【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1に係る汚泥処理装置を設けた沈殿池Pの縦断面図である。この汚泥処理装置は、スカムスキマ1と、汚泥掻寄機100とを備えている。まず、下水処理施設の沈殿池Pには、汚泥掻寄機100が設けられている。汚泥掻寄機100は、4軸配置のチェーンフライト式であり、所定の間隔でチェーン102に取り付けられた複数のフライト103を備えている。チェーン102は、平行して2本設けられ(
図1では1本のように図示している)、フライト3の長手方向の両側にそれぞれチェーン102が取り付けられている。フライト103は、チェーン102の全周に設けられているが、便宜上、一部のフライト103のみを図示している。
【0012】
沈殿池Pは図示のとおり左側が水流の上流側、右側が下流側である。沈殿池Pの水上部には駆動装置105が設置されている。汚泥掻寄機100は、4つのスプロケットホイール104a,104b,104c,104dを備えている。各スプロケットホイール104a,104b,104c,104dに、チェーン102が張架され、チェーン102は、沈殿池Pの水面w側から池底P2まで矢印F1,F2方向に駆動装置105により駆動装置105によって循環駆動される。そして、フライト103が池底P2に沿って移動する際に、重力沈降により池底P2に堆積した汚泥を汚泥ピットP1側に掻き寄せる。
沈殿池Pの下流側の水面wの位置には越流トラフ112が設けられている。越流トラフ112の上流側の水面wの位置には、スカムスキマ1が設けられている。
【0013】
ところで、前記特許文献1のスカムスキマは、沈澱池内に設置された汚泥掻寄機の本体チェーンの駆動力を伝達装置によりスカムスキマに伝えて、水面に浮遊するスカムの捕集と捕集停止操作を行うスカムスキマの駆動装置である。これは2条の本体チェーンの所定位置にスカムスキマ前傾動用のストライカを突設し、このストライカにより傾起する当り金具を具えたリンク機構を介してスカムスキマ本体を周方向に回動可能としている。かかる技術は、ストライカ、当り金具の組合わせにより、スカムスキマの回動角を大小任意に組み合せ、水面に浮遊するスカムを、排出水量を少なくして効率的に回収することを意図している。
【0014】
しかしながら、前記特許文献1では、スカムスキマ本体を傾動動作させる頻度を少なくなるように調整することが困難であった。すなわち、前記のストライカを各本体チェーンに各1箇所だけ設けたとしても、本体チェーンが汚泥掻寄機を1周循環する間に1回は、ストライカと当り金具が当接して、リンク機構を介してスカムスキマ本体を周方向に回動する。すなわち、スカムスキマ本体は本体チェーンが汚泥掻寄機を1周循環する間に1回は駆動される。従来は、スカムスキマ本体をもっと長い時間間隔で駆動することはできなかった。すなわち、本体チェーンが汚泥掻寄機を複数周循環したときに、スカムスキマ本体が1回だけ駆動されるようにすることはできなかった。スカムスキマ本体の駆動回数が多すぎるとスカムスキマ本体でスカムではなく水ばかり吸い込んでしまい、無駄が多い。
【0015】
そこで、本各実施例では、スカムスキマ本体を傾動動作させる頻度を従来に比べて少なくすることができるスカムスキマ1について説明する。
【0016】
図2は、実施例1に係るスカムスキマ1の側面図である。
図3は、スカムスキマ14本体周辺部の正面図である。スカムスキマ1は、後述のとおり、前記スプロケットホイール104bを介して、汚泥掻寄機100を駆動源として駆動する。
【0017】
図2、
図3に示すように、スカムスキマ本体14は、円筒状の部材であり、長さ方向を沈殿池Pの側部方向として、略水面wの位置に配置されている。この円筒状のスカムスキマ本体14の長手方向に沿ってスカムスキマ本体14の上部には開口14aが形成されている。スカムスキマ本体14が駆動されていないときは、開口14aは上を向いていて、スカムスキマ本体14には開口14aから水は流れ込まない。スカムスキマ本体14が駆動されたときは、開口14aは水面w側に傾いて、スカムが水ごと開口14aに流れ込む。また、
図3に示すように、スカムスキマ本体14の両端部は、沈殿池Pの側面P3に軸受26によって回動自在に支持されている。
【0018】
スカムスキマ本体14の下部からは、アーム15(第2張出し部材)が下方に延出している。また、スカムスキマ本体14の側部下方からはウェイト支持部材16が延出していて、このウェイト支持部材16の先端部には、ウェイト17(向き変更部材)が設けられている。
【0019】
スカムスキマ本体14の側部には、レバー取付け部18が設けられ、レバー取付け部18には、棒状のレバー19の一端部を当該レバー19の軸方向を垂直として差し込み可能である。レバー取付け部18に棒状のレバー19を差し込むことにより、レバー19を手動操作して、スカムスキマ本体14を回動させることができる。
【0020】
図4は、スプロケットホイール104bの支持軸104b1部分の正面図である。支持軸104b1は、軸方向を沈殿池Pの側部方向として、両端部を沈殿池Pの側面P3に支持部材121によって支持されている。一対のスプロケットホイール104bは支持軸104b1に挿通され、支持軸104b1に対して回動自在である。スプロケットホイール104bには、前記のとおりチェーン102が張架されている。
【0021】
各スプロケットホイール104bの側面P3側には、ある程度の長さを有する一対のボス11が支持軸104b1に挿通されている。ボス11も支持軸104b1に対して回動自在である。各ボス11のスプロケットホイール104b側の端部には、カムホイール12(第1カムホイール)が設けられている。各カムホイール12は、スプロケットホイール104bに近接している。各ボス11の側面P3側の端部には、伝達スプロケット13(第1伝達スプロケット)が設けられていて、ボス11を介して、カムホイール12の回転に連動して回転する。
【0022】
図2に戻り、カムホイール12の周部分には連続的に複数個(
図2の例で10個)の凹凸形状のカム12a(第1カム)が形成されている。すなわち、カム12aは、周方向に凹凸形状が連続的に出現する。
図2、
図4に示すように、あるフライト103が取り付けられているチェーン102には側方に延出するようにストライカ21(第1張出し部材)が設けられている。2条のチェーン102が循環駆動され、ストライカ21が設けられたチェーン102がカムホイール12の周面近傍に達すると、ストライカ21がカム12aの凸形状を押圧することにより、カムホイール12、ひいては伝達スプロケット13を回転させる。この回転はストライカ21とカム12aの凸形状との係合が外れるまで継続する。これにより、カムホイール12、ひいては伝達スプロケット13は、所定の角度だけ回転する。なお、チェーン102は2条存在するので、ストライカ21がカム12aの凸形状を押圧し始めて、押圧を終了するまでのタイミングは両チェーン102で揃うように各ストライカ21を配置する必要がある。
【0023】
図2、
図3に示すように、スカムスキマ本体14の下方には、一対の回転体22が設けられている。この各回転体22は、それぞれ沈殿池Pの側面P3に設けられた支持部材23により回転自在に支持されている。回転体22は、支持部材23側に配置されている伝達スプロケット24(第2伝達スプロケット)と、伝達スプロケット24より沈殿池Pの内側に位置しているカムホイール25(第2カムホイール)とを備えている。伝達スプロケット24とカムホイール25とは同軸で連結されていて、伝達スプロケット24の回転と連動してカムホイール25も回転する。カムホイール25は、アーム15の直下に位置している。カムホイール25の周部分には、外側に延出したカム27(第2カム)が設けられている。このカム27は、カムホイール25の周部分に1個又は互いに間隔をあけて複数個設ける。
図2の例では1個である。カムホイール25が回転してカム27がアーム15を押すことにより、スカムスキマ本体14は
図2で反時計方向に回転するように駆動される。カム27は、カムホイール25の周部分に対して所定の機構により着脱自在であり、その数を増やしたり減らしたりすることができる。
【0024】
図2に示すように、伝達スプロケット13と伝達スプロケット24との間には、チェーン28(第2チェーン)が張架されていて、伝達スプロケット13の回転を伝達スプロケット24に伝達して回転させ、ひいてはカムホイール25(
図3)を回転させる。伝達スプロケット13の径サイズに比べて伝達スプロケット24の径サイズは大きい。チェーン28の上方には、一端が支点31を中心に回動自在な軸32が設けられ、その軸32の他端にはウェイト33が設けられている。ウェイト33はチェーン28の上に位置してチェーン28を加圧し、チェーン28の弛みを防止する。
【0025】
次に、本実施例1に係るスカムスキマ1の作用効果について説明する。
汚泥掻寄機100でチェーン102が循環駆動する際には、ストライカ21が各チェーン102に1個だけ設けられている場合、チェーン102が1回循環してストライカ21がカムホイール12におけるカム12aの1つの凸形状を押圧する度に、カムホイール12は所定角度だけ回転して伝達スプロケット13も同じ角度だけ回転する。この回転は、チェーン28を介して伝達スプロケット24に伝達され、伝達スプロケット24ひいてはカムホイール25も所定角度回転する。このとき、伝達スプロケット13より伝達スプロケット24の方が、径サイズが大きいため、伝達スプロケット13の回転角度よりも伝達スプロケット24、カムホイール25の回転角度の方が小さい。
【0026】
伝達スプロケット13が1回転するには、カムホイール12におけるカム12aの凸形状の数だけチェーン102が循環駆動しなければならない。また、伝達スプロケット13より伝達スプロケット24の方が、径サイズが大きい。そのため、伝達スプロケット24ひいてはカムホイール25が1回転するには、カムホイール12ひいては伝達スプロケット13が複数回転する必要がある。
【0027】
したがって、カム27が
図3に示すようにカムホイール25に1個だけ設けられている場合は、カム27によってスカムスキマ本体14が1回駆動されるまでには、多数回のチェーン102の循環駆動がなされなければならない。スカムスキマ本体14が1回駆動されるとは、カム27がアーム15と係合を介して、そのご当該係合が解除されるまでである。これに対して、前記特許文献1の技術は、汚泥掻寄機のチェーンの循環駆動が1回ある度にスカムスキマ本体14が1回駆動される。すなわち、本実施例1に係るスカムスキマ1によれば、スカムスキマ本体14を傾動動作させる頻度を従来に比べて少なくすることができる。
【0028】
なお、カム27がアーム15と当接している間、スカムスキマ本体14が駆動されるが、カム27とアーム15との当接が解除されれば、ウェイト17の自重により、スカムスキマ本体14を元の位置に復帰する。なお、ウェイト17に代えて、ばねの付勢力により、スカムスキマ本体14を元の位置に復帰させるようにしてもよい。
【0029】
本実施例1の図面に示されている例では、チェーン102にストライカ21は1個だけ設けられていて、カム27もカムホイール25に1個だけ設けられており、カムホイール12におけるカム12aの凸形状の数も多い。そして、伝達スプロケット13と伝達スプロケット24とでは、後者の方が、径サイズが大きい。そのため、スカムスキマ本体14が1回駆動される頻度はだいぶ少なくなる。
【0030】
これよりもさらに、スカムスキマ本体14が1回駆動される頻度を少なくするためには、カムホイール12におけるカム12aの凹凸形状の数をさらに増やすことができる。あるいは、伝達スプロケット13と伝達スプロケット24との径サイズを、もう少し前者の方が相対的に小さくなるようにしてもよい。
逆に、もう少しスカムスキマ本体14が1回駆動される頻度を多くするためには、カム27はカムホイール25に対して着脱自在であるため、カム27の数を互いに所定の間隔をあけて2個以上に増やすようにしてもよい。
【0031】
さらには、チェーン102に設けるストライカ21の数を所定の間隔をあけて2個以上としてもよい。あるいは、カムホイール12を交換して、カム12aの凸形状の数がもう少し少ないカムホイール12と交換してもよい。あるいは、伝達スプロケット13と伝達スプロケット24との径サイズを、もう少し前者の方が相対的に大きくなるようにしてもよい。
なお、レバー19により、手動でスカムスキマ本体14が傾動駆動することができる。
【実施例2】
【0032】
実施例2において、実施例1と共通の部材等には実施例1と共通の符号を用い、詳細な説明は省略する。以下では、本実施例2の実施例1との相違点を中心に説明する。
図5は、実施例2に係るスカムスキマ1の側面図である。
図6は、
図5のA−A切断断面図である。
【0033】
本実施例2では、伝達スプロケット13(第1伝達スプロケット)と伝達スプロケット24(第2伝達スプロケット)との間に伝達スプロケット51(第3伝達スプロケット)が介在している。伝達スプロケット51(
図6)は、伝達スプロケット13と伝達スプロケット24との中間位置で沈殿池Pの側面P3に回転自在に軸支されている。伝達スプロケット13と伝達スプロケット51との間には、チェーン52(第3チェーン)が張架されている。伝達スプロケット53(第4伝達スプロケット)は伝達スプロケット51と同軸に軸支され、伝達スプロケット51の回転に連動して回転する。なお、伝達スプロケット51は
図5では伝達スプロケット53に隠れている。また、伝達スプロケット53は
図6では伝達スプロケット24に隠れている。
【0034】
伝達スプロケット53と伝達スプロケット24(第2スプロケット)との間にはチェーン54(第4チェーン)が張架されている。実施例1とは異なり、伝達スプロケット24にはカムホイール25は連結されておらず、カムホイール25は用いない。
【0035】
ストライカ55(第
3張出し部材)は、実施例1で前記回転体22の周部分に設けられるのに代えて、チェーン54にその長さ方向に1個だけ又は連続して複数個が設けられている。チェーン54にはストライカ55が設けられている部分と、設けられていない部分とがある。ストライカ55(第3張出し部材)もチェーン54に対して所定の機構により着脱自在である。
【0036】
ストライカ55は、チェーン54の側部から張り出し、アーム15(第2張出し部材)と当接して、アーム15を押しだす。これによりスカムスキマ14本体を駆動する。本実施例2では、伝達スプロケット51,53の径サイズは、伝達スプロケット24の径サイズと略同等としている。また、2つのウェイト33は、チェーン52,54の弛みをとるためにそれぞれ設けられている。
【0037】
次に、本実施例2の作用、効果について説明する。
本実施例2においても、チェーン102に設けられたストライカ21及びカム12aの機能並びに伝達スプロケット13と伝達スプロケット24,51,53との径サイズの違いにより、スカムスキマ本体14が駆動される頻度を従来に比べて低減することができる。
また、本実施例2では、チェーン54にはストライカ55が設けられている部分と、設けられていない部分とがある。そして、チェーン54に設けられたストライカ55は連続して複数個設けることができる。
【0038】
図7は、ストライカ55とアーム15とが当接していない状態におけるスカムスキマ本体14近傍部分の斜視図(a)及び正面図(b)である。この状態では、チェーン54とアーム15との間には隙間αが存在し、アーム15を介してスカムスキマ本体14が駆動されることはない。
図8は、ストライカ55とアーム15とが当接している状態におけるスカムスキマ本体14近傍部分の斜視図(a)及び正面図(b)である。この状態では、ストライカ55とアーム15とが当接してスカムスキマ本体14が駆動される。
【0039】
このとき、連続してチェーン54に配置されるストライカ55の数によって、スカムスキマ本体14が1回に駆動される時間を調節することができる。すなわち、連続配置されるストライカ55の数を増やせばスカムスキマ本体14が1回に駆動される時間を長くし、ストライカ55の数を減らせばスカムスキマ本体14が1回に駆動される時間を短くすることができる。
また、チェーン54に対してストライカ55を着脱自在としているので、後発的にスカムスキマ本体14の駆動時間を調節することもできる。
【0040】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。