(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リアクタンス装荷手段は、前記第2周波数帯の信号を受信するための粗調整用リアクタンスを出力可能な第1リアクタンス部と、前記第2周波数帯の信号を受信するための微調整用リアクタンスを出力可能な第2リアクタンス部とを含み、
前記制御手段は、前記選局情報が前記第2周波数帯の周波数を表す場合、前記狭帯域アンテナが共振するように、前記粗調整用リアクタンスと前記微調整用リアクタンスとの組み合わせを決定し、決定した組み合わせのリアクタンスが前記金属エレメントに装荷されるように前記第1リアクタンス部及び前記第2リアクタンス部を制御することを特徴とする、
請求項3に記載のアンテナ装置。
前記制御手段は、前記周波数毎に、前記第1リアクタンス部及び前記第2リアクタンス部におけるリアクタンスの組み合わせパターンを記録した切替テーブルを保持しており、
前記選局情報の入力を契機に当該選局情報が表す周波数で共振するリアクタンスの組み合わせパターンを前記切替テーブルより特定し、特定した組み合わせパターンに基づいて前記第1リアクタンス部及び前記第2リアクタンス部を制御することを特徴とする、
請求項4又は5に記載のアンテナ装置。
前記制御手段は、前記特定した組み合わせパターンに基づいてシリアルの制御信号を生成するとともに、この制御信号をパラレルデータに変換するシリアル・パラレル・コンバータを含んで構成されており、
前記パラレルデータにより前記第1リアクタンス部及び前記第2リアクタンス部を同時に制御することを特徴とする、
請求項6に記載のアンテナ装置。
前記制御手段は、前記選局情報が前記第1周波数帯の周波数を表す場合、前記第1リアクタンス部における粗調整用リアクタンスを開放状態にすることにより、前記第2周波数帯の信号の後段回路への出力を阻止することを特徴とする、
請求項4ないし7のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
前記復調手段は、少なくとも、前記第1周波数帯の信号の復調を可能にする第1チューナと、前記第2周波数帯の信号の復調を可能にする第2チューナとを備えて構成されており、
前記制御手段は、前記第1チューナと前記第2チューナのいずれか一方を動作させるときは他方の動作をオフに切り替えることを特徴とする、
請求項9に記載のアンテナ装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をAM波帯(522kHz〜1710kHz)及びFM波帯(76MHz〜95MHzあるいは87.5MHz〜108MHz)の信号を受信する車載用のアンテナ装置に適用した場合の実施の形態例を説明する。このアンテナ装置は、例えば車両ルーフなどに取り付けられ、車両内に取り付けられた車両側受信機と通信ケーブル等を介して電気的に接続される。
【0012】
なお、以下の説明において、車両ルーフ側を「下」方向、車両ルーフから鉛直上向きを「上」方向、長手方向を「前後」方向ないし「長尺方向」、正面を「前方」、背面を「後方」、前方長手方向に対して90度の方向を「右方向」、その反対方向を「左方向」という。なお、相対的に前方の部位を「前部」、後方の部位を「後部」という。また、「上下」方向をそれぞれ「表裏」と表現したり、それらに類似する表現を用いることもあるが同義である。
【0013】
[第1実施形態]
図1(a)は第1実施形態に係るアンテナ装置1の側面図、(b)は上面図、(c)は背面図である。このアンテナ装置1は、アンテナケース10とアンテナベース20とを備えている。アンテナケース10は電波透過性部材で構成され、内部に収納空間が形成されている。アンテナケース10は、取付面の前部から後部にかけて高くなる流線形に成型されている。これは、取付後の空気抵抗を低減させるためである。アンテナべース20には、車両ルーフの取付面に固定するための取付機構23が設けられている。取付機構23の中央部には、通信ケーブルを貫通させる孔が形成されている。上記取付面からアンテナケース10の最も高い部位までの高さは約65mm以下である。
【0014】
図2は、アンテナベース20の構造例を示す上面図である。アンテナベース20は、上記取付部に取り付けられる導電ベース21と、導電ベース21に支持される絶縁ベース22とを含んで構成される。取付機構23は、導電ベース21のほぼ中央部に固定されている。絶縁ベース22の周縁部はアンテナケース10が気密に被嵌される。絶縁ベース22の長尺方向の長さは約110mm、幅は約40mmである。
【0015】
アンテナベース20には、様々なアンテナ部品が装着される。
図3(a)はアンテナケース10を取り外した状態のアンテナ部品の装着例を示す側面図、
図3(b)は前面図である。アンテナベース20の上面には、ネジ止めなどによって離脱自在に固定されたユニット筐体30が設けられる。ユニット筐体30は、アンテナケース10の開口面よりも小さい上底及び下底の箱状に成形されており、このユニット筐体30に、それぞれアンテナ部品の一例となる複数の回路ユニットが収納される。また、ユニット筐体30のうち対向する前後方向(長尺方向)の端部付近の上面から、それぞれ樹脂製の支持棒32,34が立設している。各支持棒32,34は、それぞれその上端で金属エレメント40を支持し、その側部でコイルエレメントLを支持する。
【0016】
金属エレメント40は、接地電位の面、すなわち導電ベース21ないし取付面である車両ルーフと対向する面を有し、後方からみて左右の側辺部40a,40bが、上記接地電位と平行に下方に折り曲げられた断面コ字状(方形の一辺がない形状)の帯状のエレメントである。側辺部40a,40bは、放射抵抗を大きくし、アンテナ利得を高めるために設けられる。なお、金属エレメント40は、必ずしも帯状でなければならない訳ではなく、棒状であっても良い。
【0017】
金属エレメント40は、厚みが約0.5mm、幅が約5mm、側辺の折曲部分の長さが約5mm、前後方向(長尺方向)の長さが約95mmの銅板である。ただし、材質は、ステンレス鋼その他の導体板であって良い。
【0018】
支持棒32,34に支持されたコイルエレメントLは、所定ピッチで巻回されている。コイルエレメントLの上端は金属エレメント40の略中央部に設けられた棒状の給電部41と接合されている。コイルエレメントLは、また、その先端からみて所定巻数増える毎に4つのタップが設けられている。
【0019】
ユニット筐体30に収納される複数の回路ユニットは、取付機構23の孔を介して敷設された通信ケーブル等を介して車両側受信機と電気的に接続される。なお、各回路ユニットはアンテナベース20の前後方向に一列に配置されていても良い。このようにすれば、アンテナベース20の幅も小さくなり、アンテナ装置1の薄型化が可能となる。
【0020】
なお、支持棒32,34及びユニット筐体30は、
図3(a),(b)に示された例に限定されるものではなく、例えば、
図4(a)の側面図,同(b)の前面図に示される構造及び配置関係であっても良い。すなわち、支持棒32,34をアンテナベース20の上面に固定し、ユニット筐体30’については、車両ルーフ300を挟んでアンテナベース20の裏面側に離脱自在に固定するようにしても良い。この場合、取付機構23ないしそれに相当する機構は、ユニット筐体30’と車両ルーフ300との接触部分に取り付けられる。
【0021】
このような構造及び配置関係にすると、ユニット筐体30’に収容される複数の回路ユニットの配置、サイズ、実装形態などの制約が無くなるという利点が生じる。また、車両ルーフ30よりも上方向にあるアンテナ部品の数が少なくなるので、さらなる小型化が可能になる利点も生じる。さらに、複数の回路ユニットが車両の内側に配置されるので、耐熱性も良くなる利点も生じる。
なお、ユニット筐体30とユニット筐体30’とを併用しても良い。つまり、複数の回路ユニットを二つのユニット筐体30、30’に分散させて配置するようにしても良い。この場合、ユニット筐体30のみに複数の回路ユニットを配置する
図3(a),(b)に示された例よりも、上記と同様の利点が生じる。
【0022】
図5は、第1実施形態のアンテナ装置1が有する各回路ユニットを含むアンテナ部品の接続構成例を示す図である。第1実施形態では、ユニット筐体30(30’)に収納される回路ユニットとして、切替回路50、シリアル・パラレル・コンバータ60、ブースターアンプ70、復調回路80及び制御回路90を用いる場合の例を説明する。
【0023】
コイルエレメントLに4つのタップが設けられていることは上記の通りである。これらのタップは、コイルエレメントLの基端と共に、切替回路50の入力端子501〜505に接続されている。コイルエレメントLの先端(金属エレメント40の給電部41)からのインダクタンスは、入力端子501(L1)、入力端子502(L1+L2)、入力端子503(Σ(L1〜L3))、入力端子504(Σ(L1〜L4))、入力端子505(Σ(L1〜L5))の順に大きくなる。入力端子505は、AM出力端子507に接続される。
第1実施形態では、コイルエレメントLのうち各タップを通じて取り出されるインダクタンス(L1〜Σ(L1〜L4))と金属エレメント40とでFM放送受信用の狭帯域アンテナを構成する。また、金属エレメント40とコイルエレメントLの全長(Σ(L1〜L5))とでAM放送受信用のアンテナを構成する。
【0024】
切替回路50は、コイルエレメントLと共にリアクタンス装荷手段を構成する。具体的には、金属エレメント40の共振周波数の粗調整用リアクタンスを出力するゾーン選択部(第1リアクタンス部)51と、共振周波数の微調整用リアクタンスを出力する同調選択部(第2リアクタンス部)52とを有するリアクタンス装荷手段を構成する。入力端子501〜504はゾーン選択部51の入力側に接続されており、入力端子501〜504のゾーン選択部51の出力側は同調選択部52に接続されている。つまり、ゾーン選択部51と同調選択部52とは直列に接続されている。同調選択部52は、FM出力端子508に接続されている。
【0025】
ゾーン選択部51は、入力端子501との接続をオン(閉)又はオフ(開)にするスイッチング素子Z1、入力端子502との接続をオン又はオフにするスイッチング素子Z2、入力端子503との接続をオン又はオフにするスイッチング素子Z3、入力端子504との接続をオン又はオフにするスイッチング素子Z4を並列接続して構成される。ゾーン選択部51は、FM波帯の信号を受信するときは、スイッチング素子Z1〜Z4のいずれか1つがオンとなり、他はオフとなる。これによりインダクタL1〜L4によるインダクタンスを呈するものとなる。ゾーン選択部51からは粗調整用リアクタンス、本例ではインダクタンスが出力される。
【0026】
同調選択部52は、コンデンサC0だけの回路と、コンデンサC1とスイッチング素子T1との直列回路と、コンデンサC2とスイッチング素子T2の直列回路と、コンデンサC3とスイッチング素子T3との直列回路と、コンデンサC4とスイッチング素子T4との直列回路とを並列接続して構成される。同調選択部52からは微調整用リアクタンス、本例ではキャパシタンスが出力される。各コンデンサC0〜C4は、インダクタL1〜L4との共振条件を満たす容量値を呈するものであるが、直流電流をカットするためのコンデンサとしても機能する。
この微調整用キャパシタンスは、粗調整用インダクタンスと合算される。その結果として受信可能となったFM波帯の信号は、FM出力端子508から出力可能となる。
【0027】
図6は、第1実施形態のアンテナ装置1において受信するFM波帯の周波数−平均利得特性図を示す。
図6の例では、76MHz、79.5MHz、83MHz、86.5MHz,90.0MHzの放送周波数が示されており、これらの放送周波数で共振させるための粗調整を行うのがゾーン選択部51であり、微調整を行うのが同調選択部52である。その結果、第1実施形態のアンテナ装置1では、共振させたい周波数を
図7に示すように0.5MHzの周波数幅でずらすことができる。
【0028】
なお、AM波帯の信号を受信する場合は、全てのスイッチング素子Z1〜Z4、T1〜T4をオフ(開)にする。これにより、AM波帯の信号は、金属エレメント40及びコイルエレメントLの全長(Σ(L1〜L5))で受信され、切替回路50の入力端子505からAM出力端子507へ、FM波帯の電気定数(コンデンサC0〜C4)とは独立に出力される。
【0029】
切替回路50における各スイッチング素子Z1〜Z4、T1〜T4のオン(閉)、オフ(開)は、シリアル・パラレル・コンバータ60を介して制御回路90から出力される切替データb0〜b7により制御される。切替データb0〜b7は、車両側受信機から送られた、選ばれた放送周波数を表す選局情報に基づいて生成される。これについては後述する。
【0030】
ブースターアンプ70は、AM出力端子507と導通するAM信号増幅回路71と、FM出力端子508と導通するFM信号増幅回路72とを有する。一般的なAM/FM共用アンテナ装置は、受信した信号をAM波帯の信号とFM帯の信号とを分ける分波器を備えるが、第1実施形態のアンテナ装置1では、AM出力端子507からの信号はAM信号増幅回路71、FM出力端子508からの信号はFM信号増幅回路72に直接入力される。そのため、分波器が不要となり、分波ロス(信号レベル低下)を抑制することができる。
AM信号増幅回路71で増幅されたAM波帯の信号及びFM信号増幅回路72で増幅されたFM波帯の信号は、これらを結合することなく、復調回路80へ出力される。これにより結合ロス(信号レベルの低下)も抑制することができる。
【0031】
復調回路80は、AM波帯の信号の復調を可能にするAMチューナ81と、FM波帯の信号の復調を可能にするFMチューナ82とを備える。「復調を可能にする」とは、選ばれた周波数の信号を復調するために必要な機能を有することをいう。例えば放送周波数の同調や検波などもその機能に含まれる。FMチューナ82での復調が可能となる周波数には幅があり、その幅は制御回路90により制御される。具体的には、シリアル・パラレル・コンバータ60を介して切替回路50へ出力される制御信号と同期して、FMチューナ82で復調される周波数の幅が変化する。
AMチューナ81から出力されるAM波帯の信号とFMチューナ82から出力されるFM波帯の信号は、それぞれ車両側受信機から入力される選局情報に応じて音声、音楽等に復調され、車両受信機に出力される。
【0032】
なお、AMチューナ81とFMチューナ82は、いわゆる電子チューナであり、後述する制御回路90の一部としてファームウェアで実現することができる。すなわち、復調させる周波数を指定することにより、ファームウェアにインストールされたソフトウェアにより実現することが可能である。
【0033】
制御回路90は、車両側受信機より入力された選局情報に従い、切替回路50と復調回路80とを制御する。例えば、AM波帯の信号を受信するときは、ゾーン選択部51及び同調選択部52の全てのスイッチング素子Z1〜Z4,T1〜T4をオフにするとともに、FMチューナ82をオフにする。FM波帯を受信するときは、ゾーン選択部51及び同調選択部52によるリアクタンスの大きさを制御するとともに、それと同期して、復調回路80で復調可能な周波数の幅を変化させ、AMチューナ81をオフにする。
【0034】
制御回路90は、DSP(Digital Signal Processor)あるいはFPGA(Field-Programmable Gate Array)など、メモリを有するファームウェアで構成することができる。これらのファームウェアのメモリ部分には、ゾーン選択部51及び同調選択部52におけるスイッチング素子Z1〜Z4、T1〜T4と、シリアル・パラレル・コンバータ70から出力される切替データb0〜b7との対応関係、すなわち、複数のリアクタンス(本例ではインダクタL1〜L5のいずれかとコンデンサC0〜C4のキャパシタンス)の組み合わせパターンを記録した切替テーブル91が格納されている。制御回路90は、選局情報が表す放送周波数を解析し、切替テーブル91を用いて制御信号である切替データを生成する。
【0035】
切替テーブル91の内容例を
図8に示す。
図8を参照すると、例えば狭帯域アンテナで76MHzの信号を受信する場合、スイッチング素子Z1〜Z3はオフ(0)、スイッチング素子Z4はオン(1)、スイッチング素子T1〜T4は全てオン(1)となるように、切替データb0〜b7が出力されるようにする。同様に、79.5MHzの信号を受信する場合、スイッチング素子Z1〜Z3はオフ(0)、スイッチング素子Z4はオン(1)、スイッチング素子T1〜T2はオン(1)スイッチング素子T3,T4がオフ(0)となるように、切替データb0〜b7が出力されるようにする。他の周波数についても同様である。
【0036】
制御回路90は、車両側受信機から選局情報を受信すると、シリアル・パラレル・コンバータ60にクロックCLK、データDATA、ストローブSTBをシリアル出力する。データDATAは上記のオン(1)又はオフ(0)を表すデータであり、ストローブSTBが論理Highから論理Lowに立ち下がるタイミングで、切替回路50へ順次出力する。シリアル・パラレル・コンバータ60は、このデータDATAをパラレルデータ(切替データb0〜b7)に変換して切替回路50へパラレル出力し、対応するスイッチング素子Z1〜Z4、T1〜T4を同時にオン又はオフにする。
図9は、データDATAの出力タイミングを示す図である。ここでは、79.5MHzの放送周波数を受信する場合の例が示されている。つまり、制御回路90は、復調回路80で復調させる放送周波数の中心周波数を79.5MHzに制御する例が示されている。
なお、選局情報がAM波帯の放送周波数であった場合、データDATAは、全て0となる。
【0037】
上記のように構成されるアンテナ装置1は、例えばFM波帯の放送周波数を受信する場合、狭帯域アンテナが0.5MHzの狭い帯域でのみ共振する。そのため、FM波帯の全帯域で受信可能とする必要が無く、所要の利得に特化した設計が可能であり、超小型化が可能になるという大きな利点がある。FM波帯で受信する放送周波数を変える場合は、装荷するリアクタンスを切替回路50で切り替えれば良い。復調回路80も、狭帯域アンテナが共振する周波数幅の分だけを復調すれば良いので、構成が簡略化される。
【0038】
図10は、FM波帯の周波数と平均利得の関係を示す特性図である。破線は接地電位の面からの高さを第1実施形態と同じにした面状エレメントにコイルエレメントが接続された広帯域アンテナの平均利得G
w、実線は第1実施形態におけるアンテナ装置1による平均利得G
Nである。
図10から明らかな通り、周波数の変化に伴って変動する平均利得の変動傾向は広帯域アンテナと同じになるが、各放送周波数帯では、第1実施形態によるアンテナ装置1の方が格段に平均利得が高くなる。
【0039】
図11は、AM波帯の周波数と出力電圧レベルとの関係を示す特性図である。破線は上記広帯域アンテナの出力電圧レベルV
W、実線は第1実施形態におけるアンテナ装置1による出力電圧レベルV
Nである。
図11から明らかな通り、広帯域アンテナの代わりに第1実施形態のアンテナ装置1を用いても出力電圧レベルは同等か、あるいはそれ以上となる。
【0040】
このように、第1実施形態のアンテナ装置1は、金属エレメント40とコイルエレメントLから各タップで切り分けられたインダクタL1〜L4とで狭帯域アンテナを構成し、入力された選局情報に従ってリアクタンスの大きさを変化させるようにしたので、小型でありながら、例えばFM波帯の全帯域にわたって効率的に信号を受信することができる。また、少なくとも金属エレメント40のサイズの小型化をより徹底することができ、アンテナ装置1のさらなる小型化に貢献することができる。
なお、金属エレメント40に装荷するリアクタンスは、インダクタンスに限らず、複数の大きさのキャパシタンスを出力する容量性リアクタンス素子であっても良い。
【0041】
第1実施形態では、金属エレメント40が、接地電位の面と対向する面部と、接地電位の面と平行の側辺部40a,40bと有するようにしたので、限られた収納空間においても放射抵抗を大きくし、利得を高くすることができる。なお、金属エレメント40を簡易に作成する場合、両側辺40a,40bは設けなくとも良い。
【0042】
第1実施形態では、また、受信したAM波帯の信号とFM波帯の信号とがそれぞれ分波されることなく独立に後段回路へ導かれるように構成されているので、分波ロス及び結合ロスの発生を抑制できるばかりでなく、装置構成を簡略化することができ、これによっても小型化に貢献することができる。
【0043】
第1実施形態では、また、制御回路90が、選局情報が表すFM波帯の放送周波数で狭帯域アンテナが共振するように、粗調整用リアクタンスと微調整用リアクタンスとの組み合わせを決定し、決定した組み合わせのリアクタンスが金属エレメント40に装荷されるようにゾーン選択部51及び同調選択部52を制御するので、狭帯域アンテナにおける共振周波数を簡易に変化させることができる。
【0044】
第1実施形態では、また、所定の巻数毎にインダクタンスを取り出すための複数のタップが設けられたコイルエレメントLを含んでリアクタンス装荷手段を構成した。また、ゾーン選択部51は、インダクタンスL1〜Σ(L1〜L4)のいずれか一つを出力可能にし、同調選択部52は、ゾーン選択部51と直列に接続された並列回路であって、コンデンサだけの線路と、それぞれコンデンサにスイッチング素子T1〜T4が介挿された複数の線路とが並列に接続された回路により構成した。そのため、金属エレメント40に装荷するリアクタンスの大きさをより簡易に変化させることができる。
【0045】
第1実施形態では、また、制御回路90が、放送周波数毎に、ゾーン選択部51及び同調選択部52におけるリアクタンス(例えばインダクタンスあるいはキャパシタンス)の組み合わせパターンを記録した切替テーブル91を保持し、選局情報の入力を契機に当該選局情報が表す放送周波数の受信が可能となるリアクタンスの組み合わせパターンを切替テーブルより特定し、特定した組み合わせパターンに基づいてゾーン選択部51及び同調選択部52を制御するようにしたので、選局情報が入力される度にリアクタンスの大きさを計算する必要がなくなり、制御のための処理負荷が軽減される。
【0046】
第1実施形態では、また、切替テーブル91を参照することにより特定した組み合わせパターンに基づいてシリアルの制御信号を生成するとともに、この制御信号をパラレルデータに変換するシリアル・パラレル・コンバータ60を含んで制御手段を構成し、パラレルデータによりゾーン選択部51及び同調選択部52を同時に制御するようにしたので、切替時の受信ロス(非共振による受信機会の喪失)の発生を抑制することができる。
【0047】
第1実施形態では、また、選局情報がAM波帯の放送周波数を表す場合、ゾーン選択部51における粗調整用リアクタンスを開放状態にすることにより、FM波帯の放送周波数の信号の後段回路への出力を阻止するようにしたので、後段回路(例えばAM信号増幅回路71)における周波数の干渉を抑制することができる。
【0048】
第1実施形態では、また、復調回路80を、狭帯域アンテナで受信した周波数帯の信号だけを復調する構成とした。復調する信号がどの周波数帯に属するかは、制御回路90により制御される。このように構成することにより、受信しない周波数帯以外の復調が不要となり、効率的な受信が可能となる。
【0049】
第1実施形態では、また、アンテナベース20に離脱自在に固定されるユニット筐体30(30’)を備え、このユニット筐体30(30’)に、回路ユニットの一例となる切替回路50、シリアル・パラレル・コンバータ60、ブースターアンプ70、復調回路80及び制御回路90を収容したので、アンテナベース20への回路ユニットの実装作業が簡易なものとなる。なお、必ずしもユニット筐体30(30’)に全ての回路ユニットを収納する必要はなく、切替回路50、あるいは切替回路50とシリアル・パラレル・コンバータ60は、ユニット筐体30(30’)とは別体で取り付けても良い。ブースターアンプ70及び復調回路80についても同様である。
【0050】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態のアンテナ装置は、回路ユニットの実装態様が第1実施形態のアンテナ装置1と異なる。第1実施形態のアンテナ装置1と同じ構成部品については同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0051】
図12(a)は第2実施形態のアンテナ装置2において、アンテナケース10を取り外した状態のアンテナ部品の装着例を示す側面図、
図12(b)は前面図である。アンテナベース20には、絶縁性のアンテナ基板320が垂直方向に立設される。アンテナ基板320は矩形状のものである。また、アンテナ基板320は、アンテナケース10の内側に形成される収納空間に適応する形状に成形されており、上述した金属エレメント40は、その上端に固定されている。金属エレメント40の長尺方向の中央部は、アンテナ基板320と同一の面上に配され、かつ、アンテナ基板320の上縁よりも高い部位に固定される。第1実施形態において説明した切替回路50、シリアル・パラレル・コンバータ60、ブースターアンプ70、復調回路80、制御回路90は、アンテナ基板320の表面(例えば左方向の面)に直接実装され、アンテナ基板320の裏面(例えば右方向の面)に配線されている。
【0052】
第2実施形態のアンテナ装置2によれば、アンテナ基板320がアンテナベース20に立設されているので、切替回路50、シリアル・パラレル・コンバータ60、ブースターアンプ70、復調回路80及び制御回路90をアンテナケース10とアンテナベース20との間に形成される収納空間に収納する場合であっても、アンテナケース10の幅方向(左右方向)の長さ(長尺方向と直交する方向の長さ)を短くすることができる。
【0053】
なお、第1及び第2実施形態では、車載用のアンテナ装置に適用した場合の実施の形態例を説明したが、本発明のアンテナ装置は、薄型化が可能なので、車載用に限らず、据え置き型のアンテナ装置としての実施が可能である。
また、第1及び第2実施形態では、AM波帯の信号とFM波帯の信号とを受信する場合の実施の形態例を説明したが、デジタルテレビジョン放送信号その他の放送周波数帯の信号の受信にも適用が可能である。