(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に搭載された内燃機関の排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出器から出力される電気信号に基づいて、前記内燃機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御する空燃比制御処理を実行する空燃比制御部と、前記空燃比制御部が前記空燃比制御処理を実行しているときにおける前記酸素濃度検出器の電気信号に基づいて、前記内燃機関の排気系に設けられて前記内燃機関の排気ガスの浄化をする触媒の劣化を判定する劣化判定処理を実行する劣化判定部と、を備える内燃機関の電子制御装置において、
前記酸素濃度検出器は、前記触媒の上流側及び下流側に対応して配置される上流側酸素濃度検出器及び下流側酸素濃度検出器を有し、
前記空燃比制御部は、
前記劣化判定部が前記劣化判定処理を実行している際の前記空燃比の前記フィードバック制御として、
前記下流側酸素濃度検出器が出力する電気信号において、前記空燃比が前記内燃機関の理論空燃比よりもリーン側からリッチ側に反転したことを示す電圧を検出した場合には、前記電圧を検出した時点を起点として、前記電圧が前記空燃比が前記リッチ側にあることを示す範囲内に第1の所定期間にわたって連続して留まっていることを検出したときに、前記内燃機関の燃料噴射量を減量するように前記フィードバック制御を実行し、
前記下流側酸素濃度検出器が出力する前記電気信号において、前記空燃比が前記理論空燃比よりも前記リッチ側から前記リーン側に反転したことを示す電圧を検出した場合には、前記電圧を検出した時点を起点として、前記電圧が前記空燃比が前記リーン側にあることを示す範囲内に第2の所定期間にわたって連続して留まっていることを検出したときに、前記燃料噴射量を増量するように前記フィードバック制御を実行し、
前記劣化判定部は、
前記劣化判定部が前記劣化判定処理を実行している際の前記空燃比の前記フィードバック制御が実行されているときに、
前記下流側酸素濃度検出器が出力する電気信号において、前記空燃比が前記理論空燃比よりも前記リーン側から前記リッチ側に反転したことを示す前記電圧を検出した場合には、前記電圧を検出した時点から前記第1の所定期間にわたって連続して前記リッチ側にあることを示す前記範囲内に留まっていることを検出した時点を起点とし、前記下流側酸素濃度検出器が出力する前記電気信号において、前記リーン側から前記リッチ側に反転した後に引き続き前記リッチ側から前記リーン側に反転したことを示す前記電圧を検出した時点から前記第2の所定期間にわたって連続して前記リーン側にあることを示す前記範囲内に留まっていることを検出した時点を終点として得られる第1の判定期間が、第1の触媒劣化判定閾値よりも短いときに、前記触媒が劣化していると判定し、
前記下流側酸素濃度検出器が出力する前記電気信号において、前記空燃比が前記理論空燃比よりも前記リッチ側から前記リーン側に反転したことを示す前記電圧を検出した場合には、前記電圧を検出した時点から前記第2の所定期間にわたって連続して前記リーン側にあることを示す前記範囲内に留まっていることを検出した時点を起点とし、前記下流側酸素濃度検出器が出力する前記電気信号において、前記リッチ側から前記リーン側に反転した後に引き続き前記リーン側から前記リッチ側に反転したことを示す前記電圧を検出した時点から前記第1の所定期間にわたって連続して前記リッチ側にあることを示す前記範囲内に留まっていることを検出した時点を終点として得られる第2の判定期間が、第2の触媒劣化判定閾値よりも短いときに、前記触媒が劣化していると判定することを特徴とする内燃機関の電子制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における内燃機関の電子制御装置につき、詳細に説明する。
【0016】
〔構成〕
まず、
図1を参照して、本実施形態における内燃機関の電子制御装置の構成について、詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施形態における内燃機関の電子制御装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態における内燃機関の電子制御装置1は、図示を省略する車両、典型的には自動二輪車等の鞍乗り型車両に搭載され、エンジン2から排出される排気ガスの浄化を行う触媒3の劣化を判定するものである。エンジン2は、図示を省略する車両に搭載されたガソリンエンジン等の内燃機関である。インジェクタ2aは、エンジン2の上流側(吸気管5の吸気ポート等)に備えられ、後述するECU15により開弁時間を制御することで適切な量の燃料を噴射してエンジン2に供給する。また、触媒3は、エンジン2と連通してエンジン2で生じた排気ガスを外部に排気する排気管4に連通してその排気管4の途中に設けられており、典型的には三元触媒である。
【0019】
具体的には、内燃機関の電子制御装置1は、スロットル開度センサ11、吸気圧力センサ12、クランクセンサ13、上流側酸素濃度検出器である上流側O
2センサ14a、下流側酸素濃度検出器である下流側O
2センサ14b、ECU(Electric Control Unit)15、及び故障表示装置16を備えている。
【0020】
スロットル開度センサ11は、吸気管5からエンジン2に流入する外気の量を調整するスロットルバルブ6の開度を検出し、このように検出したスロットルバルブ6の開度を示す電気信号をECU15に出力する。
【0021】
吸気圧力センサ12は、吸気管5からエンジン2に流入する外気の圧力を吸気圧力として検出し、このように検出した吸気圧力を示す電気信号をECU15に出力する。
【0022】
クランクセンサ13は、エンジン2のクランクの回転角度を検出し、このように検出したクランクの回転角度を示す電気信号をECU15に出力する。
【0023】
上流側O
2センサ14aは、触媒3の上流側における排気管4に連通すると共に触媒3の上流側に近接して配置され、触媒3の上流側における排気ガス中の酸素濃度の高低を検出し、このように検出した酸素濃度の高低を示す電気信号をECU15に出力する。かかる上流側O
2センサ14aが検出する排気ガス中の酸素濃度の高低は、エンジン2に供給される混合気の空燃比の燃料濃度の低高に対応しており、上流側O
2センサ14aが検出する排気ガス中の酸素濃度が低いということは、エンジン2に供給される混合気の空燃比の燃料濃度が高く(燃料が過多で酸素濃度が低いことを意味し、リッチと表現することがある)、上流側O
2センサ14aが検出する酸素濃度が高いということは、エンジン2に供給される混合気の空燃比の燃料濃度が低い(燃料が希薄で酸素濃度が高いことを意味し、リーンと表現することがある)ことを意味している。また、上流側O
2センサ14aは、排気ガス中の酸素濃度が所定濃度(所定閾値濃度)以下の低い状態であるときにはハイレベルの電圧(例えば数百mVの電圧値)の電気信号を出力し、排気ガス中の酸素濃度が所定濃度(所定閾値濃度)を超える高い状態であるときにはローレベルの電圧(例えば実質0Vの電圧値)の電気信号を出力するものであり、かかる所定閾値濃度が、上流側O
2センサ14aが出力する電気信号の電圧を反転させる所定の反転閾値(所定の反転電圧値)に相当することになる。また、かかる上流側O
2センサ14aの所定閾値濃度は、一般的には、エンジン2に供給される混合気の理論空燃比に相当するように設定すればよい。なお、上流側酸素濃度検出器14aとしては、このような高低の2値的な出力電圧を呈する電気信号を出力するO
2センサに代えて、これと同様の所定の反転閾値を設定して、排気ガス中の酸素濃度に応じた連続的な出力電圧を呈する電気信号を出力するAF(Air−Fuel:空燃比)センサや、排気ガス中の酸素濃度に応じた連続的な線形の出力電圧を呈する電気信号を出力するLAF(Linear Air−Fuel)センサを用いて、排気ガス中の酸素濃度の検出精度を向上してもよい。
【0024】
下流側O
2センサ14bは、触媒3の下流側における排気管4に連通すると共に触媒3の下流側に近接して配置され、触媒3の下流側における排気ガス中の酸素濃度の高低を検出し、このように検出した酸素濃度の高低を示す電気信号をECU15に出力する。なお、下流側O
2センサ14bの構成としては、上流側O
2センサ14aの構成と同一のものを用いるため、便宜上、下流側O
2センサ14bのその他の詳細な説明は省略する。
【0025】
ECU15は、マイクロコンピュータ等を含む演算処理装置であり、車両に搭載されて図示を省略するバッテリから電力を供給されて動作する。ECU15は、図示を省略するメモリから必要な制御プログラム及び制御データを読み出して、制御プログラムを実行することによって、内燃機関の電子制御装置1全体の動作を制御すると共に、空燃比制御処理、燃料量補正処理及び劣化判定処理等の各種処理を実行する。
【0026】
また、ECU15は、空燃比制御部15a、前提条件判断部15b、及び劣化判定部15cを機能ブロックとして備えている。空燃比制御部15aは、上流側O
2センサ14a及び下流側O
2センサ14bの一方から出力された電気信号に基づいて、エンジン2に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御する空燃比制御処理を実行するもので、エンジン2へ供給する燃料噴射量を算出して、算出した燃料噴射量に応じてインジェクタ2aを制御する。前提条件判断部15bは、劣化判定処理を実行するための各種前提条件が全て充足されているか否かを判断する。劣化判定処理を実行するための各種前提条件としては、空燃比制御処理や劣化判定処理に関連する各種センサやデバイスの動作が正常であるか否か、またその出力値が所定範囲内にあるか否か、エンジン2の運転負荷領域が所定範囲内にあるか否か、触媒3の温度(推定値)が劣化判定に要求される所定温度以上であるか否か、エンジン2の運転状態が安定状態(定常安定状態)にあるか否か、触媒劣化検出モニタが実行されたか否か等の各種条件を例示することができる。劣化判定部15cは、空燃比制御部15aが空燃比制御処理を実行しているときに劣化判定処理を実行するための各種前提条件が全て充足された場合、上流側O
2センサ14a及び下流側O
2センサ14bから出力された電気信号に基づいて触媒3の劣化を判定する劣化判定処理を実行する。
【0027】
故障表示装置16は、液晶ディスプレイ装置等の表示装置によって構成され、ECU15からの制御信号に従って触媒3の劣化等の故障情報を表示する。
【0028】
このような構成を有する内燃機関の電子制御装置1は、以下に示す劣化判定処理及び燃料量補正処理を実行することにより、簡便な構成で、誤判定を抑制した態様で、触媒3の劣化を精度よく判定する。以下、更に
図2から
図4をも参照して、劣化判定処理及び燃料量補正処理を実行する際の内燃機関の電子制御装置1の動作について説明する。
【0029】
〔劣化判定処理〕
まず、
図2をも参照して、劣化判定処理を実行する際の内燃機関の電子制御装置1の動作について説明する。
【0030】
図2は、本実施形態における内燃機関の電子制御装置1が実行する劣化判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0031】
図2に示す劣化判定処理は、車両の図示を省略するイグニッションスイッチがオンされて内燃機関の電子制御装置1が稼働し、空燃比制御部15aが空燃比制御処理を開始したタイミングに応じて開始となり、劣化判定処理はステップS1の処理に進む。かかる劣化判定処理は、空燃比制御部15aが空燃比制御処理を実行している間、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0032】
ステップS1の処理では、空燃比制御部15aが、スロットル開度センサ11、吸気圧力センサ12及びクランクセンサ13からの各々の電気信号を基に算出した基本燃料噴射量に対して詳細は後述する燃料量補正処理において算出された燃料量補正値(燃料補正係数)を乗算する等して適用することにより、基本燃料噴射量を補正した補正済み燃料噴射量を用いて、空燃比のフィードバック制御を実行する。これにより、ステップS1の処理は完了し、劣化判定処理はステップS2の処理に進む。
【0033】
ステップS2の処理では、劣化判定部15cが、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が混合気の空燃比が理論空燃比を挟んでリーン側からリッチ側に反転したことを示すことを検出した場合、つまり下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定の反転閾値(下流側O
2センサ14bの所定の反転電圧値)THを挟んで低電圧側(リーン側)から高電圧側(リッチ側)へ反転したことを検出した場合には、その検出した時点から下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定期間(詳細は後述する燃料量補正処理におけるステップS20の第1の所定期間に相当する)にわたって連続して高電圧側(リッチ側)に留まっていることを検出した時点を起点とし、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値がこのようにリッチ側に反転した後に引き続きそのリッチ側からリーン側に反転したことを示す時点から、つまり下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値がこのように高電圧側(リッチ側)へ反転した後に引き続き所定の反転閾値THを挟んでその高電圧側(リッチ側)から低電圧側(リーン側)へ反転したことを検出した時点から、所定期間(詳細は後述する燃料量補正処理におけるステップS16の第2の所定期間に相当する)にわたって連続して低電圧側(リーン側)に留まっていることを検出した時点を終点として、得られる第1の判定期間を判定パラメータとして算出する。また、劣化判定部15cが、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が混合気の空燃比が理論空燃比を挟んでリッチ側からリーン側に反転したことを示すことを検出した場合、つまり下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定の反転閾値THを挟んで高電圧側(リッチ側)から低電圧側(リーン側)へ反転したことを検出した場合には、その検出した時点から下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定期間(詳細は後述する燃料量補正処理におけるステップS16の第2の所定期間に相当する)にわたって連続して低電圧側(リーン側)に留まっていることを検出した時点を起点とし、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値がこのようにリーン側に反転した後に引き続きそのリーン側からリッチ側に反転したことを示す時点から、つまり下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値がこのように低電圧側(リーン側)へ反転した後に引き続き所定の反転閾値THを挟んでその低電圧側(リーン側)から高電圧側(リッチ側)へ反転したことを検出した時点から、所定期間(詳細は後述する燃料量補正処理におけるステップS20の第1の所定期間に相当する)にわたって連続して高電圧側(リッチ側)に留まっていることを検出した時点を終点として、得られる第2の判定期間を判定パラメータとして算出する。これにより、ステップS2の処理は完了し、劣化判定処理はステップS3の処理に進む。なお、第1の判定期間及び第2の判定期間は、一例として、詳細は後述する
図4に示される。
【0034】
ステップS3の処理では、劣化判定部15cが、車両の運転負荷状態、具体的にはエンジン2の運転負荷状態(エンジン回転数や吸入空気量等)に基づいて劣化判定閾値を算出する。これにより、ステップS3の処理は完了し、劣化判定処理はステップS4の処理に進む。なお、ステップS2の処理において、第1の判定期間を算出した場合の劣化判定閾値と第2の判定期間を算出した場合の劣化判定閾値とは、互いに同じ値に設定されるものであると簡素化されるが、必要に応じて互いに異なる値に設定されることも可能である。
【0035】
ステップS4の処理では、劣化判定部15cが、ステップS2の処理において算出された第1の判定期間がステップS3の処理において算出された劣化判定閾値よりも長いか否か、又はステップS2の処理において算出された第2の判定期間がステップS3の処理において算出された劣化判定閾値よりも長いか否かを判別する。判別の結果、第1の判定期間が劣化判定閾値よりも長い、又は第2の判定期間が劣化判定閾値よりも長い場合(ステップS4:YES)、劣化判定部15cは劣化判定処理をステップS5の処理に進める。一方、第1の判定期間が劣化判定閾値以下である、又は第2の判定期間が劣化判定閾値以下である場合には(ステップS4:NO)、劣化判定部15cは劣化判定処理をステップS6の処理に進める。
【0036】
ステップS5の処理では、劣化判定部15cが、触媒3は正常な状態にあると判定する。これにより、ステップS5の処理は完了し、今回の一連の劣化判定処理は終了する。
【0037】
ステップS6の処理では、劣化判定部15cが、触媒3は異常劣化状態にあると判定する。これにより、ステップS6の処理は完了し、今回の一連の劣化判定処理は終了する。
【0038】
なお、以上の劣化判定処理におけるステップS2の処理では、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値に加え上流側O
2センサ14aが出力する電気信号の電圧値を用いた構成を採用することも可能である。かかる構成では、劣化判定部15cが、上流側O
2センサ14aが出力する電気信号の電圧値が混合気の空燃比が理論空燃比を挟んでリーン側からリッチ側に反転したことを示すことを検出した場合、つまり上流側O
2センサ14aが出力する電気信号の電圧値が所定の反転閾値(上流側O
2センサ14aの所定の反転電圧値)を挟んで低電圧側(リーン側)から高電圧側(リッチ側)へ反転したことを検出した場合には、その検出した時点から上流側O
2センサ14aが出力する電気信号の電圧値が所定期間にわたって連続して高電圧側(リッチ側)に留まっていることを検出した時点を起点とし、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が混合気の空燃比が理論空燃比を挟んでリーン側からリッチ側に反転してそのリッチ側に所定期間にわたって連続して留まっていることを示すことを検出した後にそのリッチ側からリーン側に反転してそのリーン側に所定期間にわたって連続して留まっていることを検出した時点、つまり下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定の反転閾値THを挟んで低電圧側(リーン側)から高電圧側(リッチ側)へ反転してその高電圧側(リッチ側)に所定期間にわたって連続して留まっていることを検出した後にその高電圧側(リッチ側)から低電圧側(リーン側)に所定の反転閾値THを挟んで反転してその低電圧側(リーン側)に所定期間にわたって連続して留まっていることを検出した時点を終点とする第1の判定期間を判定パラメータとして算出することになる。また、劣化判定部15cが、上流側O
2センサ14aが出力する電気信号の電圧値が混合気の空燃比が理論空燃比を挟んでリッチ側からリーン側に反転したことを示すことを検出した場合、つまり上流側O
2センサ14aが出力する電気信号の電圧値が所定の反転閾値(上流側O
2センサ14aの所定の反転電圧値)を挟んで高電圧側(リッチ側)から低電圧側(リーン側)へ反転したことを検出した場合には、その検出した時点から上流側O
2センサ14aが出力する電気信号の電圧値が所定期間にわたって連続して低電圧側(リーン側)に留まっていることを検出した時点を起点とし、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が混合気の空燃比が理論空燃比を挟んでリッチ側からリーン側に反転してそのリーン側に所定期間にわたって連続して留まっていることを示すことを検出した後にそのリーン側からリッチ側に反転してそのリッチ側に所定期間にわたって連続して留まっていることを検出した時点、つまり下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定の反転閾値THを挟んで高電圧側(リッチ側)から低電圧側(リーン側)へ反転してその低電圧側(リーン側)に所定期間にわたって連続して留まっていることを検出した後にその低電圧側(リーン側)から高電圧側(リッチ側)に所定の反転閾値THを挟んで反転してその高電圧側(リッチ側)に所定期間にわたって連続して留まっていることを検出した時点を終点とする第2の判定期間を判定パラメータとして算出することになる。
【0039】
〔燃料量補正処理〕
次に、更に
図3及び
図4をも参照して、燃料量補正処理を実行する際の内燃機関の電子制御装置1の動作について説明する。
【0040】
図3は、本実施形態における内燃機関の電子制御装置1が実行する燃料量補正処理の流れの一例を示すフローチャートである。また、
図4は、本実施形態における内燃機関の電子制御装置1が実行する燃料量補正処理の流れの一例を説明するためのタイミングチャートである。なお、
図4において、上から下に向けて順に、(a)は下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧の時間変化、(b)は燃料量補正値(燃料量補正係数)の時間変化、及び(c)は下流側O
2センサ反転確認ディレイタイマのカウント値の時間変化を、各々示している。
【0041】
図3に示す燃料量補正処理は、空燃比制御部15aが空燃比制御処理を開始し、併せて劣化判定部15cが劣化判定処理を開始したタイミングに応じて開始となり、燃料量補正処理はステップS11の処理に進む。かかる燃料量補正処理は、空燃比制御部15aが空燃比制御処理を実行し劣化判定部15cが劣化判定処理を実行している間、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0042】
ステップS11の処理では、空燃比制御部15aが、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が混合気の空燃比が理論空燃比を挟んでリーン側からリッチ側へ又はリッチ側からリーン側へ反転したことを示すか否か、つまり下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定の反転閾値(所定の反転電圧値)THを挟んで低電圧側(リーン側)から高電圧側(リッチ側)へ又は高電圧側(リッチ側)から低電圧側(リーン側)へ反転したか否か、を判別する。判別の結果、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が反転した場合(ステップS11:YES、
図4に示す時刻t=t1、t3、t5、t7、t9、t10、t12及びt14)、空燃比制御部15aは、燃料量補正処理をステップS12の処理に進める。一方、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が反転していない場合には(ステップS11:NO)、空燃比制御部15aは、再度、ステップS11の処理を実行する。
【0043】
ステップS12の処理では、空燃比制御部15aが、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が混合気の空燃比が反転したことを示す時点からの経過時間を計測するための下流側O
2センサ反転確認ディレイタイマのカウント値を所定値(所定期間)に設定する。これにより、ステップS12の処理は完了し、燃料量補正処理はステップS13の処理に進める。なお、かかる所定値は、エンジン2の運転負荷状態(エンジン回転数や吸入空気量等)を反映したより精度のよい計時が実行されるように、エンジン2の負荷状態に応じた可変値として設定されることが好ましいが、必要に応じて簡素化するために、固定値として設定されることも可能である。また、かかる所定値は、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定の反転閾値THを挟んでリッチ側からリーン側に反転する場合とリーン側からリッチ側に反転する場合との反転特性の相違を考慮して、その相違を反映してより精度のよい計時が実行されるように互いに異なった値に設定されることが好ましいが、必要に応じて簡素化するために、互いに同じ所定値に設定されることも可能である。また、エンジン2に供給される混合気の空燃比が反転した時点からの経過時間の精度のよい計時を簡便に構成行う観点から、下流側O
2センサ反転確認ディレイタイマを利用しているが、かかるタイマの代わりにECU15のサンプリング処理の単位周期を単位時間として利用して、同様に経過時間を計測してもよい。
【0044】
ステップS13の処理では、空燃比制御部15aが、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定の反転閾値THを挟んでリッチ側からリーン側に反転したことを示すか否かを判別する。判別の結果、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値がリッチ側からリーン側に反転したことを示す場合(ステップS13:YES、
図4に示す時刻t=t1、t5、t9及びt12)、空燃比制御部15aは、燃料量補正処理をステップS14の処理に進める。一方、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値がリーン側からリッチ側に反転したことを示す場合には(ステップS13:NO、
図4に示す時刻t=t3、t7、t10及びt14)、空燃比制御部15aは、燃料量補正処理をステップS18の処理に進める。
【0045】
ステップS14の処理では、空燃比制御部15aが、下流側O
2センサ反転確認ディレイタイマのカウント値のカウントダウン処理を開始する。これにより、ステップS14の処理は完了し、燃料量補正処理はステップS15の処理に進む。なお、下流側O
2センサ反転確認ディレイタイマは、典型的にはプログラムタイマであり、減算タイマとして例示されている。
【0046】
ステップS15の処理では、空燃比制御部15aが、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定の反転閾値THを挟んでリーン側からリッチ側に反転したか否かを判別することにより、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値がリーン側からリッチ側に反転していないか否かを判別する。判別の結果、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値がリーン側からリッチ側に反転していない、つまりリーン側に留まっている場合(ステップS15:YES、
図4に示す期間t=t1からt3、t5からt7、t9からt10及びt12からt14)、空燃比制御部15aは、燃料量補正処理をステップS16の処理に進める。一方、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値がリーン側からリッチ側に反転した、つまりリーン側に留まっていない場合には(ステップS15:NO、
図4に示す時刻t=t3、t7、t10及びt14)、空燃比制御部15aは、燃料量補正処理をステップS12の処理に戻す。
【0047】
ステップS16の処理では、空燃比制御部15aが、下流側O
2センサ反転確認ディレイタイマのカウント値がゼロになったか否かを判別することにより、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号において混合気の空燃比がリッチ側からリーン側に反転したことを示す電圧値を検出した時点、つまり下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定の反転閾値THを挟んでリッチ側からリーン側に反転したことを検出した時点から所定期間(第2の所定期間)にわたって、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定の反転閾値THを挟んでリーン側からリッチ側に反転することなく連続してそのままリーン側に留まったか否かを判別する。判別の結果、下流側O
2センサ反転確認ディレイタイマのカウント値がゼロである、つまり下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定期間にわたってリーン側に留まった場合(ステップS16:YES、
図4に示す時刻t=t2、t6、t13)、空燃比制御部15aは、燃料量補正処理をステップS17の処理に進める。一方、下流側O
2センサ反転確認ディレイタイマのカウント値がゼロでない、つまり下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値がリーン側に留まっているが所定期間が経過していない場合には(ステップS16:NO、
図4に示す期間t=t1からt2、t5からt6、t9からt10及びt12からt13)、空燃比制御部15aは、燃料量補正処理をステップS15の処理に戻す。
【0048】
ステップS17の処理では、空燃比制御部15aが、スロットル開度センサ11、吸気圧力センサ12及びクランクセンサ13からの各々の電気信号を基に算出した基本燃料噴射量を、エンジン2に供給される混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側になるように補正するための燃料量補正値(燃料量補正係数)を算出する。これにより、ステップS17の処理は完了し、今回の一連の燃料量補正処理は終了する。
【0049】
ステップS18の処理では、空燃比制御部15aが、下流側O
2センサ反転確認ディレイタイマのカウント値のカウントダウン処理を開始する。これにより、ステップS18の処理は完了し、燃料量補正処理はステップS19の処理に進む。
【0050】
ステップS19の処理では、空燃比制御部15aが、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定の反転閾値THを挟んでリッチ側からリーン側に反転したか否かを判別することにより、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値がリッチ側からリーン側に反転していないか否かを判別する。判別の結果、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値がリッチ側からリーン側に反転していない、つまりリッチ側に留まっている場合(ステップS19:YES、
図4に示す期間t=t3からt5、t7からt9及びt10からt12)、空燃比制御部15aは、燃料量補正処理をステップS20の処理に進める。一方、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値がリッチ側からリーン側に反転した、つまりリッチ側に留まっていない場合には(ステップS19:NO、
図4に示す時刻t=t1、t5、t9及びt12)、空燃比制御部15aは、燃料量補正処理をステップS12の処理に戻す。
【0051】
ステップS20の処理では、空燃比制御部15aが、下流側O
2センサ反転確認ディレイタイマのカウント値がゼロになったか否かを判別することにより、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号において混合気の空燃比がリーン側からリッチ側に反転したことを示す電圧値を検出した時点、つまり下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定の反転閾値THを挟んでリーン側からリッチ側に反転したことを検出した時点から所定期間(第1の所定期間)にわたって、下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定の反転閾値THを挟んでリッチ側からリーン側に反転することなく連続してそのままリッチ側に留まったか否かを判別する。判別の結果、下流側O
2センサ反転確認ディレイタイマのカウント値がゼロである、つまり下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値が所定期間にわたってリッチ側に留まった場合(ステップS20:YES、
図4に示す時刻t=t4、t8、t11及びt15)、空燃比制御部15aは、燃料量補正処理をステップS21の処理に進める。一方、下流側O
2センサ反転確認ディレイタイマのカウント値がゼロでない、つまり下流側O
2センサ14bが出力する電気信号の電圧値がリッチ側に留まっているが所定期間が経過していない場合には(ステップS20:NO、
図4に示す期間t=t3からt4、t7からt8、t10からt11及びt14からt15)、空燃比制御部15aは、燃料量補正処理をステップS19の処理に戻す。
【0052】
ステップS21の処理では、空燃比制御部15aが、スロットル開度センサ11、吸気圧力センサ12及びクランクセンサ13からの各々の電気信号を基に算出した基本燃料噴射量を、エンジン2に供給される混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーン側になるように補正するための燃料量補正値(燃料量補正係数)を算出する。これにより、ステップS21の処理は完了し、今回の一連の燃料量補正処理は終了する。
【0053】
以上の説明から明らかなように、本実施形態における内燃機関の電子制御装置1では、空燃比制御部15aが、劣化判定部15cが劣化判定処理を実行している際の空燃比のフィードバック制御として、下流側酸素濃度検出器14bが出力する電気信号において、空燃比が理論空燃比よりもリーン側からリッチ側に反転したことを示す電圧を検出した場合には、電圧を検出した時点を起点として、電圧が空燃比がリッチ側にあることを示す範囲内に第1の所定期間にわたって連続して留まっていることを検出したときに、燃料噴射量を減量するようにフィードバック制御を実行し、下流側酸素濃度検出器14bが出力する電気信号において、空燃比が理論空燃比よりもリッチ側からリーン側に反転したことを示す電圧を検出した場合には、電圧を検出した時点を起点として、電圧が空燃比がリーン側にあることを示す範囲内に第2の所定期間にわたって連続して留まっていることを検出したときに、燃料噴射量を増量するようにフィードバック制御を実行するものであるため、空燃比が確実に反転したタイミングで燃料噴射量の制御を行うことができ、簡便な構成で、誤判定を抑制した態様で、内燃機関2の排気系4に設けられた触媒3の劣化を精度よく判定することができる。
【0054】
また、本発明の実施形態における内燃機関の電子制御装置1では、劣化判定部15cが、劣化判定処理を実行している際の空燃比のフィードバック制御が実行されているときに、下流側酸素濃度検出器14bが出力する電気信号において、空燃比が理論空燃比よりもリーン側からリッチ側に反転したことを示す電圧を検出した場合には、かかる電圧を検出した時点から第1の所定期間にわたって連続してリッチ側にあることを示す範囲内に留まっていることを検出した時点を起点とし、下流側酸素濃度検出器14bが出力する電気信号において、リーン側からリッチ側に反転した後に引き続きリッチ側からリーン側に反転したことを示す電圧を検出した時点から第2の所定期間にわたって連続してリーン側にあることを示す範囲内に留まっていることを検出した時点を終点として得られる第1の判定期間が、第1の触媒劣化判定閾値よりも短いときに、触媒が劣化していると判定し、下流側酸素濃度検出器14bが出力する電気信号において、空燃比が理論空燃比よりもリッチ側からリーン側に反転したことを示す電圧を検出した場合には、かかる電圧を検出した時点から第2の所定期間にわたって連続してリーン側にあることを示す範囲内に留まっていることを検出した時点を起点とし、下流側酸素濃度検出器14bが出力する電気信号において、リッチ側からリーン側に反転した後に引き続きリーン側からリッチ側に反転したことを示す電圧を検出した時点から第1の所定期間にわたって連続してリッチ側にあることを示す範囲内に留まっていることを検出した時点を終点として得られる第2の判定期間が、第2の触媒劣化判定閾値よりも短いときに、触媒が劣化していると判定するものであるため、空燃比が確実に反転したタイミングで触媒劣化の判定期間を計測することができ、簡便な構成で、誤判定をより抑制した態様で、内燃機関の排気系に設けられた触媒の劣化をより精度よく判定することができる。
【0055】
また、本発明の実施形態における内燃機関の電子制御装置1では、第1の所定期間及び第2の所定期間を計時するタイマを更に供え、下流側酸素濃度検出器14bが出力する電気信号において、空燃比が理論空燃比よりもリーン側からリッチ側に反転したことを示す電圧が検出された場合には、電圧を検出した時点でタイマによる計時が開始されると共に、下流側酸素濃度検出器14bが出力する電気信号において、第1の所定期間が経過する前に、空燃比が理論空燃比よりもリッチ側からリーン側に反転したことを示す電圧が検出されたときには、タイマの計時はリセットされ、下流側酸素濃度検出器14bが出力する電気信号において、空燃比が理論空燃比よりもリッチ側からリーン側に反転したことを示す電圧が検出された場合には、電圧を検出した時点でタイマによる計時が開始されると共に、下流側酸素濃度検出器14bが出力する電気信号において、第2の所定期間が経過する前に、空燃比が理論空燃比よりもリーン側からリッチ側に反転したことを示す電圧が検出されたときには、タイマの計時はリセットされるものであるため、より簡便な構成で、誤判定をより抑制した態様で、内燃機関2の排気系4に設けられた触媒3の劣化をより精度よく判定することができる。
【0056】
なお、本発明は、構成要素の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、かかる構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。