(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両用制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態では、本発明に係る車両用制御装置の一態様として、車両用エンジンのエバポパージシステムを制御する制御装置を説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る車両用制御装置を適用する車両用エンジンのシステム構成図である。
エンジン1は、ガソリンを使用する火花点火式の多気筒内燃機関である。
【0011】
スロットル弁2は、エンジン1の吸気管3に配置され、エンジン1の吸入空気量を調整する。
燃料噴射弁4は、スロットル弁2下流の吸気管3のマニホールド部に気筒毎に設けられ、ガソリン燃料を各気筒に噴射する。
【0012】
エバポパージシステム21は、蒸発燃料導入通路6、キャニスタ7、パージ通路10、パージ制御弁(PCV)11などを有する。
蒸発燃料導入通路6は、燃料タンク5にて発生した蒸発燃料をキャニスタ7に導く。
キャニスタ7は、容器内に活性炭などの吸着材8を充填したものであり、蒸発燃料導入通路6により導かれた蒸発燃料を吸着捕集する。
【0013】
また、キャニスタ7は新気導入口9を有し、キャニスタ7にはパージ通路10の一端が接続される。
パージ通路10の他端は、スロットル弁2下流の吸気管3に接続される。
パージ制御弁11は、パージ通路10の途中に配され、パージ通路10を開閉する。
【0014】
パージ制御弁11は、常閉型の電磁開閉弁であり、エバポコントロールユニット(EVAP C/U)20が出力するパージ制御信号により開弁する。
エバポコントロールユニット20は、本発明に係る車両用制御装置の一態様である。
【0015】
エバポコントロールユニット20は、CPU、ROM、RAM、A/D変換器及び入出力インターフェイスなどを有するマイクロコンピュータ201(演算処理部)を備えるとともに、CAN(Controller Area Network)などの車載ネットワーク50に接続されている。
そして、エバポコントロールユニット20は、エンジン1の運転中に所定のパージ許可条件が成立すると、パージ制御弁11を開制御する。
【0016】
パージ制御弁11が開くと、スロットル弁2下流の吸入負圧がキャニスタ7に作用し、その結果、キャニスタ7に吸着されていた蒸発燃料は、新気導入口9から導入される新気によって脱離する。そして、キャニスタ7から脱離した蒸発燃料を含むパージガスは、パージ通路10を通って吸気管3内に吸入され、その後、エンジン1の燃焼室内で燃焼処理される。
【0017】
上記構成のエバポパージシステム21におけるリークの有無を検出する故障診断処理のために、エバポパージシステム21は、エアポンプ13、切換弁14、エアフィルター17、圧力センサ24、タンク残量センサ(燃料計)25を有する。
エアポンプ13は、キャニスタ7の新気導入口9側に圧力調整手段として設けられる電動式のポンプである。
【0018】
また、切換弁14は、キャニスタ7の新気導入口9を、大気開放口12とエアポンプ13の吐出口とのいずれか一方に選択的に接続する電磁式の切換弁である。
尚、切換弁14は、OFF状態でキャニスタ7の新気導入口9を大気開放口12に接続し、ON状態でキャニスタ7の新気導入口9をエアポンプ13の吐出口に接続する。
【0019】
また、エアフィルター17は、大気開放口12とエアポンプ13の吸込口とに共通として設けられ、切換弁14のON状態及びOFF状態とのいずれにおいても、新気導入口9を介してキャニスタ7内に導入される空気をろ過する。
また、圧力センサ24は、燃料タンク5内の圧力を検出し、検出した圧力の値を示す信号をエバポコントロールユニット20に出力する。
また、タンク残量センサ25は、燃料タンク5内の燃料残量を検出し、検出した燃料残量を示す信号をエバポコントロールユニット20に出力する。
【0020】
エバポコントロールユニット20のマイクロコンピュータ201は、エンジン1の停止中に、マスターノードから車載ネットワーク50を介して送信されるウェイクアップモードへの移行要求を示す信号(ウェイクアップシグナルフレーム、ウェイクアップ信号)によって電源投入されて起動し、エバポパージシステム21におけるリークの有無を検出する故障診断処理(リーク診断処理)を実施するよう構成されている。
つまり、エバポコントロールユニット20は、同じ車載ネットワーク50に接続される他の制御装置から送信されるウェイクアップ信号に基づき起動するウェイクアップ機能を有している。
【0021】
エンジン1の停止直後は、燃料温度(燃料蒸発量)が大きく変動して、故障診断処理の精度が低下する。このため、エバポコントロールユニット20は、エンジン1が停止してから燃料温度(燃料蒸発量)が安定化するのに要する時間が経過してから故障診断処理を実施する。
更に、エンジン1が停止してから燃料温度が安定化するまでには長時間を要するので、エンジン1の停止から診断開始条件になるまで、換言すれば、エンジン1の停止から設定時間が経過するまでは、マイクロコンピュータ201への電源供給を停止させておき、診断開始条件になったときにマイクロコンピュータ201に電源投入して起動させ、故障診断が終了したときにマイクロコンピュータ201が電源を自己遮断するシステムとしてある。
【0022】
図2のフローチャートは、エバポコントロールユニット20が、エンジン1の停止から所定時間が経過してウェイクアップ機能によって起動したときに実施する故障診断処理の手順の一態様を示す。
エバポコントロールユニット20は、ステップS101で、エアポンプ13によって診断対象区間を加圧するときの目標圧を設定する。
エバポコントロールユニット20は、目標圧を固定値として設定することができ、また、目標圧を燃料温度や燃料タンク5内の燃料残量などに応じて可変に設定することができる。
【0023】
次いで、エバポコントロールユニット20は、ステップS102で、パージ制御弁11及び切換弁14を制御して、燃料タンク5及びキャニスタ7を含む診断対象区間を閉塞し、診断対象区間をエアポンプ13で加圧できる状態に設定する。
つまり、エバポコントロールユニット20は、ステップS102で、パージ制御弁11を閉制御し、切換弁14をON制御してキャニスタ7の新気導入口9をエアポンプ13の吐出口に接続する。
【0024】
そして、エバポコントロールユニット20は、ステップS103で、圧力センサ24が検出するタンク内圧(つまり、閉塞された診断対象区間の圧力)が、ステップS101で設定した目標圧に近づくように、例えば、圧力センサ24によるタンク内圧の検出値と目標圧との偏差に基づく比例・積分動作(PI動作)によってエアポンプ13の印加電圧(操作量)を設定する、エアポンプ13のフィードバック制御を実施する。
エバポコントロールユニット20は、エアポンプ13のフィードバック制御において、タンク内圧が目標圧よりも低いときにエアポンプ13を駆動させ、かつ、タンク内圧が目標圧よりも低いほどエアポンプ13の印加電圧を高くして吐出量を多くする一方、タンク内圧が目標圧を超えるときはエアポンプ13を停止状態に保持する。
【0025】
エバポコントロールユニット20は、次のステップS104で、エアポンプ13のフィードバック制御によって、圧力センサ24で検出されるタンク内圧が目標圧付近に保持されている状態で、フィードバック制御における操作量としての印加電圧を所定時間だけ積分する。
印加電圧の積分値は、診断対象区間の圧力を目標圧に所定時間保持するために、診断対象区間内に供給した空気量の積算値(総流量)に相当する。
【0026】
エバポコントロールユニット20は、次のステップS105で、印加電圧の積算値とリーク判定用の閾値とを比較し、印加電圧の積算値がリーク判定用の閾値以下であるか否かを判断する。
ここで、印加電圧の積算値がリーク判定用の閾値以下である場合は、診断対象区間(閉塞空間)の圧力を目標圧に保持するために多くの空気量を追加供給する必要がなかったことになる。この場合、エバポコントロールユニット20は、ステップS106に進んで、診断対象区間にリーク(圧力漏れ)が無いと判断する。
【0027】
一方、印加電圧の積算値がリーク判定用の閾値を超える場合は、診断対象区間(閉塞空間)の圧力を目標圧に保持するために多くの空気量を追加供給する必要があったことになる。この場合、エバポコントロールユニット20は、ステップS107に進んで、診断対象区間にリーク(圧力漏れ)が有ると判断し、係るエバポパージシステム(エンジン1)における故障(リーク発生)を警告灯の点灯などによって運転者に知らせる処理などの異常時処理を実施する。
【0028】
尚、上記の故障診断処理において、エバポコントロールユニット20は、診断対象区間内の圧力をエアポンプ13による空気の供給によって目標圧にまで昇圧させてリークの有無を診断するが、エアポンプ13によって診断対象区間から空気を抜くことで診断対象区間の圧力を目標圧にまで降圧させてリークの有無を診断することができる。
また、上記の故障診断処理において、エバポコントロールユニット20は、操作量の積分値に基づきリークの有無を診断するが、操作量の瞬時値に基づきリークの有無を診断することができる。
また、エバポコントロールユニット20は、診断対象区間(閉塞空間)の圧力が目標圧に達したときにエアポンプ13を停止させ、エアポンプ13を停止させた後の圧力変化に基づきリークの有無を診断することができる。
【0029】
上記のように、エバポコントロールユニット20は、エンジン1の停止から所定時間が経過してからエバポパージシステム21の故障診断(リーク診断)を実施するが、エンジン1の停止から故障診断処理を実施するまでの間、マイクロコンピュータ201は電源遮断状態に保持され、故障診断処理の実施タイミング(エンジン1の停止から所定時間が経過した時点)で、車載ネットワーク50を介して送信されるウェイクアップ信号(ウェイクアップモードへの移行要求信号)によってマイクロコンピュータ201は電源が投入されて起動する。
【0030】
図3は、ウェイクアップ機能のためのエバポコントロールユニット20の回路構成を示すブロック図である。
エバポコントロールユニット20には、車載ネットワーク50、バッテリ電源線51、イグニッション信号線52が接続される。
【0031】
バッテリ電源線51は、リレー回路202の入力側に接続され、リレー回路202の出力側は、電源線203を介してDC−DC回路204に接続される。
そして、リレー回路202がオン状態になると、バッテリ電源線51と電源線203とが接続され、バッテリ53からDC−DC回路204へバッテリ電圧VBが供給される。
DC−DC回路204は、バッテリ電圧VBをマイクロコンピュータ201の電源電圧にまで降圧してマイクロコンピュータ201の電源端子205へ供給する。
【0032】
係る構成により、マイクロコンピュータ201は、リレー回路202がオフ状態からオン状態になることで、パワーオンリセットして起動される。
ここで、リレー回路202をオン状態にする信号は、イグニッション信号IGN、ウェイクアップモード要求信号WUM、自己保持信号PKであり、これらの信号はOR回路(論理和回路)208の入力端子に入力され、OR回路208の出力がオンであるときに、リレー回路202がオン状態になるよう構成される。
【0033】
イグニッション信号IGNは、エンジン1の運転及び停止のメインスイッチであるイグニッションスイッチ(エンジンスイッチ)の操作位置を示す信号であり、イグニッション信号IGNがオンのときにエンジン1は運転され、イグニッション信号IGNがオフのときにエンジン1は停止される。
【0034】
ウェイクアップモード要求信号WUM(ウェイクアップ検知信号)は、エバポコントロールユニット20に内蔵される通信用ボード206が出力する信号であり、通信用ボード206は、車載ネットワーク50(CANバス)に接続されている。
通信用ボード206は、同じ車載ネットワーク50に接続される他の車両用制御装置からウェイクアップモードへの移行を要求する信号(ウェイクアップ信号)を受信すると、ウェイクアップモード要求信号WUMをオン状態に設定する。
【0035】
通信用ボード206は、トランシーバICや、通信コントローラを内蔵したMCU(マイクロ・コントローラ・ユニット)などを有する。
信号線207は、通信用ボード206とマイクロコンピュータ201とを接続する信号線であり、マイクロコンピュータ201は、この信号線207を介して通信データを送受信する。
【0036】
自己保持信号PKは、マイクロコンピュータ201によってオン/オフが設定される信号であり、マイクロコンピュータ201が自己保持信号PKをオンに設定すれば、イグニッション信号IGN及びウェイクアップモード要求信号WUMがオフであっても、OR回路208の出力がオンになってリレー回路202をオン状態に保持できる。
【0037】
つまり、マイクロコンピュータ201は、イグニッション信号IGN又はウェイクアップモード要求信号WUMに基づき電源投入されて起動した後に、自己保持信号PKをオンに設定することで、イグニッション信号IGN及びウェイクアップモード要求信号WUMがオフになっても電源が供給される状態を維持でき、また、自己保持信号PKをオフに設定することで、電源供給を自己遮断することができる。
【0038】
なお、マイクロコンピュータ201に電源投入して起動させるトリガー信号として、上記のイグニッション信号IGN、ウェイクアップモード要求信号WUMの他、給油スイッチのオン操作信号などの別の信号を含めることができる。
例えば、特開平8−121280号公報に開示されるような給油時に燃料タンクからエバポが放出されるのを防止するための制御を、エバポコントロールユニット20が実施する場合、給油スイッチのオン操作に基づきエバポコントロールユニット20が起動し、燃料タンク内のエバポ(燃料蒸気)をコンプレッサによってリザーバ側に導く制御(給油時のエバポ放出防止制御)を実施するよう構成することができる。
【0039】
図4は、車載ネットワーク50に接続される複数ユニットの一態様を示す図である。
図4に示す例では、エバポコントロールユニット(EVAP)20の他、車両の各種電装品を制御するボディ・コントロール・モジュール(BCM)61、スタータなどを制御するアンダー・フード・スイッチングモジュール(USM)62、電動制動型ブレーキユニット(eACT)63、コンビネーションメータ(METER)64などの各種ユニットが車載ネットワーク50に接続される。
【0040】
マスターノードとしてのボディ・コントロール・モジュール61は、スレーブノードとしてのエバポコントロールユニット20(マイクロコンピュータ201)のウェイクアップ条件(エンジン1の停止から所定時間が経過)が成立すると、ウェイクアップモードへの移行を要求する信号をエバポコントロールユニット20に車載ネットワーク50を介して送信し、マイクロコンピュータ201に電源投入して起動させる。
そして、起動したマイクロコンピュータ201は、前述したエバポパージシステム21の故障診断処理(リーク診断処理)を実施し、診断処理が完了すると電源を自己遮断する。
【0041】
ここで、エバポコントロールユニット20の通信用ボード206を構成するトランシーバICとして、IDフィルタ(IDを使用したメッセージ・アドレッシング機能)を内蔵しない廉価なトランシーバICを用いることができる。
IDフィルタを備えないトランシーバICを用いた通信用ボード206では、ボディ・コントロール・モジュール61とエバポコントロールユニット20以外のユニットとが通信しているときにCANバス上にあるメッセージに基づき、ウェイクアップモード要求信号WUMを誤ってオンさせ、マイクロコンピュータ201を起動させてしまう場合がある。
【0042】
つまり、IDフィルタを備えないトランシーバICでは、CANバス上にあるメッセージの内容及び自身が使用するデータであるか否かを判断できず、エバポコントロールユニット20のウェイクアップモードへの移行を要求する信号ではないメッセージに基づき、ウェイクアップモード要求信号WUMを誤ってオンさせてしまう可能性がある。
この場合、マイクロコンピュータ201は、エバポパージシステムの故障診断処理を実施する必要のないタイミングで無用に起動し、電力を無駄に消費することになる。
【0043】
なお、本願では、エバポコントロールユニット20用のウェイクアップモード移行要求以外のCANメッセージに基づく、マイクロコンピュータ201の起動を「不正起動」と称するものとする。
このようなマイクロコンピュータ201の不正起動による電力消費の拡大を抑制するため、マイクロコンピュータ201は、不正起動の有無を判定し、不正起動されたことを判定したときに電源の自己遮断を実施する機能(自己遮断制御部)をソフトウェアとして備える。
【0044】
図5は、マイクロコンピュータ201がパワーオンリセットで起動したとき、つまり、マイクロコンピュータ201が、イグニッション信号IGN、ウェイクアップモード要求信号WUMなどの起動トリガーによって電源投入されて起動したときの処理手順を示すフローチャートである。
マイクロコンピュータ201は、電源投入されて起動すると、まず、ステップS301で初期化処理を実施する。
【0045】
そして、マイクロコンピュータ201は、次のステップS302で初期化処理が完了したか否かを判断し、初期化処理が完了していなければステップS301に戻って初期化処理を継続させる。
一方、初期化処理が完了すると、マイクロコンピュータ201は、ステップS303に進んで、初期化が完了した時点からの経過時間を計測するためのタイマーによる計時を開始させる。
【0046】
次いで、マイクロコンピュータ201は、ステップS304で、イグニッション信号IGNがオフの状態(エンジン1の停止状態)で、かつ、ボディ・コントロール・モジュール61との通信でウェイクアップコマンド(WUcmd)を受信していない状態(ウェイクアップ信号無し状態)であるか否かを判断する。
本願のシステムでは、通信用ボード206のトランシーバICがCANバス上のメッセージに基づきウェイクアップモード要求信号WUMをオンさせると、マイクロコンピュータ201に電源が投入される。マイクロコンピュータ201は、パワーオンリセットして起動すると、ボディ・コントロール・モジュール61との通信を開始するとともにCANバス上のメッセージを解釈できるようになる。
【0047】
ここで、ボディ・コントロール・モジュール61は、
図6に示すように、マイクロコンピュータ201のウェイクアップモードへの移行を要求する信号(ウェイクアップシグナルフレームW/U Frame)を送信したときに、マイクロコンピュータ201が起動してBCM61との通信を開始してから所定時間T2経過後にウェイクアップコマンド(W/U cmd)をマイクロコンピュータ201に送信し、ウェイクアップコマンド(W/U cmd)を受信したマイクロコンピュータ201は、ボディ・コントロール・モジュール61に対してウェイクアップコマンド(W/U cmd)を受信したことを返答するよう構成されている。
【0048】
つまり、ウェイクアップモードへの移行を要求する信号(W/U Frame)と、起動後のウェイクアップコマンド(W/U cmd)とは対をなし、ウェイクアップモードへの移行を要求する信号の送信無しに、ボディ・コントロール・モジュール61がウェイクアップコマンドをマイクロコンピュータ201に送信することはない。
そして、マイクロコンピュータ201は、ステップS304で、ボディ・コントロール・モジュール61との通信を開始してからのウェイクアップコマンドの受信の有無を判断するよう構成してある。
【0049】
なお、マイクロコンピュータ201が、給油スイッチのオン操作を起動トリガーとして起動される場合、マイクロコンピュータ201は、ステップS304で、イグニッション信号IGNがオフの状態で、かつ、ボディ・コントロール・モジュール61との通信でウェイクアップコマンドを受信していない状態で、かつ、給油スイッチのオフ状態であるか否かを判断することになる。
【0050】
ここで、イグニッション信号IGNがオフで、かつ、ウェイクアップコマンドの受信がない状態である場合(若しくは、イグニッション信号IGNがオフで、かつ、ウェイクアップコマンドの受信無しで、かつ、給油スイッチがオフの場合)、マイクロコンピュータ201は、起動要因を示す信号のいずれも確認できなかったことになる。
つまり、イグニッション信号IGNがオフ(及び給油スイッチがオフ)であれば、ボディ・コントロール・モジュール61がウェイクアップモードへの移行を要求する信号を送信したことでマイクロコンピュータ201が起動した可能性がある。
【0051】
しかし、ウェイクアップモードへの移行を要求する信号を送信したボディ・コントロール・モジュール61は、その後所定期間内でウェイクアップコマンドの送信を行うことになっているから、マイクロコンピュータ201がウェイクアップコマンドを受信しない場合は、IDフィルタを備えないトランシーバICがウェイクアップモードへの移行を要求する信号以外のCANメッセージに基づき、マイクロコンピュータ201を不正起動させた可能性がある。
【0052】
一方、イグニッション信号IGNがオンであるか、又は、ウェイクアップコマンドの受信有り(又は、給油スイッチがオン)の場合は、マイクロコンピュータ201の起動は、イグニッション信号IGNのオンによる起動、又は、ボディ・コントロール・モジュール61の指令によるウェイクアップ状態(又は、給油スイッチのオンによる起動)であることになり、マイクロコンピュータ201は起動要因を示す信号を確認できたことになる。
【0053】
したがって、マイクロコンピュータ201は、ステップS304で、イグニッション信号IGNがオン、ウェイクアップコマンドの受信有り(イグニッション信号IGNがオン、ウェイクアップコマンドの受信有り、給油スイッチがオン)のうちの少なくとも1つを判断した場合、ステップS305に進み、起動要因に応じた通常制御を実施する。
【0054】
つまり、マイクロコンピュータ201は、イグニッション信号IGNのオンで起動されている場合、エンジン1運転中のパージ制御を行い、また、イグニッション信号IGNのオフ状態でボディ・コントロール・モジュール61からのウェイクアップ指示で起動した場合は、エバポパージシステム21の故障診断処理(リーク診断処理)を実施し、給油スイッチのオン操作で起動した場合は、燃料タンク内のエバポをコンプレッサによってリザーバ側に導く制御(給油時のエバポ放出防止制御)を実施する。
なお、マイクロコンピュータ201は、例えば、リーク診断処理の実施要求と、給油スイッチのオン操作とが重なったときに、給油時のエバポ放出防止制御を優先させることができる。
【0055】
一方、マイクロコンピュータ201は、ステップS304で、イグニッション信号IGNがオフで、かつ、ウェイクアップコマンドの受信無し(イグニッション信号IGNがオフで、かつ、ウェイクアップコマンドの受信無しで、かつ、給油スイッチがオフ)の状態を判断した場合、ステップS306に進む。
つまり、マイクロコンピュータ201は、自身の起動要因を示す複数の信号のいずれもが確認できない場合、起動要因が不明であるとしてステップS306に進む。
【0056】
マイクロコンピュータ201は、ステップS306で、初期化処理完了からの経過時間が設定時間T4(
図7参照)に達しているか否かを判断する。
前記設定時間T4は、ボディ・コントロール・モジュール61からのウェイクアップ指示でマイクロコンピュータ201が起動した場合に、初期化処理完了からボディ・コントロール・モジュール61からのウェイクアップコマンドの送信があると見込まれる時間に基づき設定される。
【0057】
初期化処理完了からの経過時間が設定時間T4に達していない場合、その後にボディ・コントロール・モジュール61からのウェイクアップコマンド(W/U cmd)が送信される可能性があるので、マイクロコンピュータ201は、ステップS304に戻り、起動要因を示す信号の確認を繰り返す。
そして、マイクロコンピュータ201は、ステップS306で、初期化処理完了からの経過時間が設定時間T4に達したと判断した場合、ステップS307に進む。
【0058】
マイクロコンピュータ201が、ボディ・コントロール・モジュール61からのウェイクアップ指示で起動した場合、初期化処理完了からの経過時間が前記設定時間T4に達するまでに、ボディ・コントロール・モジュール61からウェイクアップコマンド(W/U cmd)が送信される。したがって、前記設定時間T4内でウェイクアップコマンド(W/U cmd)を受信しなかった場合、マイクロコンピュータ201は、ボディ・コントロール・モジュール61からのウェイクアップ指示(W/U Frame)で起動したのではないと判断できる。
【0059】
つまり、マイクロコンピュータ201は、ステップS307に進んだ場合、自身の起動要因は、イグニッション信号IGNのオン、ボディ・コントロール・モジュール61からのウェイクアップ指示(イグニッション信号IGNのオン、ボディ・コントロール・モジュール61からのウェイクアップ指示、給油スイッチのオン)のいずれでもなく、不正起動されたと推定できる。
マイクロコンピュータ201は、ステップS307で、自己保持信号PKをオフして電源を自己遮断する(セルフシャットオフを実行する)。
【0060】
係る構成であれば、マイクロコンピュータ201が、エバポコントロールユニット20とは無関係なCANバス上のメッセージに基づき誤って起動されたときに、電源投入状態のまま放置されて無駄に電力を消費することを抑制できる。
換言すれば、エバポコントロールユニット20の通信用ボード206を構成するトランシーバICとして、IDフィルタを内蔵しない廉価なトランシーバICを用いたことで、不正起動がなされたとしても、不正起動に伴う無駄な電力消費を可及的に少なくできる。
【0061】
上記実施形態で説明した各技術的思想は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合わせて使用することができる。
また、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【0062】
例えば、上記実施形態では、エンジン1の停止中にウェイクアップされる車両用制御装置をエバポコントロールユニット20としたが、他の車両用制御装置でも同様なソフトウェア機能を備えることで、同様な作用効果が得られることは明らかである。
また、エンジン1の停止中にウェイクアップされる車両用制御装置は、イグニッション信号IGNのオンによって起動されず、エンジン1の停止中にのみ制御を実施する制御装置とすることができる。