特許第6971179号(P6971179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971179
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】樹脂成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/02 20060101AFI20211111BHJP
   B29C 70/40 20060101ALI20211111BHJP
   B29C 43/58 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B29C43/02
   B29C70/40
   B29C43/58
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-46839(P2018-46839)
(22)【出願日】2018年3月14日
(65)【公開番号】特開2019-155767(P2019-155767A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2021年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】込山 隆士
(72)【発明者】
【氏名】蓬莱 賢一
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆一
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−141210(JP,U)
【文献】 実開昭64−011712(JP,U)
【文献】 特開2017−222122(JP,A)
【文献】 特開平01−156023(JP,A)
【文献】 実開昭56−040900(JP,U)
【文献】 実開平04−000495(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00 − 43/58
B29C 33/00 − 33/76
B29C 70/00 − 70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧シリンダによって下向きに加圧される上型と、前記上型と間隔を空けて対向する下
型の間に、繊維を含み加熱により流動性を有する樹脂素材を配置する準備工程と、
前記液圧シリンダに作動液を供給する液圧ポンプを止めるとともに前記上型を自由落下
に基づく第1速度で下降させて前記樹脂素材に接触させ、前記第1速度を利用して前記樹脂素材を押圧し前記樹脂素材から気泡を抜く流動成形を実行する工程と、
前記流動成形する工程の終了後、前記液圧ポンプから前記液圧シリンダに作動液を供給
することにより前記液圧シリンダから前記上型に圧力を付与して前記第1速度よりも遅い
第2速度で前記樹脂素材をさらに大きな圧力で押圧する高圧成形を実行する工程とを実行する、樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
前記流動成形を実行する工程で、前記液圧シリンダの背圧室から排出される作動液の流量を絞ることにより前記第1速度を減速させる、請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
前記下型から前記上型までの距離に基づき、前記高圧成形を実行する工程を開始する、請求項1または2に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
前記上型の位置を検出するセンサを備え、前記センサの検出結果に基づき前記高圧成形を実行する工程を開始する、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
前記流動成形を実行する工程で、前記上型が前記樹脂素材に接触後の前記第1速度は、予め設定された複数の下降速度の群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂素材を金型で押圧して成形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、所定の高温温度帯で適度な塑性変形性能ないし流動性能を有し、所望の形状に成形される。つまり熱可塑性樹脂を成形する際には、冷えて固化してしまわないうちに成形を完了する必要がある。特に金型でプレス成形する場合、樹脂素材が金型から熱を奪われるため、プレス成形を迅速に完了する必要がある。
【0003】
熱可塑性樹脂のプレス成形として特開平9−104025号公報(特許文献1)および特開2017−222122号公報(特許文献2)に記載の成形方法が知られている。特許文献1では、溶融状態の熱可塑性樹脂を金型内で圧縮流動させる際、最大圧縮速度の75%の時の加速度および最大圧縮速度の75%の時の減速度を制御する。
【0004】
特許文献2では、真空ポンプを用いて減圧された環境を生成し、真空に近い状態で炭素繊維を含む熱可塑性樹脂複合素材をプレス成形する。特許文献2の段落0051および図6には、プレス装置の上型のプレス位置(下降位置)および時間(下降速度)の関係が説明されている。これによると、減圧室(キャビティ)のシール部材の破損防止・負荷低減のため、上型が減圧室のシール部材に接触するより前に、高速で下降する上型を低速状態まで減速させる。上型がシール部材に接触したまま低速状態で減圧室(キャビティ)に進入すると、減圧室(キャビティ)の減圧が開始される。次に上型は、下型に載置される樹脂材料に接触し、引き続き低速で下降しながら樹脂材料の型締めを開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−104025号公報
【特許文献2】特開2017−222122号公報 段落0051 図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カーボンファイバーやガラスファイバー等の繊維を含む樹脂は、熱伝導率が高いために冷めやすい。冷めると流動性が低下して所望の成形が困難になる。そこで繊維を含む樹脂については、加熱溶融状態のうちに高速でプレス加工して締固めることが望ましい。
【0007】
ところが、プレス装置を高速で動かすためには大容量の油圧ポンプが必要になる。大容量の油圧ポンプを駆動するために大出力の電気モータが必要になる。そうすると設備の大型化が必要になって、製造コストが増大するという問題がある。
【0008】
つまり特許文献1の成形方法において圧縮速度の加速度および減速度を急激なものとし、圧縮速度を単に速くすることのみでは設備の大型化という問題を伴う。
【0009】
また特許文献2の技術では上型が低速で下降して熱可塑性樹脂複合素材を型締めするため、高温の熱可塑性樹脂複合素材を準備してから成形が完了するまでに時間がかかり、成形時間に改善の余地がある。特に特許文献2の図5に示すように上型が樹脂材料に接触すると樹脂材料の温度低下が促進される。にもかかわらず上型を低速で下降させることは、迅速な成形完了という点から好ましくない。
【0010】
本発明は、上述の実情に鑑み、プレス加工の速度向上と、プレス成形の所要時間を短縮することと、設備の小型化を図ることができる改良技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のため本発明による樹脂成形体の製造方法は、液圧シリンダによって下向きに
加圧される上型と、該上型と間隔を空けて対向する下型の間に、繊維を含み加熱により流
動性を有する樹脂素材を配置する準備工程と、液圧シリンダに作動液を供給する液圧ポン
プを止めるとともに上型を自由落下に基づく第1速度で下降させて樹脂素材に接触させ、
第1速度で利用して樹脂素材を押圧し樹脂素材から気泡を抜く流動成形を実行する工程と、当該流動成形を実行する工程の終了後、液圧ポンプから液圧シリンダに作動液を供給することにより液圧シリンダから上型に圧力を付与して第1速度よりも遅い第2速度で樹脂素材をさらに大きな圧力で押圧する高圧成形を実行する工程とを実行する。
【0012】
かかる本発明によれば、上型および液圧シリンダ内部のピストンの自重に基づく落下を利用して、樹脂素材を高速で流動成形することができる。これにより、従来よりも、成形に要する時間を短縮化できる。また本発明によれば、樹脂素材を高速で流動変形させることにより樹脂素材の流動性が高まるので、樹脂素材に混入する気泡を樹脂素材から追い出すことができる。また本発明によれば、樹脂素材を予め流動変形させておくため、次の高圧変形させる工程で上型を下降させる距離を短くすることができる。したがって本発明によれば、上型を低速で下降させて高圧変形させる従来の場合と比較して、大容量ポンプおよび大容量モータを必要とせず、設備を小型化してコスト低減が可能になる。
【0013】
本発明の一局面として樹脂素材流動成形を実行する工程で、液圧シリンダの背圧室から排出される作動液の流量を絞ることにより上型の第1速度を減速させる。かかる局面によれば、樹脂素材の材質に応じて適切な速度を選定することができる。あるいは本発明の他の局面として樹脂素材流動成形を実行する工程で、液圧シリンダの背圧室から排出される作動液の流量を最大にすることにより上型の第1速度を自然落下速度に略等しくする。かかる局面によれば、流動成形の工程を速やかに終了することができる。
【0014】
樹脂素材流動成形を実行する工程から高圧成形を実行する工程に切り換えるタイミングとして、幾つかの局面から選択される。本発明の一局面として下型から上型までの距離に基づき、高圧成形を実行する工程を開始する。かかる局面によれば、上型の位置に基づいて流動成形する工程を終了するとともに高圧成形する工程を開始することができる。したがって予め知られている樹脂素材の物性と、樹脂成形体の形状に基づき、流動成形する工程に要する時間および高圧成形する工程に要する時間の合計時間を短くなるよう設定することができる。
【0015】
本発明の他の局面として上型の位置を検出するセンサを備え、センサの検出結果に基づ
き高圧成形を実行する工程を開始する、かかる局面によれば、上型の減速度に基づき流動成形する工程を終了するとともに高圧成形を開始することができる。
【0016】
本発明の一局面として流動成形を実行する工程で、上型が樹脂素材に接触後、予め設定された複数の下降速度の群から1の速度を選択可能である。かかる局面によれば、樹脂成形体の上下方向厚みに応じて、適切なプレス成形時間を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明によれば、プレス成形に要する時間を従来よりも短くすることができる。しかも設備の大型化を要さず、製造コスト上有利である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】プレス成形装置の模式的な構成図である。
図2】本発明の一実施形態になる樹脂成形体製造方法の上型位置、圧力、および時間の関係を示すタイムチャートである。
図3】成形前の繊維強化樹脂を示す拡大断面図である。
図4】プレス成形の際、上型が第1速度で下降して樹脂素材に接触し流動変形を開始する際の状態を表す模式図である。
図5】プレス成形の際、上型が第1速度で下降して樹脂素材を流動変形させる途中状態を表す模式図である。
図6】プレス成形の際、流動変形が終了するとともに高圧変形を開始する際の状態を表す模式図である。
図7】プレス成形装置の模式的な構成図であり、上型が第1速度よりも低速の第2速度で下降する状態を表す。
図8図6の状態に続き、プレス成形が終了する状態を表す模式図である。
図9】プレス成形装置の模式的な構成図であり、上型が低速の第3速度で上昇する状態を表す。
図10】プレス成形装置の模式的な構成図であり、上型が第3速度よりも高速の第4速度で上昇する状態を表す。
図11】プレス成形装置のストロークとクランク角度の関係を表す図および表である。
図12】本発明の一実施形態になる成形体製造方法のストロークと下降速度の関係を表す図である。
図13】対比例の成形体製造方法の上型位置、圧力、および時間の関係を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態になる成形体製造方法を実行するプレス成形装置を示す模式的な構成図である。プレス成形装置10は、シリンダ11、ピストン12、ピストンロッド13、上型(スライドともいう)14、下型15、および油圧回路21を備える。シリンダ11は上下方向に延び、ピストン12を収容する。ピストン12はシリンダ11の長手方向に沿って摺動可能である。シリンダ11の内部空間は、ピストン12を境界として、正圧室16および背圧室17に区画される。
【0020】
正圧室16はシリンダ11の一端(上端)側を占め、油圧回路21から作動油が供給されることによってピストン12をシリンダ11の他端(下端)側へ押圧する。背圧室17はシリンダ11の他端側を占め、油圧回路21から作動油が供給されることによってピストン12をシリンダ11の一端側へ押圧する。ピストンロッド13は背圧室17に配置されて一端でピストン12と結合する。ピストンロッド13は他端側でシリンダ11の他端を貫通して下方へ延び、上型14と連結する。
【0021】
ピストン12は、図1に示すようにシリンダ11の一端に最も近くなる上死点と、シリンダ11の他端に最も近くなる下死点との間を往復する。これに伴いピストンロッド13および上型14は、下型15から最も遠くなったり、下型15に最も近くなったりするよう変位する。
【0022】
下型15は、上型14よりも下方に配置され、上型14と対向する。一方の上型14および他方の下型15は1対の金型を構成し、高温溶融状態の樹脂素材Wを挟み込んで樹脂素材をプレス成形する。下型15は樹脂素材のプレス成形中に変位しないが、シリンダ11に対する相対距離を調整可能である。
【0023】
ピストンロッド13他端のストローク範囲にはリニアセンサ18が設けられる。リニアセンサ18は上型14の位置を検出する。上型14の位置とは、下型15からの距離、または上型14の上下方向位置と理解されたい。
【0024】
油圧回路21は正圧室16および背圧室17の一方に作動油を供給しつつ、残る他方から作動油を供給される。このため油圧回路21は、ポンプP、モータSM、ポンプ吸入通路22、ポンプ吐出通路23、方向切換弁24、正圧通路25、背圧通路26、排出通路27,29、給排通路28,30、開閉弁31、チェック弁32、絞り弁33、リリーフ弁34,35、および図示しないコントローラを有する。
【0025】
ポンプ吸入通路22の入口端はタンクN1と接続し、ポンプ吸入通路22の出口端はポンプPの吸入口と接続する。ポンプPはモータSMと連結し、モータSMによって駆動される。ポンプ吐出通路23の入口端はポンプPの吐出口と接続し、ポンプ吐出通路23の出口端は方向切換弁24の第1ポートと接続する。
【0026】
正圧通路25の一端は方向切換弁24の第4ポートと接続し、正圧通路25の他端はシリンダ11の一端と接続して正圧室16に通じる。正圧通路25には圧力計M1が附設される。正圧通路25の途中には排出通路27の一端が接続される。排出通路27の他端はタンクN2と接続する。排出通路27の途中にはリリーフ弁34が設けられる。排出通路27は通常状態でリリーフ弁34によって閉じられている。正圧室16の圧力が上限値を超えて異常に高くなるとリリーフ弁34が開き、正圧室16の圧力を開放する。
【0027】
給排通路28の一端はシリンダ11の一端と接続して正圧室16に通じる。給排通路28の他端はタンクN3と接続する。給排通路28の途中には開閉弁31が設けられる。給排通路28は通常状態で開閉弁31によって閉じられている。
【0028】
背圧通路26の一端は方向切換弁24の第3ポートと接続し、背圧通路26の他端はシリンダ11の他端と接続して背圧室17に通じる。背圧通路26の途中には排出通路29の一端が接続される。背圧通路26のうち排出通路29との接続箇所から背圧通路26の他端までの間に含まれる箇所には圧力計M2が附設される。排出通路29の他端はタンクN4と接続する。排出通路29の途中には絞り弁33が設けられる。絞り弁33は開度を調整されて、背圧室17から排出される作動油の流量を制御する。絞り弁33は例えば開度調整可能な電磁比例弁であり、図示しないコントローラに制御されて背圧室17から排出される作動油の流量を絞る。開度を百で表すと、コントローラが絞り弁33に指令を送信する間、絞り弁33は開度1(殆ど閉じている)〜開度100(全開)とされる。絞り弁33に指令を送信しない間(OFF)、絞り弁33は開度0にされる(完全に閉じられる)。
【0029】
背圧通路26と排出通路29の接続箇所から背圧通路の一端(切換弁24側)までの区間には、チェック弁32およびリリーフ弁35が設けられる。チェック弁32およびリリーフ弁35は並列して配置される。チェック弁32は背圧通路26の一端(方向切換弁24)から他端(背圧室17)への流れを許容し、背圧通路26の他端(背圧室17)から一端(方向切換弁24)への逆流を防止する。背圧室17の圧力が上限値を超えて異常に高くなるとリリーフ弁35が開き、背圧室17の圧力を開放する。背圧通路26の一端とチェック弁32の間には圧力計M3が附設される。
【0030】
給排通路30の一端は方向切換弁24の第2ポートと接続し、給排通路30の他端はタンクN5と接続する。油圧回路21の運転状況に応じて作動油は、給排通路30の一端から他端へ、あるいは他端から一端へ流れる。
【0031】
図示しないコントローラは、圧力計M1〜M3から送信される検出結果に基づき、上述した弁を制御する。
【0032】
次に、プレス成形装置10を使用する本発明の一実施形態になる樹脂成形体の製造方法につき説明する。
【0033】
図2は、本発明の一実施形態になる樹脂成形体製造方法の上型位置、圧力、および時間の関係を示すタイムチャートである。図2中、左側の縦軸は上型14の位置を表し、上死点をLuとする。また右側の縦軸は正圧室16の圧力を示し、圧力計M1に対応する。横軸は時間(時刻)を表す。図2下部には油圧回路21の動作状態をON・OFFで表す。本実施形態は工程S1〜S4を順次実行する。まず図2に図示されない準備工程として、上型14を上死点または上死点近傍まで上昇させたまま、樹脂素材Wを下型15に載置する(図1)。
【0034】
準備工程に続く工程S1(時刻0から時刻T2まで)では、モータSMおよびポンプPを停止したまま上型14を自由落下させ、あるいはブレーキを補助的に併用しつつ上型14を自由落下させることにより、上型14を樹脂素材Wに接触させ、樹脂素材Wを流動成形させる。図2に示すように工程S1では上型14の位置が急勾配で下降することから、上型14が高速の第1速度で移動することが理解される。工程S1では、ポンプPがOFFにされてモータSMに駆動されず、方向切換弁24が図1に示すようにOFFにされ、絞り弁33がフィードバック制御される。なお工程S1中、絞り弁33の開度を小さくすることにより、上型14の下降速度にブレーキを適宜かけることができる。
【0035】
図3は樹脂素材の断面を拡大して示す断面図である。樹脂素材Wは、プレス成形前において、熱可塑性樹脂W1を基材とし、強化繊維W2および気泡W3を含む。強化繊維W2はカーボンファイバーまたはグラスファイバーであり、冷えて固体化する熱可塑性樹脂W1よりも大きな引張強度を有する。
【0036】
樹脂素材Wの性状として、高速で接近する上型14によって押圧される間、油圧を要することなく流動変形する。かかる流動変形中、熱可塑性樹脂W1が流動化して気泡W3が樹脂素材Wの外部へ抜け出す。なお流動変形は、ピストン12とピストンロッド13と上型14の自重で足り、シリンダ11の油圧を要しない。気泡W3の大部分が抜け出した後、上型14およびピストンロッド13の重量で樹脂素材Wを押圧して変形させることは困難になる。そこで後述するようにシリンダ11の油圧により樹脂素材Wを押圧して高圧で変形させる。これを高圧変形という。
【0037】
工程S1に続く工程S2(時刻T2から時刻T5まで)では、シリンダ11の油圧により上型14をさらに下降させて、樹脂素材Wを高圧成形させる。上型14が下死点まで下降すると工程S2が完了する。図2に示すように工程S2では上型14の位置が緩勾配で下降し、次にゼロ勾配になることから、上型14が低速の第2速度で移動し、シリンダ11(図1)の下死点で停止することが理解される。工程S2では、ポンプPがONにされてモータSMに駆動され、方向切換弁24が図7に示すようにONにされ、絞り弁33が一定開度のONにされる。絞り弁33を完全に閉じる(OFF)場合と比較して、一定開度のONにすることにより、背圧室17の異常な圧力上昇を防止できる。
【0038】
工程S2に続く工程S3(時刻T5から時刻T6まで)では、上型14を低速あるいは中速で上昇させる。図2に示すように工程S3では上型14の位置が緩勾配で上昇する(第3速度)。工程S3では、ポンプPがONにされてモータSMに駆動され、方向切換弁24が図9に示すようにOFFにされ、絞り弁33がOFFにされる。
【0039】
工程S3に続く工程S4(時刻T6から時刻T7まで)では、上型14を高速で上昇させる。図2に示すように工程S4では上型14の位置が急勾配で上昇する(第4速度)。工程S4では、ポンプPがONにされてモータSMに駆動され、方向切換弁24が図10に示すようにOFFにされ、絞り弁33がOFFにされる。上型14が上死点まで上昇すると工程S4が終了する。工程S4終了後、ポンプP、方向切換弁24、絞り弁33、および開閉弁31をOFFにする。あるいは以下同様に、工程S1〜工程S4を繰り返す。
【0040】
上述した各弁のON・OFF切り換えは瞬時に実行される。またポンプPのON・OFF切り換えは、瞬時にON・OFF切り換え可能なモータSMに依る。
【0041】
次に各工程を詳細に説明する。
【0042】
時刻0で工程S1を開始する。工程S1で、ピストン12、ピストンロッド13、および上型14を自重により落下させる。この自由落下により上型14の下降速度は最も速くなる。具体的には図1に示すように方向切換弁24の第1ポートおよび第3ポートを接続するとともに第2ポートおよび第4ポートを接続し(OFF)、絞り弁33をフィードバック制御により開き、ポンプPおよびモータSMを停止し(OFF)、開閉弁31を開く(ON)。このとき図1に示すように作動油は、タンクN5から給排通路30と、方向切換弁24と、正圧通路25を順次流れ、正圧室16に供給される。また作動油は、タンクN3から給排通路28を流れ、正圧室16に供給される。これにより正圧室16には単位時間当たりに大量の作動油が供給されてピストン12の高速下降が実現する。一方で作動油は、背圧室17から背圧通路26と、絞り弁33と、排出通路29を流れ、ピストン12、ピストンロッド13、および上型14の重量によってタンクN4に排出される。シリンダ11の正圧室16および背圧室17は無圧(大気圧)か略無圧であり、圧力計M1,M2は0か略0を表示する。なお工程S1中、絞り弁33の開度を小さくして、排出通路29の流量を少なくしてもよく、これにより上型14の下降速度にブレーキをかけることができる。絞り弁33の開度調整は例えば、リニアセンサ18によって検出される上型14の位置に基づくフィードバック制御である。あるいは例えば、圧力計M2によって検出される背圧に基づくフィードバック制御である。
【0043】
図4は工程S1中、上型14が高速で落下しながら樹脂素材Wに接触する瞬間(時刻T1)を示す模式図である。流動成形は時刻T1から開始される。図5は工程S1中、流動成形の途中状態を示す模式図である。上型14は図4に続いて高速(第1速度)で落下しながら樹脂素材Wを押圧する。樹脂素材Wに接触する直前と対比して、上型14の下降速度は減速する。
【0044】
工程S1中、シリンダ11の圧力は0ないし略0である。
【0045】
流動成形がある程度進行すると、速度を伴う上型14の自重のみで樹脂素材Wを押圧しても高速で変形し難くなり、時刻T2で図5の流動成形が終了する。これにより工程S1が終了する。
【0046】
時刻T2で工程S1を終了するとともに工程S2を開始する。工程S2を開始するタイミングは、例えば下死点0から上型14までの距離が所定値に達したときである。かかる所定値として例えば、後述する上下方向位置Lb(図12)が挙げられる。あるいはこのタイミングは例えば、上型14の下降速度が所定値を下回るときである。
【0047】
次の工程S2で、シリンダ11の圧力を用いて上型14を低速(第2速度)で下降させ、樹脂素材Wの押圧を続行する。図6は工程S2中、樹脂素材Wを高圧成形する状態を示す模式図である。図7は、工程S2における作動油の流れを示す説明図である。工程S2の高圧成形において、方向切換弁24の第1ポートおよび第4ポートを接続するとともに第2ポートおよび第3ポートを接続し(ON)、絞り弁33を開き、開閉弁31を閉じ(OFF)、モータSMを駆動させてポンプPにより作動油をタンクN1からシリンダ11の正圧室16へ供給する。このとき図7に示すように作動油は、タンクN1からポンプ吸入通路22と、ポンプPと、ポンプ吐出通路23と、方向切換弁24と、正圧通路25を順次流れ、高い正圧によって正圧室16に供給される。
【0048】
また作動油は、背圧室17から、排出通路29を流れ、リリーフ弁35を経由して、方向切換弁24に至る。次に作動油は、方向切換弁24の第3ポートから第2ポートに流れ、給排通路30を経て、タンクN5に戻される。工程S2中、ピストン12は第1速度(図1)よりも低速の第2速度で下降し、上型14に油圧を付与する。
【0049】
工程S2中、シリンダ11の圧力は0(あるいは略0)から徐々に増加する。具体的には、時刻T2から時刻T3までの間に増加する。時刻T3で上型14は下死点に到達する。
【0050】
シリンダ11の圧力は時刻T3以降も増加し、続く時刻T4で成形荷重に達する。なお図示しない変形例として、上型14が下死点に到達すると同時に(時刻T3で)シリンダ11の正圧が成形荷重に達してもよい。
【0051】
時刻T4に続く時刻T5まで、上型14は下死点に保持されるとともにシリンダ11の正圧は最大値に保持される。
【0052】
図8は工程S2中、樹脂素材Wの高圧成形が終了した状態を示す模式図である。ピストン12が下死点まで下降し、所定時間(T5―T3)が経過すると、樹脂素材Wの高圧成形が終了し、プレス成形が完了する。そして樹脂素材Wから樹脂成形体が形成される。
【0053】
時刻T5で工程S2を終了するとともに工程S3を開始する。工程S2を終了するタイミングは、例えば、上型14が停止して所定時間が経過したときである。あるいはこのタイミングは例えば、下死点0から上型14までの距離が所定値に達したときである。かかる所定値は例えば0が挙げられる。
【0054】
次の工程S3で、シリンダ11の作用により上型14を低速あるいは中速で上昇させ、上型14を樹脂成形体から離間させる。図9は、工程S3における作動油の流れを示す説明図である。工程S3の上型14の低速上昇工程において、方向切換弁24の第1ポートおよび第3ポートを接続するとともに第2ポートおよび第4ポートを接続し(OFF)、絞り弁33を閉じ、開閉弁31を閉じ(OFF)、モータSMを駆動させてポンプPにより作動油をタンクN1からシリンダ11の背圧室17へ供給する。このとき図9に示すように作動油は、タンクN1からポンプ吸入通路22と、ポンプPと、ポンプ吐出通路23と、方向切換弁24と、背圧通路26を順次流れ、高い正圧によって背圧室17に供給される。
【0055】
また作動油は、正圧室16から、正圧通路25と、方向切換弁24と、給排通路30を順次流れ、タンクN5に戻される。工程S3中、ピストン12は低速または中速(第3速度)で上昇する。
【0056】
時刻T6で工程S3を終了するとともに工程S4を開始する。工程S3を終了するタイミングは、特に限定されないが、工程S3の開始後、速やかであることが好ましい。工程S4を速やかに開始すれば、上型14を上死点Luに早期に復帰させることができるからである。
【0057】
次の工程S4で、シリンダ11の作用により上型14を高速で上昇させる。図10は、工程S4における作動油の流れを示す説明図である。工程S4の上型14の高速上昇工程において、方向切換弁24の第1ポートおよび第3ポートを接続するとともに第2ポートおよび第4ポートを接続し(OFF)、絞り弁33を閉じ、モータSMを駆動させてポンプPにより作動油をタンクN1からシリンダ11の背圧室17へ供給する。このとき図9に示すように作動油は、タンクN1からポンプ吸入通路22と、ポンプPと、ポンプ吐出通路23と、方向切換弁24と、背圧通路26を順次流れ、高い正圧によって背圧室17に供給される。
【0058】
また工程S4では開閉弁31を開(ON)にして、作動油が正圧通路25から分岐して給排通路28を流れ、開閉弁31を経てタンクN3に戻される。工程S4中、ピストン12は高速(第4速度)で上昇し、上死点に復帰する。
【0059】
図11はプレス成形装置のストロークとクランク角度の関係を表す図および表である。図11における図横軸はピストン12(図1)および上型14(図1)の往復運動を360°で表す。図11における図縦軸は上型14(およびピストン12)の下死点0から上死点Luまでの位置を表す。
【0060】
工程S1で、上型14がクランク角度0°の上死点Luから下降し、上型14のクランク角度d1、上下方向位置Laで樹脂素材に接触する(図4)。クランク角度d1は140°以上150°以下の範囲に含まれる所定値である。工程S1中、クランク角度0°からクランク角度d1までの範囲を工程S11という。
【0061】
次に上型14は下降し続けて樹脂素材を流動成形し(図5)、上型14のクランク角度d2の上下方向位置Lbで流動成形が終了する(Lu>La>Lb>0)。クランク角度d2は160°以上170°以下の範囲に含まれる所定値であって、クランク角度d1よりも大きい。工程S1中、クランク角度d1からクランク角度d2までの範囲を工程S12という。
【0062】
次の工程S2で、上型14は下降し続けて樹脂素材を高圧成形し、クランク角度180°の下死点0で高圧成形が終了する。
【0063】
次の工程S3および工程S4で、上型14はクランク角度180°の下死点0から上昇へ転じ、クランク角度360°の上死点Luに復帰する。なお境界になるクランク角度d3は特に限定されない。変形例として、工程S3を省略し、工程S2の次に工程S4を連続して実行してもよい。
【0064】
図11に示す表は、工程S11、工程S12、工程S2、および工程S4それぞれの速度を単位SPM(シリンダ11の毎分当たりの往復回数)で表す。この表は、本実施形態の実施例1〜実施例4について表す。
【0065】
実施例1では、工程S11で上型14を10[SPM]の高速で下降させ、工程S12で上型14を0.5[SPM]の中速で下降させ、工程S2で上型14を0.2[SPM]の低速で下降させ、工程S3を省略し、工程S4で上型14を10[SPM]の高速で上昇させる。
【0066】
実施例2では、工程S11で上型14を10[SPM]の高速で下降させ、工程S12で上型14を3.9[SPM]の中速で下降させ、工程S2で上型14を0.2[SPM]の低速で下降させ、工程S3を省略し、工程S4で上型14を10[SPM]の高速で上昇させる。
【0067】
実施例3では、工程S11で上型14を10[SPM]の高速で下降させ、工程S12で上型14を6.2[SPM]の中速で下降させ、工程S2で上型14を0.2[SPM]の低速で下降させ、工程S3を省略し、工程S4で上型14を10[SPM]の高速で上昇させる。
【0068】
実施例4では、工程S11で上型14を10[SPM]の高速で下降させ、工程S12で上型14を9.2[SPM]の中速で下降させ、工程S2で上型14を0.2[SPM]の低速で下降させ、工程S3を省略し、工程S4で上型14を10[SPM]の高速で上昇させる。
【0069】
この他にも表示はしなかったが、工程S1〜工程S4の各工程では、上述した実施例1〜実施例4以外の速度で上型14を下降および上昇させてよい。また下降中の上型14の速度[SPM]を図11に示すように位置La(接触位置)で変化させる他、図示しない変形例として位置Laよりも上方の非接触位置で、上型14の下降速度[SPM]を変化させてもよいし、あるいは他の変形例として位置La(接触位置)を通過する前後で上型14の速度[SPM]は同一であってもよい。
【0070】
図12は、本発明の一実施形態になる成形体製造方法のストロークと下降速度の関係を表す図であり、上述した図11の表に示す実施例1〜実施例4に対応する。図12の横軸は、上型のスライド速度を表し、原点を0とする。図12の縦軸は、下死点0から上型までの距離を表し、図11における図縦軸の原点(下死点0)近傍を拡大したものである。
【0071】
図12を参照して、上型14(図1)は、10SPMで下降する工程S11で、下死点0に近づくほど徐々に減速する。次に上型14は、上下方向位置Laを通過する前後、換言すると工程S11を終了し工程S12を開始する前後、で断続的に減速する。次に上型14は、上下方向位置Laから上下方向位置Lbまで移動する際、換言すると工程S12の開始から終了まで、下死点0に近づくほど徐々に減速する。このように工程S1における上型14の第1速度は、幅を持った速度帯であると理解されたい。
【0072】
次に上型14は、上下方向位置Lbを通過する前後、換言すると工程S12を終了し工程S2を開始する前後、で断続的に減速する。次に上型14は、上下方向位置Lbから下死点0まで移動する際、換言すると工程S2の開始から終了まで、下死点0に近づくほど徐々に減速する。そして上型14は下死点0で停止する。このように工程S2における上型14の第2速度は、幅を持った速度帯であると理解されたい。
【0073】
図12に示すように本実施形態では、樹脂素材をプレス成形する間、上型14の下降速度が2度断続的に変化し、3段階で連続的に変化する。具体的には工程S11、工程S12、および工程S2の各段階で連続的に変化し、工程が変更する際に断続的に変化する。
【0074】
参考のため、低速で下降しながら樹脂素材をプレス成形する対比例の速度を図12に破線で示す。対比例では上型が樹脂素材に接触するよりも前に、上型の速度が1度のみ断続的に変化する。また対比例では上型が樹脂素材に接触する間、上型の速度が断続的に変化しない。
【0075】
図13上側は、対比例の成形体製造方法の上型位置、圧力、および時間の関係を示すタイムチャートであり、比較のため図2に示すタイムチャートを下側に示す。対比例では、まず時刻0でポンプP(図1)を停止(OFF)し、方向切換弁24を停止(OFF)し、絞り弁33を前述したようにフィードバック制御し、開閉弁を開き(ON)、上死点Luに位置する上型14の自由落下を開始する。
【0076】
続く時刻T11(上型14が樹脂素材Wに接触するよりも前)でポンプP(図7)を停止(OFF)し、方向切換弁24を切り換え(ON)、絞り弁33を閉じ(OFF)、開閉弁31を閉じる(OFF)。これにより上型を停止する。
【0077】
続く時刻T12(上型14が樹脂素材Wに接触するよりも前)でポンプP(図7)を作動(ON)させ、方向切換弁24を切り換え(ON)、絞り弁33を開いて(ON)開度一定とし、開閉弁31を閉じる(OFF)。上型14を再び下降させる。かかる下降速度は、時刻0から時刻T11までの落下速度よりも低速である。
【0078】
続く時刻T13で上型14が樹脂素材Wに接触し、樹脂素材Wの流動成形を開始する。続く時刻T14で樹脂素材Wの流動成形が終了し、時刻0から時刻T14まで0または略0だったシリンダ11の圧力が増加し始める。つまり時刻T14から樹脂素材Wの高圧成形を開始する。
【0079】
続く時刻T15で上型14が下死点0に到達し、シリンダ11の圧力が成形荷重に達する。時刻T15で、ポンプP(図1)を動作(ON)したまま、方向切換弁24を切り換えたまま(ON)、絞り弁33を開度一定にしたまま(ON)、開閉弁31を閉じたまま(OFF)にする。これにより、続く時刻T16まで上型14は下死点0に保持され、シリンダ11の圧力は成形荷重に保持される。
【0080】
時刻T16で、ポンプP(図1)を動作(ON)したまま、方向切換弁24を停止(OFF)し、絞り弁33を閉じ(OFF)、開閉弁31を閉じたまま(OFF)とし、樹脂素材Wの高圧成形を終了する。これにより、上型14は下死点0から低速で上昇を開始する。
【0081】
続く時刻T17で、ポンプP(図1)を動作(ON)したまま、方向切換弁24を停止したまま(OFF)、絞り弁33を閉じたまま(OFF)、開閉弁を開く(OFF)。これにより、上型14は高速で上昇し、続く時刻T18で上死点Luに到達する。
【0082】
時刻T18で、ポンプP(図1)を停止(OFF)し、方向切換弁24を停止(OFF)したまま、絞り弁33を閉じたまま(OFF)、開閉弁31を閉じる(OFF)。これにより、1サイクルのプレス成形が終了する。
【0083】
図13上側の対比例と、図13下側の本実施形態を比較すると、上型14が上死点Luから下降して樹脂素材Wに接触する時刻が、対比例で時刻T13であり、本実施形態で時刻T1であり、本実施形態の方が早いことが理解される。
【0084】
また樹脂素材Wの流動成形が終了して高圧成形を開始する時刻が、対比例で時刻T14であり、本実施形態で時刻T2であり、本実施形態の方が早いことが理解される。
【0085】
また上型14が下死点0に到達する時刻が、対比例で時刻T15であり、本実施形態で時刻T3であり、本実施形態の方が早いことが理解される。
【0086】
また樹脂素材Wの高圧成形を終了する時刻が、対比例で時刻T16であり、本実施形態で時刻T5であり、本実施形態の方が早いことが理解される。
【0087】
本実施形態になる樹脂成形体の製造方法によれば、液圧のシリンダ11によって下向きに加圧される上型14と、上型14と間隔を空けて対向する下型15の間に、繊維を含み加熱により流動性を有する樹脂素材Wを配置する準備工程と、上型14を自重による落下に基づく第1速度で下降させて樹脂素材Wに接触させ樹脂素材Wを第1速度で流動成形する工程S1と、流動成形する工程の終了後、シリンダ11を駆動して第1速度よりも遅い第2速度で樹脂素材Wを高圧成形する工程S4とを順次実行する。これにより上型14が樹脂素材Wに接触するより前に上型の下降速度を低速に切り替える対比例と比較して、迅速にプレス成形を完了することができる。したがって温度低下するよりも前に樹脂成形体を製造することができる。
【0088】
また本実施形態によれば、上型14を高速の第1速度で樹脂素材Wに衝突させることから、樹脂素材Wから気泡W3を抜き出すことができる。したがって樹脂成形体を緻密にすることができる。
【0089】
また本実施形態によれば、樹脂素材Wを流動成形する工程S1で、シリンダ11の背圧室17から排出される作動油の流量を絞り弁33で絞ることにより上型14の第1速度を減速させることができる。
【0090】
また本実施形態によれば、下型15から上型14までの距離に基づき、高圧成形する工程S2の開始時刻T2を設定する。具体的には上型14の位置を検出するリニアセンサ18を備え、リニアセンサ18の検出結果に基づき高圧成形する工程の開始時刻T2を設定する。リニアセンサ18の検出結果により、下型15から上型14までの距離を求めることができるし、上型14の下降速度を求めることができる。図示しないコントローラは、上型14の位置および/または下降速度に基づいて開始時刻T2を設定する。
【0091】
また本実施形態によれば、樹脂素材Wを流動成形する工程S2で、上型14が樹脂素材Wに接触後の第1速度は、図12に示す予め設定された複数の下降速度の群(0.5[SPM]、3.9[SPM]、6.2[SPM]、9.2[SPM])から選択される。これにより樹脂成形体の上下方向厚みに応じて、適切なプレス成形時間を確保することができる。
【0092】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。例えば上述した1の実施形態から一部の構成を抜き出し、上述した他の実施形態から他の一部の構成を抜き出し、これら抜き出された構成を組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明になる方法は、コンポジット成形の流動を伴う成形、例えばLFT−D、SMC、BMC、プリプレグ成形等のプレス加工において有利に利用される。
【符号の説明】
【0094】
10 プレス成形装置、 11 シリンダ、 12 ピストン、
13 ピストンロッド、 14 上型、 15 下型、
16 正圧室、 17 背圧室、 18 リニアセンサ、
21 油圧回路、 22 ポンプ吸入通路、 23 ポンプ吐出通路、
24 方向切換弁、 25 正圧通路、 26 背圧通路、
27,29 排出通路、 28,30 給排通路、
31 開閉弁、 32 チェック弁、 33 絞り弁(電磁比例弁)、
34,35 リリーフ弁、 M1,M2,M3 圧力計、
N1,N2,N3,N4,N5 タンク、 P ポンプ、
SM モータ、 T2 開始時刻、 W 樹脂素材、
W1 熱可塑性樹脂、 W2 強化繊維、 W3 気泡。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13