特許第6971089号(P6971089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ FDK株式会社の特許一覧

特許6971089固体電解質の製造方法、全固体電池用電極材料の製造方法、および全固体電池の製造方法
<>
  • 特許6971089-固体電解質の製造方法、全固体電池用電極材料の製造方法、および全固体電池の製造方法 図000004
  • 特許6971089-固体電解質の製造方法、全固体電池用電極材料の製造方法、および全固体電池の製造方法 図000005
  • 特許6971089-固体電解質の製造方法、全固体電池用電極材料の製造方法、および全固体電池の製造方法 図000006
  • 特許6971089-固体電解質の製造方法、全固体電池用電極材料の製造方法、および全固体電池の製造方法 図000007
  • 特許6971089-固体電解質の製造方法、全固体電池用電極材料の製造方法、および全固体電池の製造方法 図000008
  • 特許6971089-固体電解質の製造方法、全固体電池用電極材料の製造方法、および全固体電池の製造方法 図000009
  • 特許6971089-固体電解質の製造方法、全固体電池用電極材料の製造方法、および全固体電池の製造方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971089
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】固体電解質の製造方法、全固体電池用電極材料の製造方法、および全固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20211111BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20211111BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20211111BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20211111BHJP
   C01B 25/37 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H01M10/0562
   H01M4/139
   H01M10/0585
   H01B13/00 Z
   C01B25/37 Z
   C01B25/37 J
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-165191(P2017-165191)
(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公開番号】特開2019-46559(P2019-46559A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 友弘
(72)【発明者】
【氏名】藤井 信三
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−177964(JP,A)
【文献】 特開2013−155068(JP,A)
【文献】 特開2013−127945(JP,A)
【文献】 特開2001−002416(JP,A)
【文献】 特開2017−157307(JP,A)
【文献】 特開2017−054634(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/064351(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0562
H01M 4/139
H01M 10/0585
H01B 13/00
C01B 25/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0<x≦1として、一般式Li1+xAlGe2−x(POで表される固体電解質の製造方法であって、
GeOと複数の水溶性化合物とを原料とし、
前記GeOを水に混合する第1混合ステップと、
前記第1混合ステップにて得た混合液にアンモニアを加えて液中の前記GeOを溶解させて第1の溶液を得るとともに、当該第1の溶液のアンモニア濃度を調整するアンモニア濃度調整ステップと、
前記第1の溶液に前記複数の水溶性化合物を混合して第2の溶液を得る第2混合ステップと、
前記第2の溶液を熱処理して非晶質の前記固体電解質を得るガラス化ステップと、
非晶質の前記固体電解質を焼成して前記固体電解質の結晶を得る焼成ステップと、
を含み、
前記アンモニア濃度調整ステップでは、前記第1の溶液のアンモニア濃度が、全ての前記水溶性化合物が溶解する濃度となるように調整する、
ことを特徴とする固体電解質の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の固体電解質の製造方法において、
前記複数の水溶性化合物は、CHCOOLi・2HO、Al(NO・9HO、NHPOであり、
前記アンモニア濃度調整ステップでは、前記第1の溶液のアンモニア濃度を0.2M以上1.35M以下に調整する、
ことを特徴とする固体電解質の製造方法。
【請求項3】
全固体電池用の電極活物質の粒子表面に、0<x≦1として、一般式Li1+xAlGe2−x(POで表される固体電解質が被膜されてなる電極材料の製造方法であって、
GeOと、複数の水溶性化合物とを前記固体電解質の原料とし、
前記GeOを水に混合する第1混合ステップと、
前記第1混合ステップにて得た混合液にアンモニアを加えて液中の前記GeOを溶解させて第1の溶液を得るとともに、当該第1の溶液のアンモニア濃度を調整するアンモニア濃度調整ステップと、
前記第1の溶液に前記複数の水溶性化合物を混合して第2の溶液を得る第2混合ステップと、
粉体状の前記電極活物質を前記第2の溶液に混合する活物質混合ステップと、
前記活物質混合ステップにて得た混合液を前記固体電解質が結晶化する焼成温度よりも低い温度で熱処理して非晶質の固体電解質を得るガラス化ステップと、
を含み、
前記アンモニア濃度調整ステップでは、前記第1の溶液のアンモニア濃度が、全ての前記水溶性化合物が溶解する濃度となるように調整する、
ことを特徴とする全固体電池用電極材料の製造方法。
【請求項4】
一体的な焼結体で、正極用の電極活物質と固体電解質を含む正極層、固体電解質を含む固体電解質層、および負極用の電極活物質と固体電解質を含む負極層がこの順に積層されてなる積層電極体を備えた全固体電池の製造方法であって、
0<x≦1として、一般式Li1+xAlGe2−x(POを前記固体電解質として、非晶質状態の前記固体電解質と前記正極用の電極活物質とを混合した正極材料と、非晶質状態の前記固体電解質と前記負極用の電極活物質とを混合した負極材料を作製する電極材料作製ステップと、
層状の前記正極材料と層状の前記負極材料との間に、前記固体電解質を含んだ層状の固体電解質材料を挟持してなる積層体を焼成することで前記積層電極体を作製する焼成ステップと、
を含み、
前記電極材料作製ステップでは、
GeOと複数の水溶性化合物とを原料とした固体電解質を溶液法により作製する固体電解質作製ステップと、
前記固体電解質作製ステップにより前記固体電解質を作製する過程で前記原料に粉体状の電極活物質を混合する活物質混合ステップと、
を実行し、
前記固体電解質作製ステップでは、
前記GeOを水に混合する第1混合ステップと、
前記第1混合ステップにて得た混合液にアンモニアを加えて液中の前記GeOを溶解させて第1の溶液を得るとともに、当該第1の溶液のアンモニア濃度を調整するアンモニア濃度調整ステップと、
前記第1の溶液に前記複数の水溶性化合物を混合して第2の溶液を得る第2混合ステップと、
前記第2の溶液を前記固体電解質が結晶化する焼成温度よりも低い温度で熱処理して非晶質の固体電解質を得るガラス化ステップと、
を含み、
前記アンモニア濃度調整ステップでは、前記第1の溶液のアンモニア濃度が、全ての前記水溶性化合物が溶解する濃度となるように調整し、
前記活物質混合ステップを前記第2混合ステップと前記ガラス化ステップとの間に実行する、
ことを特徴とする全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体電解質の製造方法、全固体電池用電極材料の製造方法、および全固体電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、各種二次電池の中でもエネルギー密度が高いことで知られている。しかし一般に普及しているリチウム二次電池は、電解質に可燃性の有機電解液を用いているため、リチウム二次電池では、液漏れ、短絡、過充電などに対する安全対策が他の電池よりも厳しく求められている。そこで近年、電解質に酸化物系や硫化物系の固体電解質を用いた全固体電池に関する研究開発が盛んに行われている。固体電解質は、固体中でイオン伝導が可能なイオン伝導体を主体として構成される材料であり、従来のリチウム二次電池のように可燃性の有機電解液に起因する各種問題が原理的に発生しない。そして全固体電池は層状の正極(正極層)と層状の負極(負極層)との間に層状の固体電解質(電解質層)が狭持されてなる一体的な焼結体(以下、積層電極体とも言う)に集電体を形成した構造を有している。
【0003】
積層電極体の製造方法としては金型を用いて原料粉体を加圧して得た成形体を焼成する方法(以下、圧縮成形法とも言う)や周知のグリーンシートを用いた方法(以下、グリーンシート法)などがある。圧縮成形法では、金型内に正極層、固体電解質層、および負極層の各層の原料粉体を順次層状に充填して一軸方向に加圧することによって得た成形体を焼成して積層電極体を得る。
【0004】
グリーンシート法は、正極活物質と固体電解質を含むスラリー状の正極層材料、負極活物質と固体電解質を含むスラリー状の負極層材料、および固体電解質を含むスラリー状の固体電解質層材料をそれぞれシート状(グリーンシート)に成形するとともに、固体電解質層材料のグリーンシートを正極層材料と負極層材料のグリーンシートで挟持した積層体を焼成して焼結体にすることで作製される。なお正極層および負極層(以下、電極層とも言う)に含まれている固体電解質は、粉体状の正極活物質および負極活物質の粒子間に介在して電極層にイオン伝導性を発現させる機能を担っている。
【0005】
正極活物質や負極活物質(以下、総称して電極活物質とも言う)としては従来のリチウム二次電池に使用されていた材料を使用することができる。また全固体電池では可燃性の電解液を用いないことから、より高い電位差が得られる電極活物質についても研究されている。固体電解質としては、一般式Liで表されるNASICON型酸化物系の固体電解質があり、当該NASICON型酸化物系の固体電解質としては、Li1+xAlGe2−x(PO(但し、0<x≦1、以下、LAGPとも言う)がよく知られている。なお、以下の特許文献1にはx=0.5のLAGPについて記載されている、そしてLAGPは、複数の化合物を含む粉体状の原料を高温で焼成する固相法によって製造するのが一般的である。なお、LAGPの製造方法としては、他に、金属アルコキシドを原料とした周知のゾルゲル法があり、以下の非特許文献1にはゾルゲル法によるLAGPの作製方法について記載されている。また、以下の特許文献2には、電極活物質の表面にイオン導電性を有する被膜を形成する方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−45738号公報
【特許文献2】国際公開第2014/003036号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Masashi Kotobuki, Keigo Hoshina, Yasuhiro Isshiki, Kiyoshi Kanamura、「PREPARATION OF Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3 SOLID ELECTROLYTE BY SOL-GEL METHOD」、Phosphorus Research Bulletin 、Vol.25(2011)、 pp.061-063
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
全固体電池の基本構成である積層電極体は、固体電解質層を正極層と負極層で挟持した構造の焼結体からなる。上述したように、固体電解質は、固体電解質層だけではなく電極層にも含まれている。そして、電極層のイオン導電性を高めるためには電極活物質の粒子間に固体電解質の粒子を介在させるのではなく、電極活物質の粒子表面に固体電解質の被膜を形成することがより好ましい。そしてLAGPは、焼成によって結晶化することでイオン伝導度を発現することから、電極活物質の粒子表面にLAGPの被膜を形成するためには、焼成前の電極層中の粉体材料(以下、電極材料とも言う)にLAGPを非晶質の状態で含ませる必要がある。
【0009】
しかし、固相法を用いてLAGPの被膜を電極活物質の粒子表面に形成する場合、粉体状の非晶質のLAGPと粉体状の電極活物質とを混合した電極材料を焼成することになるため、異なる粉体材料同士を極めて均一に混合することが難しい。異なる粉体材料同士が均一に混合されなければ、電極層中のイオン伝導度に偏りが生じる可能性がある。
【0010】
一方、ゾルゲル法では、原料となる金属アルコキシドを含んだゾルと電極活物質を混合した上でゾルをゲル化し、さらに熱処理によって生成させた非晶質のLAGPを焼成するという手順でLAGPの結晶を得る。そして、ゾルゲル法を用いて電極活物質の粒子表面にLAGPの被膜を形成する場合、非晶質のLAGPが生成される以前にLAGPの原料と電極活物質を混合することができる。そのため、金属活物質の粒子表面に非晶質のLAGPの被膜を効果的に形成することができる。
【0011】
しかしながら、ゾルゲル法を用いてLAGPを作製する場合、原料に高価な金属アルコキシドを用いるため原料コストが増大する。また、金属アルコキシドが水と反応することから、その反応を抑制するために乾燥雰囲気内で被膜層となる化合物を作製する必要がある。したがって、ゾルゲル法によってLAGPを製造したり、LAGPの被膜を電極活物質の粒子表面に形成したりするためには、その製造設備に掛かるコストも増大する。
【0012】
そこで本発明は、全固体電池の電極層に含まれる電極活物質に被膜を形成するのに適したLAGPからなる固体電解質、電極活物質の粒子表面にLAGPからなる固体電解質の被膜が形成されてなる全固体電池用電極材料、および全固体電池を簡素な手順でより安価に製造するための方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、0<x≦1として、一般式Li1+xAlGe2−x(POで表される固体電解質の製造方法であって、
GeOと複数の水溶性化合物とを原料とし、
前記GeOを水に混合する第1混合ステップと、
前記第1混合ステップにて得た混合液にアンモニアを加えて液中の前記GeOを溶解させて第1の溶液を得るとともに、当該第1の溶液のアンモニア濃度を調整するアンモニア濃度調整ステップと、
前記第1の溶液に前記複数の水溶性化合物を混合して第2の溶液を得る第2混合ステップと、
前記第2の溶液を熱処理して非晶質の前記固体電解質を得るガラス化ステップと、
非晶質の前記固体電解質を焼成して前記固体電解質の結晶を得る焼成ステップと、
を含み、
前記アンモニア濃度調整ステップでは、前記第1の溶液のアンモニア濃度が、全ての前記水溶性化合物が溶解する濃度となるように調整する、 ことを特徴とする固体電解質の製造方法としている。
【0014】
上記固体電解質の製造方法において、
前記複数の化合物は、CHCOOLi・2HO、Al(NO・9HO、NHPOであり、
前記アンモニア濃度調整ステップでは、前記第1の溶液のアンモニア濃度を0.2M以上1.35M以下に調整する、
固体電解質の製造方法とすることもできる。
【0015】
本発明の態様には、全固体電池用の電極活物質の粒子表面に、0<x≦1として、一般式Li1+xAlGe2−x(POで表される固体電解質が被膜されてなる電極材料の製造方法も含まれており、当該電極材料の製造方法は、
GeOと、複数の水溶性化合物とを前記固体電解質の原料とし、
前記GeOを水に混合する第1混合ステップと、
前記第1混合ステップにて得た混合液にアンモニアを加えて液中の前記GeOを溶解させて第1の溶液を得るとともに、当該第1の溶液のアンモニア濃度を調整するアンモニア濃度調整ステップと、
前記第1の溶液に前記複数の水溶性化合物を混合して第2の溶液を得る第2混合ステップと、
粉体状の前記電極活物質を前記第2の溶液に混合する活物質混合ステップと、
前記活物質混合ステップにて得た混合液を前記固体電解質が結晶化する焼成温度よりも低い温度で熱処理して非晶質の固体電解質を得るガラス化ステップと、
を含み、
前記アンモニア濃度調整ステップでは、前記第1の溶液のアンモニア濃度が、全ての前記水溶性化合物が溶解する濃度となるように調整する、
ことを特徴とする全固体電池用電極材料の製造方法としている。
【0016】
また、本発明のその他の態様は、一体的な焼結体で、正極用の電極活物質と固体電解質を含む正極層、固体電解質を含む固体電解質層、および負極用の電極活物質と固体電解質を含む負極層がこの順に積層されてなる積層電極体を備えた全固体電池の製造方法であって、
0<x≦1として、一般式Li1+xAlGe2−x(POを前記固体電解質として、非晶質状態の前記固体電解質と前記正極用の電極活物質とを混合した正極材料と、非晶質状態の前記固体電解質と前記負極用の電極活物質とを混合した負極材料を作製する電極材料作製ステップと、
層状の前記正極材料と層状の前記負極材料との間に、前記固体電解質を含んだ層状の固体電解質材料を挟持してなる積層体を焼成することで前記積層電極体を作製する焼成ステップと、
を含み、
前記電極材料作製ステップでは、
GeOと複数の水溶性化合物とを原料とした固体電解質を溶液法により作製する固体電解質作製ステップと、
前記固体電解質作製ステップにより前記固体電解質を作製する過程で前記原料に粉体状の電極活物質を混合する活物質混合ステップと、
を実行し、
前記固体電解質作製ステップでは、
前記GeOを水に混合する第1混合ステップと、
前記第1混合ステップにて得た混合液にアンモニアを加えて液中の前記GeOを溶解させて第1の溶液を得るとともに、当該第1の溶液のアンモニア濃度を調整するアンモニア濃度調整ステップと、
前記第1の溶液に前記複数の水溶性化合物を混合して第2の溶液を得る第2混合ステップと、
前記第2の溶液を前記固体電解質が結晶化する焼成温度よりも低い温度で熱処理して非晶質の固体電解質を得るガラス化ステップと、
を含み、
前記アンモニア濃度調整ステップでは、前記第1の溶液のアンモニア濃度が、全ての前記水溶性化合物が溶解する濃度となるように調整し、
前記活物質混合ステップを前記第2混合ステップと前記ガラス化ステップとの間に実行する、
ことを特徴とする全固体電池の製造方法としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、全固体電池の電極層に含まれる電極活物質に被膜を形成するのに適したLAGPからなる固体電解質、電極活物質の粒子表面にLAGPからなる固体電解質の被膜が形成されてなる全固体電池用電極材料、および全固体電池を簡素な手順でより安価に製造するための方法が提供される。なお、その他の効果については以下の記載で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施例に係る固体電解質の製造方法を示す図である。
図2】上記第1の実施例に係る方法で作製された固体電解質のXRD測定結果を示す図である。
図3】上記第1の実施例に係る方法で作製された固体電解質のイオン伝導特性を示す図である。
図4】上記第1の実施例に係る方法を用いて全固体電池用電極材料を製造する手順の一例を示す図である。
図5】本発明の第2の実施例に係る全固体電池用電極材料の製造方法を示す図である。
図6図4に示した手順を用いて作製した全固体電池用電極材料のXRD測定結果を示す図である。
図7】上記第2の実施例に係る全固体電池用電極材料のXRD測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実用的な全固体電池を実現させるためには、電極活物質の表面に被膜として形成されるLAGPをより簡素な方法でより安価に作製する必要がある。このような要求に対し、本発明の実施例では、LAGPを溶液法あるいは液相法と呼ばれる方法(以下、溶液法と総称することがある)を用いて作製することとしている。そして、本実施例では、当初の溶媒として水を用いながら、原料を溶媒に混合する順番や、その混合過程にて溶媒を改質させている。それによって、全ての原料を溶媒に溶解させ、単相のLAGPを作製することができる。
【0020】
そして、以下に示す具体的な実施例では、LAGPの原料となる化合物として、二酸化ゲルマニウム(GeO:株式会社高純度化学研究所製)、酢酸リチウム(CHCOOLi・2HO:和光純薬工業株式会社製)、硝酸アルミニウム(Al(NO・9HO:関東化学工業株式会社製)、リン酸二水素アンモニウム(NHPO:関東化学工業株式会社製)を用いることとしている。
【0021】
===基本となる実施例===
上記の原料と溶液法とによってLAGPの作製を可能にするために、まず、各原料の水に対する溶解性を調べた。そして、各化合物の水や各種溶媒に対する溶解性に基づいて化合物を溶媒に混合する順番を決定した。なお、水などの溶媒に対する溶解性の有無については目視により判定した。化合物が溶媒に溶解すると、無色透明の溶液となるが、溶解しない場合は化合物が沈殿して溶媒が白濁する。そして、上記原料のうち、GeOのみ、水溶性がなく、水に対して難溶性であった。また、GeOを含めたLAGPの原料は、全て、アルカリ性の溶媒によって溶解することが分かった。
【0022】
そこで、本発明の実施例では、最初にGeOを水に混合し、その水をアルカリ性に改質してGeOを溶解させる。その上で他の化合物を改質後の水に溶解させることとした。ここでは、アンモニア水に各原料を溶解させた。アンモニア水は、当初の溶媒である水にアンモニアを溶解させたり、高濃度のアンモニア水を水に混合したりして所定のアンモニア濃度に容易に調整することができる。また、アンモニアやアンモニア水は入手しやすく安価でもある。以上により、本発明の基本となる実施例に係る固体電解質(以下、LAGPとも言う)の製造方法は、最初に水にGeOを混合するとともに、その水をアンモニア水にしてGeOを溶解させ、その上で他のLAGPの原料をアンモニア水に溶解させている。そして、全ての原料が溶解した溶液を熱処理することでLAGPを結晶化させている。
【0023】
次に、上述した基本的なLAGPの製造方法を用いつつ、特性に優れたLAGPを作製するために、まず、各原料のアンモニア水に対する溶解性について検討した。その結果、全ての原料が、0.2mol/L(以下、M)のアンモニア濃度のアンモニア水に溶解した。そこで、次に、アンモニア濃度が0.2Mよりも高いアンモニア水を作製し、濃度が異なるアンモニア水のそれぞれに各原料を溶解させてみた。
【0024】
以下の表1にLAGPの原料のアンモニア水に対する溶解性を示した。
【0025】
【表1】
表1に示したように、各原料を、アンモニア濃度が0Mの水と、アンモニア濃度が0.255M〜7.2Mのアンモニア水に溶解させてみた。そして水に溶解しなかったのはGeOのみであり、他の化合物は水に溶解した。また、GeOと酢酸リチウムは、7.2Mの高濃度のアンモニア水まで溶解し、硝酸アルミニウムは、1.35Mの濃度のアンモニア水に溶解し、それよりも高い濃度のアンモニア水には溶解しなかった。またリン酸二水素アンモニウムは、1.8Mよりも濃度が高いアンモニア水には溶解しなかった。以上の溶媒に対する溶解性の検討結果より、上記原料を用いて溶液法でLAGPを作製するためには、GeOを水に混合した後、その水に高濃度のアンモニア水を加えるなどして、アンモニア濃度が0.2M以上1.35M以下に調整されたアンモニア水にGeO以外の原料を混合して溶解させることになる。そして、全ての原料を溶解させた溶液を熱処理することでLAGPを作製することになる。
【0026】
===第1の実施例===
次に、本発明の第1の実施例に係る固体電解質の製造方法として、アンモニアを含んだ溶媒に溶解させたLAGPの原料からLAGPを作製する手順を挙げる。図1に第1の実施例に係る固体電解質の製造方法の手順を示した。溶媒として水の入った容器を用意し(s1)、その水にGeOを混合する(s2)。なお、この工程(以下、第1混合工程とも言う)ではGeOは溶媒である水に溶解しない。次に、GeOと水との混合液にアンモニアを加え、溶媒が所定のアンモニア濃度となるように調製する(s3)。ここでは28Mの高濃度アンモニア水を水に加えることで溶媒のアンモニア濃度を調製した。GeOは、このアンモニア濃度調整工程(s3)によって溶解する。アンモニア濃度が異なるGeOのアンモニア水溶液のそれぞれに、GeO以外のLAGPの原料を混合する(s4)。なお、図中では、GeOのアンモニア水溶液に、CHCOOLi・2HO、Al(NO・9HO、NHPOをこの順で混合しているが、GeO以外の各原料を混合する順番は、アンモニア濃度調整工程(s3)より後であれば、互いに前後していてもよい。
【0027】
以上のようにしてLAGPの全ての原料を第1の溶液に混合する工程(以下、第2混合工程(s4)とも言う)を実施したならば、その混合液を熱処理して最終的にLAGPの結晶を得る工程に移行する。ここでは、まず、100℃の温度のホットプレート上に容器を置いて混合液を攪拌しながら溶媒を蒸発させる溶媒除去工程(s5)を行った上で、容器内に残存している材料をオーブンなどを用いて260℃の温度で乾燥させる(s6)。さらに、この乾燥工程(s6)によって得た容器内の材料を450℃の温度で2時間、窒素雰囲気で熱処理する(s7)。この熱処理(s7)は、非晶質のLAGPを得るための工程であるが、ここでは、LAGPの被膜を電極活物質の粒子表面に形成することを想定した条件でこの工程(以下、コーティング焼成工程(s7)とも言う)を実施している。そして、最後に焼成工程(s8)によってLAGPを結晶化させる。
【0028】
ところで、第1の実施例に係る固体電解質の製造方法では、コーティング焼成工程(s7)によって非晶質のLAGPを粉体状の電極活物質の粒子表面に付着させ、その上で焼成工程(s8)によってLAGPを結晶化させることを想定している。しかし、全固体電池用の電極活物質として知られているリン酸バナジウムリチウム(Li(PO)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO)、二酸化チタン(TiO)は、700℃以上の温度でLAGPと反応してしまう可能性がある。そのため、実際にLAGPの被膜を電極活物質の粒子表面に形成する際には、コーティング焼成工程(s7)では、焼成温度よりも低い温度で熱処理してLAGPを非晶質の状態で電極活物質の粒子表面に付着させ、焼成工程(s8)では、700℃の温度よりも低い温度でLAGPを結晶化させる必要がある。そして、ここでは、窒素雰囲気で625℃、2時間の焼成条件でLAGPを結晶化させた。
【0029】
<特性評価>
第1の実施例に係る方法で作製したLAGPの特性を評価するために、アンモニア濃度調整工程(s3)において、アンモニア濃度が異なる各種溶媒にGeOを溶解させた。そして、アンモニア濃度が異なるそれぞれの溶媒とLAGPの原料とを混合してなる混合液から作製したLAGPをサンプルとした。また、溶液法を用いた手順によって作製したサンプルに加え、これらのサンプルの特性を評価する際の基準となるサンプルとして、固相法を用いて作製したLAGP(以下、第1の参考例とも言う)を用意した。
【0030】
第1の参考例に係るサンプルは、例えば、以下の手順で作製することができる。まず、LAGPの原料となるLiCO、Al、GeO、NHPOの粉末を所定の組成比になるように秤量して磁性乳鉢やボールミルで混合し、その混合物をアルミナルツボなどに入れて300℃〜400℃の温度で3h〜5hの時間を掛けて仮焼成する。仮焼成によって得られた仮焼き粉体を1200℃〜1400℃の温度で1h〜2h熱処理することで、仮焼き粉体を溶解させる。そしてその溶解した試料を急冷してガラス化することで、非晶質のLAGPからなる粉体を得る。次にその非晶質のLAGP粉体をボールミルなどの粉砕装置を用いて粉砕した上で焼成し、LAGPを結晶化させる。なお、焼成条件については、第1の実施例と同じにする。
【0031】
以上のようにして作製した各種サンプルの幾つかについて、X線回折装置(XRD)を用いて結晶構造を調べた。図2にサンプルのXRD測定結果を示した。図2に示したように、XRD測定を行った全てのサンプルでLAGPの結晶が生成されていることが確認できた。そして、溶媒のアンモニア濃度が0.225M〜1.35Mのサンプルでは、第1の参考例に係るサンプルと同様に異相の生成が確認されなかった。しかし、アンモニア濃度が1.8Mと3.6MのサンプルではLAGP以外の異相が生成した。これは、溶媒に溶解しなかった原料が存在したことに起因しているものと考えられる。
【0032】
次に、作製したサンプルのイオン伝導度を測定した。イオン伝導度の測定に際しては、例えば、焼成前のコーティング焼成工程によって得られた粉体状のLAGPを、200kgf/cmの圧力でφ20mmのペレットとなるようにプレス成形し、そのペレットを焼成して得た円板状の焼結体の両面に電極としてAuを0.1μmの厚さで成膜し、これをイオン伝導度の測定用サンプルとした。そしてサンプルのインピーダンスを測定し、イオン伝導度を求めた。
【0033】
図3に各サンプルのイオン伝導度σ(S/cm)を示した。ここではアンモニア濃度を横軸とし、イオン伝導度σを縦軸としたグラフを示した。なお、縦軸は対数目盛になっている。図3に示したように、アンモニア濃度が0.5M以上の溶媒に原料を溶解させて作成したサンプルでは、アンモニア濃度とイオン伝導度が、ほぼ、傾きが負となる比例関係にあることが確認できた。すなわちアンモニア濃度の増大に伴ってイオン伝導度σが低下した。そして、1.35M以下であれば、1×10−6(S/cm)以上の実用可能なイオン伝導度σが得られた。なお、アンモニア濃度が0.5M未満のサンプルでは、1×10−6(S/cm)と同等かそれ以上のイオン伝導度σが得られているが、アンモニア濃度とイオン導電度σとの関係が上記の比例関係から外れていた。また、アンモニア濃度が同じサンプル同士でイオン伝導度σにバラツキが見られた。これは、溶媒のアンモニア濃度が低いと、GeOが溶媒に完全に溶解せず、サンプル間でのLAGPの結晶構造に個体差があったためと思われる。
【0034】
固相法により作製した第1の参考例に係るサンプルは、1×10−5(S/cm)以上のイオン伝導度σを示した。そして、第1実施例に係る方法で作製したLAGPについても、溶媒のアンモニア濃度を適切に調整すれば、1×10−5(S/cm)に近いイオン伝導度σが得られた。第1の実施例に用いた原料であれば、0.45Mのアンモニア濃度で最も高いイオン伝導度σが得られた。このように、第1の実施例に係る固体電解質の製造方法によれば、異相が少なく、実用的なイオン伝導度σを有するLAGPを溶液法を用いて作製することができる。したがって、LAGPをより安価に提供することが可能となる。
【0035】
===第2の実施例===
第1の実施例に係る固体電解質の製造方法では、溶液法を用いてLAGPを作製していた。そして、第1の実施例に係る固体電解質の製造方法を応用すれば、粉体状の電極活物質を液状のLAGPの原料に混合することができ、LAGPの被膜を電極活物質の粒子表面に効果的に形成することが可能となる。しかし、第1の実施例の方法によってLAGPを作製する過程で電極活物質を混合する時期や、電極活物質の混合条件、あるいは電極活物質を混合した後の熱処理の条件などによっては、実用的な特性を備えた電極材料が得られない可能性もある。そこで、本発明の第2の実施例として、第1の実施例を応用して、電極活物質の粒子表面にLAGPの被膜を効果的に形成するための電極材料の製造方法を挙げる。なお、第2の実施例では、電極活物質にTiOを用いた。また、第2の実施例により作製した電極材料の特性を評価するために、LAGPを作成する過程において、電極活物質を混合する時期や焼成工程における熱処理の温度が異なる各種電極材料をサンプルとして作製した。
【0036】
以下の表2に各サンプルの作製条件を示した。
【0037】
【表2】
図4図5に各サンプルの作製手順を示した。図4は、表2におけるサンプル1〜3の作製手順を示しており、図1に示した第1の実施例に係るLAGPの製造手順に対し、アンモニア濃度調整工程(s3)と第2混合工程(s4)との間に電極活物質を混合する電極活物質の混合工程(s10)が挿入されている。そして、サンプル1、2、および3では、焼成工程(s8)における焼成温度を、425℃、625℃、および800℃としている。なお、焼成工程(s8)における焼成温度以外の条件については、第1の実施例と同様であり、窒素雰囲気中で2時間掛けて焼成している。なお、第1混合工程、第2混合工程、および活物質混合工程(s10)では、焼成工程(s9)によって得られる電極材料中のLAGPとTiOとの質量比が70wt%と30wt%となるようにLAGPの原料およびTiOを混合している。また、アンモニア濃度調整工程(s3)では、溶媒のアンモニア濃度を0.45Mに調整している。
【0038】
図5は、表2におけるサンプル4の作製手順を示しており、この手順が第2の実施例に係る電極材料の製造方法に対応している。図5に示した手順では、第1の実施例に係るLAGPの製造手順に対し、第2混合工程(s4)と溶媒除去工程(s5)との間に活物質混合工程(s10)が挿入されている。また、図5に示したサンプル4の作製手順においても、第1混合工程、第2混合工程、および活物質混合工程(s10)では、焼成工程(s9)によってLAGPとTiOとの質量比が70wt%と30wt%となるようにLAGPの原料およびTiOを混合し、アンモニア濃度調整工程(s3)では、溶媒のアンモニア濃度を0.45Mに調整している。
【0039】
次に、以上の手順で作製したサンプル1〜4の特性を評価するために、その評価の基準となる特性を備えた粉体材料(以下、第2の参考例とも言う)を作製した。第2の参考例に係る粉体材料は、上記第1の参考例として固相法により作製した粉体状のLAGPと、LAGPの焼成温度と同じ条件で熱処理した後の粉体状のTiOとを70wt%:30wt%の比で混合した粉体材料である。
【0040】
図6に、サンプル1〜3と第2の参考例に係る粉体材料のXRD測定結果を示した。まず、第2の参考例のXRD測定結果から、固相法により作製したLAGPと単体のTiOのそれぞれのX線回折強度のピークの位置(2θ)が特定され、そのLAGPとTiOに対応するピークの位置(2θ)を参考にしてサンプル1〜4におけるピーク位置(2θ)を見ると、焼成温度を425℃としたサンプル1ではTiOのピークは確認できるものの、LAGPに対応するピークがなく、この焼成温度ではLAGPが結晶化しないことが確認できた。また、異相であるGeOに対応するピークも確認された。
【0041】
焼成温度が625℃のサンプル2および3では、TiOのピークが確認できるとともに、図中αで示したX線回折角度(2θ)の位置にてLAGPのピークも確認でき、LAGPが結晶化していることがわかった。なおサンプル2では、GeOに対応するピークも確認できる。また、焼成温度が700℃よりも高い800℃であったサンプル3では、LAGPのピークに代わり、LAGPとTiOとの反応によって生成したと思われるLi1.4(Al0.4Ge0.2Ti1.4)(POに対応する結晶相が確認できた。
【0042】
次に、サンプル2と焼成条件が同じであるものの、LAGPの製造過程でTiOを混合する時期が異なるサンプル4に対してXRD測定を行った。図7は、サンプル2、サンプル4、および第2の参考例のXRD測定結果を示す図であり、図7(A)は、測定した全てのX線回折角度範囲についてのXRD測定結果を示しており、図7(B)は、図7(A)において符号δ1で示した角度範囲のXRD測定結果を拡大した図であり、図7(C)は、図7(B)において矩形の枠で示した領域δ2を拡大した図である。
【0043】
そして、図7(A)に示したように、サンプル4では、サンプル2において出現しているGeOのピークが見当たらなかった。また、図7(B)に示したように、サンプル2に対してサンプル4では、TiOのピークがより急峻となっている。これは、サンプル2とサンプル4とでは、活物質混合工程(s10)の実施時点での溶媒のpHが異なっていたことに起因するものと考えられる。そこで、図1に示したLAGPの作製手順において、第2混合工程(s4)の前後で溶媒のpH値を測定したところ、第2混合工程(s4)の前ではpH値が11.3であったのに対し、第2混合工程(s4)の後ではpH値が10.3になっていた。すなわち、図5に示した第2の実施例に係る電極材料の製造方法では、pHが低い溶媒中に電極活物質を混合している。そして第2の実施例に係る電極材料の製造方法によって作製したサンプル4では、電極活物質とアルカリ性溶液との反応に伴う特性劣化が抑制されたことで、サンプル2よりもTiOのピークが急峻になったものと思われる。さらに、図7(C)に示したように、サンプル4では、サンプル2における極めて小さなGeOのピークも確認できなかった。このように、第2の実施例に係る電極材料の製造方法によれば、電極活物質の粒子表面に極めて純度の高いLAGPの被膜を形成することができる。
【0044】
===全固体電池の製造方法===
全固体電池は、上述した圧縮成形法やグリーンシート法によって、シート状の正極材料、固体電解質、および負極材料をこの順に積層した積層体を作製し、その積層体に対して焼成を行うことで作製される。そしてLAGPを固体電解質として用いた全固体電池では、積層体を焼成する工程によって非晶質のLAGPを結晶化させることになる。すなわち、図1図4図5における焼成工程(s8)は、積層体を焼成することを想定した工程であり、第1の実施例に固体電解質の製造方法や第2の実施例に係る電極材料の製造方法を用いて全固体電池を作製する場合には、コーティング焼成工程(s7)と焼成工程(s8)の間にシート状の正極材料、固体電解質、および負極材料をこの順に積層した積層体を作製する手順が挿入されることになる。また、図4図5では、コーティング焼成工程(s7)によって作製された粉体材料が電極材料となる。
【0045】
===その他の実施例===
上記第2の実施例では、第1の実施例に係る固体電解質の製造方法を応用して電極活物質の粒子表面にLAGPの被膜を効果的に形成することができた。しかし、第1の実施例に係る固体電解質の製造方法は、電極活物質に対して被膜を形成する用途のみに供されるものではない。第1の実施例に係る固体電解質の製造方法によれば、溶液法を用いた極めて簡素な手順で実用的な特性を備えたLAGPを作製できることから、そのLAGPを全固体電池の固体電解質層に用いてもよい。それによって全固体電池をさらに安価に提供することが可能となる。
【0046】
LAGPの原料のうち、GeO以外の水溶性化合物からなる原料は、上記第1および第2の実施例にて用いたものに限定されない。そして、原料が異なれば、当然のことながら溶媒に対して可溶性を示すアンモニア濃度が異なる。いずれにしても、アンモニア濃度調整工程により、溶媒がGeOを含む全てのLAGPの原料が溶解するアンモニア濃度に調整されていればよい。
【0047】
上記第1、第2の実施例では、LAGPをLVP、LCPO、TiOなど、700℃以上の温度で焼成するとLAGPと反応してしまう可能性がある電極活物質にLAGPの被膜を形成することを想定していた。もちろん、電極活物質は、これらの化合物に限定されない。そして、その他の電極活物質では、より高い温度でLAGPとともに熱処理が可能なものもあるかもしれない。しかしながら、上記各実施例で想定しているLVP、LCPO、TiOなどは、全固体電池用の電極活物質として周知のものであり、全固体電池を早期に実用化させるためには、これらの電極活物質を使用することが現実的であると言える。そのために、本発明の実施例では、焼成温度の上限を700℃より75℃も低い625℃とした。そして上記各実施例では、この625℃の焼成温度でも結晶化したLAGPを得ることができた。
【0048】
なお、上記第2の実施例に係る電極材料の製造方法では、電極活物質に負極活物質であるTiOを用いていたが、もちろん第2の実施例に係る電極材料の製造方法は、電極活物質を正極活物質にするだけで、正極用の電極材料にも適用することができる。また、全固体電池を作製する際には、第2の実施例に係る電極材料の製造方法によって、正極層と負極層の両方の電極材料を作製してもよいし、正負いずれかの電極材料を作製してもよい。
【符号の説明】
【0049】
s2 第1混合工程、s3 アンモニア濃度調整工程、s4 第2混合工程、s7 コーティング焼成工程、s8 焼成工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7