【課題を解決するための手段】
【0005】
対照的に、本発明では、上記の酵素を、イソブテンの製造を最終的にもたらす経路に人工的に含める形での実装がなされる。よって、主な態様では、本発明は、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの酵素的変換(
図1に示されるステップI)を含む、イソブテンを製造する方法であって、
(a)3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への酵素的変換(
図1に示されるステップVIa、VIbまたはVIc)によって3−メチルクロトン酸を提供するステップ、または
(b)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−メチルクロトン酸への酵素的変換(
図1に示されるステップII)によって3−メチルクロトン酸を提供するステップ
をさらに含む方法に関する。
好ましくは、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの酵素的変換が3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼを使用することによって達成される。
【0006】
3−メチルクロトン酸を介して3−メチルクロトニル−CoAから、または3−メチルクロトン酸を介して3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)からイソブテンを製造する方法は、多くの生化学反応に使用される代謝における中心成分および重要な鍵分子であるアセチル−CoAから始まるイソブテンを製造する経路に組み込むことができる。対応する反応を
図1に模式的に示す。
【0007】
そのため、本発明はまた、
図1に模式的に示され、以下でさらに詳細に説明される2つの代替経路を介して、アセチル−CoAから始まり、3−メチルクロトン酸(次いで、これは最終的にイソブテンに変換される)をもたらす経路に関する。
【0008】
アセトアセチル−CoAおよび3−メチルクロトン酸を介したアセチルCoAからイソブ
テンへの酵素的変換の経路
3−メチルクロトン酸のイソブテンへの酵素的変換:図1に示されるステップI
3−メチルクロトン酸のイソブテンへの酵素的変換を
図2Bに模式的に示す。
本発明によると、3−メチルクロトン酸(3−メチル−2−ブテン酸または3,3−ジ
メチルアクリル酸とも呼ばれる)のイソブテン(イソブチレンまたは2−メチルプロペン
とも呼ばれる)への酵素的変換を脱炭酸によって達成することができる。「脱炭酸」は、
一般的にカルボキシル基を除去し、二酸化炭素(CO
2)を放出する化学反応である。
3−メチルクロトン酸のイソブテンへの酵素的変換を、好ましくは3−メチルクロトン
酸デカルボキシラーゼを使用することによって達成することができる。本発明によると、
3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼは、脱炭酸反応で3−メチルクロトン酸をイソ
ブテンに変換することができる酵素である。
好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼが、
(i)FMNプレニルトランスフェラーゼと
連合しているFMN依存性デカルボキシラーゼ;
または
(ii)アコニット酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.6);または
(iii)メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4);または
(iv)ゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5)
からなる群から選択される。
【0009】
よって、一態様によると、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの酵素的変換を、好ま
しくは3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼを使用することによって達成することが
でき、前記3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼはFMNプレニルトランスフェラー
ゼと
連合しているFMN依存性デカルボキシラーゼである。
FMNプレニルトランスフェラーゼと
連合しているFMN依存性デカルボキシラーゼを利用する3−メチルクロトン酸のイソブテンへの酵素的変換は、2つの酵素、すなわちFMN依存性デカルボキシラーゼ(3−メチルクロトン酸のイソブテンへの実際の脱炭酸を触媒する)と、それに伴う、修飾フラビン補助因子を提供する
連合しているFMNプレニルトランスフェラーゼによって触媒される2つの連続的ステップの反応に依拠する。フラビン補助因子は、好ましくはFMNまたはFADであり得る。FMN(フラビンモノヌクレオチド;リボフラビン−5’−リン酸とも呼ばれる)は、酵素リボフラビンキナーゼによってリ
ボフラビン(ビタミンB2)から産生される生体分子であり、種々の反応の補欠分子族と
して機能する。FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)は、代謝のいくつかの重要な
反応に関与する酸化還元補助因子、より具体的には補欠分子族である。
【0010】
よって、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換において、第1のステップで、フ
ラビン補助因子(FMNまたはFAD)を(修飾)フラビン由来補助因子に修飾する。こ
の修飾は、前記FMNプレニルトランスフェラーゼによって触媒される。FMNプレニル
トランスフェラーゼは、フラビン補助因子(FMNまたはFAD)のフラビン環を(修飾
)プレニル化フラビン補助因子にプレニル化する。この反応を
図2Aに模式的に示す。第
2のステップで、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの実際の変換が、前記FMN依存
性デカルボキシラーゼが、
連合しているFMNプレニルトランスフェラーゼによって提供されたプレニル化フラビン補助因子(FMNまたはFAD)を使用する、1,3−双極子環付加に基づく機構を介して前記FMN依存性デカルボキシラーゼによって触媒される。この反応を
図2Bに模式的に示す。
【0011】
好ましい実施形態では、フラビン補助因子(FMNまたはFAD)を(修飾)フラビン由来補助因子に修飾する前記プレニルトランスフェラーゼが、フェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)型タンパク質、または密接に関連する原核生物酵素UbiX、原核生物のユビキノン生合成に関与する酵素である。
大腸菌(Escherichia coli)では、タンパク質UbiX(3−オクタプレニル−4−ヒドロキシ安息香酸カルボキシリアーゼとも呼ばれる)がユビキノン生合成の第3のステップに関与することが示されている。
このタンパク質は反応
【0012】
【化1】
を触媒する。
さらに、酵母の相同タンパク質(Pad1)のノックアウトが、フェニルアクリル酸に対する感受性を付与することが示され、この酵素がフェニルアクリル酸デカルボキシラーゼとして機能することを示している。大腸菌(E.coli)菌株はまた、UbiXに加えて、Pad1と呼ばれる第2のパラログも含む。そのアミノ酸配列は、UbiXと52%の同一性および出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)フェニルアクリル酸デカルボキシラーゼPad1とわずかに高い配列同一性を示す。酵母Pad1との高い配列類似性にもかかわらず、大腸菌(E.coli)Pad1はフェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ活性を有するように見えない。その機能は未知であり、Pad1は安息香酸の誘導体からカルボン酸基を除去し得るが、置換フェノール酸からは除去しない。
【0013】
よって、好ましい実施形態では、フラビン補助因子(FMNまたはFAD)の対応する(修飾)フラビン由来補助因子への修飾が、FMN含有タンパク質フェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)によって触媒される。フラビン補助因子(FMNまたはFAD)の対応する修飾フラビン由来補助因子への修飾に関与する酵素は、最初にデカルボキシラーゼ(EC4.1.1.−)としてアノテーションを付与された。いくつかのフェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)にここでEC2.5.1−としてフラビンプレニルトランスフェラーゼとしてアノテーションを付与する。
より好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換が、フラビン補助因子(FMNまたはFAD)を対応する(修飾)フラビン由来補助因子に修飾するFMNプレニルトランスフェラーゼとして、フェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)型タンパク質を使用し、前記フェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)型タンパク質が、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(Uniprot受託番号Q5A8L8)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)(Uniprot受託番号A3F715)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)(Uniprot受託番号P33751)またはクリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)(Uniprot受託番号E6R9Z0)から得られる。
好ましい実施形態では、本発明の方法に使用されるフェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)型タンパク質が、それぞれ配列番号40、配列番号41、配列番号42および配列番号43に示されるアミノ酸配列を有する、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(Uniprot受託番号Q5A8L8;配列番号40)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)(Uniprot受託番号A3F715;配列番号41)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)(Uniprot受託番号P33751;配列番号42)またはクリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)(Uniprot受託番号E6R9Z0;配列番号43)から得られるフェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)型タンパク質である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、フェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)型タンパク質が、配列番号40〜43からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号40〜43のいずれかと少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、フラビン補助因子(FMNまたはFAD)を対応する(修飾)フラビン由来補助因子に修飾する酵素活性を有する酵素である。
【0015】
配列同一性の決定に関しては、以下を適用するものとする:比較する配列が同じ長さを有さない場合、同一性の程度とは、長い配列中のアミノ酸残基と同一である短い配列中のアミノ酸残基の割合を指す、または短い配列中のアミノ酸残基と同一である長い配列中のアミノ酸残基の割合を指す。好ましくは、これは、長い配列中のアミノ酸残基と同一である短い配列中のアミノ酸残基の割合を指す。配列同一性の程度は、好ましくはCLUSTALなどの適切なコンピュータアルゴリズムを使用して、当技術分野で周知の方法によって決定することができる。
Clustal解析法を使用して、特定の配列が例えば、参照配列と少なくとも60%同一であるかどうかを決定する場合、デフォルト設定を使用することができ、または設定は好ましくは以下の通りである:アミノ酸配列の比較について、マトリックス:blosum30;オープンギャップペナルティ:10.0;伸長ギャップペナルティ:0.05;遅延分岐:40;ギャップ分離距離:8。ヌクレオチド配列比較については、伸長ギャップペナルティを好ましくは5.0に設定する。
好ましい実施形態では、ClustalW2をアミノ酸配列の比較に使用する。ペアワイズ比較/アラインメントの場合、好ましくは以下の設定を選択する:タンパク質重量マトリックス:BLOSUM62;ギャップオープン:10;ギャップ伸長:0.1。多重比較/アラインメントの場合、好ましくは以下の設定を選択する:タンパク質重量マトリックス:BLOSUM62;ギャップオープン:10;ギャップ伸長:0.2;ギャップ距離:5;エンドギャップなし。
好ましくは、同一性の程度を配列の完全長にわたって計算する。
配列番号40〜43のいずれか1つに示されるアミノ酸配列中の本明細書以下に示される位置に相当する位置に位置するアミノ酸残基は、当技術分野で公知の方法によって当業者により同定され得る。例えば、このようなアミノ酸残基は、当の配列を配列番号40〜43のいずれか1つに示される配列と整列させる、および配列番号40〜43のいずれか1つの上記の位置に相当する位置を同定することによって、同定することができる。アラインメントは、例えばリップマン−ピアソン法(Science 227 (1985), 1435)またはCLUSTALアルゴリズムなどの公知のコンピュータアルゴリズムを使用することによって、当業者に公知の手段および方法で行うことができる。このようなアラインメントで、最大相同性をアミノ酸配列中に存在する保存されたアミノ酸残基に割り当てることが好ましい。
好ましい実施形態では、ClustalW2をアミノ酸配列の比較に使用する。ペアワイズ比較/アラインメントの場合、好ましくは以下の設定を選択する:タンパク質重量マトリックス:BLOSUM62;ギャップオープン:10;ギャップ伸長:0.1。多重比較/アラインメントの場合、好ましくは以下の設定を選択する:タンパク質重量マトリックス:BLOSUM62;ギャップオープン:10;ギャップ伸長:0.2;ギャップ距離:5;エンドギャップなし。
好ましくは、同一性の程度を配列の完全長にわたって計算する。
【0016】
別の好ましい実施形態では、フラビン補助因子(FMNまたはFAD)の対応する(修飾)フラビン由来補助因子への修飾が、UbiX(最初にEC4.1.1.−としてアノテーションを付与された)とも呼ばれるFMN含有タンパク質3−オクタプレニル−4−ヒドロキシ安息香酸カルボキシリアーゼによって触媒される。上記のように、フラビン補助因子(FMNまたはFAD)の対応する修飾フラビン由来補助因子への修飾に関与する酵素は、最初にデカルボキシラーゼとしてアノテーションを付与された。いくつかのフェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)にここでEC2.5.1−としてフラビンプレニルトランスフェラーゼとしてアノテーションを付与する。
より好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換が、フラビン補助因子(FMNまたはFAD)を対応する(修飾)フラビン由来補助因子に修飾するFMNプレニルトランスフェラーゼとして、3−オクタプレニル−4−ヒドロキシ安息香酸カルボキシリアーゼ(UbiXとも呼ばれる)を使用し、前記3−オクタプレニル−4−ヒドロキシ安息香酸カルボキシリアーゼ(UbiXとも呼ばれる)が、大腸菌(Escherichia coli)(Uniprot受託番号P0AG03)、枯草菌(Bacillus subtilis)(Uniprot受託番号A0A086WXG4)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(Uniprot受託番号A0A072ZCW8)またはエンテロバクター属(Enterobacter)種DC4(Uniprot受託番号W7P6B1)から得られる。
さらにより好ましい実施形態では、本発明の方法に使用される3−オクタプレニル−4−ヒドロキシ安息香酸カルボキシリアーゼ(UbiXとも呼ばれる)が、それぞれ配列番号44、配列番号45、配列番号46および配列番号47に示されるアミノ酸配列を有する大腸菌(Escherichia coli)(Uniprot受託番号P0AG03;配列番号44)、枯草菌(Bacillus subtilis)(Uniprot受託番号A0A086WXG4;配列番号45)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(Uniprot受託番号A0A072ZCW8;配列番号46)またはエンテロバクター属(Enterobacter)種DC4(Uniprot受託番号W7P6B1;配列番号47)から得られる3−オクタプレニル−4−ヒドロキシ安息香酸カルボキシリアーゼ(UbiXとも呼ばれる)である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、3−オクタプレニル−4−ヒドロキシ安息香酸カルボキシリアーゼが、配列番号44〜47からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号44〜47のいずれかと少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、フラビン補助因子(FMNまたはFAD)を対応する(修飾)フラビン由来補助因子に修飾する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0018】
別の好ましい実施形態では、フラビン補助因子(FMNまたはFAD)の対応する(修飾)フラビン由来補助因子への修飾がフラビンプレニルトランスフェラーゼによって触媒される。
【0019】
上記のように、実際の脱炭酸、すなわち3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換は
、FMN依存性デカルボキシラーゼが上記の
連合しているFMNプレニルトランスフェラーゼのいずれかによって提供されるプレニル化フラビン補助因子(FMNまたはFAD)を使用する1,3−双極子環付加に基づく機構を介してFMN依存性デカルボキシラーゼによって触媒される。
【0020】
好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの脱炭酸を触媒する前記FMN依存性デカルボキシラーゼがフェルラ酸デカルボキシラーゼ(FDC)によって触媒される。フェルラ酸デカルボキシラーゼ(FDC)は酵素クラスEC4.1.1.−に属する。
さらにより好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換が、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)(Uniprot受託番号Q03034)、エンテロバクター属(Enterobacter)種(Uniprot受託番号V3P7U0)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)(Uniprot受託番号Q45361)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)(Uniprot受託番号A2R0P7)またはカンジダ・ドゥブリニエンシス(Candida dubliniensis)(Uniprot受託番号B9WJ66)から得られるフェルラ酸デカルボキシラーゼ(FDC)を使用する。
好ましい実施形態では、本発明の方法に使用されるフェルラ酸デカルボキシラーゼ(FDC)が、それぞれ配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51および配列番号52に示されるアミノ酸配列を有する、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)(Uniprot受託番号Q03034;配列番号48)、エンテロバクター属(Enterobacter)種(Uniprot受託番号V3P7U0;配列番号49)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)(Uniprot受託番号Q45361;配列番号50)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)(Uniprot受託番号A2R0P7;配列番号51)またはカンジダ・ドゥブリニエンシス(Candida dubliniensis)(Uniprot受託番号B9WJ66;配列番号52)から得られるフェルラ酸デカルボキシラーゼ(FDC)である。
【0021】
別のより好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換がプロトカテク酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.63)を使用する。
よって、1つの好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換がプロトカテク酸(PCA)デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.63)によって触媒される。PCAデカルボキシラーゼ(AroYとも呼ばれる)は、以下の反応、すなわちプロトカテク酸(PCA)のカテコールへの酵素的変換を触媒することが知られている(Johnson et al., Metabolic Engineering Communications 3 (2016), 111):
【0022】
【化2】
この酵素は種々の生物で生じ、例えばエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、ロドシュードモナス属(Rhodopseudomonas)種およびセディメンティバクター・ヒドロキシベンゾイクス(Sedimentibacter hydroxybenzoicus)で記載されている。
本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法に使用されるPCAデカルボキシラーゼが、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(Uniprot受託番号B9AM6)、レプトリングビア属(Leptolyngbya)種(Uniprot受託番号A0A0S3U6D8)またはファスコラークトバクテリウム属(Phascolarctobacterium)種(Uniprot受託番号R6IIV6)から得られるPCAデカルボキシラーゼである。
好ましい実施形態では、本発明の方法に使用されるPCAデカルボキシラーゼが、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(配列番号78)、レプトリングビア属(Leptolyngbya)種(配列番号80)またはファスコラークトバクテリウム属(Phascolarctobacterium)種(配列番号81)から得られる酵素である。
本発明の好ましい実施形態では、PCAデカルボキシラーゼが、配列番号78、80および81からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号78、80および81のいずれかと少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−メチルクロトン酸をイソブテンに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、フェルラ酸デカルボキシラーゼ(FDC)が、配列番号48〜52からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号48〜52のいずれかと少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−メチルクロトン酸をイソブテンに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
別の好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの脱炭酸を触媒する前記FMN依存性デカルボキシラーゼが、上記フェルラ酸デカルボキシラーゼ(FDC)と密接に関連する酵素、すなわち3−ポリプレニル−4−ヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼ(UbiDとも呼ばれる)である。3−ポリプレニル−4−ヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼは、EC4.1.1.−として分類されるUbiDデカルボキシラーゼファミリーに属する。
より好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換が、ヒポクレア・アトロビリディス(Hypocrea atroviridis)(UniProt受託番号G9NLP8)、スファエルリナ・ムシバ(Sphaerulina musiva)(UniProt受託番号M3DF95)、ペニシリウム・ロッケフォルティ(Penicillium roqueforti)(UniProt受託番号W6QKP7)、フザリウム・オキシスポラムf.sp.リコペルシシ(Fusarium oxysporum f.sp.lycopersici)(UniProt受託番号W9LTH3)、サッカロマイセス・クドリアヴゼヴィイ(Saccharomyces kudriavzevii)(UniProt受託番号J8TRN5)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、アスペルギルス・パラシチカス(Aspergillus parasiticus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、グロスマニア・クラビゲラ(Grosmannia clavigera)、大腸菌(Escherichia coli)(UniProt受託番号P0AAB4)、バチルス・メガテリウム(Bacilus megaterium)(Uniprot受託番号D5DTL4)、メタノサーモバクター属(Methanothermobacter)種CaT2(Uniprot受託番号T2GKK5)、マイコバクテリウム・ケロネー(Mycobacterium chelonae)1518(Uniprot受託番号X8EX86)またはエンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)(Uniprot受託番号V3DX94)から得られる3−ポリプレニル−4−ヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼ(UbiD)を使用する。
さらにより好ましい実施形態では、本発明の方法に使用される3−ポリプレニル−4−ヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼ(UbiD)が、それぞれ配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号79に示されるアミノ酸配列を有する、大腸菌(Escherichia coli)(UniProt受託番号P0AAB4;配列番号53)、バチルス・メガテリウム(Bacilus megaterium)(Uniprot受託番号D5DTL4;配列番号54)、メタノサーモバクター属(Methanothermobacter)種CaT2(Uniprot受託番号T2GKK5;配列番号55)、マイコバクテリウム・ケロネー(Mycobacterium chelonae)1518(Uniprot受託番号X8EX86;配列番号56)、ヒポクレア・アトロビリディス(Hypocrea atroviridis)(配列番号57)、スファエルリナ・ムシバ(Sphaerulina musiva)(配列番号58)、ペニシリウム・ロッケフォルティ(Penicillium roqueforti)(配列番号59)、フザリウム・オキシスポラムf.sp.リコペルシシ(Fusarium oxysporum f.sp.lycopersici)(配列番号60)、サッカロマイセス・クドリアヴゼヴィイ(Saccharomyces kudriavzevii)(配列番号61)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)(配列番号62)、アスペルギルス・パラシチカス(Aspergillus parasiticus)(配列番号63)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(配列番号64)、グロスマニア・クラビゲラ(Grosmannia clavigera)(配列番号65)またはエンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)(配列番号79)から得られる3−ポリプレニル−4−ヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼ(UbiD)である。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、3−ポリプレニル−4−ヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼ(UbiD)が、配列番号53〜65および配列番号79からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号53〜65のいずれかと少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−メチルクロトン酸をイソブテンに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0025】
上記のように、別の態様では、3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼが、好ましく
はアコニット酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.6)であり得る。このデカルボキ
シラーゼは、上記デカルボキシラーゼについて記載されているように、FMNプレニルト
ランスフェラーゼとの
連合を要しないので、プレニル化補助因子の提供を要しない。
よって、1つの好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換が
アコニット酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.6)によって触媒される。アコニッ
ト酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.6)は以下の反応を触媒すると記載されてい
る:
【0026】
【化3】
この酵素は種々の生物で生じ、例えばアスペルギルス・イタコニカス(Aspergillus itaconicus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、ヒト(Homo sapiens)およびマウス(Mus musculus)で記載されている。好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換において本発明の方法に使用されるアコニット酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.6)が、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)(UniProt受託番号B3IUN8)、ヒト(Homo sapiens)(UniProt受託番号A6NK06)またはマウス(Mus musculus)(UniProt受託番号P54987)から得られるアコニット酸デカルボキシラーゼである。
【0027】
好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換において本発明の方法に使用されるアコニット酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.6)が、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)から得られるアコニット酸デカルボキシラーゼ(配列番号66)である。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、アコニット酸デカルボキシラーゼが、配列番号66のアミノ酸配列または配列番号66と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−メチルクロトン酸をイソブテンに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0029】
上記のように、別の態様では、3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼが、好ましく
はメチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4)であり得る。この
デカルボキシラーゼは、上記デカルボキシラーゼについて記載されているように、FMN
プレニルトランスフェラーゼとの
連合を要しないので、プレニル化補助因子の提供を要しない。
よって、1つの好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換が
メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4)によって触媒される
。メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼは以下の反応:
【0030】
【化4】
すなわちカルボキシル化を触媒すると記載されているが、これらを使用して脱炭酸の反応を触媒することもできる。メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼは、真核生物および原核生物、例えば植物、動物、真菌および細菌を含む種々の生物で生じる。酵素は、例えばニンジン(Daucus carota)、ダイズ(Glycine max)、オオムギ(Hoedeum vulgare)、エンドウ(Pisum sativum)、トマト(Solanum lycopersicum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、トウモロコシ(Zea mays)、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)種、レンズマメ(Lens culinaris)、ヒト(Homo sapiens)、ウシ(Bos taurus)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)、マウス(Mus musculus)、マダイ(Pagrus major)、エメリセラ・ニデュランス(Emericella nidulans)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・シトロネロリス(Pseudomonas citronellolis)、シュードモナス・アミグダリ(Pseudomonas amygdali)、アシダミノコッカス・フェルメンタンス(Acidaminococcus fermentans)、大腸菌(Escherichia coli)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)種およびアクロモバクター属(Achromobacter)種で記載されている。
【0031】
好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換において本発明の方法に使用されるメチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4)が、シュードモナス・アミグダリ(Pseudomonas amygdali)から得られるメチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(配列番号67)である。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼが、配列番号67のアミノ酸配列または配列番号67と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−メチルクロトン酸をイソブテンに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0033】
別の好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換において本発明の方法に使用されるメチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4)が、ミキソコッカス・キサンタス(Myxococcus xanthus)から得られるメチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼである。ミキソコッカス・キサンタス(Myxococcus xanthus)では、liuB遺伝子が2つのサブユニットAibAおよびAibBを有する酵素をコードする(Li et al., Angew. Chem. Int. Ed. 52 (2013), 1304-1308)。ミキソコッカス・キサンタス(Myxococcus xanthus)から得られるメチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼは、グルタコニル−CoAトランスフェラーゼサブユニットAおよびB(配列番号100および101)としてアノテーションを付与されたヘテロ二量体酵素である。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼが、配列番号100もしくは101のアミノ酸配列または配列番号100もしくは101と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−メチルクロトン酸をイソブテンに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0035】
上記のように、別の態様では、3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼが、好ましく
はゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5)であり得る。このデカル
ボキシラーゼは、上記デカルボキシラーゼについて記載されているように、FMNプレニ
ルトランスフェラーゼとの
連合を要しないので、プレニル化補助因子の提供を要しない。
よって、別の好ましい実施形態では、脱炭酸を介した3−メチルクロトン酸のイソブテ
ンへの変換が、ゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5)によって触
媒される。ゲラノイル−CoAカルボキシラーゼは自然に以下の反応を触媒する:
【0036】
【化5】
この酵素は真核生物および原核生物、例えば植物および細菌で生じる。酵素は、例えばニンジン(Daucus carota)、ダイズ(Glycine max)、トウモロコシ(Zea mays)、シュードモナス属(Pseudomonas)種、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・シトロネロリス(Pseudomonas citronellolis)およびシュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)で記載されている。
【0037】
別の態様では、3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼが、好ましくは6−メチルサリチル酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.52)であり得る。
よって、別の好ましい実施形態では、脱炭酸を介した3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換が、6−メチルサリチル酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.52)によって触媒される。6−メチルサリチル酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.52)は自然に以下の反応を触媒する:
【0038】
【化6】
この酵素は種々の生物、特に真核生物および原核生物、例えば細菌および真菌で生じる。酵素は、例えばアスペルギルス・クラバタス(Aspergillus clavatus)(UniProt受託番号T1PRE6)、ペニシリウム・グリセオフルバム(Penicillium griseofulvum)およびバルサ・フリエシイ(Valsa friesii)で記載されている。
【0039】
好ましい実施形態では、脱炭酸を介した3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換において本発明の方法に使用される6−メチルサリチル酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.52)が、アスペルギルス・クラバタス(Aspergillus clavatus)から得られる6−メチルサリチル酸デカルボキシラーゼ(配列番号68)である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、6−メチルサリチル酸デカルボキシラーゼが、配列番号68のアミノ酸配列または配列番号68と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、脱炭酸を介して3−メチルクロトン酸をイソブテンに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0041】
別の態様では、3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼが、好ましくは2−オキソ−3−ヘキセン二酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.77)であり得る。
よって、別の好ましい実施形態では、脱炭酸を介した3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換が2−オキソ−3−ヘキセン二酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.77)によって触媒される。2−オキソ−3−ヘキセン二酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.77)は自然に以下の反応を触媒する:
【0042】
【化7】
この酵素は種々の生物、特に原核生物、例えば細菌で生じる。酵素は、例えばボルデテラ属(Bordetella)種、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)(UniProt受託番号B0VXM8)、プチダ菌(Pseudomonas putida)およびラルストニア・ピッケティ(Ralstonia pickettii)で記載されている。
【0043】
好ましい実施形態では、脱炭酸を介した3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換において本発明の方法に使用される2−オキソ−3−ヘキセン二酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.77)が、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)(配列番号69)から得られる2−オキソ−3−ヘキセン二酸デカルボキシラーゼである。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、2−オキソ−3−ヘキセン二酸デカルボキシラーゼが、配列番号69のアミノ酸配列または配列番号69と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、脱炭酸を介して3−メチルクロトン酸をイソブテンに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0045】
別の可能性では、3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼが、好ましくは5−オキソペンタ−3−エン−1,2,5−トリカルボン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.68)であり得る。
【0046】
よって、別の好ましい実施形態では、脱炭酸を介した3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換が、5−オキソペンタ−3−エン−1,2,5−トリカルボン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.68)によって触媒される。5−オキソペンタ−3−エン−1,2,5−トリカルボン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.68)は自然に以下の反応を触媒する:
【0047】
【化8】
この酵素は原核生物、例えば細菌で生じると記載されている。酵素は、例えば大腸菌(E.coli)およびサルモネラ・ダブリン(Salmonella dublin)で記載されている。
【0048】
好ましい実施形態では、脱炭酸を介した3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換において本発明の方法に使用される5−オキソペンタ−3−エン−1,2,5−トリカルボン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.68)が、サルモネラ・ダブリン(Salmonella dublin)から得られる5−オキソペンタ−3−エン−1,2,5−トリカルボン酸デカルボキシラーゼ(配列番号70)である。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、5−オキソペンタ−3−エン−1,2,5−トリカルボン酸デカルボキシラーゼが、配列番号70のアミノ酸配列または配列番号70と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、脱炭酸を介して3−メチルクロトン酸をイソブテンに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0050】
3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−メチルクロトン酸への酵素的変換:図1に示されるステップII
本発明の方法によりイソブテンに変換される3−メチルクロトン酸自体は酵素反応によって提供され得る。
本発明によると、3−メチルクロトン酸は、
図1に模式的に示される様々な経路を介して提供することができる。
よって、1つの選択肢によると、3−メチルクロトン酸自体は、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−メチルクロトン酸への酵素的変換によって提供することができる。3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−メチルクロトン酸への酵素的変換(
図1に示されるステップII)を
図3に模式的に示す。
【0051】
本発明によると、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の前記3−メチルクロトン酸への酵素的変換は、好ましくはβ−ヒドロキシ酸(すなわち、例えば3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV))のα,β−不飽和酸(すなわち、例えば3−メチルクロトン酸)への脱水を触媒する酵素を使用する。「脱水」という用語は一般的に、H
2Oの除去を伴う反応を指す。3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)脱水を触媒する酵素は、
図3に示される反応を触媒する酵素である。好ましくは、このような酵素はヒドロリアーゼ(EC4.2.−.−)のファミリーに属する。
EC4.2.−.−(すなわち、ヒドロリアーゼ)として分類されるこのような酵素の好ましい例は:
アコニターゼ(EC4.2.1.3);
フマラーゼ(EC4.2.1.2);および
エノイル−CoAヒドラターゼ/デヒドラターゼ(EC4.2.1.17)
である。
【0052】
よって、1つの好ましい実施形態では、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−メチルクロトン酸への酵素的変換がアコニターゼ(EC4.2.1.3)の使用によって達成される。アコニターゼ(EC4.2.1.3)(アコニターゼヒドラターゼとも呼ばれる)は以下の反応を触媒する酵素である:
【0053】
【化9】

この酵素は、真核生物および原核生物、例えば植物、動物、真菌および細菌を含む種々の生物から知られている。酵素は、例えばアセル・シュードプラタヌス(Acer pseudoplatanus)、アドベネラ・カシミレンシス(Advenella kashmirensis)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、セレウス菌(Bacillus cereus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バクテロイデス・フラジリス(Bacterioides fragilis)、ウシ(Bos taurus)、線虫(Caenorhabditis elegans)、シトラス・クレメンティナ(Citrus clementina)、イヌ(Canis lupus familiaris)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、大腸菌(E. coli)、ダイズ(Glycine max)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、ヒト(Homo sapiens)、マウス(Mus musculus)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)、クマネズミ(Rattus rattus)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・リポリチカ(Saccharomycopsis lipolytica)、サルモネラ菌(Salmonella enterica)、シロガラシ(Sinapis alba)、アルファルファ根粒菌(Sinorhizobium meliloti)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、ストレプトマイセス・アウレウス(Streptomyces aureus)、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)、スルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)、スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)、イノシシ(Sus scrofa)、トラメテス・サンジーナ(Trametes sanguinea)、ブルセイトリパノソーマ(Trypanosoma brucei)、キサトモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)、キサトモナス・エウベシカトリア(Xanthomonas euvesicatoria)、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)およびトウモロコシ(Zea mays)で記載されている。
好ましい実施形態では、アコニターゼ(EC4.2.1.3)が、アドベネラ・カシミレンシス(Advenella kashmirensis)(TrEMBL受託番号B3TZE0)、バクテロイデス・フラジリス(Bacterioides fragilis)(SwissProt受託番号Q8RP87)、線虫(Caenorhabditis elegans)(SwissProt受託番号Q23500)、シトラス・クレメンティナ(Citrus clementina)(UniProt受託番号D3GQL0、D3GQL1またはD3GQL2)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(SwissProt受託番号Q9NFX3またはQ9NFX2)、大腸菌(E. coli)(SwissProt受託番号P36683またはUniProt受託番号P25516)、ヒト(Homo sapiens)(UniProt受託番号P21399またはQ99798)、マウス(Mus musculus)(UniProt受託番号P28271)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)(UniProt受託番号Q9ER34またはQ63270)、イノシシ(Sus scrofa)(UniProt受託番号P16276)またはブルセイトリパノソーマ(Trypanosoma brucei)(SwissProt受託番号Q9NJQ8またはQ9NJQ9)のものである。
【0054】
好ましい実施形態では、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−メチルクロトン酸への変換において本発明の方法に使用されるアコニターゼ(EC4.2.1.3)が大腸菌(E. coli)から得られるアコニターゼ(配列番号71)である。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、アコニターゼが、配列番号71のアミノ酸配列または配列番号71と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0056】
別の好ましい実施形態では、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−メチルクロトン酸への酵素的変換がフマラーゼ(EC4.2.1.2)の使用によって達成される。フマラーゼ(EC4.2.1.2)(フマラーゼヒドラターゼとも呼ばれる)は以下の反応を触媒する酵素である:
【0057】
【化10】

この酵素は、真核生物および原核生物、例えば植物、動物、真菌および細菌を含む種々の生物から知られている。酵素は、例えばシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ブタ回虫(Ascaris suum)、アゾトバクター・ビネランジイ(Azotobacter vinelandii)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、カンピロバクター・フィタス(Campylobacter fetus)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、エルウィニア属(Erwinia)種、大腸菌(E. coli)、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィクス(Gluconacetobacter diazotrophicus)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、ヒト(Homo sapiens)、森林型熱帯リーシュマニア(Leishmania major)、アイスプラント(Mesembryanthemum crystallinum)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ペロトマクルム・サーモプロピオニカム(Pelotomaculum thermopropionicum)、エンドウ(Pisum sativum)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)、ピュロバクルム・ニュートロフィルム(Pyrobaculum neutrophilum)、ドブネズミ(Rattus novegicus)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、発疹チフスリケッチア(Rickettsia prowazekii)、サッカロマイセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)、出芽酵母(Sacchoromyces cerevisiae)、トマト(Solanum lycopersicum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトマイセス・サーモブルガリス(Streptomyces thermovulgaris)、スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)、イノシシ(Sus scrofa)、サーマス属(Thermus)種、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)およびトウモロコシ(Zea mays)で記載されている。
好ましい実施形態では、フマラーゼ(EC4.2.1.2)が、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(UniProt受託番号P93033またはQ9FI53)、ブタ回虫(Ascaris suum)(SwissProt受託番号Q8NRN8)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)(UniProt受託番号P28271)、大腸菌(E. coli)(P05042)、ヒト(Homo sapiens)(SwissProt受託番号P07954)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(P9WN93)、ピュロバクルム・ニュートロフィルム(Pyrobaculum neutrophilum)(UniProt受託番号B1Y931またはB1Y932)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)(UniProt受託番号P55250)、発疹チフスリケッチア(Rickettsia prowazekii)(UniProt受託番号Q9ZCQ4)、出芽酵母(Sacchoromyces cerevisiae)(SwissProt受託番号P08417)、ストレプトマイセス・サーモブルガリス(Streptomyces thermovulgaris)(SwissProt受託番号A5Y6J1)またはスルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)(UniProt受託番号P39461)のものである。
【0058】
好ましい実施形態では、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−メチルクロトン酸への変換において本発明の方法に使用されるフマラーゼ(EC4.2.1.2)が大腸菌(E. coli)から得られるフマラーゼ(配列番号72)である。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、フマラーゼが、配列番号72のアミノ酸配列または配列番号72と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0060】
別の好ましい実施形態では、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−メチルクロトン酸への酵素的変換がエノイル−CoAヒドラターゼ/デヒドラターゼ(EC4.2.1.17)の使用によって達成される。エノイル−CoAヒドラターゼ/デヒドラターゼ(EC4.2.1.17)は以下の反応を触媒する:
【0061】
【化11】
エノイル−CoAヒドラターゼは、通常はアシル−CoA上の第2の炭素原子と第3の炭素原子との間の二重結合を水和させる酵素である。しかしながら、この酵素を使用して逆方向の反応を触媒することもできる。
エノイル−CoAヒドラターゼ/デヒドラターゼ(EC4.2.1.17)はまた、3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドラターゼおよびエノイル−CoAヒドラターゼとも呼ばれる。両酵素は同じ反応を触媒するが、これらの酵素の一方の名称は対応する反応の一方向を示し、他方の名称は逆反応を示す。反応が可逆的であるので、両方の酵素の名称を使用することができる。
クロトナーゼとしても知られているこの酵素は本来、脂肪酸を代謝してアセチル−CoAとエネルギーの両方を産生するのに関与している。このクラスに属する酵素は、例えばラット(ドブネズミ(Rattus novegicus))、ヒト(ヒト(Homo sapiens))、マウス(マウス(Mus musculus))、イノシシ(イノシシ(Sus scrofa))、ウシ(Bos taures)、大腸菌(E. coli)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)およびクロストリジウム・アミノブチリカム(Clostridium aminobutyricum)で生じることが記載されている。このような酵素のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列は、例えばラット、ヒトおよび枯草菌(Bacillus subtilis)および炭疽菌(Bacillus anthracis)で決定されている。原則として、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−メチルクロトン酸への変換を触媒することができる任意のエノイル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.17)を本発明の文脈で使用することができる。好ましい実施形態では、エノイル−CoAヒドラターゼが、ガラクトマイセス・レッシイ(Galactomyces reessii)のエノイル−CoAヒドラターゼ(Dhar et al., J. Ind. Microbiol. Biotechnol. 28 (2002), 81-87)、枯草菌(Bacillus subtilis)のエノイル−CoAヒドラターゼ(Uniprot G4PBC3;配列番号38)または炭疽菌(Bacillus anthracis)のエノイル−CoAヒドラターゼ(Uniprot Q81YG6;配列番号39)である。
好ましい実施形態では、本発明の方法に使用されるエノイル−CoAヒドラターゼが、配列番号38もしくは39のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、または配列番号38もしくは39のいずれか1つと少なくともx%相同であり、エノイル−CoAヒドラターゼの活性を有するアミノ酸配列を示し(xは30〜100の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)、このような酵素が本明細書上記で示されるように3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に変換することができる。配列同一性の決定に関しては、本明細書の上記と同じものを適用する。
【0062】
アセトンとアセチル−CoAの3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)への酵素的縮合:図1に示されるステップIII
本発明の方法により3−メチルクロトン酸に変換される3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)自体は酵素反応、すなわちアセトンとアセチル−CoAの前記3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)への酵素的縮合によって提供され得る。アセトンとアセチル−CoAの前記3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)への縮合(
図1に示されるステップIII)を
図4に模式的に示す。
【0063】
よって、本発明はまた、最初にアセトンとアセチル−CoAを3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)に縮合し、次いで、これを3−メチルクロトン酸に変換する、アセトンからイソブテンを製造する方法に関する。さらに、次いで、3−メチルクロトン酸を本明細書上記で記載されるようにイソブテンに変換する。
【0064】
本発明によると、アセトンとアセチル−CoAの3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)への縮合は、好ましくはアセトンのオキソ(すなわち、C=O)基の炭素原子と、アセチル−CoA、特にアセチル−CoAのメチル基との間の共有結合の形成を触媒することができる酵素を使用する。この反応スキームによると、アセトンのオキソ基が求電子試薬として反応し、アセチル−CoAのメチル基が求核試薬として反応する。アセトンとアセチル−CoAの変換の一般的な反応を
図4に示す。アセトンとアセチル−CoAを3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)に酵素的に縮合することができる酵素は当技術分野で公知であり、例えば、国際公開第2011/032934号パンフレットに記載されている。
【0065】
好ましくは、アセトンとアセチル−CoAの3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)への酵素的縮合に使用される酵素は、HMG CoAシンターゼ(EC2.3.3.10)の活性を有する酵素および/またはPksGタンパク質および/またはC−C結合開裂/縮合リアーゼ、例えばHMG CoAリアーゼ(EC4.1.3.4)の活性を有する酵素である。HMG CoAシンターゼは種々の生物について記載されている。
様々な生物のHMG CoAシンターゼの例を配列番号1〜16に示す。配列番号1は線虫(Caenorhabditis elegans)(P54871、遺伝子バンクF25B4.6)の細胞質HMG CoAシンターゼの配列を示し、配列番号2はシゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(分裂酵母;P54874)の細胞質HMG CoAシンターゼの配列を示し、配列番号3は出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)(パン酵母;P54839、遺伝子バンクCAA65437.1)の細胞質HMG CoAシンターゼの配列を示し、配列番号4はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(シロイヌナズナ;P54873)の細胞質HMG CoAシンターゼの配列を示し、配列番号5はキイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)(粘菌;P54872、遺伝子バンクL2114)の細胞質HMG CoAシンターゼの配列を示し、配列番号6はチャバネゴキブリ(Blattella germanica)(チャバネゴキブリ;P54961、遺伝子バンクX73679)の細胞質HMG CoAシンターゼの配列を示し、配列番号7はニワトリ(Gallus gallus)(ニワトリ;P23228、遺伝子バンクCHKHMGCOAS)の細胞質HMG CoAシンターゼの配列を示し、配列番号8はヒト(Homo sapiens)(ヒト;Q01581、遺伝子バンクX66435)の細胞質HMG CoAシンターゼの配列を示し、配列番号9はヒト(Homo sapiens)(ヒト;P54868、遺伝子バンクX83618)のミトコンドリアHMG CoAシンターゼの配列を示し、配列番号10はキイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)(粘菌;Q86HL5、遺伝子バンクXM_638984)のミトコンドリアHMG CoAシンターゼの配列を示し、配列番号11は表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)(Q9FD76)のHMG CoAシンターゼの配列を示し、配列番号12はファーメンタム菌(Lactobacillus fermentum)(B2GBL1)のHMG CoAシンターゼの配列を示し、配列番号13はハイパーサーマス・ブチリカス(Hyperthermus butylicus)(A2BMY8)のHMG CoAシンターゼの配列を示し、配列番号14はクロロフレクサス・アグリガンス(Chloroflexus aggregans)(B8G795)のHMG CoAシンターゼの配列を示し、配列番号15はデルブリュッキ菌(Lactobacillus delbrueckii)(Q1GAH5)のHMG CoAシンターゼの配列を示し、配列番号16はスタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)Q4L958(野生型タンパク質と比較してI98>Vの差がある)のHMG CoAシンターゼの配列を示す。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、HMG CoAシンターゼが、配列番号1〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号1〜16のいずれかと少なくともn%同一であり、HMG CoAシンターゼの活性を有する配列を含む酵素である(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)。
配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0067】
アセトンとアセチル−CoAの3−ヒドロキシイソ吉草酸への縮合に使用することができるタンパク質の別の例はPksGタンパク質である。本出願の文脈において、「PksGタンパク質」または「PksGタンパク質の活性を有するタンパク質/酵素」という用語は、PksGタンパク質によって自然に触媒される反応、すなわち、アセチル−S−AcpK(Ac−S−AcpK)から、PksLタンパク質のチオール化ドメインの1つと結合したβ−ケトチオエステルポリケチド中間体への−CH
2COO
−の移動を触媒することができる任意の酵素を指す。これは、HMG CoAシンターゼによって触媒される反応と類似であるが、ホスホパンテテイル(phosphopantetheyl)部分のアセチル−チオエステルが補酵素Aの部分ではなくキャリアタンパク質に結合するという違いを有する反応である。自然に触媒する反応ではPksGタンパク質はアセチル−S−AcpKからアクセプターにアセチル基を移動するが、PksGタンパク質が通常はHMG CoAシンターゼによって触媒される反応、すなわちアセトアセチルCoAとアセチルCoAから始まるHMG CoAの合成も行うことができることが以前に示された。
PksGタンパク質の例を配列番号17および18に示す。好ましくは、PksGタンパク質は、配列番号17または18と少なくともn%同一であり、PksGタンパク質の活性を有するアミノ酸配列を含む酵素である(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)。
配列番号17は枯草菌(Bacillus subtilis)(P40830)のPksGタンパク質のアミノ酸配列を示し、配列番号18はマイコバクテリウム・マリヌム(Mycobacterium marinum)(B2HGT6)のPksGタンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列同一性の決定に関しては、HMG CoAシンターゼに関連して上記と同じものを適用する。
【0068】
「C−C結合開裂/縮合リアーゼ」の例としては、特に、イソプロピルリンゴ酸シンターゼ(EC2.3.3.13)、ホモクエン酸シンターゼ(EC2.3.3.14)または4−ヒドロキシ−2−ケト吉草酸アルドラーゼ(EC4.1.3.39)として分類される酵素が挙げられる。イソプロピルリンゴ酸シンターゼは以下の反応を触媒する:
【0069】
【化12】
このような酵素の例は、ウシ流産菌(Brucella abortus)(菌株2308;Q2YRT1)の対応する酵素およびハヘラ・チェジュエンシス(Hahella chejuensis)(菌株KCTC2396;Q2SFA7)の対応する酵素である。
【0070】
ホモクエン酸シンターゼ(EC2.3.3.14)は以下の化学反応を触媒する酵素である:
【0071】
【化13】
4−ヒドロキシ−2−ケト吉草酸アルドラーゼは以下の化学反応を触媒する:
【0072】
【化14】
【0073】
EC番号EC4.1.3.4で「HMG CoAリアーゼ」または「HMG CoAリアーゼの活性を有するタンパク質/酵素」として分類される酵素の例を配列番号19〜25に示す。配列番号19はトウモロコシ(Zea mays)(受託番号B6U7B9、遺伝子バンクACG45252)のHMG CoAリアーゼの配列を示し、配列番号20はゼブラダニオ(Danio rerio)(ゼブラフィッシュ(Brachydanio rerio);A8WG57、遺伝子バンクBC154587)のHMG CoAリアーゼの配列を示し、配列番号21はウシ(Bos taurus)(Uniprot受託番号Q29448)のHMG CoAリアーゼの配列を示し、配列番号22はヒト(Homo sapiens)(ミトコンドリア、Uniprot受託番号P35914、遺伝子バンクHUMHYMEGLA)のHMG CoAリアーゼの配列を示し、配列番号23はプチダ菌(Pseudomonas putida)(Q88H25)のHMG CoAリアーゼの配列を示し、配列番号24はアシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)(B7H4C6)のHMG CoAリアーゼの配列を示し、配列番号25はサーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)(Q72IH0)のHMG CoAリアーゼの配列を示す。
【0074】
本発明の好ましい実施形態では、HMG CoAリアーゼが、配列番号19〜25からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号19〜25のいずれかと少なくともn%同一であり、HMG CoAリアーゼの活性を有する配列を含む酵素である(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)。
配列同一性の決定に関しては、HMG CoAシンターゼに関連して上記と同じものを適用する。
【0075】
アセト酢酸のアセトンへの酵素的変換:図1に示されるステップIV
本発明の方法により3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)に変換されるアセトン自体は酵素反応、すなわちアセト酢酸のアセトンへの酵素的変換によって提供され得る。アセト酢酸のアセトンへの変換(
図1に示されるステップIV)を
図5に模式的に示す。この反応は脱炭酸反応であり、アセトンを産生することができる生物、すなわちクロストリジウム(Clostridium)属の生物で自然に起こる反応である。
【0076】
よって、本発明はまた、最初にアセト酢酸をアセトンに変換し、次いで、これを本明細書上記で記載されるようにアセチル−CoAと縮合して3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)にし、次いで、これを3−メチルクロトン酸に変換する、アセト酢酸からイソブテンを製造する方法に関する。さらに、次いで、前記3−メチルクロトン酸を本明細書上記で記載されるようにイソブテンに変換する。
【0077】
本発明によると、アセト酢酸の前記アセトンへの変換は、好ましくはアセト酢酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.4)を使用する。この酵素をコードするいくつかの生物のヌクレオチド配列、例えばクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)(Uniprot受託番号P23670およびP23673)、クロストリジウム・ベイジェリンキ(Clostridium beijerinckii)(クロストリジウム(Clostridium)MP;Q9RPK1)、クロストリジウム・パストゥリアヌム(Clostridium pasteurianum)(Uniprot受託番号P81336)、ブラディリゾビウム属(Bradyrhizobium)種(菌株BTAi1/ATCC BAA−1182;Uniprot受託番号A5EBU7)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)(ATCC 10399 A9LBS0)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)(Uniprot受託番号A3MAE3)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)FMH A5XJB2、バークホルデリア・セノセパシア(Burkholderia cenocepacia)(Uniprot受託番号A0B471)、バークホルデリア・アンビファリア(Burkholderia ambifaria)(Uniprot受託番号Q0b5P1)、バークホルデリア・フィトファーマンス(Burkholderia phytofirmans)(Uniprot受託番号B2T319)、バークホルデリア属(Burkholderia)種(Uniprot受託番号Q38ZU0)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)(Uniprot受託番号B2TLN8)、ラルストニア・ピッケティ(Ralstonia pickettii)、(Uniprot受託番号B2UIG7)、ストレプトマイセス・ノガラター(Streptomyces nogalater)(Uniprot受託番号Q9EYI7)、ストレプトマイセス・アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)(Uniprot受託番号Q82NF4)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)(Uniprot受託番号Q5ZXQ9)、ラクトバチルス・サリヴァリゥス(Lactobacillus salivarius)(Uniprot受託番号Q1WVG5)、ロドコッカス属(Rhodococcus)種(Uniprot受託番号Q0S7W4)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)(Uniprot受託番号Q890G0)、エンドウ根粒菌(Rhizobium leguminosarum)(Uniprot受託番号Q1M911)、カゼイ菌(Lactobacillus casei)(Uniprot受託番号Q03B66)、野兎病菌(Francisella tularensis)(Uniprot受託番号Q0BLC9)、サッカロポリスポラ・エリスラエア(Saccharopolyspora erythreae)(Uniprot受託番号A4FKR9)、コラルカエウム・クリプトフィルム(Korarchaeum cryptofilum)(Uniprot受託番号B1L3N6)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)(Uniprot受託番号A7Z8K8)、トウモロコシごま葉枯病菌(Cochliobolus heterostrophus)(Uniprot受託番号Q8NJQ3)、スルホロブス・イスランディカス(Sulfolobus islandicus)(Uniprot受託番号C3ML22)および野兎病菌(Francisella tularensis)亜種ホラークティカ(holarctica)(菌株OSU18)のadc遺伝子が当技術分野で知られている。
【0078】
好ましい実施形態では、アセト酢酸のアセトンへの変換において本発明の方法に使用されるアセト酢酸デカルボキシラーゼが、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)(Uniprot受託番号P23670およびP23673)から得られるアセト酢酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.4)である。
【0079】
アセトアセチル−CoAのアセト酢酸への酵素的変換:図1に示されるステップVaおよびステップVb
本発明の方法によりアセトンに変換されるアセト酢酸自体は酵素反応、すなわちアセトアセチル−CoAのアセト酢酸への酵素的変換によって提供され得る。アセトアセチル−CoAのアセト酢酸への変換は2つの異なる経路によって達成することができる。1つの可能性は、アセトアセチル−CoAのCoAチオエステルをアセト酢酸に加水分解することによる、アセトアセチル−CoAのアセト酢酸への変換である。この反応(
図1に示されるステップVa)を
図6に模式的に示す。別のより好ましい態様では、アセトアセチル−CoAのCoA基を酢酸上に転移し、アセト酢酸とアセチル−CoAの形成を得る。この反応(
図1に示されるステップVb)を
図7に模式的に示す。
【0080】
よって、本発明はまた、最初にアセトアセチル−CoAをアセト酢酸に変換し、次いで、これを本明細書上記で記載されるようにアセトンに変換し、次いで、これをアセチル−CoAと縮合して3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)にし、次いで、これを3−メチルクロトン酸に変換する、アセトアセチル−CoAからイソブテンを製造する方法に関する。さらに、次いで、前記3−メチルクロトン酸を本明細書上記で記載されるようにイソブテンに変換する。
【0081】
言及されるように、一態様では、アセトアセチル−CoAのCoAチオエステルを加水分解してアセト酢酸を得る。本発明のこの態様によると、アセトアセチル−CoAのアセト酢酸への酵素的変換が、好ましくは自然にこの反応を触媒するアセトアセチル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.11)を使用することによって達成される。
アセトアセチル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.11)は以下の反応を触媒する:
【0082】
【化15】
この酵素は種々の生物で知られており、例えば真核生物で記載されている。酵素は、例えばウシ(Bos taurus)、ドバト(Columba livia)、ニワトリ(Gallus gallus)、ヒト(Homo sapiens)、マウス(Mus musculus)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)、アナウサギ(Oryctolagus cuniculus)またはドブネズミ(Rattus norvegicus)で記載されている。よって、好ましい実施形態では、酵素がウシ属(Bos)、ハト属(Columba)、ニワトリ属(Gallus)、ハツカネズミ属(Mus)、タイヘイヨウサケ属(Oncorhynchus)、アナウサギ属(Oryctolagus)およびクマネズミ属(Rattus)からなる群から選択される属のものである。より好ましい実施形態では、酵素がウシ(Bos taurus)、ドバト(Columba livia)、ニワトリ(Gallus gallus)、ヒト(Homo sapiens)、マウス(Mus musculus)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)、アナウサギ(Oryctolagus cuniculus)またはドブネズミ(Rattus norvegicus)からなる群から選択される種のものである。ウシ(Bos taurus)、ドバト(Columba livia)、ニワトリ(Gallus gallus)、ヒト(Homo sapiens)、マウス(Mus musculus)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)、アナウサギ(Oryctolagus cuniculus)およびドブネズミ(Rattus norvegicus)。
言及されるように、別のより好ましい可能性では、アセトアセチル−CoAのCoA基を酢酸上に転移して、アセト酢酸とアセチル−CoAの形成を得る。本発明のこの可能性によると、アセトアセチル−CoAのアセト酢酸への酵素的変換は、好ましくはアセトアセチル−CoAのCoA基を酢酸上に転移することができる酵素を使用することによって達成される。
【0083】
好ましくは、アセトアセチル−CoAのCoA基を酢酸上に転移することができるこのような酵素は、CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)のファミリーに属する。
よって、本発明は、アセトアセチル−CoAのCoA基を酢酸上に転移することができる酵素、好ましくはCoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)を使用することによって、アセトアセチル−CoAをアセト酢酸に酵素的変換する方法に関する。本発明の方法に使用できるアセトアセチル−CoAのアセト酢酸への変換を触媒する酵素の好ましい例は、酢酸CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.8)として分類される酵素である。
酢酸CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.8)は以下の反応を触媒する:
【0084】
【化16】
酢酸CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.8)は種々の生物から、例えば大腸菌(E. coli)から公知であり、大腸菌では、atoD遺伝子およびatoA遺伝子(UniProt受託番号P76458およびP76459)によってコードされている。酢酸CoAトランスフェラーゼはクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)からも公知であり、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)では、ctfAB遺伝子によってコードされている。よって、本発明の好ましい実施形態では、大腸菌(E. coli)から得られ、atoD遺伝子およびatoA遺伝子(UniProt受託番号P76458およびP76459)によってコードされている、またはクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)から得られ、ctfAB遺伝子によってコードされている酢酸CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.8)がアセトアセチルCoAのアセト酢酸への変換に使用される。
【0085】
3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への酵素的変換:図1に示されるステップVI:
3−メチルクロトン酸は、以下に記載される別の可能な経路によって提供することができる。
【0086】
よって、別の実施形態では、イソブテンに変換される3−メチルクロトン酸自体が別の酵素反応、すなわち3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への酵素的変換によって提供され得る。3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への変換(
図1に示されるステップVI)を
図8に模式的に示す。
【0087】
3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への変換は、例えば異なる方法で、例えば以下に記載され、
図1(
図1に示されるステップVIa、ステップVIbまたはステップVIc)に示される3つの代替酵素経路によって達成することができる。
【0088】
よって、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への酵素的変換は、
(a)好ましくはCoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)、好ましくはプロピオン酸:酢酸−CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.1)、酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.8)またはスクシニル−CoA:酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.18)を使用することによって、3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に直接変換する単一酵素反応(
図1に示されるステップVIa);
(b)好ましくはチオエステルヒドロラーゼ(EC3.1.2.−)、好ましくはアセチル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.1)、ADP依存性短鎖アシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.18)またはアシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.20)を使用することによって、3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に直接変換する単一酵素反応(
図1に示されるステップVIb);または
(c)(i)最初に3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトニルリン酸エステルに酵素的に変換するステップと;
(ii)次いでこうして得られた3−メチルクロトニルリン酸エステルを前記3−メチルクロトン酸に酵素的に変換するステップと
を含む2つの酵素ステップ(
図1に示されるステップVIc)
によって達成され得る。
【0089】
よって、1つの可能性は、3−メチルクロトニル−CoAから3−メチルクロトニルリン酸エステルを介した3−メチルクロトン酸への二段階変換である。他の2つの選択肢は、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への直接変換を含む。これら3つの選択肢を以下で論じる。
【0090】
したがって、一実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への酵素的変換が、(i)最初に3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトニルリン酸エステルに酵素的に変換するステップと;(ii)次いでこうして得られた3−メチルクロトニルリン酸エステルを前記3−メチルクロトン酸に酵素的に変換するステップと、を含む2つの酵素ステップ(
図1のステップVIcに示される)によって達成され得る。対応する反応を
図11に模式的に示す。
【0091】
3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトニルリン酸エステルへの変換は、例えばリン酸ブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)またはリン酸アセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.8)の使用によって達成され得る。
リン酸ブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)は自然に以下の反応を触媒する:
【0092】
【化17】
リン酸ブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)が、ブチリル補酵素A(ブチリル−CoA)に加えて、いくつかの基質、特にアセチル−CoA、プロピオニル−CoA、イソブチリル−CoA、バレリル−CoAおよびイソバレリル−CoAを使用できることが、Wiesenborn et al. (Appl. Environ. Microbiol. 55 (1989), 317-322)およびWard et al. (J. Bacteriol. 181 (1999), 5433-5442)によって記載されている。
酵素はいくつかの生物、特に細菌および原虫で生じることが記載されている。一実施形態では、酵素が原虫ダシトリカ・ルミナンチウム(Dasytricha ruminantium)のものである。好ましい実施形態では、リン酸ブチリルトランスフェラーゼが、細菌、好ましくはバチルス属(Bacillus)、ブチリビブリオ属(Butyrivibrio)、エンテロコッカス属(Enterococcus)またはクロストリジウム属(Clostridium)、より好ましくはエンテロコッカス属(Enterococcus)またはクロストリジウム属(Clostridium)の細菌、さらにより好ましくはバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ブチリビブリオ・フィブリソルベンス(Butyrivibrio fibrisolvens)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム・ベイジェリンキ(Clostridium beijerinckii)、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)、クロストリジウム・クライベリ(Clostridium kluyveri)、クロストリジウム・サッカロアセトブリチカム(Clostridium saccharoacetobutylicum)、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sprorogenes)またはフェカリス菌(Enterococcus faecalis)のリン酸ブチリルトランスフェラーゼである。最も好ましくは、酵素が、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)のものであり、特にptb遺伝子(Uniprot受託番号F0K6W0;Wiesenborn et al. (Appl. Environ. Microbiol. 55 (1989), 317-322))によってコードされる酵素である、またはフェカリス菌(Enterococcus faecalis)(Uniprot受託番号K4YRE8;Ward et al. (J. Bacteriol. 181 (1999), 5433-5442))のものである。
【0093】
好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトニルリン酸エステルへの変換が、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、好ましくはクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)菌株ATCC824のリン酸ブチリルトランスフェラーゼを使用することによって達成される。前記タンパク質のアミノ酸配列を配列番号26に示す。
当然、配列番号26のこのアミノ酸を正確に示す酵素のみを使用できるわけではない。配列番号26に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%同一である配列を含む酵素を使用することも可能である。好ましくは、配列同一性は配列番号26に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、85%または90%、さらにより好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、特に好ましくは少なくとも99%であり、酵素は3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトニルリン酸エステルに変換する酵素活性を有する。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0094】
別の好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトニルリン酸エステルへの変換が、枯草菌(Bacillus subtilis)、好ましくはUniProt受託番号P54530を有する枯草菌(Bacillus subtilis)のリン酸ブチリルトランスフェラーゼを使用することによって達成される。前記タンパク質のアミノ酸配列を配列番号73に示す。
本発明の好ましい実施形態では、リン酸ブチリルトランスフェラーゼが、配列番号73のアミノ酸配列または配列番号73と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトニルリン酸エステルに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0095】
別の好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトニルリン酸エステルへの変換が、フェカリス菌(Enterococcus faecalis)、好ましくはUniProt受託番号S4BZL5を有するフェカリス菌(Enterococcus faecalis)のリン酸ブリチルトランスフェラーゼを使用することによって達成される。前記タンパク質のアミノ酸配列を配列番号74に示す。
本発明の好ましい実施形態では、リン酸ブチリルトランスフェラーゼが、配列番号74のアミノ酸配列または配列番号74と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトニルリン酸エステルに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0096】
リン酸アセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.8)は自然に以下の反応を触媒する:
【0097】
【化18】
リン酸アセチルトランスフェラーゼが基質としてブチリル−CoAまたはプロピオニル−CoAも使用できることがVeit et al. (J. Biotechnol.140 (2009), 75-83)によって記載されている。
InterProデータベースのこの酵素ファミリーについての受託番号はIPR012147およびIPR002505である、「http://www.ebi.ac.uk/interpro/entry/IPR002505」
(http://www.ebi.ac.uk/interpro/entry/IPR012147
http://www.ebi.ac.uk/interpro/entry/IPR002505)
http://pfam.sanger.ac.uk/family/PF01515も参照されたい。
【0098】
この酵素は種々の生物、特に細菌および真菌で記載されている。よって、1つの好ましい実施形態では、酵素が、好ましくは大腸菌属(Escherichia)、クロロゴニウム属(Chlorogonium)、クロストリジウム属(Clostridium)、ベイヨネラ属(Veillonella)、メタノサルシナ属(Methanosarcina)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ルエゲリア属(Ruegeria)、サルモネラ属(Salmonella)、アゾトバクター属(Azotobacter)、ブラディリゾビウム属(Bradyrhizobium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ムーレラ属(Moorella)、ロドシュードモナス属(Rhodopseudomonas)、シノリゾビウム属(Sinorhizobium)、連鎖球菌属(Streptococcus)、サーモトガ属(Thermotoga)またはバチルス属(Bacillus)の、より好ましくは種、大腸菌(Escherichia coli)、クロロゴニウム・エロンガツム(Chlorogonium elongatum)、クロストリジウム・クライベリ(Clostridium kluyveri)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム・アシディウリシ(Clostridium acidiurici)、ベイヨネラ・パルブラ(Veillonella parvula)、メタノサルシナ・サーモフィラ(Methanosarcina thermophila)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、ルエゲリア・ポメロイ(Ruegeria pomeroyi)、サルモネラ菌(Salmonella enterica)、アゾトバクター・ビネランジイ(Azotobacter vinelandii)、ブラディリゾビウム・ジャポニクム(Bradyrhizobium japonicum)、ファーメンタム菌(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・サンフランシスエンシス(Lactobacillus sanfranciscensis)、ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、アルファルファ根粒菌(Sinorhizobium meliloti)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)または枯草菌(Bacillus subtilis)の細菌の酵素である。別の好ましい実施形態では、酵素が、好ましくはサッカロマイセス属(Saccharomyces)、より好ましくは種、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の真菌の酵素である。
【0099】
好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトニルリン酸エステルへの変換が、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、好ましくはコリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)菌株ATCC13032のリン酸アセチルトランスフェラーゼを使用することによって達成される。前記タンパク質のアミノ酸配列を配列番号27に示す。
当然、配列番号27のこのアミノ酸を正確に示す酵素のみを使用できるわけではない。配列番号27に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%同一である配列を含む酵素を使用することも可能である。好ましくは、配列同一性は配列番号27に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、85%または90%、さらにより好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、特に好ましくは少なくとも99%であり、酵素は3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトニルリン酸エステルに変換する酵素活性を有する。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0100】
3−メチルクロトニルリン酸エステルの3−メチルクロトン酸への変換は、例えばEC2.7.2.−として分類される酵素、すなわちホスホトランスフェラーゼを使用することによって達成することができる。このような酵素はアクセプターとしてカルボキシ基を使用する。よって、3−メチルクロトニルリン酸エステルの3−メチルクロトン酸への変換は、例えばアクセプターとしてのカルボキシ基を有する酵素(EC2.7.2.−)を使用することによって達成することができる。好ましい実施形態では、3−メチルクロトニルリン酸エステルの3−メチルクロトン酸への変換が、プロピオン酸キナーゼ(EC2.7.2.15)、酢酸キナーゼ(EC2.7.2.1)、酪酸キナーゼ(EC2.7.2.7)または分岐鎖脂肪酸キナーゼ(EC2.7.2.14)を使用することによって達成される。
【0101】
酪酸キナーゼ(EC2.7.2.7)は自然に以下の反応を触媒する:
【0102】
【化19】
酪酸キナーゼが酪酸に加えていくつかの基質、例えば吉草酸、イソ酪酸、イソ吉草酸および酢酸ビニルを使用できることが、例えばHartmanis (J. Biol. Chem. 262 (1987), 617-621)によって記載されている。この酵素は種々の生物、特に細菌で記載されている。1つの好ましい実施形態では、酵素が細菌、好ましくはクロストリジウム属(Clostridium)、ブチリビブリオ属(Butyrivibrio)、サーモトガ属(Thermotoga)または腸球菌属(Enterococcus)の細菌のものである。クロストリジウム属(Clostridium)が好ましい。より好ましくは、酵素が、種、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム・プロテオクラスティクム(Clostridium proteoclasticum)、クロストリジウム・チロブチリカム(Clostridium tyrobutyricum)、酪酸菌(Clostridium butyricum)、クロストリジウム・パストゥリアヌム(Clostridium pasteurianum)、クロストリジウム・テタノモーファム(Clostridium tetanomorphum)、ブチリビブリオ・フィブリソルベンス(Butyrivibrio fibrisolvens)、ブチリビブリオ・ヒュンガティ(Butyrivibrio hungatei)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)またはエンテロコッカス・デューランス(Enterococcus durans)の細菌のものである。クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)が好ましい。この生物について、2種の酪酸キナーゼが記載されている:酪酸キナーゼ1(Uniprot受託番号:Q45829)および酪酸キナーゼII(Uniprot受託番号:Q97II19)。
別の好ましい実施形態では、3−メチルクロトニルリン酸エステルの3−メチルクロトン酸への変換が、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、好ましくはカゼイ菌(Lactobacillus casei)(UniProt受託番号K0N529)の酪酸キナーゼまたはゲオバチルス属(Geobacillus)、好ましくはゲオバチルス属(Geobacillus)種(UniProt受託番号L8A0E1)の酪酸キナーゼを使用することによって達成される。これらのタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号75および配列番号76に示す。
本発明の好ましい実施形態では、酪酸キナーゼが、配列番号75もしくは76のアミノ酸配列または配列番号75もしくは76と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−メチルクロトニルリン酸エステルを3−メチルクロトン酸に変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0103】
分岐鎖脂肪酸キナーゼ(EC2.7.2.14)は自然に以下の反応を触媒する:
【0104】
【化20】
(式中、「アルキル」は2−メチルブタン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸またはプロピオン酸であり得る)。プロピオン酸との後者の反応は、スピロヘータの分岐鎖脂肪酸キナーゼについて記載されている(J. Bacteriol. 152 (1982), 246-54)。
この酵素はいくつかの細菌で生じると記載されている。よって、1つの好ましい実施形態では、酵素が、好ましくはスピロヘータ属(Spirochaeta)またはサーモトガ属(Thermotoga)、より好ましくはサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)の細菌の酵素である。
【0105】
プロピオン酸キナーゼ(EC2.7.2.15)は自然に以下の反応を触媒する:
【0106】
【化21】
【0107】
【化22】
この酵素はいくつかの細菌、特に腸内細菌科(Enterobacteriaceae)で生じることが記載されている。よって、1つの好ましい実施形態では、酵素が、好ましくはサルモネラ属(Salmonella)または大腸菌属(Escherichia)、より好ましくは種、サルモネラ菌(Salmonella enterica)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)または大腸菌(Escherichia coli)の細菌の酵素である。
【0108】
好ましい実施形態では、3−メチルクロトニルリン酸エステルの3−メチルクロトン酸への変換が、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、好ましくはネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)菌株ATCC700720のプロピオン酸キナーゼを使用することによって達成される。前記タンパク質のアミノ酸配列を配列番号28に示す。
当然、配列番号28のこのアミノ酸を正確に示す酵素のみを使用できるわけではない。配列番号28に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%同一である配列を含む酵素を使用することも可能である。好ましくは、配列同一性は配列番号28に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、85%または90%、さらにより好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、特に好ましくは少なくとも99%であり、酵素は3−メチルクロトニルリン酸エステルを3−メチルクロトン酸に変換する酵素活性を有する。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
別の好ましい実施形態では、3−メチルクロトニルリン酸エステルの3−メチルクロトン酸への変換が、大腸菌(Escherichia coli)、好ましくは大腸菌(Escherichia coli)菌株K12のプロピオン酸キナーゼを使用することによって達成される。前記タンパク質のアミノ酸配列を配列番号29に示す。
当然、配列番号29のこのアミノ酸を正確に示す酵素のみを使用できるわけではない。配列番号29に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%同一である配列を含む酵素を使用することも可能である。好ましくは、配列同一性は配列番号29に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、85%または90%、さらにより好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、特に好ましくは少なくとも99%であり、酵素は3−メチルクロトニルリン酸エステルを3−メチルクロトン酸に変換する酵素活性を有する。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0109】
酢酸キナーゼ(EC2.7.2.1)は自然に以下の反応を触媒する:
【0110】
【化23】

この酵素はいくつかの生物、特に細菌および真核生物で生じることが記載されている。1つの好ましい実施形態では、酵素が、メタノサルシナ属(Methanosarcina)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、エタノリゲネンス属(Ethanoligenens)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、ロセオバリウス属(Roseovarius)、連鎖球菌属(Streptococcus)、サルモネラ属(Salmonella)、アコレプラズマ属(Acholeplasma)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、アジェロマイセス属(Ajellomyces)、バチルス属(Bacillus)、ボレリア属(Borrelia)、ケトミウム属(Chaetomium)、クロストリジウム属(Clostridium)、コクシジオイデス属(Coccidioides)、ヒトヨタケ属(Coprinopsis)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、カプリアビダス属(Cupriavidus)、デスルホビブリオ属(Desulfovibrio)、腸球菌属(Enterococcus)、大腸菌属(Escherichia)、エタノリゲネス(Ethanoligenes)、ゲオバチルス属(Geobacillus)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、乳酸桿菌属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、リステリア属(Listeria)、メソプラズマ属(Mesoplasma)、ムーレラ属(Moorella)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、オセアノバチルス属(Oceanobacillus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、ロドシュードモナス属(Rhodospeudomonas)、ロセオバリウス属(Roseovarius)、サルモネラ属(Salmonella)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、サーモトガ属(Thermotoga)またはベイヨネラ属(Veillonella)の細菌、より好ましくは種、メタノサルシナ・サーモフィラ(Methanosarcina thermophila)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、エタノリゲネンス・ハルビネンス(Ethanoligenens harbinense)、プロピオニバクテリウム・アシディプロピオニッチ(Propionibacterium acidipropionici)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス・エンテリカ(Streptococcus enterica)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、アコレプラズマ・レイドロウイ(Acholeplasma laidlawii)、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、アジェロマイセス・カプスラツス(Ajellomyces capsulatus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ケトミウム・グロボスム(Chaetomium globosum)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、コプリノプシス・シネレア(Coprinopsis cinerea)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)、デスルホビブリオ・ブルガリス(Desulfovibrio vulgaris)、フェカリス菌(Enterococcus faecalis)、大腸菌(Escherichia coli)、エタノリゲネス・ハービネンス(Ethanoligenes harbinense)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、デルブリュッキ菌(Lactobacillus delbrueckii)、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・サンフランシスエンシス(Lactobacillus sanfranciscensis)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、メソプラズマ・フローラム(Mesoplasma florum)、メタノサルシナ・アセチボランス(Methanosarcina acetivorans)、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)、ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、オセアノバチルス・イヘエンシス(Oceanobacillus iheyensis)、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)、プロピオニバクテリウム・アシディプロピオニッチ(Propionibacterium acidipropionici)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodospeudomonas palustris)、サルモネラ菌(Salmonella enterica)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)またはベイヨネラ・パルブラ(Veillonella parvula)の細菌のものである。
別の好ましい実施形態では、酵素が、真菌、好ましくはアスペルギルス属(Aspergillus)、ジベレラ属(Gibberella)、ヒポクレア属(Hypocrea)、マグナポルテ属(Magnaporthe)、ファエオスファエリア(Phaeosphaeria)、ファネロカエテ属(Phanerochaete)、フィトフトラ属(Phytophthora)、スクレロティニア属(Sclerotinia)、ウンシノカルプス(Uncinocarpus)、ウスチラゴ属(Ustilago)またはアカパンカビ属(Neurospora)の真菌、さらにより好ましくは種、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigates)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、ジベレラ・ゼアエ(Gibberella zeae)、ハイポクレア・ジェコリナ(Hypocrea jecorina)、イネいもち病菌(Magnaporthe grisea)、ファエオスファエリア・ノドルム(Phaeosphaeria nodorum)、白色腐朽菌(Phanerochaete chrysosporium)、フィトフトラ・ラモルム(Phytophthora ramorum)、フィトフトラ・ソジャエ(Phytophthora sojae)、スクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)、ウンシノカルプス・レッシイ(Uncinocarpus reesii)、トウモロコシ黒穂病菌(Ustilago maydis)またはアカパンカビ(Neurospora crassa)の真菌の酵素である。
【0111】
さらに好ましい実施形態では、酵素が、植物または藻類、好ましくはクラミドモナス属(Chlamydomonas)、さらにより好ましくは種、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)の酵素である。
別の実施形態では、酵素が、エントアメーバ属(Entamoeba)、より好ましくは種、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)の生物のものである。
【0112】
3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトニルリン酸エステルへの変換に適した上記の酵素ファミリーは、進化的に関連しており、共通の配列シグネチャーを含むことが示されている。これらのシグネチャーはPrositeデータベースにおいて参照され、記載される:
http://prosite.expasy.org/cgi−bin/prosite/nicedoc.pl?PS01075
Gao et al. (FEMS Microbiol. Lett. 213 (2002), 59-65)は、とりわけ、それぞれリン酸ブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)および酪酸キナーゼ(EC2.7.2.7)をコードする、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)のptb遺伝子およびbuk遺伝子で形質転換された遺伝子組換え大腸菌(E. coli)を既に記載している。これらの大腸菌(E. coli)はD−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(3HB)を産生できることが示されている。
【0113】
上記のように、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への変換は、3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に直接変換する2つの代替変換によって達成することもできる。
【0114】
好ましくは、一実施形態では、チオエステルヒドロラーゼ(以下でチオエステラーゼ(E3.1.2.−)と呼ばれる)のファミリーに属する酵素を使用することにより、3−メチルクロトニル−CoAのチオエステル結合を3−メチルクロトン酸に加水分解することによって、3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に直接変換する。この反応を
図10に模式的に示す。
好ましいチオエステルヒドロラーゼ(E3.1.2.−)についての例は、アセチル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.1)、ADP依存性短鎖アシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.18)およびアシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.20)である(
図1に示されるステップVIb)。
【0115】
代替実施形態では、好ましくはCoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)のファミリーに属する酵素を使用することにより、3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に直接変換する。この反応を
図9に模式的に示す。
好ましいCoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)についての例は、プロピオン酸:酢酸−CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.1)、酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.8)およびスクシニル−CoA:酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.18)である(
図1に示されるステップVIa)。
【0116】
チオエステラーゼ(TE;チオエステルヒドロラーゼとも呼ばれる)はEC3.1.2として分類される酵素である。現在、チオエステラーゼはEC3.1.2.1〜EC3.1.2.30として分類されるが、まだ分類されていない/未分類のTEはEC3.1.2.−に属する酵素としてグループ分けされる。Cantu et al. (Protein Science 19 (2010), 1281-1295)は、一次構造に関して互いに関連のないチオエステラーゼの23ファミリーが存在すると記載している。しかしながら、同じファミリーの全てのメンバーは本質的に同じ三次構造を有すると仮定される。チオエステラーゼは、カルボキシル基と硫黄原子との間のチオエステル結合を加水分解する。
好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に変換するために本発明による方法に使用されるチオエステラーゼが、
− アセチル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.1);
− パルミトイル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.2);
− 3−ヒドロキシイソブチリル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.4);
− オレオイル−[アシルキャリアタンパク質]ヒドロラーゼ(EC3.1.2.14);
− ADP依存性短鎖アシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.18);
− ADP依存性中鎖アシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.19);および
− アシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.20)
からなる群から選択される。
【0117】
よって、1つの好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への直接変換が、アセチル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.1)を使用することによって達成される。アセチル−CoAヒドロラーゼは以下の反応を触媒する酵素である:
アセチル−CoA+H
2O→酢酸+CoA
この酵素は真核生物および原核生物、例えば植物、動物、真菌および細菌を含む種々の生物で生じる。酵素は、例えばドブネズミ(Rattus norvegicus)(Uniprot受託番号:Q99NB7)、マウス(Mus musculus)、イノシシ(Sus scrofa)、ウシ(Bos taurus)、ニワトリ(Gallus gallus)、広鼻下目(Platyrrhini)、ヒツジ(Ovis aries)、ゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus)、ブタ回虫(Ascaris suum)、ヒト(Homo sapiens)(Uniprot受託番号:Q8WYK0)、エンドウ(Pisum sativum)、キュウリ(Cucumis sativus)、キビ属(Panicus)種、トウゴマ(Ricinus communis)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、ホウレンソウ(Spinacia oleracea)、トウモロコシ(Zea mays)、ダイズ(Glycine max)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、ブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei brucei)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、トリパノソーマ・ディオニシ(Trypanosoma dionisii)、トリパノソーマ・ベスペルチリオニス(Trypanosoma vespertilionis)、クリチディア・ファシキュラータ(Crithidia fasciculata)、クロストリジウム・アミノワレリクム(Clostridium aminovalericum)、アシダミノコッカス・ファーメンタンス(Acidaminococcus fermaentans)、ブラディリゾビウム・ジャポニクム(Bradyrhizobium japonicum)およびメタノサルシナ・バーケリ(Methanosarcina barkeri)で記載されている。
【0118】
別の好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への直接変換がパルミトイル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.2)を使用することによって達成される。パルミトイル−CoAヒドロラーゼは以下の反応を触媒する酵素である:
パルミトイル−CoA+H
2O→パルミチン酸+CoA
この酵素は真核生物および原核生物、例えば植物、動物、真菌および細菌を含む種々の生物で生じる。酵素は、例えばシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Uniprot受託番号:Q8GYW7)、エンドウ(Pisum sativum)、ホウレンソウ(Spinacia oleracea)、ブミレリオプシス・フィリフォルミス(Bumilleriopsis filiformis)、エレモスファエラ・ウィリディス(Eremosphaera viridis)、モウゲオチア・スカラリス(Mougeotia scalaris)、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)、ロドトルラ・アウランティアカ(Rhodotorula aurantiaca)、出芽酵母(Saccharaomyces cerevisiae)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、線虫(Caenorhabditis elegans)、マウス(Mus musculus)(Uniprot受託番号:P58137)、ヒト(Homo sapiens)、広鼻下目(Platyrrhini)、ウシ(Bos taurus)、イヌ(Canis lupus familiaris)、イノシシ(Sus scrofa)、モルモット(Cavia porcellus)、ハト(Columba)種、チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)、ゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)、アナウサギ(Oryctolagus cuniculus)、ニワトリ(Gallus gallus)、マガモ(Anas platyrhynchos)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・フレイ(Mycobacterium phlei)、スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、枯草菌(Bacillus subtilis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・ベネゼエレ(Streptomyces venezuelae)および大腸菌(E. coli)で記載されている。
【0119】
さらに好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への直接変換が、3−ヒドロキシイソブチリル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.4)を使用することによって達成される。3−ヒドロキシイソブチリル−CoAヒドロラーゼは以下の反応を触媒する酵素である:
3−ヒドロキシイソブチリル−CoA+H
2O→3−ヒドロキシイソ酪酸+CoA
この酵素は真核生物および原核生物、例えば植物、動物、真菌および細菌を含む種々の生物で生じる。酵素は、例えばシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ヒト(Homo sapiens)、イヌ(Canis lupus familiaris)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)、セレウス菌(Bacillus cereus)、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)で記載されている。
【0120】
さらに別の好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への直接変換が、オレオイル−[アシルキャリアタンパク質]ヒドロラーゼ(EC3.1.2.14)を使用することによって達成される。オレオイル−[アシルキャリアタンパク質]ヒドロラーゼは以下の反応を触媒する酵素である:
オレオイル−[アシルキャリアタンパク質]+H
2O→オレイン酸+[アシルキャリアタンパク質]
この酵素は種々の植物および細菌で生じる。酵素は、例えばシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アリウム・アンペロプラスム(Allium ampeloprasum)、ニホンカボチャ(Curcurbita moschata)、クフェア・カロフィラ(Cuphea calophylla)、クフェア・フッケリアナ(Cuphea hookeriana)、クフェア・ランセオラータ(Cuphea lanceolata)、クフェア・ライティ(Cuphea wrightii)、ウンベルラリア・カリフォルニカ(Umbellularia californica)、コリアンダー(Coriandrum sativum)、ホウレンソウ(Spinacia oleracea)、アブラヤシ属(Elaeis)種、ギニアアブラヤシ(Elaeis guineensis)、ダイズ(Glycine max)、アボカド(Persea americana)、エンドウ(Pisum sativum)、シロガラシ(Sinapis alba)、アメリカニレ(Ulmus americana)、トウモロコシ(Zea mays)、カラシナ(Brassica juncea)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、ブラッシカ・ラパ亜種カンペストリス(Brassica rapa subsp. campestris)、ナンヨウアブラギリ(Jatropha curcas)、トウゴマ(Ricinus communis)、クスノキ(Cinnamomum camphorum)、マカダミア・テトラフィラ(Macadamia tetraphylla)、マグニフェラ・インディカ(Mangifera indica)、マフア・ロンギフォリア(Madhuca longifolia)、ポプルス・トメントサ(Populus tomentosa)、ロウバイ(Chimonanthus praecox)、ワタ(Gossypium hirsutum)、ディプロクネマ・ブチラセア(Diploknema butyracea)、ヒマワリ(Helianthus annuus)および化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)で記載されている。
【0121】
さらに別の好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への直接変換が、ADP依存性短鎖アシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.18)を使用することによって達成される。ADP依存性短鎖アシル−CoAヒドロラーゼは以下の反応を触媒する酵素である:
アシル−CoA+H
2O→カルボン酸+CoA
この酵素は種々の動物で生じ、例えばマウス(Mus musculus)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)およびゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus)で記載されている。
【0122】
さらに別の好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への直接変換が、ADP依存性中鎖アシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.19)を使用することによって達成される。ADP依存性中鎖アシル−CoAヒドロラーゼは以下の反応を触媒する酵素である:
アシル−CoA+H
2O→カルボン酸+CoA
この酵素は種々の動物で生じ、例えばドブネズミ(Rattus norvegicus)およびゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus)で記載されている。
【0123】
さらに好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への直接変換が、アシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.20)を使用することによって達成される。アシル−CoAヒドロラーゼは以下の反応を触媒する酵素である:
アシル−CoA+H
2O→カルボン酸+CoA
この酵素は真核生物および原核生物、例えば植物、動物、真菌および細菌を含む種々の生物で生じる。酵素は、例えばシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ロドトルラ・オウランティアカ(Rhodotorula aurantiaca)、ブミレリオプシス・フィリフォルミス(Bumilleriopsis filiformis)、エレモスファエラ・ヴィリディス(Eremosphaera viridis)、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)、マウス(Mus musculus)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)、ヒト(Homo sapiens)、イノシシ(Sus scrofa)、ウシ(Bos taurus)、イヌ(Canis lupus familiaris)、モルモット(Cavia porcellus)、モンゴルキヌゲネズミ(Cricetus griseus)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、マガモ(Anas platyrhynchos)、ニワトリ(Gallus gallus)、線虫(Caenorhabditis elegans)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisia)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、大腸菌(Escherichia coli)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)種、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)、アルガリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、プチダ菌(Pseudomonas putida)、アミコラトプシス・メディテラネイ(Amycolatopsis mediterranei)、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)およびマイコバクテリウム・フレイ(Mycobacterium phlei)で記載されている。好ましい実施形態では、アシル−CoAヒドロラーゼが、大腸菌(Escherichia coli)、プチダ菌(Pseudomonas putida)またはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)の酵素であり、より好ましくは大腸菌(E. coli)のYciA酵素またはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のその密接に関連したホモログHI0827である(Zhuang et al., Biochemistry 47 (2008), 2789-2796)。インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のYciA酵素は、プロピオニル−CoAのプロピオン酸への加水分解を触媒することが記載されている(Zhuang et al., Biochemistry 47 (2008), 2789-2796)。別の好ましい実施形態では、アセチル−CoAヒドロラーゼが、プロピオニル−CoAを加水分解することが記載されているヒト(Homo sapiens)(UniProt:Q9NPJ3)の酵素である(Cao et al., Biochemistry 48 (2009), 1293-1304)。
特に好ましい酵素は、上記のインフルエンザ菌(Haemophilus influenza)菌株R2866(配列番号30)のアシル−CoAヒドロラーゼYciA酵素およびヒト(Homo sapiens)(UniProt:Q9NPJ3;配列番号31)のアセチル−CoAヒドロラーゼ酵素である。酵素、大腸菌(E. coli)(Uniprot P0A8Z0;配列番号32)のアシル−CoAチオエステルヒドロラーゼ、大腸菌(E. coli)(Uniprot P0AGG2;配列番号33)のアシル−CoAチオエステラーゼ2およびプチダ菌(Pseudomonas putida)(Uniprot Q88DR1;配列番号34)のアシル−CoAチオエステラーゼIIも特に好ましい。この酵素はプロピオン酸の生合成について大腸菌(E. coli)でこの反応を効率的に触媒することが既に記載されているので(Tseng and Prather, P.N.A.S. 2012, 109(44),p17925-17930)、大腸菌(E. coli)K12(uniprot:P0AGG2)のチオエステラーゼTesBが特に好ましい。
【0124】
別の好ましい実施形態では、アシル−CoAヒドロラーゼが、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトイル−CoAヒドロラーゼのファミリーから得られる酵素である。1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトイル−CoAヒドロラーゼのこのファミリーの酵素は以下の反応を触媒することが知られている:
1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトイル−CoA+H
2O→1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸+CoA
これらの酵素はしばしばYdilチオエステラーゼとも呼ばれる。このファミリーの酵素は種々の生物で生じ、例えば大腸菌(Escherichia coli)およびサルモネラ菌(Salmonella enterica)で記載されている。
よって、本発明の3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への酵素的変換に特に好ましいアシル−CoAヒドロラーゼは、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトイル−CoAヒドロラーゼのファミリーに属する酵素、より好ましくは大腸菌(Escherichia coli)から得られる1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトイル−CoAヒドロラーゼ(配列番号82)またはサルモネラ菌(Salmonella enterica)から得られる1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトイル−CoAヒドロラーゼ(配列番号83)である。
【0125】
特に好ましい実施形態では、本発明の方法に使用されるアシル−CoAヒドロラーゼが、配列番号30〜34および配列番号82および83のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、または配列番号30〜34および配列番号82および83のいずれか1つと少なくともx%相同であり、アシル−CoAヒドロラーゼの活性を有するアミノ酸配列を示し(xは30〜100の間の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)、このような酵素が3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への変換を触媒することができる。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0126】
上記のように、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への直接変換は、3−メチルクロトニル−CoAのCoA基をカルボン酸に転移することができるCoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)として分類される酵素を使用することによって達成することもできる。
CoA−トランスフェラーゼは全ての系統線の生物で見られる。CoA−トランスフェラーゼのほとんどは2つの周知の酵素ファミリー(以下でファミリーIおよびIIと呼ばれる)に属し、細菌の嫌気性代謝経路で同定された第3のファミリーが存在する。様々なファミリーを記載する概説はHeider (FEBS Letters 509 (2001), 345-349)に見出すことができる。
ファミリーIは、例えば以下のCoA−トランスフェラーゼを含む:
3−オキソ酸について:EC2.8.3.5またはEC2.8.3.6に分類される酵素;
短鎖脂肪酸について:EC2.8.3.8またはEC2.8.3.9に分類される酵素;
コハク酸について:スクシニル−CoA:酢酸CoA−トランスフェラーゼ、すなわちEC2.8.3.18に分類される酵素(Mullins et al., Biochemistry 51(2012), 8422-34; Mullins et al., J. Bacteriol. 190 (2006), 4933-4940も参照されたい)。
ファミリーIのほとんどの酵素は、CoAドナーとしてスクシニル−CoAまたはアセチル−CoAを自然に使用する。これらの酵素は、異なる凝集状態の2つの異なるサブユニットを含む。2つの保存されたアミノ酸配列モチーフが同定されている:
Prosites項目PS01273(http://prosite.expasy.org/cgi−bin/prosite/prosite−search−ac?PDOC00980)
COA_TRANSF_1,PS01273;補酵素Aトランスフェラーゼ記号1(パターン)
コンセンサスパターン:
[DN]−[GN]−x(2)−[LIVMFA](3)−G−G−F−x(3)−G−x−P
および
Prosites項目PS01273(http://prosite.expasy.org/cgi−bin/prosite/prosite−search−ac?PDOC00980)
COA_TRANSF_2,PS01274;補酵素Aトランスフェラーゼ記号2(パターン)
コンセンサスパターン:
[LF]−[HQ]−S−E−N−G−[LIVF](2)−[GA]
E(グルタミン酸)は活性部位残基である。
【0127】
CoA−トランスフェラーゼのファミリーIIは、クエン酸リアーゼ(EC2.8.3.10)およびシトラマル酸リアーゼ(EC2.8.3.11)のホモ二量体α−サブユニットからなる。これらの酵素は、共有結合CoA誘導体を含むアシルキャリアタンパク質(ACP)の移動を触媒する。このような酵素がインビトロで遊離CoA−チオエステル、例えばクエン酸リアーゼの場合、アセチル−CoA、プロピオニル−CoA、ブチリル−CoA(Dimroth et al., Eur. J. Biochem. 80 (1977), 479-488)、ならびにシトラマル酸リアーゼの場合、アセチル−CoAおよびスクシニルCoAも受容することが示された(Dimroth et al., Eur. J. Biochem. 80 (1977), 469-477)。
【0128】
Heider(同所より)によると、CoA−トランスフェラーゼのファミリーIIIは、ホルミル−CoA:シュウ酸CoA−トランスフェラーゼ、スクシニル−CoA:(R)−ベンジルコハク酸CoA−トランスフェラーゼ、(E)−シンナモイル−CoA:(R)−フェニル酢酸CoA−トランスフェラーゼおよびブチロベタイニル−CoA:(R)−カルニチンCoA−トランスフェラーゼからなる。さらなる数のファミリーIIIは、クロロフレクサス・オウランティアカス(Chloroflexus aurantiacus)の独立栄養性CO
2固定におけるその機能が、L−リンゴ酸をCoAドナーとしてのスクシニルCoAを有するCoAチオエステルに活性化することであるスクシニル−CoA:L−リンゴ酸CoA−トランスフェラーゼである(Friedman S. et al. J. Bacteriol. 188 (2006), 2646-2655)。このファミリーのCoAトランスフェラーゼのアミノ酸配列は、ファミリーIおよびIIのアミノ酸配列と低い程度の配列同一性しか示さない。これらのCoA−トランスフェラーゼは原核生物および真核生物で生じる。
【0129】
好ましい実施形態では、本発明による方法に使用されるCoA−トランスフェラーゼが、本明細書上記で記載されるファミリーIまたはIIに属するCoA−トランスフェラーゼである。
好ましくは、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への直接変換のために本発明による方法に使用されるCoA−トランスフェラーゼは、
− プロピオン酸:酢酸−CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.1);
− 酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.8);および
− 酪酸−アセト酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.9)
からなる群から選択される。
【0130】
よって、1つの好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への直接変換が、酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.8)を使用することによって達成される。酢酸CoA−トランスフェラーゼは以下の反応を触媒する酵素である:
【0131】
【化24】
この酵素は種々の細菌で生じ、例えばアナエロスティペス・カカエ(Anaerostipes caccae)、ユウバクテリウム・ハリイ(Eubacterium hallii)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)、ロゼブリア・ホミニス(Roseburia hominis)、ロゼブリア・インテスティナリス(Roseburia intestinalis)、コプロコッカス属(Coprococcus)種および大腸菌(Escherichia coli)で記載されている。
【0132】
別の好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への直接変換が、酪酸−アセト酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.9)を使用することによって達成される。酪酸−アセト酢酸CoA−トランスフェラーゼは以下の反応を触媒する酵素である:
【0133】
【化25】
この酵素は、真核生物および原核生物、例えば動物および細菌を含む種々の生物で生じる。酵素は、例えばウシ(Bos taurus)、クロストリジウム属(Clostridium)種および大腸菌(Escherichia coli)で記載されている。
【0134】
別の好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への直接変換が、プロピオン酸:酢酸−CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.1)を使用することによって達成される。プロピオン酸:酢酸−CoAトランスフェラーゼは以下の反応を触媒する酵素である:
【0135】
【化26】
この酵素は原核生物を含む種々の生物で生じ、酵素は、例えばクロストリジウム・クライベリ(Clostridium kluyveri)、クロストリジウム・プロピオニクム(Clostridium propionicum)、クロストリジウム・プロピオニクム(Clostridium propionicum)JCM1430、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)およびエメリセラ・ニデュランス(Emericella nidulans)で記載されている。
【0136】
別の好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への直接変換が、スクシニル−CoA:酢酸−CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.18)を使用することによって達成される。スクシニル−CoA:酢酸CoA−トランスフェラーゼは以下の反応を触媒する酵素である:
【0137】
【化27】
この酵素は原核生物を含む種々の生物で生じ、酵素は、例えばアセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、ウシ胎仔トリコモナス(Tritrichomonas foetus)、ウシ胎仔トリコモナス(Tritrichomonas foetus)ATCC30924およびブルセイトリパノソーマ(Trypanosoma brucei)で記載されている。
【0138】
別の好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への直接変換が、メガスフェラ属(Megasphaera)種(Uniprot受託番号S7HFR5)から得られるCoA−トランスフェラーゼ、本明細書上記で定義されるCoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)に属する酵素を使用することによって達成される。
好ましい実施形態では、本発明の方法に使用されるCoA−トランスフェラーゼが、メガスフェラ属(Megasphaera)種(Uniprot受託番号S7HFR5;配列番号84)から得られるCoA−トランスフェラーゼである。
本発明の好ましい実施形態では、CoA−トランスフェラーゼが、配列番号84のアミノ酸配列または配列番号84と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に直接変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0139】
3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への酵素的変換:上記ステップVIの代替経路
別の好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸への変換が、最初に3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルブチリル−CoAに酵素的に変換し、次いで、これを3−メチル酪酸に酵素的に変換し、次いで最終的に、これを3−メチルクロトン酸に変換する代替経路によって達成される。3−メチルブチリル−CoAおよび3−メチル酪酸を介した3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸へのこの代替変換を
図32に模式的に示す。
【0140】
したがって、本発明は、3−メチルクロトニル−CoAからイソブテンを製造する方法であって、最初に3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルブチリル−CoAに酵素的に変換し、次いで、これを3−メチル酪酸に酵素的に変換し、次いでこれを3−メチルクロトン酸に変換し、次いでこれを本明細書上記で記載されるようにイソブテンにさらに変換する方法に関する。
【0141】
第1の酵素的変換、すなわち、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルブチリル−CoAへの変換は不飽和化反応、すなわち、3−メチルクロトニル−CoAの二重結合C=Cの3−メチルブチリル−CoAへの還元である。3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルブチリル−CoAへの酵素的変換、すなわち、3−メチルクロトニル−CoAの二重結合の還元は、例えばEC1.3._._として分類される酵素を使用することによって達成することができる。EC1.3._._として分類される酵素は、ドナー分子のCH−CH基に作用するオキシドレダクターゼである。このサブクラスは、2個の炭素原子間の炭素−炭素単結合の炭素−炭素二重結合への変換を可逆的に触媒する酵素を含む。EC1.3のサブクラスはアクセプターに応じて分類される。1つの好ましい実施形態では、酵素が、EC1.3._._として分類され、補助因子としてNADHまたはNADPHを使用する酵素である。1つの特に好ましい実施形態では、酵素が補助因子としてNADPHを使用する酵素である。好ましい実施形態では、酵素が、
− アシル−CoAデヒドロゲナーゼ(NADP+)(EC1.3.1.8);
− エノイル−[アシルキャリアタンパク質]レダクターゼ(NADPH、Si特異的)(EC1.3.1.10);
− シス−2−エノイル−CoAレダクターゼ(NADPH)(EC1.3.1.37);
− トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ(NADPH)(EC1.3.1.38);
− エノイル−[アシルキャリアタンパク質]レダクターゼ(NADPH、Re特異的)(EC1.3.1.39);および
− クロトニル−CoAレダクターゼ(EC1.3.1.86)
からなる群から選択される。
【0142】
よって、1つの好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルブチリル−CoAへの変換が、アシルCoA−デヒドロゲナーゼ(NADP+)(EC1.3.1.8)を使用することによって達成される。アシル−CoAデヒドロゲナーゼは以下の反応を触媒する酵素である:
【0143】
【化28】
この酵素は真核生物および原核生物、例えば植物、動物、真菌および細菌を含む種々の生物で生じる。酵素は、例えばウシ(Bos taurus)、ドブネズミ(Rattus novegicus)、マウス(Mus musculus)、ハト(Columba)種、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)、アリウム・アンペロプラスム(Allium ampeloprasum)、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、ストレプトコッカス・コリヌス(Streptococcus collinus)、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)およびスメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)で記載されている。
【0144】
さらに好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルブチリル−CoAへの変換が、エノイル−[アシルキャリアタンパク質]レダクターゼ(NADPH、Si特異的)(EC1.3.1.10)を使用することによって達成される。エノイル−[アシルキャリアタンパク質]レダクターゼ(NADPH、Si特異的)は以下の反応を触媒する酵素である:
【0145】
【化29】
この酵素は真核生物および原核生物、例えば植物、真菌および細菌を含む種々の生物で生じる。酵素は、例えばベニバナ(Carthamus tinctorius)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、ストレプトコッカス・コリヌス(Streptococcus collinus)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、セレウス菌(Bacillus cereus)、ジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis)、大腸菌(Escherichia coli)およびサルモネラ菌(Salmonella enterica)で記載されている。
【0146】
さらに好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルブチリル−CoAへの変換が、シス−2−エノイル−CoAレダクターゼ(NADPH)(EC1.3.1.37)を使用することによって達成される。シス−2−エノイル−CoAレダクターゼ(NADPH)は以下の反応を触媒する酵素である:
【0147】
【化30】
この酵素は大腸菌(Escherichia coli)で生じることが記載されている。
【0148】
さらに好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルブチリル−CoAへの変換が、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ(NADPH)(EC1.3.1.38)を使用することによって達成される。トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ(NADPH)は以下の反応を触媒する酵素である:
【0149】
【化31】
この酵素は、真核生物および原核生物、例えば植物、動物および細菌を含む種々の生物で生じる。酵素は、例えばヒト(Homo sapiens)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)、マウス(Mus musculus)、モルモット(Cavia porcellus)、線虫(Caenorhabditis elegans)、ファレノプシス・アマビリス(Phalaenopsis amabilis)、ワタ(Gossypium hirsutum)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ストレプトコッカス・コリヌス(Streptococcus collinus)および大腸菌(Escherichia coli)で記載されている。
【0150】
さらに好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルブチリル−CoAへの変換が、エノイル−[アシルキャリアタンパク質]レダクターゼ(NADPH、Re特異的)(EC1.3.1.39)を使用することによって達成される。エノイル−[アシルキャリアタンパク質]レダクターゼ(NADPH、Re特異的)は以下の反応を触媒する酵素である:
【0151】
【化32】
この酵素は真核生物および原核生物、例えば動物および細菌を含む種々の生物で生じる。酵素は、例えばニワトリ(Gallus gallus)、ハト(Pigeon)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)、モルモット(Cavia porcellus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、枯草菌(Bacillus subtilis)およびジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis)で記載されている。
【0152】
さらに好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルブチリル−CoAへの変換が、クロトニル−CoAレダクターゼ(EC1.3.1.86)を使用することによって達成される。クロトニル−CoAレダクターゼは以下の反応を触媒する酵素である:
【0153】
【化33】
この酵素は真核生物および原核生物、例えば動物、真菌および細菌を含む種々の生物で生じる。酵素は、例えばウシ(Bos taurus)、サリノスポラ・トロピカ(Salinospora tropica)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、ストレプトマイセス・コリヌス(Streptomyces collinus)、ストレプトマイセス・シンナモネンシス(Streptomyces cinnamonensis)およびストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)で記載されている。
【0154】
第2の酵素的変換、すなわち3−メチルブチリル−CoAの3−メチル酪酸への変換は、様々な酵素的変換によって達成することができる。1つの可能性は、加水分解反応を介した直接変換である。別の可能性はCoA−トランスフェラーゼによって触媒される反応を介した直接変換であり、第3の可能性は3−メチルブチリルリン酸エステルを介した二段階変換である。
よって、本発明によると、3−メチルブチリル−CoAの3−メチル酪酸への酵素的変換は、
(a)好ましくはCoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)、好ましくはプロピオン酸:酢酸−CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.1)、酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.8)またはスクシニル−CoA:酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.18)を使用することによって、3−メチルブチリル−CoAを3−メチル酪酸に直接変換する単一酵素反応;
(b)好ましくはチオエステルヒドロラーゼ(EC3.1.2.−)、好ましくはアセチル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.1)、ADP依存性短鎖アシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.18)またはアシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.20)を使用することによって、3−メチルブチリル−CoAを3−メチル酪酸に直接変換する単一酵素反応;または
(c)(i)最初に3−メチルブチリル−CoAを3−メチルブチリルリン酸エステルに酵素的に変換するステップと;
(ii)次いでこうして得られた3−メチルブチリルリン酸エステルを前記3−メチル酪酸に酵素的に変換するステップと
を含む2つの酵素ステップ
によって達成され得る。
【0155】
CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)、プロピオン酸:酢酸−CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.1)、酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.8)またはスクシニル−CoA:酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.18)、チオエステルヒドロラーゼ(EC3.1.2.−)、アセチル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.1)、ADP依存性短鎖アシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.18)、アシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.20)、3−メチルブチリル−CoAを3−メチルブチリルリン酸エステルに変換することができる酵素および3−メチルブチリルリン酸エステルを前記3−メチル酪酸に変換することができる酵素についての好ましい実施形態に関して、本発明によるステップVIa、ステップVIbおよびステップVIcの酵素的変換に関して上記と同じものを適用する。
【0156】
第3の酵素的変換、すなわち3−メチル酪酸の3−メチルクロトン酸への変換は、例えば2−エン酸レダクターゼ(EC1.3.1.31)によって達成することができる。2−エン酸レダクターゼは自然に以下の反応を触媒する酵素である:
【0157】
【化34】

この酵素は真核生物および原核生物、例えば動物、真菌および細菌を含む種々の生物で生じる。酵素は、例えばチコリー(Cichorium intybus)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)、トマト(Solanum lycopersicum)、アブシディア・グラウカ(Absidia glauca)、クルイベロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、ペニシリウム・シトリヌム(Penicillium citrinum)、ロドスポリデウム属(Rhodosporidium)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、クロストリジウム・クライベリ(Clostridium kluyveri)、クロストリジウム・ビファーメンタンス(Clostridium bifermentans)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、クロストリジウム・ゴニー(Clostridium ghonii)、クロストリジウム・マンゲノティ(Clostridium mangenotii)、クロストリジウム・オセアニクム(Clostridium oceanicum)、クロストリジウム・ソルデリ(Clostridium sordellii)、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)、クロストリジウム・スティックランディ(Clostridium sticklandii)、クロストリジウム・チロブチリカム(Clostridium tyrobutyricum)、アクロモバクター属(Achromobacter)種、バークホルデリア属(Burkholderia)種、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、カゼイ菌(Lactobacillus casei)、プチダ菌(Pseudomonas putida)、シュワネラ属(Shewanella)種、エルシニア・ベルコビエリ(Yersinia bercovieri)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)およびペプトストレプトコッカス・アネロビウス(Peptostreptococcus anaerobius)で記載されている。クロストリジウム(Clostridiae)のエン酸レダクターゼは、例えばTischler et al. (Eur. J. Bioche. 97 (1979), 103-112)に記載されている。
【0158】
3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチルクロトニル−CoAへの酵素的変換:図1に示されるステップVII
上記の方法のいずれかにより、本発明の方法により3−メチルクロトン酸に変換される(さらに上記の方法のいずれかにより、本発明の方法によりイソブテンにさらに変換される)3−メチルクロトニル−CoA自体は、酵素反応、すなわち3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチルクロトニル−CoAへの酵素的変換によって提供され得る。3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチルクロトニル−CoAへの変換を
図12に模式的に示す。
【0159】
したがって、本発明は、3−メチルグルタコニル−CoAからイソブテンを製造する方法であって、最初に3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに変換し、次いで、これを3−メチルクロトン酸にさらに変換し、次いで、これを本明細書上記で記載されるようにイソブテンにさらに変換する方法に関する。
【0160】
3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチルクロトニル−CoAへの変換は、様々な酵素によって触媒され得る。本発明によると、3−メチルグルタコニル−CoAの前記3−メチルクロトニル−CoAへの変換は、好ましくは(i)メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4);または(ii)ゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5)を使用する(
図1のステップVIIに示されるように)。
【0161】
メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4)およびゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5)ならびにこれらの酵素クラスの好ましい酵素は既に上記されている。したがって、これらの酵素に関して、上記と同じものを3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチルクロトニル−CoAへの変換に適用する。
【0162】
別の好ましい実施形態では、脱炭酸を介した3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチルクロトニル−CoAへの変換が、3−メチルグルタコニル−CoAデカルボキシラーゼ、例えばliuB遺伝子によってコードされるミキソコッカス・キサンタス(Myxococcus xanthus)の3−メチルグルタコニル−CoAデカルボキシラーゼによって触媒される。この遺伝子は2つのサブユニットAibAおよびAibBを有する酵素をコードする(Li et al., Angew. Chem. Int. Ed. 52 (2013), 1304-1308)。
この酵素は、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの変換の文脈でミキソコッカス・キサンタス(Myxococcus xanthus)から得られるメチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼとして既に上記されている。
2つのサブユニットAibAおよびAibBを有するliuB遺伝子によってコードされるミキソコッカス・キサンタス(Myxococcus xanthus)から得られる同じ酵素(Li et al., Angew. Chem. Int. Ed. 52 (2013), 1304-1308)は、配列番号100および101を参照して上記されており、脱炭酸を介した3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチルクロトニル−CoAへの変換にも使用することができる。
本発明の好ましい実施形態では、3−メチルグルタコニル−CoAデカルボキシラーゼが、配列番号100のアミノ酸配列または配列番号100と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。本発明の別の好ましい実施形態では、3−メチルグルタコニル−CoAデカルボキシラーゼが、配列番号101のアミノ酸配列または配列番号101と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
本発明の別の好ましい実施形態では、3−メチルグルタコニル−CoAデカルボキシラーゼが、配列番号100および101のアミノ酸配列の組み合わせまたは配列番号100および101と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに変換する酵素活性を有するヘテロ二量体酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0163】
3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAの3−メチルグルタコニル−CoAへの酵素的変換:図1に示されるステップVIII
3−メチルクロトニル−CoAに変換される3−メチルグルタコニル−CoA自体は、酵素反応、すなわち3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAの3−メチルグルタコニル−CoAへの酵素的変換によって提供され得る;
図13を参照されたい。
【0164】
したがって、本発明はまた、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAからイソブテンを製造する方法であって、最初に3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに変換し、次いで、これを3−メチルクロトニル−CoAに変換し、次いで、これを3−メチルクロトン酸にさらに変換し、次いで、これを本明細書上記で記載されるようにイソブテンにさらに変換する方法に関する。
【0165】
本発明によると、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAの3−メチルグルタコニル−CoAへの酵素的変換は、自然に起こり、例えば、3−メチルグルタコニル−補酵素Aヒドラターゼ(EC4.2.1.18)として分類される酵素によって触媒される酵素脱水反応である。したがって、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAの3−メチルグルタコニル−CoAへの酵素的変換は、好ましくは3−メチルグルタコニル−補酵素Aヒドラターゼ(EC4.2.1.18)を使用する(
図1のステップVIIIに示されるように)。
3−メチルグルタコニル−補酵素Aヒドラターゼは以下の反応を触媒する酵素である:
【0166】
【化35】
この酵素は真核生物および原核生物、例えば植物、動物および細菌を含む種々の生物で生じる。酵素は、例えばニチニチソウ(Catharanthus roseus)、ヒト(Homo sapiens)、ウシ(Bos taurus)、ヒツジ(Ovis aries)、アシネトバクター属(Acinetobacter)種、ミキソコッカス属(Myxococcus)種およびプチダ菌(Pseudomonas putida)で記載されている。好ましい実施形態では、3−メチルグルタコニル−補酵素Aヒドラターゼが、ミキソコッカス属(Myxococcus)種の酵素であり、さらにより好ましくは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を有するまたは配列番号35と少なくともx%相同であり、3−メチルグルタコニル−補酵素Aヒドラターゼの活性を有するアミノ酸配列を示し(xは30〜100の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)、本明細書上記で示されるように3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに変換することができる酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0167】
3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAの3−メチルグルタコニル−CoAへの変換はまた、例えばミキソコッカス・キサンタス(Myxococcus xanthus)で同定されており、liuC遺伝子によってコードされる3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素Aデヒドラターゼ活性を使用することによって達成することもできる(Li et al., Angew. Chem. Int. Ed. 52 (2013), 1304-1308)。ミキソコッカス・キサンタス(Myxococcus xanthus)から得られる3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素AデヒドラターゼはUniprot受託番号Q1D5Y4を有する。
よって、好ましい実施形態では、本発明の方法に使用される3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素Aデヒドラターゼが、ミキソコッカス・キサンタス(Myxococcus xanthus)から得られる酵素(Uniprot受託番号1D5Y4;配列番号98)である。
本発明の好ましい実施形態では、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素Aデヒドラターゼが、配列番号98のアミノ酸配列または配列番号98と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0168】
3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAの3−メチルグルタコニル−CoAへの酵素的変換はまた、3−ヒドロキシアシル−CoAデヒトラターゼまたはエノイル−CoAヒドラターゼを使用することによって達成することもできる。3−ヒドロキシアシル−CoAデヒトラターゼおよびエノイル−CoAヒドラターゼは同じ反応を触媒するが、これらの酵素の一方の名称は対応する反応の一方向を示し、他方の名称は逆反応を示す。反応が可逆的であるので、両方の酵素の名称を使用することができる。
3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドラターゼおよびエノイル−CoAヒドラターゼはEC4.2.1.−として分類される酵素に属する。
3−ヒドロキシアシル−CoAデヒトラターゼおよびエノイル−CoAヒドラターゼは、例えばシュードモナス属(Pseudomonas)種、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumanii)(Uniprot受託番号A0A0D5YDD4)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(Uniprot受託番号Q9HZV7)、マリノバクター・サントリニエンシス(Marinobacter santoriniensis)(Uniprot受託番号M7CV63)、シュードモナス・ナックムッシイ(Pseudomonas knackmussii)、シュードモナス・シュードアルカリゲネス(Pseudomonas pseudoalcaligenes)(Uniprot受託番号L8MQT6)、シュードモナス・フレキシビリス(Pseudomonas flexibilis)およびアルカニボラックス・ディセロレイ(Alcanivorax dieselolei)ならびにトウモロコシ黒穂病菌(Ustilago maydis)(Uniprot受託番号Q4PEN0)、バチルス属(Bacillus)種GeD10(Uniprot受託番号N1LWG2)およびラビリスリックス・ルテオラ(Labilithrix luteola)(Uniprot受託番号A0A0K1PN19)で同定されている。
【0169】
好ましい実施形態では、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに変換するために本発明の方法に使用される3−ヒドロキシアシル−CoAデヒトラターゼ/エノイル−CoAヒドラターゼが、シュードモナス属(Pseudomonas)種(配列番号85)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumanii)(Uniprot受託番号A0A0D5YDD4;配列番号86)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(Uniprot受託番号Q9HZV7;配列番号87)、マリノバクター・サントリニエンシス(Marinobacter santoriniensis)(Uniprot受託番号Q9HZV7;配列番号88)、シュードモナス・ナックムッシイ(Pseudomonas knackmussii)(配列番号89)、シュードモナス・シュードアルカリゲネス(Pseudomonas pseudoalcaligenes)(Uniprot受託番号L8MQT6;配列番号90)、シュードモナス・フレキシビリス(Pseudomonas flexibilis)(配列番号91)、アルカニボラックス・ディセロレイ(Alcanivorax dieselolei)(配列番号92)、トウモロコシ黒穂病菌(Ustilago maydis)(Uniprot受託番号Q4PEN0;配列番号95)、バチルス属(Bacillus)種GeD10(Uniprot受託番号N1LWG2;配列番号96)またはラビリスリックス・ルテオラ(Labilithrix luteola)(Uniprot受託番号A0A0K1PN19;配列番号97)から得られる酵素である。
本発明の好ましい実施形態では、3−ヒドロキシアシル−CoAデヒトラターゼ/エノイル−CoAヒドラターゼが、配列番号85〜92および配列番号95〜97からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号85〜92および配列番号95〜97のいずれかと少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0170】
アセトアセチル−CoAの3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAへの酵素的変換:図1に示されるステップIX
3−メチルグルタコニル−CoAに変換される3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA自体は、酵素的変換、すなわちアセトアセチル−CoAとアセチル−CoAの3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAへの酵素的縮合によって提供され得る;
図14を参照されたい。
【0171】
したがって、本発明はまた、アセトアセチル−CoAおよびアセチル−CoAからイソブテンを製造する方法であって、最初にアセトアセチル−CoAとアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに縮合し、次いで、これを3−メチルグルタコニル−CoAに変換し、次いで、これを3−メチルクロトニル−CoAに変換し、次いで、これを3−メチルクロトン酸にさらに変換し、次いで、これを本明細書上記で記載されるようにイソブテンにさらに変換する方法に関する。
本発明によると、アセトアセチル−CoAとアセチル−CoAの3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAへの酵素的縮合は、好ましくは3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAシンターゼを使用する(
図1のステップIX参照)。
【0172】
アセチル−CoAとアセトアセチル−CoAの縮合は、酵素3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAシンターゼ(HMG−CoAシンターゼとも呼ばれる)によって自然に触媒される反応である。よって、好ましくは、アセチル−CoAとアセトアセチル−CoAの3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAへの縮合は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAシンターゼ(HMG−CoAシンターゼとも呼ばれる)を使用する。HMG−CoAシンターゼはEC2.3.3.10に分類される(以前は、HMG−CoAシンターゼはEC4.1.3.5として分類されていたが、EC2.3.3.10に移された)。「HMG−CoAシンターゼ」という用語は、アセチル−CoAがアセトアセチル−CoAと縮合して3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)を形成する反応を触媒することができる任意の酵素を指す(
図14参照)。HMG−CoAシンターゼはメバロン酸経路の一部である。イソペンテニルピロリン酸(IPP)の合成について、2つの経路、すなわちメバロン酸経路とグリセルアルデヒド3−リン酸−ピルビン酸経路が同定されている。HMG−CoAシンターゼは、アセチル−CoAとアセトアセチル−CoAの生物学的クライゼン縮合を触媒し、β−ケトチオラーゼ、脂肪酸シンターゼ(β−ケトアシルキャリアタンパク質シンターゼ)およびポリケチドシンターゼを含むアシル縮合酵素のスーパーファミリーのメンバーである。
HMG−CoAシンターゼは種々の生物について記載されている。多数の供給源からのHMG−CoAシンターゼをコードするアミノ酸および核酸配列も入手可能である。一般的に、これらの配列は低い程度の全体配列同一性を共有するにすぎない。例えば、ブドウ球菌属(Staphylococcus)または連鎖球菌属(Streptococcus)の酵素はヒトおよびトリのHMG−CoAシンターゼとわずか約20%の同一性しか示さない。いくつかの情報源では、細菌HMG−CoAシンターゼおよびその動物の対応物がわずか約10%の全体配列同一性しか示さないことが報告されている(Sutherlin et al., J. Bacteriol. 184 (2002), 4065-4070)。しかしながら、アセチル化および縮合反応に関与するアミノ酸残基は細菌および真核生物HMG−CoAシンターゼ間で保存されている(Campobasso et al., J. Biol. Chem. 279 (2004), 44883-44888)。3つのHMG−シンターゼ酵素の三次元構造が決定され、酵素反応にとって重大なアミノ酸が原則としてよく特徴付けられている(Campobasso et al., loc. cit.; Chun et al., J. Biol.Chem. 275 (2000), 17946-17953; Nagegowda et al., Biochem. J. 383 (2004), 517-527; Hegardt, Biochem. J. 338 (1999), 569-582)。真核生物では、HMG−CoAシンターゼの2つの形態、すなわち、サイトゾル型とミトコンドリア型が存在する。サイトゾル型は、コレステロールおよび他のイソプレノイドの産生において重要な役割を果たし、ミトコンドリア型はケトン体の産生に関与する。
原則として、特に原核生物または真核生物の、任意のHMG−CoAシンターゼ酵素を本発明の文脈で使用することができる。
原核生物HMG−CoAシンターゼは、例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(Campobasso et al., loc. cit.;Uniprot受託番号Q9FD87)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)(Uniprot受託番号Q9FD76)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)(Uniprot受託番号Q9FD82)、フェカリス菌(Enterococcus faecalis)(Sutherlin et al., loc. cit.;Unirprot受託番号Q9FD71;配列番号99)、フェシウム菌(Enterococcus faecium)(Uniprot受託番号Q9FD66)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)(Uniprot受託番号Q9FD56)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(Uniprot受託番号Q9FD61)およびメタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)(受託番号AE000857)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)(NCBI受託番号BB0683)で記載されている。さらなるHMG−CoAシンターゼは、例えば国際公開第2011/032934号パンフレットに記載されている。好ましいHMG−CoAシンターゼは分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)(Uniprot P54874)の酵素である。特に好ましい実施形態では、本発明の方法に使用されるHMG−CoAシンターゼが、配列番号36もしくは配列番号99に示されるアミノ酸配列を有する、または配列番号36もしくは配列番号99と少なくともx%相同であり、HMG−CoAシンターゼの活性を有するアミノ酸配列を示し(xは30〜100の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)、このような酵素がアセチル−CoAとアセトアセチル−CoAの3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAへの縮合を触媒することができる。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0173】
アセチル−CoAのアセトアセチル−CoAへの酵素的変換:図1に示されるステップXIII、XIVおよびXV
3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに変換される、またはアセト酢酸に変換されるアセトアセチル−CoA自体は、酵素反応、すなわちアセチル−CoAのアセトアセチル−CoAへの酵素的変換によって提供され得る。
本発明によると、アセチル−CoAの前記アセトアセチル−CoAへの変換は様々な経路によって達成することができる。1つの可能性は、最初にアセチル−CoAをマロニル−CoAに変換し(
図1に示されるステップXIV)、次いで、前記マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAにさらに縮合する(
図1に示されるステップXV)ことである。別の可能性は、単一酵素反応で2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する(
図1に示されるステップXIII)ことである。これらの反応をそれぞれ
図15(ステップXIII)、
図16(ステップXIV)および
図17(ステップXV)に模式的に示す。
【0174】
よって、本発明はまた、アセチル−CoAからイソブテンを製造する方法であって、最初にアセチル−CoAを上記の経路のいずれかによってアセトアセチル−CoAに変換し、次いで、これをアセチル−CoAと縮合して3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAにし、次いで、これを3−メチルグルタコニル−CoAに変換し、次いで、これを3−メチルクロトニル−CoAに変換し、次いで、これをメチルクロトン酸にさらに変換し、次いで、これを本明細書上記で記載されるようにイソブテンにさらに変換する方法に関する。
さらに、本発明はまた、アセチル−CoAからイソブテンを製造する方法であって、最初にアセチル−CoAを上記の経路のいずれかによってアセトアセチル−CoAに変換し、次いで、これをアセト酢酸に変換し、次いで、これをアセトンに変換し、次いで、これをアセチル−CoAと縮合して3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)にし、次いで、これを本明細書上記で記載されるように3−メチルクロトン酸に変換する方法に関する。さらに、次いで、前記3−メチルクロトン酸を本明細書上記で記載されるようにイソブテンに変換する。
【0175】
本発明によると、アセチル−CoAのマロニル−CoAへの酵素的変換は、好ましくはアセチル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.2)を使用する(
図1に示されるステップXIV)。この自然に起こる反応は、ATPを利用してCO
2をアセチル−CoA上に固定して、マロニル−CoAをもたらす。アセチル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.2)として分類される酵素は以下の反応を触媒する:
アセチル−CoA+ATP+CO
2→マロニル−CoA+ADP
【0176】
さらに、本発明によると、マロニル−CoAとアセチル−CoAの前記アセトアセチル−CoAへの酵素的変換は、好ましくはアセトアセチル−CoAシンターゼ(EC2.3.1.194)を使用する(
図1に示されるステップXV)。これは自然に起こる反応であり、マロニル−CoAとアセチル−CoAを脱炭酸反応で縮合する。アセトアセチル−CoAシンターゼ(EC2.3.1.194)として分類される酵素は、以下の反応によりアセチル−CoAとマロニル−CoAのアセトアセチル−CoAへの酵素的変換を触媒する。
アセチル−CoA+マロニル−CoA→アセトアセチル−CoA+CoA+CO
2
この反応は、アセトアセチル−CoAシンターゼ(EC2.3.1.194)と呼ばれる酵素によって触媒される。この酵素をコードする遺伝子は、土壌単離グラム陽性ストレプトマイセス属(Streptomyces)種菌株CL190でテルペノイド産生のためのメバロン酸経路遺伝子クラスターで同定された(Okamura et al., PNAS USA 107 (2010), 11265-11270, 2010)。さらに、アセトアセチル−CoA産生のためのこの酵素を使用する生合成経路が近年大腸菌(E. coli)で開発された(Matsumoto K et al., Biosci. Biotechnol. Biochem, 75 (2011), 364-366)。
【0177】
あるいは、アセチル−CoAの前記アセトアセチル−CoAへの酵素的変換は、2分子のアセチル−CoAのアセトアセチル−CoAへの酵素的縮合によって、アセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接変換する単一酵素反応からなる。好ましくは、アセチル−CoAのアセトアセチル−CoAへの酵素的変換は、アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.9)を使用することによって達成される。
よって、アセトアセチル−CoAを、例えば国際公開第2013/057194号パンフレットに記載されるようにアセチル−CoAから製造することができる。そのため、本発明によると、アセチル−CoAを、例えば以下の反応によってアセトアセチル−CoAに変換することができる:
【0178】
【化36】
この反応は、自然に起こる反応であり、EC2.3.1.9として分類されるアセチル−CoA C−アセチルトランスフェラーゼと呼ばれる酵素によって触媒される。このクラスに属し、2分子のアセチル−CoAのアセトアセチル−CoAおよびCoAへの上記の変換を触媒する酵素は、全ての界の生物、すなわち植物、動物、真菌、細菌等で生じ、文献に広く記載されている。このような酵素についてのヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列は、種々の生物、例えばヒト(Homo sapiens)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、大腸菌(E. coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)およびカンジダ(Candida)について決定されており、名称は単なる例示である。原則として、任意のアセチル−CoA C−アセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.9)を本発明の文脈で使用することができる。1つの好ましい実施形態では、酵素がクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)(Uniprot P45359)のアセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼである。特に好ましい実施形態では、本発明の方法に使用されるアセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼが、配列番号37に示されるアミノ酸配列を有する、または配列番号37と少なくともx%相同であり、アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼの活性を有するアミノ酸配列を示し(xは30〜100の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)、このような酵素が本明細書上記で示されるようにアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに変換することができる。
配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0179】
本発明の経路で生じる代謝産物の酵素再利用:図1に示されるステップXa、Xb、XIおよびXII
アセチル−CoAからイソブテンを製造するための本発明の上記の方法は、
図18のステップXa、ステップXb、ステップXIおよびステップXIIに示される以下の反応の1つまたは複数を補うことができる。
これらのステップは、イソブテンを製造するための上記の方法のいずれかと同時に起こり得る代替生物変換に関する。
よって、本発明は、3−メチルクロトン酸(またはアセチル−CoAからイソブテンへの記載される経路中の上記の中間体のいずれか)からイソブテンを製造するための上記の方法のいずれかであって、さらに
a)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換し、同時に3−メチルクロトニル−CoAから3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)にCoAを転移して、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを得る(
図19に模式的に示されるステップXa);および/または
b)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに酵素的に変換する(
図20に模式的に示されるステップXb);および/または
c)3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図21に模式的に示されるステップXI);および/または
d)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに酵素的に変換する(
図22に模式的に示されるステップXII)
方法に関する。
【0180】
以下でさらに詳細に記載され、イソブテンを製造するための上記の方法のいずれかと同時に起こり得るこれらの反応は、いくつかの理由で有益である。第1に、エノイル−CoA(例えば、3−メチルクロトニル−CoAなど)の水和が水性媒体中のインビボでの好ましい反応であることが知られている。したがって、上記の反応は、経路「漏出」の場合でさえ、イソブテンの前駆体、すなわち3−メチルクロトン酸に向かう代謝流量を3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)および/または3−ヒドロキシイソバレリル−CoAの方向で駆動することを許す可能性を表す。第2に、上記変換は、有益なことに、チオエステル基の移動を介したチオエステルCoA結合中のエネルギーの保存を伴う。
【0181】
図18のステップXaに示されるように、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−メチルクロトン酸への酵素的変換と、同時に3−メチルクロトニル−CoAから3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)へのCoAの移動により3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを得ること
よって、第1の態様では、イソブテンに変換される3−メチルクロトン酸が、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換し、同時に3−メチルクロトニル−CoAから3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)にCoAを転移して、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを得る酵素反応によって提供され得る(
図18に示されるステップXa)。この反応を
図19に模式的に示す。
【0182】
よって、本発明はまた、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)からイソブテンを製造する方法であって、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換し、同時に3−メチルクロトニル−CoAから3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)にCoAを転移して、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを得る方法に関する。さらに、次いで、こうして製造された3−メチルクロトン酸を本明細書上記で記載されるようにイソブテンに酵素的に変換する。
【0183】
さらに、本発明はまた、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)および3−メチルクロトニル−CoAから3−メチルクロトン酸および3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを製造する方法であって、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換し、同時に3−メチルクロトニル−CoAから3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)にCoAを転移して、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを得る方法に関する。
【0184】
本発明によると、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換し、同時に3−メチルクロトニル−CoAから3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)にCoAを転移して、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを得る、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)および3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸および3−ヒドロキシイソバレリル−CoAへの変換は、好ましくは3−メチルクロトニル−CoAのCoA基をカルボン酸、すなわち3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)に転移することができるCoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)として分類される酵素を使用する。
CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)ならびにこの酵素クラスの好ましい酵素は既に上記されている。したがって、これらの酵素に関して、上記と同じものを、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)および3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸および3−ヒドロキシイソバレリル−CoAへの変換に適用する。
好ましくは、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−メチルクロトン酸への酵素的変換と、同時に3−メチルクロトニル−CoAから3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)へのCoAの移動によって、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを得ることにおいて本発明による方法に使用されるCoA−トランスフェラーゼは、
− プロピオン酸:酢酸−CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.1);
− 酢酸CoA−トランスフェターゼ(EC2.8.3.8);および
− 酪酸−アセト酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.9)
からなる群から選択されるCoA−トランスフェラーゼである。
プロピオン酸:酢酸−CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.1)、酢酸CoA−トランスフェターゼ(EC2.8.3.8)および酪酸−アセト酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.9)ならびにこれらの酵素クラスの好ましい酵素は既に上記されている。したがって、これらの酵素に関して、上記と同じものを、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)および3−メチルクロトニル−CoAの3−メチルクロトン酸および3−ヒドロキシイソバレリル−CoAへの変換に適用する。
【0185】
図18のステップXbに示される3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−ヒドロキシイソバレリル−CoAへの酵素的変換
上記の方法(ステップXa)に加えてまたはその代わりに、3−ヒドロキシイソ吉草酸の前記3−ヒドロキシイソバレリル−CoAへの酵素的変換によって、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを提供することもできる(
図18に示されるステップXb)。この反応では、3−ヒドロキシイソ吉草酸がアシル−CoAと反応して3−ヒドロキシイソバレリル−CoAおよび酸をもたらす。この反応を
図19に模式的に示す。
好ましくは、前記アシル−CoAはアセチル−CoAである。
【0186】
よって、本発明はまた、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)から3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを製造する方法であって、3−ヒドロキシイソ吉草酸がアシル−CoA、好ましくはアセチル−CoAと反応して3−ヒドロキシイソバレリル−CoAおよびそれぞれの酸をもたらす方法に関する。
【0187】
好ましくは、この変換は、CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)として分類される酵素を使用することによって達成される。ステップXbの文脈における前記CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)の好ましい実施形態に関して、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−メチルクロトン酸への酵素的変換と、同時に3−メチルクロトニル−CoAから3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)へのCoAの移動によって3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを得る(
図18に示されるステップXa)ことにおいてCoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)に関して上記と同じものを必要な変更を加えて適用する。
【0188】
図18のステップXIに示される3−ヒドロキシイソバレリル−CoAの3−メチルクロトニル−CoAへの酵素的変換
上記の方法(ステップVII)に加えてまたはその代わりに、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図18に示されるステップXI)酵素反応によって、3−メチルクロトニル−CoAを提供することができる。この可逆的反応は、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに脱水する脱水反応であり、これを
図21に模式的に示す。
よって、本発明はまた、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAからイソブテンを製造する方法であって、最初に3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換し、3−メチルクロトニル−CoAを上記の方法のいずれかにより3−メチルクロトン酸にさらに酵素的に変換する方法に関する。さらに、次いで、こうして製造された3−メチルクロトン酸を本明細書上記で記載されるようにイソブテンに酵素的に変換する。
【0189】
本発明によると、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAの3−メチルクロトニル−CoAへの酵素的変換は、好ましくは
(i)エノイル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.17);
(ii)長鎖エノイル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.74);
(iii)3−ヒドロキシプロピオニル−CoAデヒドラターゼ(EC4.2.1.116);
(iv)3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒトラターゼ(EC4.2.1.55);
(v)3−ヒドロキシオクタノイル−[アシルキャリアタンパク質]デヒドラターゼ(EC4.2.1.59);
(vi)クロトニル−[アシルキャリアタンパク質]ヒドラターゼ(EC4.2.1.58);
(vii)3−ヒドロキシデカノイル−[アシルキャリアタンパク質]デヒドラターゼ(EC4.2.1.60);
(viii)3−ヒドロキシパルミトイル−[アシルキャリアタンパク質]デヒドラターゼ(EC4.2.1.61);または
(ix)3−メチルグルタコニル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.18)
を使用する。
【0190】
本発明による方法の好ましい実施形態では、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAの3−メチルクロトニル−CoAへの変換が、エノイル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.17)を使用することによって達成される。エノイル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.17)ならびにこの酵素クラスの好ましい酵素は既に上記されている。したがって、これらの酵素に関して、上記と同じものを3−ヒドロキシイソバレリル−CoAの3−メチルクロトニル−CoAへの変換に適用する。
【0191】
本発明による方法の別の好ましい実施形態では、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAの3−メチルクロトニル−CoAへの変換が、長鎖エノイル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.74)を使用することによって達成される。長鎖エノイル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.74)は以下の反応を触媒する:
【0192】
【化37】
この酵素は、リアーゼ、具体的には炭素−酸素結合を切断するヒドロリアーゼのファミリーに属する。この酵素クラスの系統名は長鎖−(3S)−3−ヒドロキシアシル−CoAヒドロリアーゼである。この酵素は長鎖エノイル補酵素Aヒドラターゼとも呼ばれ、ミトコンドリアにおける脂肪酸伸長および脂肪酸代謝に関与する。この酵素はいくつかの生物、例えばドブネズミ(Rattus norvegicus)(Wu et al., Org. Lett. 10 (2008), 2235-2238)、イノシシ(Sus scrofa)およびモルモット(Cavia porcellus)(Fong and Schulz, J. Biol. Chem. 252 (1977), 542-547; Schulz, Biol. Chem. 249 (1974), 2704-2709)で生じ、原則として、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAの3−メチルクロトニル−CoAへの変換を触媒することができる任意の長鎖エノイル−CoAヒドラターゼを本発明の方法に使用することができる。
【0193】
図18のステップXIIに示される3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−ヒドロキシイソバレリル−CoAへの酵素的変換
上記の方法(ステップXaまたはステップXb)に加えてまたはその代わりに、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の前記3−ヒドロキシイソバレリル−CoAへの酵素的変換(
図18に示されるステップXII)によって、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを提供することもできる。補酵素A(CoASH)が固定されるこの一般的な反応を
図22に模式的に示す。
【0194】
よって、本発明はまた、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)からイソブテンを製造する方法であって、最初に3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに変換し、次いで、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換し、3−メチルクロトニル−CoAを上記の方法のいずれかにより3−メチルクロトン酸にさらに酵素的に変換する方法に関する。さらに、次いで、こうして製造された3−メチルクロトン酸を本明細書上記で記載されるようにイソブテンに酵素的に変換する。
【0195】
さらに、本発明はまた、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)から3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを製造する方法に関する。
【0196】
本発明によると、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−ヒドロキシイソバレリル−CoAへの酵素的変換は、好ましくは炭素−硫黄結合を形成するリガーゼ(EC6.2.1.−)のファミリーに属する酵素を使用する。補酵素A(CoASH)が固定される3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−ヒドロキシイソバレリル−CoAへの酵素的変換の一般的な反応は、2つの代替機構を介して、炭素−硫黄結合を形成するリガーゼ(EC6.2.1.−)のファミリーに属する酵素によって触媒され得る。第1の代替反応では、
図23に模式的に示されるように、補酵素Aが固定される前に、アシル−AMPが中間体として産生される。第2の代替反応では、
図24に模式的に示されるように、補酵素Aが固定される前に、アシルリン酸が中間体として産生される。
【0197】
補酵素Aが固定された補酵素A(CoASH)となる前に、アシル−AMP中間体(すなわち、アシルアデニル酸中間体3−ヒドロキシイソバレリル−アデノシン一リン酸)が産生され、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに酵素的に変換することができる、炭素−硫黄結合を形成するリガーゼ(EC6.2.1.−)のファミリーに属する酵素は、InterPro(InterPro44.0;リリース2013年9月25日)において、InterPro IPR020845、AMPが結合する、保存された部位 (http://www.ebi.ac.uk/interpro/entry/IPR020845)およびIPR000873(http://www.ebi.ac.uk/interpro/entry/IPR000873)として言及される共通の構造モチーフを共有する。Pfamデータベースにおけるこれらの酵素の受託番号はPF00501である。
【0198】
第1の代替反応(
図23に模式的に示されるように補酵素Aが固定される前にアシル−AMPが中間体として産生される)に関して、補酵素Aが固定された補酵素A(CoASH)となる前に、アシル−AMP中間体(すなわち、アシルアデニル酸中間体3−ヒドロキシイソバレリル−アデノシン一リン酸)が産生され、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに酵素的に変換することができる、炭素−硫黄結合を形成するリガーゼ(EC6.2.1.−)の上記ファミリーに属し、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)から3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを製造する方法に使用され得る酵素の例を以下の表Aに要約する:
【0199】
【表1】
【0200】
好ましい実施形態では、アシルアデニル酸中間体を介した3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−ヒドロキシイソバレリル−CoAへの酵素的変換を、例えばブタン酸:CoAリガーゼ(AMP形成)(EC6.2.1.2)を使用することによって達成することができる。
ブタン酸:CoAリガーゼは以下の反応を触媒する酵素である:
ATP+カルボン酸+CoA→AMP+二リン酸+アシル−CoA
これらの酵素はブタン酸代謝に関与する。これらの酵素の出現は、原核生物および真核生物、特に細菌、藻類、真菌、植物および動物を含む多数の生物について、例えばメタノバクテリウム・フォルミクム(Methanobacterium formicum)、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、パエシロマイセス・バリオッティ(Paecilomyces variotii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、キイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)、モルモット(Cavia porcellus)、ヒツジ(Ovis aries)、イノシシ(Sus scrofa)、ウシ(Bos taurus)、マウス(Mus musculus)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)およびヒト(Homo sapiens)について記載されている。
【0201】
好ましい実施形態では、アシルアデニル酸中間体を介した3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)の3−ヒドロキシイソバレリル−CoAの酵素的変換が、メタノバクテリウム・フォルミクム(Methanobacterium formicum)から得られるブタン酸:CoAリガーゼ(AMP形成)(EC6.2.1.2)を使用することによって達成される。前記タンパク質のアミノ酸配列を配列番号77に示す。
本発明の好ましい実施形態では、ブタン酸:CoAリガーゼ(AMP形成)が、配列番号77のアミノ酸配列または配列番号77と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0202】
第2の代替反応(
図24に模式的に示されるように補酵素Aが固定される前にアシルリン酸が中間体として産生される)に関して、補酵素Aが固定された補酵素A(CoASH)となる前に、アシルリン酸中間体(すなわち、アシルリン酸中間体3−ヒドロキシイソバレリルリン酸)が産生され、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに酵素的に変換することができる、炭素−硫黄結合を形成するリガーゼ(EC6.2.1.−)の上記ファミリーに属し、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)から3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを製造する方法に使用され得る酵素の例を以下の表Bに要約する:
【0203】
【表2】
【0204】
3−メチル−3−ブテノイル−CoAおよび3−メチル−3−ブテン酸を介したアセチルCoAからイソブテンへの酵素的変換の代替経路
上記の代替として、本発明はまた、同様に
図1に示される代替経路を介したイソブテンを製造する方法であって、3−メチル−3−ブテン酸のイソブテンへの酵素的変換によってイソブテンを製造する方法に関する。よって、本発明は、3−メチル−3−ブテン酸のイソブテンへの酵素的変換を含む、イソブテンを製造する方法を提供する。好ましくは、3−メチル−3−ブテン酸のイソブテンへの酵素的変換が、3−メチル−3−ブテン酸デカルボキシラーゼを使用することによって達成される。
【0205】
この代替経路によると、本発明は、3−メチル−3−ブテン酸からイソブテンを製造する方法のみに関するわけではない。むしろ、以下でさらに詳細に概説されるように、この変換は、好ましくは多くの生化学反応に使用される中心成分および代謝における重要な鍵分子であるアセチル−CoAから始まるイソブテンを製造するための経路に組み込まれている。
【0206】
そのため、本発明はまた、2個のアセチル−CoA分子をアセトアセチル−CoAに酵素的に縮合する、アセチル−CoAから始まる経路に関する。あるいは、アセチル−CoAをマロニル−CoAに酵素的に変換し、次いで、これを、マロニル−CoAとアセチル−CoAの前記アセトアセチル−CoAへの酵素的縮合によって前記アセトアセチル−CoAに変換することができる。
さらに、こうして製造されたアセトアセチル−CoAを、以下の手短に要約される経路を介して、3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換する(次いで、これを最終的に、イソブテンに変換する)ことができる。
この経路では、こうして製造されたアセトアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAにさらに酵素的に変換することができる。さらに、こうして製造された3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAにさらに酵素的に変換することができる。さらに、こうして製造された3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに酵素的に変換することができる。さらに、こうして製造された3−メチル−3−ブテノイル−CoAを、その後の酵素反応で、3−メチル−3−ブテン酸にさらに変換することができる(次いで、最終的にこれを上記および下記のようにイソブテンに変換することができる)。
【0207】
3−メチル−3−ブテン酸のイソブテンへの酵素的変換:図1に示されるステップXVI
本発明によると、3−メチル−3−ブテン酸のイソブテンへの酵素的変換を脱炭酸によって達成することができる。「脱炭酸」は一般的に、カルボキシル基を除去し、二酸化炭素(CO
2)を放出する化学反応である;
図25を参照されたい。
【0208】
3−メチル−3−ブテン酸のイソブテンへの酵素的変換は、好ましくは3−メチル−3
−ブテン酸デカルボキシラーゼを使用することによって達成することができる。本発明に
よると、3−メチル−3−ブテン酸デカルボキシラーゼは、3−メチル−3−ブテン酸を
イソブテンに変換することができる酵素である。
好ましい実施形態では、3−メチル−3−ブテン酸デカルボキシラーゼが、
(i)FMNプレニルトランスフェラーゼと
連合しているFMN依存性デカルボキシラーゼ;
または
(ii)アコニット酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.6);または
(iii)メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4);または
(iv)ゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5);または
(v)プロトカテク酸(PCA)デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.63)
からなる群から選択される。
【0209】
他の好ましい実施形態では、3−メチル−3−ブテン酸デカルボキシラーゼが、6−メチルサリチル酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.52)、2−オキソ−3−ヘキセン二酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.77)および5−オキソペンタ−3−エン−1,2,5−トリカルボン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.68)からなる群から選択される。
【0210】
上記の実施形態に関して、FMNプレニルトランスフェラーゼと
連合しているFMN依存性デカルボキシラーゼ、アコニット酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.6)、メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4)、ゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5)、プロトカテク酸(PCA)デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.63)、6−メチルサリチル酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.52)、2−オキソ−3−ヘキセン二酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.77)および5−オキソペンタ−3−エン−1,2,5−トリカルボン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.68)について、本発明の他の方法に関連して上記と同じものを適用する。
【0211】
3−メチル−3−ブテノイル−CoAの3−メチル−3−ブテン酸への酵素的変換:図1に示されるステップXVIIa、XVIIbまたはXVIIc
3−メチル−3−ブテン酸自体は、酵素反応、すなわち3−メチル−3−ブテノイル−CoAの3−メチル−3−ブテン酸への酵素的変換によって提供され得る;
図26を参照されたい。
【0212】
したがって、本発明は、3−メチル−3−ブテノイル−CoAからイソブテンを製造する方法であって、最初に3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に変換し、次いで、これを本明細書上記で記載されるようにイソブテンにさらに変換する方法に関する。
【0213】
本発明によると、3−メチル−3−ブテノイル−CoAの3−メチル−3−ブテン酸への変換は、例えば3つの異なる代替酵素経路、すなわち:
(a)好ましくはCoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)、好ましくはプロピオン酸:酢酸−CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.1)、酢酸CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.8)またはスクシニル−CoA:酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.18)を使用することによって、3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に直接変換する単一酵素反応(
図27参照);
(b)好ましくはチオエステルヒドロラーゼ(EC3.1.2.−)、好ましくはアセチル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.1)、ADP依存性短鎖アシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.18)またはアシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.20)を使用することによって、3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に直接変換する単一酵素反応(
図28参照);または
(c)(i)最初に好ましくはリン酸ブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)またはリン酸アセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.8)を使用することによって、3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテノイルリン酸エステルに酵素的に変換するステップと;
(ii)次いで好ましくはアクセプターとしてカルボキシ基を有するホスホトランスフェラーゼ(EC2.7.2.−)、好ましくはプロピオン酸キナーゼ(EC2.7.2.15)、酢酸キナーゼ(EC2.7.2.1)、酪酸キナーゼ(EC2.7.2.7)または分岐鎖脂肪酸キナーゼ(EC2.7.2.14)を使用することによって、こうして得られた3−メチル−3−ブテノイルリン酸エステルを前記3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換するステップと
を含む2つの酵素ステップ(
図29参照)
によって達成することができる。
【0214】
上記実施形態に関して、CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)、プロピオン酸:酢酸−CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.1)、酢酸CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.8)、スクシニル−CoA:酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.18)、チオエステルヒドロラーゼ(EC3.1.2.−)、アセチル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.1)、ADP依存性短鎖アシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.18)、アシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.20)、リン酸ブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)、リン酸アセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.8)、アクセプターとしてカルボキシ基を有するホスホトランスフェラーゼ(EC2.7.2.−)、プロピオン酸キナーゼ(EC2.7.2.15)、酢酸キナーゼ(EC2.7.2.1)、酪酸キナーゼ(EC2.7.2.7)および分岐鎖脂肪酸キナーゼ(EC2.7.2.14)について、本発明の他の方法に関連して上記と同じものを適用する。
【0215】
3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチル−3−ブテノイル−CoAへの酵素的変換:図1に示されるステップXVIII
3−メチル−3−ブテノイル−CoA自体は、酵素反応、すなわち3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチル−3−ブテノイル−CoAへの酵素的変換によって提供され得る;
図30を参照されたい。
【0216】
したがって、本発明は、3−メチル−3−ブテノイル−CoAからイソブテンを製造する方法であって、最初に3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに変換し、次いで、これを3−メチル−3−ブテン酸にさらに変換し、次いで、これを本明細書上記で記載されるようにイソブテンにさらに変換する方法に関する。
さらに、本発明は、3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに変換することによって、3−メチル−3−ブテノイル−CoAを製造する方法に関する。
本発明によると、3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチル−3−ブテノイル−CoAへの変換は、好ましくは
(a)(i)メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4);または(ii)ゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5)、
(b)リングビア・マジュスクラ(Lyngbya majuscula)多機能性タンパク質のCurFのN末端ドメインまたは3−メチルグルタコニル−CoAデカルボキシラーゼ、好ましくはliuB遺伝子によってコードされるミキソコッカス・キサンタス(Myxococcus xanthus)の3−メチルグルタコニル−CoAデカルボキシラーゼ;または
(c)4−オキサロクロトン酸デカルボキシラーゼファミリーの酵素
を使用することによって達成することができる。
【0217】
上記の実施形態に関して、メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4)、ゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5)および3−メチルグルタコニル−CoAデカルボキシラーゼ、好ましくはliuB遺伝子によってコードされるミキソコッカス・キサンタス(Myxococcus xanthus)の3−メチルグルタコニル−CoAデカルボキシラーゼについて、本発明の他の方法に関連して上記と同じものを適用する。
【0218】
好ましい実施形態では、脱炭酸を介した3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチル−3−ブテノイル−CoAへの変換が、リングビア・マジュスクラ(Lyngbya majuscula)多機能性タンパク質のCurFのN末端ドメインによって触媒される。リングビア・マジュスクラ(Lyngbya majuscula)多機能性タンパク質のCurFのN末端ドメインは、リングビア・マジュスクラ(Lyngbya majuscula)のCurF多機能性タンパク質のポリケチドシンターゼ(PKS)/非リボソームペプチドシンターゼ(NRPS)のドメインである。CurFのこのN末端ドメインは、結晶構造の研究によりクロトナーゼスーパーファミリーに属するタンパク質として分類されており、これは自然に3−メチルグルタコニル−ACP(アシルキャリアタンパク質)の3−メチル−クロトニル−ACPへの脱炭酸を触媒する。ACPとCoAの両分子は共通のホスホパンテテイン部分を有するので(
図31に示されるように)、ACPはCoAに類似である。さらに、ACPとCoAの両方が生物学的酸とチオエステルを形成することができる(J. Biol. Chem. 289: 35957-35963 (2007) and Chemistry & Biology 11:817-833 (2004))。
【0219】
別の好ましい実施形態では、脱炭酸を介した3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチル−3−ブテノイル−CoAへの変換が、4−オキサロクロトン酸デカルボキシラーゼファミリー(EC4.1.1.77)の酵素によって触媒される。
【0220】
4−オキサロクロトン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.77)は以下の反応を触媒する:
【0221】
【化38】
この酵素は種々の生物から知られており、例えばボルデテラ属(Bordetella)種、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、プチダ菌(Pseudomonas putida)およびラルストニア・ピッケティ(Ralstonia pickettii)で記載されている。よって、好ましい実施形態では、脱炭酸を介した3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチル−3−ブテノイル−CoAへの変換に使用される4−オキサロクロトン酸デカルボキシラーゼが、ボルデテラ属(Bordetella)、カプリアビダス属(Cupriavidus)、ゲオバチルス属(Geobacillu)、シュードモナス属(Pseudomonas)またはラルストニア属(Ralstonia)、より好ましくは種、ボルデテラ属(Bordetella)種、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus nector)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、プチダ菌(Pseudomonas putida)およびラルストニア・ピッケティ(Ralstonia pickettii)から得られる4−オキサロクロトン酸デカルボキシラーゼである。さらにより好ましい実施形態では、脱炭酸を介した3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチル−3−ブテノイル−CoAへの変換に使用される4−オキサロクロトン酸デカルボキシラーゼが、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)(Uniprot受託番号B0VXM8)の4−オキサロクロトン酸デカルボキシラーゼである。
【0222】
好ましい実施形態では、脱炭酸を介した3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチル−3−ブテノイル−CoAへの変換において本発明の方法に使用される4−オキサロクロトン酸デカルボキシラーゼが、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)から得られ、配列番号69に示されるアミノ酸配列を有する。
【0223】
本発明の好ましい実施形態では、4−オキサロクロトン酸デカルボキシラーゼが、配列番号69のアミノ酸配列または配列番号69と少なくともn%同一である配列(nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である)を含み、脱炭酸を介して3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに変換する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じものを適用する。
【0224】
3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAの3−メチルグルタコニル−CoAへの酵素的変換:図1に示されるステップVIII
上記の方法のいずれかにより3−メチル−3−ブテノイル−CoAに変換され得る3−メチルグルタコニル−CoA自体は、酵素反応、すなわち3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAの3−メチルグルタコニル−CoAへの酵素的変換によって提供され得る。
【0225】
したがって、本発明はまた、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAからイソブテンを製造する方法であって、最初に3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに変換し、次いで、これを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに変換し、次いで、これを3−メチル−3−ブテン酸にさらに変換し、次いで、これを本明細書上記で記載されるようにイソブテンにさらに変換する方法に関する。
【0226】
本発明によると、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAの3−メチルグルタコニル−CoAへの酵素的変換は、自然に起こり、例えば3−メチルグルタコニル−補酵素Aヒドラターゼ(EC4.2.1.18)として分類される酵素によって触媒される酵素脱水反応である。したがって、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAの3−メチルグルタコニル−CoAへの酵素的変換は、好ましくは3−メチルグルタコニル−補酵素Aヒドラターゼ(EC4.2.1.18)を使用する。
【0227】
上記の実施形態に関して、3−メチルグルタコニル−補酵素Aヒドラターゼ(EC4.2.1.18)として分類される酵素について、本発明の他の方法に関連して上記と同じものを適用する。
【0228】
アセトアセチル−CoAの3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAへの酵素的変換:図1に示されるステップIX
3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA自体は、酵素反応、すなわち既に上で詳細に記載されているアセトアセチル−CoAとアセチル−CoAの3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAへの酵素的縮合によって提供され得る。
【0229】
したがって、本発明はまた、アセトアセチル−CoAおよびアセチル−CoAからイソブテンを製造する方法であって、最初にアセトアセチル−CoAとアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに縮合し、次いで、これを3−メチルグルタコニル−CoAに変換し、次いで、これを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに変換し、次いで、これを3−メチル−3−ブテン酸にさらに変換し、次いで、これを本明細書上記で記載されるようにイソブテンにさらに変換する方法に関する。
【0230】
アセチル−CoAのアセトアセチル−CoAへの酵素的変換:図1に示されるステップXIII、ステップXIVおよびステップXV
アセトアセチル−CoA自体は、酵素反応、すなわち既に上で詳細に記載されているいくつかの異なる経路を介したアセチル−CoAのアセトアセチル−CoAへの酵素的変換によって提供され得る。
【0231】
よって、本発明はまた、アセチル−CoAからイソブテンを製造する方法であって、最初にアセチル−CoAを上記の経路のいずれかによってアセトアセチル−CoAに変換し、次いで、これをアセチル−CoAと縮合して3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAにし、次いで、これを3−メチルグルタコニル−CoAに変換し、次いで、これを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに変換し、次いで、これを3−メチル−3−ブテン酸にさらに変換し、次いで、これを本明細書上記で記載されるようにイソブテンにさらに変換する方法に関する。
【0232】
上で概説されるように3−メチル−3−ブテノイル−CoAおよび3−メチル−3−ブ
テン酸を介したアセチル−CoAのイソブテンへの酵素的変換のための代替経路を要約す
ると、本発明はまた、以下の項目1〜26によって特徴付けられる以下の実施形態に関す
る:
1.3−メチル−3−ブテン酸のイソブテンへの酵素的変換を含む、イソブテンを製造す
る方法。
2.3−メチル−3−ブテン酸のイソブテンへの酵素的変換が3−メチル−3−ブテン酸
デカルボキシラーゼを使用することによって達成される、項目1に記載の方法。
3.3−メチル−3−ブテン酸デカルボキシラーゼが、
(i)FMNプレニルトランスフェラーゼと
連合しているFMN依存性デカルボキシラーゼ;
または
(ii)アコニット酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.6);または
(iii)メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4);または
(iv)ゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5);または
(v)プロトカテク酸(PCA)デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.63)
である、項目2に記載の方法。
4.3−メチル−3−ブテノイル−CoAの3−メチル−3−ブテン酸への酵素的変換に
よって、3−メチル−3−ブテン酸を提供するステップをさらに含む、項目1または2に
記載の方法。
5.3−メチル−3−ブテノイル−CoAの3−メチル−3−ブテン酸への酵素的変換が
、
(a)CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)、好ましくはプロピオン酸:酢
酸−CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.1)、酢酸CoA−トランスフェラー
ゼ(EC2.8.3.8)またはスクシニル−CoA:酢酸CoA−トランスフェラーゼ
(EC2.8.3.18)を使用することによって、3−メチル−3−ブテノイル−Co
Aを3−メチル−3−ブテン酸に直接変換する単一酵素反応;
(b)チオエステルヒドロラーゼ(EC3.1.2.−)、好ましくはアセチル−CoA
ヒドロラーゼ(EC3.1.2.1)、ADP依存性短鎖アシル−CoAヒドロラーゼ(
EC3.1.2.18)またはアシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.20)を
使用することによって、3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン
酸に直接変換する単一酵素反応;
(c)(i)最初に3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテノイル
リン酸エステルに酵素的に変換するステップと;
(ii)次いでこうして得られた3−メチル−3−ブテノイルリン酸エステルを前記3
−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換するステップと
を含む2つの酵素ステップ
によって達成される、項目4に記載の方法。
6.前記3−メチル−3−ブテノイル−CoAの3−メチル−3−ブテノイルリン酸エス
テルへの酵素的変換がリン酸ブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)また
はリン酸アセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.8)を使用することによって達
成され、前記3−メチル−3−ブテノイルリン酸エステルの前記3−メチル−3−ブテン
酸への酵素的変換がアクセプターとしてカルボキシ基を有するホスホトランスフェラーゼ
(EC2.7.2.−)、好ましくはプロピオン酸キナーゼ(EC2.7.2.15)、
酢酸キナーゼ(EC2.7.2.1)、酪酸キナーゼ(EC2.7.2.7)または分岐
鎖脂肪酸キナーゼ(EC2.7.2.14)を使用することによって達成される、項目5
(c)に記載の方法。
7.3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチル−3−ブテノイル−CoAへの酵素的
変換によって3−メチル−3−ブテノイル−CoAを提供するステップをさらに含む、項
目1から4のいずれか1つに記載の方法。
8.3−メチルグルタコニル−CoAの3−メチル−3−ブテニル−CoAへの酵素的変
換が、
(a)(i)メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4);また
は(ii)ゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5)、
(b)リングビア・マジュスクラ(Lyngbya majuscula)多機能性タンパク質のCurF
のN末端ドメインまたは3−メチルグルタコニル−CoAデカルボキシラーゼ、好ましく
はliuB遺伝子によってコードされるミキソコッカス・キサンタス(Myxococcus xanth
us)の3−メチルグルタコニル−CoAデカルボキシラーゼ;または
(c)4−オキサロクロトン酸デカルボキシラーゼファミリーの酵素
を使用することによって達成される、項目7に記載の方法。
9.3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAの3−メチルグルタコニル−CoA
への酵素的変換によって3−メチルグルタコニル−CoAを提供するステップをさらに含
む、項目1から8のいずれか1つに記載の方法。
10.3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAの3−メチルグルタコニル−Co
Aへの酵素的変換が、3−メチルグルタコニル−補酵素Aヒドラターゼ(EC4.2.1
.18)、3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドラターゼ(EC4.2.1.−)または
エノイル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.−)を使用することによって達成され
る、項目9に記載の方法。
11.アセトアセチル−CoAとアセチル−CoAの3−ヒドロキシ−3−メチルグルタ
リル−CoAへの酵素的縮合によって3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを
提供するステップをさらに含む、項目1から10のいずれか1つに記載の方法。
12.アセトアセチル−CoAとアセチル−CoAの3−ヒドロキシ−3−メチルグルタ
リル−CoAへの酵素的縮合が、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAシンタ
ーゼを使用することによって達成される、項目11に記載の方法。
13.(a)(i)最初にアセチル−CoAをマロニル−CoAに酵素的変換するステッ
プと;
(ii)次いでこうして得られたマロニル−CoAとアセチル−CoAを前記アセトア
セチル−CoAに酵素的に縮合するステップと
を含む2つの酵素ステップ;または
(b)2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する単一酵素反応
を含む、アセチル−CoAのアセトアセチル−CoAへの酵素的変換によって、アセトア
セチル−CoAを提供するステップをさらに含む、項目1から12のいずれか1つに記載
の方法。
14.アセチル−CoAのマロニル−CoAへの酵素的変換が、アセチル−CoAカルボ
キシラーゼ(EC6.4.1.2)を使用することによって達成される、項目13(a)
(i)に記載の方法。
15.マロニル−CoAとアセチル−CoAの前記アセトアセチル−CoAへの酵素的縮
合が、アセトアセチル−CoAシンターゼ(EC2.3.1.194)を使用することに
よって達成される、項目13(a)(ii)に記載の方法。
16.2分子のアセチル−CoAのアセトアセチル−CoAへの直接酵素的縮合が、アセ
チル−CoA C−アセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.9)を使用すること
によって達成される、項目13(b)に記載の方法。
17.(i)項目1から3のいずれか1つで定義される酵素;および
(ii)項目4から6のいずれか1つで定義される酵素
を発現する組換え生物または微生物。
18.項目7または8で定義される酵素をさらに発現する、項目17に記載の組換え生物
または微生物。
19.項目9または10で定義される酵素をさらに発現する、項目18に記載の組換え生
物または微生物。
20.項目11または12で定義される酵素をさらに発現する、項目19に記載の組換え
生物または微生物。
21.請求項13で定義される酵素をさらに発現する、項目20に記載の組換え生物また
は微生物。
22.請求項14から16のいずれか一項で定義される酵素をさらに発現する、項目21
に記載の組換え生物または微生物。
23.イソブテンを製造するための項目17から22のいずれか1つで定義される組換え
生物または微生物の使用。
24.3−メチル−3−ブテン酸のイソブテンへの酵素的変換を触媒する酵素を発現する
、項目23に記載の組換え生物または微生物の使用。
25.3−メチル−3−ブテン酸からイソブテンを製造するための3−メチル−3−ブテ
ン酸のイソブテンへの酵素的変換を触媒する酵素の使用。
26.3−メチル−3−ブテン酸および項目17から22のいずれか1つで定義される組
換え生物もしくは微生物;または3−メチル−3−ブテン酸および項目1から16のいず
れか1つで定義される酵素を含む組成物。
【0233】
本発明による方法は、インビトロまたはインビボで行うことができる。インビトロ反応は、細胞を使用しない反応、すなわち、無細胞反応であると理解される。よって、インビトロは、好ましくは無細胞系を意味する。「インビトロ」という用語は、一実施形態では、単離された酵素(またはおそらく必要な補助因子を場合により含む酵素系)の存在下を意味する。一実施形態では、本方法に使用される酵素が精製された形態で使用される。
【0234】
本方法をインビトロで行うために、反応のための基質と酵素を、酵素が活性になり酵素的変換が起こるのを可能にする条件(緩衝液、温度、補助基質、補助因子等)下でインキュベートする。それぞれの生成物を産生するのに十分な時間、反応を進行させる。それぞれの生成物の産生を、当技術分野で公知の方法、例えばおそらくは質量分析検出と連結したガスクロマトグラフィーによって測定することができる。酵素は、酵素反応が起こるのを可能にする任意の適切な形態であり得る。これらは精製もしくは部分的に精製されていてもよいし、または粗細胞抽出物もしくは部分的に精製された抽出物の形態であってもよい。酵素を適切な担体に固定化することも可能である。
【0235】
別の実施形態では、本発明による方法が、本発明の上記される本発明による方法の変換のための上記の酵素を産生する生物、好ましくは微生物の存在下、培養で行われる。本発明による方法を行うために微生物を使用する方法は、「インビボ」法と呼ばれる。本発明による方法の変換のための上記の酵素を自然に産生する微生物またはこのような酵素の1つもしくは複数を発現する(過剰発現を含む)ように遺伝子組換えされた微生物を使用することが可能である。よって、微生物は、本発明による方法の変換のための上記の酵素を発現する、すなわちそのゲノム中に、このような酵素をコードするヌクレオチド配列を有し、これらの酵素を過剰発現するよう改変された操作された微生物であり得る。発現は構成的に、または誘導もしくは調節様式で起こり得る。
別の実施形態では、微生物が、本発明による方法の変換のための上記の1つまたは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む1個または複数の核酸分子の導入によって遺伝子組換えされた微生物であり得る。核酸分子を微生物のゲノムに安定的に組み込むことができ、またはこれが染色体外様式で、例えばプラスミド上に存在してもよい。
このような遺伝子組換え微生物は、例えば本発明による方法の変換のための上記の酵素を自然には発現せず、このような酵素を発現するよう遺伝子組換えされた微生物、あるいはこのような酵素を自然に発現し、前記微生物中のそれぞれの活性を増加させるために遺伝子組換えされた、例えば核酸、例えばそれぞれの酵素(複数可)をコードするベクターおよび/または酵素をコードする内因性ヌクレオチド配列の前のプロモーターの挿入で形質転換された微生物であり得る。
しかしながら、本発明は、好ましくは上記の酵素をそれらが自然状態で存在するレベルで発現する、自然状態で見られる天然微生物を除外する。その代わり、本発明のおよび本発明の方法に使用される微生物は、それがそのゲノム中に通常は存在しない本発明の外因性酵素を発現する(過剰発現を含む)よう遺伝子組換えされたかどうか、またはそれが外因性酵素を過剰発現するよう操作されたかどうかにかかわらず、好ましくは非天然微生物である。
よって、本発明に関連して使用される酵素および(微)生物は、好ましくは非天然酵素または(微)生物である、すなわち、これらは天然酵素もしくは微生物とは有意に異なるまたは自然状態で生じない酵素または(微)生物である。酵素に関して、好ましくはこれらは自然状態でその形では生じない天然酵素の変異体である。このような変異体には、例えば、改善された特性、例えば高い酵素活性、高い基質特異性、高い温度耐性などを示す、特に分子生物学的方法によって調製された突然変異体が含まれる。(微)生物に関して、これらは、好ましくは遺伝子組換えにより天然生物とは異なる、本明細書上記で記載される遺伝子組換え生物である。遺伝子組換え生物は、自然には生じない、すなわち、自然状態では見ることができず、外来核酸分子の導入により天然生物とは実質的に異なる生物である。
本明細書上記で記載される外因性または内因性酵素を過剰発現することによって、酵素の濃度は、自然状態で見られるものより実質的に高く、そのため、それぞれの酵素について非自然物を使用する本発明の反応を予想外に促進し得る。好ましくは、過剰発現酵素の濃度は、全宿主細胞タンパク質の少なくとも5%、10%、20%、30%または40%である。
「非自然」基質は、外因性酵素と共に微生物中に実際に共存し得るが、自然状態でそれぞれの酵素によって作用されない分子であると理解される。他の基質が好まれる(例えば、「自然基質」)ので、この「非自然」基質は、自然状態では微生物によって変換されない。よって、本発明は、自然状態で見られない環境中の上記の酵素と共に非自然基質を利用することを企図する。
【0236】
よって、本発明の文脈において、微生物が、それぞれの酵素活性を自然では有さないが、対応する酵素の発現を可能にするヌクレオチド配列を含むよう遺伝子組換えされる微生物であることも可能である。同様に、微生物はまた、それぞれの酵素活性を自然に有するが、例えば対応する酵素をコードする外因性ヌクレオチド配列の導入または内因性産生を過剰発現(非自然)レベルに増加させるための酵素をコードする内因性遺伝子用のプロモーターの導入によって、このような活性を増強させるよう遺伝子組換えされる微生物であり得る。
対応する酵素を自然に発現する微生物を使用する場合、それぞれの活性が微生物中で過剰発現するようにこのような微生物を改変することが可能である。これは、例えば対応する遺伝子のプロモーター領域の突然変異、または遺伝子の高い発現を保証するプロモーターをもたらすための高発現プロモーターの導入を行うことによって達成することができる。あるいは、高い活性を示す酵素をもたらすために遺伝子自体を突然変異させることも可能である。
本発明による方法の変換のための上記の酵素を発現する微生物を使用することによって、本発明による方法を、酵素を分離する必要も精製する必要もなく、培養培地中で直接行うことが可能である。
【0237】
一実施形態では、本発明による方法に使用される生物が、本発明による方法の変換のための上記の少なくとも1つの酵素をコードする外来核酸分子を含むよう遺伝子組換えされた微生物である。本文中の「外来」または「外因性」という用語は、核酸分子が前記微生物中で自然には生じないことを意味する。これは、核酸分子が同じ構造でも微生物中の同じ位置でも生じないことを意味する。1つの好ましい実施形態では、外来核酸分子が、プロモーターとそれぞれの酵素をコードするコード配列とを含む組換え分子であって、コード配列の発現を駆動するプロモーターがコード配列に関して異種性である組換え分子である。この文脈における「異種性」は、プロモーターが前記コード配列の発現を自然に駆動するプロモーターではなく、異なるコード配列の発現を自然に駆動するプロモーターである、すなわち、それが別の遺伝子から得られる、または合成プロモーターもしくはキメラプロモーターであることを意味する。好ましくは、プロモーターが微生物に対して異種性のプロモーター、すなわち、それぞれの微生物中で自然には生じないプロモーターである。さらにより好ましくは、プロモーターが誘導性プロモーターである。様々な種類の生物、特に微生物での発現を駆動するためのプロモーターは当業者に周知である。
さらなる実施形態では、核酸分子が、コードされている酵素が微生物にとって内因性でない、すなわち、遺伝子組換えしないと微生物によって自然には発現されないという点で、微生物にとって外来である。換言すれば、コードされる酵素が微生物に関して異種性である。外来核酸分子は、染色体外型で、例えばプラスミドとして微生物中に存在し得る、または染色体に安定に組み込まれ得る。安定な組み込みが好ましい。よって、遺伝子組換えは、例えば酵素(複数可)をコードする対応する遺伝子(複数可)を染色体に組み込むこと、または酵素をコードする配列の上流にプロモーターを含むプラスミドから酵素(複数可)を発現すること(プロモーターおよびコード配列は、好ましくは異なる生物に由来する)、または当業者に公知の任意の他の方法にあり得る。
【0238】
本発明の文脈における「微生物」という用語は、細菌ならびに真菌、例えば酵母を指し、藻類および古細菌も指す。1つの好ましい実施形態では、微生物が細菌である。原則として、任意の細菌を使用することができる。本発明による方法に使用するために好ましい細菌は、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ザイモモナス属(Zymomonas)または大腸菌属(Escherichia)の細菌である。特に好ましい実施形態では、細菌が大腸菌属(Escherichia)に属し、さらにより好ましくは種、大腸菌(Escherichia coli)に属する。別の好ましい実施形態では、細菌が種、プチダ菌(Pseudomonas putida)、または種、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、または種、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、または種、枯草菌(Bacillus subtilis)に属する。
サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)などの好極限性細菌またはクロストリジウム科(Clostridiae)の嫌気性細菌を使用することも可能である。
別の好ましい実施形態では、微生物が真菌、より好ましくはサッカロマイセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、アスペルギルス属(Aspergillus)、トリコデルマ属(Trichoderma)、クリベロマイセス属(Kluyveromyces)またはピキア属(Pichia)、さらにより好ましくは種、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、クリベロマイセス・マルキシアナス(Kluyveromyces marxianus)、クリベロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・トルラ(Pichia torula)またはピキア・ウチリス(Pichia utilis)の真菌である。
別の実施形態では、本発明による方法が、上記の本発明による変換のための少なくとも1つの酵素を発現する光合成微生物を使用する。好ましくは、微生物が光合成細菌または微細藻類である。さらなる実施形態では、微生物が藻類、より好ましくは珪藻類に属する藻類である。本発明による方法に、異なる微生物が上記の異なる酵素を発現する微生物の組み合わせを使用することも考えられる。対象となる酵素を発現するための微生物の遺伝子組換えを以下でさらに詳細に記載する。
【0239】
好ましい実施形態では、本発明の方法が、アセチル−CoAの漏出を回避し、それによってアセチル−CoAの細胞内濃度を増加させるために、遺伝子組換えされる生物、好ましくは微生物を使用する。アセチル−CoAの細胞内濃度の上昇をもたらす遺伝子組換えは当技術分野で公知である。理論に拘束されないが、このような生物、好ましくは、微生物は、好ましくは以下の遺伝子を欠失または不活性化することによって遺伝子組換えされ得る:
ΔackA(酢酸キナーゼ),Δldh(乳酸デヒドロゲナーゼ),ΔadhE (アルコールデヒドロゲナーゼ),ΔfrdBおよび/またはΔfrdC(フマル酸レダクターゼおよびフマル酸デヒドロゲナーゼ)。
あるいは、または上記欠失のいずれかに加えて、パントテン酸キナーゼをコードする遺伝子panK/coaAを過剰発現させ、それによってCoA/アセチル−CoA細胞内プールを増加させることによって、生物または微生物に対する遺伝子組換えを行うことができる。
アセチル−CoAの漏出を回避するこれらの組換えは当技術分野で公知であり、対応する組換え生物が、ATF2を発現する大腸菌(E. coli)菌株によって外因性イソアミルアルコールを酢酸イソアミルに生物変換するための方法に使用されている(Metab. Eng. 6 (2004), 294-309)。
【0240】
別の実施形態では、本発明の方法が、(細胞)培養物の形態、好ましくは液体細胞培養物の形態でそれぞれの酵素活性物(複数可)を有する生物、好ましくは微生物を用意するステップ、それぞれの酵素の発現を可能にする適切な条件下、発酵槽(通常、バイオリアクターとも呼ばれる)で生物、好ましくは微生物を培養するその後のステップを含み、本明細書上記で記載される本発明の方法の酵素的変換を行うステップをさらに含む。適切な発酵槽またはバイオリアクター装置および発酵条件は当業者に公知である。バイオリアクターまたは発酵槽は生物学的に活性な環境を支持する当技術分野で公知の任意の製造もしくは設計された装置またはシステムを指す。よって、バイオリアクターまたは発酵槽は、生物、好ましくは微生物および/または生化学的に活性な物質、すなわちこのような生物から得られる上記の酵素(複数可)または上記の酵素(複数可)を有する生物を含む、本発明の方法などの化学反応/生化学反応を行う容器であり得る。バイオリアクターまたは発酵槽中で、この方法は好気性または嫌気性であり得る。これらのバイオリアクターは、一般的に円筒状であり、リットル〜平方メートルの大きさに及び得、通常、ステンレス鋼製である。この点に関して、理論によって拘束されないが、発酵槽またはバイオリアクターを、その全てが当技術分野で一般的に公知であるバッチ培養法、流加培養法、灌流培養法またはケモスタット培養法で生物、好ましくは微生物を培養するのに適したように設計することができる。
培養培地は、それぞれの生物または微生物を培養するのに適した任意の培養培地であり得る。
【0241】
好ましい実施形態では、本発明による方法が、本方法によって製造されるイソブテンを回収するステップを含む。例えば、本発明による方法を、必要な酵素を発現する対応する微生物を発酵させることによってインビボで行う場合、当業者に公知の方法によって発酵オフガスからイソブテンを回収することができる。
【0242】
好ましい実施形態では、本発明は、3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換することができる本明細書上記で記載される微生物を使用する本明細書上記で記載される方法であって、微生物を培養培地で培養するステップを含む方法に関する。
【0243】
本発明による方法に使用される酵素は、天然酵素、または例えば、酵素活性、安定性等を変化させるもしくは改善する突然変異もしくは他の変更を導入することによって天然酵素から得られる酵素であり得る。
タンパク質の所望の酵素活性を修飾および/または改善する方法は当業者に周知であり、これらには、例えばランダム変異誘発または部位特異的変異誘発およびその後の所望の特性を有する酵素の選択またはいわゆる「定向進化」の手法が含まれる。
例えば、原核細胞の遺伝子組換えのために、対応する酵素をコードする核酸分子を、突然変異誘発またはDNA配列の組換えによる配列組換えを可能にするプラスミドに導入することができる。標準法(Sambrook and Russell (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, NY, USA参照)により、塩基交換を行うことまたは天然もしくは合成配列を付加することが可能になる。DNAフラグメントは、フラグメントに相補的なアダプターおよびリンカーを使用することによって連結することができる。さらに、適切な制限部位を提供するまたは過剰なDNAもしくは制限部位を除去する操作手段を使用することができる。挿入、欠失または置換が可能な場合、インビトロ突然変異誘発、「プライマー修復」、制限またはライゲーションを使用することができる。一般的に、配列解析、制限解析ならびに生化学および分子生物学の他の方法を分析方法として行う。次いで、得られた酵素変異体を、上記のアッセイで所望の活性、例えば酵素活性について、特に増加した酵素活性について試験する。
上記のように、本発明の方法に使用されるまたは本発明の組成物に含まれる微生物は、対応する酵素をコードする核酸分子の導入によって遺伝子組換えされた微生物であり得る。よって、好ましい実施形態では、微生物が、本発明による方法の変換のための上記の少なくとも1つの酵素の増加した活性を有するよう遺伝子組換えされた組換え微生物である。これは、例えば、対応する酵素をコードする核酸で微生物を形質転換することによって達成することができる。微生物の遺伝子組換えの詳細な説明を以下でさらに示す。好ましくは、微生物に導入される核酸分子は、微生物に関して異種性の核酸分子である、すなわち、これは前記微生物中で自然には生じない。
本発明の文脈において、「増加した活性」は、遺伝子組換え微生物中の酵素の発現および/または活性が、対応する非組換え微生物中よりも少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%または50%、さらにより好ましくは少なくとも70%または80%、特に好ましくは少なくとも90%または100%高いことを意味する。さらにより好ましい実施形態では、発現および/または活性の増加が少なくとも150%、少なくとも200%または少なくとも500%であり得る。特に好ましい実施形態では、発現が、対応する非組換え微生物中よりも少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも100倍、さらにより好ましくは少なくとも1000倍高い。
「増加した」発現/活性という用語はまた、対応する非組換え微生物が対応する酵素を発現せず、結果として非組換え微生物中の対応する発現/活性が0である状況も包含する。好ましくは過剰発現酵素の濃度が、全宿主細胞タンパク質の少なくとも5%、10%、20%、30%または40%である。
細胞中の所与のタンパク質の発現レベルを測定する方法は当業者に周知である。一実施形態では、発現レベルの測定が、対応するタンパク質の量を測定することによって行われる。対応する方法は当業者に周知であり、これらには、ウエスタンブロット、ELISA等が含まれる。別の実施形態では、発現レベルの測定が、対応するRNAの量を測定することによって行われる。対応する方法は当業者に周知であり、これらには、例えばノーザンブロットが含まれる。
【0244】
本発明の文脈において、「組換え」という用語は、微生物を、野生型または非組換え微生物と比較して、上で定義される酵素をコードする核酸分子を含むよう遺伝子組換えを行うことを意味する。上で定義される酵素をコードする核酸分子は単独でまたはベクターの一部として使用することができる。
核酸分子は、核酸分子に含まれるポリヌクレオチドと作動可能に連結した発現制御配列をさらに含むことができる。本明細書の全体にわたって使用される「作動可能に連結した(operatively linkedまたはoperably linked)」という用語は、発現制御配列と適合性の条件下で発現が達成されるような、1つまたは複数の発現制御配列と発現させるポリヌクレオチド中のコード領域との間の結合を指す。
発現は、異種性DNA配列の、好ましくは翻訳可能なmRNAへの転写を含む。真菌ならびに細菌中での発現を保証する調節エレメントは当業者に周知である。これらは、プロモーター、エンハンサー、終止シグナル、標的シグナルなどを包含する。ベクターに関する説明と合わせて例を以下でさらに示す。
核酸分子と合わせて使用するためのプロモーターは、その起源に関しておよび/または発現させる遺伝子に関して同種または異種であり得る。適切なプロモーターは、例えば、構成的発現を与えるプロモーターである。しかしながら、外的影響によって決定される時点でのみ活性化されるプロモーターを使用することもできる。人工および/または化学誘導型プロモーターが本文脈で使用され得る。
ベクターは、ベクター内に含まれる前記ポリヌクレオチドと作動可能に連結した発現制御配列をさらに含むことができる。これらの発現制御配列は、細菌または真菌中での翻訳可能なRNAの転写および合成を保証するのに適し得る。
さらに、分子生物学で通例の方法(例えば、Sambrook and Russell (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, NY, USA参照)によって異なる突然変異をポリヌクレオチドに挿入して、おそらく改変された生物学的特性を有するポリペプチドの合成をもたらすことが可能である。点突然変異の導入は、例えば、アミノ酸配列の修飾がポリペプチドの生物学的活性または調節に影響を及ぼす位置で考えられる。
さらに、修飾された基質または生成物特異性を有する突然変異体を調製することができる。好ましくは、このような突然変異体は、増加した活性を示す。あるいは、基質結合活性を失うことなく、その触媒活性を消失させる突然変異体を調製することができる。
さらに、突然変異を上で定義される酵素をコードするポリヌクレオチドに導入することによって、遺伝子発現速度および/または前記ポリヌクレオチドによってコードされる酵素の活性を減少または増加させることが可能である。
細菌または真菌に対する遺伝子組換えを行うために、上で定義される酵素またはこれらの分子の一部をコードするポリヌクレオチドを、DNA配列の組換えによる突然変異誘発または配列組換えを可能にするプラスミドに導入することができる。標準法(Sambrook and Russell (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, NY, USAを参照)により、塩基交換を行うことまたは天然もしくは合成配列を付加することが可能になる。DNAフラグメントは、フラグメントにアダプターおよびリンカーを適用することによって互いに接続することができる。さらに、適切な制限部位を提供するまたは過剰なDNAもしくは制限部位を除去する操作手段を使用することができる。挿入、欠失または置換が可能な場合、インビトロ突然変異誘発、「プライマー修復」、制限またはライゲーションを使用することができる。一般的に、配列解析、制限解析ならびに生化学および分子生物学の他の方法を分析方法として行う。
よって、本発明によると、上記のポリヌクレオチド、核酸分子またはベクターを真菌または細菌に導入することを含む、真菌または細菌に対する遺伝子組換えを行うことによって、組換え微生物を製造することができる。
それぞれの酵素をコードするポリヌクレオチドを、上記の活性のいずれかを有するポリペプチドの製造をもたらすよう発現させる。様々な発現系の概要は、例えばMethods in Enzymology 153 (1987), 385-516、Bitter et al. (Methods in Enzymology 153 (1987), 516-544)およびSawers et al. (Applied Microbiology and Biotechnology 46 (1996), 1-9)、Billman-Jacobe (Current Opinion in Biotechnology 7 (1996), 500-4)、Hockney (Trends in Biotechnology 12 (1994), 456-463)、Griffiths et al., (Methods in Molecular Biology 75 (1997), 427-440)に含まれる。酵母発現系の概要は、例えばHensing et al. (Antonie van Leuwenhoek 67 (1995), 261-279)、Bussineau et al. (Developments in Biological Standardization 83 (1994), 13-19)、Gellissen et al. (Antonie van Leuwenhoek 62 (1992), 79-93、Fleer (Current Opinion in Biotechnology 3 (1992), 486-496)、Vedvick (Current Opinion in Biotechnology 2 (1991), 742-745)およびBuckholz (Bio/Technology 9 (1991), 1067-1072)によって与えられる。
発現ベクターは文献に広く記載されている。概して、これらは、選択マーカー遺伝子および選択された宿主中での複製を保証する複製起点を含むだけでなく、細菌またはウイルスプロモーター、およびほとんどの場合、転写のための終止シグナルも含む。プロモーターと終止シグナルとの間に、一般的に、コードDNA配列の挿入を可能にする少なくとも1つの制限部位またはポリリンカーが存在する。選択された宿主生物内で活性である場合、対応する遺伝子の転写を自然に制御するDNA配列をプロモーター配列として使用することができる。しかしながら、この配列を他のプロモーター配列に交換することもできる。遺伝子の構成的発現を保証するプロモーターまたは遺伝子の発現の計画的な制御を可能にする誘導型プロモーターを使用することが可能である。これらの特性を有する細菌およびウイルスプロモーター配列は文献で詳細に記載されている。微生物(例えば、大腸菌(E. coli)、出芽酵母(S. cerevisiae))中での発現のための調節配列は文献に十分に記載されている。下流配列の特に高い発現を可能にするプロモーターは、例えばT7プロモーター(Studier et al., Methods in Enzymology 185 (1990), 60-89)、lacUV5、trp、trp−lacUV5(DeBoer et al., in Rodriguez and Chamberlin (Eds), Promoters, Structure and Function; Praeger, New York, (1982), 462-481;DeBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983), 21-25)、lp1、rac(Boros et al., Gene 42 (1986), 97-100)である。ポリペプチドの合成のために、好ましくは誘導型プロモーターが使用される。これらのプロモーターは通常、構成的プロモーターよりも高いポリペプチド収率をもたらす。最適量のポリペプチドを得るために、二段階プロセスが通常使用される。最初に、宿主細胞を最適条件下で比較的高い細胞密度まで培養する。第2のステップで、使用されるプロモーターの種類に応じて、転写を誘導する。これに関しては、ラクトースまたはIPTG(=イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)によって誘導され得るtacプロモーターが特に適している(deBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80 (1983), 21-25)。転写のための終止シグナルも文献に記載されている。
上記のポリヌクレオチドまたはベクターによる宿主細胞の形質転換は、例えば、Sambrook and Russell (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, NY, USA;Methods in Yeast Genetics, A Laboratory Course Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1990に記載される標準法によって行うことができる。宿主細胞を、特にpH値、温度、塩濃度、通気、抗生物質、ビタミン、微量元素等に関して、使用される特定の宿主の要件を満たす栄養培地で培養する。
【0245】
ステップIおよびステップIIの酵素を発現し、場合によりステップIII、ステップI
VおよびステップVの酵素をさらに発現し、場合によりステップXIII、XIVおよび
XVの酵素をさらに発現する組換え生物または微生物
本発明はまた、(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に
示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−ヒドロキシイソ吉草酸(H
IV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップII)こと
ができる酵素を発現する組換え生物または微生物に関する。
好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸をイソブテンに変換することができる酵
素が、本明細書上記で定義される3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼである。より
好ましくは、3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼが、本明細書上記で定義される
(i)FMNプレニルトランスフェラーゼと
連合しているFMN依存性デカルボキシラーゼ;
または
(ii)アコニット酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.6);または
(iii)メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4);または
(iv)ゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5);または
(v)プロトカテク酸(PCA)デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.63)
である。
【0246】
別の好ましい実施形態では、この組換え生物または微生物が、3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼが6−メチルサリチル酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.52)、2−オキソ−3−ヘキセン二酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.77)および5−オキソペンタ−3−エン−1,2,5−トリカルボン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.68)からなる群から選択される組換え生物または微生物である。
【0247】
3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼ、FMNプレニルトランスフェラーゼと
連合しているFMN依存性デカルボキシラーゼ、アコニット酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.
1.6)、メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4)およびゲ
ラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5)ならびに前記3−メチルクロ
トン酸デカルボキシラーゼ、前記プロトカテク酸(PCA)デカルボキシラーゼ(EC4
.1.1.63)、前記FMN依存性デカルボキシラーゼ、前記
連合しているFMNプレニルトランスフェラーゼ、前記アコニット酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.6)、前記メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4)および前記ゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5)の好ましい実施形態、ならびに前記6−メチルサリチル酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.52)、2−オキソ−3−ヘキセン二酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.77)および5−オキソペンタ−3−エン−1,2,5−トリカルボン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.68)に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0248】
好ましい実施形態では、(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップII)ことができる酵素を発現する組換え生物または微生物が、3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換することができる酵素が本明細書上記で定義されるヒドロリアーゼ(EC4.2.−.−)、好ましくは本明細書上記で定義されるアコニターゼ(EC4.2.1.3)、フマラーゼ(EC4.2.1.2)またはエノイル−CoAヒドラターゼ/デヒドラターゼ(EC4.2.1.17)である組換え生物または微生物である。
ヒドロリアーゼ(EC4.2.−.−)、アコニターゼ(EC4.2.1.3)、フマラーゼ(EC4.2.1.2)およびエノイル−CoAヒドラターゼ/デヒドラターゼ(EC4.2.1.17)ならびに前記ヒドロリアーゼ(EC4.2.−.−)、前記アコニターゼ(EC4.2.1.3)、前記フマラーゼ(EC4.2.1.2)および前記エノイル−CoAヒドラターゼ/デヒドラターゼ(EC4.2.1.17)の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0249】
さらなる態様では、上記組換え生物または微生物が、アセトンとアセチル−CoAを3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)に酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIII)ことができる酵素をさらに発現する生物または微生物である。好ましい実施形態では、アセトンとアセチル−CoAを3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)に酵素的に縮合することができる酵素が、本明細書上記で定義されるHMG CoAシンターゼ(EC2.3.3.10)またはPksGタンパク質またはC−C結合開裂/縮合リアーゼの活性を有する酵素、例えばHMG CoAリアーゼ(EC4.1.3.4)である。
HMG CoAシンターゼ(EC2.3.3.10)、PksGタンパク質、C−C結合開裂/縮合リアーゼの活性を有する酵素およびHMG CoAリアーゼ(EC4.1.3.4)ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0250】
さらなる態様では、上記組換え生物または微生物が、アセト酢酸をアセトンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップIV)ことができる酵素、好ましくは本明細書上記で記載されるアセト酢酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.4)をさらに発現する生物または微生物である。アセト酢酸をアセトンに酵素的に変換することができる前記酵素および前記アセト酢酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.4)ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0251】
さらなる態様では、上記組換え生物または微生物が、アセトアセチル−CoAをアセト酢酸に変換する(
図1に示されるステップVaまたはVb)ことができる酵素、好ましくは本明細書上記で記載される
(i)アセトアセチル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.11);または
(ii)アセトアセチル−CoAのCoA基を酢酸に転移することができる酵素
をさらに発現する生物または微生物である。
好ましい実施形態では、アセトアセチル−CoAのCoA基を酢酸に転移することができる酵素が、本明細書上記で記載されるCoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)、好ましくは酢酸CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.8)である。
アセトアセチル−CoAをアセト酢酸に変換することができる前記酵素、前記アセトアセチル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.11)、アセトアセチル−CoAのCoA基を転移することができる前記酵素、CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)および前記酢酸CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.8)ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0252】
さらなる態様では、上記組換え生物または微生物が、
(a)(i)アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換する(
図1に示されるステップXIV)ことができる酵素;および
(ii)マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合する(
図1に示されるステップXV)ことができる酵素;または
(b)2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する(
図1に示されるステップXIII)ことができる酵素
を含む、アセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに酵素的に変換することができる酵素をさらに発現する生物または微生物である。
好ましい実施形態では、アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換することができる酵素が、本明細書上記で記載されるアセチル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.2)である。
別の好ましい実施形態では、マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合することができる酵素が、本明細書上記で記載されるアセトアセチル−CoAシンテターゼ(EC2.3.1.194)である。
好ましい実施形態では、2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合することができる酵素が、本明細書上記で記載されるアセチル−CoA C−アセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.9)である。
アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換することができる酵素、マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合することができる酵素、アセチル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.2)、アセトアセチル−CoAシンテターゼ(EC2.3.1.194)、2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合することができる酵素およびアセチル−CoA C−アセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.9)ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0253】
ステップIおよびステップVIの酵素を発現し、場合によりステップVII、ステップVIIIおよびステップIXの酵素をさらに発現し、場合によりステップXIII、XIVおよびXVの酵素をさらに発現する組換え生物または微生物
本発明はまた、(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIa、VIbまたはVIc)ことができる酵素を発現する組換え生物または微生物に関する。
【0254】
好ましい実施形態では、3−メチルクロトン酸をイソブテンに変換することができる酵
素が、3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼ、好ましくは本明細書上記で定義される
(i)FMNプレニルトランスフェラーゼと
連合しているFMN依存性デカルボキシラーゼ;
または
(ii)アコニット酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.6);または
(iii)メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4);または
(iv)ゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5);または
(v)プロトカテク酸(PCA)デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.63)
である。
3−メチルクロトン酸デカルボキシラーゼ、FMN依存性デカルボキシラーゼ、
連合しているFMNプレニルトランスフェラーゼ、アコニット酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.6)、メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4)、(v)プロトカテク酸(PCA)デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.63)およびゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5)ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0255】
好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に酵素的に変換することができる酵素が、
(a)本明細書上記で記載されるCoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)、好ましくはプロピオン酸:酢酸−CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.1)、酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.8)またはスクシニル−CoA:酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.18)(
図1に示されるステップVIa)である、3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に直接変換することができる酵素;または
(b)本明細書上記で記載されるチオエステルヒドロラーゼ(EC3.1.2.−)、好ましくはアセチル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.1)、ADP依存性短鎖アシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.18)またはアシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.20)(
図1に示されるステップVIb)である、3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に直接変換することができる酵素
である。
別の好ましい実施形態では、組換え生物または微生物が、以下の2つの酵素、すなわち、
(c)(i)本明細書上記で記載される3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトニルリン酸エステルに酵素的に変換することができる酵素;および
(ii)本明細書上記で記載される3−メチルクロトニルリン酸エステルを3−メチルクロトン酸に変換することができる酵素(
図1に示されるステップVIc)
を発現する組換え生物または微生物である。
【0256】
好ましい実施形態では、3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトニルリン酸エステルに変換することができる酵素が、リン酸ブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)またはリン酸アセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.8)であり、3−メチルクロトニルリン酸エステルを3−メチルクロトン酸に変換することができる酵素が、本明細書上記で記載される、アクセプターとしてカルボキシ基を有するホスホトランスフェラーゼ(EC2.7.2.−)、好ましくはプロピオン酸キナーゼ(EC2.7.2.15)、酢酸キナーゼ(EC2.7.2.1)、酪酸キナーゼ(EC2.7.2.7)または分岐鎖脂肪酸キナーゼ(EC2.7.2.14)である。
上記の酵素に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0257】
さらなる態様では、上記組換え生物または微生物が、本明細書上記で記載される3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVII)ことができる酵素、好ましくは(i)メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4);または(ii)ゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5)をさらに発現する生物または微生物である。
前記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0258】
さらなる態様では、上記組換え生物または微生物が、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素、好ましくは3−メチルグルタコニル−補酵素Aヒドラターゼ(EC4.2.1.18)、3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドラターゼ(EC4.2.1.−)またはエノイル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.−)をさらに発現する生物または微生物である。
前記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0259】
さらなる態様では、上記組換え生物または微生物が、アセトアセチル−CoAとアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIX)ことができる酵素、好ましくは3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAシンターゼをさらに発現する生物または微生物である。
前記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
さらなる態様では、(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIa、VIbまたはVIc)ことができる酵素を発現する(かつ場合により3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換することができる酵素をさらに発現し、場合により3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換することができる酵素をさらに発現し、場合によりアセトアセチル−CoAとアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに酵素的に縮合することができる酵素をさらに発現する)上記組換え生物または微生物が、好ましくは
2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する(
図1に示されるステップXIII)ことができる酵素
を含む、アセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに酵素的に変換することができる酵素をさらに発現する生物または微生物である。
別の好ましい実施形態では、組換え生物または微生物が、以下の2つの酵素、すなわち、
(i)アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換する(
図1に示されるステップXIV)ことができる酵素;および
(ii)マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合する(
図1に示されるステップXV)ことができる酵素
を発現する組換え生物または微生物である。
【0260】
好ましい実施形態では、アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換することができる酵素が、本明細書上記で記載されるアセチル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.2)である。
別の好ましい実施形態では、マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合することができる酵素が、本明細書上記で記載されるアセトアセチル−CoAシンテターゼ(EC2.3.1.194)である。
好ましい実施形態では、2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合することができる酵素が、本明細書上記で記載されるアセチル−CoA C−アセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.9)である。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0261】
3−メチル−3−ブテノイル−CoAおよび3−メチル−3−ブテン酸を介したアセチル−CoAからイソブテンへの酵素的変換のための代替経路の組換え生物または微生物:ステップXVIおよびステップXVIIの酵素を発現し、場合によりステップXVIII、ステップVIIIおよびステップIXの酵素をさらに発現し、場合によりステップXIII、XIVおよびXVの酵素をさらに発現する組換え生物または微生物
上記のように、3−メチルクロトン酸を介してイソブテンを製造するための上記の第1の経路の代替では、本発明はまた、3−メチル−3−ブテン酸のイソブテンへの酵素的変換によって、イソブテンを製造する代替経路を介したイソブテンを製造する方法に関する。以下で、3−メチル−3−ブテノイル−CoAおよび3−メチル−3−ブテン酸を介したアセチル−CoAからイソブテンへの酵素的変換のためのこの代替経路の組換え生物または微生物を記載する。
【0262】
本発明はまた、(i)3−メチル−3−ブテン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVI)ことができる酵素および(ii)3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVII)ことができる酵素を発現する組換え生物または微生物に関する。
【0263】
好ましい実施形態では、3−メチル−3−ブテン酸をイソブテンに酵素的に変換するこ
とができる酵素が、本明細書上記で記載される3−メチル−3−ブテン酸カルボキシラー
ゼ、より好ましくは本明細書上記で記載される
(i)FMNプレニルトランスフェラーゼと
連合しているFMN依存性デカルボキシラーゼ;
または
(ii)アコニット酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.6);または
(iii)メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4);または
(iv)ゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5);または
(v)プロトカテク酸(PCA)デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.63)
である。
【0264】
別の好ましい実施形態では、3−メチル−3−ブテン酸カルボキシラーゼが、本明細書上記で記載される6−メチルサリチル酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.52)、2−オキソ−3−ヘキセン二酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.77)および5−オキソペンタ−3−エン−1,2,5−トリカルボン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.68)からなる群から選択される。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0265】
好ましい実施形態では、3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換することができる酵素が、
(a)本明細書上記で記載されるCoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)、好ましくはプロピオン酸:酢酸−CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.1)、酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.8)またはスクシニル−CoA:酢酸CoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.18)(
図1に示されるステップXVIIa)である3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換することができる酵素
である。
別の好ましい実施形態では、組換え生物または微生物が、以下の2つの酵素、すなわち、
(b)本明細書上記で記載されるチオエステルヒドロラーゼ(EC3.1.2.−)、好ましくはアセチル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.1)、ADP依存性短鎖アシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.18)またはアシル−CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.20)(
図1に示されるステップXVIIb)である、3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に直接変換することができる酵素;または
(c)本明細書上記で記載される
(i)3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテノイルリン酸エステルに酵素的に変換することができる酵素;および
(ii)3−メチル−3−ブテノイルリン酸エステルを前記3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換することができる酵素(
図1に示されるステップXVIIc)
を発現する組換え生物または微生物である。
【0266】
好ましい実施形態では、前記3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテノイルリン酸エステルに酵素的に変換することができる酵素が、リン酸ブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)またはリン酸アセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.8)であり、3−メチル−3−ブテノイルリン酸エステルを3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換することができる酵素が、本明細書上記で記載される、アクセプターとしてカルボキシ基を有するホスホトランスフェラーゼ(EC2.7.2.−)、好ましくはプロピオン酸キナーゼ(EC2.7.2.15)、酢酸キナーゼ(EC2.7.2.1)、酪酸キナーゼ(EC2.7.2.7)または分岐鎖脂肪酸キナーゼ(EC2.7.2.14)である。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0267】
さらなる態様では、上記組換え生物または微生物が、3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVIII)ことができる酵素、好ましくは本明細書上記で記載される
(a)(i)メチルクロトニル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4);または(ii)ゲラノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.5);あるいは
(b)リングビア・マジュスクラ(Lyngbya majuscula)多機能性タンパク質のCurFのN末端ドメインまたは3−メチルグルタコニル−CoAデカルボキシラーゼ、好ましくはliuB遺伝子によってコードされるミキソコッカス・キサンタス(Myxococcus xanthus)の3−メチルグルタコニル−CoAデカルボキシラーゼ;あるいは
(c)4−オキサロクロトン酸デカルボキシラーゼファミリーの酵素
をさらに発現する生物または微生物である。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0268】
さらなる態様では、上記組換え生物または微生物が、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素、好ましくは3−メチルグルタコニル−補酵素Aヒドラターゼ(EC4.2.1.18)、3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドラターゼ(EC4.2.1.−)またはエノイル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.−)をさらに発現する生物または微生物である。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0269】
さらなる態様では、上記組換え生物または微生物が、アセトアセチル−CoAとアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIX)ことができる酵素をさらに発現する生物または微生物である。
好ましい実施形態では、アセトアセチル−CoAとアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに酵素的に縮合することができる酵素が3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAシンターゼである。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0270】
さらなる態様では、上記組換え生物または微生物が、アセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに酵素的に変換することができる1つまたはいくつかの酵素をさらに発現する生物または微生物である。
1つの好ましい実施形態では、組換え生物または微生物が、酵素、すなわち
(i)アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換する(
図1に示されるステップXIV)ことができる酵素;および
(ii)マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合する(
図1に示されるステップXV)ことができる酵素
の組み合わせを発現する。
代替実施形態では、組換え生物または微生物が、2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する(
図1に示されるステップXIII)ことができる酵素を発現する。
第1の上記実施形態に関して、アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換することができる酵素は、好ましくは本明細書上記で記載されるアセチル−CoA−カルボキシラーゼ(EC6.4.1.2)である。
さらに、マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合することができる酵素は、本明細書上記で記載されるアセトアセチル−CoAシンテターゼ(EC2.3.1.194)である。
第2の上記実施形態に関して、2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合することができる酵素は、好ましくは本明細書上記で記載されるアセチル−CoA C−アセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.9)である。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0271】
ステップXa、Xb、XIおよびXIIの付加的/補足的経路の酵素を発現する組換え生物または微生物
上記のように、アセチル−CoAからイソブテンを製造するための本発明の上記方法は、
図18のステップXa、ステップXb、ステップXIおよびステップXIIに示され、本明細書の上で詳細に記載される反応の1つまたは複数を補足することができる。
【0272】
よって、さらなる態様では、本発明は、本明細書上記で記載される
a)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換し、同時に3−メチルクロトニル−CoAから3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)にCoAを移動させて、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAをもたらす(
図19に模式的に示されるステップXa)ことができる酵素;および/または
b)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに酵素的に変換する(
図20に模式的に示されるステップXb)ことができる酵素;および/または
c)3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図21に模式的に示されるステップXI)ことができる酵素;および/または
d)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに酵素的に変換する(
図22に模式的に示されるステップXII)ことができる酵素
を付加的にさらに発現する上記組換え生物または微生物のいずれかに関する。
【0273】
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0274】
上記微生物は、好ましくは細菌、酵母または真菌である。別の好ましい実施形態では、生物が植物またはヒト以外の動物である。細菌、組換え生物または微生物の他の好ましい実施形態に関して、本発明による方法に関連して上記と同じものを適用する。
【0275】
本発明はまた、イソブテンを製造するための上記組換え生物または微生物のいずれかの使用に関する。よって、本発明はさらに、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップII)ことができる酵素を発現する使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップII)ことができる酵素を発現し、アセトンとアセチル−CoAを3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)に酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIII)ことができる酵素をさらに発現する使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップII)ことができる酵素を発現し、アセトンとアセチル−CoAを3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)に酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIII)ことができる酵素をさらに発現し、アセト酢酸をアセトンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップIV)ことができる酵素をさらに発現する使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップII)ことができる酵素を発現し、アセトンとアセチル−CoAを3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)に酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIII)ことができる酵素をさらに発現し、アセト酢酸をアセトンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップIV)ことができる酵素をさらに発現し、アセトアセチル−CoAをアセト酢酸に変換する(
図1に示されるステップVaまたはVb)ことができる酵素をさらに発現する使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップII)ことができる酵素を発現し、アセトンとアセチル−CoAを3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)に酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIII)ことができる酵素をさらに発現し、アセト酢酸をアセトンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップIV)ことができる酵素をさらに発現し、アセトアセチル−CoAをアセト酢酸に変換する(
図1に示されるステップVaまたはVb)ことができる酵素をさらに発現し、(a)(i)アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換する(
図1に示されるステップXIV)ことができる酵素;および(ii)マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合する(
図1に示されるステップXV)ことができる酵素;または(b)2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する(
図1に示されるステップXIII)ことができる酵素を含む、アセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに酵素的に変換することができる酵素をさらに発現する使用に関する。
より好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の上記使用のいずれかであって、前記組換え生物または微生物が3−メチルクロトン酸のイソブテンへの酵素的変換を触媒する酵素を発現する使用に関する。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法および組換え生物または微生物について上記と同じものを、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用に適用する。
【0276】
本発明はさらに、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIa、VIbまたはVIc)ことができる酵素を発現する使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIa、VIbまたはVIc)ことができる酵素を発現し、3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVII)ことができる酵素をさらに発現する使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIa、VIbまたはVIc)ことができる酵素を発現し、3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVII)ことができる酵素をさらに発現し、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素をさらに発現する使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIa、VIbまたはVIc)ことができる酵素を発現し、3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVII)ことができる酵素をさらに発現し、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素をさらに発現し、アセトアセチル−CoAとアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIX)ことができる酵素をさらに発現する使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIa、VIbまたはVIc)ことができる酵素を発現し、3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVII)ことができる酵素をさらに発現し、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素をさらに発現し、アセトアセチル−CoAとアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIX)ことができる酵素をさらに発現し、(a)(i)アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換する(
図1に示されるステップXIV)ことができる酵素;および(ii)マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合する(
図1に示されるステップXV)ことができる酵素;または(b)2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する(
図1に示されるステップXIII)ことができる酵素を含む、アセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに酵素的に変換することができる酵素をさらに発現する使用に関する。
より好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の上記使用のいずれかであって、前記組換え生物または微生物が3−メチルクロトン酸のイソブテンへの酵素的変換を触媒する酵素を発現する使用に関する。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法および組換え生物または微生物について上記と同じものを、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用に適用する。
【0277】
本発明はさらに、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチル−3−ブテン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVI)ことができる酵素および(ii)3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVII)ことができる酵素を発現する使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチル−3−ブテン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVI)ことができる酵素および(ii)3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVII)ことができる酵素を発現し、3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVIII)ことができる酵素をさらに発現する使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチル−3−ブテン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVI)ことができる酵素および(ii)3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVII)ことができる酵素を発現し、3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVIII)ことができる酵素をさらに発現し、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素をさらに発現する使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチル−3−ブテン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVI)ことができる酵素および(ii)3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVII)ことができる酵素を発現し、3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVIII)ことができる酵素をさらに発現し、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素をさらに発現し、アセトアセチル−CoAとアセチルCoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIX)ことができる酵素をさらに発現する使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチル−3−ブテン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVI)ことができる酵素および(ii)3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVII)ことができる酵素を発現し、3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVIII)ことができる酵素をさらに発現し、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素をさらに発現し、アセトアセチル−CoAとアセチルCoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIX)ことができる酵素をさらに発現し、(a)(i)アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換する(
図1に示されるステップXIV)ことができる酵素;および(ii)マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合する(
図1に示されるステップXV)ことができる酵素;または(b)2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する(
図1に示されるステップXIII)ことができる酵素を含む、アセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに酵素的に変換することができる酵素をさらに発現する使用に関する。
より好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の上記使用のいずれかであって、前記組換え生物または微生物が3−メチル−3−ブテン酸のイソブテンへの酵素的変換を触媒する酵素を発現する使用に関する。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法および組換え生物または微生物について上記と同じものを、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用に適用する。
【0278】
さらなる態様では、本発明は、イソブテンを製造するための上記組換え生物または微生物のいずれかの使用であって、前記生物または微生物が、本明細書上記で記載される
a)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換し、同時に3−メチルクロトニル−CoAから3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)にCoAを移動させて、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAをもたらす(
図19に模式的に示されるステップXa)ことができる酵素;および/または
b)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに酵素的に変換する(
図20に模式的に示されるステップXb)ことができる酵素;および/または
c)3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図21に模式的に示されるステップXI)ことができる酵素;および/または
d)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに酵素的に変換する(
図22に模式的に示されるステップXII)ことができる酵素
を付加的にさらに発現する生物または微生物である、使用に関する。
【0279】
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0280】
本発明はさらに、3−メチルクロトン酸からイソブテンを製造するための、3−メチルクロトン酸のイソブテンへの酵素的変換を触媒する酵素の使用に関する。
本発明はさらに、イソブテンを製造するための、(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップII)ことができる酵素の使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための、(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップII)ことができる酵素およびアセトンとアセチル−CoAを3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)に酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIII)ことができる酵素の使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための、(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップII)ことができる酵素、アセトンとアセチル−CoAを3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)に酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIII)ことができる酵素およびアセト酢酸をアセトンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップIV)ことができる酵素の使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための、(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップII)ことができる酵素;アセトンとアセチル−CoAを3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)に酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIII)ことができる酵素、アセト酢酸をアセトンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップIV)ことができる酵素およびアセトアセチル−CoAをアセト酢酸に変換する(
図1に示されるステップVaまたはVb)ことができる酵素の使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための、(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップII)ことができる酵素;アセトンとアセチル−CoAを3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)に酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIII)ことができる酵素、アセト酢酸をアセトンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップIV)ことができる酵素、アセトアセチル−CoAをアセト酢酸に変換する(
図1に示されるステップVaまたはVb)ことができる酵素ならびに(a)(i)アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換する(
図1に示されるステップXIV)ことができる酵素;および(ii)マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合する(
図1に示されるステップXV)ことができる酵素;または(b)2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する(
図1に示されるステップXIII)ことができる酵素を含む、アセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに酵素的に変換することができる酵素の使用に関する。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法および組換え生物または微生物について上記と同じものを、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用に適用する。
【0281】
本発明はさらに、イソブテンを製造するための、(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIa、VIbまたはVIc)ことができる酵素の使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための、(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIa、VIbまたはVIc)ことができる酵素および3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVII)ことができる酵素の使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための、(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIa、VIbまたはVIc)ことができる酵素;3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVII)ことができる酵素および3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素の使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための、(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIa、VIbまたはVIc)ことができる酵素;3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVII)ことができる酵素;3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素およびアセトアセチル−CoAとアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIX)ことができる酵素の使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための、(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および(ii)3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIa、VIbまたはVIc)ことができる酵素;3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVII)ことができる酵素;3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素およびアセトアセチル−CoAとアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIX)ことができる酵素ならびに(a)(i)アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換する(
図1に示されるステップXIV)ことができる酵素;および(ii)マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合する(
図1に示されるステップXV)ことができる酵素;または(b)2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する(
図1に示されるステップXIII)ことができる酵素を含む、アセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに酵素的に変換することができる酵素の使用に関する。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法および組換え生物または微生物について上記と同じものを、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用に適用する。
【0282】
本発明はさらに、3−メチル−3−ブテン酸からイソブテンを製造するための3−メチル−3−ブテン酸のイソブテンへの酵素的変換を触媒する酵素の使用に関する。
本発明はさらに、イソブテンを製造するための、(i)3−メチル−3−ブテン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVI)ことができる酵素および(ii)3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVII)ことができる酵素の使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための、(i)3−メチル−3−ブテン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVI)ことができる酵素および(ii)3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVII)ことができる酵素、3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVIII)ことができる酵素の使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための、(i)3−メチル−3−ブテン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVI)ことができる酵素および(ii)3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVII)ことができる酵素、3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVIII)ことができる酵素および3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素の使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための、(i)3−メチル−3−ブテン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVI)ことができる酵素および(ii)3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVII)ことができる酵素;3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVIII)ことができる酵素;3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素およびアセトアセチル−CoAとアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップIX)ことができる酵素の使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、イソブテンを製造するための、(i)3−メチル−3−ブテン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVI)ことができる酵素および(ii)3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVII)ことができる酵素;3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVIII)ことができる酵素;3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素およびアセトアセチル−CoAとアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップIX)ことができる酵素ならびに(a)(i)アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換する(
図1に示されるステップXIV)ことができる酵素;および(ii)マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合する(
図1に示されるステップXV)ことができる酵素;または(b)2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する(
図1に示されるステップXIII)ことができる酵素を含む、アセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに酵素的に変換することができる酵素の使用に関する。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法および組換え生物または微生物について上記と同じものを、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用に適用する。
【0283】
さらなる態様では、本発明は、イソブテンを製造するための酵素の上記使用のいずれかであって、付加的に本明細書上記で記載される
a)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換し、同時に3−メチルクロトニル−CoAから3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)にCoAを移動させて、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAをもたらす(
図19に模式的に示されるステップXa)ことができる酵素;および/または
b)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに酵素的に変換する(
図20に模式的に示されるステップXb)ことができる酵素;および/または
c)3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図21に模式的に示されるステップXI)ことができる酵素;および/または
d)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに酵素的に変換する(
図22に模式的に示されるステップXII)ことができる酵素
を使用する使用に関する。
【0284】
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物に適用する。
【0285】
さらに、本発明は、3−メチルクロトン酸と組換え生物または微生物とを含む組成物であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および/または(ii)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップII)ことができる酵素を発現する、および/またはアセトンとアセチル−CoAを3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)に酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIII)ことができる酵素をさらに発現する、および/またはアセト酢酸をアセトンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップIV)ことができる酵素をさらに発現する、および/またはアセトアセチル−CoAをアセト酢酸に変換する(
図1に示されるステップVaまたはVb)ことができる酵素をさらに発現する、および/または(a)(i)アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換する(
図1に示されるステップXIV)ことができる酵素;および(ii)マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合する(
図1に示されるステップXV)ことができる酵素;または(b)2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する(
図1に示されるステップXIII)ことができる酵素を含む、アセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに酵素的に変換することができる酵素をさらに発現する組成物に関する。
さらに、本発明は、3−メチルクロトン酸、(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および/または(ii)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップII)ことができる酵素;および/またはアセトンとアセチル−CoAを3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)に酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIII)ことができる酵素;および/またはアセト酢酸をアセトンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップIV)ことができる酵素;および/またはアセトアセチル−CoAをアセト酢酸に変換する(
図1に示されるステップVaまたはVb)ことができる酵素;および/または(a)(i)アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換する(
図1に示されるステップXIV)ことができる酵素;および(ii)マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合する(
図1に示されるステップXV)ことができる酵素;または(b)2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する(
図1に示されるステップXIII)ことができる酵素を含む、アセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに酵素的に変換することができる酵素を含む組成物に関する。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法および組換え生物または微生物について上記と同じものを、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用に適用する。
【0286】
さらに、本発明は、3−メチルクロトン酸と組換え生物または微生物とを含む組成物であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および/または(ii)3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIa、VIbまたはVIc)ことができる酵素を発現する、および/または3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVII)ことができる酵素をさらに発現する、および/または3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素をさらに発現する、および/またはアセトアセチル−CoAとアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIX)ことができる酵素をさらに発現する、および/または(a)(i)アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換する(
図1に示されるステップXIV)ことができる酵素;および(ii)マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合する(
図1に示されるステップXV)ことができる酵素;または(b)2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する(
図1に示されるステップXIII)ことができる酵素を含む、アセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに酵素的に変換することができる酵素をさらに発現する組成物に関する。
【0287】
さらに、本発明は、3−メチルクロトン酸と、(i)3−メチルクロトン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップI)ことができる酵素;および/または(ii)3−メチルクロトニル−CoAを3−メチルクロトン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIa、VIbまたはVIc)ことができる酵素;および/または3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVII)ことができる酵素;および/または3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素;および/またはアセトアセチル−CoAとアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに酵素的に縮合する(
図1に示されるステップIX)ことができる酵素;および/または(a)(i)アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換する(
図1に示されるステップXIV)ことができる酵素;および(ii)マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合する(
図1に示されるステップXV)ことができる酵素;または(b)2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する(
図1に示されるステップXIII)ことができる酵素を含む、アセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに酵素的に変換することができる酵素とを含む組成物に関する。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法および組換え生物または微生物について上記と同じものを、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用に適用する。
【0288】
さらに、本発明は、3−メチル−3−ブテン酸と組換え生物または微生物とを含む組成物であって、前記組換え生物または微生物が(i)3−メチル−3−ブテン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVI)ことができる酵素および/または(ii)3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVII)ことができる酵素を発現する、および/または3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVIII)ことができる酵素をさらに発現する、および/または3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素をさらに発現する、および/またはアセトアセチル−CoAとアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップIX)ことができる酵素をさらに発現する、および/または(a)(i)アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換する(
図1に示されるステップXIV)ことができる酵素;および(ii)マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合する(
図1に示されるステップXV)ことができる酵素;または(b)2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する(
図1に示されるステップXIII)ことができる酵素を含む、アセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに酵素的に変換することができる酵素をさらに発現する組成物に関する。
さらに、本発明は、イソブテンを製造するための、3−メチル−3−ブテン酸と、(i)3−メチル−3−ブテン酸をイソブテンに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVI)ことができる酵素および/または(ii)3−メチル−3−ブテノイル−CoAを3−メチル−3−ブテン酸に酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVII)ことができる酵素;および/または3−メチルグルタコニル−CoAを3−メチル−3−ブテノイル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップXVIII)ことができる酵素;および/または3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAを3−メチルグルタコニル−CoAに酵素的に縮合する(
図1に示されるステップVIII)ことができる酵素;および/またはアセトアセチル−CoAとアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに酵素的に変換する(
図1に示されるステップIX)ことができる酵素;および/または(a)(i)アセチル−CoAをマロニル−CoAに変換する(
図1に示されるステップXIV)ことができる酵素;および(ii)マロニル−CoAとアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに縮合する(
図1に示されるステップXV)ことができる酵素;または(b)2分子のアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに直接縮合する(
図1に示されるステップXIII)ことができる酵素を含む、アセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに酵素的に変換することができる酵素とを含む組成物に関する。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法および組換え生物または微生物について上記と同じものを、イソブテンを製造するための組換え生物または微生物の使用に適用する。
【0289】
さらなる態様では、本発明は、生物または微生物が、本明細書上記で記載される
a)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換し、同時に3−メチルクロトニル−CoAから3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)にCoAを移動させて、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAをもたらす(
図19に模式的に示されるステップXa)ことができる酵素;および/または
b)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに酵素的に変換する(
図20に模式的に示されるステップXb)ことができる酵素;および/または
c)3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図21に模式的に示されるステップXI)ことができる酵素;および/または
d)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに酵素的に変換する(
図22に模式的に示されるステップXII)ことができる酵素
を付加的にさらに発現する生物または微生物である、上記組成物のいずれかに関する。
【0290】
さらなる態様では、本発明は、本明細書上記で記載される
a)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−メチルクロトン酸に酵素的に変換し、同時に3−メチルクロトニル−CoAから3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)にCoAを移動させて、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAをもたらす(
図19に模式的に示されるステップXa)ことができる酵素;および/または
b)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに酵素的に変換する(
図20に模式的に示されるステップXb)ことができる酵素;および/または
c)3−ヒドロキシイソバレリル−CoAを3−メチルクロトニル−CoAに酵素的に変換する(
図21に模式的に示されるステップXI)ことができる酵素;および/または
d)3−ヒドロキシイソ吉草酸(HIV)を3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに酵素的に変換する(
図22に模式的に示されるステップXII)ことができる酵素
をさらに付加的に含む上記組成物のいずれかに関する。
上記酵素ならびに前記酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法について上記と同じものを組換え生物または微生物の使用に適用する。