(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明は、添付図面を参照しており、これらの図面は、本開示で説明する特定の実施形態や実施例を示すものである。異なる構造及び工程を有する他の実施形態や実施例も、本開示の範囲から逸脱するものではない。異なる図面において、同じ特徴、要素、又は部品には同様の参照番号を用いる場合がある。
【0014】
以下に、本開示による要旨の例示的且つ非包括的な実施例を示す。これらの実施例は、請求の範囲に記載されているものも、記載されていないものも含まれうる。
【0015】
図1は、飛行機1216(例えば、固定翼機)の形態などの、航空機1200の例示的な実施形態を示す概略図である。
図1に示すように、航空機1200は、2つ又はそれ以上の翼1218を含む。各翼1218には、本開示の翼100(
図3)、及び、本開示の留め具システム200(
図4)についての1つ又は複数の実施形態が用いられている。航空機1200は、さらに、胴体1220と、水平安定板1224及び垂直安定板1226を含む尾部1222とを含む。翼1218、水平安定板1224、及び/又は垂直安定板1226は、エーロフォイルの形態を有しうる(例えば、断面がエーロフォイル形状のボディを含む)。
図1にさらに示すように、各翼1218は、前縁1228と、後縁1230と、先端1232と、基端1234と、内部フレーム1236とを含む。各翼1218は、燃料タンク1240などの1つ又は複数の燃料格納領域を含みうる。
【0016】
本開示の翼100、留め具システム200、及びこれらを作製する方法500の実施例は、
図2に示す航空機の製造及び保守方法1100に関連させて、又は、
図1に示す航空機1200に関連させて、説明することができる。
【0017】
図2は、航空機の製造及び保守方法1100の例示的な実施形態を示すフロー図である。航空機1200の生産開始前の工程として、例示的な方法1100は、ブロック1102に示す仕様決定及び設計と、ブロック1104に示す材料調達とを含みうる。この設計には、翼100の設計も含まれうる。航空機1200の生産中の工程としては、ブロック1106に示す部品及び小組立品の製造、及び、ブロック1108に示すシステムインテグレーションが行われる。本明細書で説明する、翼100の生産は、上記生産の一部、部品及び小組立品の製造ステップ(ブロック1106)、及び/又は、システムインテグレーション(ブロック1108)の一部として実現されてもよい。その後、航空機1200は、ブロック1110に示すように、認可及び納品を経て、ブロック1112に示すように、使用に入る。使用中、航空機1200は、ブロック1114に示すように、定例のメンテナンス及び保守のスケジュールに組み込まれる。定例のメンテナンス及び保守には、航空機1200の1つ又は複数のシステムの改良、再構成、改修などが含まれる(これには、改良、再構成、改修、及び他の適切な保守もさらに含まれうる)。
【0018】
航空機の製造及び保守方法1100の各工程は、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって実行又は実施することができる。なお、システムインテグレータは、航空機メーカー及び主要システム下請業者をいくつ含んでもよいが、これに限定されない。第三者は、売主、下請業者、供給業者をいくつ含んでもよいが、これに限定されない。オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織等であってもよい。
【0019】
図1に示すように、例示的な航空機の製造及び保守方法1100により生産される航空機1200は、機体1202と、複数の高水準システム1204と、内装1206とを含みうる。高水準システム1204の例には、推進系1208、電気系1210、油圧系1212、及び、環境系1214のうちの1つ又は複数が含まれる。また、その他のシステムをいくつ含んでもよい。
【0020】
図1に示す航空機1200は、概して、本開示の翼100の1つ又は複数の実施形態を用いる翼1218を有する商用旅客機を表している。しかしながら、本開示の実施の形態の教示は、他の旅客機、貨物航空機、軍用機、回転翼機、及びその他のタイプの航空機又は航空ビークル、並びに、宇宙船、衛星、宇宙打上げ機、ロケット、及びその他の航空宇宙ビークル、並びに、自動車及びその他の陸上ビークル、並びに、ボート及びその他の船舶、並びに、風車などの構造体又は他の適切な構造体に適用することができる。
【0021】
本明細書で具現化される装置、システム、及び方法は、航空機の製造及び保守方法1100における、1つ又は複数のどの段階において採用してもよい。例えば、部品及び小組立品の製造(ブロック1106)に対応する部品又は小組立品は、航空機1200の使用中(ブロック1112)に製造される部品又は小組立品と同様の方法で製造することができる。また、1つ又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又は、それらの組み合わせを、部品及び小組立品の製造(ブロック1106)及びシステムインテグレーション(ブロック1108)で用いることにより、電磁影響(EME)の要件を満たしつつ、実質的に航空機1200の組み立て速度を速めたりコストを削減したりすることもできる。同様に、1つ又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又は、それらの組み合わせを、例えば、限定するものではないが、航空機1200の使用中(ブロック1112)、及び、整備及び保守(ブロック1114)に用いることもできる。
【0022】
図3は、本開示の翼100、例えば、航空機用翼1218(
図1)の形態などの複合材翼の例示的な実施形態を概略的に示す側方斜視図である。例示的な実施形態においては、翼100は、1つ又は複数の翼桁102と、概括的に外板130と呼ばれる複数の補強された外翼用外板パネルとを含む。翼100は、さらに、複数のリブ128を含みうる。使用において、リブ128は、翼桁102に接続されており、例えば、隣り合う一対の翼桁102間を略垂直に延びている。翼桁102、又は、翼桁102及びリブ128は、航空機用翼1218(
図1)の内部フレーム1236(
図1)などの、翼の内部フレーム134を形成している。
【0023】
各翼桁102は、第1端104と、縦方向に反対側の第2端106と、長状の本体108とを含む。本体108は、連続した(例えば、一体的な)ボディを有していてもよいし、分割されていてもよい。一例として、例示的な翼100は、前翼桁102aと後翼桁102bとを含む。前翼桁102aは、航空機用翼1218(
図1)の前縁1228の形態などの翼100の前縁110に沿って、長さ方向に配置されている。後翼桁102bは、航空機用翼1218の後縁1230の形態などの翼100の後縁112に沿って、長さ方向に配置されている。他の例として、翼100は、さらに、1つ又は複数の中間翼桁(明示せず)を含みうる。中間翼桁は、前翼桁102aと後翼桁102bとの間において、長さ方向に(例えば、中間位置に)配置されている。翼桁102は、翼100に強度を与え、例えば、軸力及び曲げモーメントを受ける。
【0024】
例示的な実施形態においては、翼桁102の各々は、航空機1200(
図1)の胴体1220(
図1)などの、航空機の胴体に取り付けることができる。一例として、翼桁102の各々の第1端104は、胴体に取り付け可能に構成されている。他の実施形態においては、翼桁102は、航空機の他の適切な構造体に取り付け可能である。
【0025】
翼桁102は、胴体から延びており、具体的には、翼100の基端114から先端116へ向かって、例えば、航空機用翼1218(
図1)の基端1234(
図1)から先端1232(
図1)へ向かって、長さ方向に延びている。例示的な実施形態においては、翼桁102の各々の第2端106は、翼100の先端116へ向かって延びており、必要に応じ、先端116に近接して(例えば、当該先端において又はその近くで)終結する構成とされる。
【0026】
例示的な実施形態においては、翼100は、航空機用翼1218(
図1)の燃料格納領域1238(
図1)の形態などの、翼100に設けられた1つ又は複数の燃料格納領域118を含む。例示的な実施形態において、燃料格納領域118は、燃料タンク1240(
図1)の形態などの燃料タンク120を含む。しかしながら、他の実施形態においては、燃料格納領域118は、燃料セル、又は、他の適切な燃料格納領域もしくは構造体を含みうる。
【0027】
一例においては、
図3に示すように、燃料タンク120の形態などの燃料格納領域118は、当該燃料格納領域118の外縁を形成する燃料格納境界122a、122b、122c、122dを有する。
図3に示す例示的な燃料格納領域118は、4つの辺を有する略矩形の構成を有するが、他の例においては、燃料格納領域は、他の適切な構成を有していてもよい。
【0028】
翼100の実施形態において、前翼桁102a及び後翼桁102bは、中間翼桁よりも先端116に近い位置まで延びており、中間翼桁は、燃料格納領域118の中間部分の近くで終結する第2端を有しうる。しかしながら、他の実施形態においては、中間翼桁の第2端は、燃料格納領域118内において、より長い距離又は短い距離で終結していてもよい。
【0029】
例示的な実施形態において、前翼桁102a及び後翼桁102bは、翼100において燃料格納領域118を含むウェット部位124、及び、翼100において燃料格納領域118を含まないドライ部位126の両部位を通って、長さ方向に延びている。本明細書においては、「ウェット部位」は、燃料が蓄えられる燃料バリア領域を意味し、「ドライ部位」は、燃料が蓄えられない領域を意味する。
【0030】
一実施形態においては、1つ又は複数の翼桁102の一部が、1つ又は複数の燃料格納領域118のうちの少なくとも1つの構造壁を形成していてもよい。例えば、前翼桁102aの一部が、燃料格納境界122dに沿って、燃料格納領域118の構造壁を形成していてもよい。例えば、前翼桁102aの一部が、燃料格納境界122dに沿って、燃料格納領域118の構造壁を形成していてもよい。構造壁を形成する翼桁102の一部は、翼桁102の内側部分である。
【0031】
例示的な実施形態においては、複数のリブ128は、上述した翼桁102に対しあるいはこれらの間で実質的に垂直に取り付けられている。例えば、複数のリブ128の各々は、翼桁102と交わっている。複数のリブ128は、翼100を安定させるとともに、これを支持する。一実施形態において、複数のリブ128の一部は、翼100内における1つ又は複数の燃料格納領域118を区分する。
【0032】
例示的な実施形態において、外板130は、概括的に、上側外板130aと呼ばれる1つ又は複数の補強された上側外翼外板パネルと、概括的に、下側外板130bと呼ばれる1つ又は複数の補強された下側外翼外板パネルとを含む。
図3に破線で示すように、上側外板130aは、翼100の内部フレーム134を見やすくするために、透明に描かれている。
【0033】
上側外板130a及び下側外板130bは、当該上側外板130a及び下側外板130bの間の1つ又は複数の燃料格納領域118、1つ又は複数の翼桁102、及び、複数のリブ128を覆う又は挟む構成とされている。複数のリブ128は、翼桁102と、上側外板130aと、下側外板130bとの間の負荷を伝達することができる。
【0034】
例示的な実施形態において、航空機用翼1218の形態などの翼100は、翼桁ウィングボックス(spar wing box)を含む。翼桁ウィングボックスは、単にウィングボックス132と呼ばれることもあれば、梯子状アセンブリ(ladder assembly)と呼ばれることもある。ウィングボックス132は、翼100の内部フレーム134又は基礎構造体を含み、相互接続する翼桁102及びリブ128を含む(例えば、これらにより形成されている)。ウィングボックス132は、燃料格納領域118を含みうる。上側外板130a及び下側外板130bは、ウィングボックス132を覆う又は挟むことで、ウィングボックス132を閉じる構成とされている。
【0035】
例示的な実施形態として、翼桁102(例えば、前翼桁102a、後翼桁102b、及び/又は、任意の中間翼桁)は、複合材料で作製(例えば、形成)されている。一例として、翼桁102は、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)やガラス繊維強化ポリマー(GFRP)などの、繊維で強化されたポリマーマトリックスを含む繊維強化ポリマー又は繊維強化プラスチックで作製されている。他の例示的な実施形態として、翼桁102は、アルミニウムなどの金属で作製されてもよいし、アルミニウム合金などの金属合金で作製されてもよい。他の実施形態においては、翼桁102は、他の適切な材料又は材料の組み合わせで作製されてもよい。
【0036】
例示的な実施形態として、リブ128は、複合材料で作製されてもよい。一例として、リブ128は、炭素繊維強化ポリマーCFRPやGFRPなどの、繊維で強化されたポリマーマトリックスを含む繊維強化ポリマーで作製されてもよい。他の例示的な実施形態として、リブ128は、アルミニウムなどの金属で作製されてもよいし、アルミニウム合金などの金属合金で作製されてもよい。他の実施形態においては、リブ128は、他の適切な材料、又は材料の組み合わせで作製されてもよい。
【0037】
したがって、例示的な実施形態においては、ウィングボックス132(例えば、翼100の内部フレーム134を形成する翼桁102、又は、翼桁102及びリブ128)は、金属又は金属合金で作製されてもよい。他の例示的な実施形態においては、ウィングボックス132は、複合材料で作製されてもよい。さらに他の例示的な実施形態においては、ウィングボックス132は、金属と複合材料との組み合わせで作製されてもよい。ウィングボックス132は、航空機用翼1218(
図1)の形態などの翼100の内部の基礎構造体を形成している。
【0038】
図3に示す翼100の例示的な実施形態は、翼桁102及びリブ128で構築されるウィングボックス132を示している(例えば、ウィングボックス132は、相互接続された翼桁102及びリブ128を含む)。なお、当業者であれば、翼100の他の実施形態において、ウィングボックス132が複数の翼桁102のみから形成されるマルチ翼桁設計(例えばウィングボックス132が相互接続された翼桁102を含む)であってもよいことが分かるであろう。
【0039】
例示的な実施形態として、外板130(例えば、上側外板130a、及び/又は、下側外板130b)は、複合材料で作製されてもよい。一例として、外板130は、炭素繊維強化ポリマーCFRPやGFRPなどの、繊維で強化されたポリマーマトリックスを含む繊維強化ポリマーで作製されてもよい。他の例示的な実施形態として、外板130は、アルミニウムなどの金属で作製されてもよいし、アルミニウム合金などの金属合金で作製されてもよい。他の実施形態においては、外板130は、他の適切な材料、又は材料の組み合わせで作製されてもよい。
【0040】
したがって、例示的な実施形態においては、航空機用翼1218(
図1)の形態などの本開示の翼100(例えば、ウィングボックス132及び外板130)は、複合材料で作製することができる。他の実施形態においては、本開示の翼100は、金属で作製することができる。さらに他の例示的な実施形態においては、ウィングボックス100は、金属と複合材料との組み合わせで作製されてもよい。
【0041】
例示的な実施形態においては、翼桁102、リブ128、及び/又は、外板130の作製に用いる繊維強化ポリマーのポリマーマトリックス、又は繊維強化プラスチック(例えば、複合材料の樹脂材料系)は、熱可塑性樹脂であってもよい。本開示の認識では、熱可塑性樹脂を用いることにより、オーブン又はオートクレーブ外における複合材料の加熱及び再形成が可能であり、有利な実施形態を提供できる。他の例示的な実施形態においては、翼桁102、リブ128、及び/又は、外板130の作製に用いる繊維強化ポリマーのポリマーマトリックス、又は繊維強化プラスチックは、熱硬化性樹脂であってもよい。さらに他の例においては、翼桁102、リブ128、及び/又は、外板130の作製に用いる繊維強化ポリマーのポリマーマトリックス、又は繊維強化プラスチックは、エポキシ樹脂であってもよい。
【0042】
翼桁102及びリブ128の作製に用いる材料に応じて、様々な方法に従って、ウィングボックス132が作製される。様々な実施形態においては、相互接続された翼桁102及びリブ128がウィングボックス132を形成しており、このウィングボックスが、航空機用翼1218(
図1)の形態などの翼100の内部フレーム134を形成している。例示的な実施形態においては、例えば、機械式留め具を用いて翼桁102とリブ128とを相互に接続してウィングボックス132を形成してもよい。他の例示的な実施形態においては、例えば、接着剤を用いて翼桁102とリブ128とを相互に接合してウィングボックス132を形成してもよい。他の例示的な実施形態においては、例えば、接着による接合と機械的な接続の両方により翼桁102とリブ128とを相互に接合してウィングボックス132を形成してもよい。他の例示的な実施形態においては、翼桁102とリブ128とを二次接合して(secondary bonded)ウィングボックス132を形成してもよい。他の例示的な実施形態においては、翼桁102とリブ128とを共接合(co-bonded together)してウィングボックス132を形成してもよい。他の例示的な実施形態においては、翼桁102とリブ128とを共硬化(co-cured)させてウィングボックス132を形成してもよい。さらに他の例示的な実施形態においては、翼桁102とリブ128とを二次接合、共接合、又は、共硬化させる際、これらをさらに機械的に(例えば、留め具を用いて)相互接続してもよい。
【0043】
一例として、翼桁102及びリブ128が金属、又は、金属と複合材料との組み合わせで作製されている実施形態においては、機械式留め具、接着剤(例えば、金属接合)、又は、機械式留め具及び接着剤の組み合わせを用いて、翼桁102とリブ128とを結合してもよい。
【0044】
他の例として、翼桁102及びリブ128が複合材料で作製されている実施形態においては、翼桁102とリブ128とを二次接合してもよい。本明細書において、二次接合は、予備硬化された(pre-cured)翼桁102と予備硬化されたリブ128とを、接着接合により結合することを含む。
【0045】
他の例として、翼桁102及びリブ128が複合材料で作製されている実施形態においては、翼桁102とリブ128とを共接合してもよい。本明細書において、共接合は、翼桁102及びリブ128のうちの一方が十分に硬化され、他方が硬化されていない状態で、翼桁102とリブ128とを硬化接合することを含む。
【0046】
さらに他の例として、翼桁102及びリブ128が複合材料で作製されている実施形態においては、翼桁102とリブ128とを共硬化させてもよい。本明細書において、共硬化は、翼桁102及びリブ128が未硬化の状態で、翼桁102とリブ128とを共に硬化させて同時に接合することを含む。
【0047】
翼桁102、リブ128、及び外板130の作製に用いる材料に応じて、様々な方法に従って、翼が作製される。様々な実施形態においては、外板130をウィングボックス132に接続することにより、航空機用翼1218(
図1)の形態などの翼100が形成されている。一例として、外板130(例えば、上側外板130a及び/又は下側外板130bのうちの一方または両方)は、翼桁102に接続されている(例えば、前翼桁102a、後翼桁102b、及び/又は、中間翼桁のうちの1つ又は複数)。例示的な実施形態においては、例えば、機械式留め具を用いて外板130と翼桁102とを接続して、翼100を形成してもよい。他の例示的な実施形態においては、例えば、接着剤を用いて、外板130と翼桁102とを接合して、翼100を形成してもよい。他の例においては、外板130と翼桁102とを接着により接合するとともに機械的に接続して、翼100を形成してもよい。他の例示的な実施形態においては、外板130とウィングボックス132(例えば、翼桁102及びリブ128)とを二次接合して翼100を形成してもよい。他の例示的な実施形態においては、外板130とウィングボックス132とを共接合して翼100を形成してもよい。他の例示的な実施形態においては、外板130とウィングボックス132とを共硬化させて、翼100を形成してもよい。さらに他の例示的な実施形態においては、外板130とウィングボックス132とを二次接合、共接合、又は、共硬化させる際、(例えば、留め具を用いて)これらをさらに機械的に相互接続してもよい。
【0048】
一例として、ウィングボックス132(例えば、翼桁102及びリブ128)が金属、又は、金属と複合材料との組み合わせで作製され、外板130が、複合材料で作製されている実施形態においては、外板130とウィングボックス132とは、機械式留め具、接着剤、又は、機械式留め具と接着剤との組み合わせを用いて接続されてもよい。
【0049】
他の例として、外板130及びウィングボックス132(例えば、翼桁102及びリブ128)が複合材料で作製されている実施形態においては、外板103とウィングボックス132とを二次接合してもよい。本明細書において、二次接合は、予備硬化された外板130と予備硬化されたウィングボックス132とを、接着接合により結合することを含む。
【0050】
他の例として、外板130及びウィングボックス132が複合材料で作製されている実施形態においては、外板130とウィングボックスとを共接合してもよい。本明細書において、共接合は、外板130及びウィングボックス132のうちの一方が十分に硬化され、他方が硬化されていない状態で、外板130とウィングボックス132とを硬化接合することを含む。本開示の認識では、外板130及びウィングボックス132(例えば、外板130及び翼桁102)を共接合することにより、有利な実施形態を提供することができる。これは、外板130及びウィングボックス132の共接合により、実質的に一体的な(例えば単一の)翼100を形成しうることによる。また、多大な時間を要しかつコスト高のプロセス、例えば表面境界の検査や、外板130とウィングボックス132との合わせ面の隙間(例えば0.005インチよりも大きい)を埋めるシム(shim)の取付けを行わなくて済むことによる。
【0051】
他の例として、外板130及びウィングボックス132が複合材料で作製されている実施形態においては、外板130とウィングボックス132とを共硬化させてもよい。本明細書において、共硬化は、外板130及びウィングボックス132の双方が未硬化の状態で、外板130とウィングボックス132とを共に硬化させて同時に接合することを含む。本開示の認識では、外板130及びウィングボックス132(例えば、外板130及び翼桁102)を共硬化させることにより、有利な実施形態を提供することができる。これは、外板130及びウィングボックス132の共硬化により、実質的に一体的な(例えば単一の)翼100を形成しうることによる。また、多大な時間を要しかつコスト高のプロセス、例えば表面境界の検査や、外板130とウィングボックス132との合わせ面の隙間(例えば0.005インチよりも大きい)を埋めるシムの取付けを行わなくて済むことによる。
【0052】
外板130及びウィングボックス132が複合材料で作製されている実施形態においては、様々な複合材レイアップ方法に従って、翼100の個々の部品(例えば、翼桁102、リブ128、及び/又は、外板130)又は翼100全体を形成することができる。一例として、翼100の個々の部品又は翼100全体をドライレイアップで形成してもよい。このドライレイアップにおいては、各々がポリマーマトリックス材料で予備含浸された繊維強化材の複数のシート又はプライ(例えば、プリプレグテープ)が、例えば、モールド内にレイアップされて、部分的又は全体的に硬化される。他の例として、翼100の個々の部品又は翼100全体をウェットレイアップで形成してもよい。このウェットレイアップにおいては、繊維強化材の複数のシート又はプライが、例えば、モールド内にレイアップされ、レイアップされた繊維強化材のシート又はプライにポリマーマトリックス材料が塗布(例えば、注入)されて、部分的又は全体的に硬化される。本開示の認識では、ウェットレイアッププロセスを用いて、材料費及び処理費を低減しつつ、翼100の個々の部品又は翼100全体を作製できるため、有利な実施形態を提供できる。
【0053】
航空機用翼1218(
図1)の形態などの、本開示の翼100の様々な実施形態においては、翼100をクローズアウトするために外板130が用いられる。本明細書において、「クローズアウトする」、「クローズアウトされる」、及び、同様の文言は、翼100の製造方法、プロセス又は状況に関して、ウィングボックス132及び任意の内部システム136が、対向する外板130(例えば、上側外板130a及び下側外板130b)によって完全に囲まれる、或いはこれらの間に挟まれることをいう。言い換えれば、任意の3次元構造体がクローズアウトされるとは、最後の部品又はコンポーネントが設置されることにより、その全体が閉じられて、当該構造体が形成された状態となることを意味する。例えば、翼100の場合、まず、翼100の6つの面のうちの5つが設置される(例えば、ウィングボックス132および一枚の外板130により形成される)。続いて、最後の面が設置される(例えば、先の外板に対向する外板130によって形成される)。これにより、翼100が「クローズアウト」されたことになる。内部システム136の例は、限定するものではないが、電気系、油圧系、燃料系、ポンプ、バルブ、流体管系などが含まれる。内部システム138は、一般に詰め込みシステムと呼ばれているが、これは、ウィングボックス132に内部システムが充填される(詰め込まれる)からである。
【0054】
このように、外板130をウィングボックス132に接続し、当該ボックスをクローズアウトすることにより、翼100の内部コンポーネントの最終組立てが完了する。さらに、本開示の留め具システム200を用いることにより、クローズアウトに引き続き、外板130がウィングボックス132に固定される。本開示の認識では、外板130を用いてウィングボックス132をクローズアウトすることにより、オープンなシステムインストレーション及びEME保護が可能となる。一方、下側外板に形成されたアクセス孔を通じて留め具を取り付けたり、内部システム136を取り付けたり、EME保護シーリング剤を注入したりする、複雑、高価、且つ労力のかかる作業を行わなくて済む。したがって、外板130を用いてウィングボックス132をクローズアウトすることにより、有利な実施形態を提供することができる。
【0055】
一例として、外板130及びウィングボックス132の両方が複合材料で作製され、共接合又は共硬化されている実施形態においては、下側外板130bとウィングボックス132とを共接合又は共硬化して、硬化部品(例えば、前駆体複合材翼(pre-cursor composite wing))を形成してもよい。下側外板130bとウィングボックス132との間に離型剤を用いることにより、共接合又は共硬化の処理を行った後に下側外板130bを取り外すことができる。内部システム136は、上側外板130aがない状態、及び/又は、下側外板130bを取り外した状態の(オープンなシステムインストレーションにより)開放されたウィングボックス132内に設けられる。下側外板130bは、一時的に取り外された場合、その後ウィングボックス132に再度接続される。次に、上側外板130aが、前駆体複合材翼(例えば、再接続された下側外板130bを有するウィングボックス132)に接続される。例として、上側外板130aは、未硬化部品であってもよく、硬化された前駆体複合材翼と未硬化の上側外板130aとを共接合して翼100を形成してもよい。他の例として、上側外板130aは硬化部品であってもよく、硬化された前駆体複合材翼と硬化された上側外板130aとを二次接合及び/又は(留め具を用いて)機械接合して、翼100を形成してもよい。このプロセスは、4分の3共硬化(three-quarter co-cure)と呼ばれることがある。
【0056】
一例として、外板130及びウィングボックス132の両方が複合材料で作製され、共接合又は共硬化されている実施形態においては、上側外板130aと、下側外板130bと、ウィングボックス132とを共接合又は共硬化して、硬化部品(例えば、翼100)を形成してもよい。上側外板130aとウィングボックス132との間に離型剤を用いることにより、共接合又は共硬化の処理を行った後に上側外板130aを取り外すことができる。同様に、下側外板130bとウィングボックス132との間に離型剤を用いることにより、共接合又は共硬化の処理を行った後に下側外板130bを取り外すことができる。上側外板130a及び/又は下側外板130bのうちの一方又は両方を取り外した後、上側外板130aがない状態の(オープンなシステムインストレーションにより)開放されたウィングボックス132内に、内部システム136が設けられる。その後、上側外板130a及び/又は下側外板130bを、複合材翼に再度接続する。このプロセスは、完全共硬化(full co-cure)と呼ばれることがある。
【0057】
図4は、本開示の留め具システム200の例示的な実施形態を概略的に示す側方断面図である。航空機用翼1218(
図1)の形態などの、本明細書で説明される翼100(
図3)の様々な実施形態においては、外板130(
図3)をウィングボックス132(
図3)に接続する追加手段として、複数の留め具システム200が用いられる。一例として、1つ又は複数の上側外板130a及び/又は下側外板130b(
図3)を、1つ又は複数の翼桁102(
図3)により確実に接続する(例えば機械的に接続する)ために、複数の留め具システム200が用いられる。
【0058】
留め具システム200は、2部構成のシステムである。例示的な実施形態においては、留め具システム200は、ナットプレート202と留め具204とを含む。留め具システム200は、さらに、ナットプレート202内に設けられたナット206を含む。
【0059】
例示的な実施形態においては、ナットプレート202は、本体208とカバー210とを含む。例示的な実施形態においては、ナットプレート202(例えば本体208及びカバー210)は、金属で形成されている。具体的且つ非限定的な例として、ナットプレート202は、ステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、チタン、銅ニッケル合金、銅ベリリウム合金などの耐食性金属で形成されている。他の具体的且つ非限定的な例として、ナットプレート202は、バリア被膜又は犠牲被膜などの耐食性被膜でコーティングされていてもよい。
【0060】
ナットプレート202は、中央のナットプレート軸心218を含む。本体208及びカバー210は、ナットプレート軸心218に沿って互いに同軸である。例示的な実施形態において、本体208とカバー210とは、互いに接続された別個の異なる部品である。一例として、本体208とカバー210とが接触又は結合している縁を一緒にクリンプして、ナットプレート202を形成することができる。他の例示的な実施形態においては、本体208及びカバー210は、一体的な(単一の)部材を形成している。例えば、以下に詳述するように、ナットプレート202は、付加製造された部品であってもよい。
【0061】
例示的な実施形態においては、本体208は、フランジ212とスリーブ214とを含む。スリーブ214は、筒状部材(例えば、中空筒状部材)を含む。フランジ212は、円形部材を含み、当該円形部材は、スリーブ214から径方向外側に延びるとともに、スリーブ214に垂直な外側肩部226を形成している。スリーブ214は、ナットプレート軸心218に沿ってフランジ212から軸方向に延びている。
【0062】
例示的な実施形態においては、カバー210は、ドーム216を含む。ドーム216は、中空内部チャンバ224(例えば、空気チャンバ)を画定している。ドーム216は、ナットプレート軸心218に沿って、スリーブ214の反対側で、フランジ212から軸方向に延びている。
【0063】
例示的な実施形態においては、留め具204は、シャンク220と、シャンク220の端部に設けられたヘッド222とを含み、留め具軸心232を有している。一例においては、シャンク220の少なくとも一部は、例えば、ヘッド222に近接して(例えば、当該ヘッド又はその近くに)配置された滑らかな外面を含む。さらに、シャンク220の他の少なくとも一部は、例えば、ヘッド222とは反対側において、シャンク220の他端に近接したシャンクの一部を覆う外側ネジ部を含む。シャンク220のネジ部は、留め具204とナット206とを締結するために、ナット206に螺合するように構成されている。
【0064】
例示的な実施形態においては、ナットプレート202は、ナットプレート軸心218を中心としたナット206の回転運動を制限(例えば、防止)するように構成されている。一例として、ナットプレート202は、当該ナットプレート202に対するナット206の回転位置を固定し、これにより、ナット206が、留め具軸心232を中心とした留め具204の係合及び回転運動に対して固定された状態を維持する(例えば、ナットプレート軸心218を中心として回転しない)ようにして、留め具204を、ナット206に締結させる(例えば、螺合させる)。
【0065】
例示的な実施形態において、スリーブ214は、スリーブ外径D1とスリーブ内径D2とを有する。スリーブ214のスリーブ内径D2は、留め具204のシャンク220のシャンク直径D3よりも大きい。一例として、スリーブ214のスリーブ内径D2がシャンク220のシャンク直径D3よりも大きいため、留め具軸心232とナットプレート軸心218とが同軸上に並ばない位置で留め具204をスリーブ214に挿通することができる。スリーブ214のスリーブ内径D2とシャンク220のシャンク直径D3との間の差異は、外板留め具孔144と翼桁留め具孔142との位置合わせのための位置公差範囲を規定している。スリーブ214のスリーブ内径D2、及び留め具204のシャンク220のシャンク直径D3のそれぞれの特定の寸法は、実施形態に応じて異なりうる。具体的且つ非限定的な例として、留め具204のシャンク直径D3は、約0.003インチであり、スリーブ214のスリーブ内径D2は、約0.006インチである。これにより、外板130を翼桁102に接続するために外板留め具孔144と翼桁留め具孔142とを位置合わせする際、任意の径方向において0.003インチの浮動が可能となる。
【0066】
また、例示的な実施形態においては、ナットプレート202は、ナット206が、ナットプレート軸心218に直交して直線運動を行えるように構成されている。一例として、ナットプレート202は、ナット206が、ナットプレート202に対して直線方向に、且つ、ナットプレート軸心218に対して垂直に自由に移動(例えば、浮動)するのを許容する。ナット206が自由に直交方向に移動することにより、例えば、留め具204がスリーブ214内にあり、且つ、留め具軸心232がナットプレート軸心218と同軸上に並んでいない場合であっても、ナット206の中央のナット軸心234が留め具軸心232と同軸上に並び、留め具204とナット206とが係合することができる。
【0067】
例示的な実施形態においては、ナット206は、少なくとも部分的に本体208内に配置されるとともに、少なくとも部分的にカバー210内に配置される。本体208及びカバー210は、例えば、ナット206及び締結界面が燃料格納領域118(
図3)内の燃料などに汚染されないように、ナット206の全体を囲み、ナットプレート202内に当該ナットを密閉している。例示的な実施形態においては、ナット206は、径方向外側に延びる鍔部236を有している。この例示的な実施形態においては、本体208のフランジ212は、ナット受容凹部230を規定する内壁を有しており、当該ナット受容凹部が、ナット206の鍔部236を全体的に受容あるいは少なくとも部分的に受容するように構成されている。ナット206の一部は、例えば、鍔部236からナット軸心234に沿って軸方向に延び、カバー210のドーム216内に配置される構成とされる。
【0068】
図6は、航空機用翼1218(
図1)の形態などの本開示の翼100、及び、本開示の留め具システム200の他の実施形態を概略的に示す部分断面図である。例示的な実施形態においては、フランジ212は、内側肩部(座部)238を形成するとともに、ナット受容凹部230を少なくとも部分的に規定する周縁部260を形成している。フランジ212の内側肩部238は、ナット206の鍔部236を支持する。一例において、ナット受容凹部230(例えば、フランジ212の内面)は、フランジ212内でナット206が回転するのを防ぐために、例えば、六角形状などの、鍔部236の外側の幾何学形状に一致する内側の幾何学形状を有しうる。他の例においては、鍔部236は、フランジ212内でナット206が回転するのを防ぐためにフランジ212の内面の一部と係合する翼状部(wing)又は他の突起部を含みうる。他の例においては、フランジ212の内部及び/又はナット206の鍔部236は、フランジ212内でナット206が回転するのを防ぐための他の要素を含みうる。
【0069】
図5は、航空機用翼1218(
図1)の形態などの本開示の翼100、及び、本開示の留め具システム200の例示的な実施形態を概略的に示す、
図3の線5−5に沿った部分断面図である。例示的な実施形態においては、留め具システム200は、ウィングボックス132、例えば翼桁102に、外板130を締結するために用いられる。
【0070】
例示的な実施形態においては、1つ又は複数の翼桁102(例えば、前翼桁102a、後翼桁102b、及び/又は、任意の中間翼桁)(
図3)の各々は、C字形状の断面を有するC字形チャネル翼桁であってもよい。翼桁102のC字形断面は、翼桁102の長さ方向に沿う位置に応じて変化しうる。
図5には、C字形チャネル翼桁の一端(例えば、上端)部分のみが示されている。当業者であれば、他の実施形態において、翼桁102のうちの1つ又は複数が、L字形状やT字形状などの他の断面形状を有しうることが分かるであろう。翼桁102は、対向する一対の翼弦(chords)140、例えば、第1(例えば、上側)翼弦140と、反対側の第2(例えば、下側)翼弦140との間に設けられたウェブ部138を含む。この例示的な実施形態においては、C字形チャネル翼桁102は、その断面全体に亘って単一の構成を有する。翼桁102の翼弦140は、外板130に接続可能に構成されている。一例として、上側翼弦140は、上側外板130a(
図3)に接続可能に構成されており、下側翼弦140は、下側外板130b(
図3)に接続可能に構成されている。
図5には、1つ(例えば、上側)の外板130に接続された1つ(例えば、上側)の翼弦140のみが示されている。
【0071】
例示的な実施形態においては、翼桁102は、翼弦140に形成された(例えば穿孔又は加工された)翼桁留め具孔142を含む。翼桁留め具孔142は、ナットプレート202を配置しうる(例えば収容する)ように構成されている。例えば、翼桁留め具孔142は、スリーブ214を配置しうる(例えば収容する)ように構成されている。フランジ212の外側肩部226は、フランジ接触面228を規定している。当該フランジ接触面は、スリーブ214が、翼桁留め具孔142に挿入されると、翼桁102の第1面150の一部、例えば、翼桁留め具孔142の縁部に近接する(例えば、当該縁部又はそれに近い)部分と密着するように構成されている。本実施形態においては、翼桁102の面150及びフランジ接触面228は、フランジ‐翼桁界面254を規定している。同様に、外板130は、当該外板を貫通して形成された外板留め具孔144を含む。外板留め具孔144は、留め具204を配置しうる(例えば収容する)ように構成されている。外板130を翼桁102に接続するための留め具システム200を配置すべく、翼桁留め具孔142及び外板留め具孔144は、互いの位置がほぼ一致するように位置合わせされている。
【0072】
他の実施形態において、リブ128のうちの1つ又は複数は、当該リブ128に形成された(例えば、穿孔又は加工された)1つ又は複数のリブ留め具孔(明示せず)を、さらに含みうる。リブ留め具孔は、本明細書に開示しているように、形態、構造、及び機能において、翼桁留め具孔142と実質的に同様であってもよい。一例として、リブ留め具孔は、ナットプレート202を収容(例えば、受容)するように構成されている。フランジ接触面228は、スリーブ214が、リブ留め具孔に挿入されると、リブ留め具孔の縁部に近接する(例えば、当該縁部又はそれに近い)部分と密着するように構成されている。
【0073】
本開示の認識では、留め具システム200により、有利な実施形態を提供することができる。これは、自由に浮動するナット206(例えば、ナットプレート軸心218に直交して自由に移動可能)(
図4)により、翼100の確定組み立て(DA)を行うことができるので、時間がかかり複雑かつ費用のかさむ翼100の固定具式組み立て(fixture assembly)を行う必要がないことによる。翼100の固定具式組み立ては、例えば、マッチドリル処理を含む。この処理は、ウィングボックス132と外板130とを固定具を用いて組み付けること、翼桁102及び外板130の両方に留め具孔を一括形成することと、外板130とウィングボックス132とを分離させることと、外板130及びウィングボックス132のバリ取り又は表面仕上げを行うことと、外板130及びウィングボックス132を再度組み立てることと、留め具を締結することを含む。これに対し、確定組み立ては、翼100の組み立てをより迅速に、シンプルに、且つ、低コストで行うことができる処理である。具体的には、例えば、パターンに基づいて外板130及び翼桁102にそれぞれ予め穿孔を施して留め具孔を形成しておくことにより、付加的な工具を用いずに、外板130と翼桁102とを迅速に整列させることができる。
【0074】
例示的な実施形態においては、翼桁102の翼弦140に翼桁留め具孔142が予め穿孔され、外板130に外板留め具孔144が予め穿孔される。翼桁留め具孔142及び外板留め具孔144のうちの一方又は両方は、例えば、翼100の構築の際さらに穿孔する必要がない原寸大の孔であってもよい。翼桁留め具孔142は、翼桁留め具孔径D4を含み、外板留め具孔144は、外板留め具保持直径D5を含む。例示的な実施形態において、翼桁留め具孔142の翼桁留め具孔径D4は、外板留め具孔144の外板留め具孔径D5よりも大きい。翼桁留め具孔142の翼桁留め具孔径D4は、スリーブ214のスリーブ外径D1(
図4)にほぼ等しい。外板留め具孔144の外板留め具孔径D5は、留め具204のシャンク直径D3(
図4)にほぼ等しい。
【0075】
本開示の認識では、翼桁留め具孔142の翼桁留め具孔径D4が外板留め具孔144の外板留め具孔径D5よりも大きいため、翼桁留め具孔142と外板留め具孔144とを同軸に揃えることなく、本開示の留め具システム200を用いて外板130を翼桁102に締結することができ、これにより、ナットプレート軸心218(
図4)と留め具軸心232(
図4)とが同軸に整列しなくても、留め具204をナット206に締結することができる。したがって、本開示の翼100により有利な実施形態を提供することができる。
図6に示すように、ナット206は、ナットプレート202内においてナットプレート軸心218(
図4)に直交して移動し、留め具軸心232(
図4)及び外板留め具孔中央軸心148と同軸整列する。これにより、留め具204をナット206に締結することが可能となる。
【0076】
図6を参照すると、例示的な実施形態においては、翼桁102に外板130を組み付けるとき、翼桁留め具孔142の翼桁留め具孔中央軸心146と外板留め具孔144の外板留め具孔中央軸心148とは、同軸上に整列していない。この状態で留め具204を外板留め具孔144、及び、ナットプレート202のスリーブ214に挿入すると、留め具204がナット206に係合し、ナット206が直線移動する。これにより、ナット軸心234(
図4)及び留め具軸心232(
図4)、さらに外板留め具孔中央軸心148が整列し、シャンク220のネジ付き端が受容される。一例において、留め具204の端部には、留め具204をナット206内に誘導したり、ナットプレート202に対してナット206を位置決めしたりするための、引き込み面取り部(lead-in chamfer)が形成されていてもよい。
【0077】
このように、本開示の留め具システム200においては、確定組み立て処理で生じうる翼桁留め具孔142及び外板留め具孔144の位置ずれが考慮されている。留め具システム200は、翼桁留め具孔142と外板留め具孔144とが同軸整列していなくても、外板130を翼桁102に固定することができる。留め具システム200が取り付けられた後は、翼桁留め具孔142及びスリーブ内径D2(
図4)が、留め具204のシャンク直径D3(
図4)よりも大きいために起こる外板130と翼桁102との間の動きを、留め具システム200により生じるクランプ力によって防止することができる。
【0078】
次に、
図5及び
図6を参照すると、ナットプレート202は、スリーブ214が翼桁留め具孔142に受容される所定の位置において、翼桁102、例えば翼桁102の翼弦140に取り付け可能に構成されている。ナットプレート202は、ナット206が留め具204の端部との係合に適した位置に配置されるようにしつつ、当該ナットの翼桁留め具孔142及び外板留め具孔144に対する位置を大まかに規定する。上述したように、ナットプレート202は、留め具204がナット206と締結しうるように、ナット206の回転運動を制限するとともに、ナット206の直交方向への運動を許容する。
【0079】
ナットプレート202は、様々な手法により翼桁102に取り付け可能である。例示的な実施形態においては、冷間膨張(cold expansion)処理、又は、冷間加工(cold working)処理により、ナットプレート202が翼桁102に取り付けられる。一例として、ナットプレート202の取付け前において、スリーブ214のスリーブ外径D1が、翼桁留め具孔142の翼桁留め具孔径D4よりも小さくなるように設定しておく。そして、スリーブ214を翼桁留め具孔142内に受容させた状態で、プルガン(pull gun)(図示略)を操作し、スリーブ214にマンドレル(図示略)を挿通させる。この際に、マンドレルの先端がスリーブ214の外端よりも外方に延在するようにする。マンドレルの先端にスリーブ214の厚みを加えた直径は、翼桁留め具孔142の翼桁留め具孔径D4にほぼ等しい。その後、マンドレルを引き戻してスリーブ214を変形させ、スリーブ214のスリーブ外径D1を広げて(例えば、冷間膨張)、翼桁留め具孔142の翼桁留め具孔径D4とほぼ等しくするか、或いはこれよりも大きくすることにより、翼桁102に対してナットプレート202が適所で保持されるようにする。スリーブ214は、翼桁留め具孔142の周囲に沿った張力により翼桁留め具孔142内に保持される。例示的な実施形態においては、ナット206は、座ぐり穴を含む。この座ぐり穴は、マンドレルが、ナットプレート202のスリーブ214を貫通して、ナット206の干渉を受けずにスリーブ214を広げることを許容するように構成されている。本開示の認識では、例えば、翼桁102を金属で作製した場合、冷間加工処理を用いてスリーブ214を広げることにより、スリーブ214を加工硬化させるとともに、ナットプレート202及び/又は翼桁102の耐疲労性及び耐久性(fatigue and durability)を向上させることができる。したがって、本開示の留め具システム200により有利な実施形態を提供することができる。
【0080】
他の例示的な実施形態においては、スリーブ214が翼桁留め具孔142内にある状態で、ナットプレート202を翼桁102に接着接合してもよい。さらに他の例示的な実施形態においては、スリーブ214が翼桁留め具孔142内にある状態で、例えばリベットなどを用いてナットプレート202を翼桁102に機械的に締結してもよい。他の例においては、ナットプレート202を翼桁102に組み込んでもよい。一例としては、ナットプレート202又はナットプレート202の一部(例えば、ナットプレート202の本体208)を翼桁102と一体的に成形してもよい。その後、一体型ドーム216により形成された内部チャンバ224内にナット206を配置してもよい。一体型ナットプレート202上に、ネジ付ワッシャーなどのインサートを配置し、当該インサートが、周縁部260として機能し、ナットプレート202内にナット206を保持するようにしてもよい。
【0081】
図7は、航空機用翼1218(
図1)の形態などの本開示の翼100、及び、本開示の留め具システム200の他の実施形態を概略的に示す拡大部分断面図である。例示的な実施形態において、留め具システム200は、EME保護留め具システムである。
【0082】
本開示の認識では、留め具システム200を用いて外板130を翼桁102に固定することにより、特別なEME留め具、EMEシーリング剤、及び/又は、他のEME保護装置を使用する必要がないので、EME保護のコスト、時間、及び複雑性を減らすことができる。したがって、本開示の留め具システム200により有利な実施形態を提供することができる。
【0083】
例示的な実施形態においては、ナットプレート202は、スリーブ214の内面242に誘電被膜240を含む。本開示の認識では、誘電被膜240により、留め具204(例えば、シャンク220)とナットプレート202(例えば、スリーブ214の内径面242)との間のアークを防ぎ、EME保護を行うことができる。したがって、本開示の留め具システム200により有利な実施形態を提供することができる。一例として、誘電被膜は、SAE AS5272などの固形フィルム潤滑剤を含む。
【0084】
例示的な実施形態において、ナットプレート202は、ナット206と本体208との間に導電性ナット‐フランジ界面244を含む。導電性ナット‐フランジ界面244は、ナット206とナットプレート202との間で電気接続を確立する。一例として、ナット206は、ナット導電性接触面246を含み、フランジ212は、フランジ導電性接触面248を含み、これらが、導電性ナット‐フランジ界面244を規定している。一例として、ナット導電性接触面246は、鍔部236の1つ又は複数の面により規定されており、フランジ導電性接触面248は、ナット受容凹部230を形成する、例えば、周縁部260などの、フランジ212の1つ又は複数の内面により規定されている。一例においては、ナット導電性接触面246及びフランジ導電性接触面248は、両方ともベアメタル面(bare metal surfaces)であって、導電性ナット‐フランジ界面244は、金属‐金属界面である。本開示の認識では、導電性ナット‐フランジ界面244により、ナット206と本体208との間を電気的に接続して、スパークを発生させることなくこれらの間に電流を流してEME保護を行うことができる。したがって、本開示の留め具システム200により有利な実施形態を提供することができる。
【0085】
例示的な実施形態においては、ナット206とシャンク220のネジ付き端部との間のネジ付き留め具‐ナット界面256に対して、潤滑剤250が塗布される。本開示の認識では、潤滑剤250により、取り付け力を低減するとともにHEREを防止して、トルクと張力との関係の繰り返し性を向上させることができる。したがって、本開示の留め具システム200により有利な実施形態を提供することができる。
【0086】
例示的な実施形態においては、ナットプレート202のカバー210のドーム216は、スパークに起因する燃焼などの、EMEに起因して蓄積した圧力を閉じ込めるように構成されている。この例においては、ナットプレート202のカバー210のドーム216で形成される内部チャンバ224は、例えば、EMEにより生じる燃焼に起因するガス膨張に対応するのに十分な容積を有する。一例として、内部チャンバ224は、当該内部チャンバ224においてナット206に占有される部分の体積よりも少なくとも約50パーセント大きい総容積を有する。
【0087】
例示的な実施形態においては、スリーブ214は、スリーブ高さHを有する。例示的な実施形態においては、スリーブ高さHは、翼桁102(例えば、翼弦140)(
図6)の翼桁厚みTとほぼ等しい。本実施形態においては、外板130を翼桁102に固定するために、スリーブ214が翼桁留め具孔142内に受容されるとともに、外板130が翼桁102に対して組み立て位置に配置されており、且つ、例えば、ナット206に留め具204を締結するために、翼桁留め具孔142及び外板留め具孔144が、ほぼ整列している状態において、スリーブ214の端部は、外板130の第1面152の一部、例えば、外板留め具孔144の縁部に近接する(例えば、当該縁部又はそれに近い)部分と密着するように配置されている。本実施形態においては、外板130の表面152とスリーブ214の端部は、スリーブ‐外板界面252を規定している。本開示の認識では、スリーブ‐外板界面252においてスリーブ214と外板130の表面152とが密着することにより、例えば、EMEに起因して蓄積した圧力によってナットプレート202のカバー210の内部チャンバ224から高いエネルギーが逃げるのを防止して、EME保護を行うことが可能であるため、本開示の留め具システム200により有利な実施形態を提供することができる。本開示の認識では、スリーブ214と外板130の第1面152とを密着させることにより、スリーブ214と外板130との間に隙間が形成されるのを制御(抑制又は防止)してEME保護を行い、これらの部品間のスパークを防止することが可能であるため、本開示の留め具システム200により有利な実施形態を提供することができる。
【0088】
他の例示的な実施形態においては、スリーブ高さHは、翼桁102(例えば、翼弦140)(
図6)の翼桁厚みTよりも小さい。本実施形態においては、外板130を翼桁102に固定するために、スリーブ214が翼桁留め具孔142内に受容されるとともに、外板130が翼桁102に対して組み立て位置に配置されており、且つ、例えば、ナット206に留め具204を締結するために、翼桁留め具孔142及び外板留め具孔144が、ほぼ整列している状態において、スリーブ214の端部は、外板130の第1面152と離れて配置されている。この実施形態において、スリーブ‐外板界面252は、隙間(明示せず)を規定している。
【0089】
例示的な実施形態においては、ナットプレート202と、翼桁102及び/又は外板130との間の1つ又は複数の界面は、接合シール258を含む。接合シール258は、対向する界面により形成された合わせ面を封止するものである。例えば、接合シール258を、フランジ‐翼桁界面254、スリーブ‐外板界面252、スリーブ‐翼桁界面262、及び/又は、他の適切な表面界面のうちの1つ又は複数に塗布してもよい。一例として、適切な表面処理を行った後、例えば、任意の適切な塗布技術を用いて、約10ミル(mil)の厚みで、表面界面の合わせ面の一方に対してシーリング剤を一様に塗布する。本開示の認識では、水が溜まって部品間の腐食の原因となったり、電流が横切ってスパークを生じさせたりする可能性のある空間や隙間に接合シール258を用いてこれらの空間や隙間を無くすことにより、EME保護を行うことができるため、本開示の留め具システム200により有利な実施形態を提供することができる。
【0090】
他の例示的な実施形態においては、ナットプレート202は、例えば、単一の部材又は部品であり、本体208及びカバー210は、1つの部材を形成している。ナット206は、単一のナットプレート202内において、鍔部236がフランジ212のナット受容凹部230内に位置し、且つ、ナット206の一部がカバー210のドーム216内に位置するように、配置されている。本開示の認識では、単一のナットプレート202により、接合界面の数を最小限に抑えてスパークの発生を抑制することができる。また、ナットプレート202が封止されており、部品界面や接合部(例えば、本体208とカバー210との間のクリンプ接合部)が存在しないため、例えば、EMEに起因する高いエネルギーを閉じ込め、より好適なEME保護を行うことができる。したがって、本開示の留め具システム200により、有利な実施形態を提供することができる。さらに、単一のナットプレート202により内部チャンバ224を一体的に封止することができるため、二次的な封止キャップを用いる必要がない。
【0091】
例示的な実施形態において、ナットプレート202は、単一の部材を形成するために付加製造プロセス(例えば、積層造形プロセス)により製造される。すなわち、一体的なナットプレート202は、付加製造された部品である。3D印刷としても知られる付加製造プロセスは、コンピュータ支援製造(CAM)技術を用いた一体化処理であり、モールドやダイス型を用いずに一層ずつ機能的な複合部品を製造することができる。典型的には、このプロセスは、レーザービーム又は電子ビームなどの強力な熱源を用いて、金属粉又はワイヤの形態の金属を調整された量だけ溶融し、溶融した金属をまずワークピースのベースプレートに配置する。次に、後続する層を、先行する層に積層する。すなわち、付加製造プロセスにおいては、従来の加工処理とは対照的に、材料を除去する代わりに材料を付加していくことにより、完全な機能部品、或いは、既存の部品の特徴部を作製する。この例示的な実施形態において、ナットプレート202は、ナット206の周りに一層ずつ形成される。
【0092】
付加製造技術の例としては、レーザービームで金属粉末を溶融する選択的レーザー溶融法(Selective Laser Melting (SLM))や電子ビームで金属粉末を溶融する電子ビーム溶融法(Electron Beam Melting (EBM))などの粉末床技術(powder bed technologies);金属粉末をレーザービームと同軸に吹き付けて、ベースとなる金属上で当該粉末を溶融し、その後冷却することにより金属結合させる、レーザー金属積層法(Laser Metal Deposition)又はレーザークラッデイング法(Laser cladding)としても知られる吹き出し粉末技術(blown powder technologies);及び、レーザービームにより金属粉末を焼結する選択的レーザー焼結法などが挙げられる。
【0093】
一例として、例えば、粉末床内にベースプレートを配置し、粉末の表面を平らにならして、ベースプレートの表面がちょうど覆われる程度にする。その後、ナットプレート202の形状の一部を規定する経路に沿ってベースプレート上をレーザーで走査する。粉末は、この形状に従って溶融し、ベースプレート上で所望の形状の金属層に固化する。その後、粉末を前回よりも若干高い位置で、再度平坦にし、この作業を繰り返す。これにより、ナットプレート202において形状の連続した部分、例えば、カバー210のドーム216、及び、内側肩部238を規定するフランジ212の一部を形成しうる。次に、ドーム216により形成された内部チャンバ224内にナット206を配置する。その際、鍔部236がフランジ212の内側肩部238により支持されるようにする。その後、粉末を前回よりも若干高い位置で、再度平坦にし、この作業を、ナットプレートの形状の残りの部分、例えば、外側肩部226及びスリーブ214を規定するフランジ212の残りの部分が完全に形成されるまで、繰り返し行う。
【0094】
図8は、航空機用翼1218(
図1)の形態などの本開示の翼100(
図4)を作製するための、本開示の方法500の例示的な実施形態を示すフロー図である。
【0095】
例示的な実施形態においては、方法500は、ブロック502に示すように、ウィングボックス132(
図3)を形成するステップを含む。一例として、ウィングボックス132は、1つ又は複数の翼桁102(
図3)と、翼桁102に接続された複数のリブ128(
図3)とを含む。翼桁102は、貫通形成(例えば、穿孔又は加工)された複数の翼桁留め具孔142(
図5)を含む。翼桁留め具孔142の各々は、翼桁留め具孔径D4(
図5)を有する。
【0096】
方法500は、ブロック504に示すように、外板130(例えば、上側外板130a及び下側外板130b)(
図3)を形成するステップを、さらに含む。一例として、外板130は、貫通形成された複数の外板留め具穴144(
図5)を有する。外板留め具穴144の各々は、外板留め具孔径D5(
図5)を含む。翼桁留め具孔径D4は、外板留め具孔径D5よりも大きい。
【0097】
方法500は、ブロック508に示すように、複数の翼桁留め具孔142(
図5)の各々に、本開示の留め具システム200(
図4)のナットプレート202(
図4)を挿入するステップを、さらに含む。一例として、ナットプレート202の各々は、翼桁留め具孔142のうちの関連する1つに受容及び保持されるように構成されたスリーブ214(
図4)と、スリーブ214から径方向に延びるとともに、ナット受容凹部230(
図4)を規定するフランジ212(
図4)と、スリーブ214の反対側において、フランジ212から軸方向に延びるとともに、内部チャンバ224(
図4)を規定するドームカバー(
図4)と、ナット受容凹部230内に少なくとも部分的に受容されるとともに、カバー210に格納されたナット206(
図4)と、を含む。ナット206は、ナットプレート202内においてナットプレート軸心218(
図4)を中心とする回転が制限されており、且つ、ナットプレート内においてナットプレート軸心218に直交して自由に直線移動することができる。
【0098】
方法500は、ブロック506に示すように、ウィングボックス132内に内部システム136(
図3)のうちの1つ又は複数を設置するステップを、さらに含む。
【0099】
方法500は、ブロック510に示すように、ウィングボックス132(
図3)を外板130(
図3)間に挟むとともに、これらの外板で内部システム136(
図3)を囲むステップを、さらに含む。外板留め具孔144(
図5)は、翼桁留め具孔142とほぼ整列している。外板留め具孔144の各々の外板留め具孔中央軸心148(
図6)は、翼桁留め具孔142の各々の翼桁留め具孔中央軸心146(
図6)と同軸上に整列していない。
【0100】
方法500は、ブロック512に示すように、留め具204(
図4)を取り付けるステップをさらに含む。留め具204は、外板留め具孔144(
図5)の各々を通り、翼桁留め具孔142のうちの関連する孔に受容されるナットプレート202(
図4)の各々のスリーブ214(
図4)を通って、取り付けられる。
【0101】
方法500は、ブロック514に示すように、ナット206(
図4)のナット軸心234(
図4)と、外板留め具孔中央軸心148(
図6)とを、同軸上に整列させるステップを、さらに含む。ナット206のナット軸心234は、外板留め具孔144(
図6)のうちの関連する1つの外板留め具孔中央軸心148と同軸上に整列される。ナット軸心234と外板留め具孔中央軸心148との同軸整列は、ナットプレート202内のナット206が留め具204と係合したときに、当該ナットをナットプレート軸心218(
図4)に直交して直線移動させることにより、行うことができる。
【0102】
方法500は、ブロック516に示すように、関連するナットプレート202(
図4)に格納されているナット206に対して、留め具204(
図4)を回転させる(例えば、締結する)ステップを、さらに含む。翼桁102に取り付けられているナットプレート202に格納されたナット206に対して、留め具204を回転させることにより、外板130を翼桁102に固定することができる。
【0103】
方法500は、ブロック518に示すように、EMEからの保護を提供するステップを、さらに含む。一例として、EMEからの保護は、留め具システム200において、ナット206(
図7)のフランジ導電性接触面248(
図7)と、フランジ212(
図7)のナット導電性接触面246との間に、導電性ナット‐フランジ界面244(
図7)を形成することにより、提供される。他の例として、EMEからの保護は、留め具システム200において、スリーブ214(
図7)の内径面に誘電被膜240(
図7)を塗布することにより、提供される。他の例として、EMEからの保護は、留め具システム200において、スリーブ214のスリーブ高さH(
図7)を翼桁102(
図7)の翼桁厚さT(
図7)とほぼ等しくして、スリーブ‐外板界面252(
図7)を形成することにより、提供される。他の例として、EMEからの保護は、留め具システム200において、カバー210(
図7)のドーム216(
図7)により形成される内部チャンバ224(
図7)が、ナット206により占有される体積よりも少なくとも50パーセント大きい容積を有するようにすることで、提供される。さらに他の例として、EMEからの保護は、留め具システム200において、本体208(
図7)とカバー210とを一体化して、単一のナットプレート202を形成することにより、内部チャンバ224を密閉するとともに、ナットプレート202内にナット206を格納することにより、提供される。
【0104】
方法500は、ブロック520に示すように、翼100(
図3)をクローズアウトするステップを、さらに含む。翼100のクローズアウトは、翼100を最終的にクローズアウトするパネルとして外板130(
図3)を用いることで実現される。
【0105】
このように、本開示の認識では、開示に係る翼100により、有利な実施形態を提供することができる。これは、留め具システム200を用いて外板130をウィングボックス132に固定しているので、翼100を最終的にクローズアウトするパネルが外板130であることを明確にすることができるからである。また本開示の認識では、浮動ナット206を有するナットプレート202により、翼100の確定組み立てを行うことができ、外板130にアクセス用ドアや孔を形成する必要性をなくし、内部システム136を予めすべて内部に配置することができ、且つ、より薄い翼を設計することができる。したがって、本開示の留め具システム200により、有利な実施形態を提供することができる。さらに、留め具システム200を用いた本開示の翼100は、航空機のEME要件を満たしつつ、EMEアーキテクチャを簡素化することができるが、これは、封止キャップや接合シール、フィレットシールなどが不要であり、また銅箔、誘電体天板、アップリケなどの表面保護が不要であることによる。また、留め具システム200を用いた本開示の翼100は、固定具式組み立て及びマッチドリル処理に関連する時間、複雑性、及びコストを減らすことができるため、有利な実施形態を提供することができる。
【0106】
本明細書において、「実施形態」とは、その実施形態に関連して説明する1つ又は複数の特徴、構造、要素、コンポーネント、又は特性が、本開示の発明の少なくとも1つの実施例に含まれていることを意味する。したがって、本開示において「一実施形態」、「他の実施形態」、及びこれらに類する用語は、必ずしもそうとは限らないが、同じ実施形態について言及していることもありうる。さらに、1つの実施形態を特徴付ける事項が、他の実施形態を特徴付ける事項を含む場合もあるが、必ずしもそうとは限らない。
【0107】
同様に、本明細書において、「例」とは、その例に関連して説明する1つ又は複数の特徴、構造、要素、コンポーネント、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本開示において「一例」、「他の例」、及びこれらに類する用語は、必ずしもそうとは限らないが、同じ例について言及していることもありうる。さらに、1つの例を特徴付ける事項が、他の例を特徴付ける事項を含む場合もあるが、必ずしもそうとは限らない。
【0108】
別段の示唆がない限り、「第1」、「第2」などの用語は、本明細書において、単に標識として用いられており、これらの用語が言及する要素に対して、順序、位置、又は階層的な要件を課すものではない。また、例えば「第2」の要素について言及することは、番号の小さい要素(例えば、「第1」の要素)、及び/又は、番号の大きい要素(例えば、「第3」の要素)の存在を要件とするものでも排除するものでもない。
【0109】
本明細書において、「少なくとも1つの」という語句が、要素の列挙とともに用いられる場合、列挙された要素のうちの1つ又は複数を様々な組み合わせで使用する場合もあるし、列挙された要素のうちの1つのみを必要とする場合もあることを意味する。要素は、特定の対象、物、又はカテゴリであってもよい。すなわち、「少なくとも1つの」は、列挙された要素を任意の組み合わせで任意の数だけ使用してもよいが、列挙された要素の全てを必要としない場合もあることを意味する。例えば、「要素A、要素B、及び要素Cのうちの少なくとも1つ」は、要素A;要素Aと要素B;要素B;要素Aと要素Bと要素C;又は、要素Bと要素C、を意味する場合がある。場合によっては、「要素A、要素B、及び要素Cのうちの少なくとも1つ」は、例えば、限定するものではないが、2個の要素Aと、1個の要素Bと、10個の要素C;4個の要素Bと7個の要素C;又は、他の適切な組み合わせを意味する。
【0110】
上述した
図2及び
図8におけるブロックは、動作及び/又はその一部を示す場合があり、様々なブロックを繋ぐ線は、動作又はその一部の特定の順序又は従属関係を暗示するものではない。破線で示されるブロックがある場合、これらは代替の動作及び/又はその一部を示している。様々なブロックを繋ぐ破線がある場合、これらは、工程やその一部の代替的な従属関係を示す。なお、開示されている様々な工程間の従属関係が、全て示されているとは限らない。本明細書に記載の本開示の方法における工程を説明する
図2、
図8、及び、開示は、これらの工程が行われる順序を必ずしも決定するものではない。むしろ、1つの例示的な順序が示されてはいるが、これらの工程の順序は適宜変更可能であると理解されるべきである。したがって、これらの工程に対して、変更、追加、及び/又は、削除を行うことが可能であり、また、工程のいくつかを、異なる順序で行ったり、同時に行ったりすることが可能である。さらに、当業者であれば分かるように、記載した工程の必ずしも全てを行う必要はない。
【0111】
さらに、本開示は、以下の付記による実施形態を含む。
【0112】
付記1.翼は、
相互接続された翼桁を含むウィングボックスと、
前記ウィングボックス内に設けられた内部システムと、
前記ウィングボックスに固定されるとともに前記ウィングボックスを覆う、対向する一対の外板と、を含み、前記一対の外板のうちの一方により当該翼がクローズアウトされる。
【0113】
付記2.前記外板を前記翼桁に固定するように構成された複数の留め具システムをさらに含み、前記複数の留め具システムの各々が、
ネジ付き留め具と、
本体及びカバーを含むナットプレートと、
前記ナットプレート内の前記本体と前記カバーとの間に設けられたナットと、を含み、
前記ナットは、前記ナットプレート内においてナットプレート軸心を中心とする回転が制限されており、且つ、前記ナットプレート内において前記ナットプレート軸心に直交して自由に直線移動することができる、付記1に記載の翼。
【0114】
付記3.前記本体及び前記カバーは、一体的なナットプレートを構成している、付記2に記載の翼。
【0115】
付記4.前記ナットプレートは、付加製造プロセスによって作製される、付記3に記載の翼。
【0116】
付記5.前記翼桁は、複数の翼桁留め具孔を含み、前記複数の翼桁留め具孔の各々は、翼桁留め具孔径を有し、
前記外板は、複数の外板留め具孔を含み、前記複数の外板留め具孔の各々は、外板留め具孔径を有し、
前記翼桁留め具孔径は、前記外板留め具孔径よりも大きい、付記2に記載の翼。
【0117】
付記6.前記複数の翼桁留め具孔は、確定組み立て処理により前記翼桁に穿孔され、前記複数の外板留め具孔は、前記確定組み立て処理により前記翼桁に穿孔される、付記5に記載の翼。
【0118】
付記7.前記複数の外板留め具孔の各々の外板留め具孔中央軸心は、前記複数の翼桁留め具孔の各々の翼桁留め具孔中央軸心と同軸上に整列していない、付記5に記載の翼。
【0119】
付記8.前記ナットプレートの前記本体は、スリーブを含み、前記スリーブは、前記ナットプレートを前記翼桁に取り付けるに際して、前記複数の翼桁留め具孔の各々に受容され、
前記留め具は、前記複数の外板留め具孔の各々及び前記スリーブを貫通して配置されるとともに、前記ナットと係合し、
前記ナットのナット軸心は、前記外板留め具孔中央軸心と同軸上に整列している、付記7に記載の翼。
【0120】
付記9.前記スリーブのスリーブ外径は、前記スリーブを、周方向の張力により前記翼桁留め具孔のうちの関連する1つの内部に取り付けるために、前記翼桁留め具孔の翼桁留め具孔径とほぼ等しいか或いは当該孔径よりも大きくなるように冷間加工処理により広げられている、付記8に記載の翼。
【0121】
付記10.前記スリーブは、内径面に設けられた誘電被膜を含む、付記8に記載の翼。
【0122】
付記11.前記スリーブは、前記翼桁の翼桁厚みとほぼ等しいスリーブ高さを有する、付記8に記載の翼。
【0123】
付記12.前記ナットプレートの前記本体は、フランジをさらに含み、前記フランジは、前記スリーブから径方向に延びるとともに、前記翼桁と表面接触しており、且つ、ナット受容凹部及び導電性ナット‐フランジ界面を規定している、付記8に記載の翼。
【0124】
付記13.外板を翼の翼桁に固定するための留め具システムであって、
前記外板における外板留め具孔に受容されるように構成されたネジ付き留め具と、
本体とカバーとを含むナットプレートであって、前記外板留め具孔とほぼ整列する前記翼桁の翼桁留め具孔内に取り付け可能に構成されたナットプレートと、
前記ナットプレート内の前記本体と前記カバーとの間に設けられたナットと、を含み、前記ナットは、前記ナットプレート内においてナットプレート軸心を中心とする回転が制限されており、且つ、前記ナットプレート内において前記ナットプレート軸心に直交して自由に直線移動することができる、留め具システム。
【0125】
付記14.前記本体及び前記カバーは、付加製造プロセスによって作製された一体的なナットプレートを構成している、付記13に記載の留め具システム。
【0126】
付記15.前記ナットプレートの前記本体は、前記翼桁留め具孔内に受容及び保持されるように構成されたスリーブと、前記スリーブから径方向に延びるフランジとを含み、
前記カバーは、前記スリーブの反対側において前記フランジから軸方向に延びるドームを含み、
前記ナットは、径方向鍔部を含み、
前記フランジは、前記フランジ内に形成されたナット受容凹部を規定する、周縁部及び前記周縁部の反対側の内側肩部を含み、
前記ナット受容凹部は、少なくとも部分的に前記鍔部を受容するように構成されており、前記内側肩部は、前記鍔部を支持するように構成されており、
前記留め具が、前記スリーブに受容され前記ナットに締結されている状態において、前記ナットは、ナット軸心と前記外板留め具孔の外板留め具孔中央軸心とを同軸上に整列させて、前記周縁部に当接するように構成されている、付記13に記載の留め具システム。
【0127】
付記16.前記スリーブは、内径面に設けられた誘電被膜を含む、付記15に記載の留め具システム。
【0128】
付記17.前記ドームは、中空内部チャンバを規定しており、前記中空内部チャンバは、前記ナットに占有される体積よりも少なくとも50パーセント大きい容積を有する、付記15に記載の留め具システム。
【0129】
付記18.前記スリーブは、前記翼桁の翼桁厚みとほぼ等しいスリーブ高さを有する、付記15に記載の留め具システム。
【0130】
付記19.前記フランジの前記周縁部の少なくとも一部は、フランジ導電性接触面を規定しており、
前記鍔部の少なくとも一部は、ナット導電性接触面を規定しており、
前記フランジ導電性接触面及び前記ナット導電性接触面は、導電性ナット‐フランジ界面を規定している、付記15に記載の留め具システム。
【0131】
付記20.翼を作製するための方法は、
翼桁留め具孔径を有する複数の翼桁留め具孔が形成された複数の翼桁を相互接続してなるウィングボックスを形成することと、
前記翼桁留め具孔径よりも大きな外板留め具孔径を有する複数の外板留め具孔が形成された複数の外板を形成することと、
前記ウィングボックス内に内部システムを設けることと、
前記複数の翼桁留め具孔の各々の内部にナットプレートを設けることと、を含み、各ナットプレートが、
前記複数の翼桁留め具孔のうちの関連する1つの内部に受容及び保持されるように構成されたスリーブと、
前記スリーブから径方向に延びるとともに、ナット受容凹部を規定するフランジと、
前記スリーブとは反対側において前記フランジから軸方向に延びるとともに、内部チャンバを規定するドームカバーと、
少なくとも部分的に前記ナット受容凹部に受容されるとともに、前記カバーに格納されたナットと、を含み、
前記ナットは、前記ナットプレート内においてナットプレート軸心を中心とする回転が制限されており、且つ、前記ナットプレート内において前記ナットプレート軸心に直交して自由に直線移動することができ、
前記方法は、前記複数の翼桁留め具孔と前記複数の外板留め具孔とをほぼ整列させた状態において、前記外板間に前記ウィングボックスを挟むとともに前記内部システムを囲むことを含み、前記複数の外板留め具孔の各々の外板留め具孔中央軸心は、前記複数の翼桁留め具孔の各々の翼桁留め具孔中央軸心と同軸上に並んでおらず、
前記方法は、
前記複数の外板留め具孔の各々、及び、前記複数のナットプレートの各々の前記スリーブに留め具を挿通させることと、
前記ナットのナット軸心を前記外板留め具孔中央軸心と同軸上に整列させることと、
前記複数の留め具を前記複数のナットプレートそれぞれのナットに締結することと、
電磁影響からの保護手段を提供することと、
前記翼をクローズアウトすることと、を含んでいる。
【0132】
本開示の装置、システム、及び方法の様々な実施形態を図示及び説明してきたが、本明細書を理解した当業者には種々の改変が可能となろう。本願は、そのような改変も包含するものであり、限定は特許請求の範囲によってのみなされるものである。