(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971176
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】動力回収機構、および、冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F01D 17/10 20060101AFI20211111BHJP
F25B 1/10 20060101ALI20211111BHJP
F25B 11/02 20060101ALI20211111BHJP
F01D 15/08 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
F01D17/10 C
F25B1/10 H
F25B11/02 B
F01D15/08 Z
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-41526(P2018-41526)
(22)【出願日】2018年3月8日
(65)【公開番号】特開2019-157655(P2019-157655A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】兼子 泰明
(72)【発明者】
【氏名】古賀 淳
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−007075(JP,A)
【文献】
特開2016−094836(JP,A)
【文献】
特開2008−163938(JP,A)
【文献】
特開2009−103060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D17/00−21/20
F25B1/00−7/00
F25B9/00−11/04
F01D1/00−11/24
F02C1/00−9/58
F23R3/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から下流に向けて流れる流体が有する動力を回収する動力回収機構であって、
上流から前記流体が流れる上流側流路から分岐する複数の分岐流路と、
複数の分岐流路のそれぞれに設けられる前記流体の流量を調整する流量調整弁と、
前記流量調整弁よりも下流側において、それぞれの前記分岐流路に設けられる前記流体を吐出するノズルと、
前記ノズルから吐出される前記流体が作用することにより回転する衝動タービンと、
前記衝動タービンの回転力を出力する出力軸と、
複数の前記流量調整弁の前記流体の流量を制御する制御器と、を備え、
それぞれの前記ノズルは、
前記衝動タービンへ前記流体を吹き付ける吹付角度が変更可能であり、
前記制御器は、
前記流体がなす負荷の変動に応じて、複数の前記流量調整弁における前記流量を調整する、それぞれの前記ノズルから吐出される前記流体の速度であるノズル流出速度と前記衝動タービンの周速度の速度比に基づいて、複数の前記流量調整弁における前記流量の調整を行い、かつ、
前記速度比に基づいて、それぞれの前記ノズルの吹付角度を第二制御量として決定し、
前記ノズル流出速度は、
前記ノズルから吐出される前記流体の体積流量に基づいて求められる、
ことを特徴とする動力回収機構。
【請求項2】
それぞれの前記流量調整弁は、
前記流体が通過するのを許可する開状態と、前記流体が通過するのを阻止する閉状態と、のいずれかが選択される開閉弁であり、
前記制御器は、
前記速度比に基づいて、開状態とする前記開閉弁の数を決定することを通じて、前記流体が吐出される前記ノズルの本数を第一制御量として決定する、
請求項1に記載の動力回収機構。
【請求項3】
それぞれの前記ノズルは、
前記衝動タービンへ前記流体を吹き付ける吹付角度が変更可能であり、
前記制御器は、
前記速度比に基づいて、それぞれの前記ノズルの吹付角度を第二制御量として決定する、
請求項2に記載の動力回収機構。
【請求項4】
前記制御器は、
前記第一制御量と前記ノズルから吐出される前記流体の体積流量とが対応付けられ関数データを予め記憶し、
運転中に取得した前記体積流量を前記関数データに照合することにより、前記第一制御
量を決定する、
請求項2に記載の動力回収機構。
【請求項5】
前記制御器は、
前記第二制御量と前記ノズルから吐出される前記流体の体積流量とが対応付けられ関数データを予め記憶し、
運転中に取得した前記体積流量を前記関数データに参照することにより、前記第二制御量を決定する、
請求項3に記載の動力回収機構。
【請求項6】
冷媒が蒸発する蒸発器と、前記蒸発器を通過した前記冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機から吐出される前記冷媒を冷却して凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器からの前記冷媒を減圧して膨張させて前記蒸発器に送る膨張弁と、前記圧縮機を回転駆動する電動機と、を有する冷媒回路と、
前記膨張弁に対して並列に設けられる動力回収機構と、を備え、
前記動力回収機構は、
上流に位置する前記凝縮器から下流に位置する前記膨張弁の間の流路から分岐する複数の分岐流路と、
複数の分岐流路のそれぞれに設けられる前記冷媒の流量を調整する流量調整弁と、
前記流量調整弁よりも下流側において、それぞれの前記分岐流路に設けられる前記冷媒を吐出するノズルと、
前記ノズルから吐出される前記冷媒が作用することにより回転する衝動タービンと、
前記衝動タービンの回転力を出力し、前記電動機に直結される出力軸と、
複数の前記流量調整弁の前記冷媒の流量を制御する制御器と、を備え、
前記衝動タービンと前記電動機が前記出力軸で直結され、
前記制御器は、
前記冷媒回路の負荷の変動に応じて、複数の前記流量調整弁における前記流量を調整する、
ことを特徴とする冷凍装置。
【請求項7】
前記制御器は、
それぞれの前記ノズルから吐出される前記冷媒の速度であるノズル流出速度と前記衝動タービンの周速度の速度比に基づいて、複数の前記流量調整弁における前記流量の調整を行い、
前記ノズル流出速度は、
前記ノズルから吐出される前記冷媒の体積流量に基づいて求められる、
請求項6に記載の冷凍装置。
【請求項8】
それぞれの前記流量調整弁は、
前記冷媒が通過するのを許可する開状態と、前記冷媒が通過するのを阻止する閉状態と、のいずれかが選択される開閉弁であり、
前記制御器は、
前記速度比に基づいて、開状態とする前記開閉弁の数を第一制御量として決定することを通じて、前記冷媒が吐出される前記ノズルの本数を決定する、
請求項7に記載の冷凍装置。
【請求項9】
それぞれの前記ノズルは、
前記衝動タービンへ前記冷媒を吹き付ける吹付角度を変更可能である、
前記制御器は、
前記速度比に基づいて、それぞれの前記ノズルの吹付角度を第二制御量として決定する、
請求項7に記載の冷凍装置。
【請求項10】
前記制御器は、
前記第一制御量と体積流量とが対応付けられ関数データを予め記憶し、
運転中に取得した前記体積流量を前記関数データに照合することにより、前記第一制御量を決定する、
請求項8に記載の冷凍装置。
【請求項11】
前記制御器は、
前記第二制御量と体積流量とが対応付けられ関数データを予め記憶し、
運転中に取得した前記体積流量を前記関数データに照合することにより、前記第二制御量を決定する、
請求項9に記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張弁に対して並列に設けられる、二相ノズルと衝動タービンを備える動力回収機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、蒸発器、圧縮機、凝縮器及び膨張弁を有する冷媒回路において、膨張弁に対して並列に、気液の二相流が吐出される二相ノズルと衝動タービンによって構成される動力回収機構を接続し、動力回収する装置が知られている。衝動タービンは、高圧蒸気をノズルで急激に圧力を降下させて高速度の噴流が衝突される。
【0003】
一般に衝動タービンはノズルからの流出速度をタービンの周速の2倍程度に設定すると、高いタービン効率が得られる。しかし、冷媒回路を備える冷凍装置は使用環境によって運転状態が変化すると、冷媒流量およびノズルから吐出される冷媒密度が変化することにより、タービン周速度とノズル出口流速の速度比が最適な値からずれてしまい、タービン効率が激減してしまう。
【0004】
従来はこの問題点に対して、膨張弁を二相膨張タービンに並列に配置するバイパス回路を設け、負荷変動時にはこのバイパス回路を用いることで対処していた。ところがこの対処法では、バイパス回路を用いている間は動力回収ができないため、動力回収できる運転範囲が制限されてしまう。
【0005】
これに対し、特許文献1は、タービンの回転数およびノズルの吹付角度を可変とすることにより、冷媒流出速度とタービン周速度の速度比を最適化し、動力回収効率を向上することを提案している。しかし、特許文献1は、タービンの回転数を冷媒循環量に応じて調整するため、回収動力は発電機によって取り出すことが前提であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−183078号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】衝動タービン形CO2膨張機に関する基礎研究 科学研究費補助金研究成果報告書 平成22年6月4日 福田充宏
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
動力回収機構の小型化と低コスト化および動力回収効率の向上の観点からいうと、衝動タービンと圧縮機および電動機を軸直結とし、衝動タービンで回収した動力により電動機からの入力を低減することが望ましい。この軸直結については、特許文献1に記載されており(特許文献1 段落[0034])、発電機が必要なくなる。
【0009】
以上より、本発明は、衝動タービンと圧縮機および電動機を軸直結する動力回収機構において、負荷の変動があっても高いタービン効率を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上流から下流に向けて流れる流体が有する動力を回収する動力回収機構であって、上流から流体が流れる上流側流路から分岐する複数の分岐流路と、複数の分岐流路のそれぞれに設けられる流体の流量を調整する流量調整弁と、流量調整弁よりも下流側において、それぞれの分岐流路に設けられる流体を吐出するノズルと、ノズルから吐出される流体が作用することにより回転する衝動タービンと、衝動タービンの回転力を出力する出力軸と、複数の流量調整弁の流体の流量を制御する制御器と、を備える。
本発明における制御器は、流体がなす負荷の変動に応じて、複数の流量調整弁における流量を調整する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明における制御器は、好ましくは、それぞれのノズルから吐出される流体の速度であるノズル流出速度と衝動タービンの周速度の速度比に基づいて、複数の流量調整弁における流量の調整を行う。このノズル流出速度は、ノズルから吐出される流体の体積流量に基づいて求められる。
【0012】
本発明におけるそれぞれの流量調整弁は、好ましくは、流体が通過するのを許可する開状態と、流体が通過するのを阻止する閉状態と、のいずれかが選択される開閉弁である。
制御器は、速度比に基づいて、開状態とする開閉弁の数を決定することを通じて、流体が吐出されるノズルの本数を第一制御量として決定する。
【0013】
本発明におけるそれぞれのノズルは、好ましくは、衝動タービンへ流体を吹き付ける吹付角度が変更可能である。
制御器は、速度比に基づいて、それぞれのノズルの吹付角度を第二制御量として決定する。
【0014】
本発明における制御器は、好ましくは、第一制御量とノズルから吐出される流体の体積流量とが対応付けられ関数データを予め記憶し、運転中に取得した体積流量を関数データに照合することにより、第一制御量を決定する。
【0015】
また、本発明における制御器は、好ましくは、第二制御量とノズルから吐出される流体の体積流量とが対応付けられ関数データを予め記憶し、運転中に取得した体積流量を関数データに参照することにより、第二制御量を決定する。
【0016】
本発明は、冷媒が蒸発する蒸発器と、蒸発器を通過した冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から吐出される冷媒を冷却して凝縮させる凝縮器と、凝縮器からの冷媒を減圧して膨張させて蒸発器に送る膨張弁と、圧縮機を回転駆動する電動機と、を有する冷媒回路と、膨張弁に対して並列に設けられる動力回収機構と、を備える冷凍装置を提供する。
この動力回収機構は、上流に位置する凝縮器から下流に位置する膨張弁の間の流路から分岐する複数の分岐流路と、複数の分岐流路のそれぞれに設けられる冷媒の流量を調整する流量調整弁と、流量調整弁よりも下流側において、それぞれの分岐流路に設けられる冷媒を吐出するノズルと、ノズルから吐出される冷媒が作用することにより回転する衝動タービンと、衝動タービンの回転力を出力し、電動機に直結される出力軸と、複数の流量調整弁の冷媒の流量を制御する制御器と、を備える。
本発明における制御器は、冷媒回路の負荷の変動に応じて、複数の流量調整弁における流量を調整する。
先に説明した本発明の動力回収機構の種々の限定要素は、本発明の冷凍装置に適用される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の動力回収機構によれば、負荷に応じてノズルから吐出され衝動タービンに作用する噴流の速度をタービン周速度に対して適切な値に調整できる。これにより、動力回収ができなかった低負荷の運転領域においても、高いタービン効率を維持して動力の回収ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る冷凍装置を示す図である。
【
図2】(a)は噴流を吐出するノズルの本数の切替の様子を示し、(b)はノズルの吹付け角度の変更例を示している。
【
図3】(a)はノズル本数を決定するとともにノズルの吹付角度を決定する制御フローを示し、(b)は制御量についての関数データの一例をイメージとして示す図である。
【
図4】負荷に応じたタービン効率を示すグラフである。
【
図5】(a)は実施例におけるパラメータを示す図、(b)は実施例による制御量を示すグラフである。
【
図6】(a)は冷凍装置以外の動力回収機構を示す図であり、(b)は冷凍サイクルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る冷凍装置10は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行なう圧縮冷凍装置であって、冷媒を封入した閉じた冷媒回路で構成される。冷凍装置10は、衝動タービン21と圧縮機13および電動機15を軸直結する動力回収機構20を備える。この動力回収機構20は、冷凍装置10の負荷が低く変動しても高いタービン効率を維持できる特徴的な構成を備えている。具体的には、衝動タービン21に作用される冷媒の流速(ノズル流出速度)と衝動タービン21の周速度(タービン周速度)との速度比を適切に保つことで、負荷が低くなってもタービン効率の低下を防ぐ構成を備えている。
以下、冷凍装置10の基本的な構成を説明した後に、本実施形態の特徴的な構成である動力回収機構20について説明する。
【0020】
[冷凍装置10]
冷凍装置10は、
図1に示すように、被冷却流体、例えば冷水から熱を奪って冷媒を蒸発させて冷凍効果を発揮する蒸発器11と、冷媒蒸気を圧縮して高圧蒸気にする圧縮機13と、圧縮機13を回転駆動する電動機15と、を備える。また冷凍装置10は、高圧蒸気を冷却流体、例えば冷却水で冷却して凝縮させる凝縮器17と、凝縮した冷媒を減圧して膨張させて蒸発器11に送る膨張弁19と、を備える。
【0021】
冷凍装置10は、蒸発器11、圧縮機13、電動機15、凝縮器17及び膨張弁19の各機器の間を接続する冷媒流路Pを備えており、各機器で処理された冷媒は冷媒流路Pを通って下流の機器に向けて流れる。なお、凝縮器17と蒸発器11を接続する、膨張弁19が設けられる冷媒流路Pを冷媒流路P19ということにする。冷媒流路P19は、冷媒が凝縮器17から蒸発器11に向けてながれる。この冷媒が流れる向きを基準にして、上流、下流を定義する。
【0022】
また、冷凍装置10は、制御器30を備える。
制御器30は、電動機15の駆動を制御する他に、次に説明する動力回収機構20の開閉弁27の開閉を制御する。
【0023】
[動力回収機構20]
次に、動力回収機構20について説明する。
動力回収機構20は、膨張弁19に対して並列に設けられる。動力回収機構20は、衝動タービン21と、衝動タービン21に向けて吐出する複数のノズル23,23…と、を主たる構成要素として備える。
【0024】
動力回収機構20は、衝動タービン21が電動機15と出力軸22で接続されており、衝動タービン21の回転力が電動機15に出力される。つまり、衝動タービン21と電動機15は出力軸22で軸直結されており、衝動タービン21の回転力が電動機15を介して圧縮機13の圧縮仕事の一部に利用される。これにより、電動機15への外部から投入される電力を減少させることができる。
【0025】
ノズル23は、凝縮器17から流れてくる冷媒の圧力を急激に低下させて高速度の気液二相の噴流として衝動タービン21に向けて吹き付けることで、衝動タービン21に回転力を与える。複数のノズル23は、冷媒を吐出する開口の面積(ノズル断面積)、その他の仕様が同じである。
ノズル23は、
図2(b)に示すように、衝動タービン21に対する噴流Jの吹付角度θが変更できるように構成されている。吹付角度の変更は、ノズル流出速度とタービン周速度の速度比を適切に保つために行われる。吹付角度は、制御器30の指示による変更される。また、噴流Jはタービンブレード21Aが設けられる半径方向の範囲に吹付けられる。
【0026】
また動力回収機構20は、凝縮器17と膨張弁19の間で冷媒流路P(上流側流路)から分岐する複数の分岐流路25,25…と、衝動タービン21に噴射された冷媒を回収して冷媒流路P19に戻す戻し配管29と、を備える。分岐流路25は、下流の端部にノズル23が設けられ、上流の端部が冷媒流路P19に接続されている。
【0027】
さらに、動力回収機構20は、それぞれのノズル23よりも上流側における、分岐流路25のそれぞれに開閉弁27を備えている。それぞれの開閉弁27は、冷媒が通過するのを許可する開状態と冷媒が通過するのを阻止する閉状態と、のいずれかが選択され、制御器30からの指示により、独立して開閉される。つまり、複数の開閉弁27を閉じる数を制御することにより、衝動タービン21に高速度の噴流を作用させるノズル23の本数が特定される。このノズル23の本数は、ノズル流出速度とタービン周速度の速度比を適切に保つために切り替えられる。噴流を作用させるノズル23の本数は、冷凍装置10の負荷の変動に対応する。
【0028】
冷凍装置10の負荷が高い状態から低い状態に変動すると、それぞれのノズル23から吐出される冷媒の流速(ノズル流出速度)は低くなる。衝動タービン21の周速度に対してノズル流出速度が低くなると、実際の速度比が最適な速度比からずれてしまう。なお、ノズル流出速度が変動するのは、冷凍装置10の負荷の変動により、冷媒流量と冷媒密度が変動するからである。
【0029】
例えば、冷凍装置10の負荷が高い場合には、
図2(a)の左側に示すように、全てのノズル23から噴流Jを吐出するが、負荷が低くなると、
図2(a)の中央に示すように、噴流Jを吐出するノズル23の本数を減らす。さらに負荷が低くなれば、
図2(a)の右側に示すように、噴流Jを吐出するノズル23の本数をさらに減らす。こうして、負荷の変動に対して、ノズル23の本数を切り替えることにより、衝動タービン21に作用させる噴流のノズル流出速度を適切な速度比に保てるように調整する。なお、
図2(a)は、複数のノズル23の位置を揃えて平行に示しているが、実際には
図1に示すように、互いに傾いている。
【0030】
ただし、ノズル23の本数の切替だけではノズル流出速度の段階的な調整しかできないので、本実施形態ではノズル23の吹付角度を切り替える。つまり、動力回収機構20において、ノズル流出速度とタービン周速度の適切な速度比を保つという目的に対して、ノズル23の本数の切替は主要素であり、吹付角度の変更は副要素と言える。
【0031】
次に、動力回収機構20におけるノズル流出速度と吹付角度の制御手法について、
図3〜
図5を参照して説明する。
冷凍装置10は、この制御を実行するために、
図3に示すように、制御器30が噴流を吐出するノズル23の本数を決定するとともに(
図3 S107)、吹付角度を決定する(
図3 S109)。制御器30は、決定したノズル本数に基づいてノズル23の開閉を制御し、また、決定した吹付角度になるようにノズル23の角度を制御する。
【0032】
制御器30は、ノズル23の本数及び吹付角度を決定するのに、ノズル23の出口から吐出される冷媒の体積流量を推定する(
図3 S105)。体積流量を推定する手順は後述する。
体積流量を推定したならば、噴流を衝動タービン21の特定の部位、例えばタービンブレードの最外縁に吹き付けるものと仮定し算出されるタービン周速度に対して、ノズル出口流速との速度比が、タービン効率の観点から最適となるようにノズル本数を決定する(
図3 S107)。ここで、ノズル流出速度は体積流量とノズル23の断面積の総和から算出できる。
【0033】
次に、タービン効率が最適になるように、吹付角度を決定する(
図3 S109)。
これは、噴流の吹付角度を操作することによって、噴流Jが吹き付けられるノズル23の半径方向の位置によってタービン周速度を変化させることを意味する。
図2(b)に示すように、同じノズル流出速度uiであっても、衝動タービン21の外周に近い位置に噴流Jをあてる方が、衝動タービン21の外周から遠い位置に噴流Jを吹き付けるよりも、衝動タービン21のタービン周速度cは速くなる。
【0034】
体積流量は、ノズル23の出口における冷媒密度ρ
0と冷媒流量qとから求められる。
冷媒密度ρ
0は、ノズル23の上流側の冷媒圧力P
i及びノズル23の下流側の冷媒圧力P
0とノズル23の上流側における冷媒の過冷却度T
iから求められる。また、冷媒流量qは、圧縮機13の回転数から求められる。
【0035】
以上のように、ノズル本数を変化させることでノズル出口流速を操作し、吹付角度を変化させることでタービン周速度を操作することで、ノズル出口流速とタービン周速度の速度比を、タービン効率の観点から最適となるよう制御する。この制御による効果が
図4に示されている。
【0036】
図4は、冷凍装置10の負荷率と衝動タービン21のタービン効率の関係を示すグラフである。
図4の実線で示すように、本実施形態に従いノズル本数の切替及び吹付角度の変更を行うと、例えば20%以下という低い負荷率まで、負荷率が100%のときと同じタービン効率を得ることができる。
図4の破線は、吹付角度は一定のままでノズル本数の切替だけを行う場合を示しているが、ノズル本数の切替だけでも、実線で示される本実施形態に近いタービン効率が得られる。この結果は、本発明がノズル本数を切り替えるだけの形態を包含することを示唆する。
以上に対して、一点鎖線で示すように、ノズル本数の切替及び吹付角度のいずれも行わなければ(対策なし)は、負荷率が80%以下になると、タービン効率が急激に低下し、負荷率が60%以下では動力を回収することができなくなる。
【0037】
以上では、体積流量の推定(
図3 S105)、ノズル本数の決定(
図3 S107)、吹付角度の決定(
図3 S109)の演算を冷凍装置10の運転中に行うことを前提に説明した。しかし、これに限らず以下説明する関数データに基づいて、制御量としてのノズル本数及び吹付角度を決定することもできる。
【0038】
以上で説明した一連の演算を予め実施し、タービン効率が最適となる制御量(ノズル本数、吹付角度θ)と体積流量とを対応付けた関数データを制御器30に記憶しておく。
図3(b)に関数データの一例を示す。この関数データは、圧縮機13の所定の回転数の範囲ごとに、制御量(ノズル本数N:第一制御量、吹付角度θ:第二制御量)と体積流量Qとが対応付けられている。例えば、圧縮機13の回転数が1500rpmであれば関数データD1を参照して制御量を決定し、圧縮機13の回転数が3500rpmであれば関数データD3を参照して制御量を決定する。なお、関数データを保持しても、制御器30は、体積流量Qの推定のための演算と圧縮機13の回転数に関する情報の取得は行う。
制御器30は、推定した体積流量Qと取得した圧縮機13の回転数を記憶している関数データに照合することで、ノズル本数N及び吹付角度θを決定することができる。
【0039】
以上のように、制御器30は、関数データを記憶しておくことにより、簡易な演算でノズル本数N、吹付角度θを決定できる。
【0040】
次に、
図5を参照して、ノズル本数N、吹付角度θの決定のより具体的な手順の例を説明する。この手順は、第0ステップ、第1ステップ、第2ステップからなる。
【0041】
[第0ステップ]
衝動タービン21が純衝動翼を備え、かつ噴流Jの衝動タービン21の周方向に対する吹付角を0°としたときのタービン効率は、以下の式(1)で表される。
【0042】
式(1)、後述する式(2)、式(3)におけるパラメータの内訳は以下の通りであるが、その一部は
図5(a)に示されている。なお、式(1)〜(3)は、非特許文献1の記載に基づいている。
ηi:タービン効率 Q:体積流量
ω:タービン回転数 c:タービン周速度
ui:ノズル流出速度 N:ノズル本数
a:一本当たりのノズル断面積 R:タービン半径
r:噴流吹付位置半径 θ:噴流の吹付角度
L:基準長さ
【0044】
いま、体積流量Qおよびタービン回転数ωが与えられているとすると、ノズル23からの噴流の流出速度uiは、式(2)で求まる。
また、噴流Jが吹き付けられるタービン21の位置半径rおよびタービン周速度cは以下の式(3)で示される関係を有する。
【0047】
[第1ステップ(
図3 S107)]
吹付角度θ=0(ゼロ)を仮定し、ノズル流出速度uiに対するタービン周速度cの比であるc/uiが0.5以上となる範囲で最少となるノズル本数Nを決定する。
【0048】
[第2ステップ(
図3 S109)]
決定したノズル本数Nに基づいて、式(1)〜式(3)に各値を代入することにより、タービン効率ηiが最大となる吹付角度θを決定する。
【0049】
タービン回転数ω、一本当たりのノズル23の断面積a、タービン半径R、基準長さLが以下の値として求めた制御量を
図5(b)に示す。
ω=3600[rpm] a=0.00021[m
2]
R=0.25[m] L=0.03[m]
【0050】
[効 果]
以上説明した動力回収機構20が奏する効果を説明する。
動力回収機構20は、負荷に応じて噴流を吐出するノズル本数を切り替えることにより、衝動タービン21に作用する噴流の速度(ノズル流出速度)をタービン周速度に対して適切な値に調整できる。これにより、動力回収ができなかった低負荷の運転領域においても、高いタービン効率を維持して動力の回収ができる。
特に、ノズル本数の切替に加えてノズル23の吹付角度θを調整することにより、ノズル本数の切替だけでは高いタービン効率を維持できない負荷の運転領域においても、高い運転効率を維持できる。
【0051】
また、回収した動力を電動機15に供給して圧縮仕事の一部に利用するので、その分だけ電動機15に外部から投入する電力を減少させることができる。
さらに、動力回収機構20は、回収動力を発電機によって取り出すのではなく、衝動タービン21を圧縮機13および電動機15と軸直結するシステムとした。これにより、システム中に発電機を設置する必要がないので、システムの小型化・低コスト化が可能である。
【0052】
さらにまた、凝縮器17から蒸発器11に入る冷媒から動力を回収しているので、
図6(b)に示される動力回収ありの線分のように、蒸発器11に入る冷媒のエンタルピーが低下する。これにより、蒸発器11の冷凍能力も増大し、冷凍効果が増大する。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0054】
例えば、以上で説明した実施形態は、冷凍装置10における動力回収機構20を説明したが、本発明の動力回収機構は負荷が変動するシステムの動力を回収する用途に広く適用される。
一例として、地熱フラッシュ発電がある。
図6(a)に示すように、地熱フラッシュ発電におけるセパレータ36よりも上流の膨張弁19に並列にノズル23と衝動タービン21によって構成される動力回収機構20を設ける。衝動タービン21はセパレータ36よりも下流のメインタービン35および発電機16に軸直結する。以上のシステムは、最も上流側に地熱貯留槽38があり、セパレータ36よりも下流には還元井37が設けられており、メインタービン35よりも下流には復水器39が設けられている。
運転状態の変化、つまり地熱流体の流量の変化が原因となり、上述した冷媒回路と同様に、タービン効率が低減する課題が生じる。
そこで、動力回収機構20を設け、地熱流体の流量の低下に伴ノズル出口流速がタービン周速度に対して低下した場合、使用するノズル23の本数を減らすことにより、ノズル出口流速を増加させ、タービン効率を改善する。また、タービン吹付角度を変化させることにより、タービン効率の低下を防ぐ。
【0055】
また、以上説明した動力回収機構20は、複数の分岐流路25のそれぞれに、流路が全開又は全閉される開閉弁27を設けることで、ノズル流出速度を調整した。しかし、本発明はノズル流出速度を調整する手段として開閉弁に限定されず、例えば、複数の分岐流路25のそれぞれにノズル23に向けて流れる冷媒の流量を連続的に調整できる流量調整弁を用いることもできる。
流量調整弁を用いれば、ノズル流出速度を連続的に低くしたり高くしたりすることができる。これに対して、開閉弁は圧力損失が生じない点で流量調整弁に対して有利である。もっとも、開閉弁も流量を0%と100%で調整するので、本発明は開閉弁も含めて流量調整弁と称する。
【符号の説明】
【0056】
10 冷凍装置
11 蒸発器
13 圧縮機
15 電動機
16 発電機
17 凝縮器
19 膨張弁
20 動力回収機構
21 衝動タービン
21A タービンブレード
22 出力軸
23 ノズル
25 分岐流路
27 開閉弁
29 戻し配管
30 制御器
35 メインタービン
36 セパレータ
37 還元井
38 地熱貯留槽