【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は、以下に記載される主題および方法によって実現される。
【0011】
ここで本発明は、可動の測定デバイスと分析機内に固定されて配置された構成要素との間のデータおよび/または動作電圧の転送を、たとえば滑り接点を備えた滑り接触システムによって行うことが可能であるという考えから生まれている。例として、そうした滑り接触システムを有する測定システムは、以下に述べる設計を有する。測定システムは、測定された変数の測定値を記録するための測定デバイスと、測定値を処理するための第1のコントローラおよび第2のコントローラと、滑り接点を備えた滑り接触システムとを含み、測定値は、測定デバイスから第1のコントローラへ転送可能であり、次いで滑り接点を介して第1のコントローラから第2のコントローラへ転送可能である。
【0012】
滑り接触システムは電気機械的な構成要素であるが、特に接点における機械的摩耗によって経時的に老化する。たとえば、滑り接触システムの老化が進むにつれて、たとえば短時間の中断から電気接点の完全な機能停止までの故障が生じるようになる可能性がある。そうした故障は、しばしば突然に起こり、その場合、分析機全体が測定に利用できなくなるため、大いに問題である。これは、測定システムおよび分析機の信頼性の低下につながる可能性がある。
【0013】
したがって、本発明のさらなる着想は、測定値を滑り接点を介して第1のコントローラから第2のコントローラへ転送する間に個々の散発的に生じる転送エラーが特定され、かつ転送の質が分析されれば、より信頼性の高い測定システムを利用可能にすることができるということである。例として、滑り接点の摩耗の増大、たとえばその老化によるものを、転送エラーの発生の増加から推定することができる。これは、突然の障害が起こる前に、滑り接点を適時に修理または交換することが可能である点において有利であり、こうして測定システムの信頼性が高められる。
【0014】
本発明の主題は、自動分析機において試料を測定するための測定システムである。測定システムは、測定された変数の測定値を記録するための測定デバイスと、測定値を処理するための第1のコントローラおよび第2のコントローラと、滑り接点を備えた滑り接触システムとを含む。測定デバイスおよび第1のコントローラは、第2のコントローラに対して可動である。測定値は、測定デバイスから第1のコントローラへ転送可能であり、次いで滑り接点を介して第1のコントローラから第2のコントローラへ転送可能である。測定システムは、測定値を滑り接点を介して第1のコントローラから第2のコントローラへ転送する間に生じたエラーを取り込むエラーカウンタをさらに含む。
【0015】
これは、滑り接触システムの予想される残りの耐用期間に関する予測が可能になる点において有利であり、したがって、滑り接触システムを適時に修理または交換することが可能であるため、滑り接触システムの突然の故障が生じる頻度が低くなる。
【0016】
測定システムの有利な構成において、第1のコントローラおよび/または測定デバイスの電力供給は、滑り接点によって行われる。これは、たとえばコントローラおよび/または測定デバイス上のバッテリの形で別個の電源を配置する必要がない点において有利であり;その代わりに、電力供給は、滑り接触システムの滑り接点によって直接的に行われる。
【0017】
測定システムのさらなる有利な構成において、第1のコントローラおよび測定デバイスは回転可能に取り付けられ、滑り接触システムはスリップリングシステムを含む。これは、多数の試料をリング形に配置し、単一の測定デバイスによって迅速に連続して測定することが可能である点において有利である。
【0018】
測定システムのさらなる有利な構成において、第2のコントローラは、固定されて配置される。これは、第2のコントローラと固定されて配置された分析機の他の構成要素との簡単な配線が可能である点において有利である。
【0019】
測定システムのさらなる有利な構成において、測定システムは、コントローラエリアネットワークバスシステム、好ましくはISO11898に準拠したコントローラエリアネットワークバスシステムを含み、測定値は、コントローラエリアネットワークバスシステムによって第1のコントローラから第2のコントローラへ転送され、エラーカウンタはバスシステムの一部である。これは、測定値を滑り接点を介して第1のコントローラから第2のコントローラへ転送する間のエラーを取り込むためのエラーカウンタを、特に単純な形で、かつ少ない費用で提供することが可能である点において有利である。
【0020】
ISO11898に準拠したコントローラエリアネットワーク(CAN:controller area network)バスシステムは、「マルチマスタ原理」に従って動作し、複数のイコールアクセス(equal-access)コントローラを接続するシリアルバスシステムである。CANバスシステムは、勝利したより高い優先度のメッセージを損なうことなく、衝突(複数のノードによる同時バスアクセス)を解決する方法を備える。このために、各ビットは、状態に応じて、ドミナントまたはリセッシブになる(ドミナットビットはリセッシブビットを上書きする)。いわゆる「CANバスパケット」は、識別子、8バイトまでの使用データ、16ビットのチェックサムおよび他の制御ビットからなる。データを保証するためにサイクリック冗長度チェックが用いられ、サイクリック冗長度チェックは16ビットのチェックサムを発生させる。バスアクセスは、送信予定のメッセージの識別子に基づくビット単位のアービトレーションによって、損失のない形で解決される。このために、各送信器は、識別子を送信するときにバスを監視する。2つのノードが同時に送信する場合、2つの送信器の一方の第1のドミナントビットが、他方の対応するリセッシブビットを上書きし;これをリセッシブビットの送信器が認識し、送信の試みを終了する。受信器は、転送におけるエラーを認識した場合、いわゆるエラーフレームを送信し、したがって、すべてのノードに前記フレームを破棄することを促す。他のノードがこのエラー条件を認識した場合、そのすぐ後にそれらは他のエラーフレームを送信する。これによって、CANプロトコルのさらなる安全機能が可能になる。不正確に認識されたエラー条件のために個々のノードがメッセージトランスポートを恒久的にブロックするのを回避するために、各ノードはエラーカウンタを含む。こうしたカウンタによって、不正確に動作するノードが他のノードによって識別されないエラーを繰り返し識別する場合、または誤ったフレームを繰り返し送信する場合に、そのノードが動作状態の2つの段階でCANバスから分離することが可能になる。段階は、「エラーアクティブ(error active)」(正常)、「エラーパッシブ(error passive)」(ノードは依然として、パッシブ(すなわちリセッシブ)エラーフレームしか送信することができない)および「バスオフ(bus off)」(ノードはもはや送信することができない)である。データ転送が続けて失敗した場合、前述のエラーカウンタによって送信器をバスから分離することもできる。エラーフレームの後、送信器はデータ転送を再び行う。ノードは、たとえば送信器および/または受信器である。送信器および/または受信器は、たとえば各々の場合におけるコントローラである。
【0021】
測定システムのさらなる有利な構成において、測定デバイスは、試料の測光試験を可能にする測光器を含む。
【0022】
この場合に用いられる用語「測光試験」は、電磁波を用いた吸収、反射、回折、蛍光、燐光、化学ルミネセンスおよび/または散乱の測定に関連するものである。ここでは、まず可視スペクトルの電磁波が考えられるが(約350nm〜約750nmの間の波長)、赤外線(IR)範囲(約750nm〜約1mmの間の波長)、および紫外線(UV)範囲(約350nm〜約50nmの間)の波も考えられる。
【0023】
本発明のさらなる主題は、自動分析機において滑り接点を監視するための方法であり、自動分析機は、本発明による測定システムを含み、前記方法は以下の工程:すなわち、
a)測定値を滑り接点を介して第1のコントローラから第2のコントローラへ転送する間、所定の時間間隔Tにわたって発生エラーを加算することにより、発生エラーの合計Sを決定する工程と、
b)発生エラーの合計Sを第1の所定の閾値Gと比較する工程と、
c)合計Sが第1の閾値Gより大きい場合、滑り接点または滑り接触システムを修理および/または交換する必要があるという警告を出力する工程と
を含み、工程a)およびb)は、第1のコントローラおよび/または第2のコントローラによって行われる。
【0024】
これは、滑り接触システムの予想される残りの耐用期間に関する予測が可能になる点において有利であり、したがって、滑り接触システムを適時に修理または交換することが可能であるため、滑り接触システムの突然の故障が生じる頻度が低くなる。
【0025】
例として、閾値Gを経験的に把握することができる。このために、たとえば採用された滑り接触システムについて連続試験を行い、滑り接触システムを、それが老化のサインおよび損傷の徴候を示すまで動作させる。データは、CANバスを介して連続的かつ同程度に送信および受信される。回転するコントローラのエラーカウンタが、一定の間隔で読み取られる。前のエラーカウントとの差が読み取られる。差が正であれば、エラーカウンタは増加している。差はグローバルカウンタに合計され、合計Sを形成する。試験が完了した後、経時的なSの推移が分析され、それから閾値Gに好ましい値が把握される。有利には、このために、たとえば経時的なSの推移を図表によって示すことができる。
【0026】
ここでは、有利には、すべてのエラーのうちの30%が見出される最後の時間間隔の開始点におけるSの値をGの値として設定することによって、閾値Gに対する値を把握することができ、有利にはGの値はSの値に等しくなるように選択される。
【0027】
有利には、Gの値は、たとえば後で滑り接触システムの摩耗特性に関してより多くの経験が得られるようになった場合に、Gの値をダイナミックに適応させることができるように設定可能であることが企図される。
【0028】
連続試験は、有利には滑り接触システムを、たとえば連続試験の間、正常動作の場合より頻繁にあちこちに動かす、または回転させることによって加速することができる。
【0029】
滑り接触システムの耐用期間は、特に滑り接触システムの特定の実施形態およびそれぞれの使用条件にも依存する。
【0030】
方法の有利な構成において、測定システムは第3のコントローラを含み、工程a)およびb)は、第1のコントローラ、第2のコントローラおよび/または第3のコントローラによって行われる。これは、分析機を柔軟なモジュール式に構成することが可能である点において有利である。したがって、たとえば第3のコントローラが、分析機の他の構成要素を制御することもできる。
【0031】
第2のコントローラおよび/または第3のコントローラは、有利には市販のパーソナルコンピュータ(PC)とすることができる。
【0032】
方法のさらなる有利な構成において、測定システムは、コントローラエリアネットワークバスシステム、好ましくはISO11898に準拠したコントローラエリアネットワークバスシステムを含み、測定値は、コントローラエリアネットワークバスシステムによって第1のコントローラから第2のコントローラへ転送される。
【0033】
方法のさらなる有利な構成において、第1のコントローラおよび/または測定デバイスの電力供給は、滑り接点によって行われる。
【0034】
方法のさらなる有利な構成において、第1のコントローラおよび/または測定デバイスは回転可能に取り付けられ、滑り接触システムはスリップリングシステムを含む。
【0035】
方法のさらなる有利な構成において、第2のコントローラは、固定されて配置される。
【0036】
本発明のさらなる主題は、本発明による測定システムを含む自動分析機に関する。
【0037】
分析機の有利な構成において、測定システムは、好ましくは第3のコントローラを含み、第1のコントローラ、第2のコントローラおよび/または第3のコントローラは、本発明による方法を制御することができるように構成される。
【0038】
分析機のさらなる有利な構成において、自動分析機は、各々の場合において、1次ベッセル、アリコートベッセルおよび/もしくはターゲットベッセル、ならびに/またはロボットによって変位可能および/もしくはロボットによって旋回可能な移送アームを備えた少なくとも1つの自動分注装置のための多数の受け取り位置を備える。
【0039】
好ましい実施形態において、自動分析機は、多数の機械構成要素を含む。機械構成要素は、たとえば、試料ベッセル用のたとえばディスク形の輸送および収納デバイス、試薬容器用のたとえばディスク形の輸送および収納デバイス、インキュベーションブロック、測光器、または試料を処理するために必要な自動分析機の任意の他の構成要素である。
【0040】
さらなる好ましい実施形態において、試料は非固定のキュベットの中にあり、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの機械構成要素が、キュベットの受け取り位置として構成される。これは、多数の試料および分析を特に柔軟な形で処理することが可能である点において有利である。
【0041】
可動デバイスに固定された測定デバイスは、可動測定デバイスとも呼ばれる。
【0042】
本発明の趣旨の範囲内において、「試料」は、おそらくは検出しようとする物質(分析物)を含む材料を意味すると理解すべきである。特に用語「試料」は、たとえば血液、血漿、血清、唾液、滲出物、気管支肺胞洗浄液、リンパ液、滑液、精液、膣粘液、糞便、尿、羊水、またはたとえば均質化もしくは細胞溶解による測光測定、好ましくは比濁分析測定のためにそれに応じて準備された組織もしくは細胞培養試料など、ヒトまたは動物の生物学的液体を含む。さらに、植物の液体または組織、法医学の試料、水および汚水の試料、食料品、調合薬も、試料として使うことができるが、場合により測定前に適切な試料の前処理を受けるべきである。
【0043】
定量的検出の範囲内で、試料中の分析物の量、濃度または活性が測定される。用語「定量的検出」は、半定量的方法も含むが、半定量的方法は、試料中の分析物のおおよその量、濃度もしくは活性を捉えるだけであるか、または相対的な量、濃度もしくは活性を特定するためにしか使えない場合がある。定量的検出は、試料中の分析物の存在に関する一般的な検出、または試料中の分析物の量、濃度もしくは活性が特定の閾値もしくは複数の特定の閾値より高いか低いかの表示を意味すると理解すべきである。
【0044】
図面に基づき、本発明をさらに詳しく例示的な形で説明する。