(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それ自体で前記スロットアンテナ又は前記スリットアンテナを構成する金属製の筐体を備え、前記複数の金属面は、それぞれ所定領域を囲むように前記筐体の底面から起立する前記筐体の側面であることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
前記底面に対向する天頂面のうち前記開口された部位以外の部分面と少なくとも一つの前記側面、前記底面と少なくとも一つの前記側面、少なくとも二つの前記側面、あるいは、前記底面と少なくとも一つの前記側面と前記部分面とが一体に形成されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
前記筐体の側面は、それぞれ前記取付面と略水平の方向を指向する複数の側面であって二つ以上の側面は隣り合っており、前記スロットアンテナは、前記隣り合う二つ以上の前記側面に跨がって形成されていることを特徴とする
請求項2から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、LTE通信及び衛星測位システムの受信に用いることができる車載用のアンテナ装置に適用した場合の実施の形態例を説明する。
[第1実施形態]
図1は第1実施形態に係るアンテナ装置の要部の構造例を示す外観斜視図である。このアンテナ装置1は、それ自体でLTE通信用のアンテナとして動作する筐体10と、この筐体10の所定領域に収納される絶縁性の回路基板20と、回路基板20に設けられた平面アンテナ30とを有する。これらは、電波透過性の材質、例えば樹脂製のケースに収容され、例えば車両ルーフの窪み面などに嵌めこまれて使用される。車両ルーフの窪み面を、以後「取付面」と称する。平面アンテナ30は、本実施形態では、GNSS(Global Navigation Satellite System)用の電波を受信するパッチアンテナであり、取付面と略平行に設置される。すなわち、平面アンテナ30は、厚みを有する絶縁性の誘電体の天頂部に取付面と略平行の放射素子を形成して構成される。回路基板20には、後述する複数の給電点との接続部材と、車両側の電子機器に電気的に接続される増幅器等とを含むアンテナ部品も実装されている。
【0011】
筐体10は、箱状の金属筐体である。本実施形態では、一対の短端面と一対の長端面を有する略矩形柱の金属筐体を用いる。本明細書では、筐体10のうち、
図1左側の短端面全体を「第1側面」、
図1では見えないもう一つの短端面全体を「第4側面」、
図1右側手前の長端面全体を「第3側面」、
図1では見えないもう一つの長端面全体を「第2側面」と呼ぶ。また、筐体10の上底部全体を「天頂面」、
図1では見えない下底部全体を「底面」と呼ぶ。第1側面、第2側面、第3側面、第4側面は、底面から起立する。
図2(a)は第1側面、同(b)は第2側面、同(c)は第3側面、同(d)は第4側面の筐体10の構造説明図である。また、
図3(a)は底面に対向する天頂面、同(b)は底面の筐体10の構造説明図である。
【0012】
第1側面、第2側面、第3側面、第4側面はそれぞれ金属面であり、平面アンテナ30が存在する所定領域を囲むように全方位を分割した角度(本例では90度)で形成されている。第1側面、第2側面、第3側面、第4側面は、また、取付面への設置時に、車両ルーフに対して略直交する。車両ルーフは接地電位であり、筐体10の底面の面積に比べて無限大の面積の大地とほぼ等価となるほどの複数倍の面積をもつ。そのため、第1側面、第2側面、第3側面、第4側面が指向する面で、水平方向で360度の全方位に指向性を持つアンテナエレメントとして動作し得る。これらのアンテナエレメントの動作原理については、後述する。
【0013】
天頂面と底面もまた金属面となる。天頂面と底面は取付面と対向する面であり、天頂面はその中央部が略十字状に開口している。開口された部位を「開口部」、開口部以外の天頂面を「部分面」と呼ぶ。平面アンテナ30は、開口部のほぼ中央部で露出している。そのため、平面アンテナ30は、GNSS用の電波を受信する際に筐体10の影響を受けにくくなっている。この効果については、後述する。なお、開口部を略十字状としたのは、筐体10の平面アンテナ30への干渉を低減させるためであるが、平面アンテナ30の形状によっては、開口部を他の形状にしても構わない。例えば楕円状、矩形状としても良い。底面は、車両側への取付機構40を除く部分が全て金属面となる。
【0014】
筐体10のサイズは、例えば天頂面及び底面の長辺が約200mm、短辺が約100mm、厚み(第1側面、第2側面、第3側面、第4側面の高さ)が約17mmである。ケースは筐体10よりも僅かに大きいが、取付面からの高さは約20mm以下となる。
【0015】
第1側面にはスロット111が形成されている。スロット111は、
図2(a)に示されるように、車両ルーフの取付面と平行又は略平行に形成され、両スロット端が、隣り合う第2側面及び第3側面に跨がる。スロット111が、第1側面のほか、隣り合う第2側面、第3側面に及ぶことで、スロット111を第1側面のみに形成する場合に比べてアンテナ装置1の幅(第1側面の幅)を狭くすることができる。また、取付面が接地面であるため、スロット111は、動作時に垂直偏波用のスロットアンテナとして動作する。送受信可能な周波数は、給電点の位置によってフレキシブルに決めることができる。給電点への給電は、例えば同軸ケーブルを用いる場合、芯線がスロット111の上縁(内縁の上方)、接地線がスロットの下縁(内縁の下付)に接続されることにより行われる。この給電点は、スロット111の中央部よりも左右いずれかにオフセットした部位に設ける。
【0016】
例えば、給電点をスロット111のうち第1側面の第3側面寄りの位置に設けたとする。この場合、それぞれ反対方向から給電部を臨む第1スロット端(第2側面の閉端)と第2スロット端(第3側面の閉端)とを有することになる。第1スロット端から給電部までの長さは、LTEのLowBand(低周波帯域:以下同じ)の700〜900MHz帯で共振する波長(共振長)λ
Lの1/2とする。また、第2スロット端から給電部までの長さはLTEのHighBand(高周波帯域:以下同じ)の1.7GHz〜2.7GHzで共振する波長(共振長)λ
Hの1/2とする。これにより、スロット111を、LTE帯の全周波数帯で共振し、かつ、垂直偏波の送受信を可能にするスロットアンテナとして動作させることができる。
なお、各周波数帯域で使用できる周波数には一定の範囲(幅)がある。そのため、波長ないし共振長という場合、使用する周波数を中心とした一定の範囲(幅)の波長ないし共振長をいうものとする。
【0017】
スロット114は、
図2(d)に示される通り、構造がスロット111と同様となる。つまり、スロット114を、LTE帯の全周波数帯で共振し、かつ、垂直偏波の送受信を可能にするスロットアンテナとして動作させることができる。この場合、LTE帯の低周波帯域で共振する波長(共振長)λ
Lの1/2と、LTE帯の高周波帯域で共振する波長(共振長)λ
Hの1/2となる位置(例えばスロット内縁)に給電点を設ける。なお、スロット111とスロット114の給電点は、天頂面から見て点対称となる位置、つまり筐体10において互いに最も離れた位置に設ける。これにより、両スロット111,114間の相関を弱めて、相互干渉を低減させることができる。
【0018】
スロット111及びスロット114は、これらと直交する方向に主偏波が発生する。そのため、これらのスロットアンテナの主偏波は垂直偏波となる。つまり、スロット111及びスロット114が接地面に平行であれば、これらの主偏波は垂直偏波となる。また、スロットアンテナでは、スロット111及びスロット114が形成されている面の向いている方向(スロット111及びスロット114の開口方向)の利得が強く出る。そのため、これらを主要エレメントとするスロットアンテナは、スロット111及びスロット114が形成されている面の向いている水平方向における垂直偏波の利得が相対的に強くなる。例えば、第1側面を車両の前方に向け第4側面を車両の後方に向けてアンテナ装置1を取付面に取り付けた際には、スロット111が車両の前方を向いて形成され、スロット114が車両の後方を向いて形成されているので、車両の前後方向の水平方向における垂直偏波の利得が相対的に強くなる。この傾向は、後述するスリットアンテナにおいても同様となる。そのため、アンテナ装置1の取付面が車両ルーフから窪んでいても利得の低下が抑制される。
【0019】
本実施形態では、LTEの低周波帯域と高周波帯域での信号の送信又は受信が可能となるように、スロット111及びスロット114のサイズと、各スロット111,114の内縁の給電部の位置を決定した。以後の説明では、スロット111を「LTE第1アンテナ」、スロット114を「LTE第4アンテナ」と呼ぶ。
LTE第1アンテナは、第1側面の向いている水平方向の垂直偏波の利得が強くなる。そのため、例えば4×4MIMOの第1アンテナとして動作させることができる。また、LTE第4アンテナは、第4側面の向いている水平方向の垂直偏波の利得が強くなる。そのため、例えば4×4MIMOの第4アンテナとして動作させることができる。
【0020】
本実施形態では、また、第2側面にスリット112、第3側面にスリット113を形成し、これらをLTE用のスリットアンテナとして動作させる。
図1及び
図2(b)に示される通り、スリット112は、開放端が天頂面に形成され、閉端がスロット111,114の中間よりも少しスロット111側に偏った位置に形成される。第2側面でいえば、スリット112は、天頂面から底面方向に厚みの略中央部分まで切り込まれた後、スロット111の方向に向きを変えた直後の部分が閉端となる。当該スリット用の給電点は、例えば向きを変えた部位と閉端とのほぼ中間から閉端に偏った位置に設けられる。給電点からスリット開放端までの長さは、LTEの高周波帯の波長λ
Hの1/4である。
以後の説明では、スリット112を「LTE第2アンテナ」と呼ぶ。LTE第2アンテナは、第2側面の向いている水平方向の垂直偏波の利得が強くなる。そのため、例えば4×4MIMOアンテナにおける第2アンテナとして動作させることができる。
【0021】
スリット113の構造及びその給電点の位置は、
図2(c)に示される通り、スリット112と同じとなる。スリット113を「LTE第3アンテナ」と呼ぶ。LTE第3アンテナは、第3側面の向いている水平方向の垂直偏波の利得が強くなる。そのため、例えば4×4MIMOアンテナにおける第3アンテナとして動作させることができる。
【0022】
第1側面、第2側面、第3側面、第4側面、天頂面(部分面)及び底面は、全て一体の面であり、各スロット111,114及び各スリット112,113の周囲の金属の面積を、広大に確保することができる。そのため、そのような金属の面積が確保できない場合に比べて送受信できる周波数の帯域を拡げることができ、アンテナ効率も高まる。
また、筐体10を車両ルーフの取付面と電気的に接続することで、車体全体を各スロット111,114及び各スリット112,113の周囲の金属として用いることができ、自由空間内よりもアンテナ性能を向上させることができる。また、例えばアンテナ装置1を周囲が金属となる窪みに配置させた場合であっても、特許文献1に開示された従来のモノポールアンテナと比較して、VSWRや水平方向の利得の低下が抑制される。
【0023】
次に、本実施形態のアンテナ装置1のアンテナ特性について説明する。
図4は第1側面における利得特性、
図5は第2側面における利得特性、
図6は第3側面における利得特性、
図7は第4側面における利得特性を示すグラフである。それぞれ、縦軸は水平面平均利得(dBi)、横軸は周波数(MHz)である。また、実線G11,G21,G31,G41は、
図1に示されるように平面アンテナ30を設けた場合の利得特性であり、破線G12,G22,G32,G42は、回路基板20から平面アンテナ30を取り外した場合の利得特性を示す。これらの利得特性から、第1側面および第4側面の各スロットアンテナの水平面平均利得G11,G41と、第2側面および第3側面の各スリットアンテナの水平面平均利得G21,G31は、平面アンテナ30を設置しても取り外しても大きく変わらない。つまり、一つの筐体10に水平面において全方位をカバーする4つのLTE用のアンテナと、GNSS用の平面アンテナ30とを干渉なく同梱することができる。
【0024】
また、各スロットアンテナ及びスリットアンテナの水平面平均利得G11,G21,G31,G41は、特許文献1に開示された長さ100mm、幅50mm、高さ45mmのシャークフィンアンテナの平均利得とさほど変わらず、むしろ本実施形態のアンテナ装置1の水平面平均利得の方が高くなる周波数帯さえある。本実施形態のアンテナ装置1は高さが17mmなので、従来型のアンテナ装置に比べてほぼ同じアンテナ特性で、より低背化にすることができるという利点がある。
【0025】
図8は、GNSSの周波数帯における平面アンテナ30の利得特性を示すグラフであり、縦軸は平均利得(dBi)、横軸は角度(°)である。実線は筐体10が存在するときの平面アンテナ30の平均利得G51であり、破線は筐体10を取り外したときの平面アンテナ30の平均利得G52である。それぞれ、窪みのある車両ルーフの取付部位に設けたときの平均利得である。角度0°および角度360°は平面アンテナ30の誘電体から天頂部の放射素子に向かう方向、すなわち、アンテナ装置1を車両ルーフの取付部位に設置したときは車体の天頂方向である。120°〜240°は、窪みのある車両ルーフの取付部位の側壁から取付面に向かう方向となる。
図8より、スロットアンテナとスリットアンテナの中に平面アンテナ30を設置しても平面アンテナ30の平均利得G51は大きく変わらないことがわかる。
【0026】
以上の通り、第1実施形態では、スロット111,114及びスリット112,113に直交する方向が主偏波となるため、筐体10を約17mmまで低背化させた場合においても、垂直偏波の利得を維持することができ、さらに、スロット111,114及びスリット112,113の開口方向、すなわち水平方向の垂直偏波の利得を高めることができる。そのため、車両ルーフの一部を窪ませ、その窪みの面に適合する形状及びサイズのアンテナ装置1を設置することで、水平方向の全方位角における利得を確保しつつ外観からアンテナ装置1を認識できなくなるようにすることができる。これにより、車両デザインの自由度を高めることができ、車両デザインの観点からは従来のこの種のアンテナ装置からは得られない効果を奏することができる。
【0027】
なお、第1実施形態では、第1側面、第2側面、第3側面、第4側面がそれぞれ車両ルーフの取付面(接地面)と略垂直となる例を説明したが、これらの側面と取付面との角度は任意で良い。スロット111、114、スリット112,113がそれぞれ接地面に平行となる関係であれば水平方向の垂直偏波の利得を得ることができる。
第1実施形態では、また、底面、部分面、第1側面から第4側面が全て一体の面である場合の例を説明したが、この限りでない。底面と少なくとも一つの側面、部分面と少なくとも一つの側面、少なくとも二つの側面、あるいは、底面と三つの側面と部分面とが一体に形成されている構成であっても良い。これにより、全ての面が物理的に分離されている場合よりも加工・量産が容易となり、低コスト化を図ることができる。
【0028】
<変形例>
第1実施形態では、平面アンテナ30がGNSS用のアンテナであったが、他の人工衛星を用いたSXM(Sirius XM)用のアンテナとすることもできる。
図9は、SXM用の周波数帯における平面アンテナの利得特性を示すグラフであり、縦軸は平均利得(dBi)、横軸は角度(°)である。実線は筐体10が存在するときの平面アンテナの平均利得G61であり、破線は筐体10を取り外したときの平面アンテナの平均利得G62である。それぞれ、窪みのある車両ルーフの取付部位に設けたときの平均利得である。角度0°および角度360°は平面アンテナの誘電体から天頂部の放射素子に向かう方向である。
図9より、SXM用の平面アンテナの場合も、スロットアンテナとスリットアンテナの中に設置しても平面アンテナG61の平均利得は大きく変わらないことがわかる。
【0029】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態を説明する。第1実施形態と同じ部品については同一符号を付してその説明を省略する。第2実施形態のアンテナ装置2は、
図10の外観斜視図に示されるように、天頂面が全て開口している箱状の筐体10−2の内部に回路基板20を配置し、この回路基板20に所定間隔でGNSS用の平面アンテナ30とSXM用の平面アンテナ50とを並べて配置したものである。筐体10−2は、それ自体でアンテナとして動作するものであり、その底面の構造は第1実施形態の筐体10と同じである。また、底面と第1ないし第4側面とは一体に形成されている例を示すが、少なくとも二つの側面、あるいは、底面と少なくとも一つの側面とが一体であっても良い。
【0030】
筐体10−2の第1側面には、第2側面および第3側面にわたり、スロット211が形成されている。このスロット211は、第1実施形態のスロット111と同じサイズである。そのため、給電点を適切な位置にすることにより、スロット211をLTEの全周波数帯の電波を送受信する4×4MIMOの第1アンテナとして動作させることができる。筐体10−2の第4側面には、第2側面および第3側面にわたり、スロット214が形成されている。このスロット214は、第1実施形態のスロット114と同じサイズである。そのため、給電点を適切な位置にすることにより、スロット214をLTEの全周波数帯の電波を送受信する4×4MIMOの第4アンテナとして動作させることができる。
【0031】
また、筐体10−2の第2側面にはスロット212が形成され、第3側面にはスロット213が形成されている。スロット212,213は、その長さ及び給電点の位置をLTEの高周波帯での送受信を可能にする長さ及び位置にすることにより、LTEの高周波帯をカバーする4×4MIMOの第2アンテナ、第3アンテナとして動作させることができる。第2実施形態のアンテナ装置2は、スロット211〜214に直交する方向が主偏波となるため、筐体10−2を約17mmまで低背化させた場合においても、垂直偏波の利得を維持することができ、さらに、スロット211〜214のそれぞれの開口方向、すなわち水平方向の垂直偏波の利得を高めることができる。
平面アンテナ30,50の平均利得については、第1実施形態と同じである。アンテナ装置2には平面アンテナ30,50が並べて配置されているので、アンテナ装置2は、GNSS用の電波とSXM用の電波の両方を受信することができる。
【0032】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態のアンテナ装置3は、
図11の外観斜視図に示されるように、天頂面が開口している箱状の筐体10−3の内部に回路基板20を配置し、この回路基板20に所定間隔でGNSS用の平面アンテナ30とSXM用の平面アンテナ50とを並べて配置したものである。筐体10−3は、それ自体でアンテナとして動作するものであり、その底面の構造は第1実施形態の筐体10と同じである。また、底面と第1ないし第4側面とが一体に形成されている例を示すが、少なくとも二つの側面、あるいは、底面と少なくとも一つの側面とが一体であっても良い。筐体10−3は天頂面が開口しているため、平面アンテナ30,50の平均利得に影響を与えないことは、
図8及び
図9の利得特性のグラフから明らかである。
【0033】
筐体10−3の第1側面、第2側面、第3側面及び第4側面には、それぞれスロット311,312,313,314が形成されている。スロット311,314は、LTEの高周波帯で共振するように、そのサイズ及び給電点の位置が決定される。また、スロット312,313は、LTEの全周波数帯で共振するように、そのサイズ及び給電点の位置が決定される。
第3実施形態のアンテナ装置3においても、スロット311〜314に直交する方向が主偏波となるため、筐体10−3を約17mmまで低背化させた場合においても、垂直偏波の利得を維持することができ、さらに、スロット311〜314の開口方向、すなわち水平方向の垂直偏波の利得を高めることができる。
【0034】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態のアンテナ装置4は、
図12の外観斜視図に示されるように、第3実施形態のアンテナ装置3の筐体10−3のうち、第2側面及び第3側面の一部を切り欠いた構造の筐体10−4を有する。その他の構成は、アンテナ装置3と同じになる。すなわち、アンテナ装置4の筐体10−4の第1側面、第2側面、第3側面及び第4側面のうち、第1側面にスロット411,第4側面にスロット414が形成されている。スロット411,414は、LTEの高周波帯で共振するように、そのサイズ及び給電点の位置が決定される。底面と第1ないし第4側面とが一体に形成されている例を示すが、この限りでない。例えば第1側面、第2側面及び第3側面と、第2側面、第3側面及び第4側面とを、互いに分離した一対の側面としても良い。
【0035】
第4実施形態のアンテナ装置4においても、スロット411,414に直交する方向が主偏波となるため、筐体10−4を約17mmまで低背化させた場合においても、垂直偏波の利得を維持することができ、さらに、スロット411,414の開口方向、すなわち水平方向の垂直偏波の利得を高めることができる。第2側面、第3側面の部分は切り欠かれているため、平面アンテナ30,50に与える影響が第1,2,3実施形態のアンテナ装置1,2,3よりも低減される。
【0036】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態を説明する。第5実施形態のアンテナ装置5は、
図13の外観斜視図に示されるように、天頂面が開口している箱状の筐体10−5の内部に回路基板20を配置し、この回路基板20に所定間隔でGNSS用の平面アンテナ30とSXM用の平面アンテナ50とを配置したものである。筐体10−5は、それ自体でアンテナとして動作するものであり、その底面の構造は第1実施形態の筐体10と同じである。底面と第1ないし第4側面とが一体に形成されている例を示すが、少なくとも二つの側面、あるいは、底面と少なくとも一つの側面とが一体であっても良い。筐体10−5の第1側面、第2側面、第3側面及び第4側面には、それぞれスリット511、512,513,514が形成されている。
【0037】
各スリット511〜514は、それぞれ開放端が筐体10−5の枠に形成され、閉端が隣り合う他の側面の角部側に偏った位置に形成される。
第1側面でいえば、スリット511は、筐体10−5の短端枠から底面方向に厚みの略中央部分まで切り込まれた後、第3側面の方向に向きを変えた直後の部分が閉端となる。当該スリット511用の給電点は、例えば向きを変えた部位と閉端とのほぼ中間から閉端に偏った位置に設けられる。給電点からスリット開放端までの長さは、LTEの高周波帯の波長λ
Hの1/4である。第4側面のスリット514も第1側面のスリット511と同じ構造となる。
【0038】
第3側面の場合、筐体10−5の長端枠から底面方向に厚みの略中央部分まで切り込まれた後、第4側面の方向に向きを変えた直後の部分が閉端となる。当該スリット513用の給電点は、例えば向きを変えた部位と閉端とのほぼ中間から閉端に偏った位置に設けられる。給電点からスリット開放端までの長さは、LTEの低周波帯の波長λ
Lの1/4である。第2側面のスリット512も第3側面のスリット513と同様となる。これらのスリット511〜514は、各側面の向いている水平方向の垂直偏波の利得が強くなる。そのため、例えば4×4MIMOアンテナにおける第1ないし第4アンテナとして動作させることができる。
【0039】
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態を説明する。第6実施形態のアンテナ装置6は、
図14の外観斜視図に示されるように、第4実施形態のアンテナ装置4の筐体10−4のうち、第1側面及び第4側面が、互いに湾曲して対向する筐体10−6を有する。回路基板20は、第1側面及び第4側面に収容される形状になっている。第1側面にはスリット611が形成され、第4側面にはスリット614が形成されている。底面と第1側面及び第4側面とが一体に形成されているが、この限りでない。例えば第1側面と第4側面とで、互いに分離した一対の側面としても良い。
スリット611は、筐体10−5の第1側面のうち、高さ方向の略中央部から、底面及び取付面と平行に切り込まれた部分が閉端となる。当該スリット611用の給電点は、例えば切り欠き直後と閉端とのほぼ中間から閉端に偏った位置に設けられる。給電点からスリット開放端までの長さは、LTEの高周波帯の波長λ
Hの1/4である。第4側面のスリット614も第1側面のスリット611と同じ構造となる。
また、スリット611が形成された第1側面とスリット614が形成された第4側面とは互いに湾曲して対向しているので、湾曲していないときに比べて、スリット611,614が互いに与える影響を低減することができる。
【0040】
第6実施形態のアンテナ装置6においても、スリット611,614に直交する方向が主偏波となる。そのため、筐体10−6を約17mmまで低背化させた場合においても、垂直偏波の利得を維持することができ、さらに、スリット611,614の開口方向、すなわち水平方向の垂直偏波の利得を高めることができる。第2側面、第3側面の部分は切り欠かれているため、平面アンテナ30,50に与える影響が第1,2,3,5実施形態のアンテナ装置1,2,3,5よりも低減される。
【0041】
[第7実施形態]
本発明の第7実施形態を説明する。第7実施形態のアンテナ装置7は、
図15の外観斜視図に示されるように、第4実施形態のアンテナ装置4の筐体10−4と同じ構造の筐体10−7を有する。この筐体10−7もそれ自体でアンテナとして動作するものであり、その底面部の構造及び回路基板20は、アンテナ装置4と同じとなる。第1側面に形成されたスロット711はアンテナ装置4のスロット411と同じであり、第4側面に形成されたスロット714はアンテナ装置4のスロット414と同じである。そのため、アンテナ特性や指向性などもアンテナ装置4と同じになる。相違点は、回路基板20に、平面アンテナ30,50に代えて、TCU(Telematics Communication Unit)60が配置されている点である。TCU60は、所定のデータセンタとの間の通信路を確立し、ドライブや充電などに便利な情報を受信するユニットである。
【0042】
[第8実施形態]
本発明の第8実施形態を説明する。
図16(a)は第8実施形態のアンテナ装置8の第1側面図、同(b)は正面図、同(c)は第4側面図、同(d)は下面図である。このアンテナ装置8は、樹脂製、つまり絶縁体から成る板体80の表面に金属膜81でスリット811を形成したものである。板体80は、取付面に垂直に設置される。スリット811の長さ及び給電点の位置は、使用する周波数帯に共振するように決定される。
このような構成のアンテナ装置8は、スリット811の向いている水平方向の垂直偏波の利得が強くなる。これを取り付け可能な部位は、板体80の厚みと長辺の長さ分だけで済むので、必ずしも車両ルーフに限らず、車体の側面などとすることができる。また、樹脂に金属膜81を貼り付けるだけで、スリットアンテナを実現することができるので、コスト面でも有利となる。
【0043】
第1ないし第7実施形態では、金属製の筐体10,10−2〜10−7をそれ自体でスロットアンテナ又はスリットアンテナとして動作させる例について説明したが、これらの筐体10,10−2〜10−7を絶縁体で構成し、その表面に金属膜でスロット111等又はスリット113等を形成するようにしても良い。この方がコストの面で有利となる。
【0044】
また、第1ないし第8実施形態では、接地面となる車両ルーフの取付面及び大地と平行に、筐体10,10−2〜10−7及び板体80を取り付けることを想定して説明したが、接地面を有する金属板を大地と垂直に車両に設けることができ、かつ大地よりもその接地面が近い場合、スロット111等及びスリット113等を大地と垂直に形成しても良い。