(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971077
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】端子および該端子の取り付け方法、この端子を用いた端子−筐体接合体
(51)【国際特許分類】
H01R 9/16 20060101AFI20211111BHJP
H01R 43/02 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
H01R9/16 101
H01R43/02 B
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-145204(P2017-145204)
(22)【出願日】2017年7月27日
(65)【公開番号】特開2018-29055(P2018-29055A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2020年1月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-158358(P2016-158358)
(32)【優先日】2016年8月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】300078431
【氏名又は名称】ショット日本株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥野 晃
(72)【発明者】
【氏名】森川 哲志
(72)【発明者】
【氏名】平井 太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 寿仁
(72)【発明者】
【氏名】武富 正弘
(72)【発明者】
【氏名】濱口 善永
【審査官】
高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−223177(JP,A)
【文献】
特開昭54−122089(JP,A)
【文献】
特開2003−179457(JP,A)
【文献】
特開2001−210399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/16
H01R 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐性被膜を有する筐体に固着可能な端子であって、金属外環と、この金属外環に封着した絶縁材と、さらにこの絶縁材に貫通封着した導出リードとを備え、前記金属外環は、前記筐体に接合するための接合代を有し、前記接合代には、前記筐体の耐性皮膜を破壊かつ前記筐体と貫入するように設けられている突起を有し、かつ前記接合代に被覆層が設けられ、前記被覆層は前記金属外環および前記筐体の溶融温度未満の接合作業温度で遮蔽性の液相に変化するように適合されている端子。
【請求項2】
前記被覆層は、少なくともその接合作業温度において前記金属外環の接合代を覆って一定時間前記筐体および前記金属外環の接合部周辺の酸化を防ぐ流動性の金属材からなることを特徴とする請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記被覆層は、Sn、Sn合金、Au合金、Ag合金、Cu合金の群から選択された金属材からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の端子。
【請求項4】
前記突起は、前記接合代を途切れることなく周回して設けたことを特徴とする請求項1に記載の端子。
【請求項5】
前記突起は、複数設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか一つに記載の端子。
【請求項6】
耐性被膜を有する筐体に端子を取り付ける製造方法であって、前記端子は、金属外環と、前記金属外環を貫通する導出リードと、前記金属外環と前記導出リードとの間を封止する絶縁材と、を備え、前記金属外環は、前記筐体に接合するための接合代を有し、前記接合代には、前記筐体の耐性皮膜を破壊かつ前記筐体と貫入するように設けられている突起を有しかつ被覆層が設けられ、前記被覆層は、前記金属外環および前記筐体の溶融温度未満の温度で液相に変化するように設けられており、前記端子の取付方法は、前記端子と、耐性被膜を形成し易い金属材からなる筐体とを用意する準備工程と、端子を筐体の取り付け孔の所定部位に位置決め載置する載置工程と、少なくとも端子と筐体の接合部を前記金属外環および前記筐体の溶融温度未満の接合作業温度で加熱しながら機械的手段を用いて接合部の耐性被膜を破壊すると共に、溶融した被覆層が金属外環と筐体の接触面の隙間をシーリングし前記金属外環および前記筐体の再酸化を防止して金属外環と筐体を固着する接合工程と、を備えた、端子の取り付け方法。
【請求項7】
前記載置工程と前記接合工程との間に、さらに端子および筐体を予め昇温加熱する予熱工程を追加したことを特徴とする請求項6に記載の端子の取り付け方法。
【請求項8】
前記機械的手段は、接合代と筐体とを当接させて振動を与えることで、接合部表面を傷つけて圧接させることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の端子の取り付け方法。
【請求項9】
前記機械的手段は、前記被覆層を加熱溶融させて前記接合代に超音波ホーンを当接し、超音波を照射することで、前記筐体の表面酸化膜を破壊し開裂させて新生面を表出させると共に、前記金属外環の酸化膜も開裂させて新生面が表出させることで、前記接合代と前記接合部とを圧接する請求項8に記載の端子の取付方法。
【請求項10】
前記超音波は、周波数(振動数)28kHzを超え1MHz未満の超音波を用いる請求項9に記載の端子の取付方法。
【請求項11】
前記機械的手段は、接合代に設けた突起を筐体の接合部に当接させて押圧することで、突起が筐体の接合部表面を傷つけて表面を摺動しながら貫入して圧接させることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の端子の取り付け方法。
【請求項12】
前記筐体は、不動態膜を形成し易い金属材または難はんだ付け性の表面化合物を有する金属材からなる請求項6ないし請求項11の何れか一つに記載の端子の取り付け方法。
【請求項13】
前記筐体は、アルミニウム、クロム、チタン、鉄、ニッケル、銅およびこれら元素の合金の群から選択された金属材からなる請求項6ないし請求項12の何れか一つに記載の端子の取り付け方法。
【請求項14】
電気装置を収納した耐性被膜を有する筐体と、この筐体に接合された端子とを備えた端子付き筐体であって、前記端子は、金属外環と、前記金属外環を貫通する導出リードと、前記金属外環と前記導出リードとの間を封止する絶縁材と、を備え、前記金属外環は、前記筐体に接合するための接合代を有し、少なくとも前記接合代には、前記筐体の耐性皮膜を破壊かつ前記筐体と貫入した突起を有し、かつ被覆層が設けられ、前記被覆層は、前記金属外環および前記筐体の溶融温度未満の温度で液相に変化するように適合されている端子付き筐体。
【請求項15】
前記筐体は、不動態膜を形成し易い金属材または難はんだ付け性の表面化合物を有する金属材からなる請求項14に記載の端子付き筐体。
【請求項16】
前記筐体は、アルミニウム、クロム、チタン、鉄、ニッケル、銅およびこれら元素の合金の群から選択された金属材からなる請求項14に記載の端子付き筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子および該端子の取り付け方法、この端子を用いた端子−筐体接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
端子は、絶縁コネクタ、絶縁ターミナル、フィードスルー、ハーメチック端子などがある。ハーメチック端子である特許文献1の気密端子を例にとると、金属外環または金属外環の挿通孔に絶縁材を介してリードを封着したもので、気密容器内に収容された電気機器や素子に電流を供給したり、電気機器や素子から信号を外部に導出したりする場合に用いられる。特に金属外環とリードを絶縁ガラスで封着するGTMS(Glass−to−Metal−Seal)タイプの気密端子は、整合封止型と圧縮封止型の2種類に大別される。封止の信頼性を確保するには、外環およびリードの金属材と絶縁ガラスの熱膨張係数を適正に選択することが重要となる。封止用の絶縁ガラスは、金属外環とリードの素材、要求温度プロファイルおよびその熱膨張係数によって決定されている。整合封止の場合には、金属材と絶縁ガラスの熱膨張係数が可能な限り一致するように封止素材が選定される。整合封止型気密端子は、気密信頼性ならびに電気絶縁性を確保するため、金属外環およびリード材に広い温度範囲でガラス材と熱膨張係数が一致しているコバール合金(Fe54%、Ni28%、Co18%)を使用して、両者をホウケイ酸ガラスなどの絶縁ガラスで封着するのが一般的である。
【0003】
従来、これら端子は、筐体の開口部周縁にロウ材やはんだによる接合を用いて取り付けされることがある。特に酸化皮膜など表面化合物の不動態膜を形成する金属材、例えば、アルミニウム合金やステンレス鋼などを筐体に使用したものには、端子を接合するため非酸化雰囲気において、還元性の元素などを含有させた特殊ロウ材や活性の強いフラックスを用いる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−191748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来の端子および接合部材を用いた接合方法は、専用の特殊ロウ材が不可欠であり、腐食性のフラックス残渣を洗浄除去する必要があった。また、筐体の再酸化を防ぐため窒素など不活性ガス雰囲気や水素還元雰囲気あるいは真空中などの非酸化雰囲気で接合を行わなければならないなど、材料や工程に制約が大きく時間や手間、コストを要するものであった。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解消するため提案するものであり、大気中で簡便に接合ができる端子を提供し、併せてこの端子を表面に耐性被膜を形成し易い金属材からなる筐体へ取り付ける方法、および該端子を用いた端子−筐体接合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る端子は、耐性被膜を形成し易い金属材からなる筐体に固着される端子であって、金属外環と、この金属外環に固着した絶縁材と、さらにこの絶縁材に貫通封止した導出リードとを備え、金属外環は、筐体に接合するための接合代を有し、少なくとも該接合代に被接合材(すなわち金属外環および筐体)の溶融温度未満の接合作業温度で遮蔽性の液相に変化する被覆層を設けたことを特徴とする。耐性被膜を形成し易い金属材には、例えば、アルミニウム、アルミ合金、ステンレス鋼などの酸化皮膜等の不動態膜を形成し易い金属材、または難はんだ付け性の表面化合物を有する金属材の鉄、ニッケルなどが有る。本発明の被覆層は、予め接合代に施され、この被覆層が上記接合作業温度において溶融することで金属外環の接合代の表面をはじくことなく付着して覆い、かつ金属外環と筐体を接合のため接触させたときには、大気中の酸素など酸化性物質が侵入できないように被接合材の合わせ面の隙間を埋めてシーリング(被覆)する。この状態で被接合材に機械的な力を加えて表面の金属酸化膜等を破壊し金属素地の新生面を表出させると、被接合材は互いの新生面または被覆層金属と容易に接合される。すなわち、本発明の被覆層は、直接金属外環および筐体の界面を溶融被覆して被接合材の再酸化を防止し、その接合を補助する機能を有する。該被覆層を金属外環に施さない場合は、上記筐体が耐性被膜を形成し易い金属材から構成されているので、被接合材に機械的な力を加えて表面酸化膜等を破壊しても、すぐに新生面が再び酸化してしまうため、全く接合できないか、あるいは接合できたとしても接合強度が弱く、また充分な気密性も得られない。また、被覆層を設けた金属外環と耐性被膜を有する筐体とを上記機械的手段を加えることなく単に接触させて加熱し被覆層を溶融させても、耐性被膜が被接合材の合金化を阻害するので接合できない。
【0008】
上記端子において好ましくは、上記被覆層は、少なくともその接合作業温度において金属外環の接合代を覆って一定時間筐体および金属外環の接合部周辺の酸化を防ぐ流動性の金属材からなる。
【0009】
上記端子において好ましくは、上記接合代は、突起またはクボミを有する。
【0010】
上記端子において好ましくは、上記突起は、上記接合代を途切れることなく周回して設ける。
【0011】
上記端子において好ましくは、上記クボミは、上記接合代を途切れることなく周回した溝状に設ける。
【0012】
上記端子において好ましくは、上記突起または上記クボミは、複数設ける。
【0013】
本発明に係る端子の筐体への取り付け方法は、端子を筐体に取り付ける製造方法であって、金属外環に接合代を有し該接合代に接合作業温度において遮蔽性の液相となる被覆層を設けた本発明の端子と、表面に耐性被膜を形成し易い金属材からなる筐体とを用意する準備工程、次いで端子を筐体の取り付け孔の所定位置に載置する載置工程、少なくとも筐体と端子の接合部を被接合材の溶融温度未満の接合作業温度で加熱しながら機械的手段を用いて接合部の耐性被膜を破壊すると共に、溶融した被覆層が金属外環と筐体の接触面の隙間をシーリングし被接合材の再酸化を防止して金属外環と筐体を固着する接合工程を備える。
【0014】
本発明に係る端子の筐体への取り付け方法は、上記載置工程と上記接合工程との間に、さらに必要に応じて、筐体を予め昇温加熱する予熱工程を追加してもよい。
【0015】
本発明に係る端子の筐体への取り付け方法において、上記機械的手段は、接合代と筐体とを当接させて振動を与えることで、接合部表面を傷つけて圧接させることを特徴とする。この当接させて振動を与える手段には、例えば、超音波圧接などが好適に利用できる。
【0016】
本発明に係る端子の筐体への取り付け方法において、上記機械的手段は、接合代に設けた突起またはクボミを筐体の接合部に当接させて押圧することで、突起またはクボミが筐体の接合部表面を傷つけて表面を摺動しながら貫入して圧接させることを特徴する。
【0017】
本発明に係る端子−筐体接合体は、電気装置を収納した筐体と、この筐体に上述した本発明の取り付け方法により直接接合され、かつ該電気装置に配線された上述した本発明の端子とを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、フラックスを用いることなく端子を筐体に取り付けることができるのでフラックスフリーが可能となり、フラックスの塗布、洗浄、乾燥の各工程を省略できる。しかも、接合は被接合材の溶融温度未満の温度で行うので、被接合材の強度を低下させることなく、加熱収縮に起因した歪みや反りも最小限に止めることができる。また、はんだやロウ材などで接合し難い金属同士であっても、接着剤などを使用しないで簡便に高品質、高信頼性の接合が実現でき、接合部の気密性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図の指示付番は重複する箇所は省略する場合がある。
【
図1】本発明に係る端子10を示し、(a)は平面図を、(b)は正面断面図を、(c)は下面図を示す。
【
図2】本発明に係る端子20を示し、(a)は平面図を、(b)は正面断面図を、(c)は下面図を示す。
【
図3】本発明に係る端子30を示し、(a)は平面図を、(b)は正面断面図を、(c)は下面図を示す。
【
図4】本発明に係る端子の筐体への取り付け方法の工程フローチャート40を示す。
【
図5】本発明に係る端子−筐体接合体50の端子と筐体との取り付け部分を示した断面図。(但し、内蔵の電気装置および配線は省略している。)
【
図6】本発明に係る端子−筐体接合体60の端子と筐体との取り付け部分を示した断面図。(但し、内蔵の電気装置および配線は省略している。)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る端子10は、
図1に示すように、表面に耐性被膜を形成し易い金属材からなる筐体に固着する端子であって、金属外環11と、この金属外環11に封着したガラス材、セラミック材、ガラスセラミック材、プラスチック材などの絶縁材12と、さらにこの絶縁材12に貫通封着した導出リード13とを備え、金属外環11は、筐体に接合するための接合代14を設けている。金属外環11は、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、Fe−Ni合金、インバー合金、コバール合金からなり、導出リード13は、例えば、Fe−Ni合金、Fe−Cr合金、コバール合金からなる。接合代14は、金属外環および筐体の溶融温度未満で溶解する金属材からなる被覆層15を有する。被覆層15には、例えば、Sn、Sn合金、Au合金、Ag合金、Cu合金などが利用でき、特にSn、Sn合金が好適である。なお、金属外環11には、被覆層15の下地層として、防蝕や拡散防止の目的でAu、Ni、Ni−P合金などのめっき層を施してもよい。被覆層15の適用方法は、金属外環11に固着または積層できればよく、成膜あるいは固定方法は限定されない。例えば、各種めっきやクラッドなどが好適に利用できる。
【0021】
接合代14には、突起またはクボミを設けることができる。例えば、
図2または
図3に示すように、突起26またはクボミ36は、金属外環11の接合面を凸形または凹形に成形するのが好ましい。突起26またはクボミ36は、端子を筐体に接合する際に、接合部に存在する酸化膜を、界面摺動で引き伸ばして開裂させたり、エッジ部分で破壊したりして金属素地の新生面を表出させる働きをする。突起26を例にとれば、接合工程において、突起26を筐体に当接して押圧すると、突起26が筐体に貫入していくので被接合材の界面摺動で両者の酸化膜が開裂し新生面が表出する。このとき、被覆層25は、接合作業温度に加熱されて液相化しているので、被接合材の接触面は、被覆層25によって酸素等が侵入できないように隈なく隙間が埋められ全体がシーリングされている。被覆層25の液相中に表出された新生面は、さらに押圧により互いに摺動されるので被接合材は容易に接合される。
【0022】
本発明の端子において、突起26またはクボミ36は、接合代24、34を周回して設けるのが好ましい。この突起26またはクボミ36は複数設けてもよい。
【0023】
本発明に係る端子の筐体への取り付け方法は、
図4の工程フローチャート40に示すように、端子を筐体に取り付ける製造方法であって、金属外環に接合代を有し該接合代に接合作業温度において遮蔽性の液相となる被覆層を設けた本発明の端子と、表面に耐性被膜を形成し易い金属材からなる筐体とを用意する準備工程41、次いで端子を筐体の取り付け孔の所定部に位置決め載置する載置工程42、少なくとも筐体と端子の接合部を被接合材の溶融温度未満の接合作業温度で加熱しながら機械的手段を用いて接合部の金属酸化膜を破壊すると共に、溶融した被覆層が金属外環と筐体の接触面の隙間をシーリングし被接合材の再酸化を防止して金属外環と筐体を固着する接合工程43bを備える。筐体は、例えば、アルミニウム、クロム、チタン、鉄、ニッケル、銅およびこれら元素の合金などの表面に耐性被膜を形成し易い金属材から構成される。
【0024】
上記工程フローチャート40は、上記載置工程42と上記接合工程43bとの間に、さらに必要に応じて、端子および筐体を予め昇温加熱する予熱工程43aを備えてもよい。
【0025】
本発明に係る端子−筐体接合体50は、
図5の部分断面図に示すように、例えば、センシング装置、モータ駆動装置、信号処理装置、外部記憶装置などの電気装置を収納した筐体100と、この筐体100に直接接合された前述の端子200とを有し、端子200は、金属外環51に、この金属外環51に固着した絶縁材52と、さらにこの絶縁材52に貫通封止した導出リード53とを備え、金属外環51は、上記電気装置を収納した筐体100と接合した接合代54を有する。筐体100および端子200の接合代54にSn、Sn合金、Au合金、Ag合金、Cu合金から選択された被覆層55を有する。被覆層55は、筐体100に端子200を挿着した挿着孔を有し、この挿着孔の縁を周回するように設けられている。筐体100は、例えば、アルミニウム、クロム、チタン、鉄、ニッケル、銅およびこれら元素の合金などの表面に耐性被膜を形成し易い金属材からなる。
【実施例】
【0026】
本発明の実施例1の端子10は、
図1に示すように、ステンレス鋼の筐体に接合される端子であって、コバール合金の金属外環11と、この金属外環11に封着したソーダバリウムガラスの絶縁材12と、さらにこの絶縁材12に貫通封着したコバール合金の導出リード13とを備え、金属外環11は、その外周に接合代14を設けている。この接合代14にSn合金の被覆層15を有する。
【0027】
本発明の実施例2の端子20は、
図2に示すように、アルミ合金製筐体に接合される端子であって、コバール合金の金属外環21と、この金属外環21に封着したホウ珪酸ガラスの絶縁材22と、さらにこの絶縁材22に貫通封着したコバール合金の導出リード23とを備え、金属外環21は、その外周に接合代24を設けている。この接合代24にSnの被覆層25を有する。さらに接合代24には、アルミ合金製筐体の表面酸化膜に貫入して被接合材の界面摺動で両者の酸化膜を開裂させて新生面が表出させる突起26を設ける。突起26は、接合代24を周回して設ける。
【0028】
実施例3の端子30は、
図3に示すように、実施例2の突起26を溝状のクボミ36に変形した端子である。実施例2または実施例3に記載の突起26またはクボミ36は平行して複数条設けてもよい。
【0029】
上記実施例の端子は、
図4に示す工程フローチャート40により、アルミ合金製筐体へ取付けられる。すなわち、接合代にSnの被覆層を有する本発明の端子と、アルミ合金からなる筐体とを用意する準備工程41、次いで端子を筐体の取り付け孔の所定部に位置決め載置する載置工程42、端子と筐体の接合部を300℃に加熱しながら接合代の突起を押圧して、アルミ合金製筐体の金属酸化膜を破壊すると共に、溶融したSn被覆層が金属外環と筐体の接触面の隙間をシーリングし被接合材の再酸化を防止しながら金属外環と筐体を接合する接合工程43bを備える。
【0030】
実施例5の本発明の端子−筐体接合体50は、
図5の部分断面図に示すように、外部記憶装置を収納したアルミ合金製筐体100と、この筐体100に直接接合された端子200とを有し、端子200は、コバール合金の金属外環51に、この金属外環51に封着したホウ珪酸ガラスの絶縁材52と、さらにこの絶縁材52に貫通封着したコバール合金の導出リード53とを備え、金属外環51は、筐体100と接合された接合代54を有する。筐体100および端子200の接合部が大気に触れないよう少なくとも露出端面を覆ってシーリングしたSn被覆層55を有する。筐体100は端子200を挿着した挿着孔を有し、被覆層55は、この挿着孔の縁を周回するように設ける。
【0031】
ここで、もう一つの例として実施例6を示す。実施例6に適用する端子は、先に示した
図1の端子10のように構成される。アルミ合金製の筐体に接合される端子10であって、コバール合金の金属外環11と、この金属外環11に封着したホウ珪酸ガラスの絶縁材12と、さらにこの絶縁材12に貫通封着したコバール合金の導出リード13とを備えている。金属外環11は、その外周に接合代14を設けている。この接合代14は、少なくとも最表面にSnまたは例えばSn−Cu合金、Sn−Ag合金などSn合金の被覆層15を有する。被覆層15を加熱溶融させて接合代14に超音波ホーンを当接し、超音波を照射することで液相の被覆層15にキャビテーションを発生させ、アルミ合金製の筐体の表面酸化膜を破壊し開裂させて新生面を表出させると共に、金属外環11の酸化膜も開裂させて新生面が表出できるように設けられている。
【0032】
上記実施例6に係る端子10の筐体への取付方法を
図4のフローチャート40および
図1に基づき説明する。
図4に示すように、本実施例6の端子10を筐体に取り付ける方法は、準備工程41 と、載置工程42と、予熱工程43aおよび接合工程43bとを備える。準備工程41においては、上記実施例6の端子10と、耐性被膜を形成しやすい金属材からなり挿着孔を有する筐体とを準備する。端子10は、金属外環11と、金属外環11を貫通する導出リード13と、金属外環11と導出リード13との間を封止する絶縁材12とを備えている。金属外環11は、筐体に接合するための接合代14を有し、少なくとも接合代14に筐体の溶融温度未満の温度で液相に変化する被覆層15が設けられている。載置工程42においては、端子10を筐体の挿着孔の所定部に位置決めして載置する。予熱工程43aにおいて、少なくとも端子10と筐体との接合部を筐体の溶融温度未満の温度に加熱しながら、接合工程43bにおいて、超音波を用いて筐体の接合部の耐性被膜を破壊すると共に、溶融した被覆層15が金属外環11と筐体の接合部との接触面間の隙間をシーリングする。被覆層15を加熱溶融させて接合代14に超音波ホーンを当接し、超音波を照射することで液相の被覆層15にキャビテーションを発生させ、これにより筐体の表面酸化膜を破壊し開裂させて新生面を表出させると共に、金属外環11の酸化膜も開裂させて新生面を表出させることで、溶融した被覆層15により筐体の接合部の再酸化を防止して接合代14と前記接合部とを固着する。筐体は、例えば、アルミニウム、クロム、チタン、鉄、ニッケル、銅およびこれらの合金などの、表面に耐性被膜を形成し易い金属材から構成される。
【0033】
上記取付方法の接合工程43bにおいて照射する超音波は、特に限定されないが、好ましくは周波数(振動数)28kHzを超え1MHz未満の超音波を用い、更に好ましくは60kHz以上100kHz以下の超音波を用いるとよい。このとき、周波数(振動数)が低すぎる場合には、撹拌効果が過大となり、例えばアルミニウムが接合面に浸潤し過ぎるため、脆い金属間化合物を生成して接合強度が弱くなる。周波数(振動数)が高すぎる場合には、液相の被覆層に発生するキャビテーション泡が小さすぎるため充分な酸化膜の破砕効果が得られない。
【0034】
本発明の実施例7を構成する端子−筐体接合体60は、
図6の部分断面図に示すように、記録ディスク、記録ディスクにデータ読み書きする磁気ヘッドを有するボイス・コイル・モータ、記録ディスクを高速回転させるスピンドル・モータを含むハードデスク装置(図示せず)を気密収納したアルミ合金製筐体100と、この筐体100に直接接合された端子200とを有し、端子200は、コバール合金の金属外環61に、この金属外環61に封着したホウ珪酸ガラスの絶縁材62と、さらにこの絶縁材62に貫通封着したコバール合金の導出リード63とを備え、金属外環61は、筐体100と接合された接合代64を有する。筐体100および端子200の接合部が大気に触れないよう少なくとも露出端面を覆ってシーリングしたSn被覆層65を有する。筐体100は端子200を挿着した挿着孔を有し、被覆層65は、この挿着孔の縁を周回するように設ける。超音波ホーン300は、
図6の破線で描いたように端子200の金属外環61の縁辺に設けたフランジ部の上部に当接して、超音波を照射するとよい。
【0035】
上述したように、本発明の構成にフラックスや還元剤等は必須ではない。しかしながら、上述の実施の形態の構成にフラックスまたは還元剤等をさらに適用することを除外するものではない。今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が意図される。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は電気装置の端子に適用できる。特にこれに限定されないが、例えば、Heガス等の低密度ガスを封入した筐体(密閉容器)の高気密性が要求されるハードデスク装置(HDD)などの気密端子に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0037】
10,20,30,200・・・端子、
11,21,31,51,61・・・金属外環、
12,22,32,52,62・・・絶縁材、
13,23,33,53,63・・・導出リード、
14,24,34,54,64・・・接合代、
15,25,35,55,65・・・被覆層、
26,56・・・突起、 36・・・クボミ、
40・・・工程フローチャート、
41・・・準備工程、 42・・・載置工程、
43a・・・予熱工程、 43b・・・接合工程、
50,60・・・端子−筐体接合体、 100・・・筐体、
300・・・超音波ホーン。