特許第6971213号(P6971213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971213
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/47 20160101AFI20211111BHJP
   F02M 26/49 20160101ALI20211111BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   F02M26/47 A
   F02M26/49
   F02D45/00 360A
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-197064(P2018-197064)
(22)【出願日】2018年10月18日
(65)【公開番号】特開2020-63720(P2020-63720A)
(43)【公開日】2020年4月23日
【審査請求日】2021年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】垣地 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔平
【審査官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−159454(JP,A)
【文献】 特開2002−147289(JP,A)
【文献】 実開平2−22658(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 43/00
F02D 45/00
F02M 26/47
F02M 26/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの一部をEGRガスとして吸気側へ還流させるEGR装置を備えたエンジンにおいて、
排気通路及び吸気通路を有するエンジン本体と、
EGRガスが流通可能となるように前記排気通路と前記吸気通路とを接続するEGR通路と、
前記EGR通路を流れるEGRガスの温度を検出するEGRガス温度センサと、
前記EGR通路を流れるEGRガスの量を開度の変更により調整可能なEGRバルブと、
前記EGRバルブの開度を制御するEGR制御部と、
前記EGRバルブの開度を検知するEGRバルブ開度検知部と、
前記EGRガス温度センサの検出値に基づいて前記EGRガス温度センサが故障しているか否かを診断する診断部と、
前記EGRバルブが開弁している場合に、時間の経過に応じてカウントを行う第1タイマと、
前記第1タイマのカウント値が予め設定された第1閾値以上であり、かつ、所定条件が満たされている場合に、時間の経過に応じてカウントを行う第2タイマと、
前記第2タイマのカウント値が予め設定された第2閾値未満である場合は前記診断部による診断を阻止し、前記第2閾値以上である場合は当該診断を許可する診断制御部と、
を備えることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンであって、
前記排気通路のうち前記EGR通路との接続部分よりも上流側の部分の内部の温度を検出する排気側温度検出部を備え、
前記所定条件は、少なくとも前記EGRバルブの開度及び前記排気側温度検出部による検出温度に基づくものであることを特徴とするエンジン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエンジンであって、
前記EGRバルブの開度が予め設定された第3閾値以下である場合、前記第1タイマは、時間の経過に応じて逆カウントを行うことを特徴とするエンジン。
【請求項4】
請求項3に記載のエンジンであって、
前記EGRバルブの開度が前記第3閾値以下である場合、前記EGRバルブが全閉状態になることを特徴とするエンジン。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のエンジンであって、
前記第1タイマに係る前記第1閾値よりも前記第1タイマの初期値に近い値である第4閾値が設定され、
前記第1タイマのカウント値が前記第4閾値よりも前記初期値に近い値になった場合には、前記第1タイマのカウント値が当該初期値に戻されることを特徴とするエンジン。
【請求項6】
請求項5に記載のエンジンであって、
前記第1タイマのカウント値が前記第4閾値よりも前記初期値に近い値になった場合には、前記第2タイマのカウント値が、当該第2タイマの初期値に戻されることを特徴とするエンジン。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のエンジンであって、
前記所定条件を満たすには、少なくとも、前記EGRバルブの開度が所定開度以上で、かつ、燃料噴射量が所定噴射量以上であることが必要であり、
前記EGRバルブの開度が前記所定開度未満であり、かつ、前記燃料噴射量が所定噴射量以上である第1の場合では、前記第2タイマは時間の経過に応じて逆カウントを行い、
前記EGRバルブの開度が前記所定開度以上であり、かつ、前記燃料噴射量が前記所定噴射量未満である第2の場合では、前記第2タイマは時間の経過に応じて逆カウントを行い、
前記第2の場合における前記第2タイマのカウント値の変化速度は、前記第1の場合における前記第2タイマのカウント値の変化速度よりも大きいことを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関する。詳細には、排気ガスの一部をEGRガスとして吸気側へ還流させるEGR装置を備えたエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排気ガスの一部を吸気側へ還流させるEGR装置を設け、このEGR装置を用いて吸気に酸素濃度の低い排気ガスの一部(EGRガス)を還流させることにより燃焼温度を低下させ、排気ガス中のNox(窒素酸化物)の量を低減させるエンジンが知られている。この種のエンジンにおいては、排気ガスの吸気側への導入状態を検出するために、EGR通路に、温度を検出する温度センサが設けられている。これにより、EGRの動作に異常が発生しているか否かを監視することができる。
【0003】
EGRの動作の正常/異常に関する誤った判定を防止するために、上記の温度センサに故障があるか否かを診断する構成も従来から提案されている。特許文献1及び2は、EGR温度センサの故障検出装置を開示する。
【0004】
特許文献1のEGR温度センサの故障検出装置は、EGR用連通管に設けられたEGRバルブを介して排気管側から吸気管側に排出ガスが導入されない状態を判定する。この故障検出装置は、吸気管側に排出ガスが導入されない状態が判定された際に、EGR温度センサによる検出温度が高い場合には、当該EGR温度センサを故障として検出する構成となっている。
【0005】
特許文献2の排気ガス再循環装置の故障診断装置は、特許文献1とは異なり、EGRによる排気ガスの還流が行われる状態で温度センサの故障診断を行う。ただし、特許文献2は、サーミスタ等の温度センサは、温度を検出するにあたって応答遅れがあることを指摘する。特許文献2の排気ガス再循環装置の故障診断装置は、この応答遅れを考慮して、EGRがかかっている領域が所定時間継続している状態で、センサによりガス温度を検出し、この検出値により故障診断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平8−26822号公報
【特許文献2】特開平1−356953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
EGRガス温度センサによる検出温度は、特許文献2が述べるセンサ自体の応答遅れに加えて、EGRの動作が開始されてからEGRガス通路内の温度が十分に上昇するのに時間が掛かることによる影響を受ける。従って、特にエンジンの冷態始動時(外気温等が低い条件でエンジンが始動したとき)には、センサ自体が有する応答遅れを考慮するだけでは、検出温度に基づいてEGRガス温度センサの故障の有無を適切に判断できず、誤った診断を行うおそれがあった。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、EGRガス温度センサの診断を精度よく行うことができるエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成のエンジンが提供される。即ち、このエンジンは、排気ガスの一部をEGRガスとして吸気側へ還流させるEGR装置を備える。前記エンジンは、エンジン本体と、EGR通路と、EGRガス温度センサと、EGRバルブと、EGR制御部と、EGRバルブ開度検知部と、診断部と、第1タイマと、第2タイマと、診断制御部と、を備える。前記エンジン本体は、排気通路及び吸気通路を有する。前記EGR通路は、EGRガスが流通可能となるように前記排気通路と前記吸気通路とを接続する。前記EGRガス温度センサは、前記EGR通路を流れるEGRガスの温度を検出する。前記EGRバルブは、前記EGR通路を流れるEGRガスの量を開度の変更により調整可能である。前記EGR制御部は、前記EGRバルブの開度を制御する。前記EGRバルブ開度検知部は、前記EGRバルブの開度を検知する。前記診断部は、前記EGRガス温度センサの検出値に基づいて前記EGRガス温度センサが故障しているか否かを診断する。前記第1タイマは、前記EGRバルブが開弁している場合に、時間の経過に応じてカウントを行う。前記第2タイマは、前記第1タイマのカウント値が予め設定された第1閾値以上であり、かつ、所定条件が満たされている場合に、時間の経過に応じてカウントを行う。前記診断制御部は、前記第2タイマのカウント値が予め設定された第2閾値未満である場合は前記診断部による診断を阻止し、前記第2閾値以上である場合は当該診断を許可する。
【0011】
これにより、EGR通路でのEGRガス温度センサの周辺の構成に対するEGRガスによる暖機の度合いを示す第1タイマを用いることで、当該暖機に必要な時間を適切に考慮して、適切なタイミングでEGRガス温度センサの診断を行うことができる。また、第1タイマのカウント値が所定閾値以上であることを第2タイマのカウントの条件の1つとすることで、様々な判断要素をバランス良く考慮して、診断のタイミングを定めることができる。この結果、EGRガス温度センサの診断を精度よく行うことができる。
【0012】
前記のエンジンにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、エンジンは、前記排気通路のうち前記EGR通路との接続部分よりも上流側の部分の内部の温度を検出する排気側温度検出部を備える。前記所定条件は、少なくとも前記EGRバルブの開度及び前記排気側温度検出部による検出温度に基づくものである。
【0013】
これにより、EGR通路におけるEGRガスの温度が高く、かつ、EGRガスの流量が十分な状態で、EGRガス温度センサの診断を行うことができる。よって、前記EGRガス温度センサの診断の精度を向上させることができる。
【0014】
前記のエンジンにおいては、前記EGRバルブの開度が予め設定された第3閾値以下である場合、前記第1タイマは、時間の経過に応じて逆カウントを行うことが好ましい。
【0015】
即ち、EGR通路がいったん暖機された後に、EGRガスによる暖機が十分でなくなった場合、EGRガス温度センサの周辺の構成が冷えてしまう場合があり得る。この場合、第1タイマのカウント値を巻き戻すことで、温度低下の進行を適切に考慮して、EGRガス温度センサの診断タイミングを遅らせることができる。
【0016】
前記のエンジンにおいては、前記EGRバルブの開度が前記第3閾値以下である場合、前記EGRバルブが全閉状態になることが好ましい。
【0017】
これにより、EGR通路に対してEGRガスによる暖機が実質的に行われなくなった場合に、EGRガス温度センサの診断タイミングを適切に遅らせることができる。
【0018】
前記のエンジンにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1タイマに係る前記第1閾値よりも前記第1タイマの初期値に近い値である第4閾値が設定される。前記第1タイマのカウント値が前記第4閾値よりも前記初期値に近い値になった場合には、前記第1タイマのカウント値が当該初期値に戻される。
【0019】
これにより、EGRガスによる暖機が不十分な状況が継続して、EGR通路の周辺の構成が長時間にわたって冷えてしまった場合は、暖機が全くされなかったとみなすことで、早過ぎるタイミングでのEGRガス温度センサの診断を回避することができる。一方で、例えば、エンジンの運転状態に関する所定の変化時(例えば、加速時又は負荷投入時)において、EGRガスの温度が下がらないような短時間のEGRカットが実行された場合は、前記EGRガス温度センサの診断タイミングを過度に遅らせないようにすることができる。
【0020】
前記のエンジンにおいては、前記第1タイマのカウント値が前記第4閾値よりも前記初期値に近い値になった場合には、前記第2タイマのカウント値が、当該第2タイマの初期値に戻されることが好ましい。
【0021】
これにより、EGRガスによる暖機が不十分な状況が継続して、EGR通路の周辺の構成が長時間にわたって冷えてしまった場合は、EGRガス温度センサの診断のための所定条件を満たす状況が全く現れなかったとみなすことで、状況が安定するまで、EGRガス温度センサの診断を行わずに待機することができる。一方で、上記の短時間のEGRカット等の場合は、EGRガス温度センサの診断タイミングを過度に遅らせないようにすることができる。
【0022】
前記のエンジンにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記所定条件を満たすには、少なくとも、前記EGRバルブの開度が所定開度以上で、かつ、燃料噴射量が所定噴射量以上であることが必要である。前記EGRバルブの開度が前記所定開度未満であり、かつ、前記燃料噴射量が所定噴射量以上である第1の場合では、前記第2タイマは時間の経過に応じて逆カウントを行う。前記EGRバルブの開度が前記所定開度以上であり、かつ、前記燃料噴射量が前記所定噴射量未満である第2の場合では、前記第2タイマは時間の経過に応じて逆カウントを行う。前記第2の場合における前記第2タイマのカウント値の変化速度は、前記第1の場合における前記第2タイマのカウント値の変化速度よりも大きい。
【0023】
これにより、燃料噴射量の条件が満たされない場合は、EGRバルブの開度の条件が満たされない場合よりも、第2タイマのカウント値が相対的に大きく巻き戻される。従って、EGRガス温度センサの異常診断の精度を上げるために重要な燃料噴射量を重視して、EGRガス温度センサの診断のタイミングを定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るエンジンの構成を模式的に示した概略図。
図2】ECUの構成を示す機能ブロック図。
図3】EGRガス温度センサの診断のためにECUにより行われる処理のうち、第1タイマに関する部分を示すフローチャート。
図4】第2タイマに関する処理を示すフローチャート。
図5】第2タイマがカウントを進める所定条件を説明する図。
図6】EGRガス温度センサの診断に関するタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
初めに、図1及び図2を参照して、エンジン1の概要について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るエンジン1の構成を模式的に示した概略図である。図2は、ECU9の構成を示す機能ブロック図である。
【0027】
エンジン1は、本実施形態においては直列4気筒型のディーゼルエンジンである。図1に示すように、エンジン1は、エンジン本体3と、燃料噴射装置5と、EGR装置(排気ガス再循環装置)7と、エンジン制御部としてのECU(エンジンコントロールユニット)9と、を備える。
【0028】
エンジン本体3は、シリンダ11と、吸気部13と、排気部15と、を備えている。シリンダ11は4つ備えられている。
【0029】
各シリンダ11には、燃焼室17と、スライド可能なピストン19と、が設けられている。ピストン19は、ロッド21を介して、エンジン1の出力軸であるクランク軸23に連結されている。
【0030】
吸気部13は、空気が流通可能な吸気通路を備えている。この吸気通路は、吸気管25と、吸気マニホールド27と、を有している。
【0031】
吸気管25は、吸気マニホールド27とともに、空気をエンジン本体3の外部から内部(燃焼室17)に吸入させることができる。吸気管25は、吸気マニホールド27と接続されている。
【0032】
吸気マニホールド27は、吸気管25からの空気をエンジン本体3のシリンダ11の数に応じて分配し、それぞれのシリンダ11の燃焼室17に導く。
【0033】
排気部15は、排気ガスが流通可能な排気通路を備えている。この排気通路は、排気マニホールド31と、排気管33と、を有している。
【0034】
排気マニホールド31は、それぞれのシリンダ11の燃焼室17で発生した排気ガスをまとめ、排気管33に導く。
【0035】
排気管33は、排気マニホールド31と接続されている。排気管33は、排気マニホールド31からの排気ガスをエンジン本体3の外部へ排出する。
【0036】
燃料噴射装置5は、各シリンダ11に対応するインジェクタ37を備えている。それぞれのインジェクタ37には、図略の燃料噴射ポンプによって圧送された燃料がコモンレール(図略)を介して分配される。
【0037】
インジェクタ37が備える電磁弁は、ECU9に電気的に接続されている。インジェクタ37は、ECU9からの指令値に応じて、燃焼室17内に適宜の量の燃料を適宜のタイミングで噴射する。
【0038】
インジェクタ37によって燃料が燃焼室17に噴射されると、圧縮自着火燃焼が生じ、これによりピストン19がシリンダ11内で往復運動する。そして、このピストン19の往復運動がロッド21を介してクランク軸23の回転運動に変換される。
【0039】
EGR装置7は、排気ガスの一部をEGRガスとして排気側(前記排気通路)から吸気側(前記吸気通路)へ還流させることができる。
【0040】
EGR装置7は、EGR通路としてのEGR管41と、EGRクーラ43と、EGRバルブ45と、EGRガス温度センサ47と、を備えている。
【0041】
EGR管41は、EGRガスを前記排気通路から前記吸気通路へ還流させるように配置されている。EGR管41は、排気管33のうち排気マニホールド31付近の部分と吸気管25との間を繋ぐように設けられている。
【0042】
EGRクーラ43は、EGRガスを冷却することができる。EGRクーラ43は、EGR管41においてEGRガスが流れる経路の途中部に設けられている。
【0043】
EGRバルブ45は、EGRガスの還流量を調整することができる。EGRバルブ45は、EGR管41においてEGRガスが流れる経路の途中部に設けられている。EGRバルブ45は、EGRガスの還流方向においてEGRクーラ43よりも下流側に配置されている。
【0044】
EGRバルブ45は、ECU9に電気的に接続されている。EGRバルブ45は、ECU9からの指令値に応じて、当該EGRバルブ45の開度を変更することができる。
【0045】
EGRバルブ45は、その開度の変更により、EGRガスの還流通路となるEGR管41の実質的な流路面積を変化させる。これにより、EGRガスをどれだけ還流させるかをEGRバルブ45により調整することができる。
【0046】
EGRガス温度センサ47は、EGRガスの温度を検出することができる。EGRガス温度センサ47は、EGR管41においてEGRガスが流れる経路の途中部に設けられている。
【0047】
EGRガス温度センサ47は、EGRガスの還流方向においてEGRバルブ45よりも上流側に配置されている。また、EGRガス温度センサ47は、EGRガスの還流方向においてEGRクーラ43よりも下流側に配置されている。
【0048】
ECU9は、エンジン1の運転制御を行うことができるように構成されている。本実施形態において、ECU9は、EGRバルブ45の開度を制御するEGR制御部51としても機能するようになっている。
【0049】
図2に示すように、ECU9は、診断部53と、第1タイマ55と、第2タイマ57と、診断制御部59と、を更に備えている。
【0050】
具体的に説明すると、ECU9は公知のコンピュータとして構成されており、CPU、ROM、RAM、タイマ回路等を備える。CPUは、各種演算処理や制御を実行する。ROM及びRAMは、各種の情報を記憶する。ROMには、EGRガス温度センサ47の故障診断を行うためのプログラムが記憶されている。上記のハードウェアとソフトウェアの協働により、ECU9を、EGR制御部51、診断部53、第1タイマ55、第2タイマ57、及び診断制御部59等として機能させることができる。
【0051】
診断部53は、EGR装置7のEGRガス温度センサ47の診断(詳細には、EGRガス温度センサ47が故障しているか否かの異常診断)を行う。以下、この診断を異常診断と呼ぶことがある。
【0052】
EGRガス温度センサ47の異常診断は、公知の方法により行うことができる。簡単に説明すれば、エンジン1を始動した後、EGRガス温度センサ47が十分に高温な環境下にあるときに、診断部53が、EGRガス温度センサ47の検出値を取得する。なお、事前に、エンジン1を始動する前(冷態)において、EGRガス温度センサ47の検出値が予め記憶されている。診断部53は、2つの検出値の差を計算し、得られた差が所定値よりも小さい場合に、EGRガス温度センサ47に異常が生じていると判断することができる。
【0053】
第1タイマ55は、エンジン1の始動時にカウント値が0に初期化されるカウントアップタイマである。第1タイマ55は、EGRバルブ45の開度が所定の条件を満たす場合に、カウント値に対し、所定時間ごとに所定の数を加算する(カウントアップ)。本実施形態では、カウントアップの条件は、EGRバルブ45が僅かでも開いていること(開度が全閉でないこと)である。一方で、この条件が満たされない場合は、第1タイマ55は、所定時間ごとに所定の数を減算する(カウントダウン)。
【0054】
第2タイマ57は、第1タイマ55と同様に、エンジン1の始動時にカウント値が0に初期化されるカウントアップタイマである。第2タイマ57は、第1タイマ55のカウント値が所定の値以上であり、かつ、所定条件が満たされる場合に、カウント値に対し、所定時間ごとに所定の数を加算する(カウントアップ)。一方で、この条件が満たされない場合は、第2タイマ57は、所定時間ごとに所定の数を減算する(カウントダウン)。
【0055】
本実施形態において、第1タイマ55はカウントアップタイマであるので、通常のカウントはカウントアップになり、逆カウントはカウントダウンになる。第2タイマ57も同様である。
【0056】
診断制御部59は、第2タイマ57のカウント値を監視する。診断制御部59は、第2タイマ57のカウント値が所定の閾値未満である場合は、診断部53による異常診断を阻止し、所定の閾値以上である場合は、診断部53による異常診断を許可する。
【0057】
ECU9は、エンジン本体3の運転状態を検出するための検出部61と電気的に接続されている。ECU9は、検出部61による各種の検出値を得て、その検出値に基づいてエンジン1の運転制御を行う。
【0058】
例えば、ECU9は、検出部61による検出値からEGRガスの温度を得て、得られた温度に基づいてEGRバルブ45の開度を調整する。これにより、EGRガスの還流量を制御することができる。
【0059】
検出部61は、上述のEGRガス温度センサ47のほか、EGRバルブ開度検知部63と、排気側温度検出部65と、回転数検出部67と、燃料噴射量検知部69と、を有する。
【0060】
EGRバルブ開度検知部63は、EGRバルブ45の開度を適宜の方法により検知する。本実施形態においては、EGRバルブ開度検知部63は、ECU9からEGRバルブ45への指令値に基づいてその開度を計算することにより、EGRバルブ45の開度を取得している。
【0061】
ただし、EGRバルブ開度検知部63は、例えば、EGRバルブに位置検出センサを設けることによりEGRバルブの開度を検出するように構成されてもよい。
【0062】
排気側温度検出部65は、前記排気通路のうち排気管33とEGR通路(EGR管41)との接続部分よりも上流側部分の温度を検出する。排気側温度検出部65は、例えば、前記排気通路のうち排気マニホールド31又はその付近の排気ガスの温度を検出する温度センサとして構成することができる。
【0063】
回転数検出部67は、エンジン1の回転数を取得する。回転数検出部67は、例えば、エンジン本体3のクランク軸23の回転を検出するクランクセンサとして構成することができる。
【0064】
燃料噴射量検知部69は、燃料噴射装置5による燃料噴射量を検知する。燃料噴射量検知部69は、例えば、ECU9からインジェクタ37が備える電磁弁への指令値に基づいて燃料噴射量を計算することにより得るように構成することができる。
【0065】
次に、図3及び図4を参照しながら、ECU9を用いたEGRガス温度センサ47の診断について説明する。
【0066】
図3は、第1タイマ55の処理に関するフローチャートを示している。図3のフローは、エンジン1が始動することにより開始される。
【0067】
先ず、ECU9は、第1タイマ55のカウント値を下限値とする初期化処理を行う(ステップS101)。本実施形態では、第1タイマ55のカウント値の下限値は0、上限値は0を超える所定の値としている。ステップS101では、第1タイマ55のカウント値が0にリセットされる。
【0068】
次に、ECU9は、EGRバルブ45の開度をEGRバルブ開度検知部63により検出し、このバルブが僅かでも開いているか否かを判定する(ステップS102)。この判断には、バルブの開度の下限値よりも僅かに大きい適宜の閾値が用いられる。この閾値は、後述の開閉判定閾値(第3閾値)に相当する。ステップS102の判断で、EGRバルブ45が僅かでも開いている場合は、ECU9は、第1タイマ55をカウントアップする(ステップS103)。ただし、既にカウント値が所定の上限値になっている場合は、カウントアップは行われない。その後、処理はステップS102に戻る。
【0069】
ステップS102の判断で、EGRバルブ45が全閉である場合は、ECU9は、第1タイマ55をカウントダウンする(ステップS104)。ただし、既にカウント値が下限値(0)になっている場合は、カウントダウンは行われない。
【0070】
ステップS104の処理の後、ECU9は、第1タイマ55のカウント値がいったん所定の上限値に到達した後、所定の閾値を下回ったか否かを判定する(ステップS105)。この閾値は、後述のリセット閾値(第4閾値)に相当する。この条件が満たされた場合、ECU9は、後述の第2タイマ57のカウント値を、初期値(下限値)である0にリセットする(ステップS106)。その後、処理はステップS101に戻り、ECU9は、第1タイマ55のカウント値を、初期値(下限値)である0にリセットする。2つのタイマが強制的にリセットされた後、処理はステップS102に戻る。ステップS105の条件が満たされていない場合も、処理はS102に戻る。
【0071】
図4は、第2タイマ57の処理に関するフローチャートを示している。図4のフローは、エンジン1が始動することにより開始される。また、図4のフローは、図3に示す第1タイマ55の処理と同時並行的に行われる。
【0072】
先ず、ECU9は、第2タイマ57のカウント値を下限値とする初期化処理を行う(ステップS201)。本実施形態では、第2タイマ57のカウント値の下限値は0、上限値は0を超える所定の値としている(第1タイマ55と同様である)。ステップS201では、第2タイマ57のカウント値が0にリセットされる。
【0073】
次に、ECU9は、前述の第1タイマ55のカウント値が所定の第1閾値以上であるか否かを調べる(ステップS202)。この第1閾値は、後述の許可判定開始閾値に相当する。第1閾値は任意に定めることができるが、例えば、第1閾値を、上限値と同じとすることができる。
【0074】
ステップS202の判断で、第1タイマ55のカウント値が第1閾値以上であった場合、ECU9は、排気側温度等に関する所定の条件が満たされているか否かを判定する(ステップS203)。この条件は、EGRガス温度センサ47の異常診断のために、十分に高温なEGRガスを適切な流量でEGR管41に供給しているかどうかを考慮して、主にエンジン運転領域に着目して定められたものである。この条件の詳細は後述する。当該条件が満たされている場合、ECU9は、第2タイマ57をカウントアップする(ステップS204)。ただし、既にカウント値が所定の上限値になっている場合は、カウントアップは行われない。
【0075】
その後、ECU9の診断制御部59は、第2タイマ57のカウント値が所定の第2閾値以上であるか否かを判定する(ステップS205)。この第2閾値は、後述の診断許可閾値に相当する。第2閾値は任意に定めることができるが、例えば、所定の上限値よりも少し小さい値とすることができる。
【0076】
ステップS205の判断で、第2タイマ57のカウント値が第2閾値以上である場合、診断制御部59は、診断部53に対して、EGRガス温度センサ47が故障しているか否かの診断を許可する(ステップS206)。これにより、診断部53は、EGRガス温度センサ47の診断を行う。
【0077】
なお、エンジン1が始動してから、ステップS206によって異常診断が許可されるまでは、異常診断が診断制御部59によって禁止される。このため、第2タイマ57のカウント値が第2閾値に到達するまでは、診断部53は異常診断を行わずに待機する。
【0078】
ステップS202の判断で、第1タイマ55のカウント値が第1閾値を下回る場合は、ECU9は、第2タイマ57をカウントダウンする(ステップS207)。ステップS203の判断で、燃料噴射量等が所定の条件を満たさない場合も、ステップS207の処理が行われる。ただし、既にカウント値が下限値(0)になっている場合は、カウントダウンは行われない。その後、処理はステップS202に戻る。
【0079】
次に、ステップS203における判定の詳細について説明する。
【0080】
ステップS203の所定条件は、具体的には、[1]排気側温度検出部65が検出する温度が所定温度以上であること、[2]燃料噴射量が、エンジン回転数に応じて定められた所定噴射量以上であること、[3]EGRバルブ45の開度が所定開度以上であること、の何れにも適合するときに満たされる。
【0081】
図5には、縦軸に指示噴射量、横軸にエンジン回転数をとったグラフにおいて、事前の実験で、EGRガス温度が十分に高い温度となっていることが判明した運転領域がハッチングで示されている。上記の[1]〜[3]の条件は、運転状態が上記のハッチング領域内に入ることを考慮して定められたものである。
【0082】
ただし、この条件は、EGRガス温度センサ47の異常診断のために十分に高い温度のEGRガスを適切な流量で得られる限り、適宜変更することができる。例えば、EGRバルブ45の開度と、排気側温度検出部65による検出温度と、の2つだけに基づいて、ステップS203の条件が満たされるか否かを判定しても良い。
【0083】
このように、本実施形態では、ステップS203における所定条件として、EGRバルブ45の開度の条件、及び、排気側温度検出部65が検出する温度の条件が含まれている。これにより、EGRガスの温度が高く、かつ、流れるEGRガスの流量が十分な状態が安定している状況で、EGRガス温度センサ47の異常診断を行うことができる。
【0084】
次に、第1タイマ55及び第2タイマ57のカウント値が変化する例を、図6のグラフにより説明する。図6には、EGRバルブ45の開度、第1タイマ55のカウント値、燃料噴射量、排気側温度検出部65により検出した排気側温度、及び、第2タイマ57のカウント値の時間推移が、上下に並んだ5つのグラフにより示されている。図6に示すグラフの横軸は、上下方向でそれぞれ対応している。
【0085】
エンジン1が始動した後、t1のタイミングで、全閉状態であったEGRバルブ45が大きく開かれたとする。この結果、開度が所定の開閉判定閾値(第3閾値)を上回ることに伴い、第1タイマ55のカウント値が、t1のタイミングで、0から増加を開始する。t1のタイミングから時間が経過するのに応じて、第1タイマ55のカウントが反復して行われる。EGR管41にEGRガスが導入されて暖機が進行するのを反映して、第1タイマ55のカウント値が増加していく。
【0086】
EGRバルブ45が開いている状態が継続し、やがて、t2のタイミングで、第1タイマ55のカウント値が上限値に到達する。この状況は、EGR管41においてEGRガス温度センサ47の周辺が十分に暖機されたことを示している。第1タイマ55の上限値は、第2タイマ57のカウントアップの条件である許可判定開始閾値(第1閾値)vt1に相当する。t2のタイミングでは、燃料噴射量が所定噴射量z1以上であり、排気側温度が所定温度z2以上であり、EGRバルブ45の開度が所定開度z3以上である。ステップS202及びステップS203の条件が満たされているので、第2タイマ57のカウント値が、t2のタイミングで、0から増加を開始する。t2のタイミングから時間が経過するのに応じて、第2タイマ57のカウントが反復して行われる。
【0087】
次に、第2タイマ57のカウント値が診断許可閾値(第2閾値)vt2に達する前のt3のタイミングで、EGRバルブ45の開度が閉じ側に変化し、所定開度z3を下回ったとする。ステップS203の条件が満たされなくなるので、第2タイマ57のカウント値が、t3のタイミングで、増加から減少に転じる。t3のタイミングから時間が経過するのに応じて、第2タイマ57の逆カウントが反復して行われる。
【0088】
続いて、t4のタイミングで、EGRバルブ45の開度が全閉となり、開閉判定閾値(第3閾値)vt3以下になったとする。これに伴い、上限値を維持していた第1タイマ55のカウント値が減少し始める。t4のタイミングから時間が経過するのに応じて、第1タイマ55の逆カウントが反復して行われる。これにより、EGR管41の周辺の構成が冷えていくのを第1タイマ55のカウント値に反映させることができる。
【0089】
t5のタイミングでEGRバルブ45が大きく開かれたとする。これに伴い、t5のタイミングでは、第1タイマ55のカウント値及び第2タイマ57のカウント値の両方が、減少から増加に転じる。t6のタイミングになる少し前に、第1タイマ55のカウント値は、再び上限値に達している。
【0090】
その後すぐに、t6のタイミングでEGRバルブ45が再び全閉となったとする。t6のタイミングでは、EGRバルブ45の開度が所定開度z3を下回り、また、開閉判定閾値vt3以下になる。従って、t6のタイミングでは、第1タイマ55及び第2タイマ57のカウント値の両方が減少し始める。
【0091】
EGRバルブ45の全閉の状態が継続すると、やがて、t7のタイミングで、第1タイマ55のカウント値が所定のリセット閾値(第4閾値)vt4を下回る。すると、このタイミングで、第1タイマ55及び第2タイマ57のカウント値が強制的に0にリセットされる。即ち、異常診断のための第1タイマ55及び第2タイマ57のカウントは、何れも最初からやり直しとなる。これにより、EGRガス温度センサ47の異常診断のタイミングを、状況がより安定するまで遅らせることになる。従って、診断精度を高めることができる。
【0092】
t8のタイミングで、全閉状態であったEGRバルブ45が、大きく開かれたとする。開度が開閉判定閾値vt3を上回るので、第1タイマ55のカウント値が、t8のタイミングで、0から増加を開始する。
【0093】
EGRバルブ45が開いている状態が継続し、やがて、t9のタイミングで、第1タイマ55のカウント値が上限値(言い換えれば、許可判定開始閾値vt1)に到達する。t9のタイミングでは、t2のタイミングと同様に、ステップS202及びS203の条件が満たされている。従って、第2タイマ57のカウント値が、t9のタイミングで、0から増加を開始する。
【0094】
第2タイマ57のカウント値が診断許可閾値vt2に達する前のt10のタイミングで、燃料噴射量が減少側に変化し、所定噴射量z1を下回ったとする。ステップS203の条件が満たされなくなるので、第2タイマ57のカウント値が、t10のタイミングで、増加から減少に転じる。
【0095】
t11のタイミングで、燃料噴射量が元の値に回復し、再び所定噴射量z1以上になったとする。ステップS203の条件が満たされるので、第2タイマ57のカウント値は、このタイミングで増加し始める。
【0096】
やがて、t12のタイミングで、第2タイマ57のカウント値が診断許可閾値vt2に到達する。このt12のタイミングで、診断部53は、EGRガス温度センサ47の異常診断を行うことになる。
【0097】
本実施形態において、第2タイマ57は、EGRガス温度センサ47の異常診断を行うのに適した運転状態等が安定して現れていることを確保するタイマであるということができる。そして、この第2タイマ57がカウントアップする条件として、第1タイマ55のカウント値が所定の閾値(許可判定開始閾値vt1)以上であること、言い換えれば、EGR管41の周辺が十分な時間を掛けて暖機されていることが必要になる。これにより、EGR管41の周辺の暖気が不十分な状態で異常診断を行うことを防止できるので、EGRガス温度センサ47の異常診断の精度を高めることができる。
【0098】
第2タイマ57は、上記の[1]〜[3]の条件が1つでも満たされない場合は、逆カウントを行う。このうち、燃料噴射量が所定噴射量z1を下回る場合の逆カウントの速度(t10からt11までのカウント値の減少速度)は、EGRバルブの開度が所定開度z3を下回る場合の逆カウントの速度(t3からt5までのカウント値の減少速度)よりも大きい。燃料噴射量は、EGRガス温度センサ47の周辺の温度を十分に高めるために重要である。従って、上記のように燃料噴射量の条件に敏感なタイマカウント制御とすることで、良好なタイミングで異常診断を行うことができる。
【0099】
以上に説明したように、本実施形態のエンジン1は、排気ガスの一部をEGRガスとして吸気側へ還流させるEGR装置7を備える。エンジン1は、エンジン本体3と、EGR管41と、EGRガス温度センサ47と、EGRバルブ45と、EGR制御部51と、EGRバルブ開度検知部63と、診断部53と、第1タイマ55と、第2タイマ57と、診断制御部59と、を備える。エンジン本体3は、排気通路及び吸気通路を有する。EGR管41は、EGRガスが流通可能となるように排気通路と吸気通路とを接続する。EGRガス温度センサ47は、EGR管41を流れるEGRガスの温度を検出する。EGRバルブ45は、EGR管41を流れるEGRガスの量を開度の変更により調整可能である。EGR制御部51は、EGRバルブ45の開度を制御する。EGRバルブ開度検知部63は、EGRバルブ45の開度を検知する。診断部53は、EGRガス温度センサ47の検出値に基づいてEGRガス温度センサ47が故障しているか否かを診断する。第1タイマ55は、EGRバルブ45が開弁している場合に、時間の経過に応じてカウントを行う。第2タイマ57は、第1タイマ55のカウント値が予め設定された許可判定開始閾値vt1以上であり、かつ、所定条件が満たされている場合に、時間の経過に応じてカウントを行う。診断制御部59は、第2タイマ57のカウント値が予め設定された診断許可閾値vt2未満である場合は診断部53による診断を阻止し、診断許可閾値vt2以上である場合は診断を許可する。
【0100】
これにより、EGR管41でのEGRガス温度センサ47の周辺の構成に対するEGRガスによる暖機の度合いを示す第1タイマ55を用いることで、当該暖機に必要な時間を適切に考慮して、適切なタイミングでEGRガス温度センサ47の診断を行うことができる。また、第1タイマ55のカウント値が所定閾値以上であることを第2タイマ57のカウントの条件の1つとすることで、様々な判断要素をバランス良く考慮して、診断のタイミングを定めることができる。よって、EGRガス温度センサ47の診断を精度よく行うことができる。
【0101】
また、本実施形態のエンジン1は、排気側温度検出部65を備える。この排気側温度検出部65は、前記排気通路のうちEGR管41との接続部分よりも上流側部分に設けられ、この上流側部分の温度を検出するように構成される。そして、ステップS203の所定条件は、少なくともEGRバルブ45の開度及び排気側温度検出部65の検出温度に基づくものである。
【0102】
これにより、EGR管41におけるEGRガスの温度が高く、かつ、EGRガスの流量が十分な状態で、EGRガス温度センサ47の診断を行うことができる。よって、EGRガス温度センサ47の診断の精度を向上させることができる。
【0103】
また、本実施形態のエンジン1において、EGRバルブ45の開度が予め設定された開閉判定閾値vt3以下である場合、第1タイマ55は、時間の経過に応じて逆カウントを行う。
【0104】
EGRバルブ45の開度が開閉判定閾値vt3以下である場合は、EGRバルブ45が全閉状態になる場合を意味するが、小さく開いている場合を含んでも良い。
【0105】
即ち、EGR管41等がいったん暖機された後に、EGRバルブ45が完全に閉じた場合、又は開いていても開度が十分でない場合は、EGRガス温度センサ47の周辺の構成が冷えてしまう場合があり得る。この場合、第1タイマ55のカウント値を巻き戻すことで、温度低下の進行を適切に考慮して、EGRガス温度センサ47の診断タイミングを遅らせることができる。
【0106】
また、本実施形態のエンジン1において、第1タイマ55に係る許可判定開始閾値vt1よりも0に近い値であるリセット閾値vt4が設定される。第1タイマ55のカウント値がリセット閾値vt4よりも0に近い値になった場合には、図6のt7のタイミングに示すように、第1タイマ55のカウント値が0にリセットされる。
【0107】
これにより、EGRガスによる暖機が不十分な状況が継続して、EGR管41の周辺の構成が長時間にわたって冷えてしまった場合は、暖機が全くされなかったとみなすことで、早過ぎるタイミングでのEGRガス温度センサ47の診断を回避することができる。一方で、エンジン1の運転状態に関する所定の変化時(例えば、加速時又は負荷投入時)における、EGRガスの温度が下がらないような短時間のEGRカットが実行された場合は、EGRガス温度センサ47の診断タイミングを過度に遅らせないようにすることができる。
【0108】
また、本実施形態のエンジン1は、第1タイマ55のカウント値がリセット閾値vt4よりも0に近い値になった場合には、図6のt7のタイミングに示すように、第2タイマ57のカウント値が0にリセットされる。
【0109】
これにより、EGRガスによる暖機が不十分な状況が継続して、EGR管41の周辺の構成が長時間にわたって冷えてしまった場合は、EGRガス温度センサ47の診断のための所定条件を満たす状況が全く現れなかったとみなすことで、状況が安定するまで、EGRガス温度センサ47の診断を行わずに待機することができる。一方で、上記の短時間のEGRカット等の場合は、EGRガス温度センサ47の診断タイミングを過度に遅らせないようにすることができる。
【0110】
また、本実施形態のエンジン1において、ステップS203の所定条件を満たすには、EGRバルブ45の開度が所定開度z3以上で、かつ、燃料噴射量が所定噴射量z1以上であることが必要である。EGRバルブ45の開度が所定開度z3未満であり、かつ、燃料噴射量が所定噴射量z1以上である第1の場合(図6のt3からt5まで)では、第2タイマ57が時間の経過に応じて逆カウントを行う。EGRバルブ45の開度が所定開度z3以上であり、かつ、燃料噴射量が所定噴射量z1未満である第2の場合(t10からt11まで)では、第2タイマ57が時間の経過に応じて逆カウントを行う。前記第2の場合における第2タイマ57のカウント値の変化速度は、前記第1の場合における第2タイマ57のカウント値の変化速度よりも大きい。
【0111】
これにより、燃料噴射量の条件が満たされない場合は、EGRバルブの開度の条件が満たされない場合よりも、第2タイマ57のカウント値が相対的に大きく巻き戻される。従って、EGRバルブ45の異常診断の精度を上げるために重要な燃料噴射量を重視して、EGRガス温度センサ47の診断のタイミングを定めることができる。
【0112】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0113】
第1タイマ55は、初期値が0であり、0からカウントアップするカウントアップタイマとして構成されている。これに代えて、初期値を適宜の値とし、この値からカウントダウンするカウントダウンタイマとして構成しても良い。第2タイマ57も、同様にカウントダウンタイマとして構成しても良い。カウントダウンタイマの場合、通常のカウントはカウントダウンになり、逆カウントはカウントアップになる。
【0114】
第1タイマ55及び第2タイマ57の取り得るカウント値の範囲、及び初期値は、適宜変更することができる。上述の第1から第4までの閾値も、事情に応じて適宜変更することができる。
【0115】
第1タイマ55の逆カウント処理を省略しても良い。
【0116】
第1タイマ55及び第2タイマ57のカウント値を強制的にリセットする処理は、適宜省略することができる。
【0117】
図6の例では、排気側温度が所定温度を上回った後、一度も所定温度以下にならないように推移している。ただし、何らかの原因で、排気側温度が所定温度を下回る場合も考えられる。この場合、図4のフローチャートに従えば、第2タイマ57はカウントダウン(逆カウント)を行う。しかしながら、第2タイマ57のカウント値を即時に0にリセットしても良い。
【0118】
燃料噴射量が所定噴射量z1を下回る場合の逆カウントの速度は、EGRバルブの開度が所定開度z3を下回る場合の逆カウントの速度と等しくても良い。
【0119】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0120】
1 エンジン
3 エンジン本体
7 EGR装置
41 EGR管(EGR通路)
45 EGRバルブ
47 EGRガス温度センサ
51 EGR制御部
53 診断部
55 第1タイマ
57 第2タイマ
59 診断制御部
63 EGRバルブ開度検知部
65 排気側温度検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6