、空調制御システム1のプロセッサ5は、通信用インターフェース7を介して、ユーザ端末40から受け付けたユーザIDと空調機30の制御目標値を、ユーザ制御目標値記憶テーブル54に記憶するようにしてもよい。
このように、ユーザが自ら空調機30の制御目標値を設定可能としてよい。
【0051】
[特定部13の機能]
特定部13は、スケジュール情報記憶部10に記憶されるスケジュール情報に基づいて、複数のユーザの中から所定日時に第1エリアに所在予定のユーザを含むユーザ群を特定する機能である。
なお、上記の「所定日時」とは、現在日時よりも未来の日時である。例えば、上記の「所定日時」は、第1エリアにおける、現在日時より後に開始する最先のスケジュールの開始日時としてよい。
【0052】
特定部13は、主に空調制御システム1のプロセッサ5及び記憶装置6により以下のように実現される。
具体的には、空調制御システム1のプロセッサ5は、スケジュール情報テーブル51から、第1エリア(例えば会議室23)のエリアIDに関連付けられる所定日時のスケジュール(第1スケジュール)を特定する。そして、プロセッサ5は、スケジュール情報テーブル51から、上記特定した対象スケジュールに参加する参加ユーザ(ユーザ群に相当)のそれぞれのユーザIDを特定する。
【0053】
[判定部14の機能]
判定部14は、特定部13により特定されるユーザ群に含まれる各ユーザの所定日時の前のスケジュールに基づいて、当該ユーザ群に含まれるユーザごとに、第1エリアとは環境が異なる第2エリアから第1エリアに移動する予定であるか否かを判定する機能である。
例えば、上記の第2エリアは、建物20の外のエリアとしてよい。また例えば、上記の第2エリアは、建物20の内部であって、第1エリアとは温度、湿度等の空調環境が異なるエリアとしてもよい。
【0054】
判定部14は、主に空調制御システム1のプロセッサ5及び記憶装置6により以下のように実現される。
具体的には、空調制御システム1のプロセッサ5は、特定部13により特定されたユーザ群のそれぞれのユーザIDについて、スケジュール情報テーブル51を参照し、所定日時の前のスケジュール(第2スケジュール)を特定する。そして、プロセッサ5は、上記特定した第2スケジュールにおけるユーザの場所が第2エリアであるか否かを判定する。
【0055】
本実施形態では、第2エリアは建物20の外であることとし、プロセッサ5は、ユーザの第2スケジュールが「外出」であるか否かを判定する。そして、プロセッサ5は、ユーザの第2スケジュールが「外出」である場合には、そのユーザを移動ユーザと判定する。
【0056】
[補正部15の機能]
補正部15は、判定部14による判定結果に応じて、特定部13により特定したユーザ群に含まれるそれぞれのユーザの制御目標値を補正する機能である。
例えば、補正部15は、特定部13により特定したユーザ群に含まれるユーザのうち、第2エリアから第1エリアに移動する予定のユーザについては制御目標値を補正し、それ以外のユーザについては制御目標値を補正しないこととしてよい。
また、補正部15は、第1エリアと第2エリアの温度差に基づいて、第2エリアから第1エリアに移動する予定のユーザの制御目標値の補正量を変更することとしてもよい。
【0057】
補正部15は、主に空調制御システム1のプロセッサ5及び記憶装置6により以下のように実現される。
具体的には、空調制御システム1のプロセッサ5は、特定部13により特定されたユーザ群のユーザのうち、判定部14により第2エリアから第1エリアに移動する予定と判定されたユーザのユーザIDを特定する。
そして、プロセッサ5は、上記特定したユーザIDに関連付けて、ユーザ制御目標値記憶テーブル54に記憶される制御目標値を読み出す。例えば、プロセッサ5は、ユーザIDと、現在日時に基づいて、ユーザ制御目標値記憶テーブル54から対応する制御目標値を読み出すこととしてよい。
【0058】
次に、プロセッサ5は、一のユーザIDについて上記読み出した制御目標値A0の補正値A1を、αを係数、ΔTを建物20内と外の温度差(建物20内の温度T1、建物20外の温度T2とした場合にΔT=T1−T2)として、例えば以下の式(1)により算出する。
A1=A0+α・ΔT ・・・(1)
【0059】
上記の式(1)において、αに正の値を設定すると、建物20の内外の温度差が大きい程、ユーザの制御目標値(設定温度)には当初の設定よりも高い値が設定されることとなる。
すなわち、空調機30の運転モードが暖房である時期においては、建物20の外の気温の方が冷たい程、ユーザの設定温度が当初の設定よりも高くなるように補正される。
また、空調機30の運転モードが冷房である場合には、建物20の外の気温の方が暑い程、ユーザの設定温度が当初の設定よりも低くなるように補正される。
こうすることで、建物20の内外の温度差に応じて、より空調機30を効かせるようにユーザの空調設定を自動調整することができる。
【0060】
また、上記の式(1)において、αに負の値を設定すると、建物20の内外の温度差が大きい程、ユーザの制御目標値(設定温度)には当初の設定よりも低い値が設定されることとなる。
すなわち、空調機30の運転モードが暖房である時期においては、建物20の外の気温の方が冷たい程、ユーザの設定温度が当初の設定よりも低くなるように補正される。
また、空調機30の運転モードが冷房である場合には、建物20の外の気温の方が暑い程、ユーザの設定温度が当初の設定よりも高くなるように補正される。
こうすることで、建物20の外から中に入ってきた際に、ユーザが急激な温度差を感じないように、ユーザの空調設定を自動調整することができる。
【0061】
また、ユーザの制御目標値の補正は上記式(1)に示す例に限られるものではなく、例えば、Cを定数として以下の式(2)により補正値を算出してもよい。なお、Cは運転モードに応じて変えてもよい。
A1=A0+C ・・・(2)
【0062】
[選択部16の機能]
選択部16は、特定部13により特定されるユーザ群に含まれるユーザの中から、所定条件に該当するユーザを選択する機能である。
上記の「所定条件に該当するユーザ」とは、例えばユーザ情報テーブル50において「優先者フラグ」が優先(T)であるユーザとしてよい。
また例えば、「所定条件に該当するユーザ」とは、例えばユーザ情報テーブル50において「役職」が所定の役職以上のユーザとしてよい。
また例えば、「所定条件に該当するユーザ」とは、例えば体調不良のユーザとしてよい。例えば、建物20のエントランス21に熱センサを設け、熱センサにより所定以上の体温が検出されたユーザを上記の体調不良のユーザとしてもよい。
また例えば、「所定条件に該当するユーザ」とは、判定部14により第2エリアから第1エリアに移動する予定と判定されたユーザとしてもよい。
また例えば、「所定条件に該当するユーザ」とは、例えば上記特定されるユーザ群のうちから、予め指定されたユーザとしてよい。
また例えば、「所定条件に該当するユーザ」とは、例えば上記特定されるユーザ群の全てのユーザとしてよい。
【0063】
選択部16は、主に空調制御システム1のプロセッサ5及び記憶装置6により実現される。
具体的には、空調制御システム1のプロセッサ5は、特定部13により特定されるユーザ群に含まれるユーザのそれぞれについて、所定条件に合致するか否かを判定し、所定条件に合致するユーザのユーザIDを選択する。
【0064】
[設定部17の機能]
設定部17は、特定部13により特定されるユーザ群に含まれる少なくともいずれかのユーザの補正部15による補正後の制御目標値に基づいて、所定日時における第1エリアの空調機30の運転パラメータを設定する機能である。
【0065】
例えば、設定部17は、特定部13により特定されるユーザ群に含まれるユーザの補正部15による補正後の制御目標値の平均値、中央値、最頻値の少なくともいずれかに基づいて、所定日時における第1エリアの空調機30の運転パラメータを設定することとしてよい。
【0066】
また例えば、設定部17は、選択部16により選択されたユーザの補正部15による補正後の制御目標値に基づいて、所定日時における第1エリアの空調機30の運転パラメータを設定することとしてよい。
【0067】
また例えば、設定部17は、特定部13により特定されるユーザ群の人数が0である場合には、所定日時における第1エリアの空調機30の運転を停止させるか又は省力運転モードに設定することとしてよい。
【0068】
また例えば、設定部17は、所定日時より所定時間前に、第1エリアの空調機30について運転パラメータを設定して、第1エリアの空調機30を動作させることとしてよい。
【0069】
設定部17は、主に空調制御システム1のプロセッサ5、記憶装置6及び通信用インターフェース7により以下のように実現される。
具体的には、空調制御システム1のプロセッサ5は、選択部16により選択されたユーザのユーザIDについて、補正部15による補正後の制御目標値(例えば設定温度等)を取得する。なお、補正部15による補正がされていない場合には、ユーザ制御目標値記憶テーブル54に記憶される制御目標値をそのまま取得する。
【0070】
次に、プロセッサ5は、選択部16により選択された各ユーザIDについて、上記取得した制御目標値の平均値、中央値、又は最頻値を求め、求めた値により運転パラメータを設定する。
また、制御目標値に、設定温度、風量、湿度等の複数のデータを含む場合には、その各々について平均値、中央値、又は最頻値のいずれを用いるかを任意に設定してもよい。
【0071】
また、プロセッサ5は、特定部13により特定したユーザ群の人数が0、すなわち所定日時における第1エリアにユーザが所在しない場合には、所定日時における第1エリアの空調機30の運転パラメータを停止モード又は省力運転モードに対応する値とする。
【0072】
そして、プロセッサ5は、所定日時よりも所定時間前(例えば5分前)になると、通信用インターフェース7を介して、上記得られた運転パラメータを、第1エリアの空調機30に送信し、第1エリアの空調機30に上記運転パラメータによる運転を開始させるようにしてよい。
【0073】
[空調制御システム1において実行される処理の説明]
次に、
図9及び
図10に示すフロー図に基づいて、空調制御システム1おいて実行される空調機30の運転パラメータの設定処理について説明する。
以下に説明する処理は、建物20の第1エリア(例えば第1ワークスペース22、会議室23、第2ワークスペース24、第3ワークスペース25)について、所定時間おき(例えば15分おき)に実行することとしてよい。
【0074】
図9に示されるように、空調制御システム1のプロセッサ5は、スケジュール情報テーブル51を参照して、第1エリアの次のスケジュール(第1スケジュール)を参照する(S101)。なお、次のスケジュールとは、現在日時から所定時間後のスケジュールとしてよい。
【0075】
ここで、プロセッサ5は、スケジュール情報テーブル51に基づき、第1スケジュールにおける第1エリアの所在人数が0人と判定する場合には(S102:Yes)、第1スケジュールにおける第1エリアの空調機30の設定を省エネ運転モードとする(S103)。
【0076】
一方で、プロセッサ5は、スケジュール情報テーブル51に基づき、第1スケジュールにおける第1エリアの所在人数が0人でない(すなわち1人以上)と判定する場合には(S102:No)、第1スケジュールにおける第1エリアの空調機30の運転パラメータの設定処理を実行する(S104)。
【0077】
ここで、S104の処理については
図10に基づいて説明する。
図10に示されるように、空調制御システム1のプロセッサ5は、スケジュール情報テーブル51に基づき、第1スケジュールにおける第1エリアの所在ユーザ(U
1〜U
N)を特定する(S111)。なお、S111の処理は、特定部13の機能により実行されるものであり、上記のNは特定部13により特定された人数を示す。
【0078】
次に、空調制御システム1のプロセッサ5は、第1エリア(例えば建物20内)の温度T1と、第2エリア(例えば建物20外)の温度T2を取得する(S112)。例えば、プロセッサ5は、通信用インターフェース7を介して第1エリアの空調機30から上記の温度T1を取得することとしてよい。また、記憶装置6は、通信用インターフェース7を介して、建物20外の温度センサ、又は外部の天気情報サイトから上記の温度T2を取得することとしてよい。
【0079】
次に、空調制御システム1のプロセッサ5は、変数iを1に初期化する(S113)。
そして、空調制御システム1のプロセッサ5は、スケジュール情報テーブル51から、ユーザU
iの第1スケジュールの前の第2スケジュールを参照し(S114)、ユーザU
iが第2エリア(例えば建物20の外)から第1エリア(例えば建物20の内)に移動するか否かを判定する(S115)。
なお、S115の処理は、判定部14の機能により実行されるものである。
【0080】
ユーザU
iが第2エリアから第1エリアに移動する場合には(S115:Yes)、プロセッサ5は、ユーザU
iのユーザIDに関連付けてユーザ制御目標値記憶テーブル54に記憶される制御目標値Aiを読み出す(S116)。
そして、プロセッサ5は、上記読み出した制御目標値Aiを、建物20の内外の温度差ΔT(ΔT=T1−T2)に基づいて補正する(S117)。
なお、S117の処理は補正部15の機能により実行されるものである。
【0081】
次に、変数iがNに達していない場合には(S118:No)、プロセッサ5は、変数iに1を加算して(S119)、S114に戻る。
一方で、変数iがNに達している場合には(S118:Yes)、プロセッサ5は、S111で特定された所在ユーザ(U
1〜U
N)の中から所定条件に合致するユーザ(設定対象者)を選択する(S120)。なお、S120の処理は選択部16の機能により実行されるものである。
【0082】
次に、プロセッサ5は、S120で選択された設定対象者の補正後の制御目標値の平均値(中央値、又は最頻値としてもよい)を算出する(S121)。
そして、プロセッサ5は、S121で算出した平均値に基づいて、第1スケジュールにおける第1エリアの空調機30の運転パラメータを設定し(S122)、
図9のフローに戻る。
【0083】
S103又はS104の処理を終えると、プロセッサ5は、第1スケジュールの開始時点から所定時間前になっていない場合には(S105:No)、待機し、第1スケジュールの開始時点から所定時間前になった場合には(S105:Yes)、S103又はS104により設定された運転パラメータを、通信用インターフェース7を介して第1エリアの空調機30に送信する(S106)。
これにより、第1エリアの第1スケジュールの開始前から、S103又はS104で設定した運転パラメータによる空調機30の運転を開始させることができる。
【0084】
[空調制御システム1の効果]
以上説明した本実施形態に係る空調制御システム1によれば、ユーザが環境の相違するエリア間を移動する場合に、そのユーザが嗜好する空調機30の制御目標値(例えば設定温度)を、環境の変化に応じて調整できる。
【0085】
また、空調制御システム1では、環境の変化があるユーザに対してのみ、空調機30の制御目標値を補正し、環境の変化がないユーザにまで空調機30の制御目標値を変えることを抑制できる。これにより、ユーザの嗜好とは異なる空調環境に調整されてしまうことを抑制できる。
【0086】
また、空調制御システム1では、第2エリアから第1エリアに移動してくるユーザの空調機30の制御目標値の補正量に、第1エリアと第2エリアの温度差を反映できる。これにより、環境の変化の大きさを空調制御に反映させることができる。
【0087】
また、空調制御システム1では、第1エリアを利用する複数のユーザの制御目標値の平均値、中央値、最頻値の少なくともいずれかに基づいて、空調機30の運転パラメータを設定することで、第1エリアを同時に利用する複数のユーザの多数にとって好適な空調環境を構築できる。
【0088】
また、空調制御システム1では、第1エリアを同時に利用するユーザの中から選択されたユーザにとって好適な空調環境を構築できる。
【0089】
また、空調制御システム1では、ユーザにより過去に設定された空調機の運転パラメータを利用して、そのユーザが嗜好する空調機30の制御目標値を自動設定できる。
これにより、ユーザが空調機30の制御目標値を入力する労力を削減できる。
【0090】
また、空調制御システム1では、所定日時において第1エリアを利用する人数が0である場合には、所定日時における第1エリアの空調機30の運転を停止させるか又は省力運転モードに設定することで、空調機30の無駄な運転を抑制し、電力消費量を低減できる。
【0091】
また、空調制御システム1では、所定日時より所定時間前に、第1エリアの空調機30について設定した運転パラメータに基づいて、空調機30を動作させることで、第1エリアの空調環境を、所定日時の開始時点から、第1エリアの利用者に適した状態とすることができる。これにより、第1エリアの利用者に利用当初から好適な空調環境を提供できる。
【0092】
また、空調制御システム1では、建物20の外から建物20の中に移動するユーザの空調設定を、建物20の内外の環境の変化に応じて調整できる。
【0093】
[その他の実施形態]
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば、空調制御システム1は、一台のコンピュータではなく、複数台のコンピュータの分散システムとして構築されてもよい。この場合には、空調制御システム1に備えられる各機能は、複数台のコンピュータに分散されて保持されてもよい。
【0094】
空調制御システム1による移動エリアの環境の相違による空調機30の制御目標値の補正機能は、ユーザごとにON/OFFを切り替え可能としてもよい。
【0095】
また、空調制御システム1は、エリアの所在人数に応じて、空調機30の風量を設定してもよい。例えば、空調制御システム1は、エリアの所在人数が多い程、そのエリアの空調機30の風量が強くなるように設定してもよい。