(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
<熱ラミネート用保護フィルム>
本発明の保護フィルムは、表面層と接着層の少なくとも2層を有し、前記接着層はスチレン系樹脂を含み、フィルム流れ方向及び該フィルム流れ方向と垂直な方向の前記接着層の120℃における熱収縮率が1%以上であり、フィルムの水蒸気透過度が30g/(m
2・day)以下であるスチレン系樹脂発泡体の熱ラミネート用の保護フィルム(本明細書において、単に「保護フィルム」と称する場合がある。)である。
【0013】
本実施形態の保護フィルムは、表面層(A)と、スチレン系樹脂発泡体と接着される接着層(B)の少なくとも2層を有し、必要に応じて他の層、例えば表面層(A)と接着層(B)との中間層(C)等を備えていてもよい。本実施形態の保護フィルムは、表面層(A)が一方の表面を含み、接着層(B)が他方の表面を含むことが好ましい。
スチレン系樹脂発泡体の熱ラミネート用保護フィルムとは、接着剤を用いずに、加熱により熱圧着して、スチレン系樹脂発泡体と本実施形態の保護フィルムとを積層することができるフィルムの意味である。
【0014】
本実施形態の保護フィルムの水蒸気透過度は、30g/(m
2・day)以下であり、20g/(m
2・day)以下であることが好ましく、10g/(m
2・day)以下であることがより好ましい。水蒸気透過度が30g/(m
2・day)を超えると、熱圧着したスチレン系樹脂発泡体の内部に水分が侵入し、断熱性能が低下し易くなる。
上記水蒸気透過度は、例えば、表面層、接着層の組成及び厚さ等により調整することができる。なお、水蒸気透過度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0015】
本実施形態の保護フィルムの120℃における熱収縮率(本明細書において、「120℃熱収縮率」ともいう。)は、一層良好なシール性が得られ、ラミネート後の外観に一層優れる観点から、フィルムの流れ方向(本明細書において「MD方向」ともいう。)及び該フィルムの流れ方向に垂直な方向(本明細書において「TD方向」ともいう。)において、1〜70%であることが好ましく、より好ましくは40〜60%である。保護フィルムの120℃における熱収縮率が上記範囲であると、熱ラミネート時に、接着層に追随して収縮するため、シワが発生しにくくなる。
保護フィルムの、MD方向の120℃熱収縮率とTD方向の120℃熱収縮率とは、同じであってもよいし異なっていてもよい。また、保護フィルムの、MD方向の120℃熱収縮率とTD方向の120℃熱収縮率とは、上記数値範囲のうち異なる数値範囲に含まれていてもよい。
なお、保護フィルムの120℃における熱収縮率は、JIS Z1709に準拠して、温度120℃、浸漬時間30秒の条件で、測定することができる。
【0016】
本実施形態の保護フィルムの厚さは、10μm〜400μmであることが好ましく、20μm〜300μmがより好ましい。厚さが10μm以上であると保護フィルムの強度が適度で熱ラミネート工程に耐える引張強度が発現し易く、400μm以下であると熱ラミネート時の熱が接着層と樹脂発泡体との界面に伝わりやすく、接着強度が発現し易い。
【0017】
(表面層(A))
表面層(A)はベースポリマーを含むことが好ましく、表面層(A)に含まれる樹脂はベースポリマーのみであることがより好ましい。上記ベースポリマーとしては、例えばエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ナイロン系樹脂、エステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂などを挙げることができ、中でも水蒸気透過度の小ささから、プロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン)、ナイロン系樹脂、エステル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂が好ましい。上記ベースポリマーは、単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
表面層(A)に含まれる上記ベースポリマーの含有量としては、表面層(A)全量(100質量%)に対して、20質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上である。また、表面層(A)に含まれる樹脂の合計量100質量%に対して、30質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上である。
【0018】
表面層(A)には、当該技術分野において通常用いられる添加剤、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等の配合や、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、AC(アンカーコート)処理等の処理を行ってもよい。
【0019】
表面層(A)は、ベースポリマーを、インフレーション法、Tダイキャスト法、テンター法によって少なくとも1軸延伸したフィルムであることが好ましい。
表面層(A)の厚さとしては、5〜300μmが好ましく、より好ましくは10〜250μmである。
【0020】
(接着層(B))
接着層(B)はベースポリマーを含むことが好ましく、接着層(B)に含まれる樹脂はベースポリマーのみであることが好ましい。上記ベースポリマーとしては、スチレン系樹脂発泡体との接着性の観点から、スチレン系樹脂を含むことが好ましく、スチレン系樹脂であることがより好ましい。
接着層(B)に含まれるベースポリマーの含有量としては、接着層(B)全量(100質量%)に対して、20質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上である。また、接着層(B)に含まれる樹脂の合計量100質量%に対して、30質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上である。
【0021】
スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の単独重合体、共重合体、及びこれらの混合組成物が挙げられる。
スチレン系単量体としては、スチレン(例えば、GPPS)、α−メチルスチレン等のアルキルスチレン等が挙げられる。
上記スチレン系単量体の共重合体としては、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体;スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体;スチレン−酸無水物共重合体;スチレン−ブタジエン共重合体等のスチレン−共役ジエン系共重合体又はスチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物;耐衝撃性ポリスチレン(例えば、HIPS);スチレン−α−メチルスチレン共重合体;等が挙げられる。
また、スチレン系樹脂としては、ポリスチレンとポリフェニレンエーテル樹脂のポリマーアロイ(m−PPE)等を用いてもよい。
【0022】
なお、上記スチレン系単量体の共重合体は、共重合する成分の種類数に関わらず、「スチレン系共重合樹脂」とも呼ばれる。
上記のスチレン系共重合樹脂におけるスチレン系単量体に由来する構成成分の質量割合は、スチレン系共重合樹脂全量を基準(100質量%)として、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。
【0023】
上記スチレン系樹脂としては、延伸製膜する際の安定性(ネッキングがなく、延伸開始位置が安定しており、実用上問題がない程度に厚さ斑が小さい)を向上させる目的で、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン−共役ジエン系共重合体、及びスチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン−共役ジエン系共重合体、及びスチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有割合としては、スチレン系樹脂を構成する樹脂成分の合計を基準(100質量%)として、0.5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜45質量%であり、更に好ましくは1〜30質量%である。0.5質量%以上である場合、延伸の安定性や耐衝撃性が一層改善され、80質量%以下の場合はフィルムの腰(スティフネス)が保たれる。また、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン−共役ジエン系共重合体、及びスチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物の合計含有割合が、スチレン系樹脂全量(100質量%)に対して、0.5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜45質量%であり、更に好ましくは1〜30質量%、特に好ましくは1〜18質量%である。0.5質量%以上である場合、延伸の安定性や耐衝撃性が一層改善され、80質量%以下の場合はフィルムの腰(スティフネス)が保たれる。
【0024】
接着層(B)には、当該技術分野において通常用いられる添加剤、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等の配合や、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、AC(アンカーコート)処理等の処理を行ってもよい。
【0025】
接着層(B)は、120℃における熱収縮率が、フィルム流れ方向及び流れ方向と垂直な方向共に、1%以上であり、20〜70%であることが好ましく、40〜60%であることがさらに好ましい。120℃熱収縮率が1%以上であれば樹脂発泡体との熱ラミネート時、接着層(B)が収縮することでスチレン系樹脂発泡体と隙間無く良好なシール性を発現することが出来る。なお、「フィルム流れ方向」とは、本実施形態の保護フィルムを製造する際の流れ方向をいうものとする。
接着層(B)は、熱ラミネート時に、シワが一層発生しにくくなる観点から、MD方向の120℃熱収縮率が、TD方向の120℃熱収縮率よりも高いことが好ましい。
接着層(B)の、MD方向の120℃熱収縮率とTD方向の120℃熱収縮率とは、同じであってもよいし異なっていてもよい。また、接着層(B)の、MD方向の120℃熱収縮率とTD方向の120℃熱収縮率とは、上記数値範囲のうち異なる数値範囲に含まれていてもよい。
なお、接着層(B)の120℃における熱収縮率は、後述の実施例に記載の方法により、測定することができる。
【0026】
接着層(B)は、スチレン系樹脂をインフレーション法、テンター法によって2軸延伸したフィルムであることが好ましい。
接着層(B)の厚さとしては、5〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。
【0027】
(中間層(C))
表面層(A)と接着層(B)との密着性が悪い場合、密着性を一層向上させる観点から、中間層(C)を設けてもよい。上記中間層(C)は、表面層(A)と接着層(B)との間に設けることが好ましく、表面層(A)、中間層(C)、接着層(B)の3層の積層体とすることがより好ましい。
【0028】
このような中間層(C)としては、接着層(B)との密着性が高いという観点から、エステル系樹脂、エーテル系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル・ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル変性ポリプロピレン等の樹脂を使用できる。
【0029】
本実施形態の保護フィルムは、スチレン系樹脂発泡体の熱ラミネート用として、特に優れる。
【0030】
(熱ラミネート用保護フィルムの製造方法)
本実施形態の保護フィルムとしては、表面層(A)、中間層(B)、接着層(C)の単層フィルムの一部又は全部を予め製膜後にドライラミネート法や押出ラミネート法により一体化させる方法、共押インフレーション法、共押Tダイ法により同時に一体化させる方法などの公知の方法を採用することが出来る。
【0031】
本実施形態の熱ラミネート用フィルムは、スチレン系樹脂発泡体の表面にラミネートされることが好ましい。スチレン系樹脂発泡体は、スチレン系樹脂をベースとした発泡体であり、形状及び大きさは任意である。
【0032】
本実施形態の保護フィルムをスチレン系樹脂発泡体へ熱ラミネートする方法としては、温度100〜180℃、圧力0.1〜10MPaの条件で、0.1〜60秒熱加圧する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは無い。
【0034】
実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである。
(1)表面層
(i)エステル系フィルム:ポリエチレンテレフタレート樹脂単体をテンター法によって2軸延伸した、厚さが20μmであるフィルム。
(ii)プロピレン系フィルム:ポリプロピレン樹脂単体をTダイキャスト法によって1軸延伸した、厚さが20μmであるフィルム。
(2)中間層
(i)ウレタン系接着剤:AD−393(東洋モートン(株)製)
(3)接着層
(i)スチレン系フィルム1:汎用ポリスチレンを97質量%、及びハイインパクトポリスチレンを3質量%配合し、インフレーション法によって2軸延伸した、厚さが25μm、120℃熱収縮率がMD方向51%、TD方向49%であるフィルム。
(ii)スチレン系フィルム2:汎用ポリスチレンを80質量%、及びハイインパクトポリスチレンを20質量%配合し、インフレーション法によって2軸延伸した、厚さが25μm、120℃熱収縮率がMD方向39%、TD方向3%であるフィルム。
(iii)エチレン系フィルム:ポリエチレン樹脂単体をインフレーション法によって2軸延伸した、厚さが25μm、120℃熱収縮率がMD方向43%、TD方向40%であるフィルム。
(4)樹脂発泡体
(i)スチレン系発泡体:エスレンシート(積水化成品工業(株)製)
【0035】
<120℃熱収縮率>
接着層の120℃熱収縮率は、JIS Z1709に準拠した測定方法により、温度を120℃、浸漬時間を30秒として、MD方向及びTD方向について測定した。
【0036】
<評価項目>
実施例及び比較例で作製した熱ラミネート用保護フィルムについて、以下の項目について評価を行った。
【0037】
(1)水蒸気バリア性
実施例、比較例で得られた保護フィルムをJIS K7129 B法、40℃、90%RH にて水蒸気透過度を測定した。判断基準は以下の通りである。
○(良好):30g/(m
2・day)以下
×(不良):30g/(m
2・day)を超える
【0038】
(2)発泡体とのラミネート性
熱ラミネート後のフィルム被覆発泡体の保護フィルム表面を観察し、外観を評価した。判断基準は以下の通りである。
◎(優れる):シワ・浮きが全く見られない
○(良好):若干のシワ・浮きが確認される
△(やや劣る):目立つシワ・浮きが確認される
×(劣る):接着されていない
【0039】
(3)耐擦れ性
熱ラミネート後のフィルム被覆発泡体の保護フィルム表面を手の爪の先で10往復(長手方向20mmの区間)こすった後、保護フィルム表面を観察し、外観を評価した。判断基準は以下の通りである。
○(良好):外観に変化が無い
×(不良):表面層のキズ、表面層の保護フィルムからの剥がれ、及び/又は発泡体の保護フィルムからの剥がれが確認される
【0040】
[実施例1]
ドライラミネート法によりスチレン系フィルム1の片面にウレタン系接着剤を塗工、乾燥させ、エステル系フィルムと貼り合わせることで、表面層(A):エステル系フィルム20μm、中間層(C):ウレタン系接着剤(ウレタン系樹脂)3μm、接着層(B):スチレン系フィルム1 25μmとなる保護フィルムを得た。
得られた保護フィルムについて(1)に記載の方法で評価したところ、水蒸気透過度は25g/(m
2・day)と、水蒸気バリア性は良好であった。
押出法により成形されたスチレン系発泡体(厚さ20mm)の片面に、保護フィルムの接着層と発泡体とが直接密着するように保護フィルムを設置し、ラミネート温度120℃、ラミネート圧力0.4MPa、ラミネート時間3秒の条件で熱ラミネートした。
得られた保護フィルム被覆発泡体について、(2)に記載の方法で評価したところ、フィルム外観においてシワ・浮きは全く見られなかった。
得られた保護フィルム被覆発泡体について、(3)に記載の方法で評価したところ、フィルム外観の変化は見られなかった。
【0041】
[実施例2〜3]
実施例2は、表面層としてプロピレン系フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして保護フィルム及び保護フィルム被覆発泡体を得た。
水蒸気透過度は15g/(m
2・day)であり、ラミネート性及び耐擦れ性は良好であり、実用上優れた結果が得られた。
実施例3は、接着層としてスチレン系フィルム2を用いた以外は実施例1と同様にして保護フィルム及び保護フィルム被覆発泡体を得た。
発泡体とのラミネート性について、若干のシワが見られたが実用上に問題なく、水蒸気透過度は25g/(m
2・day)であり、耐擦れ性は良好であり、実用上は良好な結果が得られた。
実施例1〜3において、保護フィルムの水蒸気透過度は十分小さく、また保護フィルムと発泡体のラミネート性及び保護フィルム被覆発泡体の耐擦れ性も良好であり、実用性に優れた品質を有していることが確認出来た。
【0042】
[比較例1]
比較例1は、表面層や中間層を用いず、スチレン系フィルム1を用いた接着層のみからなる保護フィルム及び保護フィルム被覆発泡体を得たものである。
比較例1は水蒸気透過度が180g/(m
2・day)であり、水蒸気バリア性が十分でないため実用上不適と判断される。
【0043】
[比較例2]
比較例2は、接着層や中間層を用いず、エステル系フィルムを用いた表面層のみからなる保護フィルム及び保護フィルム被覆発泡体を得たものである。
比較例2は、水蒸気透過度が27g/(m
2・day)であり、水蒸気バリア性は良好であったが、発泡体と保護フィルムが異素材であるため熱ラミネートにて全く接着出来ておらず実用上不適と判断される。
【0044】
[比較例3]
比較例3は、接着層としてエチレン系フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして保護フィルム及び保護フィルム被覆発泡体を得たものである。
比較例3は、水蒸気透過度は15g/(m
2・day)であり、水蒸気バリア性は良好であったが、発泡体と保護フィルムが異素材であるため熱ラミネート時の接着力が弱く、保護フィルム被覆発泡体のフィルム表面を爪で擦ると保護フィルムと発泡体との接着が剥がれたことから実用上不適と判断される。
【0045】
【表1】