(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の電池ケースにおいて、前記切り取り線は、前記壁部を形成する部位が他の部位とは異なる形状の切り込みによって形成されていることを特徴とする電池ケース。
【背景技術】
【0002】
複数本の筒形電池を立てた状態で収納する箱形の電池ケースとして、ミシン目やジッパーなど、断続的に形成された切り込みからなる切り取り線を破断することで二つに分離できるとともに、その分離した一方が電池の陳列用トレイとして使用できるものがある。
図1に従来の陳列用トレイとしても使える電池ケース101を示した。
図1(A)は、開封前の電池ケース101を示しており、
図1(B)は、電池ケース101を二つに分離した状態を示している。
【0003】
図1(A)に示したように、図示した電池ケース101は、厚紙でできた直方体の箱であり、箱の一面2がフラップ20を兼ね、電池を箱詰めする際には、このフラップ20を開く。フラップ20のある面を上面2とすると、上面2と下面3を連絡する側面(4〜7)には、断続的な切り込みからなる切り取り線10が周回している。この例では、切り取り線10は、一つの切り込みが、先端が屈曲するL字型に形成されたミシン目によって形成されている。そして、その切り取り線10を破断すると、
図1(B)に示したように、電池ケース101が上箱部101aと陳列用トレイ101bとなる下箱部とに分離される。この例では、陳列用トレイ101bに40本の単三形円筒形電池100が、負極端子を下方に立てられた状態(以下、正立状態とも言う)で4行10列にわたって収納されている。そして陳列用トレイ101bは、販売される電池100を収納した状態で店頭に置かれる。なお、陳列用トレイを兼ねた電池ケースについては、以下の特許文献1にも記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、陳列用トレイとしても使える電池ケースは、切り取り線で二つに分離され、分離後の一方が筒型電池の陳列用トレイとして店頭に置かれる。そして、分離直後の状態では、筒形電池は、収納トレイに密に並べられて相互に支え合いながら、正立状態を維持する。しかし、筒形の電池、特に単三形あるいは単四形などの細い円筒形電池では、筒形電池が順次取り出されて陳列用トレイに残っている筒形電池の本数が少なくなると、相互の支えを失い、容易に倒れてしまう。陳列用トレイの中で筒形電池が倒れていると、陳列用トレイに残っている筒形電池の本数を確認し難くなる。そのため、例えば、店員が、在庫管理の観点から、筒形電池の残数を確認する際、その残りの本数を数え間違える可能性がある。また、陳列用トレイの中で全部の筒形電池が倒れてしまうと、横倒しになった筒型電池が側面に囲まれてしまい、陳列用トレイから筒型電池を取り出し難くなる。さらに、陳列用トレイは、文字通り、商品である筒型電池を陳列する見本としての機能も担っていることから、筒形電池が倒れていては、見栄えが悪い。そのため、店員は、倒れている電池を立て直す煩雑な作業を随時行うことになる。
【0006】
確かに、電池の転倒を防止する何らかの部材を電池ケースに付帯させておくことも考えられる。しかし、その部材を別途用意すれば、その部材にもコストが掛かる。さらに、店員が、電池の残数に応じて、その部材を電池ケースに取り付けたり取り外したりする作業が必要となり、結局、店員が行う作業の内容が変わっただけで、作業を軽減させることは難しい。
【0007】
そこで本発明は、筒型電池を収納した状態で二つに分離し、分離した一方を筒型電池の陳列用トレイとして使用することができ、かつ陳列用トレイの状態で収納されている筒形電池の残数が少なくなっても、追加の部材や煩雑な作業を必要とせずに筒形電池の正立状態を維持できる電池ケースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、 複数の筒形電池が下面に立てた状態で並んで収納される直方体形状の箱からなる電池ケースであって、
前後面と左右側面に前記箱を断続的に周回する切り込みからなる切り取り線を備え、
前記切り取り線に沿って破断することで上箱部と下箱部とに分離され、
前記切り取り線は、左右側面では、前方から後方に至る途上で上方に凸となる山型に形成され、
前記下箱部は、上方に開口しつつ、左右の側面に前記山型に対応する壁部が形成された有底箱状で、
左右の側面に形成された前記壁部
は、それぞれ、前記山型の裾野を前後方向に横断して当該壁部を前記下箱部の内方側に屈曲可能にする折り線と、前記折り線上の所定の前後位置から上方に延長して当該壁部の上縁まで断続的に形成された切り込みからなる分断線とを
有するとともに、前記分断線が破断されると複数の舌片に分断される、
ことを特徴とする電池ケースとしている。
【0009】
前記切り取り線が、前記壁部を形成する部位が他の部位とは異なる形状の切り込みによって形成されていてもよい。上面が、左右一方の側面の上縁辺に連続しつつ、左右他方の縁辺側に差し込みを有するフラップによって形成され、前記切り取り線が、左右側面の上縁辺を経由し、前記上箱部は、左右他方の側面の上縁に、切欠が形成されている電池ケースとしてもよい。単三形あるいは単四形の円筒形電池が収納される電池ケースとすればより好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電池ケースによれば、二つに分離した一方を筒型電池の陳列用トレイとして使用可能であり、かつトレイの状態で収納する筒形電池の残数が少なくなっても、追加の部材や煩雑な作業を必要とせずに筒形電池の正立状態を維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例について、以下に添付図面を参照しつつ説明する。なお以下の説明に用いた図面において、同一または類似の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略することがある。ある図面において符号を付した部分について、不要であれば他の図面ではその部分に符号を付さない場合もある。
【0013】
===電池ケース===
<外観形状>
本発明の実施例として、40本の単三形円筒形電池(以下、電池とも言う)が4行10列に並べられた状態で収納される電池ケースを挙げる。
図2に実施例に係る電池ケース1の外観を示した。
図2(A)は内方に電池100が収納される前の電池ケース1の状態を示す図であり、
図2(B)は電池100が収納されている状態の電池ケース1を示す図である。そして、
図2(C)は、内方に電池100が収納されて出荷される際の電池ケース1を示す図である。
【0014】
図2(A)〜
図2(C)に示したように、実施例に係る電池ケース1は直方体形状の箱であり、一つの面2がフラップ20を兼ねている。電池100を電池ケース1内に収納する際には、
図2(A)に示したように、フラップ20を開く。そして
図2(B)に示したように、電池100を収納したならば、
図2(C)に示したように、フラップ20を閉じ、必要に応じてフラップ20を電池ケース1の内面に接着した上で出荷する。
【0015】
なお、以下では、電池ケース1内に収納される電池100の筒軸方向を上下方向とし、図示したように、フラップ20が電池ケース1の上面2にあるものとして、上下方向を規定する。また、フラップ20が左側面6の上縁辺61に連接しているものとして左右の各方向を規定することとする。そして、上下左右の各方向に直交する方向を前後方向とし、前後の各方向については、前方から後方を見たときに左右の各方向が一致するように規定する。なお、左右に並んだ1列分の4個の電池100は、シュリンクパックに包装された4本組の電池パック100pである。したがって、実施例の電池ケース1では、左右方向に4本の電池100が並んだ電池パック100pが前後方向に10個収納されている。また、各電池100は負極端子を下方に向けた正立状態で収納されている。
【0016】
ところで、以上の構成は、
図1に示した従来の電池ケース101と基本的には同様である。しかし、実施例に係る電池ケース1は、二つに分離するための切り取り線10の周回形状が異なっているとともに、電池ケース1を分離するための切り取り線10とは別の破断可能な線(以下、分断線11ともいう)や折り線12が形成されている。具体的には、
図2(A)に詳しく示したように、前面4、および後面5には、これらの面(4、5)を上下に二分して左右方向に延長する直線状の切り取り線10aが形成されている。この例では、鎖線状に切り欠かれたミシン目によって切り取り線10aが形成されている。
【0017】
そして、前後両面(4、5)の鎖線状の切り取り線10aは、左右両面(6、7)の切り取り線10bに連続している。前面4および後面5のそれぞれから左右両面(6、7)に連続する切り取り線10bは、それぞれ後方および前方に向かう途上で上方に向かって屈曲し、左右のそれぞれの側面(6、7)の上縁辺(61、71)にまで延長している。本実施例では、左右それぞれの面(6、7)で屈曲した切り取り線10cが直線状に延長してそれぞれの面(6、7)の上縁辺(61、71)に至っている。また、左右それぞれの面(6、7)において、前後両面(4、5)から連続する切り取り線10bの延長線上には折り線12が形成されている。この折り線12は、左右それぞれの側面(6、7)を外方から見ると、電池ケース1の内方に折り曲げ易くなるように山折りの折り線12になっている。それによって、左右それぞれの側面(6、7)には折り線12を下底とし、上縁辺(61、71)の一部を上底とした等脚台形状の領域が形成される。
【0018】
なお、左右の側面(6、7)において、等脚台形の斜線に対応する切り取り線10cは、単純な鎖線状ではなく、直線の一端が屈曲するL字状の切り込みによって形成されている。すなわち、当該切り取り線10cにおける切り込み形状と、他の部分の切り取り線(10a、10b)における切り込み形状とが異なっている。それによって、切り取り線(10a〜10c)が、従来の電池ケースとは異なり、側面(4〜7)を周回する単純な直線状でないこと、および以下に詳述する分断線11とは異なっていることを、利用者が視覚的に認識できるようにしている。
【0019】
また、切り取り線11は、左側面6と上面2とが接続する縁辺61において、上記台形の上底に対応する部分が一つの直線状の切り込み10dによって形成されている。それによって、電池ケース1を上下に分離したときに、左側面6における台形の上底部分が上面2から容易に切り離される。さらに、本実施例では、右側面7の上縁辺71において、斜めの切り取り線10cより前方および後方には、V字状の切欠13が形成されており、利用者が電池ケース1を上下に分離する際には、この切欠13に指を掛けて右側面7を手前に引っ張ることで、電池ケース1をこの斜めの切り取り線10cとそれに連続する切り取り線(10b、10a)に沿って容易に破断させることができる。
【0020】
<トレイの形状と構造>
図3に、電池ケース1を上半分の上箱部1aと下半分の陳列用トレイ(以下、トレイとも言う)1bとに分離したときの状態を示した。
図3では、切り取り線10による裁断形状が分かり易いように、上箱部1aはフラップ20を開いた状態で示している。実際には、通常、フラップ20が閉じられた状態で切り取り線10が破断される。この
図3に示したように、トレイ1bは、上方が開口する浅い箱状で左右の側面(6、7)には、下底を裾野とした等脚台形状の山型の壁部30が前後中央の位置に形成されている。なお、左右の壁部30はそれぞれ左右対称となるように形成されている。
【0021】
壁部30には、台形の下底を起点として上方に延長する分断線11が3箇所に形成されている。この例では、分断線11は、台形を前後に二等分する位置と、上底の前後両端位置とに形成されている。また、下底は、上述したように、外方から見て山折りの折り線12となっている。そして、本実施例の電池ケース1では、上記壁部30、および壁部30に形成された分断線11と折り線12とによって、トレイ1bに収納された電池100の残数が少なくなっても正立状態を安定して維持できる転倒防止機能が実現されている。
【0022】
<転倒防止機能>
本実施例に係る電池ケース1の転倒防止機能は、概略的には、トレイ1bに収納されている電池パック100pの残数に応じ、壁部30を分断線11と折り線12とによって変形させることで実現される。
図4にトレイ1bにおける壁部30の変形状態を示した。
図4(A)〜
図4(E)は、電池パック100pの残数に応じた壁部30の変形のさせ方の一例を示している。
図4(A)に示したように、壁部30の当初の形状は等脚台形状であるが、
図4(B)〜
図4(E)に示したように、電池パック100pの数が減っていき、所定の残数になった時点で、順次分断線11を破断させていく。この例では、まず、
図4(B)に示したように、壁部30における前後いずれかの分断線(11a、11c)で壁部30を破断する。ここでは、最も後方の分断線11aを破断する。それによって、当初の等脚台形状の壁部30は、三角形状でトレイ1bの内方に折り曲げられる直角三角形状の舌片31と直角台形状の壁部30とに分断される。
【0023】
電池パック100pがさらに減ったら、
図4(C)に示したように、当初の壁部30における前後中央の分断線11bを破断し、先に折り線12で屈曲させた舌片31に連続させて、矩形状の舌片32を内方に折り曲げる。以後、
図4(D)に示したように、電池パックの残数に応じて、最後の分断線11cを破断し、新たに形成された矩形状の舌片33をトレイ1bの内方に折り曲げ、三角形状の壁部30を残す。そして、最終的には、
図4(E)に示したように、壁部30として最後まで残っていた三角形状の舌片34をトレイ1bの内方に折り曲げる。
【0024】
図5〜
図7に、壁部30の変形に伴う電池パック100pの収納状態を示した。
図5は、トレイ1bが
図4(A)に対応する状態にあるときの電池パック100pの収納状態を示している。この図では、トレイ1bに10個の電池パック100pが収納されている状態を示した。このように、本実施例では、トレイ1bの左右の側面(6、7)の壁部30は、当初、前方から3列目から7列目までの電池パック100pに対応する領域にわたって形成されている。そして、壁部30は、電池パック100pが前後方向に転倒するのを防止する機能に加え、電池パック100pの左右両端を支えることで、トレイ1bの側面(6、7)が電池パック100pの重さで歪んだり、電池パック100pがトレイ1bから左右方向に逸脱したりすることを防止する機能も担っている。
【0025】
図6は、壁部30が
図4(B)に対応する状態にあるときの電池パック100pの収納状態を示している。
図6(A)は、トレイ1bを前方から見たときの図であり、
図6(B)はトレイ1bを後方から見たときの図である。本実施例では、電池パック100pの残数が7個になったときに、最も前方の三角形状の舌片31を壁部30から破断するとともに内方に折り曲げることとしている。それによって、7列分の電池パック100pの最前列が舌片31の後縁辺に当接して前方への転倒が防止される。すなわち、実施例に係る電池ケース1では、トレイ1bにおける電池パック100pの残数が7個になった時点で、壁部30における最も後方の分断線11aを破断し、その破断によって形成された三角形状の舌片31をトレイ1bの内方に折り曲げる。
【0026】
ところで、トレイ1bが店頭に置かれる場合、トレイ1bの前面4よりも奥に電池パック100pの最前列があるとトレイ1bから電池パック100pを取り出し難くなる可能性がある。このような場合には、
図7(B)に示したように、トレイ1bの前後方向を入れ替え、最後列の電池パック100pが手前側に配置されるようにすればよい。そして、電池パック100pの残数が減少していくのに応じて壁部30を適宜に変形させればよい。
【0027】
図7に、電池パック100pの残数に応じた壁部30の状態を示した。なお、
図7では、電池パック100pの残数と壁部30の変形状態との関係を分かり易くするために、トレイ1bに残っている電池パック100pを前面4側に寄せることとして、壁部30の変形状態と、電池パック100pの残数や収納状態との関係を示した。そして、
図7(A)、
図7(B)、および
図7(C)は、それぞれ
図4(C)、(D)、および
図4(E)に示したトレイ1bに対応する電池パック100pの収納状態を示している。
【0028】
図7(A)〜(C)に順に示したように、トレイ1bに残っている電池パック100pが少なくなっていくのに応じ、壁部30の分断線(11a〜11c)を後方から順次破断していき、壁部30を破断したことで形成される舌片(31〜34)をトレイ1bの内方に折り曲げていく。本実施例では、電池パック100pの残量が7個になった時点で最も後方の分断線11aを破断することとして、以後、
図7に示したように、電池パック100pの数が、5個、および3個になった時点で、それぞれ当初の壁部30の中央に形成されている分断線11bおよび最も前方の分断線11cの順に各分断線(11b、11c)を破断し、その分断線(11b、11c)を破断することによって形成された舌片(32、33)をトレイ1bの内方に折り曲げる。そして、電池パック100pの残量が2個になった時点で、それまで壁部30として残っていた最も前方の舌片34を内方に折り曲げる。
【0029】
このように、実施例の電池ケース1によれば、トレイ1b内で正立状態にある電池パック100pが転倒し難くなり、電池100や電池パック100pの残数を容易に、かつ正確に確認することができる。また、電池パック100pの転倒を防止して正立状態を保つことができるので、店頭における電池100や電池パック100pの陳列状態の見栄えが損なわれることがない。さらに、実施例に係る電池ケース1では、電池パック100pの残数によらず、最前列および最後列の電池パック100pの左右両端が壁部によって完全に隠れないように、壁部30の形状を等脚台形状とするともに、分断線11の前後位置が適切に設定されている。すなわち、最前列および最後列の電池パック100pは、左右両端の一部が必ず露出し、利用者は、この露出した部位に手指を掛けることができ、電池パック100pを容易に取り出すことができる。
【0030】
===その他の実施例===
電池パックの数に応じた壁部の形状や、分断線を破断する順番は、上記実施例に限らない。例えば、
図8に示したように、前方の分断線11aを破断した後に、後方の分断線11cを破断してもよい。いずれにしても、分断線(11a〜11c)を破断することで形成される舌片(31〜34)によって正立状態にある電池100や電池パック100pを支えられればよい。
【0031】
トレイに形成される壁部は、山型であれば、どのような形状であってもよい。例えば、頂上が前後方向の直線ではなく、なだらかな曲線であってもよい。壁部は、上端が分離前の電池ケースの左右両面の上縁辺の位置よりも下方にあってもよい。すなわち、左右の側面が山型にくり抜かれることで壁部が形成されてもよい。
【0032】
上記実施例では、最前列および最後列にある電池パックが取り出し易いように、壁部を等脚台形状にしていたが、直角台形状として、下底から上方に延長する垂線が、分離前の電池ケースにおける左右側面の後縁辺あるいは前縁辺であってもよい。また、壁面を矩形状の山型にしてもよい。電池パックの左右両端面が壁部に隠れて、電池パックが取り出しにくい場合は、分離前の電池ケースの左右の側面が矩形状の山型にくり抜かれるように切り取り線を形成すればよい。それによって、電池パックの上端が壁部の上縁辺よりも上方に露出し、トレイから電池パックを容易に取り出せる。
【0033】
電池ケースに収納される電池は、当然のことながら、電池パックの状態で収納されていなくてもよい。また電池は、単三形や単四形に限らない。電池は、円筒形の電池に限らず、矩形筒状の006P型などであってもよい。