特許第6971064号(P6971064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971064
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】配筋方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20211111BHJP
   E04C 5/18 20060101ALI20211111BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   E04G23/02 D
   E04C5/18 102
   E04G21/12 105A
   E04G21/12 105E
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-125788(P2017-125788)
(22)【出願日】2017年6月28日
(65)【公開番号】特開2019-7289(P2019-7289A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 裕一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 邦洋
(72)【発明者】
【氏名】得能 昌憲
【審査官】 前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−103371(JP,A)
【文献】 特開2011−256658(JP,A)
【文献】 特開2005−155139(JP,A)
【文献】 特開2006−322272(JP,A)
【文献】 特開2014−055448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04C 5/18
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置対象鉄筋の移動推奨部位に位置する鉄筋部分を切断除去し、
直線状の連結鉄筋の長手方向両端部の各々を前記処置対象鉄筋の両切断端部の各々の同じ側に重ね継ぎ形式の継手構造により接続することで、前記処置対象鉄筋の前記移動推奨部位に位置した前記鉄筋部分を、そこから平行に移動した前記連結鉄筋に置換する配筋方法。
【請求項2】
既存の鉄筋コンクリート構造部に開口を形成する場合に、その開口側に配置された既存の鉄筋を前記処置対象鉄筋とし、
直線状の前記連結鉄筋の長手方向両端部の各々を前記処置対象鉄筋の両切断端部の各々の前記開口から離れる側に接続することで、前記処置対象鉄筋の前記移動推奨部位に位置した前記鉄筋部分を前記連結鉄筋に置換する請求項1記載の配筋方法。
【請求項3】
前記重ね継ぎ形式の継手構造として、前記処置対象鉄筋の外面と前記連結鉄筋の外面とを溶接するよりも両外面間の隙間が大きい状態で両鉄筋を固定する固定具にて前記処置対象鉄筋と前記連結鉄筋を接続する機械式の継手構造を用いる請求項1又は2記載の配筋方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋を所定の位置に配置する配筋方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造の建物の改修工事等では、建築設備の追加等を行うにあたり、ダイアモンドビット等を使用したコア抜き工事により、既設の鉄筋コンクリート梁(躯体の一例)に対して配管や配線を通過させるための貫通穴を新しく形成する場合がある。
【0003】
このような場合、新たに形成した貫通穴部分のコンクリートの欠損により、当該貫通穴に隣接するスターラップ筋に対するコンクリートのかぶり厚が不足する等の不具合が生じる虞がある。
このような不具合が生じた場合には、鉄筋を曲げて迂回させる技術等(例えば、特許文献1、2参照)を利用し、スターラップ筋におけるかぶり厚が不足する部位を移動推奨部位として、当該移動推奨部位の両端側を曲げ変形させて移動推奨部位を貫通穴とは反対側に移動させることで、コンクリートのかぶり厚不足を解消することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−103371号公報(段落0053、図8等)
【特許文献2】特開2008−175006号公報(図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、鉄筋曲げ半径を小さくするにも限度があることから、スターラップ筋の移動推奨部位の両端側を曲げ変形させて移動推奨部位を移動させるためには、スターラップ筋の長い範囲にて曲げ変形させる必要がある。そのため、当該移動推奨部位の領域よりも極めて広い領域のコンクリートを斫らなければならず、作業が煩雑化する問題がある。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、処置対象鉄筋の移動推奨部位を簡単に移動させることのできる配筋方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、配筋方法であって、処置対象鉄筋の移動推奨部位に位置する鉄筋部分を切断除去し、
直線状の連結鉄筋の長手方向両端部の各々を前記処置対象鉄筋の両切断端部の各々の同じ側に重ね継ぎ形式の継手構造により接続することで、前記処置対象鉄筋の前記移動推奨部位に位置した前記鉄筋部分を、そこから平行に移動した前記連結鉄筋に置換する点にある。
【0008】
本構成によれば、処置対象鉄筋において、例えば、コンクリートのかぶり厚が不足する部位や開口補強筋の配筋に邪魔になる部位等の移動推奨部位を切断除去し、直線状の連結鉄筋の長手方向両端部の各々を処置対象鉄筋の両切断端部の各々の同じ側に重ね継ぎ形式の継手構造により接続することで、処置対象鉄筋の移動推奨部位を、そこから平行に移動した連結鉄筋に置き換える形態で、平行に移動させることができる。
よって、処置対象鉄筋の移動推奨部位を簡単に移動させることができ、移動推奨部位のコンクリートのかぶり厚が不足したり、移動推奨部位が開口補強筋の配筋作業の邪魔になる等の不都合を回避することができる。
【0009】
しかも、重ね継ぎ手形式の継手構造を利用して移動推奨部位を移動させることで、処置対象鉄筋の移動推奨部位の両端側を曲げて移動推奨部位を移動させる場合に比べて、処置対象鉄筋の短い範囲にて移動推奨部位の移動を完結することができる。よって、改修工事等におけるコンクリートの斫り範囲を狭くすることが可能となり、改修工事等の施工性を向上することができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、既存の鉄筋コンクリート構造部に開口を形成する場合に、その開口側に配置された既存の鉄筋を前記処置対象鉄筋とし、
直線状の前記連結鉄筋の長手方向両端部の各々を前記処置対象鉄筋の両切断端部の各々の前記開口から離れる側に接続することで、前記処置対象鉄筋の前記移動推奨部位に位置した前記鉄筋部分を前記連結鉄筋に置換する点にある。
【0011】
本構成によれば、既存の鉄筋コンクリート構造部に開口を形成する場合に、その開口側に配置された既存の処置対象鉄筋の移動推奨部位を開口から離れる側に簡単に移動させることができ、当該移動推奨部位のコンクリートのかぶり厚が不足したり、移動推奨部位が開口補強筋の配筋作業の邪魔になる等の不都合が生じるのを回避することができる。
しかも、上述したように、処置対象鉄筋の短い範囲にて移動推奨部位の移動を完結することができるので、コンクリートの斫り範囲が狭くて済み、既存の鉄筋コンクリート構造部に効率良く開口を形成することができる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、前記重ね継ぎ形式の継手構造として、前記処置対象鉄筋の外面と前記連結鉄筋の外面とを溶接するよりも両外面間の隙間が大きい状態で両鉄筋を固定する固定具にて前記処置対象鉄筋と前記連結鉄筋を接続する機械式の継手構造を用いる点にある。
【0013】
本構成によれば、前記重ね継ぎ形式の継手構造として、上述の機械式の継手構造を用いることにより、溶接にて接続する構造に比べて、処置対象鉄筋の平行移動代を大きく確保することができるので、溶接にて接続する構造よりも大きな平行移動代が必要となる場合でも適切に対応することができる。
また、機械式の継手構造は溶接による継手構造に比べて鉄筋どうしの重なり範囲(継手範囲)を短くすることができる。よって、改修工事等におけるコンクリートの斫り範囲を一層狭くすることが可能となり、改修工事等の施工性を一層向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】建物の改修対象部位の改修前の状態を示す図
図2】配筋方法を示す図
図3】(a)配筋方法を示す図、(b)IIIb−IIIb線断面図
図4】建物の改修対象部位の改修前の状態を示す図
図5】配筋方法の別実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る配筋方法の実施形態を図面に基づいて説明する。
この配筋方法は、各種の事情で移動が推奨される移動推奨部位を有する鉄筋を処置対象鉄筋とし、当該処置対象鉄筋の移動推奨部位を簡易に移動させることができる。
本実施形態では、図1に示すように、既存の鉄筋コンクリート構造部の一例である既存の鉄筋コンクリート梁1に設備配管類用の貫通穴2(開口の一例)を形成する改修工事にて、本配筋方法を用いる場合を例に挙げる。
【0016】
図1に示すように、既存の鉄筋コンクリート梁1は、既存鉄筋1Aとしての上端筋1aと下端筋1bとスターラップ筋1cとを矩形断面形状のコンクリート1Bに埋設して構成されている。
上端筋1aは、鉄筋コンクリート梁1の内部の上端側で梁延在方向(図1中の左右幅方向)に延びる鉄筋である。下端筋1bは、鉄筋コンクリート梁1の内部の下端側で梁延在方向に延びる鉄筋である。スターラップ筋1cは、梁延在方向に直交する梁周方向に延びて上端筋1aと下端筋1bを囲う鉄筋であり、梁延在方向の所定ピッチで配置されている。
【0017】
このような鉄筋コンクリート梁1の貫通穴形成部位に対して、ダイアモンドビット等を使用したコア抜き工事等を実施して、鉄筋コンクリート梁1を貫通する貫通穴2を形成するのであるが、その際、一部のスターラップ筋1c(図1中で貫通穴2の右側で隣接するスターラップ筋1c)が貫通穴2に異常に近接し、図2(a)に示すように、貫通穴2の周縁とスターラップ筋1cの外面との間の距離であるコンクリートかぶり厚Tが所定のコンクリートかぶり厚Ts未満となる場合がある。
【0018】
そこで、図2に示すように、このように貫通穴2に異常に近接するスターラップ筋1cを処置対象鉄筋Aとし、当該処置対象鉄筋Aのうち、コンクリートかぶり厚Tが所定のコンクリートかぶり厚Ts未満となる部位を移動推奨部位Bとする。
ここで、処置対象鉄筋A及び移動推奨部位Bの特定は、例えば、コンクリートを斫らずに電磁誘導等を利用したセンサー等で既存鉄筋の位置を確認する非破壊検査や、コンクリートを部分的に斫って目視で既存鉄筋の位置を確認する目視検査を実施する等により、適宜のタイミングで行うことができる。
そして、本発明に係る配筋方法を使用して、当該移動推奨部位Bを貫通穴2から離れる側に平行に移動させ、所定のコンクリートかぶり厚Ts以上のコンクリートかぶり厚Tを確保する。
【0019】
具体的には、図示は省略するが、鉄筋コンクリート梁1の既存のコンクリート1Bを斫り、処置対象鉄筋Aの移動推奨部位Bを含む部位全体の外周面を露出させる。ここで、本発明に係る配筋方法は、鉄筋を曲げ変形させて移動推奨部位Bを移動させるのに比べて、処置対象鉄筋Aの短い範囲にて移動推奨部位Bの移動が完結するので、コンクリート1Bの斫り範囲は極力狭い範囲でよい。
【0020】
そして、図2(b)に示すように、処置対象鉄筋Aの移動推奨部位Bに位置する既存の鉄筋部分P1の両端部b1を切断し、両端部b1が切断された既存の鉄筋部分P1を撤去することにより、一旦、処置対象鉄筋Aの移動推奨部位Bを切断除去する。
【0021】
その後、図2(c)に示すように、切断された既存の鉄筋部分P1よりも若干長い直線状の連結鉄筋3を用意し、その連結鉄筋3の長手方向両端部3aの各々を処置対象鉄筋Aの両切断端部a1の各々の貫通穴2から離れる側(同じ側の一例、移動推奨側の一例)に重ね継ぎ形式の継手構造Kにより接続する。このようにすることで、処置対象鉄筋Aの移動推奨部位Bに位置した既存の鉄筋部分P1を直線状の連結鉄筋3に置換する形態で、当該移動推奨部位Bを貫通穴2から離れる側(移動推奨側)に平行に移動させる。
【0022】
重ね継ぎ形式の継手構造Kとして、図2(c)に示すように、連結鉄筋3の長手方向両端部3aの各々と処置対象鉄筋Aの両切断端部a1の各々とをフレア溶接等による溶接部4にて接続する構造を用いることができる。この場合の平行移動代W1は、鉄筋一本の直径と溶接部4の厚み寸法との合計となる。
【0023】
また、より好適には、重ね継ぎ形式の継手構造Kとして、図3(a)に示すように、連結鉄筋3の長手方向両端部3aの各々と処置対象鉄筋Aの両切断端部a1の各々とを機械式の継手構造にて接続する構造を用いることもできる。
図3(a)の例では、機械式の継手構造として、処置対象鉄筋Aの外面と連結鉄筋3の外面とを溶接するよりも両外面間の隙間が大きい状態で処置対象鉄筋Aと連結鉄筋3を固定する固定具5にて、処置対象鉄筋Aと連結鉄筋3を接続する継手構造を用いている。
【0024】
この固定具5は、図3(b)に示すように、鉄筋二本を挿通可能な筒状本体5Aと、筒状本体5Aに挿通された鉄筋二本を引き離す状態で鉄筋二本の各々を筒状本体5Aの内周面に押し付ける楔部材5Bとを備えて構成されている。筒状本体5Aの外周部の筒幅方向中央部に挿通穴5aが形成されており、この挿通穴5aを通じて楔部材5Bを筒状本体5Aの内部に差し込み可能となっている。
【0025】
そのため、図3に示すように、筒状本体5Aに連結鉄筋3の長手方向両端部3aの各々と処置対象鉄筋Aの両切断端部a1の各々を挿通させた状態で、筒状本体5Aの挿通穴5aを通じて、筒状本体5Aの内部の連結鉄筋3と処置対象鉄筋Aの間に楔部材5Bを差し込むことで、楔部材5Bにて連結鉄筋3と処置対象鉄筋Aとを引き離す状態で連結鉄筋3と処置対象鉄筋Aの夫々を筒状本体5Aの内面に強力に押し付け、連結鉄筋3の長手方向両端部3aの各々と処置対象鉄筋Aの両切断端部a1の各々を簡単に接続することができる。
【0026】
よって、重ね継ぎ形式の継手構造Kとして、図3に示す機械式の継手構造にて接続する構造を採用することにより、処置対象鉄筋Aの移動推奨部位Bの移動を、溶接を行わない無火気環境にて簡単且つ安全に行うことができる。
【0027】
また、この図3に示す機械式の継手構造にて接続する構造の平行移動代W2は、鉄筋1本の直径と楔部材5Bによる鉄筋二本の隙間幅との合計となる。ここで、楔部材5Bによる鉄筋二本の隙間幅が溶接部4よりも大きく設定されている。そのため、機械式の継手構造にて接続する構造の平行移動代W2は、溶接部4にて接続する構造(図2(c)参照)の平行移動代W1よりも大きい値となっている。
よって、図3に示す機械式の継手構造にて接続する構造は、図2(c)に示す溶接部4にて接続する構造よりも大きな平行移動代が必要となる場合に好適に用いることができる。
【0028】
更に、この図3に示す機械式の継手構造は、溶接部4にて接続する構造(図2(c)参照)に比べて鉄筋どうしの重なり範囲(継手範囲)が短い。そのため、コンクリートの斫り範囲を一層狭い範囲とすることができる。
【0029】
そして、図示は省略するが、上述のように処置対象鉄筋Aの移動推奨部位Bを貫通穴2から離れる側に平行に移動させた後、鉄筋コンクリート梁1のコンクリート1Bを斫った部分(処置対象鉄筋Aの周囲部分)に新たにコンクリートを打設し、図4に示すように、処置対象鉄筋Aを鉄筋コンクリート梁1に再度埋設する。
なお、鉄筋コンクリート梁1の貫通穴形成部位に貫通穴2を形成する作業は、処置対象鉄筋Aの移動推奨部位Bを移動させる前に実施するが、場合によっては、処置対象鉄筋の移動推奨部位Bを移動させた後に実施してもよい。
【0030】
〔別実施形態〕
(1)前述の実施形態では、直線状の連結鉄筋3の長手方向両端部3aの各々を、処置対象鉄筋Aの両切断端部a1の各々の同じ側に、中継鉄筋等を介在させない一段の重ね継ぎ形式の継手構造Kにより接続することで、重ね継ぎ形式の継手構造Kによる平行移動代一段分、処置対象鉄筋Aの移動推奨部位Bを平行に移動させる場合を例に示した。
これに限らず、例えば、直線状の連結鉄筋3の長手方向両端部3aの各々を、処置対象鉄筋Aの両切断端部a1の各々の同じ側に、中継鉄筋等を介在させる複数段の重ね継ぎ形式の継手構造Kにより接続することで、重ね継ぎ形式の継手構造Kによる平行移動代複数段分、処置対象鉄筋Aの移動推奨部位Bを平行に移動させるようにしてもよい。
【0031】
この場合、例えば、図5(a)に示すように、処置対象鉄筋Aにおいて、移動推奨部位Bを長手方向中央部に含む部位を切断除去し、処置対象鉄筋Aの両切断端部a1の夫々に、直線状の中継鉄筋6の長手方向一端部6a(外側端部)を一段目の重ね継ぎ形式の継手構造Kにより接続する。
そして、二本の中継鉄筋6の長手方向他端部6b(内側端部)の夫々に、直線状の連結鉄筋3の長手方向両端部3aを二段目の重ね継ぎ形式の継手構造Kにより接続する。
【0032】
このようにすれば、重ね継ぎ形式の継手構造Kによる平行移動代二段分、処置対象鉄筋の移動推奨部位を平行に移動させることができる。
図示の例では、重ね継ぎ形式の継手構造Kが、機械式の継手構造にて接続する構造であるので、この場合の平行移動代W3は、鉄筋一本の直径と楔部材5Bによる鉄筋二本の隙間幅との合計の2倍となる。なお、図示は省略するが、この重ね継ぎ形式の継手構造Kを、溶接部4にて接続する構造とすることもでき、その場合の平行移動代は、鉄筋一本の直径と溶接部4の厚み寸法との合計の2倍となる。
【0033】
また、処置対象鉄筋Aの両切断端部a1と直線状の連結鉄筋3の長手方向両端部3aとの間の重ね継ぎ形式の継手構造Kの段数を更に増段することにより、重ね継ぎ形式の継手構造Kによる平行移動代の三段以上、処置対象鉄筋Aの移動推奨部位Bを平行に移動させることも可能である。
【0034】
(2)前述の実施形態では、処置対象鉄筋Aのうちでコンクリートかぶり厚Tが所定のコンクリートかぶり厚Ts未満となる部位を移動推奨部位Bとし、移動推奨部位Bを貫通穴2から離れる側に平行に移動させる場合を例に示した。
これに限らず、例えば、図5(b)に示すように、処置対象鉄筋Aのうち、それよりも奥側に配置される開口補強筋7の配筋作業の邪魔になる部位を移動推奨部位Bとし、その移動推奨部位Bを貫通穴2から離れる側(つまり、開口補強筋7から離れる側)に平行に移動させるようにしてもよい。
このようにすれば、処置対象鉄筋Aの移動推奨部位Bが開口補強筋7の配筋作業の邪魔になるのを回避することができる。
【0035】
(3)前述の実施形態では、処置対象鉄筋Aの移動推奨部位Bを開口(貫通穴2)から離れる側に移動させる場合を例に示したが、移動推奨部位Bの移動方向は、移動推奨部位Bの移動が推奨させる適宜の方向とすることができる。
【0036】
(4)前述の実施形態では、既存の鉄筋コンクリート構造部(鉄筋コンクリート梁1)に形成する開口の一例として、設備配管類用の貫通穴2を例に示したが、これとは用途の異なる貫通穴や切り欠き等であってもよい。
【0037】
(5)前述の実施形態では、既存の鉄筋コンクリート構造部(鉄筋コンクリート梁1)に開口(貫通穴2)を形成する場合に、その開口側に配置された既存の鉄筋を処置対象鉄筋Aとする例を示したが、このような場合に限らず、移動が推奨される移動推奨部位Bを有する各種の鉄筋を処置対象鉄筋Aとすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 鉄筋コンクリート梁
1A 既存鉄筋
1B コンクリート
2 貫通穴(開口)
3 連結鉄筋
3a 長手方向両端部
5 固定具
A 処置対象鉄筋
a1 切断端部
B 移動推奨部位
b1 両端部
K 重ね継ぎ形式の継手構造
図1
図2
図3
図4
図5