(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂100重量部に対して、前記可塑剤の含有量が10重量部以上である、請求項1又は2に記載のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルム。
厚みが1.8mm以下である第1のガラス板を用いて、前記第1のガラス板と第2のガラス板との間に配置されて、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルム(樹脂フィルムと記載することがある)は、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜(以下、中間膜と記載することがある)であることが好ましい。但し、本発明に係る樹脂フィルムの用途は、中間膜に限定されない。本発明に係る樹脂フィルムは、例えば、中間膜以外に、太陽電池用の封止剤、コーティング剤、又は接着剤等として用いることができる。
【0024】
本発明に係る樹脂フィルムは、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂を含む。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、酸基が導入されたポリビニルアセタールを含有する。
【0025】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、例えば−CH
2−CH−基を主鎖に有する。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、ポリビニルアセタール骨格を有する。上記ポリビニルアセタール骨格が、例えば−CH
2−CH−基を主鎖に有する。−CH
2−CH−基における「−CH−」部分の炭素原子には、1つの他の基が結合している。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂では、主鎖において、−CH
2−CH−基が連続していることが好ましい。
【0026】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、酸基を有する。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の酸基の含有率は1.5モル%以上、10モル%以下である。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の中和度は10%以上、90%以下である。
【0027】
本発明では、上記の構成が備えられているので、樹脂フィルム及び中間膜のヤング率を高くし、かつ、樹脂フィルム及び中間膜の破断伸度を高くすることができる。本発明では、高いヤング率と高い破断伸度とを両立することができる。
【0028】
さらに、本発明では、上記の構成が備えられているので、樹脂フィルム及び中間膜の破断強度を高くすることができる。
【0029】
また、合わせガラスが窓ガラスとして、例えば自動車のサイドドアに使用される場合には、合わせガラスを固定する枠がなく、合わせガラスの剛性が低いことに起因する撓みが原因で、窓ガラスの開閉に支障をきたすことがある。
【0030】
また、近年、合わせガラスを軽量化するために、ガラス板の厚みを薄くすることが求められている。2つのガラス板の間に中間膜が挟み込まれた合わせガラスにおいて、ガラス板の厚みを薄くすると、曲げ剛性を充分に高く維持することが極めて困難であるという問題がある。
【0031】
上記の課題に対して、本発明では、上記の構成が備えられているので、樹脂フィルム及び中間膜の曲げ剛性を高くすることができる。
【0032】
例えば、ガラス板の厚みが薄くても、中間膜に起因して合わせガラスの曲げ剛性を高めることができれば、合わせガラスを軽量化することができる。合わせガラスが軽量であると、合わせガラスに用いる材料の量を少なくすることができ、環境負荷を低減することができる。さらに、軽量である合わせガラスを自動車に用いると、燃費を向上させることができ、結果として環境負荷を低減することができる。
【0033】
さらに、本発明では、上記の構成が備えられているので、樹脂フィルム及び中間膜の成形性を高めることができる。例えば、樹脂フィルム又は中間膜が適度な柔軟性と適度な硬さとを有しているため、合わせガラスを得るためにオートクレーブをする際に、変形することなく、きれいに合わせガラスを作製することができる。
【0034】
さらに、本発明では、上記の構成が備えられているので、樹脂フィルム、中間膜及び合わせガラスの耐貫通性を高めることができる。
【0035】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の製造方法としては、例えば、ポリ酢酸ビニルと、酸基になり得る基を有するモノマーとを共重合させ、けん化し、アルデヒドによりアセタール化した後、アイオノマー化する方法、ポリビニルアルコール(PVA)を、酸基になり得る基を有するアルデヒドによりアセタール化した後、アイオノマー化する方法、並びにポリビニルアセタールを、酸基になり得る基を有するアルデヒドによりアセタール化した後、アイオノマー化する方法等が挙げられる。
【0036】
上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70〜99.9モル%である。
【0037】
上記酸基になり得る基としては、カルボキシル基に由来する基、スルホン酸基に由来する基、及びリン酸基に由来する基等が挙げられる。酸基を導入したポリビニルアセタールを生産する際の生産性をより一層良好にする観点からは、上記酸基になり得る基は、カルボキシル基に由来する基又はスルホン酸基に由来する基であることが好ましく、カルボキシル基に由来する基であることがより好ましい。
【0038】
酸基を導入するための酸としては、カルボン酸、スルホン酸、及びリン酸等が挙げられる。酸基が導入されたポリビニルアセタールを生産する際の生産性をより一層良好にする観点からは、上記酸は、カルボン酸又はスルホン酸であることが好ましく、カルボン酸であることがより好ましい。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂では、上記酸により、酸基が導入されていることが好ましい。
【0039】
上記酸基になり得る基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート及び2−アクリロイロキシエチル−コハク酸等が挙げられる。
【0040】
上記酸基になり得る基を有するアルデヒドとしては、テレフタルアルデヒド酸、グリオキシル酸、及びレブリン酸等が挙げられる。
【0041】
上記アイオノマー化の方法としては、溶液中に、金属含有化合物を添加する方法、並びに、混練中に、金属含有化合物を添加する方法等が挙げられる。上記金属含有化合物は、溶液の状態で添加されてもよい。
【0042】
上記金属含有化合物は、金属塩又は金属酸化物であることが好ましい。
【0043】
上記金属含有化合物における金属としては、特に限定されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び遷移金属等が挙げられる。ヤング率及び成形性をより一層良好にする観点からは、Na、Li、K、Mg、Zn、Cu、Co、Al、Fe、Ni、Cr又はMnが好ましい。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、Na、Zn、Mg又はKを含むことが好ましい。アイオノマー化に上記金属が用いられていることが好ましい。特にNaを用いることが好ましい。
【0044】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の酸基の含有率は1.5モル%以上、10モル%以下である。上記酸基の含有率が上記下限以上及び上記上限以下であることで、本発明の効果が奏され、特にヤング率、引張伸度、曲げ剛性及び成形性が高くなる。上記酸基の含有率は、好ましくは1.8モル%以上、より好ましくは2モル%以上、好ましくは7モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。上記酸基の含有率が上記下限以上であると、ヤング率及び引張伸度がより一層良好になる。上記酸基の含有率が上記上限以下であると、成形性がより一層良好になる。
【0045】
上記酸基の含有率は、NMR又はFT−IR等を用いて測定することができる。具体的には、上記酸基の含有率は、装置「NICOLET 6700」(Thermo Scientific社製)を用いて、測定波長4000〜400cm
−1、スキャン回数32回で測定を行い、各酸基由来のピークと、各酸の塩のピークとから算出することができる。例えば、カルボン酸であれば、カルボン酸のカルボニル(C=O:1697cm
−1)、及び、カルボン酸塩(約1500〜1600cm
−1)からカルボキシル基の含有率を算出することができる。
【0046】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の中和度は、10%以上、90%以下である。上記中和度が上記下限以上及び上記上限以下であることで、本発明の効果が奏され、特にヤング率、引張伸度及び成形性が高くなる。上記中和度は、好ましくは13%以上、より好ましくは15%以上、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下である。上記中和度が上記下限以上であると、ヤング率、曲げ剛性及引張伸度がより一層良好になる。上記中和度が上記上限以下であると、遮音性及び成形性がより一層良好になる。
【0047】
上記中和度は、FT−IR等を用いて測定することができる。FT−IRでは、例えば、カルボキシル基(1715cm
−1)と、カルボキシル基の金属塩基(金属により異なる、Znの場合:1568cm
−1、Naの場合1550cm
−1)とのシグナル高さから、中和度を算出することができる。
【0048】
ヤング率をより一層高める観点からは、樹脂フィルムの80℃でのせん断貯蔵等価弾性率は好ましくは0.3MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上、更に好ましくは0.7MPa以上である。
【0049】
成形性をより一層高める観点からは、80℃でのせん断貯蔵等価弾性率は好ましくは3.5MPa以下、より好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2.5MPa以下である。
【0050】
せん断貯蔵等価弾性率は、多層体を単層とみなした時のせん断貯蔵弾性率のことを示す。なお、単層の場合は、単層のせん断貯蔵弾性率のことを示す。せん断貯蔵等価弾性率については、層間で滑らない場合、例えば、樹脂フィルムを構成する層構成のまま、一般的な動的粘弾性測定方法にてせん断貯蔵弾性率を測定することにより、せん断貯蔵等価弾性率を測定することができる。
【0051】
上記せん断貯蔵等価弾性率を測定する方法としては、樹脂フィルムを、室温23±2℃、湿度25±5%の環境下に12時間保管した直後に、Metravib社製の粘弾性測定装置「DMA+1000」を用いて、粘弾性を測定する方法が挙げられる。樹脂フィルムを長さ50mm、幅20mmで切り出し、せん断モードで2℃/分の昇温速度で−50℃から100℃まで温度を上昇させる条件、及び周波数1Hz及び歪0.05%の条件で測定することが好ましい。
【0052】
また、せん断貯蔵等価弾性率G’*は以下の式(X)により求められる。
【0053】
G’*=(Σiai)/(Σiai/G’i) …式(X)
【0054】
上記式(X)中のG’iは樹脂フィルムにおけるi層目のせん断貯蔵弾性率を示し、aiは樹脂フィルムにおけるi層目の厚みを示す。Σiはi層の数値の和を計算することを意味する。
【0055】
本発明に係る樹脂フィルムは、1層の構造又は2層以上の構造を有する。本発明に係る樹脂フィルムは、1層の構造を有していてもよく、2層以上の構造を有していてもよい。本発明に係る樹脂フィルムは、2層の構造を有していてもよく、3層以上の構造を有していてもよい。本発明に係る樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、多層の樹脂フィルムであってもよい。
【0056】
上記樹脂フィルムは、第1の層のみを備えていてもよく、第1の層に加えて第2の層を備えていてもよい。上記樹脂フィルムは、第2の層をさらに備えることが好ましい。上記樹脂フィルムが上記第2の層を備える場合に、上記第1の層の第1の表面側に、上記第2の層が配置される。
【0057】
上記樹脂フィルムは、第1の層及び第2の層に加えて第3の層を備えていてもよい。上記樹脂フィルムは、第3の層をさらに備えることが好ましい。上記樹脂フィルムが上記第2の層及び上記第3の層を備える場合に、上記第1の層の上記第1の表面とは反対の第2の表面側に、上記第3の層が配置される。
【0058】
上記第2の層の上記第1の層側とは反対の表面は、合わせガラス部材又はガラス板が積層される表面であることが好ましい。上記第2の層に積層されるガラス板の厚みは1.3mm以下であることが好ましい。上記第1の層の第1の表面(上記第2の層側の表面)とは反対の第2の表面は、合わせガラス部材又はガラス板が積層される表面であってもよい。上記第1の層に積層されるガラス板の厚みは1.8mm以下であることが好ましい。上記第3の層の上記第1の層側とは反対の表面は、合わせガラス部材又はガラス板が積層される表面であることが好ましい。上記第3の層に積層されるガラス板の厚みは1.8mm以下であることが好ましい。
【0059】
上記樹脂フィルムは、第1のガラス板と第2のガラス板との間に配置されて、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であることが好ましい。樹脂フィルムに起因して曲げ剛性を充分に高くすることができるので、上記第1のガラス板の厚みと上記第2のガラス板の厚みとの合計が3mm以下であることが好ましい。上記樹脂フィルムは、第1のガラス板と第2のガラス板との間に配置されて、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であることが好ましい。樹脂フィルムに起因して曲げ剛性を充分に高くすることができるので、上記樹脂フィルムは、厚みが1.8mm以下である第1のガラス板を用いて、該第1のガラス板と第2のガラス板との間に配置されて、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であることが好ましい。樹脂フィルムに起因して曲げ剛性を充分に高くすることができるので、上記樹脂フィルムは、厚みが1.8mm以下である第1のガラス板と厚みが1.8mm以下である第2のガラス板とを用いて、上記第1のガラス板と上記第2のガラス板との間に配置されて、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であることが好ましい。
【0060】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0061】
図1に、本発明の第1の実施形態に係るポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムを模式的に断面図で示す。
【0062】
図1に示す樹脂フィルム11は、2層以上の構造を有する多層の樹脂フィルムである。樹脂フィルム11は、合わせガラスを得るための合わせガラス用中間膜であることが好ましい。樹脂フィルム11は、第1の層1と、第2の層2と、第3の層3とを備える。第1の層1の第1の表面1aに、第2の層2が配置されており、積層されている。第1の層1の第1の表面1aとは反対の第2の表面1bに、第3の層3が配置されており、積層されている。第1の層1は中間層である。第2の層2及び第3の層3はそれぞれ、保護層であり、本実施形態では表面層である。第1の層1は、第2の層2と第3の層3との間に配置されており、挟み込まれている。従って、樹脂フィルム11は、第2の層2と第1の層1と第3の層3とがこの順で積層された多層構造(第2の層2/第1の層1/第3の層3)を有する。
【0063】
なお、第2の層2と第1の層1との間、及び、第1の層1と第3の層3との間にはそれぞれ、他の層が配置されていてもよい。第2の層2と第1の層1、及び、第1の層1と第3の層3とはそれぞれ、直接積層されていることが好ましい。他の層として、ポリエチレンテレフタレート等を含む層が挙げられる。
【0064】
図2に、本発明の第2の実施形態に係るポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムを模式的に断面図で示す。
【0065】
図2に示す樹脂フィルム11Aは、1層の構造を有する単層の樹脂フィルムである。樹脂フィルム11Aは、第1の層である。樹脂フィルム11Aは、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であることが好ましい。
【0066】
以下、本発明に係る樹脂フィルムを構成する上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層の他の詳細、並びに上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層に含まれる各成分の他の詳細を説明する。
【0067】
(樹脂)
上記樹脂フィルムは、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂を含む。上記第1の層、上記第2の層、及び上記第3の層は、樹脂を含むことが好ましい。上記樹脂としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂が挙げられる。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、ポリビニルブチラールアイオノマー樹脂であることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂及び上記樹脂はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0068】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂及び上記樹脂の重量平均分子量は、好ましくは30000以上、より好ましくは100000以上、更に好ましくは120000以上、好ましくは1500000以下、より好ましくは1300000以下、更に好ましくは1200000以下である。上記重量平均分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、押出成形により樹脂フィルムを容易に得ることができ、更にせん断貯蔵等価弾性率が適度になり、破断伸度、及び、破断強度が向上し、曲げ剛性、及び、耐貫通性がより一層良好になる。
【0069】
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0070】
ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂以外の樹脂を用いる場合に、上記樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル重合体などの(メタ)アクリル樹脂、ウレタン重合体、シリコーン重合体、ゴム、又は酢酸ビニル重合体であることが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂又は(メタ)アクリル樹脂であることがより好ましく、ポリビニルアセタール樹脂であることが更に好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の使用により、強靭性が効果的に高くなり、耐貫通性がより一層高くなる。
【0071】
上記樹脂は、極性基を有することが好ましく、水酸基を有することが好ましい。このような基の存在により、樹脂フィルムと合わせガラス部材との接着性がより一層高くなり、曲げ剛性及び耐貫通性がより一層高くなる。
【0072】
上記アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステルを含む重合成分の重合体であることが好ましい。上記アクリル重合体は、ポリ(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
【0073】
上記ポリ(メタ)アクリル酸エステルは特に限定されない。上記ポリ(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸n−プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸i−プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸n−ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸i−ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸t−ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸2−エチルオクチル、ポリ(メタ)アクリル酸ノニル、ポリ(メタ)アクリル酸イソノニル、ポリ(メタ)アクリル酸デシル、ポリ(メタ)アクリル酸イソデシル、ポリ(メタ)アクリル酸ラウリル、ポリ(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、ポリ(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリ(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、及びポリ(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。ポリビニルアセタールアイオノマーへの混合のしやすさから、ポリアクリル酸エステルが好ましく、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸n−ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリアクリル酸2−エチルヘキシル又はポリアクリル酸オクチルがより好ましい。中間膜は、これらの好ましいアクリル重合体を含有することが好ましい。これらの好ましいポリ(メタ)アクリル酸エステルの使用により、樹脂フィルムの生産性と樹脂フィルムの特性のバランスとがより一層良好になる。上記ポリ(メタ)アクリル酸エステルは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0074】
上記第1の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(1)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(1)として、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(以下、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)と記載することがある)を含むことがより好ましい。上記第2の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(2)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(2)として、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(以下、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)と記載することがある)を含むことがより好ましい。上記第3の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(3)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(3)として、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(以下、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)と記載することがある)を含むことがより好ましい。
【0075】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0076】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂及び上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂及び上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70〜99.9モル%である。
【0077】
上記ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、より一層好ましくは1500以上、更に好ましくは1600以上、特に好ましくは2600以上、最も好ましくは2700以上、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、樹脂フィルムの成形が容易になる。
【0078】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0079】
上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は2〜10であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。
【0080】
上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、及びベンズアルデヒド等が挙げられる。アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0081】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは7モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、樹脂フィルムの機械強度がより一層高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)の水酸基の含有率が5モル%以上であると反応効率が高く生産性に優れ、また35モル%以下であると、アイオノマーを効果的に形成でき、破断伸度が効果的に高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、樹脂フィルムの柔軟性が高くなり、樹脂フィルムの取扱いが容易になる。
【0082】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)の水酸基の各含有率は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは13モル%以上、より好ましくは15モル%以上、より一層好ましくは18モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは22モル%以上、好ましくは37モル%以下、より好ましくは36.5モル%以下、更に好ましくは36モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、曲げ剛性がより一層高くなり、樹脂フィルムの接着力がより一層高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)の水酸基の各含有率が10モル%以上であると反応効率が高く生産性に優れ、また37モル%以下であると、アイオノマーを効果的に形成でき、破断伸度や曲げ剛性が効果的に高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、樹脂フィルムの柔軟性が高くなり、樹脂フィルムの取扱いが容易になる。
【0083】
遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。遮音性を更に一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、特に好ましくは10モル%以上、最も好ましくは12モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは20モル%以下である。
【0084】
上記水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0085】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.05モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、更に好ましくは1モル%以上、好ましくは25モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、樹脂フィルム及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)のアセチル化度が0.1モル%以上、25モル%以下であると、破断伸度がより一層高くなり、耐貫通性に優れる。
【0086】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)の各アセチル化度は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、好ましくは10モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、樹脂フィルム及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0087】
上記アセチル化度は、アセチル基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセチル基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0088】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは55モル%以上、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0089】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)の各アセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上、好ましくは75モル%以下、より好ましくは71モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0090】
上記アセタール化度は、主鎖の全エチレン基量から、水酸基が結合しているエチレン基量と、アセチル基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。
【0091】
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。但し、ASTM D1396−92による測定を用いてもよい。ポリビニルブチラールアイオノマー樹脂又はポリビニルブチラール樹脂を用いる場合には、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0092】
(可塑剤)
上記樹脂フィルムは、可塑剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、可塑剤(以下、可塑剤(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、可塑剤(以下、可塑剤(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、可塑剤(以下、可塑剤(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。可塑剤の使用により、更に樹脂と可塑剤との併用により、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む層の合わせガラス部材又は他の層に対する接着力が適度に高くなる。上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0093】
上記可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などの有機リン酸可塑剤等が挙げられる。有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0094】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0095】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0096】
上記有機エステル可塑剤としては、トリエチレングリコールジ−2−エチルプロパノエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0097】
上記有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0098】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
【0100】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数2〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは3〜10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数5〜10の有機基であることが好ましく、炭素数6〜10の有機基であることがより好ましい。
【0101】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)又はトリエチレングリコールジ−2−エチルプロパノエートを含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート又はトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートを含むことがより好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含むことが更に好ましい。
【0102】
上記樹脂フィルムにおいて、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、更に好ましくは30重量部以上、好ましくは90重量部以下、より好ましくは85重量部以下、更に好ましくは80重量部以下である。上記含有量が上記下限以上であると、樹脂フィルムの柔軟性が高くなり、樹脂フィルムの取扱いが容易になる。上記含有量が上記上限以下であると、アイオノマーの形成を阻害し難く、合わせガラスの曲げ剛性や耐貫通性がより一層高くなる。
【0103】
上記第2の層において、上記熱可塑性樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)又は上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)100重量部に対する上記可塑剤(2)の含有量(以下、含有量(2)と記載することがある)、並びに上記第3の層において、上記熱可塑性樹脂(3)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)又は上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)100重量部に対する上記可塑剤(3)の含有量(以下、含有量(3)と記載することがある)はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下、更に好ましくは32重量部以下、特に好ましくは30重量部以下である。上記含有量(2)及び上記含有量(3)が上記下限以上であると、樹脂フィルムの柔軟性が高くなり、樹脂フィルムの取扱いが容易になる。上記含有量(2)及び上記含有量(3)が上記上限以下であると、アイオノマーの形成を阻害し難く、合わせガラスの曲げ剛性や耐貫通性がより一層高くなる。
【0104】
上記第1の層において、上記熱可塑性樹脂(1)、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)又は上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)100重量部に対する上記可塑剤(1)の含有量(以下、含有量(1)と記載することがある)は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、更に好ましくは30重量部以上、好ましくは90重量部以下、より好ましくは85重量部以下、更に好ましくは80重量部以下である。上記含有量(1)が上記下限以上であると、樹脂フィルムの柔軟性が高くなり、樹脂フィルムの取扱いが容易になる。上記含有量(1)が上記上限以下であると、アイオノマーの形成を阻害し難く、合わせガラスの曲げ剛性や耐貫通性がより一層高くなる。
【0105】
合わせガラスの遮音性を発現させるために、上記含有量(1)は上記含有量(2)よりも多いことが好ましく、上記含有量(1)は上記含有量(3)よりも多いことが好ましい。
【0106】
合わせガラスの遮音性を高める観点からは、上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上である。上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは80重量部以下、より好ましくは75重量部以下、更に好ましくは70重量部以下である。
【0107】
(遮熱性化合物)
上記樹脂フィルムは、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第1の層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第2の層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第3の層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記遮熱性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0108】
上記遮熱性化合物は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むか、又は遮熱粒子を含むことが好ましい。この場合に、上記成分Xと上記遮熱粒子との双方を含んでいてもよい。
【0109】
成分X:
上記樹脂フィルムは、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むことが好ましい。上記第1の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記成分Xは遮熱性化合物である。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0110】
上記成分Xは特に限定されない。成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物を用いることができる。
【0111】
樹脂フィルム及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、上記成分Xは、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、フタロシアニン及びフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。
【0112】
遮熱性を効果的に高め、かつ長期間にわたり可視光線透過率をより一層高いレベルで維持する観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有することが好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子を含有することが好ましく、銅原子を含有することも好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニン及びバナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。樹脂フィルム及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子に酸素原子が結合した構造単位を有することが好ましい。
【0113】
上記樹脂フィルム100重量%中、及び、上記成分Xを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.02重量%以上、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.04重量%以下である。上記成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。例えば、可視光線透過率を70%以上にすることが可能である。
【0114】
遮熱粒子:
上記樹脂フィルムは、遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第1の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第2の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第3の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記遮熱粒子は遮熱性化合物である。遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。上記遮熱粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0115】
樹脂フィルム及び合わせガラスの遮熱性をより一層高める観点からは、上記遮熱粒子は、金属酸化物粒子であることがより好ましい。上記遮熱粒子は、金属の酸化物により形成された粒子(金属酸化物粒子)であることが好ましい。
【0116】
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質に吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。なお、遮熱粒子とは、赤外線を吸収可能な粒子を意味する。
【0117】
上記遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子や、六ホウ化ランタン(LaB
6)粒子等が挙げられる。これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。熱線の遮蔽機能が高いため、金属酸化物粒子が好ましく、ATO粒子、GZO粒子、IZO粒子、ITO粒子又は酸化タングステン粒子がより好ましく、ITO粒子又は酸化タングステン粒子が特に好ましい。特に、熱線の遮蔽機能が高く、かつ入手が容易であるので、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)が好ましく、酸化タングステン粒子も好ましい。
【0118】
樹脂フィルム及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、酸化タングステン粒子は、金属ドープ酸化タングステン粒子であることが好ましい。上記「酸化タングステン粒子」には、金属ドープ酸化タングステン粒子が含まれる。上記金属ドープ酸化タングステン粒子としては、具体的には、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子及びルビジウムドープ酸化タングステン粒子等が挙げられる。
【0119】
樹脂フィルム及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、セシウムドープ酸化タングステン粒子が特に好ましい。樹脂フィルム及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、該セシウムドープ酸化タングステン粒子は、式:Cs
0.33WO
3で表される酸化タングステン粒子であることが好ましい。
【0120】
上記遮熱粒子の平均粒子径は好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。平均粒子径が上記下限以上であると、熱線の遮蔽性が充分に高くなる。平均粒子径が上記上限以下であると、遮熱粒子の分散性が高くなる。
【0121】
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA−EX150」)等を用いて測定できる。
【0122】
上記樹脂フィルム100重量%中、及び、上記遮熱粒子を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記遮熱粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、更に好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3.5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。上記遮熱粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。
【0123】
(金属塩)
上記樹脂フィルムは、マグネシウム塩、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも1種の金属塩(以下、金属塩Mと記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記表面層が、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記金属塩Mの使用により、樹脂フィルムと合わせガラス部材との接着性又は樹脂フィルムにおける各層間の接着性を制御することが容易になる。上記金属塩Mは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0124】
上記金属塩Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。樹脂フィルム中に含まれている金属塩は、K及びMgの内の少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
【0125】
また、上記金属塩Mは、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ金属塩又は炭素数2〜16の有機酸のアルカリ土類金属塩であることがより好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩又は炭素数2〜16のカルボン酸カリウム塩であることが更に好ましい。
【0126】
上記炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩及び上記炭素数2〜16のカルボン酸カリウム塩としては特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチル酪酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム及び2−エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。
【0127】
上記樹脂フィルム100重量%中、及び、上記金属塩Mを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)におけるMg及びKの含有量の合計は、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、更に好ましくは20ppm以上、好ましくは300ppm以下、より好ましくは250ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。Mg及びKの含有量の合計が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂フィルムと合わせガラス部材との接着性又は樹脂フィルムにおける各層間の接着性をより一層良好に制御できる。
【0128】
(紫外線遮蔽剤)
上記樹脂フィルムは、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。紫外線遮蔽剤の使用により、樹脂フィルム及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。上記紫外線遮蔽剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0129】
上記紫外線遮蔽剤には、紫外線吸収剤が含まれる。上記紫外線遮蔽剤は、紫外線吸収剤であることが好ましい。
【0130】
上記紫外線遮蔽剤としては、例えば、金属原子を含む紫外線遮蔽剤、金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤、ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾトリアゾール化合物)、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾフェノン化合物)、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤(トリアジン化合物)、マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤(マロン酸エステル化合物)、シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤(シュウ酸アニリド化合物)及びベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾエート化合物)等が挙げられる。
【0131】
上記金属原子を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、白金粒子、白金粒子の表面をシリカで被覆した粒子、パラジウム粒子及びパラジウム粒子の表面をシリカで被覆した粒子等が挙げられる。紫外線遮蔽剤は、遮熱粒子ではないことが好ましい。
【0132】
上記紫外線遮蔽剤は、好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤であり、より好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤であり、更に好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤である。
【0133】
上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウム等が挙げられる。さらに、上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤に関して、表面が被覆されていてもよい。上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤の表面の被覆材料としては、絶縁性金属酸化物、加水分解性有機ケイ素化合物及びシリコーン化合物等が挙げられる。
【0134】
上記ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinP」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin320」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、及び2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)等が挙げられる。紫外線を吸収する性能に優れることから、上記紫外線遮蔽剤は、ハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることが好ましく、塩素原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることがより好ましい。
【0135】
上記ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、オクタベンゾン(BASF社製「Chimassorb81」)等が挙げられる。
【0136】
上記トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、ADEKA社製「LA−F70」及び2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(BASF社製「Tinuvin1577FF」)等が挙げられる。
【0137】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤としては、2−(p−メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、テトラエチル−2,2−(1,4−フェニレンジメチリデン)ビスマロネート、2−(p−メトキシベンジリデン)−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル4−ピペリジニル)マロネート等が挙げられる。
【0138】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤の市販品としては、Hostavin B−CAP、Hostavin PR−25、Hostavin PR−31(いずれもクラリアント社製)が挙げられる。
【0139】
上記シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤としては、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−5−t−ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−フェニル)シュウ酸ジアミド、2−エチル−2’−エトキシ−オキシアニリド(クラリアント社製「SanduvorVSU」)などの窒素原子上に置換されたアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。
【0140】
上記ベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(BASF社製「Tinuvin120」)等が挙げられる。
【0141】
期間経過後の可視光線透過率の低下をより一層抑制する観点からは、上記樹脂フィルム100重量%中、及び、上記紫外線遮蔽剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下である。特に、上記紫外線遮蔽剤を含む層100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量が0.2重量%以上であることにより、樹脂フィルム及び合わせガラスの期間経過後の可視光線透過率の低下を顕著に抑制できる。
【0142】
(酸化防止剤)
上記樹脂フィルムは、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0143】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する酸化防止剤である。上記リン系酸化防止剤はリン原子を含有する酸化防止剤である。
【0144】
上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤又はリン系酸化防止剤であることが好ましい。
【0145】
上記フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,3’−t−ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0146】
上記リン系酸化防止剤としては、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、及び2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0147】
上記酸化防止剤の市販品としては、例えばBASF社製「IRGANOX 245」、BASF社製「IRGAFOS 168」、BASF社製「IRGAFOS 38」、住友化学工業社製「スミライザーBHT」、堺化学工業社製「H−BHT」、並びにBASF社製「IRGANOX 1010」等が挙げられる。
【0148】
樹脂フィルム及び合わせガラスの高い可視光線透過率を長期間に渡り維持するために、上記樹脂フィルム100重量%中、及び、酸化防止剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は0.1重量%以上であることが好ましい。また、酸化防止剤の添加効果が飽和するので、上記樹脂フィルム100重量%中、及び、上記酸化防止剤を含む層100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は2重量%以下であることが好ましい。
【0149】
(他の成分)
上記樹脂フィルム、上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層はそれぞれ、必要に応じて、ケイ素、アルミニウム又はチタンを含むカップリング剤、分散剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0150】
(ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムの他の詳細)
上記樹脂フィルムの厚みは特に限定されない。実用面の観点、並びに合わせガラスの耐貫通性及び曲げ剛性を充分に高める観点からは、樹脂フィルムの厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。樹脂フィルムの厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性及び曲げ剛性が高くなる。樹脂フィルムの厚みが上記上限以下であると、樹脂フィルムの透明性がより一層良好になる。
【0151】
樹脂フィルムの厚みをTとする。上記第1の層の厚みは、好ましくは0.035T以上、より好ましくは0.0625T以上、更に好ましくは0.1T以上、好ましくは0.4T以下、より好ましくは0.375T以下、更に好ましくは0.25T以下、特に好ましくは0.15T以下である。上記第1の層の厚みが0.4T以下であると、曲げ剛性がより一層良好になる。
【0152】
上記第2の層及び上記第3の層の各厚みは、好ましくは0.3T以上、より好ましくは0.3125T以上、更に好ましくは0.375T以上、好ましくは0.97T以下、より好ましくは0.9375T以下、更に好ましくは0.9T以下である。上記第2の層及び上記第3の層の各厚みは、0.46875T以下であってもよく、0.45T以下であってもよい。また、上記第2の層及び上記第3の層の各厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、上記樹脂フィルム及び合わせガラスの剛性と遮音性がより一層高くなる。
【0153】
上記第2の層及び上記第3の層の合計の厚みは、好ましくは0.625T以上、より好ましくは0.75T以上、更に好ましくは0.85T以上、好ましくは0.97T以下、より好ましくは0.9375T以下、更に好ましくは0.9T以下である。また、上記第2の層及び上記第3の層の合計の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、上記樹脂フィルム及び合わせガラスの剛性と遮音性がより一層高くなる。
【0154】
上記中間膜は、厚みが均一な中間膜であってもよく、厚みが変化している中間膜であってもよい。上記中間膜の断面形状は矩形であってもよく、楔形であってもよい。
【0155】
本発明に係る樹脂フィルムの製造方法としては特に限定されない。本発明に係る樹脂フィルムの製造方法としては、単層の樹脂フィルムの場合に、樹脂組成物を押出機を用いて押出する方法が挙げられる。本発明に係る樹脂フィルムの製造方法としては、多層の樹脂フィルムの場合に、各層を形成するための各樹脂組成物を用いて各層をそれぞれ形成した後に、例えば、得られた各層を積層する方法、並びに各層を形成するための各樹脂組成物を押出機を用いて共押出することにより、各層を積層する方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0156】
樹脂フィルムの製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることが好ましく、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましく、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂が含まれていることが好ましく、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましく、上記第2の層と上記第3の層とが同一の樹脂組成物により形成されていることが更に好ましい。
【0157】
上記樹脂フィルムは、両側の表面の内の少なくとも一方の表面に凹凸形状を有することが好ましい。上記樹脂フィルムは、両側の表面に凹凸形状を有することがより好ましい。上記の凹凸形状を形成する方法としては特に限定されず、例えば、リップエンボス法、エンボスロール法、カレンダーロール法、及び異形押出法等が挙げられる。定量的に一定の凹凸模様である多数の凹凸形状のエンボスを形成することができることから、エンボスロール法が好ましい。
【0158】
(合わせガラス)
図3は、
図1に示すポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムを用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【0159】
図3に示す合わせガラス31は、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、樹脂フィルム11とを備える。樹脂フィルム11は、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0160】
樹脂フィルム11の第1の表面11aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。樹脂フィルム11の第1の表面11aとは反対の第2の表面11bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。第2の層2の外側の表面2aに第1の合わせガラス部材21が積層されている。第3の層3の外側の表面3aに第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0161】
図4は、
図2に示すポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムを用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【0162】
図4に示す合わせガラス31Aは、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、樹脂フィルム11Aとを備える。樹脂フィルム11Aは、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0163】
樹脂フィルム11Aの第1の表面11aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。樹脂フィルム11Aの第1の表面11aとは反対の第2の表面11bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0164】
このように、本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、樹脂フィルムとを備えており、該樹脂フィルムが、本発明に係るポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムである。本発明に係る合わせガラスでは、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、上記樹脂フィルムが配置されている。
【0165】
上記第1の合わせガラス部材は、第1のガラス板であることが好ましい。上記第2の合わせガラス部材は、第2のガラス板であることが好ましい。
【0166】
上記合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。合わせガラスには、2枚のガラス板の間に樹脂フィルムが挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に樹脂フィルムが挟み込まれている合わせガラスも含まれる。上記合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材がそれぞれ、ガラス板又はPETフィルムであり、かつ上記合わせガラスは、上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の内の少なくとも一方として、ガラス板を備えることが好ましい。
【0167】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、及び線入り板ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0168】
上記合わせガラス部材の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、上記合わせガラス部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。上記合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上、好ましくは0.5mm以下である。
【0169】
本発明に係る樹脂フィルムの使用により、合わせガラスの厚みが薄くても、合わせガラスの曲げ剛性を高く維持することができる。合わせガラスを軽量化したり、合わせガラスの材料を少なくして環境負荷を低減したり、合わせガラスの軽量化によって自動車の燃費を向上させて環境負荷を低減したりする観点からは、上記ガラス板の厚みは、好ましくは2mm以下、より好ましくは1.8mm以下、より一層好ましくは1.5mm以下、更に好ましくは1.3mm以下、更に一層好ましくは1.0mm以下、特に好ましくは0.7mm以下である。合わせガラスを軽量化したり、合わせガラスの材料を少なくして環境負荷を低減したり、合わせガラスの軽量化によって自動車の燃費を向上させて環境負荷を低減したりする観点からは、上記第1のガラス板の厚みと上記第2のガラス板の厚みとの合計は、好ましくは3.2mm以下、より好ましくは3mm以下、更に好ましくは2.8mm以下である。
【0170】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、樹脂フィルムを挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバッグに入れて減圧吸引したりして、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材と樹脂フィルムとの間に残留する空気を脱気し、積層体を得る。その後、積層体を約70〜110℃で予備接着して、予備接着体を得る。次に、予備接着体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。上記合わせガラスの製造時に、第1の層と第2の層と第3の層とを積層してもよい。
【0171】
上記樹脂フィルム及び上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。上記樹脂フィルム及び上記合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記樹脂フィルム及び上記合わせガラスは、車両用又は建築用の樹脂フィルム及び合わせガラスであることが好ましく、車両用の樹脂フィルム及び合わせガラスであることがより好ましい。上記樹脂フィルム及び上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。上記樹脂フィルム及び上記合わせガラスは、自動車に好適に用いられる。上記樹脂フィルムは、自動車の合わせガラスを得るために用いられる。
【0172】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0174】
(ポリビニルアセタール樹脂及びポリビニルアセタールアイオノマー樹脂)
下記の表1に示すポリビニルアセタール樹脂及びポリビニルアセタールアイオノマー樹脂を適宜用いた。用いたポリビニルアセタール樹脂及びポリビニルアセタールアイオノマー樹脂では全て、アセタール化に、炭素数4のn−ブチルアルデヒドが用いられている。ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、具体的には、実施例1で用いたポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、以下のようにして得られている。
【0175】
(実施例1で用いたポリビニルアセタールアイオノマー樹脂)
後アセタール化によるイオン性官能基になり得る基の導入とアイオノマー化
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルブチラール(平均重合度800、ブチラール化度68.0モル%、水酸基の含有率30.8モル%、アセチル化度1.2モル%)20重量部と、メタノール100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールを溶解させた。次に、テレフタルアルデヒド酸を添加し、溶解させた後、35重量%の塩酸を0.1重量部添加した後、反応容器内を撹拌しながら60℃に加熱した。昇温終了後、60℃にて2時間反応させた。
【0176】
次いで、反応液を冷却することにより、イオン性官能基になり得る基を有するポリビニルアセタール樹脂を含有する固形分20重量%の溶液を得た。得られた溶液にナトリウムメトキシドを中和度が54%となるように添加した。中和度は、FTIR装置「NICOLET 6700」(Thermo Scientific社製)を用いて、測定波長4000〜400cm
−1、スキャン回数32回で測定を行い、カルボキシル基(1715cm
−1)と、カルボキシル基の金属塩基(Naの場合1550cm
−1)とのシグナル高さから算出した。
【0177】
なお、得られたイオン性官能基になり得る基を有するポリビニルアセタール樹脂をジメチルスルホキシド−d6で溶解し、プロトンNMRを測定することにより、反応後の組成を算出した。
【0178】
(可塑剤)
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)
【0179】
(紫外線遮蔽剤)
Tinuvin326(2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)
【0180】
(酸化防止剤)
BHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)
【0181】
(実施例1〜6及び比較例1〜5)
樹脂フィルムを形成するための組成物の作製:
下記の表1に示す種類のポリビニルアセタール樹脂又はポリビニルアセタールアイオノマー樹脂と、可塑剤(3GO)と、紫外線遮蔽剤(Tinuvin326)と、酸化防止剤(BHT)とを混合し、樹脂フィルムを形成するための組成物を得た。可塑剤は、ポリビニルアセタール樹脂又はポリビニルアセタールアイオノマー樹脂100重量部に対して、下記の表1に示す量で用いた。紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤は、ポリビニルアセタール樹脂又はポリビニルアセタールアイオノマー樹脂100重量部に対して、0.2重量部の量で用いた。
【0182】
樹脂フィルムの作製:
樹脂フィルムを形成するための組成物を、押出機を用いて押出しすることにより、樹脂フィルム(厚み760μm)(中間膜)を作製した。
【0183】
合わせガラスの作製:
(曲げ剛性測定用)
得られた中間膜を縦20cm×横2.5cmの大きさに切断した。第1の合わせガラス部材及び第2の合わせガラス部材として、2つのガラス板(クリアフロートガラス、縦20cm×横2.5cm、厚み1.2mm)を用意した。2つのガラス板の間に、得られた中間膜を挟み込み、積層体を得た。得られた積層体をゴムバック内に入れ、2660Pa(20torr)の真空度で20分間脱気した。その後、脱気したままで積層体をオートクレーブ中で更に90℃で30分間保持しつつ、真空プレスした。このようにして予備圧着された積層体を、オートクレーブ中で135℃、圧力1.2MPa(12kg/cm
2)の条件で20分間圧着を行い、合わせガラスを得た。
【0184】
(耐貫通性測定用)
得られた中間膜を縦15cm×横15cmの大きさに切断した。第1の合わせガラス部材及び第2の合わせガラス部材として、2つのガラス板(クリアフロートガラス、縦15cm×横15cm、厚み1.2mm)を用意した。2枚のガラス板の間に、中間膜を挟み込み、積層体を得た。この積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体を20分間圧着し、合わせガラスを得た。
【0185】
(評価)
(1)せん断貯蔵等価弾性率
せん断貯蔵等価弾性率の測定:
得られた樹脂フィルムを長さ50mm、幅20mmで切り出した。樹脂フィルムを、室温23±2℃、湿度25±5%の環境下に12時間保管した。保管直後に、Metravib社製の粘弾性測定装置「DMA+1000」を用いて、樹脂フィルムについて、せん断モードで2℃/分の昇温速度で−50℃から100℃まで、周波数1Hz及び歪0.05%の条件で測定を行った。
【0186】
(2)引張試験(ヤング率、破断強度、及び、破断伸度)
得られた樹脂フィルムをダンベル社製のスーパーダンベルカッター:SDK−400で打ち抜いて、試験片を得た。その後、23℃の恒温室で島津製作所社製のオートグラフAGS−Xを用い、引張速度100mm/分で引張試験することにより、23℃でのヤング率、破断強度、及び、破断伸度を測定した。
【0187】
(3)曲げ剛性
得られた合わせガラスを用いて、曲げ剛性を評価した。
【0188】
図5に模式的に示す試験方法で、曲げ剛性を評価した。測定装置としては、3点曲げ試験治具を備えたオリエンテック社製のUTA−500を使用した。測定条件としては、20℃(20±3℃)、距離D1は12cm、距離D2は20cmとし、変位速度1mm/分でFの方向に合わせガラスに変形を加え、1.5mmの変位を加えたときの応力を測定し、曲げ剛性を算出した。曲げ剛性を以下の基準で判定した。
【0189】
[曲げ剛性の判定基準]
○:曲げ剛性が50N/mm以上
×:曲げ剛性が50N/mm未満
【0190】
(4)耐貫通性
得られた合わせガラスを、表面温度が23℃となるように調整した。次いで、1.5mの高さから、6枚の合わせガラスに対してそれぞれ、質量2260g及び直径82mmの剛球を、合わせガラスの中心部分に落下させた。6枚の合わせガラス全てについて、剛球が衝突した後5秒以内に剛球が貫通しなかった場合を合格とした。剛球が衝突した後5秒以内に剛球が貫通しなかった合わせガラスが3枚以下であった場合は不合格とした。4枚の場合には、新しく6枚の合わせガラスの耐貫通性を評価した。5枚の場合には、新しく1枚の合わせガラスを追加試験し、剛球が衝突した後5秒以内に剛球が貫通しなかった場合を合格とした。同様の方法で、25cmずつ高くし、6枚の合わせガラスに対してそれぞれ、質量2260g及び直径82mmの剛球を、合わせガラスの中心部分に落下させ、合わせガラスの耐貫通性(最大高さ)を評価した。耐貫通性を以下の基準で判定した。
【0191】
[耐貫通性の判定基準]
○:2mの高さでも合格
×:2m未満で不合格
【0192】
詳細及び結果を下記の表1,2に示す。なお、下記の表1では、紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤の記載は省略した。