(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電圧印加ステップにおいて、前記検査装置が、1秒間に500V(ボルト)から5000Vの電圧上昇率になるように、前記第1の電圧から前記第2の電圧に上昇させる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の検査方法。
前記検査ステップにおいて、前記検査装置が、前記検査電圧を前記半導体装置に印加した際に、所定の電流以上の電流値が検出された前記検査電圧の値を、前記耐圧実力値として検出し、検出した当該耐圧実力値に基づいて、前記半導体装置の耐圧を検査する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置の検査方法。
前記電圧印加ステップにおいて、検査装置が、前記半導体装置の定格耐圧値以下である前記第1の電圧に上昇させた後に、前記第2の電圧に上昇させて、前記検査電圧を前記半導体装置に印加する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置の検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態による半導体装置の検査方法、半導体装置の製造方法、及び検査装置について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、検査装置1は、半導体装置2を検査するテスター装置であり、例えば、半導体装置2の耐圧検査を含む検査を実行する。ここで、半導体装置2は、例えば、SiC(炭化ケイ素)の半導体基板WFを使用した、ショットキーバリアダイオードであり、
図1に示す半導体装置2は、ショットキーバリアダイオードの断面の一部を示している。
【0021】
半導体装置2は、例えば、N−領域21と、P+領域22と、P−領域23と、N+領域24と、パッシベーション膜25と、メタル領域26と、ポリイミド膜27と、メタル領域28とを備えている。なお、
図1に示す半導体装置2は、半導体装置2のメタル領域26を中心とした外周部分の構成を示している。また、半導体装置2の半導体基板WFは、炭化ケイ素を含んで形成されており、以下の説明において、
図2の紙面で上側の主面を表面(おもて面)とし、下側の主面を裏面として説明する。
【0022】
N−領域21は、半導体基板WFに形成されたn型半導体の領域であり、半導体基板WFの主面である表面(おもて面)に接して形成されている。
P+領域22は、p型半導体の領域であり、N−領域21に内包されて、メタル領域26の外周に形成されている。P+領域22は、ガードリングとして機能する。
【0023】
P−領域23は、P+領域22よりも不純物濃度が低いp型半導体の領域であり、N−領域21に内包されて、P+領域22に接して形成されている。P−領域23は、P+領域22の外周に配置されており、P+領域22と同様に、ガードリングとして機能する。
【0024】
パッシベーション膜25は、例えば、PSG(Phosphorous Silicate Glass)の絶縁膜であり、半導体基板WFの表面に、P+領域22及びP+領域22を覆うようにメタル領域26を除く外周部分に形成されている。
メタル領域26は、ショットキーバリアダイオードのアノード電極となる金属層であり、半導体基板WFの表面の中央部分に、N−領域21とショットキー接合されて形成されている。
ポリイミド膜27は、半導体装置2の保護膜であり、メタル領域26の一部を覆うように、表面側の外周部に形成なれている。
【0025】
N+領域24は、N−領域21よりも不純物濃度が高いn型半導体の領域であり、N−領域21の裏面に形成されている。
メタル領域28は、ショットキーバリアダイオードのカソード電極となる金属層であり、N+領域24とオーミック接触されて、半導体基板WFの裏面に全体を覆うように形成されている。
【0026】
なお、上述した半導体装置2の耐圧検査を行う場合に、例えば、1000V以上の高電圧を印加する必要があるため、
図2に示すような経路で、放電が発生することがある。
図2(a)は、半導体装置2の断面図を示しており、検査対象の半導体装置2のメタル領域26と、隣接する半導体装置2の境界となるスクライブラインSBとの間の放電モデルの一例を示している。また、
図2(b)は、同様に半導体装置2の断面図を示しており、検査対象の半導体装置2のメタル領域26と、隣接する半導体装置2のメタル領域26との間の放電モデルの一例を示している。
【0027】
ここで、
図2に示す半導体装置2は、パッシベーション膜25の上に窒化ケイ素(SiN)の絶縁膜であるシリコン窒化膜29を形成する一例であるが、基本的な構成は、
図1に示す半導体装置2と同様である。また、半導体装置2は、ウェア上で検査され、ウェハを検査するためのプローバ(不図示)内のウェハプローバステージWST上に置かれて検査されるものとする。
【0028】
また、
図2(a)に示す放電モデルでは、放電は、ポリイミド膜27のウェハの主面方向の距離A1(メタル領域26とスクライブラインSBとの間の距離)と関係がある。すなわち、距離A1(メタル領域26とスクライブラインSBとの間の距離)が短い程、放電が発生し易くなる。
【0029】
また、
図2(b)に示す放電モデルでは、放電は、検査対象の半導体装置2のメタル領域26と、隣接する半導体装置2のメタル領域26との間の距離(A1+B+A2)と関係がある。すなわち、距離(A1+B+A2)が短い程、放電が発生し易くなる。
ここで、距離A1及び距離A2は、例えば、300μm(マイクロメートル)であり、スクライブラインSBの幅Bは、例えば、110μmである。
【0030】
図1の説明に戻り、検査装置1は、半導体装置2を検査する検査工程において、上述した半導体装置2の逆バイアス時の耐圧を検査する。また、検査装置1は、電圧印加部11と、電流検出部12と、記憶部13と、制御部14とを備えている。また、検査装置1は、耐圧検査の際に、信号線L1及び信号線L2により半導体装置2に接続される。
ここで、信号線L1は、メタル領域28(又は、ウェハプローバステージWST)に接続され、検査装置1から検査電圧が印加される。また、信号線L2は、メタル領域26に接続され、検査装置1の内部で、基準電位(0V、グランド)に接続される。
【0031】
電圧印加部11は、後述する電圧制御部141による制御に基づいて指定された電圧を半導体装置2に印加する。電圧印加部11は、例えば、基準電圧(例えば、0V)から耐圧実力値より低い第1の電圧V1に上昇させた後に、第1の電圧V1より高い第2の電圧V2に上昇させて、検査電圧を半導体装置2に印加する。ここで、第1の電圧V1は、放電が発生しない電圧であって、耐圧実力値より低い電圧である。第1の電圧V1は、例えば、耐圧定格値以下の電圧値である。また、第2の電圧V2は、耐圧実力値を判定するための電圧であり、検査電圧の最大値である。第2の電圧V2は、例えば、マージン分を含んで耐圧定格値を保証可能な電圧値である。
【0032】
電圧印加部11は、例えば、
図3に示すような電圧波形により、検査電圧を半導体装置2に印加する。
図3(a)は、電圧印加部11が、基準電圧(例えば、0V)から複数段の階段状に、第2の電圧V2に上昇させて、検査電圧を半導体装置2に印加する場合の一例を示している。この図において、グラフの横軸は、時間を示し、縦軸は、電圧を示している。また、波形W1は、本実施形態における階段状に検査電圧を印加する電圧波形(第1の電圧形成)を示している。また、波形W2は、比較のために、従来の検査電圧を印加する電圧波形を示している。
【0033】
ここで、階段状の段数は、例えば、2段から170段である。また、第1の電圧V1から第2の電圧V2に上昇させる電圧上昇率(所定の電圧上昇率)は、例えば、500(V/秒)から5000(V/秒)である。すなわち、第1の電圧V1から第2の電圧V2に上昇させる電圧上昇率は、例えば、1秒間に500Vから5000Vの電圧上昇率である。
また、階段状に電圧を上昇させる際の各段の時間間隔は、例えば、100mS(ミリ秒)から1500mSの間の値である。
【0034】
また、
図3(b)は、電圧印加部11が、基準電圧(例えば、0V)から第1の電圧V1に上昇させた後に、所定の電圧上昇率で第2の電圧V2に上昇させて、検査電圧を半導体装置2に印加する場合の別の一例を示している。この図において、グラフの横軸は、時間を示し、縦軸は、電圧を示している。また、波形W3は、本実施形態における第1の電圧V1から所定の電圧上昇率で第2の電圧V2に上昇させるように検査電圧を印加する電圧波形(第2の電圧形成)を示している。また、波形W2は、比較のために、従来の検査電圧を印加する電圧波形を示している。
【0035】
ここで、第1の電圧V1は、例えば、半導体装置2の耐圧定格値(例えば、1200V)である。また、所定の電圧上昇率は、例えば、500(V/秒)から5000(V/秒)である。また、基準電圧(例えば、0V)から第1の電圧V1まで上昇させる時間は、例えば、0.5mSから6mS程度である。
【0036】
再び、
図1の説明に戻り、電流検出部12は、信号線L1に検査電圧を印加した際の電流値Ibを検出する。なお、検査電圧が、半導体装置2の耐圧実力値未満である場合には、電流値Ibは流れないが、検査電圧が、耐圧実力値になった場合に、電流値Ibが流れる。そのため、電流検出部12は、耐圧実力値を判定するために、電流値Ibを検出する。
【0037】
記憶部13は、検査装置1が利用する各種データを記憶する。記憶部13は、例えば、上述した検査電圧の波形情報も含めた半導体装置2を検査する検査プログラムや検査結果などを記憶する。
【0038】
制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含むプロセッサであり、検査装置1を統括的に制御する。制御部14は、耐圧検査の際に、検査電圧を半導体装置2に印加した際に、所定の電流以上(例えば、1mA(ミリアンペア)以上)の電流値が検出された検査電圧の値を、耐圧実力値として検出し、検出した当該耐圧実力値に基づいて、半導体装置2の耐圧を検査する。制御部14は、例えば、電圧制御部141と、検査判定部142とを備えている。
電圧制御部141は、耐圧検査の際に、上述した
図3に示す電圧波形を、電圧印加部11に出力させる。電圧制御部141は、例えば、記憶部13が記憶する検査プログラムに含まれる電圧波形の設定情報に基づいて、電圧印加部11に検査電圧を半導体装置2に印加させる。
【0039】
検査判定部142は、例えば、記憶部13が記憶する検査プログラムに基づいて、半導体装置2の検査結果が正常であるか否かを判定する。検査判定部142は、例えば、耐圧検査の際に、電流検出部12が検出した電流値Ibが所定の電流以上(例えば、1mA以上)である場合に、耐圧実力値として検出する。そして、検査判定部142は、検出した当該耐圧実力値が、検査プログラムにより設定された値以上である場合に、半導体装置2の耐圧が正常であると判定する。また、検査判定部142は、検出した当該耐圧実力値が、検査プログラムにより設定された値未満である場合に、半導体装置2の耐圧が異常(半導体装置2が不良品)であると判定する。
【0040】
なお、検査判定部142は、所定の電流以上の電流値Ibが検出されずに、検査電圧が第2の電圧V2に達した場合には、耐圧実力値が第2の電圧V2より大きいと判定し、半導体装置2の耐圧が正常であると判定する。
また、検査判定部142は、半導体装置2の検査結果を、記憶部13に記憶させる。
【0041】
次に、図面を参照して、本実施形態による検査装置1の動作について説明する。
図4は、半導体装置2の耐圧検査を行う際の検査装置1の動作の一例を示している。
【0042】
図4に示すように、検査装置1は、まず、階段状の電圧波形になるように上昇させた電圧を、半導体装置2に印加する(ステップS101)。すなわち、検査装置1の電圧制御部141は、記憶部13が記憶する検査プログラムに含まれる電圧波形の設定情報に基づいて、
図3(a)に示す波形W1になるように、電圧印加部11に検査電圧を半導体装置2に印加させる。
【0043】
次に、検査装置1は、電流値Ibが所定の値以上であるか否かを判定する(ステップS102)。検査装置1の検査判定部142は、電流検出部12が検出した電流値Ibを取得し、当該電流値Ibが所定の電流以上(例えば、1mA以上)であるか否かを判定する。検査判定部142は、当該電流値Ibが所定の電流以上である場合(ステップS102:YES)に、処理をステップS104に進める。また、検査判定部142は、当該電流値Ibが所定の電流未満である場合(ステップS102:NO)に、処理をステップS103に進める。
【0044】
ステップS103において、検査判定部142は、印加電圧が、終了電圧(第2の電圧V2)であるか否かを判定する。すなわち、検査判定部142は、電圧印加部11が半導体装置2に印加している現在の検査電圧が、終了電圧(第2の電圧V2)であるか否かを判定する。検査判定部142は、印加電圧が、終了電圧(第2の電圧V2)である場合(ステップS103:YES)に、処理をステップS105に進める。また、検査判定部142は、印加電圧が、終了電圧(第2の電圧V2)でない場合(ステップS103:NO)に、処理をステップS101に戻して、
図3(a)に示す波形W1になるように、電圧を上昇させて、耐圧検査の処理を繰り返す。
【0045】
ステップS104において、検査判定部142は、耐圧値が正常であるか否かを判定する。すなわち、検査判定部142は、現在の印加電圧を耐圧実力値とし、当該耐圧実力値が、検査プログラムにより設定された所定の値以上であるか否かによって、耐圧値が正常であるか否かを判定する。検査判定部142は、耐圧値が正常である場合(ステップS104:YES)に、処理をステップS105に進める。また、検査判定部142は、耐圧値が異常である場合(ステップS104:NO)に、処理をステップS106に進める。
【0046】
ステップS105において、検査判定部142は、正常判定処理を行う。すなわち、検査判定部142は、当該検査対象の半導体装置2の耐圧が正常であることを示す検査結果を、記憶部13に記憶させる。ステップS105の処理後に、検査判定部142は、処理を終了する。
また、ステップS106において、検査判定部142は、異常判定処理を行う。すなわち、検査判定部142は、当該検査対象の半導体装置2の耐圧が異常であることを示す検査結果を、記憶部13に記憶させる。ステップS106の処理後に、検査判定部142は、処理を終了する。
【0047】
このように、検査装置1は、
図3(a)に示す波形W1のように、0Vから複数段の階段状に、第2の電圧V2に上昇させて、検査電圧を半導体装置2に印加する。そして、検査装置1は、所定の電流以上(例えば、1mA以上)の電流値が検出された検査電圧の値を、耐圧実力値として検出し、検出した当該耐圧実力値に基づいて、半導体装置2の耐圧を検査する。
【0048】
なお、上述した例では、検査装置1は、
図3(a)に示す波形W1になるように、検査電圧を半導体装置2に印加する場合の一例を説明したが、
図3(b)に示す波形W3になるように、検査電圧を半導体装置2に印加する場合も、同様の手順となり、ステップS101において、波形W3になるように検査電圧を変更する。
また、上述した
図4に示す処理において、ステップS101が、電圧印加ステップに対応し、ステップS102からステップS104が、検査ステップに対応する。
【0049】
次に、
図5を参照して、本実施形態の検査方法により、耐圧検査の際の放電が低減される動作原理について説明する。
図5(a)は、比較のために、従来の矩形波(
図3の波形W2)を印加して、耐圧検査を行った場合の半導体装置2の断面図を示している。また、
図5(b)は、本実施形態の検査方法により電圧波形(例えば、
図3(a)の波形W1)を印加して、耐圧検査を行った場合の半導体装置2の断面図を示している。
【0050】
ところで、メタル領域26とメタル領域28との間に逆バイアスを印加した場合に、メタル領域26と半導体基板WF(N−領域21)との電位差により、電界E1が発生する。また、半導体装置2のパッシベーション膜25及びポリイミド膜27の近傍で電子やイオンの再配置が起こり、この再配置による電界E2が、電界E1とは逆方向に発生する。この2つの電界の差(E1−E2)が大きい程、放電が発生し易い。
【0051】
図5(a)に示すように、従来の矩形波(
図3の波形W2)を印加した場合には、印加電圧が急峻に上昇するのに対して、パッシベーション膜25及びポリイミド膜27における電子やイオンの再配置に時間を要するため、電子やイオンの再配置による電界E2があまり発生しない。そのため、上述した2つの電界の差(E1−E2)が大きくなり、放電が発生し易くなる。
【0052】
これに対して、
図5(b)に示すように、本実施形態の階段状(
図3(a)の波形W1)に電圧を印加した場合には、パッシベーション膜25及びポリイミド膜27における電子やイオンの再配置が十分に起こり、この再配置による電界E2が
図5(a)の場合に比べて大きくなる。そのため、本実施形態による検査方法では、上述した2つの電界の差(E1−E2)が、従来の矩形波の場合よりも小さくなり、放電の発生を低減することができる。
【0053】
なお、
図5(b)に示す例では、
図3(a)に示す波形W2のような階段状の電圧波形で検査電圧を印加する例を説明したが、
図3(b)に示す波形W3(第2の波形)のような電圧波形の場合でも、同様である。すなわち、
図3(b)に示す波形W3のような電圧波形の場合でも上述した2つの電界の差(E1−E2)が、従来の矩形波の場合よりも小さくなり、放電の発生を低減することができる。
【0054】
また、
図6は、本実施形態における電圧波形と、ウェハ単位の放電率とを示す図である。
図6において、「従来の矩形波」は、上述した
図3に示す波形W2の電圧波形を印加した場合であり、「本実施形態の第1の波形(階段状)」は、上述した
図3(a)に示す波形W1の電圧波形を印加した場合である。また、「本実施形態の第2の波形」は、上述した
図3(b)に示す波形W3の電圧波形を印加した場合である。
また、ここでの「放電率」は、各電圧波形を印加して耐圧検査を行った際のウェハ単位の放電率(実験結果)を示している。
【0055】
図6に示すように、「従来の矩形波」における「放電率」は、28.22%〜52.0%である。これに対して、本実施形態による「放電率」は、「本実施形態の第1の波形(階段状)」の場合に、0%〜8.3%であり、「本実施形態の第2の波形」の場合に、2.9%〜11.1%である。このように、本実施形態による検査方法では、従来の矩形波の場合比べて、放電の発生を低減することができる。
【0056】
また、本実施形態による検査方法において、耐圧検査の際に印加する電圧波形は、
図3に示す電圧波形(波形W1及び波形W3)に限定されるものではなく、例えば、
図6に示すような電圧波形であってもよい。
【0057】
図7(a)は、電圧印加部11が、基準電圧(例えば、0V)から第1の電圧V1に上昇させた後に、所定の期間経過後に、2段の階段状に、第2の電圧V2に上昇させて、検査電圧を半導体装置2に印加する場合の一例を示している。波形W4は、本実施形態における2段の階段状に検査電圧を印加する電圧波形(第3の電圧形成)を示している。
また、
図7(b)は、電圧印加部11が、基準電圧(例えば、0V)から第1の電圧V1に上昇させた後に、所定の電圧上昇率で第2の電圧V2に上昇させて、検査電圧を半導体装置2に印加する場合の別の一例を示している。波形W5は、本実施形態における第1の電圧V1から所定の電圧上昇率で第2の電圧V2に上昇させる検査電圧の別の一例を示す電圧波形(第4の電圧形成)を示している。
また、
図7において、グラフの横軸は、時間を示し、縦軸は、電圧を示している。
【0058】
本実施形態による耐圧検査の際に印加する電圧波形は、例えば、
図7(a)に示す波形W4、及び
図7(b)に示す波形W5であった場合でも、上述した
図3に示す電圧波形(波形W1及び波形W3)と同様である。すなわち、
図7(a)に示す波形W4、及び
図6(b)に示す波形W5であった場合でも、上述した2つの電界の差(E1−E2)が、従来の矩形波の場合よりも小さくなり、放電の発生を低減することができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態による半導体装置2の検査方法は、電圧印加ステップと、検査ステップとを含む。電圧印加ステップにおいて、検査装置1が、基準電圧(例えば、0V)から耐圧実力値より低い第1の電圧V1に上昇させた後に、第1の電圧V1より高い第2の電圧V2に上昇させて、検査電圧を半導体装置2に印加する。検査ステップにおいて、検査装置1が、電圧印加ステップによって検査電圧を印加させて、半導体装置2の耐圧を検査する。
【0060】
これにより、第1の電圧V1に上昇させた後に第2の電圧V2に上昇させることで、上述した
図5(b)に示すように、半導体装置2の電極(メタル領域26)と半導体基板WF(N−領域21)との間で電子やイオンの再配置が起こり、検査電圧の印加による電界E1とは逆方向の電界E2が発生する。この逆方向の電界E2により、検査電圧の印加による電界E1が低減されるため、本実施形態による半導体装置2の検査方法では、半導体装置2の耐圧検査の際の放電を低減することができる。このように、本実施形態による半導体装置2の検査方法では、例えば、絶縁性のガスの吹き付けや絶縁液浸などを行う特殊な装置を用いることなく、放電を低減することができる。
【0061】
また、本実施形態では、電圧印加ステップにおいて、検査装置1が、基準電圧(例えば、0V)から複数段の階段状(例えば、2段から170段の階段状)に、第2の電圧V2に上昇させて、検査電圧を半導体装置2に印加する。
これにより、本実施形態による半導体装置2の検査方法は、従来の矩形波に比べて、検査電圧を階段状にゆっくり上昇させるため、
図6に示すように、半導体装置2の耐圧検査の際の放電を低減することができる。
【0062】
また、本実施形態では、電圧印加ステップにおいて、検査装置1が、階段状に電圧を上昇させる際に、各段の時間間隔を100mS(ミリ秒)から1500mSの間の値で上昇させて、検査電圧を半導体装置2に印加する。
これにより、本実施形態による半導体装置2の検査方法は、従来の矩形波に比べて、検査電圧を階段状にゆっくり上昇させるため、
図6に示すように、半導体装置2の耐圧検査の際の放電を低減することができる。
【0063】
また、本実施形態では、電圧印加ステップにおいて、検査装置1が、基準電圧(例えば、0V)から第1の電圧V1に上昇させた後に、所定の電圧上昇率で第2の電圧V2に上昇させて、検査電圧を半導体装置2に印加する。
これにより、本実施形態による半導体装置2の検査方法は、従来の矩形波に比べて、検査電圧をゆっくり上昇させるため、
図6に示すように、半導体装置2の耐圧検査の際の放電を低減することができる。
【0064】
また、本実施形態では、電圧印加ステップにおいて、検査装置1が、1秒間に500V(ボルト)から5000Vの電圧上昇率になるように、第1の電圧V1から第2の電圧V2に上昇させる。
これにより、本実施形態による半導体装置2の検査方法は、従来の矩形波に比べて、検査電圧をゆっくり上昇させることができるため、電子やイオンの再配置により発生する電界E2をより大きくすることができる。
【0065】
また、本実施形態では、電圧印加ステップにおいて、検査装置1が、基準電圧(例えば、0V)から第1の電圧V1に上昇させた後に、所定の期間経過後に、第2の電圧に2段の階段状に上昇させて、検査電圧を半導体装置2に印加する。
これにより、本実施形態による半導体装置2の検査方法は、上述した第1の波形の場合と同様に、半導体装置2の耐圧検査の際の放電を低減することができる。
【0066】
また、本実施形態では、検査ステップにおいて、検査装置1が、検査電圧を半導体装置2に印加した際に、所定の電流以上(例えば、1mA)の電流値が検出された検査電圧の値を、耐圧実力値として検出し、検出した当該耐圧実力値に基づいて、半導体装置2の耐圧を検査する。すなわち、検査装置1が、電圧印加電流測定により半導体装置2の耐圧を検査する。
これにより、本実施形態による半導体装置2の検査方法は、検査電圧を任意の電圧上昇率で半導体装置2に印加しつつ、半導体装置2の耐圧実力値を計測することが可能になる。そのため、本実施形態による半導体装置2の検査方法は、従来の矩形波(電流印加電圧測定)の検査方法に比べて、半導体装置2の耐圧検査の際の放電を低減することができる。
【0067】
また、本実施形態では、電圧印加ステップにおいて、検査装置1が、半導体装置2の定格耐圧値以下である第1の電圧V1に上昇させた後に、第2の電圧V2に上昇させて、検査電圧を半導体装置2に印加する。
これにより、本実施形態による半導体装置2の検査方法は、放電が発生しないと想定され、耐圧実力値より低い電圧である半導体装置2の定格耐圧値以下に上昇させた後に、第2の電圧V2に上昇させることにより、電子やイオンの再配置による電界E2をより大きくすることができる。
【0068】
また、本実施形態では、検査装置1は、ウェハ状態の半導体装置2を検査する。
これにより、本実施形態による半導体装置2の検査方法は、例えば、絶縁性のガスの吹き付けや絶縁液浸などを行う特殊なプローバを用いることなく、放電を低減することができる。また、本実施形態による半導体装置2の検査方法は、上述した
図2(b)に示す検査対象の半導体装置2のメタル領域26と、隣接する半導体装置2のメタル領域26との間の放電モデルに対しても放電を低減することができる。
【0069】
また、本実施形態による半導体装置2の製造方法は、半導体装置2を検査する検査工程を含む半導体装置2の製造方法であって、検査工程には、電圧印加ステップと、検査ステップとを含んでいる。電圧印加ステップにおいて、検査装置1が、基準電圧(例えば、0V)から耐圧実力値より低い第1の電圧V1に上昇させた後に、第1の電圧V1より高い第2の電圧V2に上昇させて、検査電圧を半導体装置2に印加する。検査ステップにおいて、検査装置1が、電圧印加ステップによって検査電圧を印加させて、半導体装置2の耐圧を検査する。
これにより、本実施形態による半導体装置2の製造方法は、上述した半導体装置2の検査方法と同様の効果を奏し、例えば、絶縁性のガスの吹き付けや絶縁液浸などを行う特殊な装置を用いることなく、放電を低減することができる。
【0070】
また、本実施形態による検査装置1は、半導体装置2を検査する検査装置であって、電圧印加部11と、検査部(電流検出部12及び検査判定部142)とを備える。電圧印加部11は、基準電圧(例えば、0V)から耐圧実力値より低い第1の電圧V1に上昇させた後に、第1の電圧V1より高い第2の電圧V2に上昇させて、検査電圧を半導体装置2に印加する。検査部(電流検出部12及び検査判定部142)は、電圧印加部11によって検査電圧を印加させて、半導体装置2の耐圧を検査する。
これにより、本実施形態による検査装置1は、上述した半導体装置2の検査方法と同様の効果を奏し、例えば、絶縁性のガスの吹き付けや絶縁液浸などを行う特殊な装置を用いることなく、放電を低減することができる。
【0071】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の実施形態において、半導体装置2は、ショットキーバリアダイオードである例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、PNダイオード、サイリスタ、MOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)、IGBT(絶縁ゲート型バイパーラトランジスタ)などであってもよい。
【0072】
また、上記の実施形態において、半導体装置2は、SiC(炭化ケイ素)の半導体基板WFを用いている例を説明したが、これに限定されるものではない。本実施形態による検査装置1及び検査方法は、放電が発生するような高電圧により耐圧を検査するものであれば、他の半導体基板を用いた半導体装置に適用してもよい。
また、上記の実施形態において、半導体装置2がウェハ状態で検査する例を説明したが、例えば、個片状や実装後の検査に、本実施形態による検査装置1及び検査方法を適用してもよい。
【0073】
また、上述した
図2に示すように、基準電圧又は第1の電圧V1から第2の電圧V2に電圧を上昇させる電圧上昇率又は上昇させる時間間隔を、半導体装置2の放電モデルにおける放電箇所の距離(A1又はA1+B+A2)に応じて、放電の発生し易さは変化する。そこで、本実施形態による検査装置1及び検査方法は、この放電箇所の距離(A1又はA1+B+A2)に応じて、上述した電圧上昇率、階段状に電圧を上昇させる際の各段の時間間隔、及び基準電圧(例えば、0V)から第1の電圧V1まで上昇させる時間を定めてもよい。
【0074】
なお、上述の検査装置1は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した検査装置1の処理過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0075】
また、上述した検査装置1が備える機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。