(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明を自動車CARの左右のヘッドランプL−HL,R−HLに適用した実施形態の概念構成図である。各ヘッドランプL−HL,R−HLには、それぞれランプユニット(以下、LUと称する)100と、スイブルアクチュエータ(以下、SAと称する)10が配設されており、このSA10を駆動することによりLU100をスイブル制御することが可能とされている。
【0012】
前記各ヘッドランプL−HL,R−HLの各SA10は、車載バッテリー(以下、BAT)300に電気接続されるとともに、自動車の各部を集中制御する車両電子制御ユニット(以下、車両ECU)200にLIN400を介して接続されている。SA10は当該車両ECU200とLINを介して所定の信号を送受することによりLU100のスイブル制御を行うようになっている。
【0013】
図2(a)はSA10の概念構成を示している。LU100は、ベース101にLED(発光ダイオード)102を搭載しており、LED102から出射された光をリフレクタ103で反射し、投影レンズ104により自動車の前方に向けて照射する構成例を示している。このLU100の上部には傾動支点となるボール軸105が立設され、下部にはSA10に連結される連結軸106が設けられている。
【0014】
前記SA10はLU100の下側に配置されており、上方に向けられている出力軸11がLU100の連結軸106に連結されている。SA10が駆動されると、出力軸11が軸転される。この出力軸11が回転されることにより、LU100を水平H方向に回動してLU光軸のスイブル制御を実行する。
【0015】
図2(b)はSA10の内部構成を示しており、ケーシング内12に制御部1と、出力機構部2が内装されている。制御部1は電源IF部3、通信IF部4、カスタムIC5、モーター6を有している。制御部1によりモーター6を駆動し、このモーター6が連結されている出力機構部2により出力軸11を回転駆動する。
【0016】
図3に前記制御部1の概略構成を示すように、制御部1は1つの制御基板13に構築されている。この制御基板13には各種電子部品が搭載されており、これらで前記した電源IF部3と通信IF部4が構成される。また、制御基板13には前記したカスタムIC5が搭載され、さらにモーター6が一体的に組み込まれている。
【0017】
前記電源IF部4は、電源コネクタ7を介して前記BAT300に接続され、当該BAT300から給電される電力を所定の電圧、電流に変換し、制御部1を駆動する際の電源として機能する。
【0018】
前記通信IF部5は信号コネクタ8を介してLINに接続され、前記車両ECU200に接続される。制御部1は、車両ECU200からの制御信号を受信し、この制御信号に基づいてカスタムIC5によりモーター6を駆動制御する。また、制御部1はLIN400を通して、モーターの回転位置や、これと密接な関係のあるLU100のスイブル位置等の各種情報信号を車両ECU200に送信する。
【0019】
前記モーター6は、前記制御基板13に一体的に組み込まれたブラシレスモーターで構成されている。このブラシレスモーターは、一部を破断しているように、制御基板13に取り付けられる円筒容器状のモーターケース61に内装された駆動コイルからなるステーター62と、このモーターケース61に軸支持された回転軸63に一体的に設けられたマグネット(永久磁石)からなるローター64とで構成されている。
【0020】
このモーター6は、ステーター62としての各駆動コイルにカスタムIC5から駆動電流が入力されることにより、所要の回転数や回転速度で回転駆動される。また、このモーター6には、ローター64の回転を検出するための検出素子としてホールIC(磁気検出IC)65が、制御基板13のローター64に臨む位置に搭載されている。このホールIC65で検出したローター64の回転、すなわち回転軸63の回転量や回転速度等の回転情報をカスタムIC5に入力することにより、モーター6の回転数や回転速度をフィードバック制御することが可能とされている。
【0021】
前記モーター6の回転軸63に連結されている前記出力機構部2は、図示は省略するがギア列やスクリュー機構等で構成されており、モーター6の回転出力を変速、特に減速して出力軸11を回転駆動する構成となっている。モーター6は正転、逆転が可能であり、したがって出力軸11も正転、逆転駆動し、これにより前記したようにLU100を水平方向に往復回動するスイブル制御を実行する。
【0022】
前記カスタムIC5の内部構成を
図4に示す。このカスタムIC5は、内部に制御回路部51と、比較回路部52と、モーター駆動回路部53と、クロック制御回路部54を備えている。また、前記制御回路部51に接続されている送信回路部55と受信回路部56を備えている。これら送信回路部55と受信回路部56は前記通信IF部4に接続されている。
【0023】
前記制御回路部51は、主として前記通信IF部4及びLIN400を介して車両ECU200との間で信号の送受を行う機能と、モーター6の駆動を制御する機能を有する。すなわち、車両ECU200から送信されてきたスイブル制御情報の要求信号を受信回路部56で受信すると、この要求信号に対応したスイブル制御情報の送信信号Ssを生成し、送信回路部55に出力する。この送信信号Ssは「H」,「L」のビット信号として、前記クロック制御回路部54で生成されるクロック信号の1周期で1ビットの信号を生成する。
【0024】
また、制御回路部51は、車両ECU200から送信されてくるスイブル制御を実行するための制御信号(以下、スイブル制御信号と称する)を受信回路部56で受信すると、このスイブル制御信号に基づいて所定の演算を行い、モーター制御信号を生成して前記モーター駆動回路部53に出力する。さらに、当該制御回路部51には前記モーター6に設けられている回転検出素子(ホールIC)65で検出した検出信号が前記モーター駆動回路部53を介して入力され、この検出信号に基づいて前記モーター制御信号をフィードバック制御する。
【0025】
前記モーター駆動回路部53は、制御回路部51から入力されるモーター制御信号に基づいてモーター駆動電流を生成し、このモーター駆動電流をモーター6に供給することによりモーター6を駆動し、LU100のスイブル制御を実行する。
【0026】
前記受信回路部56は、通信IF部4を介して車両ECU200から送信されてきた前記した要求信号やスイブル制御信号等を受信し、これらを受信信号Srとして前記制御回路部51に出力する。また、受信回路部56は、送信回路部55から送信信号Ssを送信する際には、送信した送信信号Ssをモニター受信する。このモニター受信した受信信号Srは監視信号Smとして検出されることになる。
【0027】
前記送信回路部55は、車両ECU200からの要求信号に基づいて制御回路部51で生成され、かつ出力される前記モーター制御に係わる情報、すなわちモーター6の回転位置、さらに言えばLU100のスイブル角やスイブル速度等の情報に基づく送信信号Ssを通信IF部4に出力し、ここから車両ECU200に向けて送信する。
【0028】
前記比較回路部52は、送信回路部55から送信する送信信号Ssと、この送信信号Ssを通信IF部4から車両ECU200に向けて送信したときに受信回路部55でモニター受信した受信信号Sr、すなわち監視信号Smを比較する機能を有する。ここでは、後述するように、送信信号Ssと監視信号Smの「H」,「L」レベルが一致しているか否かを比較し、不一致の場合に異常であると判定する。
【0029】
前記クロック制御回路部54は、詳細については後述するが、所定周波数でのクロック信号を生成して制御回路部51に出力し、制御回路部51はこのクロック信号に基づいて送信信号Sの送信タイミングを制御し、かつ前記比較回路部52での比較タイミングを制御する。また、このクロック制御回路部54は、前記受信回路部56で受信した監視信号Smに基づいてクロック信号のタイミングを制御することが可能に構成されている。
【0030】
前記送信回路部55は、
図5に示すように、レベルシフト回路を備えている。このレベルシフト回路は送信する送信信号Ssを反転するインバータINVと、このインバータINVの出力でオン・オフするNMOSトランジスタM1を含んで構成されている。このNMOSトランジスタM1のドレインはダイオードD1を介してLIN400に接続されている。インバータINVに入力される送信信号SsはVbレベル(ベースレベル=5V)とVeレベル(接地レベル=0V)の2値信号である。また、LIN400は通信IF部4において、プルアップ抵抗R1によりLIN伝送レベルとしてのVsレベル(=12V)にプルアップされている。
【0031】
このレベルシフト回路においては、送信信号Ssが「H」レベルVb(=5V)のときにはインバータINV出力は「L」となり、NMOSトランジスタM1はオフであり、ドレインはLIN伝送レベルVs(=12V)にシフトされる。送信信号が「L」レベルVe(=0V)のときは、インバータINV出力は「H」となり、NMOSトランジスタM1はオンになり、ドレインはVe(=0V)になる。
【0032】
したがって、受信回路部56で受信する監視信号Smは、出力信号Ssの「H」,「L」レベルに対応して、VsレベルVeレベルとなる。また、受信回路部56では、LIN400を通して受信した受信信号のVsレベルをVbレベルにレベルシフトするための回路が設けられているが、ここではその説明は省略する。
【0033】
本発明におけるSA10は以上の構成であり、
図2(b)に示したように、ヘッドランプHLに組み込まれたSA10にLIN400を介して車両ECU200から要求信号が送信されてくると、通信IF部4を通して受信回路部56でこれを受信し、受信した受信信号Ssを制御回路部51に出力する。制御回路部51はこの受信信号Ssによる要求を受けて、スイブル制御情報を含む送信信号Ssを生成し、送信回路部55に出力し、通信IF部4からLIN400を通して車両ECU200に送信する。
【0034】
車両ECU200は、送信されてきた送信信号Ssのスイブル制御情報に基づいてスイブル制御信号を生成し、LIN400を通してSA10に送信する。SA10はこのスイブル制御信号を通信IF部4及び受信回路部56で受信し、制御回路部51は、受信した受信信号Sr、すなわちスイブル制御信号に基づいてモーター制御電流を生成し、モーター駆動回路部53に出力する。これにより、モーター6は所定の回転制御が行われ、出力機構部2によりLU100のスイブル制御が実行される。
【0035】
このようなスイブル制御において、比較回路部52は、送信信号Ssの監視を行っている。すなわち、
図6のタイミング図に示すように、送信回路部55は車両ECU200からの要求に対応して制御回路部51で生成した送信信号Ssを所要のタイミングでLIN400を通して送信する。この送信信号Ssは最初に「L」レベルに立下るビット信号として出力し、これに続いて「H」または「L」のビット信号を順次出力する。
【0036】
クロック制御回路部54は送信信号Ssの立下りに同期して立下るようにクロック信号CLKをタイミング制御する。また、受信回路部56はLIN400を通して送信された送信信号Ssをエコーバックにより監視信号Smとして受信する。比較回路部52は、送信前の送信信号Ssと、受信した監視信号Smのレベルを比較する。この比較はクロック制御回路部54で生成されたクロック信号CLKの最初の立上りのタイミングで行い、両信号のレベルの一致、不一致を検出する。
図6の例では、両信号レベルはいずれも「L」であり、比較が一致して送信信号Ssが正常であることが判定される。
【0037】
ところで、
図5に示した送信回路部55において、NMOSトランジスタM1のゲート・ドレイン間、すなわちLIN400に接続されている経路に寄生容量Cxが生じていると、LIN400に外部ノイズが加えられたときに、当該外部ノイズにより発生した電荷が当該寄生容量Cxに蓄積される。例えば、寄生容量CxにVsよりも極めて高いレベルVx(=30V)に相当する電荷が蓄積されることがあり、NMOSトランジスタM1のドレイン電圧、すなわちLIN400のレベルがVxに上昇される。
【0038】
そのため、
図7に示すように、送信信号Ssが「H」レベルから「L」レベルに変化したときに、寄生容量Cxに蓄積された電荷が放電するまで、すなわちLIN400のレベルがVxからVsにまで低下するまでに所要の時間がかかることになる。これにより受信回路部56で受信した監視信号SmのレベルがVeまで低下するタイミングが遅延し、クロック信号CLKの最初の立上りのタイミングの時点にでは未だ「L」レベル状態にはならない。そのため、クロック信号CLKの最初の立上りのタイミングにおいて送信信号Ssと監視信号Smを比較したときに、両信号のレベルが一致せず、異常な状態であると判定することになる。
【0039】
比較回路部52は、送信信号Ssと監視信号Smのレベルの不一致により異常を判定したときには、この異常を制御回路部51に出力し、これを受けて制御回路部51は送信信号Ssの生成を停止し、さらに送信回路部55への出力を停止する。すなわち、制御回路部51から正常な送信信号Ssが出力されているのにもかかわらず、監視信号Smに生じた遅延によって異常が判定されて送信が停止され、以降における正確なスイブル制御が行われなくなることがある。
【0040】
このような課題に対し、本実施形態においては、クロック制御回路部
54は、監視信号Smの立下りのタイミングにおい
てクロック信号CLKの立下りを同期させるようタイミング制御を行う構成とされている。すなわち、LIN400に加えられたノイズにより寄生容量Cxに電荷が蓄積され、NMOSトランジスタM1のドレイン電圧がVxに上昇されている場合に、監視信号Smが「L」レベルに低下するのが遅延されても、クロック信号CLKの立下りは監視信号Smが「L」レベルに変化したタイミングに同期される。
【0041】
制御回路部51では、このように制御されたクロック信号CLKに基づいて送信信号Ssを送信回路部55に出力する。したがって、このクロック信号CLKの最初の立上りのタイミングにおいて送信信号Ssと監視信号Smを比較すると、この比較のタイミングでは、送信信号Ssは確実に「L」レベルにあり、監視信号SmもNMOSトランジスタM1のドレイン電圧がVs以下になって「L」レベルの状態にあるので、両信号レベルが一致し、正常な状態であると判定することになる。
【0042】
このように比較回路部52において送信信号Ssと監視信号Smの信号レベルが一致する正常な状態を判定したときには、送信信号Ssの送信を継続することにより、車両ECU200に対してスイブル制御情報を送信できる。したがって、SA10においては、車両ECU200からの適正なスイブル制御信号を受信して好適なスイブル制御が実行されることになる。
【0043】
以上のように、本実施形態では、LIN400においてノイズの影響を受け、送信回路部55に存在する寄生容量Cxによって監視信号Smに遅延が生じた場合でも、監視信号Smが立下った時点でクロック信号CLKが立下るため、次の立上りの時点では遅延の影響を解消した状態で送信信号Ssと監視信号Smを比較することができる。これにより、制御回路部51で生成されて送信回路部55から正常な送信信号Ssが送信されているときに、LIN400に加えられたノイズの影響を受けて送信信号Ssの異常を検出するようなことが回避され、正常なスイブル制御が確保される。
【0044】
説明した実施形態では、監視信号が「L」に変化したときに、クロック信号が立下がりに同期し、次の立上りのタイミングで送信信号と監視信号を比較する構成としているが、その反対に、監視信号が「L」に変化したときにクロック信号が立上りに同期し、次の立下りのタイミングで送信信号と監視信号を比較するようにしてもよい。
【0045】
実施形態では、本発明をSA、すなわちスイブルアクチュエータに適用した例を示したが、レベリングアクチュエータ、あるいはレベリング・スイブルアクチュエータに適用できることは言うまでもない。