特許第6971123号(P6971123)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971123
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/235 20180101AFI20211111BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20211111BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20211111BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20211111BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20211111BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20211111BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20211111BHJP
【FI】
   F21S43/235
   F21S43/14
   F21V3/00 320
   F21Y101:00 100
   F21Y101:00 300
   F21Y115:10
   F21Y115:15
   F21Y115:30
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-204724(P2017-204724)
(22)【出願日】2017年10月23日
(65)【公開番号】特開2019-79655(P2019-79655A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 圭佑
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−147145(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02955090(EP,A1)
【文献】 特開2004−146169(JP,A)
【文献】 特表2013−513912(JP,A)
【文献】 特開2014−116142(JP,A)
【文献】 特開2010−021001(JP,A)
【文献】 特開2014−170629(JP,A)
【文献】 特開2015−069814(JP,A)
【文献】 特開2005−112316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/235
F21S 43/14
F21V 3/00
F21Y 101/00
F21Y 115/10
F21Y 115/15
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲がる方向に向かって車体を傾けることでコーナーを走行可能な車両に設けられた車両用灯具であって、
前記車両の後方に光を照射する第一ランプと、前記第一ランプよりも前記車両の前方に配置され前記車両の後方に光を照射する第二ランプと、を備え、
前記第一ランプは、光源と、前記光源から出射された光を拡散する光学部材と、を有し、
前記光学部材の少なくとも一部が透明な部材または透光性を有する部材から構成されていることにより、前記第二ランプが前記第一ランプを透過して視認可能であり、
前記光学部材は、前記光を拡散発光させる複数の第一発光領域と、前記光を拡散発光させない複数の非発光領域と、を有し、
前記光学部材は、前記複数の第一発光領域と前記複数の非発光領域とが交互に配置されて縞模様が形成されるように構成されている、車両用灯具。
【請求項2】
前記光学部材は、板状に形成されている、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第一発光領域は、光拡散材を含んだ材料から構成されている、請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記光学部材は、その外縁に配置されて光拡散材を含んだ材料から構成されている第二発光領域をさらに有し、
前記第一発光領域の発光強度よりも前記第二発光領域の発光強度が高くなるように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記第一ランプは、テールランプまたはストップランプとして機能し、
前記第二ランプは、ターンシグナルランプとして機能する、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
尾灯などを含む二輪車用テールランプが特許文献1などに知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−20905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動二輪車などに搭載されるリアランプは、テールランプ、ストップランプ、ターンシグナルランプ等の複数の標識灯を有するリアコンビネーションランプとして構成される場合がある。このリアコンビネーションランプについて、自車両の後方(例えば、後続車や歩行者)からの被視認性を高めることが求められている。
【0005】
本発明は、被視認性を向上可能な車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の車両用灯具は、
曲がる方向に向かって車体を傾けることでコーナーを走行可能な車両に設けられた車両用灯具であって、
前記車両の後方に光を照射する第一ランプと、前記第一ランプよりも前記車両の前方に配置され前記車両の後方に光を照射する第二ランプと、を備え、
前記第一ランプは、光源と、前記光源から出射された光を拡散する光学部材と、を有し、
前記光学部材の少なくとも一部が透明な部材または透光性を有する部材から構成されていることにより、前記第二ランプが前記第一ランプを透過して視認可能である。
【0007】
本開示の車両用灯具によれば、第二ランプよりも車両後方に配置された第一ランプの少なくとも一部が透明な部材または透光性を有する部材から構成されていることで第二ランプが第一ランプを透過して視認可能な構成となっている。これにより、車両後方のどの方向からも、第二ランプの被視認性を確保することができる。
【0008】
前記光学部材は、板状に形成されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、第二ランプの被視認性を確実に確保することができる。
【0010】
前記光学部材は、前記光を拡散発光させる第一発光領域と、前記光を拡散発光させない非発光領域と、を有し、
前記光学部材は、前記第一発光領域と前記非発光領域とが交互に配置されて縞模様が形成されるように構成されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、第二ランプの被視認性を確保しつつ、新規な意匠性を備えた第一ランプを提供することができる。
【0012】
前記第一発光領域は、光拡散材を含んだ材料から構成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、第一発光領域を容易に形成することができる。
【0014】
前記光学部材は、その外縁に配置されて光拡散材を含んだ材料から構成されている第二発光領域をさらに有し、
前記第一発光領域の発光強度よりも前記第二発光領域の発光強度が高くなるように構成されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、第一ランプの点灯時に、第一ランプの標識灯としての機能を維持しつつ、新規な意匠性を発揮することができる。
【0016】
前記第一ランプは、テールランプまたはストップランプとして機能し、
前記第二ランプは、ターンシグナルランプとして機能してもよい。
【0017】
この構成によれば、意匠性が高く斬新なコンビネーションランプとしての車両用灯具を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被視認性を向上可能な車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る車両用灯具を備えた車両の一部拡大斜視図である。
図2図1の車両用灯具のブロック図である。
図3図1の車両用灯具の上面側斜視図である。
図4図1の車両用灯具の下面側斜視図である。
図5図1の車両用灯具の上面図である。
図6図1の車両用灯具の左側面図である。
図7図1の車両用灯具の左側面側斜視図である。
図8】路面描画ランプの点灯制御の一例を説明するためのフローチャートである。
図9】路面描画ランプの点灯制御の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態における、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」とは、図1に示す車両について、説明の便宜上、設定された相対的な方向である。「前後方向」とは、「前方向」および「後方向」を含む方向である。「左右方向」とは、「左方向」および「右方向」を含む方向である。「上下方向」とは、「上方向」および「下方向」を含む方向である。
【0021】
図1は、本実施形態に係る車両の一例として自動二輪車100を示す。自動二輪車100は、曲がる方向に向かって車体を傾けることで道路のコーナー(カーブ)に沿って走行することが可能な車両である。本実施形態の車両は、この自動二輪車100のように、曲がる方向に向かって車体を傾けることでコーナーを走行可能な車両であればよく、車輪の数は限定されない。したがって、例えば自動三輪車、自動四輪車などであっても、この自動二輪車100と同様に走行可能であれば本実施形態の車両に含まれる。
【0022】
図1に示すように、自動二輪車100には、その後部に、車両用灯具1を有している。図2に示すように、車両用灯具1は、車両後方を照射可能なリアコンビネーションランプユニット2と、車両後方の路面上に路面描画パターンを形成可能な路面描画用ランプ4と、リアコンビネーションランプユニット2および路面描画用ランプ4の動作を制御する照明制御部5と、を備えている。
【0023】
リアコンビネーションランプユニット2は、例えば、左ストップランプ21Lと、右ストップランプ21Rと、左テール/ストップランプ23Lと、右テール/ストップランプ23Rと、左ターンシグナルランプ25Lと、右ターンシグナルランプ25Rとから構成されている。
【0024】
路面描画用ランプ4は、自動二輪車100の周囲の路面に所定の描画パターンを投影(照射)するための構成を備えている。路面描画用ランプ4としては、例えば、プロジェクタが挙げられる。本例では、路面描画用ランプ4は、自動二輪車100の後方の路面上に所定の路面描画パターン(例えば、図9の路面描画パターンP)を形成可能である。
【0025】
照明制御部5には、リアコンビネーションランプユニット2および路面描画用ランプ4が接続されているとともに、自動二輪車100の傾き状態(バンク角度)を検知するバンク角センサ6と、車両外部の環境情報を検知する外部センサ7(検知部の一例)とが接続されている。さらに、照明制御部5には、自動二輪車100の速度を検知するための速度センサ8等が接続されている。照明制御部5、バンク角センサ6、外部センサ7、および速度センサ8は、自動二輪車100の車体の所定位置に搭載されている。照明制御部5は、自動二輪車100に搭載されている統合制御部(車両ECU(Electronic Control Unit))の一機能として実現されてもよいし、リアコンビネーションランプユニット2や路面描画用ランプ4の灯室内に配置された制御装置の一機能として実現されてもよい。
【0026】
照明制御部5は、例えば、少なくとも一つの電子制御ユニット(ECU)により構成されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含む少なくとも一つのマイクロコントローラと、トランジスタ等のアクティブ素子およびパッシブ素子を含むその他電子回路を含んでもよい。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)および/またはTPU(Tensor Processing Unit)である。CPUは、複数のCPUコアによって構成されてもよい。GPUは、複数のGPUコアによって構成されてもよい。メモリは、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)を含む。ROMには、車両制御プログラムが記憶されてもよい。例えば、車両制御プログラムは、自動運転用の人工知能(AI)プログラムを含んでもよい。AIプログラムは、ディープラーニング等のニューラルネットワークを用いた教師有りまたは教師なし機械学習によって構築されたプログラムである。RAMには、車両制御プログラム、車両制御データおよび/または車両の周辺環境を示す周辺環境情報が一時的に記憶されてもよい。プロセッサは、記憶装置またはROMに記憶された車両制御プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されてもよい。
また、電子制御ユニットは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field−Programammable Gate Array)等の集積回路(ハードウェア資源)によって構成されてもよい。さらに、電子制御ユニットは、少なくとも一つのマイクロコントローラと集積回路との組み合わせによって構成されてもよい。
【0027】
バンク角センサ6は、自動二輪車100の車体が鉛直線に対して左右に傾斜したときの傾斜角を検知することが可能なセンサである。バンク角センサ6は、例えばジャイロセンサで構成されている。なお、自動二輪車100に搭載されたカメラで撮影した画像に基づいて車体の傾斜角を算出するようにしてもよい。
【0028】
外部センサ7は、自動二輪車100の周辺環境(例えば障害物、他車(前走車、対向車、後続車)、歩行者、道路形状、交通標識等)を含む自動二輪車100外部の環境情報を取得することが可能なセンサである。外部センサ7は、例えばLiDAR、カメラ、レーダ等の少なくとも一つで構成されている。
【0029】
LiDARとは、Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Rangingの略語である。LiDARは、一般にその前方に非可視光を出射し、出射光と戻り光とに基づいて、物体までの距離、物体の形状、物体の材質、物体の色などの情報を取得するセンサである。
カメラは、例えば、CCD(Charge−Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラは、可視光を検出するカメラや、赤外線を検出する赤外線カメラを含む。
レーダは、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ又はレーザーレーダ等を含む。
【0030】
バンク角センサ6、外部センサ7および速度センサ8によって検知された各情報は、照明制御部5へ送信される。照明制御部5は、各センサ6〜8から送信されてきた情報に基づいて、リアコンビネーションランプユニット2の各ランプ、および路面描画用ランプ4の動作を制御する。例えば、照明制御部5は、各センサ6〜8の検知情報に基づいて、リアコンビネーションランプユニット2の各ランプを制御し、自動二輪車100の周囲(特に後方)から視認される照明パターンを調整することが可能である。さらに、照明制御部5は、各センサ6〜8の検知情報に基づいて路面描画用ランプ4を制御し、自動二輪車100の後方の路面上に形成される路面描画パターンを調整することが可能である。
【0031】
図3は、図1の自動二輪車100に搭載された車両用灯具1の上面側斜視図であり、図4は、車両用灯具1の下面側斜視図である。また、図5は、車両用灯具1の上面図であり、図6は、車両用灯具1の左側面図である。
図3〜6に示すように、自動二輪車100の後部には、タンデムシート101から後方側へ突出する突出部103が設けられている。突出部103の後端側には、外部センサ7の一例として、カメラ7AおよびLiDAR7Bが搭載されている。すなわち、カメラ7AおよびLiDAR7Bにより、自動二輪車100の後方の環境情報を取得することができる。
【0032】
また、自動二輪車100の後部には、空気抵抗を減らすための車体カバーとして、第一カウル105L,105Rおよび第二カウル107L,107Rが設けられている。
【0033】
左右一対の第一カウル105L,105Rは、タンデムシート101の下方に取り付けられ、上方および斜め後方へ向けて延出するように配置されている。図4に示すように、左側の第一カウル105Lは、車両後面視において、カメラ7AおよびLiDAR7Bが搭載された突出部103の左側に、後述のリアコンビネーションランプユニット2のうち左テール/ストップランプ23Lおよび左ターンシグナルランプ25Lを配置可能な空間を形成するように湾曲した形状に形成されている。また、右側の第一カウル105Rは、車両後面視において、突出部103の右側に、リアコンビネーションランプユニット2のうち右テール/ストップランプ23Rおよび右ターンシグナルランプ25Rを配置可能な空間を形成するように湾曲した形状に形成されている。
【0034】
左右一対の第二カウル107L,107Rは、車両上面視において略L字状に形成された第一カウル105L,105Rの屈曲部105L1,105R1の外側にそれぞれ配置されている。左側の第二カウル107Lは、上下方向に延びる第一領域107L1と、第一領域107L1の上端から前後方向に延びる第二領域107L2とから構成されている。また、右側の第二カウル107Rは、上下方向に延びる第一領域107R1と、第一領域107R1の上端から前後方向に延びる第二領域107R2とから構成されている。
【0035】
左右の第一カウル105L,105Rの後端面には、不図示の光源および導光体により構成された発光部がそれぞれ設けられており、この発光部が左ストップランプ21Lおよび右ストップランプ21Rとしてそれぞれ機能する。
【0036】
突出部103の左側面側および右側面側には、左テール/ストップランプ23Lと、右テール/ストップランプ23Rがそれぞれ配置されている。左テール/ストップランプ23Lおよび右テール/ストップランプ23Rは、複数の光源41(右テール/ストップランプ23Rの光源は不図示)と、当該複数の光源41から出射された光を拡散する導光体43L,43R(光学部材の一例)とをそれぞれ有している。図4に破線にて示すように、複数の光源41は、突出部103の内部に設けられている。光源41としては、ランプ光源や発光素子が使用されうる。ランプ光源の例としては、白熱ランプ、ハロゲンランプ、放電ランプ、ネオンランプなどが挙げられる。発光素子の例としては、発光ダイオード、レーザダイオード、有機EL素子などが挙げられる。
【0037】
導光体43L,43Rは、略長方形の平坦な板状体として形成されており、突出部103から左右方向にそれぞれ突出するように配置されている。導光体43L,43Rは、透明な樹脂材料から構成されている。導光体43L,43Rに用いられる樹脂材料としては、例えばポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等の、透明な熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂を挙げることができる。
【0038】
導光体43L,43Rは、光源41から出射された光を拡散発光させる第一発光領域43L1,43R1と、光源41から出射された光を拡散発光させない非発光領域43L2,43R2と、を有している。導光体43L,43Rは、帯状の第一発光領域43L1,43R1と帯状の非発光領域43L2,43R2とが交互に配置されて縞模様が形成されるように構成されている。第一発光領域43L1,43R1は、例えば、透光性を有し、かつ、光源41から出射された光を拡散するための光拡散材を含む樹脂材料から構成されている。これにより、第一発光領域43L1,43R1は、光源41から出射された光を拡散発光させることができる。光拡散材としては、例えば二酸化チタン粒子を挙げることができる。なお、非発光領域43L2,43R2には光拡散材は含まれていないため、光源41から出射された光を拡散させることはない。
【0039】
導光体43L,43Rは、その外縁に配置され光拡散材を含んだ第二発光領域43L3,43R3をさらに有している。第二発光領域43L3,43R3に含まれる光拡散材は、その密度が第一発光領域43L1,43R1に含まれる光拡散材の密度よりも高くなるように設定されており、これにより、第一発光領域43L1,43R1の発光強度よりも第二発光領域43L3,43R3の発光強度が高くなるように構成されている。
【0040】
左右の第二カウル107L,107Rの第一領域107L1,107R1には、不図示の光源および導光体により構成された発光部がそれぞれ設けられており、この発光部が左ターンシグナルランプ25Lおよび右ターンシグナルランプ25Rとして機能する。すなわち、左ターンシグナルランプ25Lは、左テール/ストップランプ23Lとしての機能を発揮する導光体43Lに対して車両前方側に配置されている。同様に、右ターンシグナルランプ25Rは、右テール/ストップランプ23Rとしての機能を発揮する導光体43Rに対して車両前方側に配置されている。
【0041】
突出部103の下面には、路面描画用ランプ4が配置されている。路面描画用ランプ4は、例えば図9に示すように、自動二輪車100の後方の路面上に複数の帯状ラインを照射して扇状の路面描画パターンPを形成することができる。なお、路面描画用ランプ4の搭載位置は、自動二輪車100の後方の路面上に路面描画パターンPを形成することができる位置であればよく、本実施形態で例示した位置に限られるものではない。
【0042】
照明制御部5は、自動二輪車100の状態に応じて、リアコンビネーションランプユニット2の各ランプ21L,21R,23L,23R,25L,25Rおよび路面描画用ランプ4の照明状態を変化させるように構成されている。例えば、照明制御部5は、自動二輪車100の運転者のブレーキ制御に基づいて、左ストップランプ21L、右ストップランプ21R、左テール/ストップランプ23L、および右テール/ストップランプ23Rを点灯させるように構成されていてもよい。また、照明制御部5は、自動二輪車100の運転者の方向指示入力に基づいて、左ターンシグナルランプ25Lおよび右ターンシグナルランプ25Rのいずれか一方を点灯させるように構成されていてもよい。また、照明制御部5は、リアコンビネーションランプユニット2の各ランプの点灯タイミングと同時またはリアコンビネーションランプユニット2の各ランプの点灯タイミングに連動して、路面描画用ランプ4により路面描画パターンPを路面上に形成させるように構成されていてもよい。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具1は、自動二輪車100の後方に光を照射する左右のテール/ストップランプ23L,23R(第一ランプの一例)と、左右のテール/ストップランプ23L,23Rよりも自動二輪車100の前方に配置されて自動二輪車100の後方に光を照射する左右のターンシグナルランプ25L,25R(第二ランプの一例)と、を備えている。テール/ストップランプ23L,23Rは、光源41と、光源41から出射された光を拡散する導光体43L,43Rと、を有している。そして、導光体43L,43Rが透明な部材から構成されていることにより、ターンシグナルランプ25L,25Rは、テール/ストップランプ23L,23Rの導光体43L,43Rを透過して視認可能となるように構成されている。この構成によれば、図4図7に示すように、ターンシグナルランプ25L,25Rよりも手前側にテール/ストップランプ23L,23Rが配置されるような方向からでも、導光体43L,43Rを介してターンシグナルランプ25L,25Rの点灯を認識することができる。すなわち、車両後方のどの方向からも、ターンシグナルランプ25L,25Rの被視認性を確保することができる。
【0044】
また、テール/ストップランプ23L,23Rの導光体43L,43Rは板状に形成されているため、ターンシグナルランプ25L,25Rの被視認性を確実に確保することができる。なお、上記の例では、テール/ストップランプ23L,23Rの導光体43L,43Rは透明部材から構成されているが、ターンシグナルランプ25L,25Rが透過して視認可能な程度の透光性を有する部材(例えば、半透明な部材)から構成されていてもよい。また、上記の例では、導光体43L,43Rの全体が透明な部材から構成されているが、ターンシグナルランプ25L,25Rが導光体43L,43Rを透過して視認可能である限りにおいて、導光体43L,43Rの一部が非透明な部材から構成されていてもよい。
【0045】
また、導光体43L,43Rは、光源41から出射された光を拡散発光させる第一発光領域43L1,43R1と、光源41から出射された光を拡散発光させない非発光領域43L2,43R2とが交互に配置されて縞模様が形成されるように構成されている。これにより、ターンシグナルランプ25L,25Rの被視認性を確保しつつ、新規な意匠性を備えたテール/ストップランプ23L,23Rを提供することができる。
【0046】
また、導光体43L,43Rは、その外縁に配置され光拡散材を含んだ材料から構成されている第二発光領域43L3,43R3をさらに有し、第一発光領域43L1,43R1の発光強度よりも第二発光領域43L3,43R3の発光強度が高くなるように構成されている。これにより、第二発光領域43L3,43R3を発光させることでテール/ストップランプ23L,23Rの標識灯としての機能を維持しつつ、縞模様を形成する第一発光領域43L1,43R1を発光させることで新規な意匠性を備えたテール/ストップランプ23L,23Rを提供することができる。
【0047】
次に、本実施形態に係る路面描画用ランプ4の点灯制御処理の一例について図8および図9を参照して説明する。
まず、照明制御部5は、外部センサ7(例えば、突出部103の後端面に配置されたカメラ7AおよびLiDAR7B)からの検知信号を受信し、自動二輪車100の周囲の環境情報を取得する(ステップS10)。
【0048】
次に、照明制御部5は、ステップS10において取得した環境情報に基づいて、自車両である自動二輪車100と対象物(例えば、図9の後続車V)との車間距離が第一の距離以下であるどうかを判定する(ステップS12)。第一の距離は、例えば、7〜10m程度である。ステップS12において、車間距離が第一の距離以下であると判定された場合には(ステップS12のYes)、照明制御部5は、路面描画用ランプ4を連続点灯させる(ステップS14)。これにより、自動二輪車100の後方の路面上に複数の帯状ラインで構成された扇状の路面描画パターンPが連続的に照射される(図9参照)。
【0049】
次に、照明制御部5は、自動二輪車100と後続車Vとの車間距離が第二の距離以下であるどうかを判定する(ステップS16)。第二の距離は、例えば、4〜7m程度である。ステップS16において、車間距離が第二の距離以下であると判定された場合には(ステップS16のYes)、照明制御部5は、路面描画用ランプ4を点滅させる(ステップS18)。これにより、路面描画パターンPが点滅照射される。
【0050】
次に、照明制御部5は、車間距離が第二の距離以下であるどうかを判定する(ステップS20)。ステップS20において、車間距離が第二の距離以下ではない(すなわち、車間距離が第二の距離よりも長い)と判定された場合には(ステップS20のNo)、照明制御部5は、路面描画用ランプ4を連続点灯させる(ステップS22)。これにより、路面描画パターンPが再び連続的に照射される。
【0051】
次に、照明制御部5は、車間距離が第一の距離以下であるかどうかを判定する(ステップS24)。ステップS24において、車間距離が第一の距離以下ではない(すなわち、車間距離が第一の距離よりも長い)と判定された場合には(ステップS24のNo)、照明制御部5は、連続点灯中の路面描画用ランプ4を消灯させる(ステップS26)。これにより、路面描画パターンPが消える。その後、照明制御部5は、処理をステップS12へ戻す。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具1は、自動二輪車100の後方の路面に路面描画パターンPを形成する路面描画用ランプ4と、自動二輪車100の後続車Vを検知する外部センサ7(例えば、カメラ7AおよびLiDAR7B)と、路面描画用ランプ4を制御する照明制御部5と、を備えている。そして、照明制御部5は、外部センサ7から取得した後続車Vに関する検知情報(第一検知情報の一例)に基づいて、例えば、自動二輪車100と後続車Vとの車間距離が一定の距離(例えば、第一の距離)以下となった場合に、路面描画パターンPを形成するように路面描画用ランプ4を制御する。この構成によれば、自動二輪車100と後続車Vとの車間距離が短くなった場合に自動二輪車100の後方の路面に路面描画パターンPを形成することで、後続車Vの運転者へ自動二輪車100への接近を報知することができる。これにより、後続車Vの運転者へ自動二輪車100との車間距離を適切に確保するよう促すことができる。
【0053】
なお、自動二輪車100の周囲の路面上に形成される路面描画パターンは、図9に示す路面描画パターンPの形状に限られるものではない。例えば、車間距離に関する情報(例えば、「接近注意!」や「車間距離:○○m」)を含むような路面描画パターンを形成してもよい。これにより、路面描画パターンが車間距離を確保することを促すためのものであることを、後続車Vの運転者が容易に認識することができる。
【0054】
また、上記の実施形態においては、自動二輪車100の後部(リアコンビネーションランプユニット2の近傍)に路面描画用ランプ4を配置し、路面描画用ランプ4から出射された光により自動二輪車100の後方の路面上に路面描画パターンPを形成するようにしているが、この例に限られない。自動二輪車100の前部または側部に路面描画用ランプを設け、自動二輪車100と車両前方または車両側方の対象物(例えば、先行車、並走車、対向車、歩行者など)との距離が一定距離以下となった場合に、自動二輪車100の前方や側方の路面上に所定の路面描画パターンを形成するようにしてもよい。この構成により、自動二輪車100の周囲の車両の運転者や歩行者へ自動二輪車100との接近を報知することができるとともに、自動二輪車100の運転者に対しても周囲の対象物との接近を報知することができる。
【0055】
また、照明制御部5は、自動二輪車100と後続車Vとの車間距離に応じて、路面描画パターンPの表示態様を変更するように構成されている。具体的には、照明制御部5は、自動二輪車100と後続車Vとの車間距離に複数のしきい値(第一の距離および第二の距離)を設けておき、車間距離が第一の距離以下である場合には路面描画パターンPを路面上に連続照射し、車間距離が第二の距離以下である場合には路面描画パターンPを点滅照射するように構成されている。これにより、後続車Vの運転者への路面描画パターンPを用いた注意喚起をより効果的に行うことができる。なお、照明制御部5は、路面描画パターンPの全体を点滅照射させる代わりに、路面描画パターンPを構成する複数の帯状ラインを段階的に照射(シーケンシャル発光)させてもよい。また、照明制御部5は、車間距離が第二の距離以下である場合には、路面描画パターンの形状を路面描画パターンPとは異なる形状に変更するように構成されてもよい。
【0056】
また、照明制御部5は、後続車Vに関する検知情報とは異なる検知情報(第二検知情報の一例)を取得可能に構成されていてもよい。この第二検知情報は、自動二輪車100の車速に関する情報、自動二輪車100の車速の変化状態に関する情報、および天候に関する情報の少なくとも1つを含んでいることが好ましい。このように、照明制御部5は、自動二輪車100と後続車Vとの車間距離以外の他の条件を加えて路面描画パターンPを形成することにより、後続車Vの運転者へ対して、より効果的な注意喚起を行うことができる。例えば、自動二輪車100が高速走行している場合、自動二輪車100が急ブレーキをかけた場合、悪天候の場合などの車間距離の確保が重要な場面においては、路面描画パターンPの照射のタイミングを早めたり、後続車Vの運転者からの視認性の高い路面描画パターンPを形成したりすることが好ましい。そのため、第二検知情報に基づいて、車間距離のしきい値である第一の距離を通常よりも長い距離(例えば、10〜13m程度)に設定することで、車間距離の確保が重要な場面においても後続車Vの運転者へ確実な注意喚起を行うことができる。また、第一の距離の設定を変更する代わりに、または第一の距離の設定を変更することに加えて、車間距離が第一の距離以下である場合に、路面描画用ランプ4を点滅させて路面描画パターンPを点滅照射するようにしてもよい。
【0057】
また、照明制御部5は、第一検知情報に応じて路面描画用ランプ4を点灯させて路面上に路面描画パターンPを形成する第一モードと、自動二輪車100の運転者の入力指示に応じて路面描画用ランプ4を点灯させて路面上に路面描画パターンPを形成する第二モードとを有していることが好ましい。このように、照明制御部5が、自動二輪車100の運転者の入力指示に基づいて路面描画パターンPを形成可能な第二モードを有していることにより、当該運転者が後続車Vへの注意喚起が必要と判断した場合にも、路面描画パターンPを適切に形成することができる。
【0058】
なお、上記の実施形態では、LiDAR、カメラ、レーダ等の少なくとも一つで構成されている外部センサ7により車両周囲の対象物(例えば、後続車V)に関する第一検知情報を取得しているが、この例に限られない。例えば、照明制御部5は、基地局装置との路車間通信、または他車の車載器との車車間通信を用いて第一検知情報を取得してもよい。また、照明制御部5は、外部センサ7による検知信号と、路車間通信や車車間通信とを組み合わせて、第一検知情報を取得してもよい。このように、路車間通信や車車間通信を用いることで、多様な検知情報を取得することができる。
【0059】
図8に示す各ステップで規定される処理の順番はあくまでも一例であって、これらのステップの順番は適宜変更可能である。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0061】
1:車両用灯具、2:リアコンビネーションランプユニット、4:路面描画用ランプ、5:照明制御部、6:バンク角センサ、7:外部センサ(検知部の一例)、8:速度センサ、21L:左ストップランプ、21R:右ストップランプ、23L:左テール/ストップランプ、23R:右テール/ストップランプ、25L:左ターンシグナルランプ、25R:右ターンシグナルランプ、41:光源、43L,43R:導光体(光学部材の一例)、43L1,43R1:第一発光領域、43L2,43R2:非発光領域、43L3,43R3:第二発光領域、100:自動二輪車(車両の一例)、101:タンデムシート、103:突出部、105L,105R:第一カウル、105L1,105R1:屈曲部、107L,107R:第二カウル、107L1,107R1:第一領域、107L2,107R2:第二領域、P:路面描画パターン、V:後続車
図1
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