(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切替装置は、前記第1接続状態のときに、前記第2の電力需要家において、デマンド時限終了時の予測デマンドが電力事業者との契約に基づく契約デマンドを超え、かつ、前記第1の電力需要家において、前記第2接続状態とした場合のデマンド時限終了時の予測デマンドが電力事業者との契約に基づく契約デマンドを超えない場合に、前記第2接続状態に切り替える、
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電力システム。
前記切替装置は、前記第1接続状態のときに、前記第1の電力需要家において、電力系統から受電する電力が第1閾値以下となり、かつ、前記第2の電力需要家において、前記第2接続状態とした場合の電力系統から受電する電力が第2閾値より大きい場合に、前記第2接続状態に切り替える、
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電力システム。
前記切替装置は、前記第1接続状態と前記第2接続状態とを切り替えるとき、前記分散型電源からの供給電力が前記第1の受電設備および前記第2の受電設備のいずれにも供給されない無接続状態を介する、
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の電力システム。
電力を供給可能な分散型電源から第1の受電設備に電力が供給される第1接続状態と前記分散型電源から第2の受電設備に電力が供給される第2接続状態とを切り替え可能な切替器と、
前記切替器を制御し、前記第1接続状態と前記第2接続状態とを切り替える切替制御部と、
を備えており、
前記第1の受電設備は、電力系統から電力を受電して、第1の電力需要家が有する第1の電力負荷に電力を供給しており、
前記第2の受電設備は、電力系統から電力を受電して、第2の電力需要家が有する第2の電力負荷に電力を供給しており、
前記切替制御部は、前記第1の電力負荷による第1の電力使用状況および前記第2の電力負荷による第2の電力使用状況に応じて、前記第1接続状態と前記第2接続状態とを切り替えており、前記第1接続状態のときに、前記第2の電力使用状況により、前記第2の電力需要家において、デマンド時限終了時の予測デマンドが電力事業者との契約に基づく契約デマンドを超えて、前記分散型電源からの前記第2の受電設備への電力供給が必要であると判断される場合、または、前記第1接続状態のときに、前記第1の電力使用状況により、前記第1の電力需要家において、電力系統から受電する電力が第1閾値以下となって、前記分散型電源からの前記第1の受電設備への電力供給の抑止が必要であると判断される場合、前記第1接続状態から前記第2接続状態に切り替える、
ことを特徴とする切替装置。
電力を供給可能な分散型電源から第1の電力網に電力が供給される第1接続状態と前記分散型電源から第2の電力網に電力が供給される第2接続状態とを切り替え可能な切替器と、
前記切替器を制御し、前記第1接続状態と前記第2接続状態とを切り替える切替制御部と、
を備えており、
前記第1の電力網は、第1の需要地に設置された1以上の第1の電力需要家設備が接続されており、
前記第2の電力網は、第2の需要地に設置された1以上の第2の電力需要家設備が接続されており、
前記切替制御部は、前記第1の需要地における第1の電力使用状況および前記第2の需要地における第2の電力使用状況に応じて、前記第1接続状態と前記第2接続状態とを切り替えており、前記第1接続状態のときに、前記第2の電力使用状況により、前記第2の需要地において、デマンド時限終了時の予測デマンドが電力事業者との契約に基づく契約デマンドを超えて、前記分散型電源からの前記第2の電力網への電力供給が必要であると判断される場合、または、前記第1接続状態のときに、前記第1の電力使用状況により、前記第1の需要地において、電力系統から受電する電力が第1閾値以下となって、前記分散型電源からの前記第1の電力網への電力供給の抑止が必要であると判断される場合、前記第1接続状態から前記第2接続状態に切り替える、
ことを特徴とする切替装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の電力システムおよび切替装置の好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。
【0020】
図1および
図2は、本開示の第1実施形態にかかる電力システムを示している。第1実施形態の電力システムS1は、分散型電源1、切替装置2、複数の電力需要家設備3および統合管理装置4を備えている。本実施形態においては、複数の電力需要家設備3として、第1の電力需要家設備3Aおよび第2の電力需要家設備3Bを備えている場合について説明する。
【0021】
図1は、電力システムS1の全体構成を示している。
図2は、電力システムS1の詳細な構成を示している。なお、これらの図において、太実線で示したものは電力経路を示しており、矢印付きの実線で示したものは通信経路を示している。
【0022】
図1および
図2に示すように、電力システムS1においては、第1の電力需要家が所有する建屋Aに、分散型電源1、切替装置2および第1の電力需要家設備3Aが設置されている。また、第2の電力需要家が所有する建屋Bに、第2の電力需要家設備3Bが設置されている。さらに、第1の電力需要家設備3Aと第2の電力需要家設備3Bとは、電力需要家間電力線5によって接続されている。
【0023】
また、
図1に示すように、電力システムS1において、分散型電源1、切替装置2、第1の電力需要家設備3A、第2の電力需要家設備3Bおよび統合管理装置4は、それぞれ通信ネットワーク91に接続されている。
【0024】
分散型電源1は、電力を発生させ、当該発生させた電力を第1の電力需要家設備3Aまたは第2の電力需要家設備3Bのいずれかに供給するものである。本実施形態においては、分散型電源1として、太陽光発電装置を例に説明する。分散型電源1は、発電装置11およびパワーコンディショナ12を有する。
【0025】
発電装置11は、太陽電池を含んでおり、太陽電池によって太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで、直流電力を発生させる。そして、発生させた直流電力をパワーコンディショナ12に出力する。
【0026】
パワーコンディショナ12は、分散型電源1の各種制御を行うものである。パワーコンディショナ12は、たとえば発電装置11により発生した電力を、第1の電力需要家設備3Aおよび第2の電力需要家設備3Bに適した特性の電力に変換する。本実施形態においては、パワーコンディショナ12は、インバータ回路を備えている。インバータ回路は、発電装置11から入力される直流電力を交流電力に変換する。パワーコンディショナ12は、その他、インバータ回路から入力される交流電圧を昇圧(または降圧)する変圧器およびインバータ回路などを制御する制御回路を含んでいる。
【0027】
パワーコンディショナ12は、通信部121および電力検出部122を有する。通信部121は、統合管理装置4との間で通信を行うものである。通信部121と統合管理装置4の間の通信は、無線通信であってもよし、有線通信であってもよい。電力検出部122は、分散型電源1から出力された電力を検出するものである。電力検出部122は、検出した分散型電源1からの出力電力値P
PVを、通信部121を介して統合管理装置4に送信する。
【0028】
なお、分散型電源1において、電力検出部122が検出した出力電力値P
PVを図示しない表示手段(たとえば液晶モニタ)に表示させてもよい。
【0029】
本実施形態においては、分散型電源1として太陽光発電装置を例に説明したが、これに限定されず、風力発電装置、燃料電池発電装置、コージェネレーション、内燃力発電装置または小水力発電装置などであってもよく、これらのものを複数含んで構成されていてもよい。また、分散型電源1がこれらの場合、発電装置11は直流電力を発生させるものではなく、交流電力を発生させるものであってもよい。なお、発電装置11によっては、パワーコンディショナ12の代わりに、通信部121および電力検出部122を有する制御部が用いられる場合もある。
【0030】
切替装置2は、分散型電源1が発電した電力を、第1の電力需要家設備3Aおよび第2の電力需要家設備3Bのいずれに供給するかを選択的に切り替えるものである。切替装置2は、第1の電力需要家設備3Aと第2の電力需要家設備3Bとを接続する電力需要家間電力線5上に配置されている。切替装置2は、切替器21および切替制御部22を有する。
【0031】
切替器21は、複数の接続状態のいずれかに切り替える。本実施形態においては、切替器21は、DT(Double Throw)型のスイッチである。本実施形態においては、複数の接続状態として、第1接続状態、第2接続状態および無接続状態の3つの状態がある。
【0032】
第1接続状態は、分散型電源1と第1の電力需要家設備3Aとが導通し、かつ、分散型電源1と第2の電力需要家設備3Bとが遮断された状態である。したがって、第1接続状態では、分散型電源1からの出力電力の供給先として、第1の電力需要家設備3Aが選択されており、分散型電源1からの出力電力が第1の電力需要家設備3Aに供給される。
【0033】
第2接続状態は、分散型電源1と第1の電力需要家設備3Aとが遮断され、かつ、分散型電源1と第2の電力需要家設備3Bとが導通した状態である。したがって、第2接続状態では、分散型電源1からの出力電力の供給先として第2の電力需要家設備3Bが選択されており、分散型電源1からの出力電力が第2の電力需要家設備3Bに供給される。
【0034】
無接続状態は、分散型電源1が、第1の電力需要家設備3Aおよび第2の電力需要家設備3Bの両方と遮断された状態である。したがって、無接続状態では、分散型電源1からの出力電力の供給先として第1の電力需要家設備3Aも第2の電力需要家設備3Bも選択されておらず、分散型電源1からの出力電力は第1の電力需要家設備3Aにも第2の電力需要家設備3Bにも供給されない。
【0035】
切替器21は、たとえば
図2に示すように4つの接点c0,c1,c2,c3を有している。接点c0には分散型電源1が接続されている。接点c1には第1の電力需要家設備3Aが接続されている。接点c2には第2の電力需要家設備3Bが接続されている。そして、接点c3には何も接続されていない。このような切替器21において、接点c0と接点c1とが導通状態のとき、第1接続状態となり、接点c0と接点c2とが導通状態のとき、第2接続状態となり、接点c0と接点c3が導通状態のとき、無接続状態となる。
図2においては、接点c0と接点c1とが導通状態となった第1接続状態の場合を示している。なお、切替器21の構成は第1接続状態、第2接続状態および無接続状態を切り替え可能であれば、上記したものに限定されない。
【0036】
切替制御部22は、切替器21の切り替えを行うものである。切替制御部22は、
図2に示すように、通信部221を有している。通信部221は、統合管理装置4との間で通信を行うものである。なお、通信部221と統合管理装置4との間の通信は、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。
【0037】
切替制御部22は、通信部221を介して統合管理装置4から切替指示信号を受信し、受信した切替指示信号に基づいて、切替器21の切替を行う。切替指示信号は、切替器21の切り替えを指示するための信号である。切替制御部22は、受信した切替指示信号が、第1接続状態から第2接続状態への切り替えを指示するものである場合、切替器21を第1接続状態から無接続状態に切り替えた後に、無接続状態から第2接続状態に切り替える。また、切替制御部22は、受信した切替指示信号が、第2接続状態から第1接続状態への切り替えを指示するものである場合、切替器21を第2接続状態から無接続状態に切り替えた後に、無接続状態から第1接続状態に切り替える。すなわち、切替制御部22は、第1接続状態と第2接続状態とを切り替えるときに、無接続状態を介する。なお、切替制御部22は、切替器21が第1接続状態において、第1接続状態への切り替えを指示する切替指示信号を受信したとき、および、切替器21が第2接続状態において、第2接続状態への切り替えを指示する切替指示信号を受信したときは、特に切替器21の切り替えを行わない。
【0038】
切替制御部22は、現在の切替器21の接続状態を示す接続状態信号を、通信部221を介して統合管理装置4に送信する。
【0039】
第1の電力需要家設備3Aおよび第2の電力需要家設備3Bはともに、電力系統Kに接続されており、電力系統Kからの電力を受電可能である。なお、第1の電力需要家設備3Aと第2の電力需要家設備3Bは、それぞれ異なる位置で電力系統Kに接続されている。第1の電力需要家設備3Aは、第1の電力需要家が所有する設備である。第2の電力需要家設備3Bは、第2の電力需要家が所有する設備である。第1の電力需要家設備3Aは、切替器21が第1接続状態のとき、分散型電源1からの出力電力を受電可能である。第2の電力需要家設備3Bは、切替器21が第2接続状態のとき、分散型電源1からの出力電力を受電可能である。第1の電力需要家設備3Aは、電力負荷31A、受電設備32Aおよびエネルギーマネージメントシステム33Aを備えている。第2の電力需要家設備3Bは、電力負荷31B、受電設備32Bおよびエネルギーマネージメントシステム33Bを備えている。なお、以下の説明において、エネルギーマネージメントシステムを「EMS」という。
【0040】
電力負荷31A,31Bはともに、電力を消費するものである。電力負荷31A,31Bはそれぞれ、たとえば一般家庭や工場、商業施設などに設置される各種電気機器などである。電力負荷31Aは、受電設備32Aから電力を供給される。電力負荷31Bは、受電設備32Bから電力を供給される。
【0041】
受電設備32A,32Bはともに、配電盤や分電盤を含んで構成されている。受電設備32A,32Bはそれぞれ、電力系統Kおよび分散型電源1から供給される電力を受電する。受電設備32Aは、受電した電力を電力負荷31Aに供給する。受電設備32Aは、分散型電源1から電力を受電しているとき、当該分散型電源1からの電力を電力系統Kからの電力よりも優先して電力負荷31Aに供給する。受電設備32Aは、
図2に示すように、電力検出部321Aを有する。また、受電設備32Bは、受電した電力を電力負荷31Bに供給する。受電設備32Bは、分散型電源1から電力を受電しているとき、当該分散型電源1からの電力を電力系統Kからの電力よりも優先して電力負荷31Bに供給する。受電設備32Bは、
図2に示すように、電力検出部321Bを有する。
【0042】
電力検出部321Aは、第1の電力需要家設備3Aにおける各種電力を検出する。本実施形態においては、電力検出部321Aは、電力負荷31Aで消費されている電力(消費電力)、分散型電源1から切替装置2を介して供給される電力(供給電力)および電力系統Kから受電する電力(受電電力)を検出する。電力検出部321Aは、たとえば受電設備32Aから電力負荷31Aに供給される電力を検出することで、消費電力を検出する。電力検出部321Aは、検出した消費電力値P1a、供給電力値P2aおよび受電電力値P3aをEMS33Aに出力する。電力検出部321Bは、第2の電力需要家設備3Bにおける各種電力を検出する。電力検出部321Bは、電力検出部321Aと同様に構成される。電力検出部321Bは、検出した消費電力値P1b、供給電力値P2bおよび受電電力値P3bをEMS33Bに出力する。
【0043】
EMS33Aは、第1の電力需要家設備3Aにおける、各種電力の需要および供給などの管理を行う。EMS33Bは、第2の電力需要家設備3Bにおける、各種電力の需要および供給などの管理を行う。EMS33A,33Bは、例えば、建屋A,Bが一般家庭であれば、HEMS(Home Energy Management System)と呼ばれるシステムであり、建屋A,Bがビルであれば、BEMS(Building Energy Management System)と呼ばれるシステムであり、建屋A,Bが工場であれば、FEMS(Factory Energy Management System)と呼ばれるシステムである。
【0044】
EMS33Aは、電力検出部321Aから、消費電力値P1a、供給電力値P2aおよび受電電力値P3aを入力される。EMS33Aは、入力された消費電力値P1a、供給電力値P2aおよび受電電力値P3aを、たとえば図示しない表示装置に表示することで、第1の電力需要家は、これらの電力値を確認できる。EMS33Aは、
図2に示すように、通信部331Aを有している。通信部331Aは、統合管理装置4との間で通信を行うものである。なお、通信部331Aと統合管理装置4との間の通信は、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。本実施形態においては、EMS33Aは、消費電力値P1a、供給電力値P2aおよび受電電力値P3aを、通信部331Aを介して統合管理装置4に送信する。EMS33Aが、特許請求の範囲に記載の「第1監視装置」に相当する。
【0045】
EMS33Bは、EMS33Aと同様に構成される。EMS33Bは、
図2に示すように、通信部331Bを有している。通信部331Bは、通信部331Aと同様に構成される。EMS33Bは、電力検出部321Bから、消費電力値P1b、供給電力値P2bおよび受電電力値P3bを入力され、これらの電力値を、通信部331Bを介して統合管理装置4に送信する。EMS33Bが、特許請求の範囲に記載の「第2監視装置」に相当する。
【0046】
統合管理装置4は、分散型電源1、切替装置2、第1の電力需要家設備3Aおよび第2の電力需要家設備3Bの管理を行う。統合管理装置4は、
図2に示すように、管理制御部41を有する。
【0047】
管理制御部41は、統合管理装置4の各種制御を行うものである。管理制御部41は、
図2に示すように、通信部411を有する。通信部411は、分散型電源1、切替装置2、第1の電力需要家設備3A(EMS33A)および第2の電力需要家設備3B(EMS33B)との間で通信を行うものである。なお、通信部411とそれらとの間の通信は、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。管理制御部41は、通信部411を介して、分散型電源1、切替装置2、第1の電力需要家設備3A(EMS33A)および第2の電力需要家設備3B(EMS33B)との間でそれぞれ各種信号の送受信を行う。
【0048】
管理制御部41は、通信部411を介して、分散型電源1から出力電力値P
PVを受信する。また、管理制御部41は、通信部411を介して、EMS33Aから消費電力値P1a、供給電力値P2aおよび受電電力値P3aを受信し、EMS33Bから消費電力値P1b、供給電力値P2bおよび受電電力値P3bを受信する。管理制御部41は、受信したこれらの電力値に基づいて、切替器21の接続状態を切り替えるための切替指示信号を生成する。そして、管理制御部41は、通信部411を介して、生成した切替指示信号を切替装置2に送信する。これにより、切替装置2は、受信した切替指示信号に基づき、切替器21の接続状態を切り替える。本実施形態においては、管理制御部41が、特許請求の範囲に記載の「切替指示部」に相当する。
【0049】
図3および
図4は、管理制御部41が行う切替指示信号の生成処理を示すフローチャートである。
図3は、第1の電力需要家および第2の電力需要家において、電力デマンドが契約デマンドを超えないように、切替装置2の切替を行う場合の切替指示信号生成処理(第1切替指示信号生成処理)を示している。
図4は、第1の電力需要家および第2の電力需要家が逆潮流なしの系統連系である場合において、第1の電力需要家設備3Aおよび第2の電力需要家設備3Bで逆潮流が発生しないように、切替装置2の切替を行う場合の切替指示信号生成処理(第2切替指示信号生成処理)を示している。「系統連系」とは、電力系統Kに発電設備(分散型電源1)を接続することおよびその状態を示しており、「逆潮流なしの系統連系」とは、系統連系していても配電線には電力は送り込まない場合をいう。一方、「逆潮流ありの系統連系」とは、配電線に対して電力を送り込む場合をいう。本実施形態においては、管理制御部41は、第1切替指示信号生成処理(
図3参照)および第2切替指示信号生成処理(
図4参照)の両方を行う場合を示すが、いずれか一方のみであってもよい。また、これらの切替指示信号生成処理の両方を行う場合は、これらの切替指示信号生成処理を並行して繰り返し行ってもよいし、一方ずつ交互に行ってもよい。
【0050】
まず、
図3に示す第1切替指示信号生成処理について説明する。管理制御部41は、第1切替指示信号生成処理を行うために、次に示す各電力デマンドの値を用いる。それは、現在デマンド、予測デマンドおよび契約デマンドである。なお、電力デマンドは、デマンド時限(一般的に30分)毎の平均需要電力である。本実施形態において、電力デマンドは、デマンド時限あたりの平均需要電力であるものとするが、デマンド時限あたりの累積需要電力であってもよい。
【0051】
現在デマンドは、現在のデマンド時限における電力デマンドの現在値である。管理制御部41は、第1の電力需要家設備3A(EMS33A)から受信する消費電力値P1a、供給電力値P2aおよび受電電力値P3aに基づいて、第1の電力需要家設備3Aに対する現在デマンド(第1現在デマンド)を算出する。本実施形態においては、管理制御部41は、現在のデマンド時限において、現時点までに受信した受電電力値P3aの平均値(あるいは積算値)を算出することで、第1現在デマンドを算出する。なお、第1現在デマンドの算出手法は、これに限定されない。たとえば、受電電力値P3aは、消費電力値P1aから供給電力値P2aを減算した値から推算できる。また、管理制御部41は、同様に、第2の電力需要家設備3B(EMS33B)から受信する消費電力値P1b、供給電力値P2bおよび受電電力値P3bに基づいて、第2の電力需要家設備3Bに対する現在デマンド(第2現在デマンド)を算出する。
【0052】
予測デマンドは、現在のデマンド時限の終了時点における電力デマンドの予測値である。予測デマンドの算出方法は周知の方法を用いればよい。管理制御部41は、第1現在デマンド、消費電力値P1a、供給電力値P2a、受電電力値P3aおよび出力電力値P
PVに基づいて、第1の電力需要家設備3Aに対する予測デマンド(第1予測デマンド)を算出する。本実施形態においては、管理制御部41は、現在のデマンド時限の現時点から当該現在のデマンド時限の終了時点までの期間、分散型電源1から第1の電力需要家設備3Aに電力供給がないものとして、第1予測デマンドを算出する。つまり、当該期間においては、第2接続状態であるものとして、第1予測デマンドを算出する。また、管理制御部41は、同様に、第2現在デマンド、消費電力値P1b、供給電力値P2b、受電電力値P3bおよび出力電力値P
PVに基づいて、第2の電力需要家設備3Bに対する予測デマンド(第2予測デマンド)を算出する。本実施形態においては、管理制御部41は、現在のデマンド時限の現時点から当該現在のデマンド時限の終了時点までの期間、分散型電源1から第2の電力需要家設備3Bに電力供給がないものとして、第2予測デマンドを算出する。つまり、当該期間においては、第1接続状態であるものとして、第2予測デマンドを算出する。
【0053】
契約デマンドは、第1の電力需要家設備3Aおよび第2の電力需要家設備3Bのそれぞれにおいて、電力事業者との契約に基づいて、定められた電力デマンド値の最大値である。管理制御部41には、第1の電力需要家設備3Aに対する第1契約デマンドおよび第2の電力需要家設備3Bに対する第2契約デマンドが予め設定されている。
【0054】
まず、管理制御部41は、第2予測デマンドが第2契約デマンドを超過するか否かを判定する(S11)。すなわち、第2の電力需要家設備3Bにおいて分散型電源1からの電力供給が必要か否かを判定する。
【0055】
ステップS11にて、超過しないと判定した場合(S11:NO)、すなわち、第2の電力需要家設備3Bにおいて分散型電源1からの電力供給が必要でないと判定した場合、切替器21が第1接続状態となるように切替指示信号を生成する(S12)。一方、ステップS11にて、超過すると判定した場合(S11:YES)、すなわち、第2の電力需要家設備3Bにおいて分散型電源1からの電力供給が必要であると判定した場合、管理制御部41は、続いて、第1予測デマンドが第1契約デマンドを超過するか否かを判定する(S13)。すなわち、第1の電力需要家設備3Aにおいて分散型電源1からの電力供給が必要か否かを判定する。
【0056】
ステップS13にて、超過すると判定した場合(S13:YES)、すなわち、第1の電力需要家設備3Aにおいて分散型電源1からの電力供給が必要であると判定した場合、切替器21が第1接続状態となるように切替指示信号を生成する(S12)。なお、管理制御部41は、ステップS13で超過すると判定した場合、切替器21を第1接続状態とする切替指示信号を生成するとともに、必要に応じて、第2の電力需要家設備3Bに対して次のように指示してもよい。それは、第2の電力需要家設備3Bに設けた報知手段(図示略)に電力負荷31Bの使用電力を低減させるように報知させる指示や電力負荷31Bの一部を停止させる指示である。一方、ステップS13にて、超過しないと判定した場合(S13:NO)、すなわち、第1の電力需要家設備3Aにおいて分散型電源1からの電力供給が必要でないと判定した場合、切替器21が第2接続状態となるように切替指示信号を生成する(S14)。
【0057】
本実施形態においては、管理制御部41が各電力デマンド(現在デマンドおよび予測デマンド)を算出する場合を示したが、各EMS33A,33Bが各電力デマンドを算出し、これを管理制御部41に送信するようにしてもよい。
【0058】
次に、
図4に示す第2切替指示信号生成処理について説明する。この第2切替指示信号生成処理は、上記するように第1の電力需要家設備3Aおよび第2の電力需要家設備3Bがともに逆潮流なしの系統連系である場合に行われる。管理制御部41は、第2切替指示信号生成処理を行うために、次に示す受電電力値P3a’,P3b’を用いる。受電電力値P3a’は、たとえば消費電力値P1aから出力電力値P
PVを減算した値であり、第1の電力需要家設備3Aに分散型電源1からの電力を供給している場合の受電電力値P3aの算出値である。つまり、受電電力値P3a’は、第1接続状態とした場合の受電電力値P3aの算出値である。よって、切替器21が第1接続状態のときは、管理制御部41が算出した受電電力値P3a’と、電力検出部321Aが検出した受電電力値P3aとが同じである。また、受電電力値P3b’も同様に算出される。すなわち、受電電力値P3b’は、たとえば消費電力値P1bから出力電力値P
PVを減算した値であり、第2の電力需要家設備3Bに分散型電源1からの電力を供給している場合の受電電力値P3bの算出値である。つまり、受電電力値P3b’は、第2接続状態とした場合の受電電力値P3bの算出値である。よって、切替器21が第2接続状態のときは、管理制御部41が算出した受電電力値P3b’と、電力検出部321Bが検出した受電電力値P3bとが同じである。
【0059】
まず、管理制御部41は、第1の電力需要家設備3Aにおける上記受電電力値P3a’が第1閾値以下であるか否かを判定する(S21)。これにより、第1の電力需要家設備3Aにおいて逆潮流が発生する虞があるか否かを判定している。第1閾値としては、たとえば0以上の値が設定される。第1閾値が0に近い場合、ステップS21で、第1の電力需要家設備3Aにおいて逆潮流が発生する虞があると判定される可能性が低くなり、一方、第1閾値が大きいほど、ステップS21で、第1の電力需要家設備3Aにおいて逆潮流が発生する虞があると判定される可能性が高くなる。第1閾値は、第1の電力需要家によって適宜設定される。
【0060】
ステップS21にて、受電電力値P3a’が第1閾値より大きい(第1閾値以下でない)と判定した場合(S21:NO)、すなわち、第1の電力需要家設備3Aにおいて逆潮流が発生する虞がないと判定した場合、管理制御部41は、切替器21が第1接続状態となるように切替指示信号を生成する(S22)。一方、ステップS21にて、受電電力値P3a’が第1閾値以下であると判定した場合(S21:YES)、すなわち、第1の電力需要家設備3Aにおいて逆潮流が発生する虞があると判定した場合、管理制御部41は、続いて、第2の電力需要家設備3Bにおける上記受電電力値P3b’が第2閾値以下であるか否かを判定する(S23)。これにより、第2の電力需要家設備3Bに分散型電源1からの電力供給を行った場合に第2の電力需要家設備3Bにおいて逆潮流が発生する虞があるか否かを判定している。第2閾値としては、たとえば0以上の値が設定される。第2閾値が0に近い場合、ステップS23で、第2の電力需要家設備3Bにおいて逆潮流が発生する虞があると判定される可能性が低くなり、一方、第2閾値が大きいほど、ステップS23で、第2の電力需要家設備3Bにおいて逆潮流が発生する虞があると判定される可能性が高くなる。第2閾値は、第2の電力需要家によって適宜設定される。なお、第1閾値と第2閾値とは、同じであっても異なっていてもよい。また、第1閾値と第2閾値とは、第1の電力需要家設備3Aと第2の電力需要家設備3Bとにおける逆潮流の発生の抑制度合い、および、第1の電力需要家設備3Aと第2の電力需要家設備3Bとの切り替えの頻度を考慮して適宜設定すればよい。
【0061】
ステップS23にて、受電電力値P3b’が第2閾値より大きい(第2閾値以下でない)と判定した場合(S23:NO)、すなわち、第2の電力需要家設備3Bにおいて逆潮流が発生する虞がないと判定した場合、管理制御部41は、切替器21が第2接続状態となるように切替指示信号を生成する(S24)。一方、ステップS23にて、受電電力値P3b’が第2閾値以下であると判定した場合(S23:YES)、すなわち、第2の電力需要家設備3Bにおいて逆潮流が発生する虞があると判定した場合、管理制御部41は、切替器21が第1接続状態となるように切替指示信号を生成するとともに、分散型電源1に対して出力電力を抑制するように、すなわち、発電装置11による発電を抑制するように指示する(S25)。
【0062】
なお、第1切替指示信号生成処理(
図3参照)および第2切替指示信号生成処理(
図4参照)は、上記したものに限定されず、他の方法で切替指示信号を生成してもよい。
【0063】
次に、第1実施形態にかかる電力システムS1の作用効果について説明する。
【0064】
電力システムS1によれば、第1の電力需要家が有する電力負荷31Aと第2の電力需要家が有する電力負荷31Bとのそれぞれの電力使用状況に応じて、分散型電源1の電力供給先が受電設備32Aと受電設備32Bとの間で切り替わる。したがって、第1の電力需要家と第2の電力需要家との間で、分散型電源1から供給される電力を融通し合うことができる。たとえば建屋Bには個別に分散型電源を設置できないので、当該建屋B内の第2の電力需要家設備3Bは、従来では分散型電源による電力系統Kからの受電電力の抑制ができなかった。しかしながら、電力システムS1によれば、建屋Aに設置された分散型電源1からの電力供給を、建屋Aから建屋Bに行うことができるので、建屋B内の第2の電力需要家設備3Bにおいても、必要に応じて、分散型電源による電力系統Kからの受電電力の抑制ができる。また、建屋A内の第1の電力需要家設備3Aにおいて、逆潮流が発生する虞があり、分散型電源1からの電力供給が不要な場合、従来では分散型電源1の発電を抑制せざるを得なかった。しかしながら、電力システムS1によれば、分散型電源1の発電を抑制する必要がないため、分散型電源1の稼働率の低下を抑制することができる。
【0065】
電力システムS1によれば、統合管理装置4は、第1の電力需要家設備3Aから消費電力値P1a、供給電力値P2aおよび受電電力値P3aを取得し、これらに基づいて、第1の電力需要家設備3Aにおける電力使用状況を確認する。また、第2の電力需要家設備3Bから消費電力値P1b、供給電力値P2bおよび受電電力値P3bを取得し、これらに基づいて、第2の電力需要家設備3Bにおける電力使用状況を確認する。そして、統合管理装置4は、これらの電力使用状況に応じて、切替装置2の切替を制御している。したがって、統合管理装置4によって、第1の電力需要家と第2の電力需要家との間の電力融通を制御することができる。
【0066】
電力システムS1によれば、管理制御部41は、第1切替指示信号生成処理(
図3参照)に従って、切替指示信号を生成している。これにより、切替器21が第1接続状態であるときに、分散型電源を有していない第2の電力需要家において、第2予測デマンドが第2契約デマンドを超過し、かつ、分散型電源1を有する第1の電力需要家において、第1予測デマンドが第1契約デマンドを超えない場合、切替器21を第2接続状態に切り替えることができる。すなわち、分散型電源1の電力供給先を第2の電力需要家設備3Bにすることができる。したがって、第2の電力需要家設備3Bの電力ピークを抑制し、第2の電力需要家において、電力デマンドが契約デマンドを超えないようにできる。
【0067】
電力システムS1によれば、管理制御部41が第1切替指示信号生成処理を行うことで、切替器21が第1接続状態のときに、第2の電力需要家設備3Bにおいて第2予測デマンドが第2契約デマンドを超過し、かつ、第1の電力需要家設備3Aにおいて分散型電源1からの電力供給がなくても第1予測デマンドが第1契約デマンドを超えない場合には、分散型電源1が発電した電力の供給先が、第1の電力需要家設備3Aから第2の電力需要家設備3Bに切り替わる。また、切替器21が第2接続状態のときに、第1の電力需要家設備3Aにおいて第1予測デマンドが第1契約デマンドを超過すると判定されると、分散型電源1の供給先が第2の電力需要家設備3Bから第1の電力需要家設備3Aに切り替わる。さらに、切替器21が第2接続状態のときに、第2の電力需要家設備3Bにおいて第2予測デマンドが第2契約デマンドを超過しないと判定されると、分散型電源1の供給先が第2の電力需要家設備3Bから第1の電力需要家設備3Aに切り替わる。したがって、第1の電力需要家および第2の電力需要家の受電電力をできる限り抑制するように、第1の電力需要家および第2の電力需要家の間の電力融通を適切に制御することができる。
【0068】
電力システムS1によれば、管理制御部41は、第2切替指示信号生成処理(
図4参照)に従って、切替指示信号を生成している。これにより、分散型電源1を有する第1の電力需要家設備3Aが逆潮流なしの系統連系である場合に、切替器21が第1接続状態であるときに、切替器21が第1接続状態で第1の電力需要家設備3Aにおいて逆潮流が発生しそうであり、かつ、第2の電力需要家設備3Bにおいて逆潮流が発生しない場合、分散型電源1の電力供給先を第2の電力需要家設備3Bにすることができる。したがって、発電装置11が発電した電力をできる限り抑制することなく、第1の電力需要家設備3Aにおける逆潮流の発生を抑制することができる。また、逆潮流なしの系統連系の場合、電力系統Kへの逆潮流を防止するために、逆電力継電器が設置される。当該逆電力継電器は、逆潮流を検出した場合、各電力需要家設備3を電力系統Kから解列する保護継電器である。逆電力継電器が作動すると、各電力需要家設備3が電力系統Kから解列され、電力系統Kからの受電ができなくなる。よって、各電力需要家設備3における逆潮流の発生を抑制することで、逆電力継電器によって解列されることを抑制できる。
【0069】
電力システムS1によれば、管理制御部41が第2切替指示信号生成処理を行うことで、切替器21が第1接続状態のときに、第1の電力需要家設備3Aにおいて逆潮流が発生しそうになった場合、第2の電力需要家設備3Bに分散型電源1から電力供給を行っても第2の電力需要家設備3Bで逆潮流が発生しなければ、分散型電源1の供給先が第1の電力需要家設備3Aから第2の電力需要家設備3Bに切り替わる。また、切替器21が第2接続状態のときに、第2の電力需要家設備3Bで逆潮流が発生する虞があると判定されると、分散型電源1の供給先が第2の電力需要家設備3Bから第1の電力需要家設備3Aに切り替わる。さらに、切替器21が第2接続状態のときに、第1の電力需要家設備3Aにおいて逆潮流が発生する虞がないと判定されると、分散型電源1の供給先が第2の電力需要家設備3Bから第1の電力需要家設備3Aに切り替わる。したがって、分散型電源1の発電をできる限り抑制しないように、第1の電力需要家および第2の電力需要家の間の電力融通を適切に制御することができる。
【0070】
電力システムS1によれば、切替器21は第1接続状態と第2接続状態とを切り替えるときに無接続状態を介している。仮に切替器21において第1接続状態と第2接続状態とが瞬時に切り替わると、接点c1と接点c2とがたとえばアークの発生などにより電気的に接続される可能性がある。よって、第1の電力需要家設備3A(受電設備32A)と第2の電力需要家設備3B(受電設備32B)とが電気的に接続される可能性がある。このとき、受電設備32Aと受電設備32Bとで、電力系統を介して、ループ接続の状態となり、短絡事故の要因となる。しかしながら、電力システムS1は、第1接続状態と第2接続状態とを切り替える際に無接続状態を介しているため、上記のような接点c1と接点c2とが電気的に接続される可能性を抑制し、系統事故の発生を抑制することができる。
【0071】
第1実施形態では、第1切替指示信号生成処理において第1予測デマンド(第2予測デマンド)が第1契約デマンド(第2契約デマンド)を超過しているか否かの判定を行うようにしたが、第1契約デマンド(第2契約デマンド)ではなく、ユーザによって指定された所定のデマンド値を超過しているか否かを判定するようにしてもよい。このように構成することで、第1の電力需要家および第2の電力需要家のそれぞれにおける電力デマンドを上記所定のデマンド値以下になるように、第1の電力需要家と第2の電力需要家との間で分散型電源1からの電力を融通し合うことができる。
【0072】
第1実施形態では、第2切替指示信号生成処理において、受電電力値P3a’(P3’b)が第1閾値(第2閾値)以下であるか否かに応じて、第1の電力需要家設備3A(第2の電力需要家設備3B)において逆潮流が発生する虞があるか否かを判定した場合を示したが、逆潮流が発生するか否かの判定方法はこれに限定されない。
【0073】
第1実施形態では、統合管理装置4が、上記した2つ切替指示信号生成処理によって、切替指示信号を生成し、切替装置2が当該切替指示信号に基づいて、切替器21の接続状態を切り替える場合を示したが、次のように構成してもよい。たとえば、所定の時間帯(朝昼晩などの区切りあるいは2時間3時間などの所定時間での区切りなど)毎に切替器21の接続状態を切り替えるようにしてもよい。この場合、切替装置2あるいは統合管理装置4に対して、上記所定の時間帯に対していずれの接続状態にするかを予め設定しておく。また、分散型電源1からの出力電力(出力電力値P
PV)の表示、および、各電力需要家設備3のEMS(EMS33A,33B)による各電力使用状況(消費電力値P1a,P1b、供給電力値P2a,P2bおよび受電電力値P3a,P3b)の表示を確認して、第1の電力需要家または第2の電力需要家が手動で切替器21の接続状態を切り替えるようにしてもよい。
【0074】
第1実施形態では、統合管理装置4は、切替器21の切り替えを指示するとき、切替装置2に対して切替指示信号を送信していたが、さらに、分散型電源1に対して出力停止信号および出力開始信号を送信するようにしてもよい。具体的には、以下のように処理される。
【0075】
すなわち、統合管理装置4は、切替器21の切り替えが必要であると判断すると、分散型電源1に対して電力の出力を停止させる出力停止信号を送信する。分散型電源1は、当該出力停止信号に基づいて、分散型電源1からの電力の出力を停止させる。なお、発電装置11による発電を停止させてもよい。次いで、統合管理装置4は、分散型電源1からの電力出力が停止したことを確認した後、切替装置2に対して切替指示信号を送信し、切替器21の切り替えを指示する。なお、統合管理装置4は、分散型電源1から受信する出力電力値P
PVが0となったとき、または、出力を停止したことを示す信号を分散型電源1から受信したときに、分散型電源1からの電力出力が停止したと判断する。そして、切替器21は、受信した切替指示信号に基づいて、第1接続状態と第2接続状態とを無接続状態を介して切り替える。次いで、統合管理装置4は、切替器21が切り替わったことを確認した後、分散型電源1に対して電力の出力を開始させる出力開始信号を送信する。なお、統合管理装置4は、切替装置2から受信する接続状態信号、または、切替装置2からの切替器21の切り替えが完了したことを示す信号に基づいて、切替器21が切り替わったことと判断する。分散型電源1は、受信した出力開始信号に基づいて、分散型電源1からの電力の出力を開始させる。なお、発電装置11による発電を開始させるようにしてもよい。
【0076】
以上のように、第1接続状態と第2接続状態とを切り替える際に、分散型電源1を停止させることで、接点c1と接点c2とが電気的に接続される可能性をさらに抑制し、上記短絡事故の発生をさらに抑制することができる。
【0077】
第1実施形態では、統合管理装置4は、分散型電源1、切替装置2、第1の電力需要家設備3Aおよび第2の電力需要家設備3Bとの通信によって、第1の電力需要家(電力負荷31A)および第2の電力需要家(電力負荷31B)による電力使用状況に応じて、切替装置2の切替を制御した場合を示したが、これに限定されない。たとえば、第1の電力需要家設備3Aと第2の電力需要家設備3Bとの間の通信によって、切替器21の切り替えを行うように構成してもよい。
図5は、このような変形例に係る電力システムを示している。本変形例に係る電力システムS1’は、上記電力システムS1と比較して、統合管理装置4を備えていない点で異なる。
【0078】
電力システムS1’において、分散型電源1、切替装置2、第1の電力需要家設備3Aおよび第2の電力需要家設備3Bは、通信ネットワーク91を介して、互いに通信可能に構成されている。このような構成された電力システムS1’において、たとえば、第1の電力需要家設備3Aから第2の電力需要家設備3Bに対して、切替器21の接続状態の切替を要望する。そして、この要望を受けた第2の電力需要家設備3Bは、切替器21の切り替えが可能であるか否かを判断する。そして、第2の電力需要家設備3Bは、切替が可能であると判断した場合、切替装置2に切替器21の切り替えを指示し、切替が可能でないと判断した場合、第1の電力需要家設備3Aにその旨を伝える。なお、第2の電力需要家設備3Bから第1の電力需要家設備3Aに対しても同様である。上記接続状態の切替を要望するか否かおよび上記切替器21の切り替えが可能であるか否かの判断は、予測デマンドが契約デマンドを超過するか否か、または、逆潮流が発生しそうか否かに基づいて、判断すればよい。
【0079】
たとえば、EMS33Bは、第2の電力需要家設備3Bにおける上記第2予測デマンドを算出し、算出した第2予測デマンドが第2契約デマンドを超過しそうな場合に、第1の電力需要家設備3A(EMS33A)に対して、分散型電源1からの電力供給を要求する。EMS33Aは、第2の電力需要家設備3Bから、分散型電源1からの電力供給の要求を受け、第1の電力需要家設備3Aにおける上記第1予測デマンドを算出し、算出した第1予測デマンドが第1契約デマンドを超過しなければ、切替装置2に対して切替器21を第1接続状態から第2接続状態に切り替えるように切替指示信号を送信する。そして、切替装置2は、受信した切替指示信号に基づいて、切替器21を第1接続状態から第2接続状態に切り替える。一方、EMS33Aは、算出した第1予測デマンドが第1契約デマンドを超過する場合には、切替指示信号を生成せず(切替器21の切り替えを行わず)、第2接続状態に切り替えられない旨をEMS33Bに伝達する。本変形例においては、EMS33Aが、特許請求の範囲に記載の「切替指示部」に相当する。
【0080】
また、上記電力システムS1’において、次のように構成することも可能である。それは、第1の電力需要家設備3Aが、電力検出部321Aから入力される、消費電力値P1a、供給電力値P2aおよび受電電力値P3aに基づいて、第1の電力需要家設備3Aにおける電力使用状況を確認する。また、第1の電力需要家設備3Aは、通信部331Aを介した通信によって第2の電力需要家設備3Bから消費電力値P1b、供給電力値P2bおよび受電電力値P3bを取得し、これらに基づいて、第2の電力需要家設備3Bにおける電力使用状況を確認する。続いて、第1の電力需要家設備3AのEMS33Aは、これらの電力使用状況に基づいて、第1接続状態と第2接続状態との切り替えが必要であるか否かを判断する。そして、EMS33Aが、切替器21の切り替えが必要であると判断した場合に、切替装置2に上記切替指示信号を送信し、切替装置2が、受信した切替指示信号に基づき、切替器21の接続状態を切り替える。なお、切替器21の切り替えが必要であるか否かの判断は、上記した予測デマンドが契約デマンドを超過するか否か(
図3参照)、または、逆潮流が発生しそうか否か(
図4参照)に基づいて判断すればよい。この場合、EMS33Aが、特許請求の範囲に記載の「切替指示部」に相当する。また、上記では、第1の電力需要家設備3Aが、切替器21の切り替えが必要であるか否かを判断する場合を示したが、反対に、第2の電力需要家設備3Bが判断してもよい。この場合、EMS33Bが、特許請求の範囲に記載の「切替指示部」に相当する。
【0081】
以上のように第1の電力需要家設備3Aと第2の電力需要家設備3Bとの間での通信した場合でも、第1の電力需要家および第2の電力需要家の間で、分散型電源1からの供給電力を融通し合うことができる。
【0082】
上記第1実施形態では、電力系統Kから電力を受電可能な受電設備32A,32Bを、各電力需要家設備3A,3Bが備えている場合を示したが、これに限定されない。たとえば、
図6に示すように、切替装置2および受電設備32A,32Bを1つの筐体に収容し、1つの受電設備Gとして扱うようにしてもよい。よって、受電設備Gは、各々が電力系統Kに繋がる2つの受電設備32A,32Bを有しており、かつ、これらが切替装置2を介して、電力線で繋がっている。そして、受電設備32Aに、第1の電力需要家設備3Aにおける電力負荷31Aが接続され、受電設備32Bに、第2の電力需要家設備3Bにおける電力負荷31Bが接続されている。また、切替装置2に、受電設備Gの内部で分散型電源1が接続されている。このように分散型電源1および受電設備Gが、建屋A,Bのいずれにも設置されず、独立して配置されているような場合であっても、第1の電力需要家における電力負荷31Aおよび第2の電力需要家における電力負荷31Bに分散型電源1からの電力供給を融通することができる。
【0083】
図7は、本開示の第2実施形態にかかる電力システムを示している。本実施形態の電力システムS2は、上記電力システムS1と比較して、分散型電源1が充放電装置13をさらに有している点で異なる。
【0084】
充放電装置13は、電力を蓄積したり放出したりするものである。充放電装置13はたとえば鉛蓄電池、ニッケル水素電池およびリチウムイオン電池などの二次電池である。なお、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタなどであってもよい。充放電装置13は、パワーコンディショナ12によって制御される。パワーコンディショナ12は、発電装置11が発電した電力や電力系統Kから供給される電力を用いて、充放電装置13の充電を行う。また、パワーコンディショナ12は、充放電装置13に蓄積された電力を放出し、分散型電源1からの供給電力とする。
【0085】
以上のように構成された電力システムS2においても、第1の電力需要家が有する電力負荷31Aと第2の電力需要家が有する電力負荷31Bとのそれぞれの電力使用状況に応じて、分散型電源1の電力供給先が受電設備32Aと受電設備32Bとの間で切り替わる。したがって、第1の電力需要家と第2の電力需要家との間で、分散型電源1から供給される電力を融通し合うことができる。
【0086】
なお、電力システムS2においては、上記第2切替信号生成処理(
図4参照)において、次のようにしてもよい。それは、第2切替信号生成処理を行う場合、統合管理装置4(管理制御部41)は、ステップS21において、受電電力値P3a’が第1閾値以下であると判定されたとき、(S21:YES)、ステップS23の処理を行う前に、充放電装置13の上記充電率を確認する。そして、充放電装置13の充電が可能であれば、分散型電源1に対して、発電装置11が発電した電力を用いて充放電装置13を充電させ、分散型電源1からの出力電力を抑制させる。これにより、受電電力値P3a’が第1閾値以上となった場合には、切替器21を第1接続状態にする切替指示信号を生成する。一方、充放電装置13の充電を行っても、受電電力値P3a’が第1閾値以下のままである場合には、ステップS23の処理を行う。また、充放電装置13の充電率を確認し、満充電であるなどして充放電装置13の充電が不可能と判断した場合には、ステップS23の処理を行う。
【0087】
図8は、本開示の第3実施形態にかかる電力システムを示している。本実施形態の電力システムS3は、上記電力システムS1と比較して、3つ以上の電力需要家設備3を備えている点で異なる。なお、
図8においては、電力系統K、統合管理装置4および通信ネットワーク91などの図示を省略している。
【0088】
本実施形態において、切替器21は、複数のスイッチを組み合わせて構成されている。切替器21は、たとえば
図8に示すように、複数のSPST(Single Pole, Single Throw)型のスイッチ211を有して構成されている。なお、
図8に示す切替器21の構成は、一例であって、これに限定されない。このように構成された切替器21において、分散型電源1から電力を供給させたい電力需要家設備3が接続されたスイッチ211を導通状態にすることで、当該電力需要家設備3に分散型電源1からの電力を供給することができる。なお、
図8に示す切替器21の場合、同時に複数のスイッチ211が導通状態にならないように規制するインターロック機能を付けておく。よって、ある1つのスイッチ211のみが導通状態であるときに他の1つのスイッチ211のみが導通状態となるように接続状態を切り替える場合、一度すべてのスイッチ211が遮断状態となる無接続状態を介した後、上記他の1つのスイッチ211のみを導通状態にする。
【0089】
また、複数の電力需要家設備3を備えている場合、複数の電力需要家設備3において、同時に分散型電源1からの電力供給が必要となる場合がある。このような場合に備えて、各電力需要家設備3に対して優先順位を予め設定しておき、複数の電力需要家設備3において、同時に分散型電源1からの電力供給が必要となった場合、設定された優先順位がより高い電力需要家設備3に分散型電源1からの電力を供給すればよい。
【0090】
以上のように構成された電力システムS3においても、複数の電力需要家がそれぞれ有する電力需要家設備3(電力負荷)における電力使用状況に応じて、分散型電源1の電力供給先を複数の電力需要家設備3のいずれかに切り替えることができる。したがって、複数の電力需要家の間で、分散型電源1から供給される電力を融通し合うことができる。
【0091】
図9は、本開示の第4実施形態にかかる電力システムを示している。上記第1実施形態および上記第2実施形態では、第1の電力需要家設備3Aおよび第2の電力需要家設備3Bとの間で電力融通を行う場合を示したが、本実施形態の電力システムS4は、各々が1つ以上の電力需要家設備3を備える複数の地域Cの間で電力融通を行う。
図9は、電力システムS4の全体構成を示している。なお、電力システムS4において、電力需要家設備3の数は、
図9に示すものに限定されない。
【0092】
電力システムS4において、複数の地域Cの各々には、
図9に示すように、1つ以上の電力需要家設備3が電力網92によって接続されている。本実施形態においては、地域C1には、分散型電源1および切替装置2が設置されている。本実施形態における分散型電源1は、たとえばメガソーラーなどの電力供給の能力が比較的高い分散型電源である。一方、地域C2には、たとえば分散型電源を設置できない制約(たとえば設置スペースがない)などにより、分散型電源が設置されてない。また、本実施形態においては、地域C1の電力網92および地域C2の電力網92が、互いに異なる電力系統K1,K2にそれぞれ接続されているものとする。なお、これらの電力網92が同じ電力系統Kに接続されていてもよい。
【0093】
複数の地域Cの各々は、
図9に示すように、当該各地域Cにおける複数の電力需要家設備3などと通信可能なCEMS(Community Energy Management System)6を備えている。各CEMS6は、各地域Cにおける電力の需要・供給を統合的に管理するシステムである。各CEMS6は、通信ネットワーク91を介して統合管理装置4と通信可能であり、各地域Cにおける電力の需要・供給に関する情報を統合管理装置4に送信している。
【0094】
電力システムS4は、切替装置2の接続状態を切り替えることで、地域C1に設置された分散型電源1の電力供給先が、地域C1の電力網92である第1接続状態と、地域C2の電力網92である第2接続状態とで切り替わるように構成されている。そして、電力システムS4は、統合管理装置4が各CEMS6から受信した上記電力の需要・供給に関する情報に基づいて、切替装置2の接続状態を切り替えるように構成されている。
【0095】
以上のように構成された電力システムS4は、各地域Cにおける電力の需要・供給に関する情報、すなわち、各地域Cにおける電力使用状況に基づいて、切替装置2の接続状態を切り替えることで、地域C1に設置された分散型電源1の電力供給先が、地域C1の電力網92である第1接続状態と、地域C2の電力網92である第2接続状態とを切り替えることができる。これにより、たとえば地域C1における電力の消費が少なく、地域C2における電力の消費が多い場合には、切替装置2の接続状態の切り替えによって、地域C1に設置された分散型電源1の出力電力を、地域C2の電力網92に供給することができる。また、たとえば地域C2において停電などが発生し、電力系統K2から電力を受電できなくても、切替装置2の接続状態の切り替えによって、地域C1に設置された分散型電源1の出力電力を、地域C2の電力網92に供給することができる。したがって、電力システムS4において、複数の地域Cの間で電力を融通し合うことができる。
【0096】
なお、第4実施形態において、複数の電力需要家設備3の少なくとも1つ以上が、個別に、分散型電源1と異なる分散型電源(個別分散型電源)を備えていてもよい。ただし、この個別分散型電源は、切替装置2による切り替えによって電力供給先が変わるものではない。たとえば、地域C1の電力網92に接続された電力需要家設備3が有する個別分散型電源は、その供給電力が、当該電力需要家設備3によって消費される、あるいは、地域C1の電力網92に供給されるだけであり、切替装置2による切り替えによって地域C2の電力網92に供給されることはない。
【0097】
なお、第4実施形態においては、複数の地域Cの間での電力融通について説明したが、これに限定されず、複数のスマートグリッドや複数のマイクログリッドの間においても同様に電力融通することができる。
【0098】
本開示に係る電力システムおよび切替装置は、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の電力システムおよび切替装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。