特許第6971140号(P6971140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧 ▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許6971140-回転電機の駆動装置 図000002
  • 特許6971140-回転電機の駆動装置 図000003
  • 特許6971140-回転電機の駆動装置 図000004
  • 特許6971140-回転電機の駆動装置 図000005
  • 特許6971140-回転電機の駆動装置 図000006
  • 特許6971140-回転電機の駆動装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971140
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】回転電機の駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/74 20060101AFI20211111BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20211111BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20211111BHJP
【FI】
   H02P5/74
   H02M7/493ZHV
   H02M7/48 E
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-239990(P2017-239990)
(22)【出願日】2017年12月14日
(65)【公開番号】特開2019-106848(P2019-106848A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 亮太郎
(72)【発明者】
【氏名】金城 博文
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 悠二
(72)【発明者】
【氏名】八田 素嘉
(72)【発明者】
【氏名】川崎 宏治
【審査官】 島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−304868(JP,A)
【文献】 特開2003−134885(JP,A)
【文献】 特開2013−219907(JP,A)
【文献】 特開2014−165982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/74
H02M 7/493
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機の駆動装置であって、
バッテリと、
前記バッテリと前記回転電機との間に並列に設けられた3つ以上のインバータであって、スイッチング素子を含み、前記スイッチング素子のスイッチング動作によって直流と交流との間で電力を変換する3つ以上のインバータと、
各インバータの直流側の正極を流れる電流値を検出する複数の電流センサと、
前記3つ以上のインバータそれぞれに制御信号を送ることで、各インバータが有する前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御装置であって、前記複数の電流センサの検出値に基づいて、直流側の正極における電流リプルの振幅が最大となるインバータを特定し、特定した前記インバータに対する制御信号の位相を、その他の複数のインバータに対する前記制御信号の位相とは異なる位相とする制御装置と、
を備えることを特徴とする回転電機の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の駆動装置に関し、特に、スイッチング素子を含む複数のインバータを備えた駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機を駆動力源として用いる電気自動車やハイブリッド自動車などの電動車両が知られている。このような電動車両には、回転電機を駆動するための駆動装置が搭載される。駆動装置は、バッテリと、スイッチング素子を含むインバータとを含んで構成される。スイッチング素子がスイッチング動作することにより、インバータにおいて直流と交流との間で電力が変換される。これにより、バッテリからの直流電力を交流電力に変換して回転電機に供給すると共に、回転電機からの交流電力を直流電力に変換してバッテリに供給することができる。
【0003】
駆動装置は、バッテリと回転電機の間に並列に設けられた複数のインバータを有する場合がある。例えば、電動車両に複数の回転電機が設けられた場合には、各回転電機に対応した複数のインバータが設けられる。また、例えば1つの回転電機が6相モータである場合などには、1つの回転電機に対して複数のインバータが設けられる場合もある。
【0004】
インバータに含まれるスイッチング素子がスイッチング動作することにより、直流電力に電流リプルが生じる。電流リプルは、スイッチング素子のスイッチング周波数に応じた周波数を有する脈動である。バッテリとインバータとの間に昇圧コンバータを持たない駆動装置においては、インバータからの電流リプルが直接バッテリに印加され、これによりバッテリの劣化などの問題が生じ得る。
【0005】
特に、バッテリと回転電機との間に複数のインバータが並列に設けられている場合、各インバータにより生じた電流リプルが合計されることで、大きな電流リプルがバッテリに印加される場合があった。
【0006】
従来、バッテリと回転電機との間に複数のインバータが並列に設けられた構成において、各インバータからの電流リプルを合計した合計電流リプルを抑制する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、2つの回転電機に対応した2つのインバータを有する構成において、第1インバータと第2インバータとの間で、スイッチング素子を制御するスイッチング周波数を互いに異なる周波数とすることで、各インバータからの合計電流リプルを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−157171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、各インバータのスイッチング周波数を異なる周波数とすることで、各インバータからの合計電流リプルを抑制し得る。しかしながら、インバータのスイッチング周波数を変更すると問題が生じる場合がある。例えば、スイッチング周波数を最適値から増加させた場合には、インバータのスイッチング損失が増加するという問題が生じる。また、スイッチング周波数を増加させた場合、インバータにおける発熱量が増加するという問題も指摘できる。一方、スイッチング周波数を最適値から低下させた場合、回転電機のトルクリップルが増加するという問題が生じ得る。
【0009】
本発明の目的は、バッテリと回転電機との間に複数のインバータが並列に設けられた構成において、各インバータのスイッチング周波数を変更することなく、各インバータからの合計電流リプルを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、回転電機の駆動装置であって、バッテリと、前記バッテリと前記回転電機との間に並列に設けられた複数のインバータであって、スイッチング素子を含み、前記スイッチング素子のスイッチング動作によって直流と交流との間で電力を変換する複数のインバータと、前記複数のインバータそれぞれに制御信号を送ることで、各インバータが有する前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御装置であって、前記複数のインバータのうち少なくとも1つのインバータに対する制御信号の位相を、その他のインバータに対する前記制御信号の位相とは異なる位相とする制御装置と、を備えることを特徴とする回転電機の駆動装置である。
【0011】
インバータからの電流リプルの位相は、当該インバータに対する制御信号の位相に応じた位相となる。したがって、複数のインバータのうち少なくとも1つのインバータに対する制御信号の位相を、その他のインバータに対する制御信号の位相とは異なる位相とすることで、当該1つのインバータからの電流リプルの位相と、他のインバータからの電流リプルの位相とを異なる位相とすることができる。これにより、複数のインバータからの電流リプルが合計されたときに、当該1つのインバータからの電流リプルと、他のインバータからの電流リプルとが打ち消しあうために、合計電流リプルを抑制することができる。すなわち、バッテリに印加される電流リプルが抑制される。
【0012】
望ましくは、前記インバータは3つ以上設けられ、各インバータの直流側の正極を流れる電流値を検出する複数の電流センサをさらに備え、前記制御装置は、前記複数の電流センサの検出値に基づいて、直流側の正極における電流リプルの振幅が最大となるインバータに対する制御信号の位相を、その他の複数のインバータに対する前記制御信号の位相とは異なる位相とする、ことを特徴とする。
【0013】
直流側の正極における電流リプルの振幅が最大となるインバータに対する制御信号の位相を、その他のインバータに対する前記制御信号の位相とは異なる位相とすることで、複数のインバータからの電流リプルのうち振幅が最大の電流リプルの位相と、他の複数のインバータからの電流リプルの位相とを異なる位相とすることができる。これにより、複数のインバータからの電流リプルが合計されたときに、振幅が最大の電流リプルが、その他の複数のインバータからの複数の電流リプルによって打ち消されるから、合計電流リプルの抑制効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バッテリと回転電機との間に複数のインバータが並列に設けられた構成において、各インバータのスイッチング周波数を変更することなく、各インバータからの合計電流リプルを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る回転電機の駆動装置の構成概略図である。
図2】第1実施形態における、各インバータに対する制御信号と、各インバータの直流側の正極における電流リプルとの位相関係、及び、バッテリに印加される電流リプルの振幅を示す図である。
図3】第2実施形態に係る回転電機の駆動装置の構成概略図である。
図4】第2実施形態における、各インバータに対する制御信号と、各インバータの直流側の正極における電流リプルとの位相関係、及び、バッテリに印加される電流リプルの振幅を示す図である。
図5】第3実施形態に係る回転電機の駆動装置の構成概略図である。
図6】第4実施形態に係る回転電機の駆動装置の構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る回転電機の駆動装置の構成概略図である。本実施形態における駆動装置は、2つの回転電機MG1及びMG2を駆動するものである。本実施形態においては、回転電機MG1及びMG2及び駆動装置は、ハイブリッド自動車や電気自動車などの電動車両に設けられる。
【0018】
回転電機MG1及びMG2は、複数相(第1実施形態では3相)の交流により動作する交流回転電機であり、電動機としても発電機としても機能することができる。2つの回転電機MG1及びMG2が設けられることで、一方の回転電機MG1を電動車両の駆動力源としている間に、他方の回転電機MG2で発電することが可能となっている。
【0019】
駆動装置は、バッテリ10、2つのインバータ12a及び12b、正極電力線P1及びP2、負極電力線N1及びN2、制御装置14、ドライブ回路16、並びに、各インバータに対応する平滑コンデンサ18a及び18bを含んで構成される。
【0020】
バッテリ10は、直流電力を出力する二次電池であり、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などである。バッテリ10は、複数の電池セル22、バッテリ10内部の配線であるバスバを含んで構成されている。バッテリ10は、200〜400[V]程度の高電圧を出力可能となっている。また、バッテリ10には、内部抵抗(抵抗成分)24や内部インダクタンス(誘導成分)26を含む内部インピーダンスが存在する。
【0021】
インバータ12a及び12bは、バッテリ10と、回転電機MG1及びMG2との間に並列に設けられる。具体的には、インバータ12aは、バッテリ10と回転電機MG1との間に設けられ、インバータ12bは、バッテリ10と回転電機MG2との間に設けられる。
【0022】
インバータ12aは、複数のスイッチング素子32を含んで構成される。スイッチング素子32としては、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などのパワー半導体素子が用いられる。複数のスイッチング素子32により、回転電機MG1の各相に対応する複数のアームが構成される。図1に示すように、直流側の正極と負極との間に2つのスイッチング素子32が直列に接続されて1つのアームが構成され、そのようなアームが3相分構成される。なお、各スイッチング素子32に対してはフリーホイールダイオード(回生ダイオード)34が並列に接続される。
【0023】
複数のスイッチング素子32がスイッチング動作することによって、バッテリ10からの直流電力が3相の交流電力に変換されて回転電機MG1に供給される。また、複数のスイッチング素子32がスイッチング動作することによって、回転電機MG1が発電した交流電力が直流電力に変換されてバッテリ10に供給される。
【0024】
インバータ12bもインバータ12aと同様の構成を有する。
【0025】
正極電力線P1は、バッテリ10の正極とインバータ12aの直流側の正極(以下単にインバータ12aの正極と記載する、インバータ12bについても同様)とを接続するラインである。負極電力線N1は、バッテリ10の負極とインバータ12aの直流側の負極(以下単にインバータ12aの負極と記載する、インバータ12bについても同様)とを接続するラインである。また、正極電力線P2は、バッテリ10の正極とインバータ12bの正極とを接続するラインである。負極電力線N2は、バッテリ10の負極とインバータ12bの負極とを接続するラインである。
【0026】
上述のように、2つのインバータ12a及び12bは、バッテリ10と回転電機MG1及びMG2との間に並列に設けられるため、正極電力線P1及びP2は、バッテリ10側の一部分が共用ラインとなっており、共通正極電力線Pcとなっている。同様に、負極電力線N1及びN2は、バッテリ10側の一部分が共用ラインとなっており、共通負極電力線Ncとなっている。
【0027】
正極電力線P1及び負極電力線N1は、電力線抵抗28a及び電力線インダクタンス30aを有している。同様に、正極電力線P2及び負極電力線N2は、電力線抵抗28b及び電力線インダクタンス30bを有している。なお、図1においては、電力線抵抗28aが、正極電力線P1の抵抗と負極電力線N1の抵抗の双方を表し、電力線インダクタンス30aが、正極電力線P1のインダクタンスと負極電力線N1のインダクタンスの双方を表している。また、電力線抵抗28bが、正極電力線P2の抵抗と負極電力線N2の抵抗の双方を表し、電力線インダクタンス30bが、正極電力線P2のインダクタンスと負極電力線N2のインダクタンスの双方を表している。
【0028】
制御装置14は、マイクロコンピュータなどから構築されたECU(Electronic Control Unit)を含んで構成されている。制御装置14は、インバータ12a及び12bが有する複数のスイッチング素子32をオンあるいはオフさせるための制御信号を生成してインバータ12a及び12bに供給することで、インバータ12a及び12bのスイッチング素子32のスイッチング制御を行う。制御装置14は、上位の制御部(不図示)からの要求信号(例えば回転電機MGの動作指示)とキャリア信号(例えば三角波)とに基づいて、制御信号を生成する。制御信号は、制御装置14が設定した周波数及び位相を有する周期的な信号であり、本実施形態では矩形波である。ちなみに、複数のスイッチング素子32のスイッチング周波数は、キャリア信号の周波数に応じて決定される。
【0029】
ドライブ回路16は、例えば増幅回路、及びフォトカプラあるいはトランスなどの絶縁素子を含んで構成される。ドライブ回路16は、低電圧系の制御装置14からの制御信号を高電圧系の制御信号に変換してインバータ12a及び12bに供給する。
【0030】
インバータ12aが有する複数のスイッチング素子32がスイッチング動作することで、正極電力線P1に電流リプルが発生する。電流リプルは、インバータ12aが有するスイッチング素子32のスイッチング周波数に応じた周波数を有する脈動である。同様に、インバータ12bが有する複数のスイッチング素子32がスイッチング動作することで、正極電力線P2に電流リプルが発生する。
【0031】
平滑コンデンサ18aは、正極電力線P1と負極電力線N1との間に接続される。平滑コンデンサ18aは、インバータ12aからの電流リプルを抑制する効果を発揮する。平滑コンデンサ18bは、正極電力線P2と負極電力線N2との間に接続される。平滑コンデンサ18bは、インバータ12bからの電流リプルを抑制する効果を発揮する。
【0032】
平滑コンデンサ18a及び18bは、インバータ12a及び12bからの電流リプルを抑制する効果を発揮するが、電流リプルを完全に取り除くことはできない。特に、平滑コンデンサ18aが設けられたことで、電池セル22の負極→負極電力線N1→平滑コンデンサ18a→正極電力線P1→電池セル22の正極の直列回路が形成される。当該直列回路は、平滑コンデンサ18a、内部インダクタンス26、及び電力線インダクタンス30aを有していることから、電流リプルの周波数によっては、直列回路は直列共振回路となり得て、インバータ12aからの電流リプルが増幅される場合がある。同様に、電池セル22の負極→負極電力線N2→平滑コンデンサ18b→正極電力線P2→電池セル22の正極の直列回路においても、インバータ12bからの電流リプルが増幅される場合がある。
【0033】
上述のように、インバータ12aからの電流リプル及びインバータ12bからの電流リプルがバッテリ10に印加され得る。特に、本実施形態における駆動回路においては、共通正極電力線Pc(あるいは共通負極電力線Nc)が形成されているから、共通正極電力線Pcにおいて、インバータ12aから正極電力線P1を介して伝播してきた電流リプルと、インバータ12bから正極電力線P2を介して伝播してきた電流リプルとが合計され、振幅の大きい合計電流リプルがバッテリ10に印加され得る。
【0034】
本実施形態においては、制御装置14は、インバータ12aに対する制御信号の位相を、インバータ12bに対する制御信号の位相とは異なる位相とすることで、バッテリ10に印加される電流リプルを抑制する。
【0035】
以下、図2を参照しながら本実施形態の効果について説明する。図2は、インバータ12a及び12bに対する制御信号と、インバータ12a及び12bの正極における電流リプルとの位相関係、及び、バッテリ10に印加される電流リプルの振幅を示す図である。
【0036】
図2(a)は、インバータ12aに対する制御信号と、インバータ12bに対する制御信号とが同位相である場合の図である。インバータ12aの正極における電流リプルの周波数は、インバータ12aに対する制御信号の周波数の2倍の周波数となっており、インバータ12bの正極における電流リプルの周波数は、インバータ12bに対する制御信号の周波数の2倍の周波数となっている。そして、インバータ12aの正極における電流リプルの位相は、インバータ12aに対する制御信号の位相に応じた位相となる。同様に、インバータ12bの正極における電流リプルの位相は、インバータ12bに対する制御信号の位相に応じた位相となる。
【0037】
したがって、インバータ12aに対する制御信号と、インバータ12bに対する制御信号とが同位相であると、インバータ12aの正極における電流リプルの位相と、インバータ12bの正極における電流リプルの位相が同位相となる。つまり、両電流リプルのピークのタイミングが一致してしまう。したがって、インバータ12aからの電流リプルと、インバータ12bからの電流リプルが共通正極電力線Pcにおいて合計されると、合計電流リプルの振幅が大きくなってしまう。これにより、バッテリ10(特に電池セル22)に振幅が大きい電流リプルが印加されてしまう。
【0038】
図2(b)には、本実施形態において、インバータ12aに対する制御信号の位相を、インバータ12bに対する制御信号の位相とは異なる位相とした場合の図である。制御信号において、実線がインバータ12aに対する制御信号の波形であり、破線がインバータ12bに対する制御信号の波形である。図2(b)に示す通り、本実施形態では、インバータ12aに対する制御信号とインバータ12bに対する制御信号は、約90度位相がずれている。
【0039】
このようにすることで、インバータ12aの正極における電流リプルの位相と、インバータ12bの正極における電流リプルの位相とを異なる位相とすることができる。すなわち、両電流リプルのピークとなるタイミングをずらすことができる。
【0040】
したがって、インバータ12aからの電流リプルと、インバータ12bからの電流リプルが共通正極電力線Pcにおいて合計されると、両電流リプルが互いに打ち消しあうことになる。これにより、共通正極電力線Pcにおいて合計電流リプルの振幅を抑制することができる。これにより、バッテリ10に印加される電流リプルが抑制される。
【0041】
上述の通り、本実施形態によれば、インバータ12aに対する制御信号の位相とインバータ12bに対する制御信号の位相を異なる位相とすることで、バッテリ10に印加される電流リプルが抑制される。すなわち、本実施形態によれば、インバータ12a及び12bに対する制御信号の周波数を変更することなく、バッテリ10に印加される電流リプルを抑制することができる。
【0042】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態に係る回転電機の駆動装置の構成概略図である。第2実施形態における駆動装置は、3つの回転電機MG1〜MG3を駆動するものである。第2実施形態における回転電機MG1〜MG3、バッテリ10、インバータ12a〜12c、平滑コンデンサ18a〜18c、制御装置14、及びドライブ回路16の各部は第1実施形態と同様のものであるため、ここではそれら個々の説明は省略する。なお、図3においては、バッテリ10の内部抵抗及び内部インダクタンス、並びに、正極電力線P1〜P3及び負極電力線N1〜N3の電力線抵抗及び電力線インダクタンスの図示は省略されている。
【0043】
第2実施形態においては、3つのインバータ12a〜12cが、バッテリ10と、3つの回転電機MG1〜MG3との間に並列に設けられる。具体的には、インバータ12aは、バッテリ10と回転電機MG1との間に設けられ、インバータ12bは、バッテリ10と回転電機MG2との間に設けられ、インバータ12cは、バッテリ10と回転電機MG3との間に設けられる。
【0044】
正極電力線P1は、バッテリ10の正極とインバータ12aの正極とを接続するラインである。負極電力線N1は、バッテリ10の負極とインバータ12aの負極とを接続するラインである。正極電力線P2は、バッテリ10の正極とインバータ12bの正極とを接続するラインである。負極電力線N2は、バッテリ10の負極とインバータ12bの負極とを接続するラインである。また、正極電力線P3は、バッテリ10の正極とインバータ12cの正極とを接続するラインである。負極電力線N3は、バッテリ10の負極とインバータ12cの負極とを接続するラインである。
【0045】
3つのインバータ12a〜12cは、バッテリ10と回転電機MG1〜MG3との間に並列に設けられるため、正極電力線P1〜P3は、バッテリ10側の一部分が共用ラインとなっており、共通正極電力線Pcとなっている。同様に、負極電力線N1〜N3は、バッテリ10側の一部分が共用ラインとなっており、共通負極電力線Ncとなっている。
【0046】
第2実施形態では、各インバータの正極を流れる電流値を検出する複数の電流センサが設けられる。具体的には、インバータ12aの正極を流れる電流値を検出する電流センサ40a、インバータ12bの正極を流れる電流値を検出する電流センサ40b、及び、インバータ12cの正極を流れる電流値を検出する電流センサ40cが設けられる。より詳細には、電流センサ40aはインバータ12aと平滑コンデンサ18a間を流れる電流値を検出し、電流センサ40bはインバータ12bと平滑コンデンサ18b間を流れる電流値を検出し、電流センサ40cはインバータ12cと平滑コンデンサ18c間を流れる電流値を検出する。電流センサ40a〜40cの検出値は制御装置14に送られる。
【0047】
第2実施形態のように3つのインバータ12a〜12cを有する構成においても、各インバータ12a〜12cに対する3つの制御信号のうち、少なくとも1つの制御信号の位相を他の制御信号の位相と異なる位相にすることで、バッテリ10に印加される電流リプルを抑制することができる。
【0048】
特に、第2実施形態においては、制御装置14は、電流センサ40a〜40cの検出値に基づいて、複数のインバータ12a〜12cのうち、直流側の正極における電流リプルの振幅が最大となるインバータに対する制御信号の位相を、他の複数のインバータに対する制御信号の位相と異なる位相に設定する。なお、各インバータ12a〜12cの正極における電流リプルの振幅は、電流センサ40a〜40cが検出した、ある期間における最大電流値と最小電流値との差分により算出することができる。
【0049】
以下、図4を参照しながら本実施形態の効果について説明する。図4は、インバータ12a〜12cに対する制御信号と、インバータ12a〜12cの正極における電流リプルとの位相関係、及び、バッテリ10に印加される電流リプルの振幅を示す図である。
【0050】
図4に示される通り、インバータ12a〜12cの正極における電流リプルの振幅を比較すると、インバータ12aの正極における電流リプルの振幅が最大となっている。したがって、制御装置14は、インバータ12aに対する制御信号の位相を、インバータ12b及び12cに対する制御信号の位相とは異なる位相としている。
【0051】
したがって、振幅が最大であるインバータ12aからの電流リプルの位相と、その他のインバータ12b及びcの電流リプルの位相とが異なる位相となる。これにより、共通正極電力線Pcにおいて、インバータ12a〜12cからの各電流リプルが合計されると、振幅が最大となるインバータ12aからの電流リプルが、その他のインバータ12b及び12cからの電流リプルによって打ち消されるから、合計電流リプルの抑制効果を高めることができる。
【0052】
なお、第2実施形態に係る駆動装置は、3つのインバータ12a〜12cを有していたが、4つ以上のインバータを有する構成であってもよい。この場合であっても、各インバータに対応する複数の電流センサが設けられ、制御装置14は、各電流センサの検出値に基づいて、複数のインバータのうち、直流側の正極における電流リプルの振幅が最大となるインバータに対する制御信号の位相を、他のインバータに対する制御信号の位相と異なる位相に設定するのが好ましい。
【0053】
<第3実施形態>
図5には、第3実施形態に係る回転電機の駆動装置の構成概略図である。第2実施形態における駆動装置は、第1実施形態と同様の構成を有する。第1実施形態との違いは、2つの回転電機MG1とMG2とが機械式動力伝達機構50によって互いに結合されている点である。
【0054】
機械式動力伝達機構50は、例えば、クラッチ、差動歯車、遊星歯車、あるいは変速機などで構成される。
【0055】
第3実施形態のように、機械式動力伝達機構50により結合された2つの回転電機MG1及びMG2を駆動する駆動回路においても、インバータ12aに対する制御信号とインバータ12bに対する制御信号の位相を異なる位相とすることで、バッテリ10に印加される電流リプルを抑制することができる。
【0056】
<第4実施形態>
図6には、第4実施形態に係る回転電機の駆動装置の構成概略図である。第4実施形態における駆動装置も、第1実施形態と同様の構成を有する。第1実施形態との違いは、インバータ12a及び12bが、バッテリ10と1つの6相回転電機MG1との間に並列に設けられている点である。図6に示すように、インバータ12aの交流側は、6相回転電機MG1が有する6つの電機子巻線のうち3つの電機子巻線に接続され、インバータ12bの交流側は、6相回転電機MG1の残りの3つの電機子巻線に接続されている。
【0057】
第4実施形態のように、バッテリ10と1つの回転電機MG1との間にインバータ12a及び12bが並列に設けられた構成においても、インバータ12aに対する制御信号とインバータ12bに対する制御信号の位相を異なる位相とすることで、バッテリ10に印加される電流リプルを抑制することができる。
【0058】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 バッテリ、12a〜12c インバータ、14 制御装置、16 ドライブ回路、18a〜18c 平滑コンデンサ、22 電池セル、24 内部抵抗、26 内部インダクタンス、28 電力線抵抗、30 電力線インダクタンス、32 スイッチング素子、34 フリーホイールダイオード、40a〜40c 電流センサ、50 機械式動力伝達機構、MG1〜MG3 回転電機、P1〜P3 正極電力線、Pc 共通正極電力線、N1〜N3 負極電力線、Nc 共通負極電力線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6