【実施例】
【0039】
実施例I ヘキシルアミン変性ヒアルロン酸で安定化されたオレイン酸コアをテンプレートとするナノカプセルの調製
ヘキシル側鎖で変性したヒアルロン酸(Hy−C6)を0.1MのNaClに溶解し(1g/L)、オレイン酸と混合した(100:1 v/v)。両相をボルテックスで5分間撹拌し、室温の超音波浴で30分間乳化した(540W、パルス1秒間、休止2秒間)。得られたカプセルのサイズを、動的光散乱法(DLS)を用いて測定したところ、約500nmであった。得られたカプセルは少なくとも2週間の安定を示すことが、流体力学的直径およびゼータ電位測定により確認された。調製の2日後、粒子サイズの低下が認められた(約360nmまで)。これは、凝集体および/またはより大きなカプセルが不安定化し、より小さくより安定な粒子のみを含むエマルジョンが形成されたことを示唆している(
図1、表1)。
【0040】
実施例II オクチルアミン変性ヒアルロン酸で安定化されたオレイン酸コアをテンプレートとするナノカプセルの調製
オクチル側鎖で変性したヒアルロン酸(Hy−C8)の水溶液およびオレイン酸の混合物を実施例Iに記載した手順に従い調製した。得られたカプセルのサイズを動的光散乱法(DLS)により測定したところ、約700nmであった。得られたカプセルは少なくとも2週間の安定を示すことが、流体力学的直径およびゼータ電位測定により確認された。超音波処理から2日後、粒子サイズの著しい低下が認められた(約300nmまで)。これは、凝集体および/またはより大きなカプセルが不安定化し、より小さくより安定な粒子のみを含むエマルジョンが形成されたことを示唆している(
図2、表1)。
【0041】
実施例III ドデシルアミン変性ヒアルロン酸で安定化されたオレイン酸コアをテンプレートとするナノカプセルの調製
ドデシル側鎖で変性したヒアルロン酸(Hy−C12)を0.1MのNaClに溶解し(1g/L)、多糖類を完全に溶解するためにマグネチックスターラーを用いて60分間激しく混合した(500rpm)。次いでこの水溶液をオレイン酸と混合し(100:1 v/v)、5分間ボルテックスで撹拌し、室温の超音波浴で30分間乳化した(540W、パルス1秒間、休止2秒間)。得られたカプセルのサイズを動的光散乱法(DLS)により測定したところ、約200nmであった。得られたカプセルは少なくとも2週間の安定を示すことが、流体力学的直径およびゼータ電位測定により確認された。得られたカプセルのサイズが超音波処理から3日後に若干低下したことから、凝集体および/またはより大きなカプセルが不安定化し、より小さくより安定な粒子のみを含むエマルジョンが形成されたという仮説が立てられる(
図3、表1)。
【0042】
実施例IV オクタデシルアミン変性ヒアルロン酸で安定化されたオレイン酸コアをテンプレートとするナノカプセルの調製
オクタデシル側鎖で変性したヒアルロン酸(Hy−C18)の水溶液およびオレイン酸の混合物を実施例IIIに記載した手順に従い調製した。得られたカプセルのサイズを動的光散乱法(DLS)により測定したところ、約320nmであった。得られたカプセルは少なくとも2週間安定であることが、流体力学的直径およびゼータ電位測定により確認された。得られたカプセルのサイズが超音波処理から3日後に約250nmまで低下したことから、凝集体および/またはより大きなカプセルが不安定化し、より小さくより安定な粒子のみを含むエマルジョンが形成されたという仮説が立てられる(
図4、表1)。
【0043】
実施例V Hy−C12で安定化されたオレイン酸コアをテンプレートとするカプセルのサイズおよび安定性に多糖類および塩の濃度が与える影響の測定
0.15MのNaClに溶解した、ドデシル側鎖で変性したヒアルロン酸(5g/L)を使用し、実施例IIIに記載した手順に従いオレイン酸コアをテンプレートとするナノカプセルを調製した。得られたカプセルのサイズを動的光散乱法(DLS)により測定したところ、約280nmであった(
図5)。
【0044】
実施例VI オレイン酸コアをテンプレートとするHy−C12カプセルで疎水性染色液を内包する効率の測定
ドデシル側鎖で変性したヒアルロン酸(Hy−C12)の水溶液およびオレイン酸の混合物を実施例Vに記載した手順を若干修正して調製した(ナイルレッドをオレイン酸に溶解し(1g/L)、次いでこれをHy−C12の水溶液と混合した)。得られたカプセルのサイズを動的光散乱法(DLS)により測定したところ、約320nmであった。さらに共焦点顕微鏡画像から、得られたカプセルは疎水性染色液を効率的に内包できることが確認された(
図6)。
【0045】
実施例VII 内包された染色液の濃度がカプセルのサイズおよび安定性に与える影響の測定
ドデシル側鎖で変性されたヒアルロン酸(Hy−C12)の水溶液およびオレイン酸の混合物を実施例IIIに記載した手順を若干修正して調製した(ナイルレッドまたはペリレンをオレイン酸に溶解し(0.15g/L)、次いでこれをHy−C12の水溶液と混合した)。得られたカプセルのサイズを動的光散乱法(DLS)により測定したところ、ナイルレッドおよびペリレンを含むカプセルはそれぞれ約190nmおよび120nmであった。カプセルを可視化するために共焦点顕微鏡観察を行った。得られた結果から、油相に溶解した疎水性化合物がカプセルに効果的に内包されていることが確認された(
図7、
図8、
図9)。
【0046】
実施例VIII オレイン酸コアをテンプレートとするHy−C12カプセルのサイズおよび安定性に低pHが与える影響の測定
ドデシル側鎖で変性したヒアルロン酸(Hy−C12)の水溶液およびオレイン酸の混合物を実施例IIIに記載した手順を若干修正して調製した(懸濁液を6MのHClでpH=1.4に酸性化した)。得られたカプセルのサイズを動的光散乱法(DLS)により測定したところ、酸性化前は約280nmであり、酸性化後は310nmであった。光学顕微鏡観察により、懸濁液のpHが低下してもカプセルの安定性に影響がないことが確認された(
図10、表4)。
【0047】
実施例IX オレイン酸コアをテンプレートとするHy−C18のカプセルのサイズおよび安定性に低pHが与える影響の測定
オクタデシル側鎖で変性したヒアルロン酸(Hy−C18)の水溶液およびオレイン酸の混合物を実施例VIIIに記載した手順に従い調製した。結果として得られたカプセルのサイズを動的光散乱法(DLS)により測定したところ、酸性化前は約125nmであり、酸性化後は130nmであった。光学顕微鏡観察により、懸濁液のpHが低下してもカプセルの安定性に影響がないことが確認された(
図11、表4)。
【0048】
実施例X ドデシルアミン変性ヒアルロン酸で安定化された亜麻仁油コアをテンプレートとするナノカプセルの調製
ドデシル側鎖で変性したヒアルロン酸(Hy−C12)の水溶液および亜麻仁油の混合物を、実施例IIIに記載した手順に従い調製した。得られたカプセルを、DLSを用いて特性評価したところ、サイズは約320nmであり、ゼータ電位は約−22mVであった。得られた結果は、コアとして使用される油の種類とは無関係にナノカプセルを形成することが可能であることを示唆している(
図12、表5)。
【0049】
実施例XI オクタデシルアミン変性ヒアルロン酸で安定化された亜麻仁油コアをテンプレートとするナノカプセルの調製
オクタデシル側鎖で変性したヒアルロン酸(Hy−C18)の水溶液および亜麻仁油の混合物を実施例Xに記載した手順に従い調製した。得られたカプセルを、DLSを用いて特性評価したところ、サイズは約530nmであり、ゼータ電位は約−21mVであった。得られた結果は、コアとして使用される油の種類とは無関係にナノカプセルを形成することが可能であることを示唆している(
図12、表5)。
【0050】
実施例XII ドデシルアミン変性ヒアルロン酸で安定化されたアルガン油コアをテンプレートとするナノカプセルの調製
ドデシル側鎖で変性したヒアルロン酸(Hy−C12)の水溶液およびアルガン油の混合物を実施例Xに記載した手順に従い調製した。得られたカプセルを、DLSを用いて特性評価したところ、サイズは約710nmであり、ゼータ電位は約−20mVであった。得られた結果は、コアとして使用される油の種類とは無関係にナノカプセルを形成することが可能であることを示唆している(
図13、表5)。
【0051】
実施例XIII 走査型電子顕微鏡観察(SEM)に用いるための、固化したn−オクタデカンコアをテンプレートとするナノカプセルの調製
ヒアルロン酸塩(Hy−C6、Hy−C8、Hy−C12およびHy−C18)を0.1MのNaClに溶解した溶液(1g/L)を、多糖類を完全に溶解するために60分間激しく撹拌した。溶液を約35℃まで加熱し、n−オクタデカンと混合し(100:1 v/v)、32℃の超音波浴(540W、パルス1秒間、休止2秒間)で30分間乳化した。冷却後、n−オクタデカンの懸濁液が固化するため、走査型電子顕微鏡観察を用いたカプセルの画像化が非常に容易になった(
図14)。
【0052】
実施例XIV オレイン酸コアをテンプレートとする多層Hy−C12カプセルの形成
ドデシル側鎖で変性したヒアルロン酸(Hy−C12)で安定化されたオレイン酸コアをテンプレートとするカプセルを実施例IIIに記載した手順に従い調製した。DLS測定を行ったところ、直径170nmのカプセルが形成され、ゼータ電位が−19mVであることが示された。次いで、得られたカプセルを交互飽和(layer by layer saturation)法を用いて多層シェルで覆った。少量のカチオン変性キトサンまたはアニオン変性キトサン(1g/L、0.15MのNaCl中)のいずれかを懸濁液に加え、各段階の後に、サイズとゼータ電位を測定することにより各層の吸着過程を制御した。結果として得られた4層カプセルを特性評価したところ、直径は315nmであり、ゼータ電位は−28mVであった。カプセルの平均径が徐々に増大していることに加えて、ゼータ電位のグラフが典型的なジグザグ形状を示していることから、高分子電解質が交互に吸着されていることと、カプセルが静電的に高度に安定化されていることとが確認される(
図15および16)。
【0053】
興味深いことに、得られた結果は、アニオン性層がより好ましく、カプセルをより安定化させることを示唆している。
【0054】
実施例XV オレイン酸コアをテンプレートとする多層Hy−C12カプセルの調製プロセスに高分子電解質の濃度が与える影響の測定
ドデシル側鎖で変性されたヒアルロン酸(Hy−C12)で安定化されたオレイン酸コアをテンプレートとするカプセルを実施例IIIに記載した手順に従い調製した。DLS測定を行ったところ、直径210nmのカプセルが形成され、ゼータ電位が−24mVであることを示していた。次いで、得られたカプセルを、交互飽和法を用いて多層シェルで覆った。少量のカチオン変性キトサンまたはアニオン変性キトサン(10g/L、0.15MのNaCl中)のいずれかを懸濁液に加え、各段階の後に、サイズとゼータ電位を測定することにより各層の吸着過程を制御した。結果として得られた2層カプセルを特性評価したところ、直径は240nmであり、ゼータ電位は−39mVであり、ナノエマルジョンが非常に安定であることを示唆していた(
図17)。高濃度のキトサン溶液を使用することにより、試料の希釈が最小限に抑えられる。このことは生物医学用途に非常に重要である。重要なことは、キトサンからなる一つの二重層で、実施例XIVに記載したカプセルよりも安定性が高い系が十分に得られることである。さらに、得られた結果から、アニオン性層がより好ましく、カプセルをより高度に安定化させることが確認される。
【0055】
実施例XVI ドデシル側鎖変性キトサンのカチオン性誘導体により安定化されたオレイン酸コアをテンプレートとするナノカプセルの調製
ドデシル側鎖で変性されたキトサンのカチオン性誘導体(CChit−C12)を0.1MのNaClに溶解し(1g/L)、4日間激しく撹拌することにより多糖類を完全に溶解させた。得られたCChit−C12の溶液をオレイン酸と混合した(100:1 v/v)。両相を5分間ボルテックスで撹拌し、室温の超音波浴で30分間乳化した(540W、パルス1秒間、休止2秒間)。得られたカプセルのサイズを、DLSを用いて測定したところ、約320nmであった。得られたカプセルは少なくとも2週間の安定を示すことが流体力学的直径およびゼータ電位測定により確認された(
図18、
図19、表
65)。
【0056】
実施例XVII オレイン酸コアをテンプレートとするCChit−C12ナノカプセルの調製プロセスに溶媒が与える影響の測定
ドデシル側鎖で変性されたキトサンのカチオン性誘導体(CChit−C12)で安定化されたオレイン酸コアをテンプレートとするカプセルを実施例XVIに記載した手順を修正して調製した(キトサンを酢酸(0.12M)酢酸に溶解した)。その結果として、キトサンの溶解時間が30分間未満に低下した。得られたカプセルを特性評価したところ、直径は400nmであり、ゼータ電位は25mVであった(DLS測定)(
図20)。
【0057】
実施例XVIII オレイン酸コアをテンプレートとする多層CChit−C12カプセルの調製
ドデシル側鎖で変性されたキトサンのカチオン性誘導体(CCHit−C12)で安定化されたオレイン酸をテンプレートとするカプセルを実施例XVIに記載した手順に従い調製した。結果として得られたカプセルを特性評価したところ、直径は260nmであり、ゼータ電位は+25mVであった。次いで、得られたカプセルを、交互飽和法を用いて多層シェルで覆った。少量のカチオン変性キトサンまたはアニオン変性キトサン(1g/L、0.15MのNaCl中)のいずれかを懸濁液に添加し、各段階の後にサイズとゼータ電位を測定することにより各層の吸着過程を制御した。結果として得られた2層カプセルを特性評価したところ、直径は340nmであり、ゼータ電位は+21mVであった。カプセルの平均径が徐々に増大していることに加えて、ゼータ電位のグラフが典型的なジグザグ形状を示していることから、高分子電解質が交互に吸着されており、カプセルが静電的に高度に安定化していることが確認された(
図21、
図22)。さらに、得られた結果から、アニオン性層がより好ましく、カプセルをより高度に安定化させることが確認された。
【0058】
実施例XIX アニオン変性キトサンオリゴ糖のオクタデシル誘導体で安定化されたオレイン酸コアをテンプレートとするカプセルの調製
オレイン酸をテンプレートとするカプセルを実施例Iに記載の手順を修正して調製した。アニオン変性キトサンオリゴ糖のオクタデシル誘導体(oChitC18−sulf)をエマルジョン安定剤として使用した。得られたカプセルの特性評価を、DLSを用いて行ったところ、直径は150nmであった(
図23)。
【0059】
実施例XX アニオン変性キトサンオリゴ糖のオクタデシル誘導体で安定化されたオレイン酸コアをテンプレートとする多層カプセルの調製
オレイン酸をテンプレートとするカプセルを実施例XIXに記載した手順に従い調製した。結果として得られたカプセルを特性評価したところ、直径は170nmであり、ゼータ電位は−17mVであった。カプセルを実施例XVIIIに記載した手順に従い多層シェルで覆った。結果として得られた8層カプセルを特性評価したところ、直径は260nmであり、ゼータ電位は−29mVであった。カプセルの平均径が徐々に増大したことに加えて、ゼータ電位のグラフが典型的なジグザグ形状を示していることは、高分子電解質が交互に吸着されており、カプセルが静電的に高度に安定化していることを立証する(
図24、
図25)。さらに、得られた結果から、アニオン性層がより好ましく、カプセルをより高度に安定化させることが確認された。
【0060】
実施例XXI Hy−C18xにより安定化されたオレイン酸コアをテンプレートとするナノカプセルを表すパラメータに疎水変性度(degree of hydrophobic modification)および多糖類の濃度が与える影響の測定
オクタデシル側鎖で変性されたヒアルロン酸塩(4.5%置換)を0.1MのNaClに溶解し(1g/Lまたは5g/L)、多糖類を完全に溶解させるためにマグネチックスターラーを用いて60分間激しく撹拌した(500rpm)。次いでこの水溶液をオレイン酸と混合し(100:1 v/v)、5分間ボルテックスで撹拌し、室温の超音波浴で30分間乳化した(540W、パルス1秒間、休止2秒間)。得られたカプセルのサイズを、DLSを用いて測定したところ、c=1g/Lまたは5g/LのHy−C18xで安定化されたカプセルは、それぞれ約780nmおよび約710nmであった。一方、ゼータ電位はそれぞれ−19mVまたは−16mVであった。得られた結果を実施例IVに示した結果と比較すると、疎水性鎖が長い場合は、側鎖の置換度が低い材料を合成することが好ましいことを示唆している。さらに、得られたカプセルは多糖類の濃度に関わらず安定性に劣ることも示された(
図26)。