(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に搭載される車載機と、ユーザに携帯される電子キーとを備え、前記車載機が前記電子キーの存在を検出するための前記車両の周辺に通信エリアを形成し、前記電子キーが前記通信エリア内に存在する状態で前記車載機と前記電子キーとの間で無線信号を送受信することにより前記車載機が前記電子キーを認証する通信システムであって、
前記車載機は、複数の状況毎に前記車載機と前記電子キーとの間の距離あるいは前記距離に関わるパラメータを測定し、
前記車載機は、前記複数の状況で測定される前記距離あるいは前記パラメータに基づき前記車載機および前記電子キーの間で通信が不正に成立しているか否かを判定し、
前記複数の状況は、奇数に設定され、
前記車載機は、前記複数の状況毎に測定された前記距離が閾値以下である旨を示す判定結果が過半数であるとき、前記車載機および前記電子キーの間の通信は正しいものであると判定し、前記距離が前記閾値以下である旨を示す判定結果が過半数に満たないとき、前記車載機および前記電子キーの間の通信は正しいものではないと判定する
通信システム。
車両に搭載される車載機と、ユーザに携帯される電子キーとを備え、前記車載機が前記電子キーの存在を検出するための前記車両の周辺に通信エリアを形成し、前記電子キーが前記通信エリア内に存在する状態で前記車載機と前記電子キーとの間で無線信号を送受信することにより前記車載機が前記電子キーを認証する通信システムであって、
前記車載機は、前記電子キーの位置の変化に伴った互いに異なる複数の状況毎に前記車載機と前記電子キーとの間の距離あるいは前記距離に関わるパラメータを測定し、
前記車載機は、前記複数の状況毎で測定された複数の前記距離あるいは前記パラメータに基づき前記車載機および前記電子キーの間で通信が不正に成立しているか否かを判定する
通信システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の通信システムでは、車載機および電子キーが置かれている環境によっては、無線信号が車両や建造物等の障害物に反射して、この反射した無線信号が電子キーあるいは車載機により受信されるおそれがある。この場合、車載機と電子キーとの間の測定距離が車載機と電子キーとの間の実際の距離よりも長くなる、もしくは車載機および電子キーの間の受信信号強度が通常よりも弱くなることにより、車載機および電子キーの間で通信が不正に成立していると誤判定されるおそれがある。
【0006】
また、車載機と電子キーとの間で不正な通信である旨が判定されることが一時的な状況であることが考えられる。そのため、車載機と電子キーとの間で通信が不正に成立しているか否かの判定は、複数回実施することが好ましいが、車載機と電子キーとの間の位置関係もしくは無線信号の伝播状態等の状況に変化がない状態であれば、同じ判定結果が繰り返されるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、車載機および電子キーの間の通信の正否の判定精度を向上させる通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成し得る通信システムは、車両に搭載される車載機と、ユーザに携帯される電子キーとを備え、前記車載機が前記電子キーの存在を検出するための前記車両の周辺に通信エリアを形成し、前記電子キーが前記通信エリア内に存在する状態で前記車載機と前記電子キーとの間で無線信号を送受信することにより前記車載機が前記電子キーを認証する通信システムを前提としている。前記車載機は、複数の状況毎に前記車載機と前記電子キーとの間の距離あるいは前記距離に関わるパラメータを測定し、前記車載機は、前記複数の状況で測定される前記距離あるいは前記パラメータに基づき前記車載機および前記電子キーの間で通信が不正に成立しているか否かを判定する。
【0009】
この構成によれば、車載機と電子キーとの間の状況に変化がない状態で距離あるいはパラメータの測定を実施する場合と比較して、全く同じ測定結果が繰り返されることが抑制される。そのため、車載機は、無線信号の反射により一時的に車載機および電子キーとの間の通信が不正に成立していると判定されてしまう判定結果としても、再度車載機および電子キーの間の通信が不正に成立していないと判定する機会を得ることができる。したがって、車載機および電子キーの間の通信が正否の判定精度を向上させることができる。
【0010】
上記構成を有する通信システムにおいて、前記複数の状況は、前記車載機と前記電子キーとの間における無線信号の伝播状態が異なる状況であることが好ましい。
上記構成を有する通信システムにおいて、前記複数の状況は、前記車載機に対する前記電子キーの位置が変化する状況であることが好ましい。
【0011】
上記構成を有する通信システムにおいて、前記複数の状況は、奇数に設定され、前記車載機は、前記複数の状況毎に測定された前記距離が閾値以下である旨を示す判定結果が過半数であるとき、前記車載機および前記電子キーの間の通信は正しいものであると判定し、前記距離が前記閾値以下である旨を示す判定結果が過半数に満たないとき、前記車載機および前記電子キーの間の通信は正しいものではないと判定することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、複数回測定した距離が閾値以下であるか否かを多数決により判定することで、車載機および電子キーの間の通信が不正に成立しているか否かの判定の信頼性を向上させることができる。
【0013】
上記構成を有する通信システムにおいて、前記車両は、ドアの操作を検出する第1センサと、ユーザの座席への着座を検出する第2センサとを備え、前記複数の状況は、前記電子キーが前記通信エリアに進入する第1の状況と、前記電子キーが前記車両に接近している第2の状況と、前記電子キーが前記車両の内部に存在する第3の状況とを含み、前記車載機は、前記電子キーの存在を検出するために送信する前記無線信号に対する前記電子キーからの応答としての前記無線信号を前記車載機が受信することにより前記電子キーが前記第1の状況であることを、前記第1センサを通じて前記ドアの操作が検出されることにより前記電子キーが前記第2の状況であることを、前記第2センサを通じてユーザが前記座席に着座したことが検出されることにより前記電子キーが前記第3の状況であることを検出することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の通信システムによれば、車載機および電子キーの間の通信の正否の判定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、通信システムの一実施形態について説明する。
図1に示すように、通信システム3は、車両1に搭載される車載機10と、ユーザに携帯される電子キー2とを備えている。
【0017】
まず、車両1の構成について説明する。
図2に示すように、車両1は、車載機10と、ドアロック装置40を始めとする車載電装品の駆動を制御するボディECU30と、エンジンスイッチ70の操作によりエンジン60を動作させるエンジンECU50と、複数のドア80と、複数の座席90と、第1センサとしてのドアハンドルセンサ85および第2センサとしての着座センサ91とを有している。なお、本実施形態において、座席90は、運転席である。また、複数のドア80は、運転席、助手席、およびトランクに対応する位置に設けられるドアである。また、ドアハンドルセンサ85には、静電センサが採用されている。
【0018】
ドアロック装置40は、ドア80に内蔵されている。ドアハンドルセンサ85は、運転席側のドア80のドアハンドル81、助手席側のドア80のドアハンドル82、およびトランク側のドアハンドル83に内蔵されている。ドアハンドルセンサ85は、ユーザの手がドアハンドル83に接触することを検出する。着座センサ91は、座席90に内蔵されている。着座センサ91は、ユーザが座席90に着座したとき、その荷重を検出する荷重センサである。
【0019】
次に、車載機10の構成について説明する。
図1に示すように、車載機10は、照合ECU11、LF送信部12、UHF送受信部13、およびUWB送受信部14を有している。LF送信部12は、送信アンテナ12aを通じて車内および車外にLF帯の無線信号を送信する。UHF送受信部13は、送受信アンテナ13aを通じて車内および車外にUHF帯の無線信号を送受信する。UWB送受信部14は、送受信アンテナ14aを通じて車内および車外にUWB帯の無線信号を送受信する。照合ECU11には、LF送信部12、UHF送受信部13、およびUWB送受信部14が電気的に接続されている。また、照合ECU11には、ボディECU30と、エンジンECU50とが、車両に搭載される通信線Lを通じて電気的に接続されている。通信線Lとしては、例えばCAN(Controller Area Network)が用いられる。また、照合ECU11には、ドアハンドルセンサ85および着座センサ91が電気的に接続されている。照合ECU11は、メモリ11aと、算出部11bと、通信正否判定部11cとを有している。算出部11bは、車載機10と電子キー2との間の距離Ld(
図2参照)を測定する。通信正否判定部11cは、車載機10と電子キー2との間で正規通信が不正に成立しているか否かを判定する。メモリ11aには、IDコード、測距コード、および暗号鍵が記憶されている。IDコードは、ビークルIDコードおよび電子キーIDコードを含んでいる。
【0020】
図2に示すように、送信アンテナ12aは、車両1のドアハンドル81,82,83の内部および車内に設けられる。車載機10は、車両が駐車状態(ドア80がロック状態、エンジン60が停止状態)であるとき、送信アンテナ12aを通じてLF帯の無線信号を予め設定された間欠周期で送信する。これにより、車室外におけるドア80の周辺には、電子キー2との通信エリアRが形成される。車載機10は、ドア80が解錠されてユーザの乗車が検出されるとき、車内の送信アンテナ12aを通じてLF帯の無線信号を車室内の全域に送信する。
【0021】
次に、電子キー2の構成について説明する。
図1に示すように、電子キー2は、電子キー2の動作を制御するキー制御部20と、メモリ21と、LF帯の無線信号を受信するLF受信部22と、UHF帯の無線信号を送受信するUHF送受信部23と、UWB帯の無線信号を送受信するUWB送受信部24とを有している。キー制御部20には、LF受信部22、UHF送受信部23、およびUWB送受信部24が電気的に接続されている。メモリ21には、車載機10と同様のIDコード、測距コード、および暗号鍵が記憶されている。
【0022】
次に、このように構成された車載機10および電子キー2の間で実行される無線通信について説明する。なお、車両1は、駐車状態である。
図3に示すように、車載機10は、ドアハンドル81,82,83に設けられる送信アンテナ12aからLF帯の無線信号であるウェイク信号Swkを予め設定された間欠周期で送信する。これにより、車両1の周辺には、通信エリアR(
図2参照)が形成される。なお、ウェイク信号Swkは、通信エリアR内に電子キー2の存在を検出するためのものである。
【0023】
ユーザが通信エリアRに進入(
図2参照)して電子キー2がウェイク信号Swkを受信すると、電子キー2は待機状態から起動状態へ切り替わり、UHF帯の無線信号であるアック信号Sacを送信する。
【0024】
車載機10は、ウェイク信号Swkに対するアック信号Sacを受信すると、UHF帯の無線信号であるビークルID信号Sviを送信する。
電子キー2は、ビークルID信号Sviを受信すると、ビークルID信号Sviに含まれるビークルIDコードとメモリ21に記憶されているビークルIDコードとを照合し、当該照合が成立するとき、アック信号Sacを送信する。
【0025】
車載機10は、ビークルID信号Sviに対するアック信号Sacを受信すると、チャレンジコードを含むチャレンジ信号Sccを送信する。また、車載機10は、メモリ11aに記憶されている暗号鍵を使用して自身の演算するチャレンジコードを暗号化することにより、電子キー2から送信されてくる予定のレスポンスコードを演算する。
【0026】
電子キー2は、チャレンジ信号Sccを受信すると、メモリ21に記憶されている暗号鍵(
図1参照)によって、チャレンジ信号Sccに含まれるチャレンジコードを暗号化することにより、レスポンスコードを演算する。電子キー2は、メモリ21に記憶されている電子キーIDコードと、自身で演算するレスポンスコードとを含むレスポンス信号Sreを送信する。
【0027】
車載機10は、レスポンス信号Sreを受信すると、メモリ11aに記憶されている電子キーIDコードと、レスポンス信号Sreに含まれる電子キーIDコードとを照合する。また、車載機10は、自身で演算したレスポンスコードと、レスポンス信号Sreに含まれるレスポンスコードとを照合する。
【0028】
車載機10は、車室外でのIDコード照合およびレスポンスコード照合が成立したとき、車室内に設けられる送信アンテナ12aからLF帯の無線信号であるウェイク信号Swkを車室内の全域に予め設定された間欠周期で送信する。車載機10と電子キー2との間では、車室外で実施したIDコード照合およびレスポンスコード照合と同様の処理を車室内でも実施する。
【0029】
また、車載機10は、IDコード照合およびレスポンスコード照合に加えて距離判定を実施する。車載機10は、車載機10と電子キー2との間の距離判定を行う。距離判定とは、車載機10と電子キー2との間の無線信号の授受を通じて、車載機10と電子キー2との間の距離を演算し、当該演算される距離の妥当性を確認するための処理をいう。
【0030】
図4に示すように、車載機10は、距離判定を行うに際して、まずUWB帯の無線信号である測距要求信号Sdcを送信する(ステップS101)。電子キー2は、測距要求信号Sdcを受信すると(ステップS102)、UWB帯の無線信号である測距応答信号Sdrを送信する(ステップS103)。車載機10は、電子キー2から測距応答信号Sdrを受信したとき(ステップS104)、車載機10が測距要求信号Sdcを送信してから測距応答信号Sdrを受信するまでの往復時間に基づいて車載機10から電子キー2までの距離Ldを演算する(ステップS105)。車載機10は、ステップS105において演算される距離Ldと閾値Lthとを比較する距離判定を行う(ステップS106)。車載機10は、距離Ldが閾値Lth以下であるとき、電子キー2が通信エリアR内に位置していると判定する。車載機10は、距離Ldが閾値Lthを越えているとき、電子キー2が通信エリアRの外に存在する旨を判定する。この場合、例えば、中継器を利用した不正な通信であることも考えられる。なお、閾値Lthは、電子キー2が車両1の通信エリアRの内部にあるか否かを判定するための値であって、通信システム3の製品仕様などに応じて要求される電子キー2の車両1に対する作動距離に基づき設定される。
【0031】
ただし、
図2に示すように、車載機10と、電子キー2との位置関係によっては、車載機10および電子キー2の間で送受信される無線信号(測距要求信号Sdcおよび測距応答信号Sdr)が、車両1や建造物Build等の障害物Obに反射して、この反射した無線信号が車載機10あるいは電子キー2により受信されてしまうことがある。すなわち、車載機10により演算される距離Ldが車載機10と電子キー2との間の実際の距離よりも長くなってしまい、距離Ldが閾値Lthよりも大きくなってしまうことが考えられる。すなわち、電子キー2が通信エリアR内に存在するにも関わらず、距離Ldが正しく演算されないことに起因して、電子キー2が通信エリアR外に存在していると判定されたり、不正な通信であると判定されたりするおそれがある。
【0032】
距離Ldが閾値Lthを越えてしまうことが一時的な状況であることが考えられるため、車載機10と電子キー2との間の距離判定は、複数回実施することが好ましい。しかし、車載機10と電子キー2との間の無線信号の伝播状態に変化がなければ、距離判定を複数回実施したとしても同じ結果が繰り返し得られるだけである。
【0033】
そこで、
図5に示すように、車載機10は、無線信号の伝播状態が異なると考えられる車載機10に対する電子キー2の位置として第1の状況A、第2の状況B、および第3の状況Cの3つの状況において車載機10と電子キー2との間の距離Ldを演算する。そして車載機10は、当該距離Ldが閾値Lth以下となる状況が2つ以上ある場合、電子キー2は通信エリアR内に存在するとともに車載機10と電子キー2との間の通信が正しいものである旨を判定する。
【0034】
第1の状況Aとは、電子キー2を携帯しているユーザが通信エリアRに進入した状況である。車載機10は、ウェイク信号Swkに対する電子キー2からのアック信号Sacが受信されるとき、第1の状況Aである旨を判定する。
【0035】
第2の状況Bとは、電子キー2を携帯しているユーザが車両1に近接している状況である。車載機10は、第1の状況Aであることを前提としてドアハンドルセンサ85を通じてユーザのドアハンドル81,82,83の操作が検出されるとき、第2の状況Bである旨を判定する。
【0036】
第3の状況Cは、電子キー2を携帯しているユーザが車両1に乗り込んだ状況である。車載機10は、着座センサ91を通じてユーザが座席90に着座していることが検出されるとき、第3の状況Cである旨を判定する。
【0037】
第1の状況A、第2の状況B,および第3の状況Cは、ユーザが車両1に近づき乗車するまでの一連の流れの中の状況であって、第1の状況A、第2の状況B、および第3の状況Cは、それぞれ車載機10に対する電子キー2の位置が変化する。このため、状況A,B,Cにおいて、車載機10と電子キー2との間で送受信される無線信号の伝播状態も異なる。無線信号が障害物Obに対して反射することによる距離測定への影響も変化する。
【0038】
車載機10と電子キー2との間の距離判定の処理手順を
図6のフローチャートに従って説明する。
図6に示すように、車載機10の照合ECU11は、電子キー2の位置が第1の状況Aであるか否かを判定する(ステップS201)。照合ECU11は、電子キー2が第1の状況Aである旨が判定されるとき(ステップS201でYES)、車載機10と電子キー2との間における1回目の距離Ldの測定を実行し、距離Ldが閾値Lth以下であるか否かの距離判定を実行する(ステップS202)。具体的には、照合ECU11は、先の
図4のフローチャートにおけるステップS101〜S106を実行する。照合ECU11は、距離Ldが閾値Lth以下であるか否かの判定結果を一時的に記憶する。また、照合ECU11は、電子キー2が第1の状況Aである旨が判定される場合(ステップS201でYES)、車室外で先の
図3のフローチャートに示される無線通信を通じた電子キー2の認証が成立するとき、ドア80を解錠許可する。照合ECU11は、電子キー2が第1の状況Aでない旨が判定されるとき(ステップS201でNO)、処理を終了する。
【0039】
次に、照合ECU11は、電子キー2の位置が第2の状況Bであるか否かを判定する(ステップS203)。照合ECU11は、電子キー2が第2の状況Bである旨が判定されるとき(ステップS203でYES)、車載機10と電子キー2との間における2回目の距離Ldの測定および距離判定を実行する(ステップS204)。照合ECU11は、距離Ldが閾値Lth以下であるか否かの判定結果を一時的に記憶する。また、照合ECU11は、電子キー2が第2の状況Bである旨が判定されるとき(ステップS201でYES)、ドア80を解錠する。照合ECU11は、電子キー2が第2の状況Bでない旨が判定されるとき(ステップS203でNO)、処理を終了する。
【0040】
次に、照合ECU11は、電子キー2の位置が第3の状況Cであるか否かを判定する(ステップ205)。照合ECU11は、電子キー2が第3の状況Cである旨が判定されるとき(ステップS205でYES)、車載機10と電子キー2との間における3回目の距離Ldの測定および距離判定を実行する(ステップS206)。照合ECU11は、距離Ldが閾値Lth以下であるか否かの判定結果を一時的に記憶する。また、照合ECU11は、電子キー2が第3の状況Cでない旨が判定されるとき(ステップS205でNO)、処理を終了する。
【0041】
次に、照合ECU11は、一時的に記憶された距離判定の結果に基づき車載機10および電子キー2との間で正規通信が成立しているか否かを判定する(ステップS207)。具体的には、照合ECU11は、各状況A,B,Cにおいて実施した距離判定の結果で、距離Ldが閾値Lth以下である旨の判定結果が2つ以上であるか否かを判定する。照合ECU11は、距離Ldが閾値Lth以下である旨の判定結果が2つ以上であるとき、車載機10と電子キー2との間の通信は、正規の通信である旨を判定し(ステップS207でYES)、車室内において先の
図3のフローチャートに示される無線信号を通じた電子キー2の認証が成立するとき、エンジン60の始動を許可する(ステップS208)。具体的には、照合ECU11は、エンジンECU50に対してエンジン60の始動が許可された旨を伝達する(
図1参照)。また、照合ECU11は、距離Ldが閾値Lth以下である旨の判定結果が2つ以上ないとき(ステップS207でNO)、エンジン60の始動を不許可とする。具体的には、照合ECU11は、エンジンECU50に対してエンジン60の始動が不許可とされた旨を伝達する。
【0042】
本実施形態の作用および効果について説明する。
(1)車載機10および電子キー2の間における無線信号の伝播状態が異なる第1の状況A、第2の状況B、および第3の状況Cにおいて、距離Ldの測定を実施する。車載機10と電子キー2との間の無線信号の伝播状態が異なるため、車載機10と電子キー2との間の状況に変化がない状態で距離Ldの測定を実施する場合と比較して、全く同じ測定結果が繰り返されることが抑制される。そのため、車載機10は、無線信号の反射により一時的に車載機10および電子キー2との間の通信が不正に成立していると判定されてしまう判定結果が出たとしても、再度車載機10および電子キー2の間の通信が不正に成立していないと判定する機会を得ることができる。したがって、車載機10および電子キー2の間の通信が正否の判定精度を向上させることができる。
【0043】
(2)複数回測定した距離Ldが閾値Lth以下であるか否かを多数決により判定することで、車載機10および電子キー2の間の通信が不正に成立しているか否かの判定の信頼性を向上させることができる。
【0044】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・本実施形態において、第3の状況Cを認識するためのトリガーが、ユーザが座席90に着座することであったが、例えば、車両1に設けられているブレーキの踏み込み操作をトリガーにしても良い。すなわち、ユーザがエンジンスイッチ70の操作によりエンジン60を起動させようとする前に操作される構成を第3の状況Cを認識するためのトリガーとすればよい。
【0045】
・また、第2の状況Bを認識するためのトリガーが、ユーザの手がドアハンドル81,82,83に接触することであったが、例えば、カーテシスイッチを通じてドア80の開閉が検出されることをトリガーとしてもよい。
【0046】
・本実施形態において、距離Ldは、第1の状況A,第2の状況B、および第3の状況Cで測定されていたが、例えば、第1の状況A、第2の状況B、および第3の状況C以外のその他の状況においても距離Ldを測定してもよい。すなわち、車載機10および電子キー2の間の無線信号の伝播状態が異なる状況で複数回距離Ldを測定することにより、車載機10および電子キー2の間の通信の正否の判定精度より向上する。
【0047】
・加えて、第1の状況A,第2の状況B,第3の状況C、およびその他の状況のうちいずれか2つの状況で距離Ldの測定および距離判定を実施し、エンジン60の始動を許可してもよい。このとき、多数決によりエンジン60の始動が決定できないため、2つの状況のうち一つだけでも距離Ldが閾値Lth以下となる判定結果が出ていれば、エンジン60の始動を許可してもよい。例えば、2つの状況として第1の状況Aおよび第3の状況Cを選択したとして、第3の状況Cだけで距離Ldが閾値Lth以下となる旨が判定されていれば、エンジン60の始動を許可してもよい。
【0048】
本実施形態では、車載機10は、第1の状況Aが検出されたときドア80を解錠許可するように設定しているが、基本的に中継器等を使用して車載機10および電子キー2の間の通信を不正に成立させようとする場合、電子キー2は、車載機10の形成する通信エリアR内に存在していない状況であり、電子キー2と車載機10との間の距離Ldは、閾値Lthを越えた状態で一定に保たれるため、車載機10および電子キー2の間で不正に通信が成立しているか否かの判定を複数回実施しても、常に車載機10および電子キー2の間で不正に通信が成立しているとの旨が判定されることとなる。すなわち、距離Ldが閾値Lth以下でない状態となる要因は、無線信号が障害物Obに反射してしまうこととなる。そのため、第1の状況Aで距離Ldが閾値Lth以下となってしまうことは、無線信号が障害物Obに反射してしまう一時的な影響であるため、再度第3の状況Cの機会で距離Ldが閾値Lth以下である旨が判定されていれば、エンジン60の始動を許可してもよい。
【0049】
・また、車載機10および電子キー2の間で通信が正しいものであると判定された場合に、エンジン60の始動を許可するように設定されているが、ドア80の施解錠を許可するようにしてもよい。
【0050】
例えば、
図7に示すような制御フローとしてもよい。なお、ステップS201〜ステップS204については、先の
図6のフローチャートに示される本実施形態と同様である。
車載機10は、状況A,Bにおける距離判定を実施した後、車載機10と電子キー2との間の通信が正しいものであるか否かを判定する(ステップS301)。具体的には、各状況A,Bにおいて実施した距離判定の結果のいずれかが距離Ldが閾値Lth以下となっているか否かを判定する。車載機10は、距離Ldが閾値Lth以下である旨の判定結果が少なくとも1つあると判定したとき(ステップS301でYES)、ドア80の解錠を許可する(ステップS302)。また、車載機10は、距離Ldが閾値Lth以下である旨の判定結果がないと判定したとき(ステップS301でNO)、ドア80の解錠を不許可とする。なお、ステップS302を「エンジン60の始動を許可」に、ステップS302を「エンジン60の始動を不許可」に変更してもよい。
【0051】
すなわち、第1の状況A,第2の状況B、第3の状況C、およびその他の状況のうち少なくとも2つの状況を選定するにあたり、車載機10および電子キー2の間の通信が正しいものであることで許可される事象が、エンジン60の始動であるときは、エンジンスイッチ70を操作する前までの段階で少なくとも2つの状況を選定する。また、車載機10および電子キー2の間の通信が正しいものであることで許可される事象が、ドア80の施解錠であるときは、ドア80を開く前までの段階で少なくとも2つの状況を選定する。
【0052】
・また、本実施形態におけるエンジン60の動作を許可するか否かの制御と、上記ドア80の解錠を許可するか否かの制御とを組み合わせて使用してもよい。
・車載機10および電子キー2の間の無線信号の伝播状態を変化させる手段としては、電子キー2を携帯したユーザの位置が第1の状況A、第2の状況B、および第3の状況Cのように変化することに限らない。
【0053】
例えば、UWB送受信部14の送受信アンテナ14aを2つ以上設け、それらの複数の送受信アンテナ14aを切り替えて使用することで車載機10と電子キー2との間の無線信号の伝播状態を変化させることが考えられる。このとき、第1の状況Aおよび第2の状況Bのいずれかで距離Ldが閾値Lth以下でない状態となったことをトリガーとして、送受信アンテナ14aを切り替える。このようにすれば、第3の状況Cに至るまでユーザの位置が変わらなくても、車載機10と電子キー2との間の無線信号の伝播状態を変化させることができる。また、さらなる具体例としては、距離Ldが閾値Lth以下でないことをトリガーとして、距離Ldを測定するために使用する無線信号の周波数帯を変更してもよい。
【0054】
・本実施形態において、距離Ldを用いて車載機10および電子キー2の間の通信が正しいものか否かを判定していたが、例えば、車載機10および電子キー2の間の無線信号の受信信号強度を用いてもよい。受信信号強度は、距離Ldに関わるパラメータの一例である。
【0055】
車載機10と電子キー2との距離Ldが長くなるほど、互いに受信する無線信号の受信信号強度は低下することが考えられる。すなわち、距離Ldと受信信号強度とは反比例すると考えられることから、測距要求信号Sdcおよび測距応答信号Sdrが、障害物Obに反射することにより、車載機10および電子キー2の間で互いに送受信されるまでにたどる経路が長くなることで受信信号強度も低下することも考えられる。そのため、距離Ldが閾値Lthであるときの測距要求信号Sdcおよび測距応答信号Sdrの受信信号強度を基準として閾値を設定し、車載機10および電子キー2が受信する測距要求信号Sdcおよび測距応答信号Sdrの受信信号強度が当該閾値を上回るときに、電子キー2は、車載機10に対して正規通信が成立する距離に存在すると判定してもよい。
【0056】
・本実施形態において、使用される無線信号は、どのような周波数帯の信号に変更してもよい。
・本実施形態において、ドアハンドルセンサ85およびドアロック装置40は、全てのドア80に設けられていてもよい。また、着座センサ91は、運転席に限らず、助手席あるいは後部座席に設けてもよい。