(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。以下の説明中の前後、左右、及び上下の方向は、図中の矢印の方向を基準とする。各矢印の方向は、
図1乃至
図9、
図12及び
図13において、異なる図面同士で互いに整合している。各矢印の方向は、
図10及び
図11同士で互いに整合している。図面によっては、簡便な図示を目的として、回路基板CB1及びCB2の図示を省略する。
【0023】
図1は、一実施形態に係るコネクタ10と接続対象物70とが接続されている状態を上面視により示した外観斜視図である。
図2は、一実施形態に係るコネクタ10と接続対象物70とが分離している状態を上面視により示した外観斜視図である。
【0024】
以下の説明では、一実施形態に係るコネクタ10はプラグコネクタであり、接続対象物70はリセプタクルコネクタであるとして説明する。より具体的には、コネクタ10と接続対象物70とが接続される際に、コンタクト60が弾性変形しないコネクタ10をプラグコネクタとし、コンタクト100が弾性変形する接続対象物70をリセプタクルコネクタとして説明する。コネクタ10及び接続対象物70の種類は、これに限定されない。コネクタ10がリセプタクルコネクタの役割を果たし、接続対象物70がプラグコネクタの役割を果たしてもよい。
【0025】
以下の説明では、コネクタ10及び接続対象物70は、回路基板CB1及びCB2にそれぞれ実装され、一例としてこれらに対して互いに垂直方向に接続されるとして説明する。より具体的には、コネクタ10及び接続対象物70は、一例として上下方向に沿って接続される。コネクタ10及び接続対象物70の接続方法は、これに限定されない。コネクタ10及び接続対象物70は、回路基板CB1及びCB2に対して、それぞれ平行方向に接続されてもよいし、一方が垂直方向、他方が平行方向による組み合わせで接続されてもよい。
【0026】
回路基板CB1及びCB2は、リジッド基板であってよいし、又はそれ以外の任意の回路基板であってもよい。例えば、回路基板CB1又はCB2は、フレキシブルプリント回路基板(FPC)であってもよい。
【0027】
以下の説明中で使用する「嵌合方向」は、一例として上下方向を含む。「嵌合方向と略直交する方向」は、一例として前後方向と前後方向に近似する方向とを含む。「嵌合側」は、一例として上側を含む。「嵌合側と反対側」は、一例として下側を含む。「コンタクト60の配列方向」は、一例として左右方向を含む。「コンタクト60の配列方向と略直交する方向」は、一例として前後方向と前後方向に近似する方向とを含む。「突出部37の突出方向」は、一例として前後方向を含む。
【0028】
一実施形態に係るコネクタ10は、フローティング構造を有している。コネクタ10は、接続されている接続対象物70の回路基板CB1に対する相対的な移動を許容する。すなわち、接続対象物70は、コネクタ10と接続されている状態であっても、回路基板CB1に対して所定の範囲内で動くことができる。
【0029】
図3は、一実施形態に係るコネクタ10を上面視により示した外観斜視図である。
図4は、
図3のコネクタ10の上面視による分解斜視図である。
図5は、一対のコンタクト60を示した正面図である。
図6は、
図3のVI−VI矢線に沿った断面斜視図である。
図7は、
図3のVI−VI矢線に沿った断面図である。
【0030】
図3乃至
図7を参照しながら、コンタクト60が弾性変形しない状態における一実施形態に係るコネクタ10の構成について主に説明する。
【0031】
図4に示すとおり、コネクタ10は、大きな構成要素として、第1インシュレータ20と、第2インシュレータ30と、金具40と、調整部材50a及び50bと、コンタクト60と、を有する。コネクタ10は、一例として以下の方法で組み立てられる。第1インシュレータ20に対して下方から金具40及び調整部材50aを圧入する。第1インシュレータ20に対して下方からその内側に第2インシュレータ30を配置する。第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30に対して下方からコンタクト60を圧入する。第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30に圧入されたコンタクト60に対して下方から調整部材50bを挿入する。調整部材50bの取付方法は、任意の方法であってよい。例えば、調整部材50bが弾性を有し、クリップのように一対のコンタクト60を挟み込んだ状態で取り付けられてもよい。
【0032】
図4、
図6、及び
図7に示すとおり、第1インシュレータ20は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂料を射出成形した、角筒状の部材である。第1インシュレータ20は、中空であり、上面及び下面に開口21a及び21bをそれぞれ有する。第1インシュレータ20は、4つの側面を含み、内部の空間を囲繞する外周壁22を有する。第1インシュレータ20は、外周壁22の左右両端部それぞれの下面から上方に向けて第1インシュレータ20の内部に凹設されている第1取付溝23aを有する。第1取付溝23aには、金具40が取り付けられる。第1インシュレータ20は、上面裏側の前後両縁部それぞれに上方に向けて第1インシュレータ20の内部に凹設されている第2取付溝23bを有する。第2取付溝23bには、調整部材50aが取り付けられる。
【0033】
第1インシュレータ20は、外周壁22の前面及び後面それぞれの下縁部から下面及び内面にわたって形成されている複数のコンタクト取付溝24を有する。複数のコンタクト取付溝24は、左右方向に並んで凹設されている。コンタクト取付溝24は、第1インシュレータ20の内面において、上下方向に延在する。複数のコンタクト取付溝24には、複数のコンタクト60がそれぞれ取り付けられる。
【0034】
第1インシュレータ20は、内部において外周壁22の4つの角部から前後左右の内側方向にそれぞれ突出する4つの抜止部25を有する。抜止部25は、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の上方への抜けを抑制する。
【0035】
第2インシュレータ30は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂料を射出成形した、左右方向に延在する部材である。第2インシュレータ30は、左右方向からの側面視において略凸字状に形成されている。第2インシュレータ30は、底面を含む下部を構成する底部31を有する。第2インシュレータ30は、4つの側面を含み、内部の空間を囲繞する外周壁32を有する。
【0036】
第2インシュレータ30は、底部31から上方に突出し、接続対象物70と嵌合する嵌合凸部33を有する。第2インシュレータ30は、上面から凹設されている嵌合凹部34を有する。外周壁32は、嵌合凸部33及び嵌合凹部34を前後左右方向から囲繞する。嵌合凸部33は、嵌合凹部34の内部に配置されている。第2インシュレータ30は、嵌合凹部34の上縁部において、嵌合凹部34を囲繞するように形成されている誘い込み部35を有する。誘い込み部35は、嵌合凹部34の上縁部において下方に向けて斜め内側に傾斜する傾斜面を含む。
【0037】
第2インシュレータ30は、底部31の底面から、その内部及び嵌合凸部33の前後両面それぞれにわたって形成されている複数のコンタクト取付溝36を有する。複数のコンタクト取付溝36は、左右方向に並んで凹設されている。コンタクト取付溝36は、底部31の底面から嵌合凸部33の上端まで上下方向に延在する。複数のコンタクト取付溝36には、複数のコンタクト60がそれぞれ取り付けられる。
【0038】
第2インシュレータ30は、外周壁32の前後の外面32aそれぞれから外側に突出する突出部37を有する。より具体的には、突出部37は、後述する調整部材50aの調整部51aと対向する外周壁32の外面32aから調整部51aに向けて突出する。突出部37は、複数のコンタクト60が配列されている領域を含むように、コンタクト60の配列方向に延在する。第2インシュレータ30は、突出部37が形成されている位置において、嵌合側よりも突出部37の突出方向に幅広である。突出部37は、嵌合側と反対側に向けて突出部37の突出方向に傾斜する傾斜面を含む。より具体的には、突出部37は、外周壁32の前後の外面32aの上部から下縁部まで下方に向けて外側に傾斜する傾斜面を含む。
【0039】
第2インシュレータ30は、外周壁32の前後の外面32aそれぞれの左右両端部から外側に突出する2つの被抜止部38を有する。被抜止部38は、第2インシュレータ30が上方へ過剰に移動した場合に、第1インシュレータ20の抜止部25と接触する。
【0040】
図4に示すとおり、金具40は、任意の金属材料の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図に示す形状に成形加工したものである。金具40の全体は、前後方向からの正面視において、略J字状に形成されている。金具40は第1取付溝23aに圧入され、第1インシュレータ20の左右両端部それぞれに配置されている。
【0041】
金具40は、その本体を構成する基部41と、基部41の前後両縁部それぞれに形成されている係止部42と、を有する。係止部42が第1インシュレータ20の第1取付溝23aに係止することで、金具40が第1インシュレータ20に対して固定される。金具40は、基部41から略U字状に外側に延出する実装部43を有する。
【0042】
図4、
図6、及び
図7に示すとおり、調整部材50aは、任意の金属材料の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて成形加工した後、その一部を電気絶縁性を有する部材で覆ったものである。すなわち、調整部材50aは、電気伝導性を有する部材を含む。一対の調整部材50aは第2取付溝23bに圧入され、それぞれ前後両側で第1インシュレータ20と第2インシュレータ30との間に配置されている。より具体的には、一対の調整部材50aは、一対のコンタクト60と第2インシュレータ30との間にそれぞれ配置されている。調整部材50aは、複数のコンタクト60が配列されている領域を含むように、コンタクト60の配列方向に延在する。
【0043】
調整部材50aは、第1インシュレータ20と第2インシュレータ30との間でコンタクト60と対向する調整部51aを有する。調整部51aは、金属部材を含み表層に電気絶縁性を有している。コンタクト60と対向する調整部51aの面は平面である。調整部51aは、複数のコンタクト60が配列されている領域を含むように、コンタクト60の配列方向に延在する。
【0044】
調整部材50aは、その上端部において、第1インシュレータ20に係止する係止部52aを有する。係止部52aが第1インシュレータ20の第2取付溝23bに係止することで、調整部材50aが第1インシュレータ20に取り付けられる。調整部材50aは、係止部52aと調整部51aとを連結する接続部53aを有する。接続部53aは、コネクタ10と接続対象物70との嵌合方向において、コンタクト60よりも嵌合側に位置する。より具体的には、接続部53aは、嵌合方向において、第1インシュレータ20とコンタクト60との間に位置する。
【0045】
調整部材50bは、任意の金属材料の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて成形加工した後、その一部を電気絶縁性を有する部材で覆ったものである。すなわち、調整部材50bは、電気伝導性を有する部材を含む。調整部材50bは、左右方向の側面視において、略コ字状に形成されている。調整部材50bは、第1インシュレータ20の内側に配置されている。調整部材50bの一部は、コンタクト60に対して下方から挿入され、前後両側で第1インシュレータ20と第2インシュレータ30との間に配置される。このとき、調整部材50bの他の部分は、第2インシュレータ30の下方に配置される。調整部材50bは、複数のコンタクト60が配列されている領域を含むように、コンタクト60の配列方向に延在する。
【0046】
調整部材50bは、コンタクト60と対向する調整部51bを有する。より具体的には、調整部51bは、第1インシュレータ20と第2インシュレータ30との間でコンタクト60と対向する調整部51b1と、第2インシュレータ30の下方でコンタクト60と対向する調整部51b2と、を含む。調整部51bは、金属部材を含み表層に電気絶縁性を有している。コンタクト60と対向する調整部51bの面は平面である。調整部51bは、複数のコンタクト60が配列されている領域を含むように、コンタクト60の配列方向に延在する。調整部材50bは、調整部51b1と調整部51b2とを互いに連結する接続部53bを有する。
【0047】
図4乃至
図7に示すとおり、コンタクト60は、例えば、リン青銅、ベリリウム銅、若しくはチタン銅を含むばね弾性を備えた銅合金、又はコルソン系銅合金の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図に示す形状に成形加工したものである。コンタクト60は、弾性変形に伴う形状変化が大きくなるように、弾性係数の小さい金属材料によって形成されている。コンタクト60の表面には、ニッケルめっきで下地を形成した後に、金又は錫等によるめっきが施されている。
【0048】
図4に示すとおり、コンタクト60は、左右方向に複数配列されている。
図6及び
図7に示すとおり、コンタクト60は、第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30に取り付けられている。同一の左右位置に配列される一対のコンタクト60は、コンタクト60の配列方向と略直交する方向に沿って対称的に形成及び配置されている。より具体的には、一対のコンタクト60は、その間の中心を通る上下軸に対して互いに略線対称となるように形成及び配置されている。
【0049】
コンタクト60は、上下方向に延在する第1係止部61を有する。第1係止部61は、第1インシュレータ20に対して係止する。このとき、第1係止部61は、第1インシュレータ20のコンタクト取付溝24に収容されている。コンタクト60は、第1係止部61の下端部から略L字状に外方に延出する実装部62を有する。
【0050】
コンタクト60は、第1係止部61の上端部から内側に屈曲して斜め上方に延出し、再度屈曲して上方に延在する、弾性変形可能な第1弾性部63aを有する。コンタクト60は、第1弾性部63aと連続して形成され、上方に直線的に延在する第1連結部64を有する。コンタクト60は、第1連結部64の上端部から略逆U字状に屈曲しながら内側に延出する第2弾性部63bを有する。第2弾性部63bは、弾性変形可能である。
【0051】
コンタクト60は、第2弾性部63bと連続して形成され、下方に延在する第2連結部65を有する。第2連結部65は、第2インシュレータ30の外周壁32の前後方向の外面32aと対向する。第2連結部65は、第1インシュレータ20と第2インシュレータ30とを連結する。
図4にも示すとおり、第2連結部65は、第1弾性部63a、第2弾性部63b、及び後述する第3弾性部63cよりも左右方向に幅広である。
【0052】
コンタクト60は、第2連結部65の下端部から略L字状に屈曲しながら内側に延出する第3弾性部63cを有する。第3弾性部63cは、弾性変形可能である。コンタクト60は、第3弾性部63cからコネクタ10の内側に向けて延出する基部66を有する。
【0053】
コンタクト60は、基部66の内側の端部から略L字状に延出する第2係止部67を有する。第2係止部67は、基部66から前後方向内側に直線的に延出した後、略直角に屈曲し、上下方向に沿って嵌合側へと直線的に延出する。第2係止部67は、第2インシュレータ30に対して係止する。このとき、第2係止部67の略全体は、第2インシュレータ30のコンタクト取付溝36に収容されている。コンタクト60は、第2係止部67の前後方向の外面によって形成され、嵌合の際に接続対象物70のコンタクト100と接触する接触部68を有する。接触部68は、第2インシュレータ30のコンタクト取付溝36から前後方向外側に向けて露出する。接触部68は、第2連結部65と前後方向に対向する。これにより、コンタクト60が低背化する。結果、コネクタ10が低背化する。
【0054】
図4及び
図6に示すとおり、実装部62、第1弾性部63a、第2弾性部63b、第3弾性部63c、及び接触部68は、コンタクト60の他の部分よりも左右方向に幅狭に形成されている。これにより、第1弾性部63a、第2弾性部63b、及び第3弾性部63cの弾性係数が小さくなり、一定の力が加わった場合により大きな弾性変形量が得られる。逆に、第1係止部61の一部、第1連結部64、第2連結部65、基部66、及び第2係止部67の一部は、コンタクト60の他の部分よりも左右方向に幅広に形成されている。これにより、第1係止部61及び第2係止部67が、第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30に対してそれぞれ係止しやすくなる。第1連結部64、第2連結部65、及び基部66における特性インピーダンスが低下し、コンタクト60における伝送特性が向上する。
【0055】
図7に示すとおり、第1インシュレータ20と第2インシュレータ30との間で、調整部材50aの調整部51aと調整部材50bの調整部51b1とは、嵌合方向と略直交する方向において、両側からコンタクト60と対向する。より具体的には、調整部51a及び調整部51b1は、前後方向において内側及び外側からコンタクト60の第2連結部65とそれぞれ対向する。すなわち、コンタクト60の第2連結部65は、前後方向において、調整部51aと調整部51b1との間に位置する。調整部51a及び調整部51b1それぞれと第2連結部65とは、互いに近接又は接触する。調整部51a及び調整部51b1それぞれと第2連結部65との間隔は、上下方向にわたって略同一である。すなわち、調整部51a及び調整部51b1それぞれと第2連結部65とは略平行である。
【0056】
第2インシュレータ30の下方で、調整部材50bの調整部51b2は、下方からコンタクト60の基部66と対向する。すなわち、コンタクト60の基部66は、上下方向において、第2インシュレータ30の底部31と調整部51b2との間に位置する。第2インシュレータ30の底部31及び調整部51b2それぞれと基部66とは、互いに近接又は接触する。第2インシュレータ30の底部31及び調整部51b2それぞれと基部66との間隔は、前後方向にわたって略同一である。すなわち、第2インシュレータ30の底部31及び調整部51b2それぞれと基部66とは略平行である。
【0057】
以上のような構造のコネクタ10では、回路基板CB1の実装面に形成された回路パターンに対して、コンタクト60の実装部62がはんだ付けされる。当該実装面に形成された接地パターン等に対して、金具40の実装部43がはんだ付けされる。以上により、コネクタ10は、回路基板CB1に対して実装される。回路基板CB1の実装面には、例えば、CPU、コントローラ、及びメモリ等を含むコネクタ10とは別の電子部品が実装される。
【0058】
図8は、第2インシュレータ30の移動の第1例を示した
図7に対応する断面図である。
図9は、第2インシュレータ30の移動の第2例を示した
図7に対応する断面図である。
【0059】
図8及び
図9を参照しながら、一対のコンタクト60が弾性変形するときの各構成部の動作について主に説明する。以下では説明の簡便のために、前側に配置されているコンタクト60をコンタクト60aとし、後側に配置されているコンタクト60をコンタクト60bとして説明する。
【0060】
図8では、一例として、第2インシュレータ30が何らかの外的要因によって前方に移動した場合を想定する。
【0061】
第2インシュレータ30が前方に移動すると、前側の調整部材50aの調整部51a、コンタクト60aの第2連結部65、及び調整部材50bの前側の調整部51b1が第2インシュレータ30の突出部37によって前方に押される。このとき、調整部材50aの接続部53aが弾性変形して、調整部51aが上方から下方に向けて外側に傾斜する。同様に、コンタクト60aの各弾性部が弾性変形して、第2連結部65が上方から下方に向けて外側に傾斜する。同様に、調整部材50bの接続部53bが弾性変形して、調整部51b1が上方から下方に向けて外側に傾斜する。
【0062】
第2インシュレータ30が前方に移動すると、コンタクト60bの第2連結部65が前方に引っ張られる。これに伴って、後側の調整部材50aの調整部51aがコンタクト60bの第2連結部65によって前方に押される。調整部材50bは、クリップのようにコネクタ10に取り付けられているため、接続部53bによって常にコネクタ10の内側に向かって弾性変形しようとする。そのため、コンタクト60bが前方に引っ張られた際、コネクタ10の内側へ弾性力を与える接続部53bによって、調整部51b1がコンタクト60bに追従して前方に動く。このとき、調整部材50aの接続部53aが弾性変形して、調整部51aが上方から下方に向けて内側に傾斜する。同様に、コンタクト60bの各弾性部が弾性変形して、第2連結部65が上方から下方に向けて内側に傾斜する。同様に、調整部材50bの接続部53bが弾性変形して、調整部51b1が上方から下方に向けて内側に傾斜する。
【0063】
図9では、一例として、第2インシュレータ30が何らかの外的要因によって後方に移動した場合を想定する。
【0064】
第2インシュレータ30が後方に移動すると、後側の調整部材50aの調整部51a、コンタクト60bの第2連結部65、及び調整部材50bの後側の調整部51b1が第2インシュレータ30の突出部37によって後方に押される。このとき、調整部材50aの接続部53aが弾性変形して、調整部51aが上方から下方に向けて外側に傾斜する。同様に、コンタクト60bの各弾性部が弾性変形して、第2連結部65が上方から下方に向けて外側に傾斜する。同様に、調整部材50bの接続部53bが弾性変形して、調整部51b1が上方から下方に向けて外側に傾斜する。
【0065】
第2インシュレータ30が後方に移動すると、コンタクト60aの第2連結部65が後方に引っ張られる。これに伴って、前側の調整部材50aの調整部51aがコンタクト60aの第2連結部65によって後方に押される。調整部材50bは、クリップのようにコネクタ10に取り付けられているため、接続部53bによって常にコネクタ10の内側に向かって弾性変形しようとする。そのため、コンタクト60aが後方に引っ張られた際、コネクタ10の内側へ弾性力を与える接続部53bによって、調整部51b1がコンタクト60aに追従して後方に動く。このとき、調整部材50aの接続部53aが弾性変形して、調整部51aが上方から下方に向けて内側に傾斜する。同様に、コンタクト60aの各弾性部が弾性変形して、第2連結部65が上方から下方に向けて内側に傾斜する。同様に、調整部材50bの接続部53bが弾性変形して、調整部51b1が上方から下方に向けて内側に傾斜する。
【0066】
第2インシュレータ30が前方及び後方のいずれかに移動した場合であっても、調整部51a及び調整部51b1それぞれとコンタクト60の第2連結部65とは略平行である。調整部51a、調整部51b1、及び第2連結部65の相対位置は、第2インシュレータ30の移動前後において略同一である。同様に、第2インシュレータ30が前方及び後方のいずれかに移動した場合であっても、第2インシュレータ30の底部31及び調整部材50bの調整部51b2それぞれとコンタクト60の基部66とは略平行である。底部31、調整部51b2、及び基部66の相対位置は、第2インシュレータ30の移動前後において略同一である。
【0067】
図10は、
図3のコネクタ10と接続される接続対象物70を上面視により示した外観斜視図である。
図11は、
図10の接続対象物70の上面視による分解斜視図である。
【0068】
図10及び
図11を参照しながら、一実施形態に係るコネクタ10と接続される接続対象物70の構成について主に説明する。
【0069】
図11に示すとおり、接続対象物70は、大きな構成要素として、インシュレータ80と、金具90と、コンタクト100と、を有する。接続対象物70は、一例として、インシュレータ80に対して下方から金具90及びコンタクト100を圧入することで組み立てられる。
【0070】
インシュレータ80は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂料を射出成形した、略四角柱状の部材である。インシュレータ80は、上面に形成されている嵌合凹部81を有する。インシュレータ80は、
図2にも示すとおり、底面の左右両端部で上下方向に沿ってインシュレータ80の内部に凹設されている金具取付溝82を有する。金具取付溝82には、金具90が取り付けられる。
【0071】
インシュレータ80は、底部の前側、その内部、及び嵌合凹部81の前面にわたって連続的に凹設されている複数のコンタクト取付溝83を有する。インシュレータ80は、底部の後側、その内部、及び嵌合凹部81の後面にわたって連続的に凹設されている複数のコンタクト取付溝83を有する。複数のコンタクト取付溝83は、左右方向に並んで凹設されている。コンタクト取付溝83は、嵌合凹部81の前後両内面において上下方向に沿って延設されている。複数のコンタクト取付溝83には、複数のコンタクト100がそれぞれ取り付けられる。
【0072】
金具90は、任意の金属材料の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図に示す形状に成形加工したものである。金具90は、前後方向からの正面視において、略L字状に形成されている。金具90は金具取付溝82に圧入され、インシュレータ80の左右両端部それぞれに配置されている。
【0073】
金具90は、その本体を構成する基部91と、基部91の前後両縁部それぞれに形成されている係止部92と、を有する。係止部92がインシュレータ80の金具取付溝82に係止することで、金具90がインシュレータ80に対して固定される。金具90は、基部91から略L字状に外側に延出する実装部93を有する。
【0074】
コンタクト100は、例えば、リン青銅、ベリリウム銅、若しくはチタン銅を含むばね弾性を備えた銅合金、又はコルソン系銅合金の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図に示す形状に成形加工したものである。コンタクト100の表面には、ニッケルめっきで下地を形成した後に、金又は錫等によるめっきが施されている。
【0075】
コンタクト100は、左右方向に沿って複数配列されている。コンタクト100は、他の部分よりも左右方向に幅広に形成されている係止部101を有する。係止部101は、インシュレータ80のコンタクト取付溝83に対して係止する。コンタクト100は、係止部101の下端部から外方に向けて略L字状に延出する実装部102を有する。コンタクト100は、係止部101の上端部から上方に向けて略く字状に延出する弾性接触部103を有する。弾性接触部103の屈曲部は、嵌合の際にコネクタ10のコンタクト60の接触部68と接触する。弾性接触部103は、前後方向に沿って弾性変形可能である。
【0076】
以上のような構造の接続対象物70では、回路基板CB2の実装面に形成された回路パターンに対して、コンタクト100の実装部102がはんだ付けされる。当該実装面に形成された接地パターン等に対して、金具90の実装部93がはんだ付けされる。以上により、接続対象物70は、回路基板CB2に対して実装される。回路基板CB2の実装面には、例えば、カメラモジュール及びセンサ等を含む接続対象物70とは別の電子部品が実装される。
【0077】
図12は、
図1のXII−XII矢線に沿った断面図である。
【0078】
図12を主に参照しながら、コネクタ10に対して接続対象物70を接続するときの、フローティング構造を有するコネクタ10の動作について主に説明する。
【0079】
コネクタ10のコンタクト60は、第1インシュレータ20の内部で、第2インシュレータ30が第1インシュレータ20と離間し、かつ、浮いた状態で、第2インシュレータ30を支持している。このとき、第2インシュレータ30は、第1インシュレータ20の外周壁22によって囲繞される。
【0080】
コンタクト60の実装部62が回路基板CB1に対してはんだ付けされることで、第1インシュレータ20は、回路基板CB1に対して固定される。第2インシュレータ30は、コンタクト60の第1弾性部63a、第2弾性部63b、及び第3弾性部63cが弾性変形することで、回路基板CB1に固定された第1インシュレータ20に対して相対的に移動可能となる。
【0081】
このとき、第1インシュレータ20の外周壁22の左右方向の内面は、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の左右方向への過剰な移動を規制する。第2インシュレータ30がコンタクト60の弾性変形に伴い設計値を超えて大きく左右方向に移動すると、第2インシュレータ30の外周壁32の左右方向の外面が対向する第1インシュレータ20の外周壁22の内面と接触する。これにより、第2インシュレータ30は、それ以上左右方向の外側に移動しない。
【0082】
同様に、第2インシュレータ30の被抜止部38と対向する第1インシュレータ20の外周壁22の内面、及び第1インシュレータ20の開口21aの周縁部の少なくとも一方は、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の前後方向への過剰な移動を規制する。第2インシュレータ30がコンタクト60の弾性変形に伴い設計値を超えて大きく前後方向に移動すると、第2インシュレータ30の被抜止部38及び外周壁32の少なくとも一方が、上述した第1インシュレータ20の外周壁22の内面及び開口21aの周縁部の少なくとも一方とそれぞれ接触する。例えば、
図8及び
図9にも示すとおり、第2インシュレータ30が前方及び後方にそれぞれ大きく移動した場合、第2インシュレータ30の外周壁32が、第1インシュレータ20の開口21aの周縁部と接触する。以上により、第2インシュレータ30は、それ以上前後方向の外側に移動しない。
【0083】
図2にも示すとおり、このようなフローティング構造を有するコネクタ10に対して接続対象物70の上下方向の向きを逆にした状態で、コネクタ10及び接続対象物70の前後位置及び左右位置を略一致させながら、互いを上下方向に対向させる。その後、接続対象物70を下方に移動させる。このとき、互いの位置が例えば前後左右方向に多少ずれていても、コネクタ10の誘い込み部35と接続対象物70とが接触する。その結果、コネクタ10のフローティング構造により第2インシュレータ30が第1インシュレータ20に対して相対的に移動する。これにより、接続対象物70が第2インシュレータ30の嵌合凹部34に誘い込まれる。
【0084】
接続対象物70を下方にさらに移動させると、コネクタ10の嵌合凸部33と接続対象物70の嵌合凹部81とが嵌合する。コネクタ10の嵌合凹部34と接続対象物70のインシュレータ80とが嵌合する。この状態で、コンタクト60の接触部68とコンタクト100の弾性接触部103とが互いに接触する。このとき、コンタクト100の弾性接触部103は、コンタクト取付溝83の内部で外側に向けて若干弾性変形する。
【0085】
以上により、コネクタ10と接続対象物70とは、完全に接続される。このとき、コンタクト60及びコンタクト100を介して、回路基板CB1と回路基板CB2とが電気的に接続される。
【0086】
この状態で、コンタクト100の一対の弾性接触部103は、コネクタ10の一対のコンタクト60を前後方向に沿った内側への弾性力により前後両側から挟持する。これにより生じるコンタクト60への押圧力の反作用により、接続対象物70をコネクタ10から抜去する場合、第2インシュレータ30は、コンタクト60を介して上方への力を受ける。これにより、仮に第2インシュレータ30が上方向に移動したとしても、第1インシュレータ20の抜止部25が、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の上方への抜けを抑制する。第1インシュレータ20の抜止部25は、下面視において第2インシュレータ30の被抜止部38と重畳している。したがって、第2インシュレータ30が上方に移動しようとすると、外周壁32の外面32aから外側に突出する被抜止部38が抜止部25と接触する。これにより、第2インシュレータ30は、それ以上上方に移動しない。
【0087】
以上のような一実施形態に係るコネクタ10によれば、フローティング構造を有し、かつ低背化された場合であっても、信号伝送における伝送特性が向上する。調整部材50a及び50bが、コンタクト60と対向する調整部51a及び51bをそれぞれ有することで、各調整部がコンタクト60の対応する部分に近接又は接触する。これにより、各調整部の近傍においてコンタクト60の特性インピーダンスが減少する。より具体的には、各調整部に含まれる電気伝導性を有する部材を、その表層の電気絶縁性部材を挟んでコンタクト60に近接させることで、これらの間でコンデンサと同様の効果を得ることができる。静電容量をCとすると、このときの特性インピーダンスZは、静電容量Cに依存する。例えば、特性インピーダンスZは、静電容量Cの平方根と反比例する、又は静電容量Cと反比例する。したがって、コンデンサの間隔を狭めて静電容量Cを大きくすることで、特性インピーダンスが減少する。このように、特性インピーダンスの値が理想値に近付くように調整することで、信号伝送における伝送特性が向上する。
【0088】
調整部51a及び51b1が前後方向において内側及び外側からコンタクト60の第2連結部65とそれぞれ対向することで、第2連結部65の両側でコンデンサと同様の効果が得られる。したがって、コンタクト60の特性インピーダンスがさらに減少し、信号伝送における伝送特性がさらに向上する。
【0089】
調整部51a及び51bそれぞれがコンタクト60の配列方向に延在することで、左右方向に配列されている複数のコンタクト60全体にわたって各調整部が近接又は接触する。したがって、それぞれのコンタクト60の特性インピーダンスが低下する。結果として、それぞれのコンタクト60の信号伝送における伝送特性がさらに向上する。加えて、各コンタクト60に対して各調整部を個別に形成する必要がなく、調整部材50a及び50bの生産性が向上する。結果として、コネクタ10の生産性が向上する。
【0090】
調整部51a及び51bそれぞれがコンタクト60の配列方向に延在することで、各調整部に含まれる電気伝導性を有する部材が電磁ノイズに対する遮蔽部材の役割も果たす。したがって、大容量かつ高速の信号伝送においても伝送特性が向上する。より具体的には、コンタクト60において各調整部が対向している部分の伝送信号に関するノイズの影響が低減する。例えば、コネクタ10から外部に流出する磁気等のノイズを各調整部が抑制することで、コンタクト60によって伝送される信号が及ぼす、コネクタ10周辺に搭載されている電子部品への電気的な影響が低減する。
【0091】
調整部51a及び51bそれぞれが金属部材を含み表層に電気絶縁性を有していることで、金属部材とコンタクト60とによるコンデンサと同様の効果を奏しつつ、金属部材とコンタクト60との電気的な絶縁も確保できる。例えば、第2インシュレータ30が移動する際、各調整部とコンタクト60の対応する部分とは接触しやすくなる。このような場合であっても、金属部材とコンタクト60との電気的な絶縁が確保され、短絡等の電気的に引き起こされる不具合が抑制される。したがって、コネクタ10と接続対象物70とが接続されている状態であっても、接続信頼性が向上する。
【0092】
コンタクト60と対向する調整部51a及び51bそれぞれの面が平面であることで、各調整部とコンタクト60の対応する部分との接触による各構成部の変形及び破損が抑制される。例えば、第2インシュレータ30が移動する際、各調整部とコンタクト60の対応する部分とは接触しやすくなる。このような場合であっても、各調整部とコンタクト60の対応する部分との接触に起因する力学的な不具合が抑制される。より具体的には、第2インシュレータ30が移動した際に、コンタクト60と各調整部とが接触することによるコンタクト60の変形が防止される。又は、各調整部材若しくはコンタクト60の削れが抑制される。したがって、コネクタ10と接続対象物70とが接続されている状態であっても、接続信頼性が向上する。
【0093】
調整部材50aの係止部52aが第1インシュレータ20に係止することで、移動する第2インシュレータ30に係止する場合よりも安定して第1インシュレータ20と第2インシュレータ30との間に調整部材50aが配置される。例えば、第2インシュレータ30が移動した際に、第2インシュレータ30に係止した一対の調整部材50aの一方がコンタクト60から離間するといった事態が生じることもない。係止部52aが第1インシュレータ20に係止することで、調整部材50aとコンタクト60との相対位置が安定する。
【0094】
接続部53aがコンタクト60よりも嵌合側に位置することで、調整部材50aの接続部53aとコンタクト60の対応する部分とが前後方向に沿って重畳する。これにより、コネクタ10の前後方向の幅が縮小され、コネクタ10が小型化される。加えて、接続部53aが調整部51aの移動の際に弾性変形することで、調整部51aとコンタクト60の第2連結部65とが大きく離間しないように相対位置が調整される。したがって、調整部51aとコンタクト60との間隔の変化によって生じるコンタクト60の特性インピーダンス変化が抑制される。
【0095】
調整部51aと対向する外周壁32の外面32aから調整部51aに向けて突出する突出部37を第2インシュレータ30が有することで、
図8及び
図9に示すとおり、第2インシュレータ30が移動した際に、突出部37と一方の調整部51aとが接触する。これにより、突出部37は、第2インシュレータ30が移動した場合であっても、当該一方の調整部51aとコンタクト60との間隔を縮めて互いが大きく離間しないよう、調整部51aを押すことができる。したがって、調整部51aとコンタクト60との間隔の変化によって生じるコンタクト60の特性インピーダンス変化が抑制される。
【0096】
第2インシュレータ30の外周壁32の外面32aから突出部37が前後方向に突出することで、突出部37がコンタクト60の第2連結部65に近接し、突出部37の近傍においてコンタクト60の特性インピーダンスが減少する。より具体的には、空気の誘電率よりも高い第2インシュレータ30の突出部37を、空気を挟んでコンタクト60に近接させることで、これらの間でコンデンサと同様の効果を得ることができる。したがって、上述したとおり、特性インピーダンスの値が理想値に近付くように調整することで、信号伝送における伝送特性が向上する。
【0097】
突出部37が形成されている位置において第2インシュレータ30が幅広であることで、第2インシュレータ30の強度が向上する。加えて、第2インシュレータ30の重心が下方に下がるので、コネクタ10のフローティング動作の際に第2インシュレータ30が安定した姿勢で移動する。一方で、嵌合側で第2インシュレータ30が幅狭であることで、嵌合側における外周壁32の外面32aと第1インシュレータ20及び調整部材50aそれぞれとの間隔が大きくなる。これにより、第2インシュレータ30が移動した際に嵌合側で第1インシュレータ20及び調整部材50aと接触することを抑制し、コネクタ10のフローティング動作に必要とされる第2インシュレータ30の可動量が維持される。
【0098】
突出部37の下面がコンタクト60の基部66と略平行であることで、突出部37と基部66との間でコンデンサと同様の効果を得ることができる。したがって、突出部37の下面と基部66との間の間隔を調整することで、基部66における特性インピーダンスが容易に調整される。例えば、突出部37の下面と基部66とを近接させることで、静電容量Cを大きくして特性インピーダンスを低減させることも可能である。
【0099】
隣接する第2弾性部63b及び第3弾性部63cよりも幅広な第2連結部65をコンタクト60が有することで、第2連結部65における特性インピーダンスが減少する。これにより、これらの弾性部における特性インピーダンスの増加分が抑制され全体の特性インピーダンスの平均値が理想値に近づく。このように、コネクタ10は、特性インピーダンスマッチングに寄与できる。したがって、コネクタ10では、大容量かつ高速伝送においても所望する伝送特性が得られる。
【0100】
金具40が第1インシュレータ20に圧入されて、実装部43が回路基板CB1にはんだ付けされることで、金具40は、第1インシュレータ20を回路基板CB1に対して安定して固定できる。金具40により、回路基板CB1に対する第1インシュレータ20の実装強度が向上する。
【0101】
コンタクト60が弾性係数の小さい金属材料によって形成されていることで、コネクタ10は、第2インシュレータ30にかかる力が小さい場合であっても、必要とされる第2インシュレータ30の移動量を確保できる。すなわち、第2インシュレータ30は、第1インシュレータ20に対して滑らかに移動することができる。これにより、コネクタ10は、接続対象物70と嵌合する際の位置ずれを容易に吸収できる。コネクタ10では、何らかの外的要因によって発生する振動をコンタクト60の各弾性部が吸収する。これにより、実装部62に大きな力が加わる可能性が抑制される。したがって、回路基板CB1との接続部分の破損が抑制される。すなわち、回路基板CB1と実装部62との接続部分のはんだにクラックが入ることを抑制できる。したがって、コネクタ10と接続対象物70とが接続されている状態であっても、接続信頼性が向上する。
【0102】
本発明は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的であり、これに限定されない。発明の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるとする。
【0103】
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数等は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数等は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0104】
上述したコネクタ10及び接続対象物70の組立方法は、上記の説明の内容に限定されない。コネクタ10及び接続対象物70の組立方法は、それぞれの機能が発揮されるように組み立てることができるのであれば、任意の方法であってもよい。例えば、金具40、調整部材50a、及びコンタクト60の少なくとも1つは、圧入ではなくインサート成形によって第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30の少なくとも一方と一体的に成形されてもよい。
【0105】
図13は、調整部材50aの変形例を示した
図7に対応する断面図である。調整部材50aの調整部51aは、第1インシュレータ20と第2インシュレータ30との間に加えて、嵌合方向において、コンタクト60よりも嵌合側にさらに形成されていてもよい。このとき、調整部51aは、第1インシュレータ20と第2インシュレータ30との間、及びコンタクト60の上側でコンタクト60と対向する。これにより、調整部材50aの調整部51aとコンタクト60とが対向する面積が増大し、コンタクト60の特性インピーダンスがさらに減少する。結果として、信号伝送における伝送特性がさらに向上する。
【0106】
調整部材50a及び50bは、第1インシュレータ20と第2インシュレータ30との間、及び第2インシュレータ30の下方でコンタクト60と対向するとして説明したがこれに限定されない。調整部材50a及び50bは、第1インシュレータ20の内側の任意の位置でコンタクト60と対向してもよい。例えば、調整部材50a及び50bは、第1インシュレータ20と第2インシュレータ30との間、及び第2インシュレータ30の下方のいずれか一方でコンタクト60と対向してもよい。
【0107】
前後方向において両側から調整部51a及び51b1がコンタクト60と対向するとして説明したが、これに限定されない。調整部51a及び51b1のいずれか一方のみがコンタクト60と対向してもよい。
【0108】
調整部材50a及び50bは別部材として形成されていると説明したが、各調整部材の構成はこれに限定されない。各調整部材は、その機能を実現できる任意の構成を有してもよい。例えば、調整部材50a及び50bが共に一体的に形成されて、1つの連続的な調整部材として構成されてもよい。
【0109】
各調整部は、金属部材を含み表層に電気絶縁性を有していれば任意の方法で形成されてもよい。例えば、各調整部は、金属部材と樹脂材とが一体的に成形されるインサート成形により形成されてもよいし、金属部材の表面に絶縁性のめっきを施すことで形成されてもよいし、金属部材を絶縁性のシートで覆うように形成されてもよい。各調整部は、コンタクト60との絶縁性を確保できるのであれば、金属部材のみによって形成されていてもよい。
【0110】
コンタクト60と対向する各調整部の面が平面であるとして説明したが、これに限定されない。コンタクト60と対向する各調整部の面に、コンタクト60が弾性変形した際に対応するコンタクト60の部分が収容される溝又は貫通孔等の任意の構造が付加されていてもよい。
【0111】
接続部53a及び53bそれぞれは、任意の材料によって形成されていてもよい。例えば、各接続部は、各調整部と同様に金属部材を含み表層に電気絶縁性を有していてもよいし、金属及び樹脂のいずれか一方のみによって形成されていてもよい。
【0112】
調整部材50aは、係止部52aにより第1インシュレータ20に係止するとして説明したがこれに限定されない。調整部材50aは、任意の方法で第1インシュレータ20の内側に配置されてもよい。例えば、調整部材50aは、接着剤等を含む任意の粘着剤によりコンタクト60に直接取り付けられてもよい。例えば、調整部材50aは、インサート成形によりコンタクト60と一体的に形成されていてもよい。例えば、調整部材50aは、第1インシュレータ20の外周壁22の外面に沿って配置される金属製の遮蔽部材と連続的に形成され、第1インシュレータ20の上面を介して開口21aから内側に垂れ下がるような形状で形成されていてもよい。
【0113】
突出部37は、外周壁32の外面32aの上部から下縁部まで傾斜する傾斜面を含むとして説明したが、これに限定されない。突出部37は、調整部51aを押すことができ、かつコネクタ10の信号伝送における伝送特性が向上するのであれば、任意の構成を有してもよい。例えば、突出部37は、外周壁32の外面32aの上縁部から下縁部までの全体が傾斜する傾斜面を含んでもよい。例えば、突出部37は、外周壁32から外側に階段状に突出し、上下方向に平行な外面を含むように形成されていてもよい。例えば、突出部37は、曲面を含むように外周壁32から外側に突出してもよい。
【0114】
第1連結部64、第2連結部65、及び基部66それぞれにおいて、伝送路の幅、すなわち伝送路の断面積が増大して特性インピーダンスが低下することで、コンタクト60の伝送特性が向上するとして説明したが、各構成部の構成はこれに限定されない。第1連結部64、第2連結部65、及び基部66それぞれは、電気伝導性が向上する任意の構成を有してもよい。例えば、各構成部は、コンタクト60の他の部分と幅が同一のまま厚く形成されていてもよい。例えば、各構成部は、断面積が同一のままコンタクト60の他の部分よりも電気伝導性の高い材料によって形成されていてもよい。例えば、各構成部は、コンタクト60の他の部分と断面積が同一のまま表面に電気伝導性を向上させるめっきを有してもよい。
【0115】
第2連結部65は、第2インシュレータ30に向けて略く字状に屈曲してもよい。これにより、コネクタ10のフローティング動作に必要とされる第2インシュレータ30の可動量が増大する。加えて、コネクタ10が低背化する。
【0116】
第1弾性部63a、第2弾性部63b、及び第3弾性部63cは、コンタクト60の他の部分よりも幅狭に形成されているとして説明したがこれに限定されない。各弾性部は、必要とされる弾性変形量を確保できる任意の構成を有してもよい。例えば、各弾性部は、幅が同一のままコンタクト60の他の部分よりも弾性係数のさらに小さい金属材料によって形成されていてもよい。
【0117】
コンタクト60は、弾性係数の小さい金属材料によって形成されているとして説明したが、これに限定されない。コンタクト60は、必要とされる弾性変形量を確保できるのであれば、任意の弾性係数を有する金属材料によって形成されていてもよい。
【0118】
接続対象物70は、回路基板CB2に接続されるリセプタクルコネクタであるとして説明したが、これに限定されない。接続対象物70は、コネクタ以外の任意の対象物であってもよい。例えば、接続対象物70は、FPC、フレキシブルフラットケーブル、リジッド基板、又は任意の回路基板のカードエッジ等であってもよい。
【0119】
以上のようなコネクタ10は、電子機器に搭載される。電子機器は、例えば、カメラ、レーダ、ドライブレコーダ、又はエンジンコントロールユニット等の任意の車載機器を含む。電子機器は、例えば、カーナビゲーションシステム、先進運転支援システム、又はセキュリティシステム等の車載システムにおいて使用される任意の車載機器を含む。電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、コピー機、プリンタ、ファクシミリ、又は複合機等の任意の情報機器を含む。その他、電子機器は、任意の産業機器を含む。
【0120】
このような電子機器は、小型化された場合であっても、信号伝送における良好な伝送特性を有する。コネクタ10の良好なフローティング構造により基板間の位置ずれが吸収されるので、電子機器の組み立ての際の作業性が向上する。すなわち、電子機器の製造が容易になる。コネクタ10により回路基板CB1との接続部分の破損が抑制されるので、電子機器の製品としての信頼性が向上する。同様に、コネクタ10における上述した電気的な不具合及び力学的な不具合が抑制されて、接続対象物70との接続信頼性が向上することで、電子機器の製品としての信頼性がさらに向上する。