(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のパッチアンテナは、板状の放射素子と平行に板状の地板を配置した構成が一般的であった。そのため、放射素子の板面に対する法線方向(放射素子の中心から見た仰角90度方向)の指向性が強い。しかし、Azimuth方向や方位角方向等と呼ばれる放射素子の中心から見た板面方向の各方位の指向性は、放射素子の中心と給電点とを結ぶ線に平行な方向の利得は比較的高いが、放射素子の中心と給電点とを結ぶ線に交差する方向の利得は低くなるという欠点があった。
【0005】
本発明はこの課題に鑑みて考案されたものであり、その目的とするところは、放射素子の板面方向において、放射素子の中心と給電点とを結ぶ線に交差する方向の利得を向上させることができるパッチアンテナの技術を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するための本発明の第1の態様は、板状の放射素子と、前記放射素子の周縁の外側に、壁面が前記放射素子の中心と給電点とを結ぶ線と交差するように設けられた金属壁部と、を備えたパッチアンテナである。
【0007】
第1の態様によれば、放射素子の周縁の外側に、壁面が放射素子の中心と給電点とを結ぶ線と交差するように金属壁部が設けられることとなる。この金属壁部によって電波の放射特性を変化させることができるため、放射素子の板面方向において、放射素子の中心と給電点とを結ぶ線に交差する方向の利得を向上させ得る技術が実現可能となる。
【0008】
また、本発明の第2の態様は、前記金属壁部が、前記放射素子より放射方向に突出している、第1の態様に係るパッチアンテナである。
【0009】
第2の態様によれば、金属壁部が、放射素子より放射方向に突出しているため、放射特性を大きく変化させることが可能となる。
【0010】
また、本発明の第3の態様は、前記金属壁部が、地板と電気的に非導通状態に設置されている、第1又は第2の態様に係るパッチアンテナである。
【0011】
この第3の態様によれば、金属壁部が地板と電気的に非導通状態となるため、アースとして機能する地板との相互作用を低減ないし抑制した上で、第1又は第2の態様に係る作用効果を発揮することができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様は、屈曲形状の金属によって基底部と前記金属壁部とが形成された金属部と、前記放射素子および前記地板を有するアンテナ本体部であって、前記地板が前記基底部と間隔を空けて、前記金属部と電気的に非導通状態に設置されたアンテナ本体部と、を備えた第3の態様に係るパッチアンテナである。
【0013】
また、本発明の第5の態様は、前記金属壁部が、前記放射素子を挟んだ両側に配置されて設けられており、前記金属部が、中央部分を前記基底部、一端側および他端側を前記金属壁部とした屈曲形状を有する、第4の態様に係るパッチアンテナである。
【0014】
この第4又は第5の態様によれば、屈曲形状の金属によって金属壁部が形成可能となるため、金属壁部を簡単に製造することができる。また、金属部とアンテナ本体部との配置構成も比較的に簡単な構造とすることができるため、第1〜第3の態様に係る作用効果を発揮するパッチアンテナを容易に製造可能になる。
【0015】
本発明の第6の態様は、前記金属壁部が、金属薄膜として構成されてなる、第1〜第5の何れかの態様に係るパッチアンテナである。
【0016】
この第6の態様によれば、金属壁部の厚みを薄くすることができるため、パッチアンテナを小型化することができる。
【0017】
本発明の第7の態様は、第1〜第6の何れかの態様に係るパッチアンテナを具備する車載用アンテナ装置であって、車両の所定位置に所定向きに設置される筐体と、前記パッチアンテナが垂直偏波用となるように前記パッチアンテナを支持する支持部と、を具備する車載用アンテナ装置である。
【0018】
第7の態様によれば、放射素子の板面方向において放射素子の中心と給電点とを結ぶ線に交差する方向の利得を向上させた垂直偏波用の車載用アンテナ装置を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した実施形態の一例を説明するが、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限られないことは勿論である。
【0021】
また、本実施形態では方向を次のように定義することとする。まず、誘電体基板32を挟んで放射素子31と地板33(地導体板とも言う)とが積層された構造のパッチアンテナ20において(
図3参照)、放射素子31が設けられた側の外側方向、すなわち誘電体基板32から放射素子31に向かう方向を「放射方向」と呼称する。放射方向は、誘電体基板32から放射素子31に向かう方向と放射素子31から誘電体基板32に向かう方向との両方向ではなく、向きが決まった方向となる。また、左手系の直交3軸を定義する。直交3軸の座標原点は、放射素子31の板面中心とする。この直交3軸の方向が分かり易いように、直交3軸の各軸方向に平行な方向を示す参照方向を各図に付記した。参照方向としているのは、直交3軸の原点は、正しくは放射素子31の板面中心であるためである。あくまで方向の参照用として示している。
【0022】
そして、左手系の直交3軸であるが、放射素子31の板面に対する法線方向をZ軸方向とし、放射方向の向きをZ軸正方向とする。また、放射素子31の中心と給電点(芯線取付孔とも述べる)31hとを結ぶ線に沿った方向をX軸方向とし(
図2参照)、放射素子31の中心から給電点31hに向かう方向をX軸正方向とする。Y軸方向並びにY軸正方向は、左手系の直交3軸であること、X軸正方向およびZ軸正方向が定義されることで自明となる。
【0023】
誤解が生じないように別の表現で定義すると、放射素子31の中心(直交3軸原点)から見て、放射素子31の板面に沿った方向(板面方向)を方位とした場合の仰角90度方向がZ軸正方向であり、放射素子31の中心から給電点31hに向かう方向がX軸正方向、このX軸正方向を12時方向とした場合の3時方向の方位がY軸正方向となる。なお、放射素子31の板面方向は、Azimuth方向や方位角方向等とも呼ばれる場合がある。
【0024】
本明細書において、X軸方向と述べる場合は、X軸に平行な方向を意味し、X軸正方向およびX軸負方向の±両方向を含む意味とする。Y軸方向およびZ軸方向についても同様である。よって各軸方向は、各図に示した参照方向となる。
【0025】
また、パッチアンテナ20において、放射素子31の電界面であるE面と、磁界面であるH面は、放射素子31の中心(直交3軸原点)から見て、X軸方向およびZ軸方向を含むXZ方向平面がE面、Y軸方向およびZ軸方向を含むYZ方向平面がH面となる。別の表現で定義すると、放射素子31の板面に垂直な方向と、放射素子31の中心と給電点31hとを結ぶ線の方向とを含む平面がE面であり、このE面に垂直な平面であって且つ、放射素子31の板面に垂直な方向を含む平面がH面である。
【0026】
図1は、本実施形態の車載用アンテナ装置10の構成例を示す斜視外観図と、使用例を示す概念図である。
【0027】
車載用アンテナ装置10は、パッチアンテナを具備するV2X(Vehicle-to-everything)通信用の車載アンテナであって、車両3の所定位置に所定向きに設置され、同軸ケーブル4を介して、V2Xコントローラ5に接続される。
【0028】
車載用アンテナ装置10は、車内のフロントガラス上部(例えばルームミラー付近)に、放射方向が車両の前方を向くように設置される。ここで、前方とは、車両の前進方向の意味である。
【0029】
なお、車載用アンテナ装置10の設置位置と設置数は、想定する通信対象等の環境条件に応じて適宜変更できる。例えば、複数箇所設置するとしてもよい。設置場所も、例えば、ダッシュボードの上部でも良いし、バンパーや、ナンバープレートの取り付け部、Aピラー等のピラー部などでもよい。車内のリアガラスに、放射方向を車両の後方を向くように設定してもよい。ここで、後方とは、車両の後進方向の意味である。また、放射方向を車両の右方又は左方を向くように設定してもよい。ここで、右方とは、車両の前進方向に向かって右方の意味であり、左方とは、車両の前進方向に向かって左方の意味である。また、防水や防塵の性能条件が確保される構造を有する場合には車両の屋根上に設置することもできる。
【0030】
本実施形態の車載用アンテナ装置10は、直方体状の外観を有し、放射方向に分割される第1筐体11と第2筐体12との分割構造のケースの中にパッチアンテナ20を内蔵する。そして、筐体側部に設けられた車体取付用の支持部13で車両3に装着されることで、パッチアンテナ20が垂直偏波用のアンテナとして好適に機能することとなる。本実施形態では、支持部13を、車載用アンテナ装置10を設置するために用いるボルトやビスを挿通するためのボスとし、車両3から見て筐体の左右両側面(Y軸方向の両側面)それぞれに設ける構成としているが、支持部13の設定位置や設定数は適宜選択可能である。また、車載用アンテナ装置10を設置・固定する方法はボルトやビスを用いる方法に限らず他の方法でも良く、それに応じて支持部13も、適宜クリップ構造などその方法に適した構造を採用することができる。
【0031】
支持部13は、第1筐体11および第2筐体12が車両3の所定位置に所定向きに設置されるように第1筐体11および第2筐体12を支持する。すなわち、第1筐体11および第2筐体12が車両3の所定位置に所定向きに設置されることで、パッチアンテナ20が垂直偏波用のアンテナとして機能するように、支持部13がパッチアンテナ20を支持する格好となる。
【0032】
図2は、車載用アンテナ装置10の内部の構成例を説明するための図であって、第1筐体11を取り外して、第2筐体12の内部をZ軸正方向から見た図である。
図3は、同じく車載用アンテナ装置10の内部の構成例を説明するための図であり、第1筐体11を含めた車載用アンテナ装置10を
図2のA−A断面に沿って縦断した縦断面図である。
図4は、第1筐体11を含めた車載用アンテナ装置10の分解図であって、
図3相当の縦断面で示した分解図である。
【0033】
図3,
図4に示すように、第1筐体11は凹部である上部収容空間11aを画成し、第2筐体12は凹部である下部収容空間12aを画成する。上部収容空間11aおよび下部収容空間12aは、第1筐体11および第2筐体12が組み付けられることで連続する1つの収容空間となる。パッチアンテナ20は、その収容空間の中、主に下部収容空間12aに収まるようにして設置される。
【0034】
パッチアンテナ20は、
図3,4に向かって上から順に、アンテナ本体部30と、金属部40と、を備える。
【0035】
アンテナ本体部30は、
図3,4に向かって上から順に、放射素子31と、誘電体基板32と、地板33と、を備える。アンテナ本体部30は、従来のパッチアンテナと同様に、プリント基板の製造方法を応用して作成することができる。
【0036】
放射素子31は、Z軸正方向から見て矩形状の板状を有し、板面中心よりX軸正方向(パッチアンテナ20の直線偏波の偏波面に沿った方向)にオフセットした位置(ずれた位置)に同軸ケーブル4の芯線4aを挿通・固定するZ軸方向の貫通孔である芯線取付孔31hを備える。この芯線取付孔31hが給電点となる。従って、同じ符号を用いて適宜、給電点31hと述べる。なお、
図3,4では、構造の理解が容易となるように、意図的に放射素子31や地板33のZ軸方向の厚さを大きく描いているが、実際は薄い板状、すなわち薄膜として形成され得る。
【0037】
誘電体基板32は、Z軸正方向から見ると放射素子31よりも広い面積を有する。そして、放射素子31の芯線取付孔31hと連通する位置にZ軸方向に貫通する芯線挿通孔32hを有する。
【0038】
地板33は、誘電体基板32の下面と同じ形状又は僅かに小さい形状を有し、放射素子31の芯線取付孔31hおよび誘電体基板32の芯線挿通孔32hと連通する芯線挿通孔33hを有する。そして、地板33の下面には、この芯線挿通孔33hと同軸となるように、第2筐体12の底部に設けられた挿通孔12hを通じて基板用同軸コネクタ22が装着される。なお、
図3等において、芯線挿通孔33hを、芯線4aとの絶縁を確保するために大きめに図示しているが、地板33の芯線挿通孔33hの周囲に絶縁皮膜を施す等、地板33と芯線4aとの間の絶縁を確保できるのであれば、芯線挿通孔33hは芯線取付孔31hや芯線挿通孔32hと同径であってもよい。
【0039】
金属部40は、X軸方向の両端部をZ軸正方向へ屈曲させた板金材である。具体的には、金属板の中央部を基底部49とし、一端側および他端側をそれぞれ90度又は略90度にZ軸正方向へ屈曲させることで、基底部49と第1金属壁部41と第2金属壁部42とを屈曲形状の金属で形成している。すなわち、第1金属壁部41と第2金属壁部42とは、壁面がH面に沿った向き(H面に平行又は略平行な向き)に設けられる。別の表現で言うと、第1金属壁部41と第2金属壁部42とは、壁面が放射素子31の中心と給電点31hとを結ぶ線(X軸方向)と直交するように設けられている。なお、金属部40は、板金材では無く、例えば樹脂の表面に金属薄膜を形成したものでもよい。また、第2筐体12の内面(第1筐体11の内面も含む場合も有る)に金属薄膜を形成して金属部40としてもよい。このようにすることで、板金材が必要無くなるので、車載用アンテナ装置10を小型化することができる。これらの場合も、基底部49と第1金属壁部41と第2金属壁部42とは、屈曲形状の金属として形成される。また、基底部49を省略して、第1金属壁部41および第2金属壁部42を金属薄膜として構成してもよいし、更には、第1金属壁部41および第2金属壁部42の一方のみを設ける場合には、その一方を金属薄膜として構成してもよい。
【0040】
第1金属壁部41と第2金属壁部42とは、相互に平行又は略平行な平板部である。第1金属壁部41と第2金属壁部42のZ軸方向の長さは、それらのZ軸正方向側の端部(
図3における上側の端部)が、アンテナ本体部30の上面(放射素子31の表面:Z軸正方向側端面)よりもZ軸正方向側に突出して位置するように設定される。
【0041】
基底部49には、基板用同軸コネクタ22を挿通するコネクタ挿通孔49hと、第2筐体12の下部収容空間12aの底面よりZ軸正方向へ突出した突起部12t(
図4参照)を挿通するための突起挿通孔49jと、が設けられている。
【0042】
組立時、金属部40は、基底部49の突起挿通孔49jを第2筐体12の突起部12tを挿通するようにして位置合わせして、第2筐体12の底部に固定される。固定方法は、適宜選択可能であるが、例えば金属部40と第2筐体12の底部とを接着するとしてもよい。
【0043】
突起部12tは、基底部49よりもZ軸正方向に突出し、その先端にアンテナ本体部30の下面(地板33の表面:Z軸負方向側端面)が当接され、アンテナ本体部30と突起部12tとが固定される。固定方法は、適宜選択可能であるが、例えばアンテナ本体部30と突起部12tとを接着するとしてもよい。この時、基底部49の上面(Z軸正方向側端面)から地板33の表面までの間隔は、2ミリメートル未満とすると好適である。また、アンテナ本体部30を固定する際には、アンテナ本体部30の外周部が金属部40に接触しないように間隔が設けられる。つまり、アンテナ本体部30は、基板用同軸コネクタ22ともども、金属部40とは電気的に非導通状態に設置される。
【0044】
基底部49の上面と地板33の表面との間の間隔を含む、アンテナ本体部30と金属部40との間の間隔は、V2X通信の電波信号の伝播(導通)を妨げることのない一種のコンデンサとして機能する。そのため、この間隔は空気層すなわち空間としてもよいし、電気絶縁性材料である樹脂層としてもよい。樹脂層とするならば、樹脂を空間補充剤、兼、接合剤として利用することもできる。
【0045】
アンテナ本体部30と金属部40とを非導通状態とすることで、地板33と金属部40との相互作用を低減ないし抑制して、車載用アンテナ装置10を量産した際の特性や電気的安定性のバラツキを抑えることが可能になることや、アンテナ本体部30を他のアンテナ装置に内蔵されるものと同一部品として量産効果を高めることが可能になる、といった種々の利点が生じる。
【0046】
図5は、本実施形態の車載用アンテナ装置10の効果について説明するための図であって、H面(YZ方向平面)における利得特性グラフである。H面におけるZ軸正方向を0度とし、Z軸負方向を−180度としたアンテナ利得を示している。+90度および−90度がY軸方向となるため、+90度および−90度が、放射素子31の板面方向において、放射素子31の中心と給電点31hとを結ぶ線に直交する方向となる。また、実線が本実施形態の車載用アンテナ装置10の特性を示し、点線が金属部40を省略した比較用構成の特性を示している。つまり、破線が従来技術に相当する。
【0047】
放射素子31の板面方向において、放射素子31の中心と給電点31hとを結ぶ線に直交する方向となる±90度付近に着目すると、利得が向上しており、第1金属壁部41および第2金属壁部42を設けることによる作用効果が表れている。パッチアンテナ20の特性として、放射素子31の周縁と地板33との間には電気力線が生じるが、E面に沿った方向の電気力線の方が、H面に沿った方向の電気力線よりも密度が高い。つまり、放射素子31の周縁のうち、第1金属壁部41に近い側の辺(
図2に向かって放射素子31の四角形の右側の辺)と、第2金属壁部42に近い側の辺(
図2に向かって放射素子31の四角形の左側の辺)とに、高密度の電気力線が生じる。この電気力線と、第1金属壁部41および第2金属壁部42との間で電磁作用が生じ、パッチアンテナ20の放射特性が変化する結果、利得が向上すると考えられる。
【0048】
なお、放射素子31の周縁の外側に、壁面が放射素子31の中心と給電点31hとを結ぶ線(X軸方向)と交差するように第1金属壁部41および第2金属壁部42を設けたが、壁面がY軸方向と交差するように金属壁部を設けることで、放射素子31の中心と給電点31hとを結ぶ線の方向の利得向上を図ることが可能となる。
【0049】
図6(A)は、第1金属壁部41と第2金属壁部42との壁高(放射素子31からの突出長(Z軸方向の長さ))を変更した場合のH面(YZ方向平面)における利得特性グラフである。
図5と同様、H面におけるZ軸正方向を0度とし、Z軸負方向を−180度したアンテナ利得を示している。+90度および−90度がY軸方向となる。
図6(A)において、点線が壁高0mm、実線が本実施形態に相当する壁高3.5mm、破線が壁高6.0mmの各特性を示している。
図6(B)は、壁高を示すために、
図3相当の車載用アンテナ装置10の断面を示した図である。
【0050】
放射素子31の板面方向において、放射素子31の中心と給電点31hとを結ぶ線に直交する方向となる±90度付近に着目すると、壁高が放射素子31から突出していることで、利得特性が大きく改善されることが分かる。但し、壁高3.5mmと6.0mmとの間では利得特性に大きな差が見られないことが分かる。
【0051】
〔変形例〕
以上、本発明を適用した実施形態の一例について説明したが、本発明を適用可能な形態は上記形態に限定されるものではなく適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0052】
[第1変形例]
例えば、上記実施形態では、金属部40の金属壁部を、アンテナ本体部30の周縁の外側、すなわち放射素子31の周縁の外側に、壁面が放射素子31の中心と給電点31hとを結ぶ線と交差するように、放射素子31を挟んだ両側に設ける構成とした。しかしこれを、
図7、
図8に示すように、何れか一方側のみとする構成の車載用アンテナ装置10Bとすることもできる。
図7は、放射素子31の周縁の外側に1つの金属壁部を設けた場合の車載用アンテナ装置10Bの内部の構成例を示す図である。
図8は、第1筐体11を含む、車載用アンテナ装置10Bを、
図7のB−B断面に沿って縦断した場合の縦断面図である。
図7、
図8の例では、第1金属壁部41を省略して、第2金属壁部42を残した例を示しているが、第2金属壁部42を省略して、第1金属壁部41を残した構成でもよい。なお、
図7、
図8に示す車載用アンテナ装置10Bは、給電点を2つ設けた後述する第2変形例の円偏波アンテナの例として示しているが、上述した実施形態のように1つの給電点31hのみとする直線偏波アンテナとしてもよいことは勿論である。このように、金属壁部を一方側のみとする構成とした場合であっても、放射素子31の板面方向において、放射素子31の中心と給電点31hとを結ぶ線に交差する方向の利得を向上させることができる。
【0053】
[第2変形例]
また、上記実施形態では、パッチアンテナ20を直線偏波アンテナとしたが、
図7、
図8に示すように、給電点31hの他に給電点31jを設けて、円偏波アンテナの車載用アンテナ装置10Bとすることもできる。
図9は、円偏波アンテナとした場合のH面(YZ方向平面)における利得特性グラフである。
図5と同様、H面におけるZ軸正方向を0度とし、Z軸負方向を−180度したアンテナ利得を示している。+90度および−90度がY軸方向となる。なお、
図9の実線では、金属壁部は、上記実施形態同様、第1金属壁部41および第2金属壁部42がある状態である。
図9に示すように、パッチアンテナを円偏波アンテナとした場合であっても、放射素子31の板面方向において、放射素子31の中心と給電点31hとを結ぶ線に直交する方向となる±90度付近において利得を向上させることができることが分かる。
【0054】
[第3変形例]
また、上記実施形態では、金属壁部を、放射素子31の周縁の外側に、放射素子31を囲む四囲のうちの、放射素子31を挟んだ両側に設ける構成とした。また、両側ではなく、一方側のみに金属壁部を設けてもよい変形例を第1変形例として説明した。しかし、放射素子31を囲む四囲全てに金属壁部を設けてもよいし、四囲のうちの隣り合う2辺にL字状に金属壁部を設けることとしてもよい。
【0055】
図10は、放射素子31を囲む四囲全てに金属壁部を設けた四方囲みの構成とした場合のH面(YZ方向平面)における利得特性グラフである。
図5と同様、H面におけるZ軸正方向を0度とし、Z軸負方向を−180度したアンテナ利得を示している。+90度および−90度がY軸方向となる。比較のために、
図10では、上述した実施形態(放射素子31を挟んだ両側に金属壁部を設けた構成)の特性を実線で、金属壁部を省略した比較用構成(従来構成)の特性を点線で、四方囲みの構成の場合の特性を一点鎖線で示している。また、±90度における利得の数値を表で示した。
【0056】
図10に示すように、四方囲みとした構成においても、放射素子31の板面方向において、放射素子31の中心と給電点31hとを結ぶ線に直交する方向となる±90度付近における利得を向上させることができることが分かる。
【0057】
また、
図11は、放射素子31を囲む四囲のうち、隣り合う2辺にL字状に金属壁部を設けたL字配置の場合のH面(YZ方向平面)における利得特性グラフである。
図5と同様、H面におけるZ軸正方向を0度とし、Z軸負方向を−180度したアンテナ利得を示している。+90度および−90度がY軸方向となる。比較のために、
図11では、上述した実施形態(放射素子31を挟んだ両側に金属壁部を設けた構成)の特性を実線で、金属壁部を省略した比較用構成(従来構成)の特性を点線で、L字配置の構成の場合の特性を二点鎖線で示している。また、±90度における利得の数値を表で示した。
【0058】
図11に示すように、L字配置とした構成においても、放射素子31の板面方向において、放射素子31の中心と給電点31hとを結ぶ線に直交する方向となる±90度付近における利得を向上させることができることが分かる。
【0059】
[第4変形例]
また、上記実施形態では、放射素子31の給電方式を背面同軸給電としたが、
図12に示すように、マイクロストリップ線路34を設けて共平面給電の形態とした車載用アンテナ装置10Cを構成することもできる。
【0060】
[第5変形例]
また、上記実施形態では、金属板の一端部および他端部を屈曲させた屈曲形状とすることで、第1金属壁部41・基底部49・第2金属壁部42が一体の金属部40の構成を示したが、
図13に示すように、基底部49を省略して、第1金属壁部41と第2金属壁部42とをそれぞれ独立した金属パーツとして構成した車載用アンテナ装置10Dを実現することとしてもよい。
【0061】
[第6変形例]
また、上記実施形態では、地板33と金属部40とを非導通状態とする構成として例示したが、
図14に示すように、接触させて電気的に導通させた構成の車載用アンテナ装置10Eを実現することとしてもよい。地板33と金属部40とを一体化した構成としてもよい。
【0062】
[第7変形例]
また、上記実施形態では、第1金属壁部41と第2金属壁部42を、Z軸方向と平行又は略平行となるように構成したが、
図13に示すように、先端部をアンテナ本体部30の中央側に寄せるように傾斜させた姿勢や、
図14に示すように、先端部がアンテナ本体部30から離れるように傾斜させた姿勢とすることとしてもよい。すなわち、第1金属壁部41と第2金属壁部42とは、壁面が必ずしも平行である必要はない。放射素子31の板面方向において、放射素子31の中心と給電点31hとを結ぶ線に交差する方向の利得が向上すれば、第1金属壁部41と第2金属壁部42はどのような角度で傾斜してもよい。