(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971062
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】非接触給電装置用コイルおよび非接触給電装置用コイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20211111BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20211111BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20211111BHJP
H01F 41/074 20160101ALI20211111BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20211111BHJP
B60L 5/00 20060101ALN20211111BHJP
B60L 53/12 20190101ALN20211111BHJP
B60M 7/00 20060101ALN20211111BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F5/00 F
H01F5/00 H
H01F27/28 123
H01F41/074
H02J50/10
!B60L5/00 B
!B60L53/12
!B60M7/00 X
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-114102(P2017-114102)
(22)【出願日】2017年6月9日
(65)【公開番号】特開2018-207060(P2018-207060A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】306013120
【氏名又は名称】昭和電線ケーブルシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野内 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 聖
【審査官】
後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−537499(JP,A)
【文献】
特開昭56−083911(JP,A)
【文献】
特開2003−045722(JP,A)
【文献】
特開2010−016235(JP,A)
【文献】
特開2012−199432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H01F 27/28
H01F 5/00
H01F 41/074
H02J 50/10
B60L 50/40
B60M 7/00
B60L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部同士が接続された互いに平行な一対の第1及び第2のリッツ線からなる通電線を、平面的に並べて渦巻き状に7巻き以上巻回して形成した非接触給電装置用コイルであって、
並べて巻回される前記第1及び第2のリッツ線からなる通電線のうち、互いの線が交差する交差部を、1巻中に1箇所設け、
当該非接触給電装置用コイルの全体の巻数に対する前記交差部を設けた部位の割合が43%以上57%以下であって、
前記交差部を、前記非接触給電装置用コイルの巻回中心から半径方向に揃えて設け、
前記交差部の交差方向を前記交差部毎に変えた
ことを特徴とする非接触給電装置用コイル。
【請求項2】
当該非接触給電装置用コイルの全体の巻数に対する前記交差部を設けた部位の割合が43%以上53%以下であることを特徴とする請求項1に記載の非接触給電装置用コイル。
【請求項3】
前記交差部を、1巻きおきに設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触給電装置用コイル。
【請求項4】
端部同士が接続された互いに平行な一対の第1及び第2のリッツ線からなる通電線を、平面的に並べて渦巻き状に7巻き以上巻回して形成した非接触給電装置用コイルの製造方法であって、
前記第1及び第2のリッツ線からなる通電線を並べて巻回する工程と、
並べて巻回される前記第1及び第2のリッツ線からなる通電線のうち、互いの線が交差する交差部を、1巻中に1箇所設け、かつ、当該非接触給電装置用コイルの全体の巻数に対する前記交差部を設けた部位の割合を43%以上57%以下とする工程と、
前記交差部を、前記非接触給電装置用コイルの巻回中心から半径方向に揃えて設ける工程と、
前記交差部の交差方向を前記交差部毎に変える工程と、
を備える非接触給電装置用コイルの製造方法。
【請求項5】
前記交差部を1巻中に1箇所設ける工程において、当該非接触給電装置用コイルの全体の巻数に対する前記交差部を設けた部位の割合を43%以上53%以下とする
ことを特徴とする請求項4に記載の非接触給電装置用コイルの製造方法。
【請求項6】
前記交差部を、1巻きおきに設けたことを特徴とする請求項4又は5に記載の非接触給電装置用コイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
非接触給電装置用コイルおよび
非接触給電装置用コイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の給電は、ケーブルを用いる接触式から無線電力伝送技術を利用した非接触式へ変更することが進められている。
【0003】
非接触給電の技術は、給電所の路面に埋め込むようにして設けた送電用(1次側)の平面コイルと電気自動車の底部に設けた受電用(2次側)の平面コイルとを数十cm程度の間隔で対向させることで電力を無線送電することで電気自動車に給電する技術である。
【0004】
従来、無線電力伝送に用いる平面コイルは、主に、細い複数のエナメル線を撚り合わせて形成したリッツ線(通電線)を平面的に渦巻き状に巻回して形成する。
【0005】
この種の平面コイルの発生電力は、通電線の断面積に比例するため、線径の太いものを用いるほど、大きな電力が得られるものの、電気自動車のボディ底面や路面などが設置場所となる関係で、コイルの収容厚(径または高さ)が制限されるケースがある。
【0006】
このため、近年では、細い通電線を複数本用いて太い通電線1本分の断面積を稼ぐように複数本の通電線を並べて平面的に巻回したコイルが発案されている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
ところで、このようなコイルの場合、渦電流の誘起によるジュール熱の発生を抑える対策(発熱対策)を講じつつ既定の性能を得る上で、複数の通電線を1巻きする中で5〜6箇所に捻じり(線を交差させること)を実施する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008‐87733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように複数の通電線を平面的に巻回する従来のコイル場合、発熱対策のため、複数の通電線を1周巻くうちの多数の箇所で、線どうしを交差させる必要があり、コイル製造時にボビンに回転を加えたり、撚り戻しを行うなどの作業が必要になるため、通電線を交差させる箇所が多いほど作業性が低下する。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、規定の性能を得る上で厚みが薄くかつコイル製造の作業性のよい
非接触給電装置用コイルおよび
非接触給電装置用コイルの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る非接触給電装置用コイルは、端部同士が接続された互いに平行な一対の第1及び第2の
リッツ線からなる通電線を、平面的に並べて渦巻き状に7巻き以上巻回して形成した非接触給電装置用コイルであって、並べて巻回される前記第1及び第2の
リッツ線からなる通電線のうち、互いの線が交差する交差部を、1巻中に1箇所設け、当該非接触給電装置用コイルの全体の巻数に対する前記交差部を設けた部位の割合が43%以上
57%以下であって、前記交差部を、前記非接触給電装置用コイルの巻回中心から半径方向に揃えて設け、前記交差部の交差方向を前記交差部毎に変えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る非接触給電装置用コイルの製造方法は、端部同士が接続された互いに平行な一対の第1及び第2の
リッツ線からなる通電線を、平面的に並べて渦巻き状に7巻き以上巻回して形成した非接触給電装置用コイルの製造方法であって、前記第1及び第2の
リッツ線からなる通電線を並べて巻回する工程と、並べて巻回される前記第1及び第2の
リッツ線からなる通電線のうち、互いの線が交差する交差部を、1巻中に1箇所設け、かつ、
当該非接触給電装置用コイルの全体の巻数に対する前記交差部を設けた部位の割合を43%以上57%以下とする工程
と、前記交差部を、前記非接触給電装置用コイルの巻回中心から半径方向に揃えて設ける工程と、前記交差部の交差方向を前記交差部毎に変える工程と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、規定の性能を得る上で厚みが薄くかつ製造作業性のよい
非接触給電装置用コイルおよび
非接触給電装置用コイルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一つの実施の形態の渦巻き状のコイル(外形がほぼ方形)の平面図。
【
図3】比較例としてのパラレル巻の一部を拡大した図。
【
図4】本発明のコイルと比較例のコイルとの周波数‐交流抵抗特性図。
【
図5】本発明の一つの実施の形態の非接触給電装置の構成を示す断面図。
【
図6】15巻のコイルで巻き方と効果を確認した実施例1〜3、比較例1を示す図。
【
図7】7巻のコイルで巻き方と効果を確認した実施例4〜6、比較例2を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0017】
(実施の形態)
非接触給電装置は、1次側の非接触送電装置と2次側の非接触受電装置とを対向配置して構成される。電力を供給する側である1次側の非接触送電装置と電力を受ける側の2次側の非接触受電装置は、コイルの部分の要素はほぼ同じ要素で構成されており、ここでは、一方の側について説明するが、他方の側も同様であることは言うまでもない。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係るコイル20は、一対の圧着端子21、24により両端がそれぞれ接続された第1及び第2の通電線としてのリッツ線22、23を、平面的に並べて渦巻き状に巻回して製造(形成)したものである。コイル20の内径S1と外径S2の比S2:S1をほぼ2:1としている。
【0019】
このコイル20は、並べて巻回されるリッツ線22、23のうち、互いの線が交差する交差部A(
図2参照)を、1巻おきに1巻中に1箇所設けている(部分P参照)。この巻き方のコイル20を「パラレル転位巻」と称す。また交差部Aを「転位箇所」と称す場合がある。
【0020】
平面的に渦巻き状に巻回しただけのコイル20は、搬送時にばらけてしまうため、コイル20の巻幅に合わせて複数の箇所に粘着テープ(図示せず)などを巻き付けてテーピング固定し、形状の崩れを防止している。
【0021】
つまりリッツ線22、23は、一対の圧着端子21、24により両端がそれぞれ接続されており、ほぼ平らに並べて渦巻状に巻回されている。
【0022】
リッツ線22、23は、複数のエナメル線を撚り合わせて束にして形成した線材群である。なお、この例では、リッツ線22、23を用いたが、リッツ線22、23以外の通電線としては、例えば絶縁被覆していない導体(銅やアルミニウムを材料とする線)や、最外層に自己融着層を設けた自己融着線などを用いてもよい。
【0023】
圧着端子21は、リッツ線22、23の一端と電気接続されるものであって、概略的に圧着部と、固定用の孔が設けられた固定部とから構成されている。圧着部は、筒形状の金属部材によって構成されており、リッツ線22、23の導体部を挿入し加締め加工することで2つの線材を圧着一体化する。圧着端子24は、リッツ線22、23の他端と電気接続されるものであり、圧着端子21と同じものである。
【0024】
コイル20の一部の部分P(
図1参照)には、
図2に示すように、リッツ線22、23が交差する交差部Aが、コイル20の巻回中心から半径方向に揃えて設けられている。
【0025】
すなわち、このコイル20は、2本で一対としたリッツ線22、23の巻数15ターン中に、転位箇所としての交差部Aを8箇所設けたものである。なお、この例では、リッツ線22、23一対で1巻としたコイル全体の巻き数15に対して、そのうち半数を超える8箇所に交差部Aを設けたが、これ以外の巻き数や巻き方にも本願発明は適用可能である。この例では巻き数の総数を奇数としたが、偶数としてもよく、巻き数自体も増減してもよい。
【0026】
この例では、外形が多角形(この例のように外形がほぼ方形の場合は四隅の角部に丸みをつけている)になるようにリッツ線22、23を渦巻き状に巻回してコイル20を形成している。この他、外形をほぼ円形にしたものであってもよい。
【0027】
リッツ線22、23を2本一対で1巻とした場合、1巻毎の間隔を一定隙間空けて巻回してもよい。このように1巻毎の間隔を一定隙間空けて巻回したコイルを「ギャップ巻」と称す。
【0028】
コイル20の巻き幅で規定すると、コイル20全体の巻き幅(S2‐S1)/2のうち巻き幅の半分の幅(S2‐S1)/4を超える程度の範囲に交差部Aを設けている。
【0029】
この例の交差部Aは、1対のリッツ線22、23の交差方向を巻回毎に変えて複数設けている。つまり、この例では、1巻飛ばしの奇数番目(N1、N3、N5…N15)に交差部Aを設けているが、そのうちN1番目のリッツ線22、23とN3番目のリッツ線22、23の交差方向を異ならせ、N3番目のリッツ線22、23とN5番目のリッツ線22、23の交差方向を異ならせている。
【0030】
続いて、
図3及び
図4を参照してこの実施形態のコイル20(
図2のパラレル転位巻)と比較例(パラレル巻とギャップ巻)とを対比して説明する。
ギャップ巻は、リッツ線1巻毎に所定間隔の隙間を空けた試料としてスタンダードなコイルであり、このギャップ巻のコイルの性能(特性)を規定値としてこれにできるだけ近付けることが望ましい。
【0031】
また、比較対象の試料(比較例)として作成したパラレル巻は、
図3に示すように、2本で一対としたリッツ線22、23の総巻数15巻きのすべてを平行巻きにしたものである。
【0032】
試験条件としては、上記の3つの試料(パラレル転位巻、パラレル巻、ギャップ巻)それぞれについて、コイル両端を既存のLCRメータに接続して、周波数を0〜200kHzまで変化させて交流抵抗を測定したものである。
図5において周波数が0の位置の値(およそ100mΩ)は直流抵抗である。
【0033】
計測結果の
図4を参照すると、実用域である例えば85kHz〜100kHzの帯域において、本発明のパラレル転位巻はギャップ巻と近似した特性が得られていることがわかる。また比較例のパラレル巻は交流抵抗がギャップ巻の値からは乖離していることがわかる。
【0034】
上記実施形態のコイル20(パラレル転位巻)を用いた非接触給電装置は、
図5に示すように、アルミニウム板などの基板1と、この基板1の上面に配置された磁心コア板2と、磁心コア板2の上面に配置されたコイル20とを備える。これにより、例えば1次側の非接触送電装置または2次側の非接触受電装置とすることができる。さらに、磁心コア板2におけるコイル20の位置を固定するために、磁心コア板2の上面をモールド樹脂などにより皮膜してもよい。
【0035】
以下、コイル20の製造方法を説明する。
(第1工程:巻回工程)
この第1工程では、リッツ線22、23を並べて巻回する。
【0036】
(第2工程:交差部形成工程)
この第2工程では、並べて巻回されるリッツ線22、23のうち、互いの線が交差する交差部Aを、1巻おきに1巻中に1箇所設ける。この際、交差部Aを、コイル20の巻回中心から半径方向に揃えて設けることが好ましい。
【0037】
(実施例)
上記の実施形態では、15巻のコイル20のうち、交差部Aを、1巻おきに1巻中に1箇所設けた例について説明したが、上記に示した巻き方の例は一例であり、以下、
図6、
図7を参照していくつかの巻き方の例とその効果について記載する。
【0038】
図6に示すように、総巻き数が15巻のコイル20について、実施例1は、巻順N1、N3、N5、N7、N9、N11、N13、N15の合計8箇所に交差部Aを設けた例であり、上記実施形態で説明した1巻おきに1巻中に1箇所交差部Aを設けたものであり、全体の巻数に対する交差部Aを設けた部位の割合は8/15=53%であり、この割合での特性上の効果はギッャプ巻と同等以上の効果が得られたため効果有り(有)とした。
【0039】
実施例2は、巻順N4〜N11の合計8箇所に交差部Aを設けた例であり、巻き幅の中で中央部に交差部Aを纏めて設けたものであり、全体の巻数に対する交差部Aを設けた部位の割合は8/15=53%であり、この割合での特性上の効果もギッャプ巻と同等以上のが得られたため効果有り(有)とした。
【0040】
実施例3は、巻順N1、N3、N6、N9、N12、N14の合計6箇所に交差部Aを設けた例であり、ほぼ2巻おきに1巻中に1箇所交差部Aを設けたものであり、全体の巻数に対する交差部Aを設けた部位の割合は6/15=43%であり、この割合での特性上の効果もギッャプ巻と同等以上の効果が得られたため効果有り(有)とした。
【0041】
比較例1は、巻順N2、N5、N8、N11、N14の合計5箇所に交差部Aを設けた例であり、実施例3よりも1箇所少ない5箇所に交差部Aを設けたものであり、全体の巻数に対する交差部Aを設けた部位の割合は5/15=33%であり、この割合での特性上の効果はギャップ巻の特性を下回ったため効果無し(無)とした。
【0042】
続いて、実施例1〜3に対して総巻き数を半数程度にしたコイル20の例について説明する。
図7に示すように、総巻き数が例えば7巻のコイル20について、実施例4は、巻順N1、N3、N5、N7の合計4箇所に交差部Aを設けた例であり、上記実施形態で説明した1巻おきに1巻中に1箇所交差部Aを設けたものであり、全体の巻数に対する交差部Aを設けた部位の割合は4/7=57%であり、この割合での特性上の効果はギッャプ巻と同等以上の効果が得られたため効果有り(有)とした。
【0043】
実施例5は、巻順N3〜N5の合計3箇所に交差部Aを設けた例であり、巻き幅の中で中央部に交差部Aを纏めて設けたものであり、全体の巻数に対する交差部Aを設けた部位の割合は3/7=43%であり、この割合での特性上の効果もギッャプ巻と同等以上の効果が得られたため効果有り(有)とした。
【0044】
実施例6は、すべての巻順N1〜N7の合計7箇所に交差部Aを設けた例であり、1巻中に1箇所交差部Aを設けたものであり、全体の巻数に対する交差部Aを設けた部位の割合は7/7=100%であり、この割合での特性上の効果もギッャプ巻と同等以上効果が得られたため効果有り(有)とした。
【0045】
比較例2は、巻き初めの巻順N1と巻き終わりの巻順N7の合計2箇所に交差部Aを設けた例であり、全体の巻数に対する交差部Aを設けた部位の割合は2/7=33%であり、この割合での特性上の効果はギャップ巻の特性を下回ったため効果無し(無)とした。
【0046】
上記実施例1〜6、比較例1、2の結果から、全体の巻数に対する交差部Aを設けた部位の割合が40%を超える範囲で効果があることがわかった。すなわち、リッツ線22、23の一対で1巻としたコイル全体の巻き数の40%以上の箇所に交差部Aを設けることがよい。
【0047】
このように本実施形態の非接触給電装置によれば、両端が接続された一対のリッツ線22、23を並べて巻回する上で、リッツ線22、23が交差する交差部Aを1巻おきに1巻中に1箇所設けたことで、細いリッツ線22、23を用いてコイル自体の厚みを薄くしつつ最低限の転位箇所の数で規定の性能を得ることができる。
すなわち、規定の性能を得る上で厚みが薄くかつコイル製造の作業性のよい非接触給電装置、コイルおよびコイルの製造方法を提供することができる。
【0048】
また、本実施形態では、以下のような効果が得られる。
コイル20の巻回の途中で、リッツ線22、23を交差(転位)させる交差部A(転位箇所)を設けることで、低周波数での交流抵抗の上昇を抑えることができる。
【0049】
例えば奇数ターンは転位させ、偶数ターンは転位させないといったように、転位箇所を1巻おきに設けることで、コイル20の扁平さを維持し易くなる。また製造時にコイル20の巻回速度を上昇することができる、などの効果が期待できる。
【0050】
転位箇所は1巻の間に1箇所設ければよい。1巻中にバラバラの位置に交差部Aを設けるのではなく、平面コイル20の中心から見て同一方向にある方が望ましい。つまり転位による凹凸が一方向に揃っていると、コイル20を設置する側の収容スペースにコイル20を収容しやすくなるという点で優れる。
【0051】
交差部A(転位箇所)の捻じり方としては、同一方向に捻じってもよいが、転位の度に交差方向を変える、つまり交差方向を反転させることで、コイル製造装置側で撚り戻しを行う必要がなくなり、パラレル巻きの一方のリッツ線22またはリッツ線23のみに捻回がかかることを防止できる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記の新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記した実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…アルミ板(基板)、2…磁心コア板、20…コイル、21、24…圧着端子、22、23…リッツ線。