特許第6971178号(P6971178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971178
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】作業用足場の盛り替え方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 3/28 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   E04G3/28 301E
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-46672(P2018-46672)
(22)【出願日】2018年3月14日
(65)【公開番号】特開2019-157533(P2019-157533A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 良幸
(72)【発明者】
【氏名】海邊 輝
(72)【発明者】
【氏名】小原 貴之
(72)【発明者】
【氏名】荒木 信哉
(72)【発明者】
【氏名】中川 啓太郎
【審査官】 齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−217108(JP,A)
【文献】 実開平05−016978(JP,U)
【文献】 特開平09−177306(JP,A)
【文献】 特開平10−115084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00 − 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タワークレーンにおいてクレーン部をマストに沿って昇降可能な昇降装置を利用して作業用足場を昇降させる足場昇降工程を実行する作業用足場の盛り替え方法であって、
前記タワークレーンを、前記クレーン部を前記マストに定着させた状態で当該クレーン部から前記昇降装置を切り離し可能に構成し、
前記足場昇降工程において、前記クレーン部から切り離した前記昇降装置により前記作業用足場を昇降させる作業用足場の盛り替え方法。
【請求項2】
前記昇降装置を、前記作業用足場を所定の高さ位置に定着させた状態で当該作業用足場から切り離し可能に構成し、
前記足場昇降工程の実行後に、前記作業用足場から切り離した昇降装置を前記クレーン部側に上昇させて前記作業用足場側から退避させる退避工程を実行する請求項1に記載の作業用足場の盛り替え方法。
【請求項3】
前記昇降装置を、建物躯体に定着させた状態で前記マストのベース架台を盛り替えるフロアクライミングを実行可能に構成し、
前記フロアクライミングの実行に先立って前記足場昇降工程を実行して前記作業用足場を最上部に上昇させる請求項1又は2に記載の作業用足場の盛り替え方法。
【請求項4】
前記作業用足場を、前記マストを外囲して内側に前記昇降装置が進入可能な昇降装置進入空間を有するものとして構成し、
前記足場昇降工程において、前記昇降装置進入空間に進入させた前記昇降装置に対して前記作業用足場の架台を連結する請求項1〜3の何れか1項に記載の作業用足場の盛り替え方法。
【請求項5】
前記タワークレーンが、建築対象の高層建物の吹き抜け部に設置されたものである請求項1〜4の何れか1項に記載の作業用足場の盛り替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タワークレーンにおいてクレーン部をマストに沿って昇降可能な昇降装置を利用して作業用足場を昇降させる足場昇降工程を実行する作業用足場の盛り替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高層建物等の建築工事において建築資材を揚重するために利用されるタワークレーンには、クレーン部をマストに沿って昇降可能な昇降装置が設けられている。また、かかる建築工事では、建物に沿って作業用足場を設置する必要がある。
そして、従来技術として、タワークレーンの昇降装置に固定された張出梁に作業用足場を懸垂支持し、クレーン部と一体的化された昇降装置と共に作業用足場を昇降させる技術が知られている(例えば、特許文献1の主に段落0010,0011を参照。)
また、この特許文献1に記載のタワークレーンは、マストの下端部のベース架台を地上に設置し、その最頂部に順次マストを継ぎ足しながら、当該マストに沿ってクレーン部を昇降装置によりクライミングさせるマストクライミング式に構成されている(例えば、特許文献1の段落0008を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−082019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、クレーン部と一体化された昇降装置と同時に作業用足場も昇降することになる。即ち、作業用足場の昇降は、タワークレーンのクライミングに影響を受けることになり、タワークレーンのクライミングの時期やそのときのクレーン部の高さに関係なく作業用足場を任意の時期で任意の高さに昇降させることはできなかった。よって、かかる従来の技術では、作業用足場がタワークレーンのクライミングに伴ってクライミングした場合であっても、作業用足場により同じ高さでの作業を継続できるように、上下方向に長い大型の作業用足場が必要となっていた。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、タワークレーンの昇降装置を利用して作業用足場を昇降させる足場昇降工程を実行する作業用足場の盛り替え方法において、作業用足場の小型化を図りながら、タワークレーンのクライミングに影響を受けることなく作業用足場を任意の高さに盛り替えることができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、タワークレーンにおいてクレーン部をマストに沿って昇降可能な昇降装置を利用して作業用足場を昇降させる足場昇降工程を実行する作業用足場の盛り替え方法であって、
前記タワークレーンを、前記クレーン部を前記マストに定着させた状態で当該クレーン部から前記昇降装置を切り離し可能に構成し、
前記足場昇降工程において、前記クレーン部から切り離した前記昇降装置により前記作業用足場を昇降させる点にある。
【0007】
本構成によれば、足場昇降工程において作業用足場をクレーン部から切り離した昇降装置に連結して昇降させるので、タワークレーンのクライミングの時期やそのときのクレーン部の高さに関係なく、作業用足場を任意の時期で任意の高さに昇降させることができる。よって、タワークレーンのクライミング後において作業用足場の盛り替えを複数回に亘って行うことにより、作業用足場の小型化を図ることができる。
従って、本発明により、作業用足場の小型化を図りながら、タワークレーンのクライミングに影響を受けることなく作業用足場を任意の高さに盛り替えることができる作業用足場の盛り替え方法を実現することができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記昇降装置を、前記作業用足場を所定の高さ位置に定着させた状態で当該作業用足場から切り離し可能に構成し、
前記足場昇降工程の実行後に、前記作業用足場から切り離した昇降装置を前記クレーン部側に上昇させて前記作業用足場側から退避させる退避工程を実行する点にある。
【0009】
本構成によれば、足場昇降工程の実行時においては、作業用足場に対して昇降装置を近接させて、昇降装置に対する作業用足場の連結を簡素化することができる。そして、足場昇降工程の実行後においては、退避工程を実行して、所定の高さ位置に定着させた作業用足場からその後の作業用足場での作業の邪魔になる昇降装置を切り離し、当該切り離した昇降装置を上昇させて退避させることができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記昇降装置を、建物躯体に定着させた状態で前記マストのベース架台を盛り替えるフロアクライミングを実行可能に構成し、
前記フロアクライミングの実行に先立って前記足場昇降工程を実行して前記作業用足場を最上部に上昇させる点にある。
【0011】
本構成によれば、フロアクライミングの実行に先立って足場昇降工程を実行して作業用足場を最上部に上昇させるので、その後のフロアクライミングの実行時において作業用足場が邪魔になることなくマストのベース架台をできるだけ上方に盛り替えることができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、前記作業用足場を、前記マストを外囲して内側に前記昇降装置が進入可能な昇降装置進入空間を有するものとして構成し、
前記足場昇降工程において、前記昇降装置進入空間に進入させた前記昇降装置に対して前記作業用足場の架台を連結する点にある。
【0013】
本構成によれば、足場昇降工程において昇降装置に対してマストを外囲する作業用足場の架台を連結するにあたり、当該作業用足場の内部に形成された昇降装置進入空間に昇降装置を進入させた状態として、作業用足場に対して昇降装置を一層近接させて、昇降装置に対する作業用足場の連結を一層簡素化することができる。
【0014】
本発明の第5特徴構成は、前記タワークレーンが、建築対象の高層建物の吹き抜け部に設置されたものである点にある。
【0015】
本構成によれば、吹き抜け部を有する高層建物の建築工事において、狭小・狭隘な吹き抜け部に作業用足場を設置する場合でも、その作業用足場を他の揚重作業を必要とすることなく昇降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】タワークレーンの昇降装置を利用した作業用足場の盛り替え方法における第1工程(a)及び第2工程(b)の状態を示す図
図2】タワークレーンの昇降装置を利用した作業用足場の盛り替え方法における第3工程(c)及び第4工程(d)の状態を示す図
図3】タワークレーンにおいて昇降装置に作業用足場を連結した状態を示す図
図4】タワークレーンの昇降装置を利用した作業用足場の盛り替え方法の別の形態を示す図
図5】タワークレーンのフロアクライミングに先立って実行される足場上昇工程の第1工程(a)及び第2工程(b)の状態を示す図
図6】タワークレーンのフロアクライミングにおける第1工程(c)及び第2工程(d)の状態を示す図
図7】タワークレーンのフロアクライミングにおける第3工程(e)及び第4工程(f)の状態を示す図
図8】タワークレーンのフロアクライミングにおける第5工程(g)を示す図
図9】タワークレーンのベース架台を建物躯体に定着させた状態を示す図
図10】ベース架台に固定された受け梁の干渉回避状態を示す平面図(a)、及びベース架台に固定された受け梁の定着状態を示す平面図(b)
図11】吹き抜け部を有する建物の状態を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
本実施形態では、建物の建築工事において実施される建物の建築方法及び作業用足場の盛り替え方法について説明する。
図11に示すように、建築対象となる建物Aは、高層マンション等のように略中央部に吹き抜け部Bを有し、それを囲むように構築される。そして、この建物Aの吹き抜け部Bには、例えば地上側にタワーパーキングP等が設置され、その上方部に電気室R等が設置される。また、この電気室Rは、吹き抜け部Bを囲う建物躯体A1に対して固定される梁を組み付けた上部梁構造物R1上に構築される。
【0018】
そして、このような建物Aの建築工事において、吹き抜け部Bには、図1等に示すように、建築資材を揚重するためのタワークレーンCや、当該吹き抜け部Bを囲う壁部の構築作業を行うための作業用足場Sが設けられる。
【0019】
図3に示すように、作業用足場Sは、吹き抜け部Bを囲う建物躯体A1の内壁面に沿って平面視で略ロの字状に配置されており、更には、マストC5を外囲して内側に昇降装置C2が上方から進入可能な昇降装置進入空間S2を有するものとして構成されている。
また、作業用足場Sを支持する架台S1は、建物躯体A1の内壁面に対してブラケット10を介して定着させることができる。
即ち、吹き抜け部Bにおいて、建物躯体A1の内壁面の複数個所にブラケット10をアンカーボルト等により固定し、そのブラケット10に対して架台S1を架設する。そして、その架台S1の上面に作業用足場Sを設置する形態で、作業用足場Sを建物躯体A1に定着させることができる。また、このように定着させた作業用足場Sの上端部は、作業用足場Sの触れ止めのために、ワイヤS3を介して建物躯体A1に連結されている。
【0020】
タワークレーンCの詳細構成について、図5図10に基づいて以下に説明を加える。
タワークレーンCには、図5等に示すように、クレーン部C1をマストC5に沿って昇降可能な昇降装置C2が設けられている。
【0021】
昇降装置C2は、一般的なタワークレーンに設けられる公知の昇降装置と同様の構成を有している。例えば、昇降装置C2は、上部フレーム及び下部フレームのそれぞれをロックピンによりマストC5に対して交互に固定又は開放しつつ、油圧ジャッキにより上部フレームと下部フレームとの距離を伸縮させることで、マストC5に沿って上昇又は下降するように構成することができる。
【0022】
図9に示すように、マストC5の下端部に設けられたベース架台C3には、受け梁C4が固定されており、その受け梁C4は、吹き抜け部Bを囲う建物躯体A1の内壁面に対してブラケット11を介して定着させることができる。
即ち、吹き抜け部Bにおいて、建物躯体A1の内壁面の複数個所にブラケット11をアンカーボルト等により固定し、そのブラケット11に対して受け梁C4を架設する。そして、その受け梁C4の上面にマストC5の下端部に設けられたベース架台C3を固定することで、当該ベース架台C3を建物躯体A1に定着させることができる。
【0023】
図10に示すように、ベース架台C3は、マストC5の下端部から放射状に張り出したベース部C3aと、そのベース部C3aの下面側に固定されて両端部が伸縮自在な一対の伸縮梁部C3bとを備えて構成されており、その一対の伸縮梁部C3bの両端部側に受け梁C4が夫々固定されている。そして、伸縮梁部C3bの両端部を内方に引退させることで、図10(a)に示すように、ブラケット11が設けられた建物躯体A1の内壁面に対して受け梁C4を離間させて、鉛直方向におけるブラケット11と受け梁C4との干渉を回避できる干渉回避状態とすることができる。一方、伸縮梁部C3bの両端部を外方に突出させることで、図10(b)に示すように、ブラケット11が設けられた建物躯体A1の内壁面に対して受け梁C4を近接させて、ブラケット11に受け梁C4を架設可能な定着状態とすることができる。
【0024】
タワークレーンCは、図5の(a)に示すように、クレーン部C1をマストC5に定着させた状態で、当該クレーン部C1から昇降装置C2を切り離し可能に構成されており、その状態において昇降装置C2がマストC5に沿って昇降可能となる。
そして、タワークレーンCは、詳細については後述するが、クレーン部C1をマストC5に沿って昇降可能な昇降装置C2を建物躯体A1に定着させた状態で、マストC5をベース架台C3とともに上階側に盛り替えるフロアクライミングを実行可能に構成されたフロアクライミング式に構成されている。
【0025】
(作業用足場の盛り替え方法)
建物Aの建築工事では、タワークレーンCにおいて昇降装置C2を利用して作業用足場Sを昇降させる足場昇降工程を実行する作業用足場Sの盛り替え方法が実行される。
以下に、その作業用足場Sの盛り替え方法の詳細について、図1図2に基づいて説明を加える。
【0026】
図1の(a)に示す作業用足場Sの盛り替え方法の第1工程では、吹き抜け部Bの下層階(例えば1階)に作業用足場Sを構築する。このとき、作業用足場Sは、上述したようにブラケット10を介して建物躯体A1に定着させることもできるが、本実施形態では、地上に設けた支持構造体13上に作業用足場Sを構築して、当該支持構造体13により作業用足場Sを支持させる。
また、この第1工程では、タワークレーンCの昇降装置C2は、クレーン部C1に連結された状態で、マストC5の上方側に位置している。
【0027】
次に実行される図1の(b)に示す作業用足場Sの盛り替え方法の第2工程では、タワークレーンCのクレーン部C1をマストC5の上方側に定着させた状態で、当該クレーン部C1から昇降装置C2を切り離し、その切り離した昇降装置C2を下方側の作業用足場Sの内側に形成された昇降装置進入空間S2まで下降させる。この際、作業用足場Sにおいて、昇降装置C2と干渉する部分については、適宜解体しても構わない。
そして、下降させた昇降装置C2の底部と作業用足場Sの架台S1とを近接させた状態で接続すると共に、作業用足場Sを支持していた支持構造体13(図1の(a)参照。)を撤去する。すると、作業用足場Sは、昇降装置C2により支持された状態となる。
【0028】
次に実行される図2の(c)に示す作業用足場Sの盛り替え方法の第3工程では、昇降装置C2を上昇させることで、その昇降装置C2に接続された作業用足場Sを所定の高さ位置まで上昇させる。尚、この第3工程のように、タワークレーンCにおいて昇降装置C2を利用して作業用足場Sを昇降させる工程を足場昇降工程と呼ぶ。
そして、作業用足場Sを任意の高さ位置まで上昇させた上で、当該作業用足場Sを支持する架台S1を建物躯体A1の内壁面に対してブラケット10を介して定着させる。
【0029】
この第3工程において作業用足場Sをクレーン部C1から切り離した昇降装置C2に連結して上昇させるので、タワークレーンCのクライミングの時期やそのときのクレーン部C1の高さに関係なく、作業用足場Sを任意の時期で任意の高さに上昇させることができる。よって、タワークレーンCのクライミング後において作業用足場Sの盛り替えを複数回に亘って行うことにより、作業用足場Sの小型化が図られている。
尚、本実施形態では、作業用足場Sを上昇させて盛り替える形態を説明したが、同様の方法で、作業用足場Sを下降させて盛り替えることもできる。
【0030】
そして、次に実行される図2の(d)に示す作業用足場Sの盛り替え方法の第4工程では、上記第3工程において作業用足場Sを所定の高さ位置に定着させた状態で当該作業用足場Sから昇降装置C2を切り離す。そして、このように作業用足場Sから切り離した昇降装置C2を、クレーン部C1側に上昇させて、作業用足場Sの内側に形成された昇降装置進入空間S2から退避させる退避工程を実行する。
そして、この第4工程において、適宜解体した部分を再構築して、作業用足場Sの盛り替えを完了することができる。
この第4工程においては、上記退避工程を実行することで、所定の高さ位置に定着させた作業用足場Sからその後の作業用足場Sでの作業の邪魔になる昇降装置C2を切り離し、当該切り離した昇降装置C2を上昇させて退避させることができる。
【0031】
また、図4に示すように、比較的広い吹き抜け部Bに複数(図4では2台)のタワークレーンCが設置されている場合には、吹き抜け部Bを囲う建物躯体A1の内壁面に沿って配置された作業用足場Sを、これら複数のタワークレーンCに設けられた複数の昇降装置C2を利用して上階側に盛り替えることができる。
即ち、複数の昇降装置C2を利用して作業用足場Sを盛り替える場合には、複数のタワークレーンCの夫々のクレーン部C1をマストC5の上方側に定着させた状態で、当該クレーン部C1から切り離した複数の昇降装置C2を下方側の作業用足場Sの内側に形成された昇降装置進入空間S2まで下降させ、その底部と作業用足場Sの架台S1とを近接させた状態で接続する。そして、当該作業用足場Sの底部と接続した複数の昇降装置C2を同時に上昇させることで、それら複数の昇降装置C2に接続された作業用足場Sを所定の高さ位置まで上昇させることができる。
また、この作業用足場Sの盛り替え方法においても、作業用足場Sをクレーン部C1から切り離した昇降装置C2に連結して上昇させるので、複数のタワークレーンCの夫々において、作業用足場Sの盛り替えタイミングとは別の任意のタイミングで、昇降装置C2によるクレーン部C1のクライミングを実行することができる。
【0032】
(フロアクライミング)
建物Aの建築工事では、タワークレーンCにおいてクレーン部C1をクライミングするためのフロアクライミングが実行される。また、このフロアクライミングに先立って、作業用足場Sを最上部に上昇させる足場上昇工程が実行される。
以下に、その足場上昇工程及びそれに続くフロアクライミングの詳細について、図5図8に基づいて説明を加える。
【0033】
図5の(a)及び(b)に示す足場上昇工程の第1工程及び第2工程は、フロアクライミングに先立って実行される足場昇降工程であり、この足場昇降工程では、作業用足場Sを最上部に上昇させる。即ち、図5の(a)に示す第1工程では、吹き抜け部Bにおいて、ベース架台C3を例えば1階などの地盤付近の低層階に定着した状態でタワークレーンCを設置しており、更には、上述の作業用足場Sの盛り替え方法により、吹き抜け部Bにおける所定の高さ位置に作業用足場Sを定着させている。また、この状態において、ベース架台C3には既に受け梁C4が固定されている。
【0034】
この第1工程では、タワークレーンCのクレーン部C1をマストC5の上方側に定着させた状態で、当該クレーン部C1から昇降装置C2を切り離し、その切り離した昇降装置C2を下方側の作業用足場Sの内側に形成された昇降装置進入空間S2まで下降させる。そして、下降させた昇降装置C2と作業用足場Sの架台S1とを近接させた状態で接続すると共に、作業用足場Sを支持していたブラケット10を撤去して、作業用足場Sを昇降装置C2により支持させる。
【0035】
次に実行される図5の(b)に示す第2工程では、昇降装置C2を上昇させることで、その昇降装置C2に接続された作業用足場Sを、建築中の建物躯体A1における最上部の高さまで上昇させる。そして、上昇させた作業用足場Sを支持する架台S1を建物躯体A1の内壁面に対してブラケット10を介して定着させる。更に、昇降装置C2を作業用足場Sから切り離して上昇させてクレーン部C1に接続する。
そして、上記第1工程及び上記第2工程を実行した上で、後述する第3工程以降の1回目のフロアクライミングが実行されるが、その実行時において、上記作業用足場Sが最上部に上昇されているので、作業用足場Sが邪魔になることなくベース架台C3をできるだけ上方に盛り替えることができるようになる。
【0036】
図6の(c)に示すフロアクライミングの第1工程では、クレーン部C1のマストC5に対する定着を解除した上で、クレーン部C1に接続された昇降装置C2を作業用足場Sの内側に形成された昇降装置進入空間S2まで下降させる。そして、この状態において、昇降装置C2を建物躯体A1に対して建物躯体A1に架設した受け梁C2aを介して定着させる。
【0037】
次に実行される図6の(d)に示すフロアクライミングの第2工程では、受け梁C4が固定されたベース架台C3の建物躯体A1に対する定着を解除した状態で昇降装置C2を作動させてマストC5を上昇させ、定着を解除したベース架台C3を一旦浮かせた状態とする。そして、このように一旦浮かせたベース架台C3の下方の地盤付近の低層階に、吹き抜け部Bの所定の設置階に設置される電気室R(図11参照)の床部となる上部梁構造物R1を側方から挿入する。
【0038】
次に実行される図7の(e)に示すフロアクライミングの第3工程では、昇降装置C2を上記第2工程とは逆方向に作動させてマストC5を下降させ、吹き抜け部Bの低層階に挿入された上部梁構造物R1の上面にベース架台C3を近接させる。そして、この状態にて、図9に示すように、ベース架台C3に対して上部梁構造物R1を、逆U字状の枠体15を用いて懸垂状態で取り付ける。
そして、フロアクライミングの第3工程のように、吹き抜け部Bにおける上部梁構造物R1の設置階よりも下方側の低層階で、タワークレーンCのベース架台C3に予め上部梁構造物R1を取り付ける工程を上部梁構造物取付工程と呼ぶ。即ち、このような上部梁構造物取付工程を実行することで、例えば狭小・狭隘な吹き抜け部Bに設置するタワークレーンCのベース架台C3が上部梁構造物R1の設置階よりも下方側の低層階に位置する時点において、低層階での簡単な作業にてベース架台C3に予め上部梁構造物R1を取り付けておくことができる。
【0039】
次に実行される図7の(f)に示すフロアクライミングの第4工程では、昇降装置C2を作動させてマストC5を上昇させて、ベース架台C3を次の定着階まで上昇させる。このとき、ベース架台C3の次の定着階には、ベース架台C3の受け梁C4を架設するためのブラケット11が予め建物躯体A1の内壁面の複数個所に固定されており、ベース架台C3に固定された受け梁C4を、上述したように建物躯体A1の内壁面から離間させた干渉回避状態(図10(a)に示す状態)として、鉛直方向におけるブラケット11と受け梁C4との干渉を回避している。
【0040】
そして、次に実行される図8の(g)に示すフロアクライミングの第5工程では、ベース架台C3が定着階まで上昇した時点で、ベース架台C3に固定された受け梁C4を、上述したように建物躯体A1の内壁面に近接させた定着状態(図10(b)に示す状態)として、当該受け梁C4をブラケット11に固定して、ベース架台C3を建物躯体A1に定着させる。
このとき、図9及び図10(b)に示すように、受け梁C4のブラケット11への固定箇所は受け梁C4よりも外側に位置するのに対し、その固定作業は受け梁C4の内側に居る作業者により行う必要がある。
【0041】
そこで、受け梁C4には、作業用の開口部C4aが形成されており、内側に居る作業者がその開口部C4aを通じてボルトの締め付け作業等を行うことができる。尚、図示の例では、受け梁C4において開口部C4aが中央部と両端部とに形成されているが、この作業用の開口部C4aの形成箇所や形状等については適宜改変することができ、例えば、受け梁C4を構成する形鋼のフランジ部を切り欠いて形成された切欠き部でも構わない。また、建物躯体A1に作業用の開口部が存在し、建物躯体A1側からその開口部を通じてボルトの締め付け作業等を行うことができる場合には、受け梁C4に形成した開口部C4aは省略しても構わない。
そして、この第4工程において、ベース架台C3を建物躯体A1に定着させた上で、昇降装置C2によりクレーン部C1を所定の高さ位置に上昇させて、フロアクライミングを完了することができる。
【0042】
更に、上述したフロアクライミングを1乃至複数回実施した段階で、ベース架台C3が上部梁構造物R1を設置する設置階を通過して上昇してその設置階よりも上方側に定着させた時点で、当該ベース架C3台に取り付けられている上部梁構造物R1を設置階に移設する上部梁構造物移設工程を実行する。
即ち、建築工事の進行に伴ってタワークレーンCのフロアクライミングの実施によりベース架台C3は段階的に上昇する。よって、そのベース架台C3の上昇に伴ってそれに予め取り付けられた上部梁構造物R1を他の揚重作業を必要とすることなく吹き抜け部Bの上方の設置階側に上昇させることができる。そして、例えばベース架台C3が設置階付近又はその上方に位置する時点において、このような上部梁構造物移設工程を実行することにより、上昇したベース架台C3に予め取り付けられていた上部梁構造物R1を、吹き抜け部Bの設置階に移設することができる。
【0043】
尚、この上部梁構造物移設工程は、ベース架台C3を定着させることなく、フロアクライミングの第4工程(図7の(f)参照)において実施することもできる。即ち、上昇されるベース架台C3が上部梁構造物R1を設置する設置階を通過する際に、吹き抜け部Bにおける設置階側で、ベース架台C3の上昇を一旦停止した状態で、そのベース架台C3に取り付けられている上部梁構造物R1を設置階に移設することができる。
【0044】
また、上部梁構造物R1には、図9に示すように、吹き抜け部Bの横断面略全体に亘るデッキプレートR1aが含まれている。そして、このデッキプレートR1aは、タワークレーンCのベース架台C3に予め取り付けられていることで、吹き抜け部Bの横断面略全体に亘って下方側への落下物を防止する落下防止部として機能することになる。
更に、梁構造物移設工程においては、ベース架台C3に取り付けられた上部梁構造物R1やそれに含まれるデッキプレートR1aを、作業用足場部として利用することができる。
【0045】
また、吹き抜け部Bにおける設置階への上部梁構造物R1の移設作業が完了すると、例えば、その移設された上部梁構造物R1に含まれるデッキプレート上へのコンクリートの打設作業を行って床部を構築するなどして、電気室Rの構築作業を完了する。
【0046】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記実施形態では、作業用足場Sを吹き抜け部Bの所定の高さ位置に定着させた状態で、タワークレーンCの昇降装置C2を当該作業用足場Sから切り離し可能に構成したが、作業用足場Sを昇降装置C2と常時連結した状態で、当該作業用足場Sを昇降させるように構成しても構わない。
【0047】
(2)上記実施形態では、タワークレーンCを、昇降装置C2を建物躯体A1に定着させた状態でマストC5のベース架台C3を盛り替えるフロアクライミング式に構成したが、クレーン部をマストに定着させた状態で当該クレーン部から前記昇降装置を切り離し可能なものであればよく、例えば、ベース架台を盛り替えることなく地上に設置し、その最頂部に順次マストを継ぎ足しながら、当該マストに沿ってクレーン部を昇降装置によりクライミングさせるマストクライミング式に構成しても構わない。
【0048】
(3)上記実施形態では、作業用足場Sを、マストC5を外囲して内側に昇降装置進入空間S2を有するものとして構成し、足場昇降工程(図2の(c)参照)において、昇降装置進入空間S2に進入させた昇降装置C2に対して作業用足場Sの架台S1を連結するように構成したが、作業用足場の形状や昇降装置C2に対する連結構造等については、適宜改変しても構わない。
【0049】
(4)上記実施形態では、建築対象の高層建物Aの吹き抜け部BにタワークレーンCを設置したが、別の場所に設置したタワークレーンの昇降装置を利用して作業用足場を昇降させても構わない。
【符号の説明】
【0050】
A 建物
A1 建物躯体
B 吹き抜け部
C タワークレーン
C1 クレーン部
C2 昇降装置
C3 ベース架台
C5 マスト
S 作業用足場
S1 架台
S2 昇降装置進入空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11