(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記案内部が、前記筐体に前記第1位置で装着された前記蓋体を、前記筐体の前記筐体孔形成部と、前記蓋体とが対向する方向を軸として回動させたときに、前記蓋体が、前記軸に沿って、前記筐体の前記筐体孔形成部に向け移動するように、前記蓋体と前記筐体とに形成された、互いに螺合する螺合部を備える、請求項3に記載の検査用デバイス。
前記筐体の、前記1以上の孔を囲う位置には、前記1以上の孔に挿通され支持される前記容器を前記孔の軸心に向けて付勢し、前記容器の前記孔内での姿勢を保持する弾性部材が配置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の検査用デバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のデバイスによれば、サンプルを含む液体を収容した容器は、デバイスの中にあるときのみ穿孔され、その後にテストストリップ上に放出されるため、サンプルの汚染が回避されると、特許文献1には記載されている。
【0009】
しかしながら特許文献1では汚染の課題が十分に解決されているとは言えない。特許文献1のデバイスにおいて容器を挿入する空洞の開口は外部に開放されているため、容器を空洞に挿入し押し下げ、容器を穿孔して液体を放出したときに、容器と空洞との間から液体が漏れ出す可能性がある。また、容器を穿孔手段で穿孔するときに、容器下端への穿孔手段の侵入により容器内圧が上昇して容器上端にある開閉部が開く可能性がある。
【0010】
また、特許文献2の装置を用いることで、PCR増幅産物を完全密封した状態で検査することができ、実験室の汚染を防ぐことができると、特許文献2には記載されている。
【0011】
しかしながら特許文献2の装置は構造が複雑であるため、操作が複雑になることや、不具合発生の可能性が高まることから望ましいものとは言えない。また、特許文献2の装置によっても、汚染の課題が十分に解決されているとは言えない。特許文献2の装置では、固定ボックス部分は、重ね合わせたときにPCR管に対応する孔が間に形成される2つの部材により構成されており、当該2つの部材でPCR管の上端の開閉部近傍を側方から挟んでPCR管を固定するが、2つの部材でPCR管を挟む際に、PCR管を適切な向きに配置する必要があり、PCR管の向きが適切でないと開閉部が開いてしまう可能性がある。
【0012】
本発明の1以上の実施形態は、液体をクロマトグラフィー担体に接触させる際の汚染の可能性が低減された検査用デバイスを提供する。
【0013】
本発明の1以上の実施形態は、クロマトグラフィーに用いるための液体を収容した容器から、前記液体を効率的に漏出させるための簡便な機構を備えた検査用デバイスを提供する。
【0014】
本発明の1以上の実施形態は、筐体内に収容されたクロマトグラフィー担体を備え、筐体の外部からの前記担体の視認性が高い、検査用デバイスを提供する。
【0015】
本発明の1以上の実施形態は、筐体内に収容されたクロマトグラフィー担体を備え、クロマトグラフィーに用いるための液体を収容した容器から前記液体を漏出させ前記担体に効率的に接触させることが可能な検出用デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一実施形態に係る検査用デバイスは、
クロマトグラフィー担体を用いたクロマトグラフィーを行うための内部空間を内包し、前記内部空間を外部と連通する、クロマトグラフィーに用いられる液体を収容した1以上の容器を挿通し支持することができる1以上の孔が形成されており、且つ、前記内部空間内に配置された、前記容器を穿孔又は切開し前記液体を前記容器から前記内部空間内に漏出させるための穿孔切開部を備える筐体と、
前記筐体に装着され、前記筐体の、前記1以上の孔が形成された筐体孔形成部を覆う蓋体と
を備え、
前記筐体と前記蓋体との少なくとも一方は、前記蓋体が、前記筐体の前記筐体孔形成部を覆いながら、前記筐体孔形成部と、前記蓋体の、前記筐体孔形成部に対向する部分との間の距離が第1の距離となるように、前記蓋体が前記筐体の前記筐体孔形成部を空間を隔てて覆う第1位置から、前記距離が、前記第1の距離よりも小さい第2の距離となるように、前記蓋体が前記筐体の前記筐体孔形成部を覆う第2位置まで、移動することが可能なように、前記筐体に前記蓋体を案内する案内部(この「案内部」は「蓋案内部」とも言う)を備え、
前記筐体の前記1以上の孔に前記容器を挿通し支持させた状態で、前記蓋体により前記筐体の前記筐体孔形成部を覆い、前記蓋体を前記第1位置から前記第2位置まで移動させるとき、
前記第1位置は、前記蓋体が、前記筐体の前記筐体孔形成部と、前記容器の、前記1以上の孔から前記蓋体の側に突出した外側部分とを覆い、且つ、前記容器が前記穿孔切開部により穿孔又は切開されない位置であり、
前記蓋体の前記第1位置から前記第2位置への移動の過程で、前記蓋体の前記部分が前記容器の前記外側部分の端部と当接することで前記容器が前記穿孔切開部に向けて押し込まれ、前記穿孔切開部により前記容器が穿孔又は切開されて前記液体が前記内部空間内に漏出されるように、前記筐体と前記蓋体が前記案内部により案内されること、
を特徴とする。
【0017】
本発明の前記一実施形態に係る検査用デバイスによれば、例えば以下の作用によって、液体をクロマトグラフィー担体に接触させる際の汚染の可能性が低減される。
【0018】
まず、前記筐体の前記1以上の孔に、液体を収容した前記容器を挿通し支持させた状態で、前記蓋体を、前記筐体に対して前記第1位置となるように位置させたときに、前記蓋体が、前記筐体孔形成部と、前記容器の、前記1以上の孔から前記蓋体の側に突出した外側部分とを覆うが、この状態では、前記容器が前記穿孔切開部により穿孔又は切開されない。すなわち、前記容器から液体を漏出させるよりも前に、前記容器の外側部分及び前記筐体孔形成部が前記蓋体により覆われる。
【0019】
続いて、前記蓋体を前記第1位置から前記第2位置への移動させる過程で、前記蓋体の前記部分が前記容器の前記外側部分の端部と当接することで前記容器が前記穿孔切開部に向けて押し込まれ、前記穿孔切開部により前記容器が穿孔又は切開されて前記液体が前記内部空間内に漏出される。この過程では、前記蓋体が、前記筐体の前記筐体孔形成部を覆いながら移動するため、前記容器から漏出した液体が、検査用デバイスの外部に飛散することが抑制される。更に、この過程では、前記蓋体の前記部分が前記容器の前記外側部分の端部と当接しているため、前記容器として、前記端部に開閉部を備える形状のマイクロチューブを用いた場合に、マイクロチューブの開閉部が開くことがない。
【0020】
本発明の前記一実施形態に係る検査用デバイスの好ましい態様では、
前記筐体が、前記筐体孔形成部を囲うよう形成された、前記蓋体を装着するための、蓋体装着部を備え、
前記筐体の前記1以上の孔に前記容器を挿通し支持させた状態を、前記筐体の外側から、前記孔の貫通方向に沿って見たときに、前記容器の前記外側部分の輪郭が、前記蓋体装着部の内周に内包されるように、前記筐体が構成されている。
【0021】
本発明の前記一実施形態に係る検査用デバイスのこの態様によれば、前記筐体の前記1以上の孔に前記容器を挿通した状態で前記蓋体を装着することが容易であり、且つ、前記蓋体の前記第1位置から前記第2位置への移動が、前記容器の前記外側部分により妨げられる可能性が低減できる。
【0022】
本発明の前記一実施形態に係る検査用デバイスの他の好ましい態様では、
前記案内部が、前記筐体に装着された前記蓋体を前記第1位置から前記第2位置まで移動させるための倍力機構を備える。
【0023】
本発明の前記一実施形態に係る検査用デバイスのこの態様によれば、前記筐体に装着された前記蓋体を前記第1位置から前記第2位置まで移動させることが容易である。
【0024】
本発明の前記一実施形態に係る検査用デバイスのより好ましい態様においては、前記案内部が、前記筐体に前記第1位置で装着された前記蓋体を、前記筐体の前記筐体孔形成部と、前記蓋体とが対向する方向を軸として回動させたときに、前記蓋体が、前記軸に沿って、前記筐体の前記筐体孔形成部に向け移動するように、前記蓋体と前記筐体とに形成された、互いに螺合する螺合部を備える。
【0025】
この態様では、前記蓋体を回動させる力を利用して、前記筐体に装着された前記蓋体を前記第1位置から前記第2位置まで移動させることができる。しかも、前記蓋体の前記第1位置から前記第2位置への移動の過程で、前記蓋体の前記内面が前記容器の前記外側部分の端部と当接しながら前記蓋体を回動させることで、摩擦により、前記容器に前記軸の方向に対し略垂直な方向に捻りが加わる。この作用により、前記容器からの前記液体の漏出が促進される。
【0026】
本発明の前記一実施形態に係る検査用デバイスの他の好ましい態様では、
前記筐体の、前記1以上の孔を囲う位置には、前記1以上の孔に挿通され支持される前記容器を前記孔の軸心に向けて付勢し、前記容器の前記孔内での姿勢を保持する弾性部材が配置されている。
【0027】
本発明の前記一実施形態に係る検査用デバイスのこの態様によれば、前記孔に挿通された前記容器の姿勢が前記弾性部材により保持されるため、前記穿孔切開部に対する前記容器の位置を安定させることができる。
【0028】
本発明の前記一実施形態に係る検査用デバイスの他の好ましい態様では、
前記筐体の側面に波状面等の凹凸面が形成されている。
【0029】
本発明の前記一実施形態に係る検査用デバイスのこの態様では、使用者が検査用デバイスを手先で取り扱う際に滑りを防止することができる。また、複数の検査用デバイスを側面が接するように並べる際に、凹凸面を係合させることができる。
【0030】
本発明の他の一実施形態に係る検査用デバイスは、
クロマトグラフィー担体を用いたクロマトグラフィーを行うための内部空間を内包し、前記担体を収容するための筐体を備え、
前記筐体は、
クロマトグラフィーに用いられる液体を収容した容器を2つ以上支持するための支持部と、
1つで、前記支持部に支持された2以上の前記容器を穿孔又は切開し前記液体を前記容器から前記内部空間内に漏出させるための、穿孔切開部と
を備えることを特徴とする。
【0031】
本発明の前記他の一実施形態に係る検査用デバイスによれば、1つの穿孔切開部により2つ以上の前記容器を穿孔又は切開して前記液体を漏出させることができるため、機構を簡略化することができ、製造コストの低減が可能である。
【0032】
本発明の別の一実施形態に係る検査用デバイスは、
検査用デバイスであって、
クロマトグラフィー担体、及び
前記担体を用いたクロマトグラフィーを行うための内部空間を内包し、前記担体を収容するための筐体を備え、
前記筐体は、
底壁部と、
底壁部に対向配置された上壁部と、
前記底壁部の周縁と前記上壁部の周縁とを接続する側壁部と、
前記担体を、前記底壁部と前記上壁部との対向方向において、前記底壁部と前記上壁部との間であって前記上壁部寄りの位置に、前記上壁部と対向するように設置するための担体設置部と
を備え、
前記担体は、前記筐体の前記担体設置部に設置されており、
前記上壁部のうち前記担体と対向する部分が、可視光透過性を有する、
ことを特徴とする。
【0033】
本発明の前記別の一実施形態に係る検査用デバイスは、クロマトグラフィー担体が筐体の上壁部に近い位置にあり、且つ、上壁部が可視光透過性を有するため、クロマトグラフィー展開時に前記担体の視認性が良好である。
【0034】
本発明の前記別の一実施形態に係る検査用デバイスは、好ましくは、前記担体の前記担体設置部に設置された部分と前記上壁部との間の距離が10mm以下である。この態様によれば、前記担体の前記上壁部を介した筐体外側からの視認性が更に良好である。
【0035】
本発明の前記別の一実施形態に係る検査用デバイスは、好ましくは、前記担体の、前記上壁部と対向する表面が、可視光透過性の保護フィルムにより被覆されている。この態様によれば、前記担体の前記上壁部を介した筐体外側からの視認性が更に良好である。
【0036】
本発明の前記別の一実施形態に係る検査用デバイスは、好ましくは、前記上壁部のうち前記担体と対向する部分が、厚さ20μm〜10mmであり且つ全光線透過率が70%以上である部分を含む。この態様によれば、前記担体の前記上壁部を介した筐体外側からの視認性が更に良好である。
【0037】
本発明の前記別の一実施形態に係る検査用デバイスは、好ましくは、前記筐体の平面視において、前記筐体の全面積に対し5面積%以上が、前記上壁部の、前記担体と対向する可視光透過性の部分である。この態様によれば、前記担体の前記上壁部を介した筐体外側からの視認性が更に良好である。
【0038】
本発明の前記別の一実施形態に係る検査用デバイスは、好ましくは、前記上壁部の、外側の面及び内側の面の少なくとも一方に、反射防止部材が配置されている。この態様によれば、前記担体の前記上壁部を介した筐体外側からの視認性が更に良好である。
【0039】
本発明の前記別の一実施形態に係る検査用デバイスは、好ましくは、前記上壁部のうち前記担体と対向する部分の、前記筐体の外側の位置に、前記筐体の外側に向けて突出し前記担体に沿って延びる可視光透過性の突条部を備える。この態様によれば、可視光下において、前記担体を、前記上壁部の突条部を介して観察したときに、前記担体の像が前記突条部により拡大されるため前記担体の視認性が更に良好である。
【0040】
本発明の更なる一実施形態に係る検査用デバイスは、
クロマトグラフィー担体、及び
前記担体を用いたクロマトグラフィーを行うための内部空間を内包し、前記担体を収容するための筐体を備え、
前記筐体は、
クロマトグラフィーに用いられる液体を収容した容器を支持するための支持部と、
前記支持部に支持された前記容器を穿孔又は切開し前記液体を前記容器から前記内部空間内に漏出させるための、穿孔切開部と
を備え、
前記担体は、前記担体の一部分が、前記支持部と前記穿孔切開部との間に位置するように前記筐体に収容されており、
前記支持部には、前記容器を支持した状態で、前記容器が前記担体の前記一部分を間に介して前記穿孔切開部と対向する位置Aから、前記容器が前記担体の前記一部分と共に前記穿孔切開部により穿孔又は切開される位置Bまで、前記容器を案内する容器案内部が形成されていることを特徴とする。
【0041】
本発明の前記更なる一実施形態によれば、クロマトグラフィーに用いるための液体を収容した容器から前記液体を漏出させクロマトグラフィー担体に効率的に接触させることが可能である。
【0042】
なお、本願明細書において「検査用デバイス」とは、クロマトグラフィーを実施するための器具を指す。
【0043】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2016−150452号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0044】
本発明の1以上の実施形態によれば、液体をクロマトグラフィー担体に接触させる際の汚染の可能性が低減された検査用デバイスが提供される。
【0045】
本発明の1以上の実施形態によれば、クロマトグラフィーに用いるための液体を収容した容器から、前記液体を効率的に漏出させるための簡便な機構を備えた検査用デバイスが提供される。
【0046】
本発明の1以上の実施形態によれば、筐体内に収容されたクロマトグラフィー担体を備え、筐体の外部からの前記担体の視認性が高い、検査用デバイスが提供される。
【0047】
本発明の1以上の実施形態によれば、クロマトグラフィーに用いるための液体を収容した容器から前記液体を漏出させ筐体内に収容されたクロマトグラフィー担体に効率的に接触させることが可能な検出用デバイスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の具体的な実施形態について図面を参照して以下に説明するが。本発明の範囲は図示する実施形態には限定されない。
<第1実施形態>
図1Aから
図5Cを参照して第1実施形態の検査用デバイス1について説明する。
【0050】
第1実施形態の検査用デバイス1は筐体10と蓋体20とを備える。筐体10と蓋体20を構成する材料は特に限定されず樹脂、ガラス等の材料を適宜用いることができる。
【0051】
筐体10は、クロマトグラフィー担体30を用いたクロマトグラフィーを行うための内部空間11を内包する。
【0052】
筐体10はまた、内部空間11内に配置された、容器40,40を穿孔又は切開し液体Lを容器40,40から内部空間11内に漏出させるための穿孔切開部13を備える。
【0053】
図示する例では、筐体10は、筐体上部材10Aと筐体下部材10Bとにより形成される。筐体下部材10Bは、筐体10の底壁部101と底壁部101の周縁から立設した側壁部102とを備える。筐体上部材10Aは、筐体10の上壁部103と、後述する筐体孔形成部14と、蓋体装着部15とを備える。筐体上部材10Aの上壁部103において、筐体下部材10Bと組み合わせたときに筐体10の外面となる面を上面103aとし、筐体10の内面となる面を下面103bとする。筐体上部材10Aの上壁部103の周縁には、下面103bの側に突出した4つの係止爪部10A1が形成されており、筐体下部材10Bの側壁部102の外面102aには、係止爪部10A1と係合する4つの係止凹部10B1が形成されている。
【0054】
筐体下部材10Bにおける側壁部102の上端102bと、筐体上部材10Aにおける上壁部103の下面103bの周縁部103b1とは、筐体上部材10Aと筐体下部材10Bとを係合させたときに、互いに当接する。更に、上壁部103の下面103bには、周縁部103b1に沿うようにその内周側に隣接し、周縁部103b1よりも突出する突出部103b2が形成されている。筐体上部材10Aと筐体下部材10Bとを係合させたときに、筐体上部材10Aにおける上壁部103の下面103bの突出部103b2の外周面103b3と、筐体下部材10Bにおける側壁部102の内面102cのうち、上端102bに隣接する部分とが当接する。これらの構成により、筐体上部材10Aと筐体下部材10Bとを係合させて筐体10を形成した時に、側壁部102と上壁部103との境目からの液漏れを防ぐことができる。
【0055】
なお、図示する例では筐体10は2つの部材(筐体上部材10Aと筐体下部材10B)により形成されるが、これには限定されず、筐体10は1つの部材から形成されてもよいし、3以上の部材から形成されてもよい。
【0056】
筐体10には、内部空間11を外部と連通する、クロマトグラフィーに用いられる液体Lを収容した1以上(図示する例では2つ)の容器40,40を挿通し支持することができる1以上(図示する例では2つ)の孔12,12が形成されている。筐体10のうち、孔12,12が形成された部分を筐体孔形成部14とする。
【0057】
内部空間11は、筐体10に内包される空間であり、図示する例では、孔12,12を通じて外部と連通されているが、他の部分は閉じた構造である。
【0058】
筐体10の内部空間11はクロマトグラフィーを行う場となる。内部空間11内に固相であるクロマトグラフィー担体30が設置される。内部空間11内において、クロマトグラフィー担体30の一部に液体Lが接触することで、クロマトグラフィーを行うことができる。
【0059】
液体Lとしては、水等の溶媒中に検出対象物質を含む試料液、展開液、水等の溶媒中に標識物質を含む液等が例示できる。試料液としては、核酸増幅産物を含む試料液が例示できる。展開液としては、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、グッド緩衝液、SSC緩衝液等が例示できる。展開液はさらに界面活性剤を含有していてもよい。また、液体Lは、試料液と展開液、標識物質を含む液の1種以上を混合した混合液であってもよい。また、液体Lとして、発色試薬や色素を含む液体を使用してもよい。図面及び以下の説明では、複数の容器40に収容された液体及び内部空間11に放出された液体を全て液体Lとして表すが、複数の容器40に収容された液体Lは各々異なる組成の液体であってよい。また、試料液以外の液体Lを収容する容器40は、孔12に予め挿通されていても構わない。
【0060】
筐体10の内部空間11に設置するクロマトグラフィー担体30は、固相担体であればよく、樹脂、金属、多糖類、鉱物等からなるものを利用することができ、メンブレン、フィルム、不織布、プレート、ゲル等の形状とすることができる。図示する例では、クロマトグラフィー担体30は細長いメンブレン形状であるがこの例には限定されない。好ましくは、クロマトグラフィー担体30は多孔質構造を有するものである。クロマトグラフィー担体30の具体例としては、例えば、紙、ニトロセルロースメンブレン、ポリエーテルスルフォンメンブレン、ナイロンメンブレン、乾燥させた各種ゲル(シリカゲル、アガロースゲル、デキストランゲル、ゼラチンゲル)、シリコン、ガラス、樹脂等が挙げられる。
【0061】
クロマトグラフィー担体30の一部には検出対象物質を捕捉するための捕捉用物質を配置することができる。例えば、検出対象物質が核酸を含む場合には、該核酸とハイブリダイズする核酸を捕捉用物質とすることができ、検出対象物質が抗原又は抗体を含む場合には、該抗原又は抗体と免疫学的に反応する抗体又は抗原を捕捉用物質とすることができる。
【0062】
検出対象物質は、クロマトグラフィー担体30上で目視検出できるものであることが好ましい。例えば、検出対象物質を目視検出が可能な標識物質により標識し、クロマトグラフィー担体30上で展開すれば、目視検出が可能である。目視検出が可能な標識物質としては、着色粒子、色素、蛍光物質等が挙げられる。「着色粒子」とは、金属(例えば、金、銀、銅、白金等)粒子、金属ナノロッド、金属ナノプレート、色素や蛍光物質を含むラテックス粒子、色素や蛍光物質を包含するシリカナノ粒子等が挙げられる。検出対象物質を、目視検出が可能な標識物質により標識する方法は特に限定されない。例えば、検出対象物質が核酸を含む場合には、該核酸とハイブリダイズする核酸が連結された標識物質を、検出対象物質と接触させることで標識物質により標識することができる。目視検出のためには、筐体10の外部から、クロマトグラフィー担体30が確認できるように、筐体10の、内部空間11を囲う壁部の少なくとも一部が可視光を透過する材料により形成されていることが好ましい。特に、筐体10の上壁部103のうち、少なくとも、クロマトグラフィー担体30が配置される部分と対向する部分103cが可視光を透過する材料により形成されていることが好ましい。
【0063】
本実施形態で用いるクロマトグラフィー担体30の構造を
図9に示す。この例では、クロマトグラフィー担体30は液体受容部31と、検出部32とを備える。液体受容部31は検出部32の一端の側に配置され、この部分に液体Lが供給される。検出部32は、検出対象物質が展開される部分である。検出部32の他端の側には吸収パッド33が配置される。液体受容部31と検出部32との間には標識物質を保持する標識物質保持部34が配置される。液体受容部31に供給された液体Lに検出対象物質が含まれるとき、標識物質保持部34を通過する際に検出対象物質が標識物質により標識されてから検出部32に移動する。ただし、検出対象物質が予め標識されている場合や、液体Lに標識物質が含まれている場合には、標識物質保持部34は必要なく、液体受容部31と検出部32とを隣接させる又は液体受容部31を省略することができる。検出部32には、検出対象物質を捕捉するための、上記の捕捉用物質が配置された捕捉領域321が形成されている。液体受容部31、標識物質保持部34、検出部32、吸収パッド33は、クロマトグラフィー担体30として利用可能な材料として上記の材料により構成することができる。これらは同一の部材より構成されていてもよいし、異なる部材より構成されていてもよい。液体受容部31、標識物質保持部34、検出部32、吸収パッド33は、図示するように基材35上に配置することができる。基材35は、例えば樹脂、金属、多糖類、鉱物等により構成することができる。基材35は部分的に又は全て省略することができる。例えば、液体受容部31の下部に該当する基材を部分的に又は全て省略することにより、液体受容部31の柔軟性を向上させ、容器40を穿孔切開部に向けて押し込む際の抵抗を低減することができる。柔軟性の高い基材を用いることでも同様の効果を得ることができる。クロマトグラフィー担体30は、
図9に示す構造を有するものには限定されず、目的とするクロマトグラフィーに応じて適当な構造のものを使用することができる。
【0064】
クロマトグラフィー担体30の他の例としては、
図10に示すような、液体受容部31、標識物質保持部34、吸収パッド33、基材35を備えず、検出部32のみからなるクロマトグラフィー担体30が挙げられる。また、図示しないが、検出部32とそれを支持する基材35のみからなるクロマトグラフィー担体30を用いることもできる。
【0065】
本実施形態では、筐体10の内部空間11内においてクロマトグラフィー担体30は、標識物質保持部34を備える場合には、液体受容部31が、容器40から漏出した液体Lと接触するが、検出部32及び吸収パッド33が、漏出した液体Lとは直接に接触しないように配置される。上記の通り、液体Lに標識物質が含まれている場合等では、クロマトグラフィー担体30から標識物質保持部34を省略することができる。また、上記の通り、検出部32のみからなるクロマトグラフィー担体30や、検出部32及び基材35のみからなるクロマトグラフィー担体30を用いることもできる。標識物質保持部34が省略されたクロマトグラフィー担体30や、
図10に示す検出部32のみからなるクロマトグラフィー担体30や、検出部32及び基材35のみからなるクロマトグラフィー担体30を用いる場合には、容器40から漏出した液体Lが、検出部32と直接接触するよう配置されていてもよい。以下の説明では、液体受容部31が容器40から漏出した液体Lと直接接触し、検出部32及び吸収パッド33が漏出した液体Lとは直接に接触しないようにクロマトグラフィー担体30が筐体10の内部空間11内に配置される態様を代表例として説明するが、本実施形態はこの態様には限定されない。
【0066】
筐体10の内部空間11内には、底壁部101から内部空間11内に向けて立設された、クロマトグラフィー担体30が設置される担体設置部16が形成されている。担体設置部16は、クロマトグラフィー担体30を、筐体10の底壁部101と上壁部103との対向方向において、底壁部101と上壁部103との間であって上壁部103寄りの位置に、上壁部103の部分103cと対向するように設置できるよう構成されている。担体設置部16の上面16aに、クロマトグラフィー担体30の検出部32と吸収パッド33が配置される。一方で、液体受容部31は、孔12,12と穿孔切開部13との間に配置される。クロマトグラフィー担体30の検出部32と吸収パッド33は、担体設置部16の上面16aに接着剤や粘着テープにより固定されていてもよい。担体設置部16の上面16aは、穿孔切開部13により穿孔又は切開された容器40から漏出した液体Lが及ばない位置にあり、具体的には、筐体10を水平面上に設置したときに、内部空間11内の、液体Lが漏出される位置よりも高い位置にある。担体設置部16の上面16aは、クロマトグラフィー担体30の検出部32と吸収パッド33を含む部分に応じた平面視形状を有し、図示する例では長手方向と短手方向を有する形状を有する。担体設置部16は、上面16aを囲う位置に、クロマトグラフィー担体30の、上面16aに沿った方向への動きを規制し位置決めをする、複数の位置決め用突起を備える。位置決め用突起は、上面16aの短手方向の両側に配置された第1位置決め用突起16bと、上面16aの長手方向の一方の端に配置された第2位置決め用突起16cとを含む。
【0067】
筐体10に形成された孔12の数は図示する例では2であるが、1であっても3以上であってもよく、目的とするクロマトグラフィーに用いられる、液体Lを収容した容器40の数に応じて設定することができる。例えば、液体Lとして、試料液と展開液を用いる場合は、孔12は2つ形成される。この場合、特に限定されないが、2つの孔12、12を、クロマトグラフィー担体30が内部空間11に配置される位置に対向する位置に、展開方向に沿って形成し、展開方向の下流側の孔12に試料液の入った容器40を、展開方向の上流側の孔12に展開液の入った容器40を挿通することが、検出部32に到達する検出対象物質の量が多くなるという点で好ましい。また、容器40の数が2以上の場合、各容器を容易に区別するために、各容器40が異なる形状や色調、模様を有していてもよく、各容器40に収容される液体Lが異なる色調を持つよう着色されていてもよい。異なる形状を有する2以上の容器40を用いる場合、各孔12も各容器形状に適合するよう異なる形状を有していてもよい。
【0068】
蓋体20は、筐体10に装着され、筐体10の筐体孔形成部14を覆うよう構成されている。蓋体20は、筐体孔形成部14と蓋体20との間に液体が存在する場合に、該液体が、通常の使用条件下では検査用デバイス1の外部に漏れ出ないように、筐体孔形成部14を覆う。
【0069】
筐体10と蓋体20との少なくとも一方は、蓋体20が、筐体10の筐体孔形成部14を覆いながら、下記の第1位置から下記の第2位置まで、移動することが可能なように、筐体10に蓋体20を案内する案内部50を備える。ここで「案内部」は「蓋案内部」と称してもよい。
【0070】
第1位置とは、筐体10の筐体孔形成部14と、蓋体20の、筐体孔形成部14に対向する部分である蓋主部21との間の距離Dが第1の距離となるように、蓋体20が筐体10の筐体孔形成部14を、空間Sを隔てて覆う、筐体10に対する蓋体20の位置である。
図4A及び
図5Aに、筐体10の孔12,12に容器40を挿通し支持させた状態で、蓋体20により筐体10の筐体孔形成部14を覆い、筐体10に対する蓋体20の位置を第1位置としたときの、本実施形態の検査用デバイス1の模式図を示す。
【0071】
第2位置とは、前記の距離Dが、第1の距離よりも小さい第2の距離となるように、蓋体20が筐体10の筐体孔形成部14を覆う、蓋体20の、筐体10に対する位置である。
図4B及び
図5Cに、筐体10の孔12,12に容器40を挿通し支持させた状態で、蓋体20により筐体10の筐体孔形成部14を覆い、蓋体20の位置を第2位置としたときの、本実施形態の検査用デバイス1の模式図を示す。
【0072】
ここで、距離Dは、筐体孔形成部14の蓋体20の側の面である外面14aと、これに対向する、蓋体20の蓋主部21の、筐体孔形成部14の側の面である内面21aとの間の、対向する方向Xに沿った距離を指し、該距離が部位によって異なる場合は最も長い距離を指す。
【0073】
蓋体20は、本実施形態では、蓋主部21と、蓋主部21の外周縁を起点とし、蓋主部21の内面21aの側に延びる蓋周壁部22とから構成される。
【0074】
本実施形態では、筐体10において、筐体孔形成部14は上壁部103から外方に突出した位置に形成されており、筐体孔形成部14と上壁部103とは、筐体孔形成部14を囲い、蓋体2が装着される蓋体装着部15により接続されている。
【0075】
本実施形態では、案内部50は、筐体10の蓋体装着部15の外周面15aに形成された筐体側螺合部51と、蓋体20の蓋周壁部22の内周面22aに形成された、筐体側螺合部51と螺合可能な蓋体側螺合部52とから構成される。筐体側螺合部51と蓋体側螺合部52とにより、筐体10に第1位置で装着された蓋体20を、筐体10の筐体孔形成部14と、蓋体20とが対向する方向Xを軸として回動させたときに、蓋体20の蓋主部21が、方向Xに沿って、筐体10の筐体孔形成部14に向け移動することができる。この案内部50により、筐体10に対し蓋体20を第1位置から第2位置まで移動させることができる。この移動の過程において、筐体孔形成部14は蓋体20により覆われ続け、液体の漏出が防止される。案内部50は、筐体10と蓋体20との間を液体Lが実質的に通過することができないように構成することができる。
【0076】
筐体側螺合部51と蓋体側螺合部52とからなる螺合部は、蓋体20を方向Xを軸に回転させる力を、蓋体20を方向Xに沿って筐体10の筐体孔形成部14に向け移動させる力に変換する倍力機構の一態様である。螺合部の径がより大きいほど、効率的に、蓋体20を筐体10の筐体孔形成部14に向け移動させることができる。蓋体20の回動をより容易にするために、図示するように蓋体20の蓋周壁部22の外面22bに、方向Xに沿って延在する複数の凹溝23aが間隔を空けて形成された滑り止め部23を形成することが好ましい。また、蓋体20の蓋主部21の外面21bには、回動方向を目視により識別可能な標識21cを形成することができる。
【0077】
案内部50は、図示する螺合部には限定されず、他の態様であってもよい。例えば、筐体10の蓋体装着部15の外周面15aと、蓋体20の蓋周壁部22の内周面22aに螺合部が形成されておらず、筐体10の蓋体装着部15の外周面15aと、蓋体20の蓋周壁部22の内周面22aとが当接しながら、筐体10に対し蓋体20が摺動して、第1位置から第2位置まで案内される態様が他の態様として例示できる。また、筐体10の蓋体装着部15の外周面15aと、蓋体20の蓋周壁部22の内周面22aに螺合部が形成されておらず、筐体10の蓋体装着部15の外周面15aと、蓋体20の蓋周壁部22の内周面22aとが1以上のシール材を介して当接しながら、筐体10に対し蓋体20が、第1位置から第2位置まで案内される態様が他の態様として例示できる。シール材は、ゴム等の弾性変形可能な材料により形成することができる。各シール材は、筐体10の蓋体装着部15の外周面15aと、蓋体20の蓋周壁部22の内周面22aの一方に固定されていてもよい。また、一度第1位置から第2位置まで移動した蓋体20を第2位置にてロックし、再度第1位置へ移動すること、又は筐体10との装着が解除されることを防ぐためのロック機構を付加してもよい。
【0078】
穿孔切開部13は、容器40,40を穿孔又は切開し液体Lを容器40,40から内部空間11内に漏出させる。穿孔切開部13として、本実施形態では、
図3に示すような、容器40,40を切開する刃(穿孔切開部13の刃に特定した態様を指すとき「刃13」として示す)を用いる。
図3に示す刃13は、先端部131の近傍で、二つの側面132,133がともに傾斜しながら先端部131において交差する両刃であるが、これには限定されず、二つの側面132,133のうち一方のみが傾斜し他方が平坦なまま先端部131において交差する片刃であってもよい。また、穿孔切開部13は刃には限定されない。刃以外の穿孔切開部13としては、容器40,40を穿孔する針が例示できる。本実施形態では、複数の容器40,40を、1つの穿孔切開部13により切開するように構成されているが、これには限定されず、容器毎に対応した穿孔切開部13が設けられてもよい。穿孔切開部13を構成する材料は、容器40,40を穿孔又は切開可能な強度が付与できる材料であればよく、例えば鋼、アルミニウム等の金属や、セラミックス、樹脂であることができる。
【0079】
穿孔切開部13は、筐体10の内部空間11内に配置される。本実施形態では、穿孔切開部13は、筐体10の内部空間11内の、孔12,12と対向する壁部である底壁部101の部分に配置されているがこの態様には限定されない。筐体10には、内部空間11内に、底壁部101から、筐体孔形成部14に向けて立設された固定部17が形成されており、固定部17を介して穿孔切開部13が筐体10に固定される。本実施形態では、底壁部101上において、固定部17は,担体設置部16と同一線上に並ぶように配置されている。本実施形態の検査用デバイス1を水平面上に載置したとき、固定部17の上面17aは、担体設置部16の上面16aよりも下方に位置する。担体設置部16と固定部17とは、底壁部101から内部空間11内に立設された接続部18により接続されており、担体設置部16の上面16aと、固定部17の上面17aとは、担体設置部16の上面16aから固定部17の上面17aに向けて傾斜した接続部18の上面18aにより接続されている。穿孔切開部13を固定する固定部17の、上面17aの短手方向の両側には更に第3位置決め用突起17bが形成されている。固定部17に固定された穿孔切開部13と孔12,12との間に配置されたクロマトグラフィー担体30の液体受容部31が、第1位置から第2位置までの蓋体20の動きに伴い固定部17に向けて動く際に、液体受容部31の動きを蓋体20の進行方向に制限する。
【0080】
筐体10の筐体孔形成部14に形成された孔12,12は、筐体10の内部空間11と外部とを連通する貫通孔である。孔12,12は、貫通方向に容器40,40を挿通し支持することができ、且つ、挿通された容器40,40を、蓋体20の移動に伴い穿孔切開部13に向けて押し込まれるよう案内することができればよく、その形状は特定の形状に限定されない。
【0081】
容器40としては、クロマトグラフィーに用いられる液体Lを収容し、筐体10の孔12,12に挿通し支持することができ、且つ、穿孔切開手段13により穿孔又は切開することができる容器を用いることができる。容器40は、典型的には、樹脂容器である。容器40としては、一方向に延び、一端が閉じ他端に開閉部を有する管状容器が好ましく、具体的には、図示するように、孔12,12に挿通されたときに筐体10の外側の端となる外側端41に開閉部41aを有し、孔12,12に挿通されたときに筐体10の内側の端となる内側端42が閉じた容器を用いることができ、このような容器40としては、核酸増幅反応や生化学試験に用いられるマイクロチューブが例示できる。
【0082】
筐体孔形成部14の、孔12、12の各孔12を囲う位置には、挿通され支持される容器40を各孔12の貫通方向に沿った軸心に向けて付勢し、容器40の各孔12内での姿勢を保持する弾性部材190が配置されている。弾性部材190は、具体的には、筐体孔形成部14の、内部空間11の側の面である内面14bのうち各孔12の周囲の対向する一対の位置から、内部空間11の側に突出した一対の弾性支持片191,192である。一対の弾性支持片191,192は、一方の弾性支持片191の面191aと、他方の弾性支持片192の面192aとが対向するように配置されている。一方の弾性支持片191の面191aと、他方の弾性支持片192の面192aは、筐体孔形成部14の内面14bからの方向Xに沿った距離が大きくなるほど近接するように形成されている。一対の弾性支持片191,192は、各孔12内に挿通された容器40を側方から挟み、各孔12の貫通方向に沿った軸心に向けて付勢して姿勢を保持する。一対の弾性支持片191,192は、弾性変形可能であって、容器40が穿孔切開部13に向け押し込まれるに伴い容器40の形状に追従して押し開かれるため、図示するように内側端42から外側端41にかけて幅が太くなる形状の容器40を用いた場合でも容器40の姿勢を安定させることができる。また、弾性支持片191,192が弾性変形可能な範囲内であれば、異なる幅の容器40の支持し安定させることができる。本実施形態では、一対の弾性支持片191,192を備える弾性部材190により、各孔12に挿通された容器40の姿勢を保持することにより、穿孔切開部13に対する容器40の位置を安定させることができ、容器40からの液体Lの漏出量を安定させることができる。
【0083】
次に、本実施形態の検査用デバイス1において、筐体10の孔12,12に、液体L,Lを収容した容器40,40を挿通し支持させた状態で、蓋体20を蓋体装着部15を介して筐体10に装着し、蓋体20により筐体10の筐体孔形成部14を覆い、蓋体20を第1位置から第2位置まで移動させるときの動きについて
図4A〜
図5Cを参照して説明する。
【0084】
蓋体20を第1位置にするには、
図4A及び
図5Aに示す通り、筐体10の孔12,12に容器40,40を挿通し支持させ、筐体10の筐体孔形成部14を囲う蓋体装着部15に蓋体20を装着する。このとき、筐体10の蓋体装着部15の外周面15a上の筐体側螺合部51と、蓋体20の蓋周壁部22の内周面22a上の蓋体側螺合部52とを部分的に螺合させる。これにより、筐体10の筐体孔形成部14と、容器40,40の外側部分40a,40aとが蓋体20により覆われる。第1位置においては、容器40,40は、穿孔切開部13により穿孔又は切開されない位置にある。具体的には、蓋体20が第1位置にあるとき、容器40,40は、対向配置された、蓋体20の蓋主部21と、穿孔切開部13との間に位置するが、容器40,40の内側端42,42は穿孔切開部13の先端部131と接触していないか、又は、接触していたとしてもまだ穿孔又は切開されていない。すなわち、容器40,40から液体L,Lを漏出させるよりも前に、容器40,40の外側部分40a,40a及び筐体孔形成部14が蓋体20により覆われる。筐体10の筐体孔形成部14と蓋体20との間には空間Sが形成される。空間Sは、孔12、12を通じて筐体10の内部空間11と連続しており、これらは全体として、検査用デバイス1内に閉鎖された閉鎖空間であるが、気密である必要はない。空間Sの高さは前記の距離Dであり、距離Dは前記第1の距離である。容器40,40から液体L,Lを漏出させるよりも前に、容器40,40の全体を閉鎖空間内に閉じ込めることで、液体L,Lの検査環境からの飛散を効果的に抑制することができる。
【0085】
本発明において、前記筐体の前記1以上の孔に前記容器を挿通し支持させた状態で、前記蓋体により前記筐体の前記筐体孔形成部を覆い、前記蓋体を、前記筐体に対して前記第1位置に位置させた状態では、前記蓋体の、前記筐体孔形成部に対向する部分と、前記容器の、前記1以上の孔から前記蓋体の側に突出した外側部分とは、当接していてもよいし、当接していなくてもよい。当接していない場合は、前記蓋体が前記筐体に対して前記第1位置から前記第2位置に移動する過程の途中で、前記蓋体の、前記筐体孔形成部に対向する部分と、前記容器の、前記1以上の孔から前記蓋体の側に突出した外側部分との当接が開始されればよい。具体的には、
図4A及び
図5Aに示す態様では、蓋体20が第1位置にあるとき、蓋体20の、筐体孔形成部14に対向する部分である蓋主部21と、容器40,40の外側端41とは当接しているが、この態様には限定されず、蓋体20のある蓋主部21と、容器40,40の外側端41とが離間しており、蓋体20が第1位置から第2位置に移動する過程の途中で、蓋主部21と、容器40,40の外側端41との当接が開始されてもよい。
【0086】
図4A及び
図5Aに示す態様では、蓋体20が第1位置にあるとき、容器40,40の内側端42と、穿孔切開部13の先端部131との間に、クロマトグラフィー担体30の液体受容部31が位置する。ただし、液体受容部31はこの位置にあることは必須ではなく、液体Lが内部空間11内に漏出した時点で、漏出した液体Lと接触することができるように配置されていればよい。
【0087】
続いて、筐体10に対して蓋体20を第1位置から第2位置へと移動させる。
図5Bにはこの過程の途中の状態を模式的に示す。この過程では、蓋体20の蓋主部21が、容器40,40の外側端41と当接することで、容器40,40が、穿孔切開部13に向けて押し込まれ、穿孔切開部13により容器40,40が穿孔又は切開(図示する例では切開)されて液体Lが内部空間11内に漏出される。この移動の過程では、蓋体20が、筐体10の筐体孔形成部14を覆いながら筐移動するため、内部空間11において、容器40,40から漏出した液体L,Lが、検査用デバイス1の外部に飛散することが抑制される。
【0088】
更に、この過程では、蓋体20の蓋主部21が容器40,40の外側端41と当接しているため、図示するように、容器40として、外側端41に開閉部41aを備える形状のマイクロチューブを用いた場合に、マイクロチューブの開閉部41aが開くことがない。これによって、容器40,40が、穿孔切開部13に押し付けられることで容器内圧が上昇してマイクロチューブの開閉部41aが開くことを抑制することができる。
【0089】
本実施形態では、案内部50が、筐体側螺合部51と蓋体側螺合部52とにより構成されており、筐体10に第1位置で装着された蓋体20を、前記の方向Xを軸として回動させることにより、蓋体20の蓋主部21が方向Xに沿って、筐体10の筐体孔形成部14に向け移動する。このため、蓋体20の蓋主部21と容器40,40の外側端41との間の摩擦により、方向Xに略直交する方向に捻力が加わりながら、容器40,40は、方向Xに沿って穿孔切開部13に押し込まれる。
図5Bでは、蓋体20の回動によって容器40が方向Xからやや傾斜しながら穿孔切開部13に押し込まれる状態を模式的に示す。この作用により、容器40,40の、穿孔又は切開により形成された漏出口43が開かれるため、液体L,Lは効果的に漏出され、クロマトグラフィーの条件を安定させることができる。
【0090】
また、上記の通り、容器40,40は、一対の弾性保持片191,192により孔12,12内での姿勢が保持されながら穿孔切開部13に押し込まれるため、穿孔切開部13に対する位置が安定し、液体L,Lの漏出量が安定することによっても、クロマトグラフィーの条件を安定させることができる。
【0091】
容器40,40の液体L,Lは、漏出口43から、穿孔切開部13の固定部17の側及び固定部17の近傍に漏出される。別の実施形態では、液体Lを貯留するための貯留用空間を内部空間11内に別途設けてもよい。
【0092】
本実施形態では、クロマトグラフィー担体30の液体受容部31は、容器40,40の内側端42により穿孔切開部13に押し込まれ、穿孔切開部13の先端部131により容器40,40と共に穿孔又は切開されて、固定部17に近づくように移動する。本発明はこの実施形態には限定されず、クロマトグラフィー担体30の液体受容部31は、内部空間11に漏出した液体Lと接触することが可能な位置にあればよい。
【0093】
図4B及び
図5Cは、筐体10に対して蓋体20を更に移動させて第2位置とした状態を模式的に示す。第2位置では、液体Lの漏出量が大きく、漏出した液体Lに、クロマトグラフィー担体30の液体受容部31が十分に浸され、クロマトグラフィー担体30上での展開が進む。本実施形態では、クロマトグラフィー担体30の液体受容部31を幅方向に挟む位置に第3位置決め用突起17bが配置されていることにより、液体受容部31の動きは、第1位置から第2位置までの蓋体20の進行方向である方向Xに制限される。このため、液体受容部31を確実に液体Lに浸すことができる。
図5Bに示すように、本実施形態では、クロマトグラフィー担体30の液体受容部31が、蓋体20が第1位置から第2位置に至る途中の段階から液体Lに浸されるが、これには限らず、筐体20が第2位置に位置した時に初めて液体Lに浸されるように構成されていてもよい。
【0094】
蓋体20が筐体10に対して第2位置にあるとき、筐体孔形成部14の外面14aと、これに対向する、蓋体20の蓋主部21の内面21aとの間の距離Dは、第1の距離よりも小さい第2の距離である。
図4B及び
図5Cに示す例では、第2の距離はゼロよりも大きく、筐体孔形成部14の外面14aと、蓋体20の蓋主部21の内面21aとの間に空間Sが残存しているが、この形態にはされず、第2の距離がゼロであって空間Sが存在しなくてもよい。
【0095】
第2位置においても、蓋体20は筐体10の筐体孔形成部14を覆うため、内部空間11に漏出した液体Lが、検査用デバイス1の外部に飛散することが抑制される。
【0096】
本実施形態の検査用デバイス1では、上記の通り、蓋体装着部15が筐体孔形成部14を囲うように形成される。
図2に示すように、容器40,40を、孔12,12にそれぞれ挿通し支持させた状態を、筐体10の外側から、孔12,12の貫通方向に沿って見たときに、容器40,40の外側部分40aの輪郭400が、蓋体装着部15の内周150に内包されるように、筐体10が構成されている。この構成により、筐体10の孔12,12に容器40,40を挿通した状態で蓋体20を装着することが容易であるとともに、蓋体20の第1位置から第2位置への移動が、容器40,40の外側部分40aにより妨げられる可能性が低減できる。
【0097】
本実施形態では更に、容器40,40を、孔12,12にそれぞれ挿通し支持させた状態において、容器40,40の外側部分40aの輪郭400が、容器40,40の孔12,12内での向きに関わらず、蓋体装着部15の内周150に内包されるように、筐体10が構成されている。この構成によれば、筐体10の孔12,12に容器40,40を挿通させる際に、容器40,40を孔12,12内でどの向きに配置しても、蓋体20を、容器40,40の外側部分40aと干渉することなく蓋体装着部15に装着することができる。このため、使用者は前記容器の向きを意識することなく本実施形態の検査用デバイスを使用することができる。特に、図示するような外側端41に開閉部41aを備える容器40は、開閉部41aの周縁に、外側端41の平面視での輪郭400において外方に突出することとなるヒンジ部401と摘み部402とを備えることが一般的であるが、本実施形態によれば、外側端41に開閉部41aを備える容器40であっても、向きを意識することなく孔12に挿通させた状態で蓋体20を蓋体装着部15に装着することができる。本実施形態と同様の効果を奏するためには、容器40,40を、孔12,12にそれぞれ挿通し支持させた状態において、容器40,40の孔12,12内での向きに関わらず、容器40,40の外側部分40aの輪郭400が、蓋体装着部15の内周150に内包されるように、筐体10が構成されていることは必ずしも必要ではない。例えば、容器40,40を、孔12,12にそれぞれ挿通し支持させた状態において、容器40,40の外側部分40aの輪郭400の一部が、容器40,40の孔12,12内での向きによっては蓋体装着部15の内周150からはみ出す場合であっても、蓋体20を、蓋体装着部15を介して筐体10に装着した時に、蓋体20と容器40,40の外側部分40aとの抵触によって、その輪郭400の全体が蓋体装着部15の内周150に内包される向きに、容器40が案内されるように筐体10が構成されていれば、本実施形態と同様の効果が奏される。
【0098】
なお、
図2に示す、筐体孔形成部14の外面14aに描画された「S」は、液体Lとして試料液(サンプル)を収容した容器40を挿通する孔12であることの標識であり、「B」は、液体Lとして展開液(バッファー)を収容した容器40を挿通する孔12であることの標識である。
【0099】
本実施形態の検査用デバイス1はまた、筐体10の側面にあたる、側壁部102の外面102aの少なくとも一部に波状面102d,102dが形成されている。波状面102d,102dは、筐体10の底壁部101と上壁部103とが対向する方向に沿って延在する複数の溝102eが連続して形成された面である。側壁部102の外面102aに波状面102d,102dが形成されていることにより、使用者が検査用デバイス1を手先で取り扱う際に滑りを防止することができる。また、本実施形態の検査用デバイス1を複数用意し、筐体10の側壁部102の外面102aが接するように並べる際に、波状面102d同士を係合させることができる。波状面は凹凸面の一例であり、本実施形態の検査用デバイス1において、波状面102d,102dに代えて他の形状の凹凸面を形成してもよい。凹凸面は、一方向に延在する複数の溝が連続して形成された面であり、隣接する溝の間には平坦面が形成されていてもよい。凹凸面における前記複数の溝の各々の、延在方向に垂直な平面による断面の形状は特に限定されない。該断面の形状が曲線である場合が図示する波状面であるが、該断面の形状が矩形、U字形などの形状であってもよい。
【0100】
図1A〜5Cに示す実施形態では、固定部17の上面17aは平坦であり、刃13は、側面132、133が固定部17の上面17aに対して垂直となるように配置されている。刃13により形成される、容器40での漏出口43をより大きくし、液体Lの漏出をより促進するために刃13周辺の構造を適宜調節することができる。具体的には、以下の変形例が例示できる。
【0101】
図6A、
図6B及び
図6Dは、各変形例の、固定部17及び刃13の近傍の、刃13の先端部131の延在する方向に垂直な平面による断面の模式図を示す。
【0102】
図6Aに示す変形例では、固定部17の上面17aが、刃13の近傍において、側面132、133に近づくほど、先端部131に近づくように傾斜した傾斜部17a1を備える。この変形例の構成によれば、容器40が刃13に先端部131の側から、刃13の基端部134に向け押し込まれた時に、漏出口43が、刃13だけでなく、固定部17の上面17aの傾斜部17aによっても切り開かれるため、より大きな漏出口43を形成することができる。
【0103】
図6Bに示す変形例では、固定部17の上面17aが、刃13の近傍において、側面132、133に近づくほど、先端部131に近づくように傾斜した傾斜部17a2を備える。この傾斜部17a2は、
図6Cに示すように、固定部17から刃13の先端部131への方向に沿って延在する複数の凹溝171が間隔を空けて平行に形成された凹凸構造を有している。この変形例の構成によれば、容器40が刃13に先端部131の側から、刃13の基端部134に向け押し込まれた時に、漏出口43が、刃13だけでなく、固定部17の上面17aの傾斜部17a2によっても切り開かれ、且つ、液体Lは複数の凹溝171を通って効率よく内部空間11内に漏出されるため好ましい。
【0104】
図6Dに示す変形例では、固定部17の上面17aが、刃13の近傍において、側面132、133に近づくほど、先端部131に近づくように傾斜した傾斜部17a3を備える。傾斜部17a3は側面132、133に近づくほど連続的に傾斜がなだらかになる曲面である。この変形例の構成によれば、容器40が刃13に先端部131の側から、刃13の基端部134に向け押し込まれた時に、漏出口43が、刃13だけでなく、固定部17の上面17aの傾斜部17a3によっても切り開かれるため、より大きな漏出口43を形成することができる。
<第1実施形態の検査用デバイス1の他の特徴1>
上記の第1実施形態の検査用デバイス1はまた、
クロマトグラフィー担体30を用いたクロマトグラフィーを行うための内部空間11を内包し、クロマトグラフィー担体30を収容するための筐体10を備え、
筐体10は、
クロマトグラフィーに用いられる液体Lを収容した容器40,40を2つ以上支持するための支持部と、
1つで、支持部に支持された2以上の容器40,40を穿孔又は切開し液体Lを容器40,40から内部空間11内に漏出させるための、穿孔切開部13と
を備えることを特徴とする。この特徴を「他の特徴1」とする。
【0105】
前記支持部は、クロマトグラフィー用の液体を収容した2以上の容器を支持する構造が形成された筐体の部分であればよい。前記支持部の具体例としては、2以上の容器40,40を挿通し支持する孔12,12が形成された筐体孔形成部14が例示できる。
【0106】
他の特徴1を備える検査用デバイス1は、1つの穿孔切開部13により、2以上の容器40,40を穿孔又は切開し液体Lを容器40,40から内部空間11内に漏出させることができるため、2以上の容器40,40の各々に対応した2以上の穿孔切開部を備える場合と比較して、構造が簡易であり、低コストで製造することが可能である。この場合、検査用デバイス1は、蓋体20を備えることは必須ではない。例えば,検査用デバイス1が、蓋体20を備えておらず、筐体10を備え、筐体孔形成部14の孔12,12に支持された容器40,40の外側部分40a,40aを使用者が指で押し込むように使用されるものであってもよい。
【0107】
他の特徴1を備える検査用デバイス1は、好ましくは、穿孔切開部が刃13であり、支持部が、1つの刃13の先端部131上の異なる位置に2以上の容器40,40がそれぞれ対向して配置されるように2以上の容器40,40を挿通し支持する2以上の孔12,12が形成された筐体孔形成部14である。2以上の孔12,12は、それぞれに挿通し支持された容器40,40をそれぞれ刃13に向けて押し込むと、刃13の先端部131に対向する位置から、刃13により切開される位置まで容器40,40を案内されるように構成されている。
【0108】
他の特徴1を備える検査用デバイス1は、より好ましくは、第1実施形態に係る検査用デバイス1について本明細書中で説明する一部又は全ての特徴を備える。
<第1実施形態の検査用デバイス1の他の特徴2>
上記の第1実施形態の検査用デバイス1はまた、
クロマトグラフィー担体30、及び
クロマトグラフィー担体30を用いたクロマトグラフィーを行うための内部空間11を内包し、クロマトグラフィー担体30を収容するための筐体10を備え、
前記筐体10は、
底壁部101と、
底壁部101に対向配置された上壁部103と、
底壁部101の周縁と上壁部103の周縁とを接続する側壁部102と、
クロマトグラフィー担体30を、底壁部101と上壁部103との対向方向において、底壁部101と上壁部103との間であって上壁部103寄りの位置に、上壁部103と対向するように設置するための担体設置部16と
を備え、
クロマトグラフィー担体30は、筐体10の担体設置部16に設置されており、
上壁部103のうちクロマトグラフィー担体30と対向する部分103が、可視光透過性を有する、
ことを特徴とする。この特徴を「他の特徴2」とする。
【0109】
他の特徴2を備える検査用デバイス1では、クロマトグラフィー担体30(以下「担体30」と称する場合がある)が筐体10の上壁部103に近い位置に対向配置されており、且つ、上壁部103の部分103が可視光透過性を有するため、クロマトグラフィー展開時に担体30の視認性が良好である。
【0110】
筐体10の上壁部103の部分103cは、太陽光等の、可視光を含む光の照射下において、筐体10内の担体30を、筐体10の外側から、上壁部103の部分103を介して目視で視認できる程度の可視光透過性を有するものであれば良い。
【0111】
担体設置部16の具体的な形状としては、
図1A,
図4A等に示すように、底壁部101から、内部空間11内に、上壁部103に向けて隆起し、担体30の少なくとも一部を設置可能な上面16aが形成された突起が例示できる。
【0112】
担体設置部16には、担体30の全体が設置される必要はなく、少なくとも一部に設置されればよい。少なくとも担体30のうち検出部32を含む部分が、検出部32が上壁部103を介して視認可能なように、担体設置部16に設置されることが好ましい。
【0113】
他の特徴2を備える検査用デバイス1は、筐体10が側壁部102を有するため、筐体10の底壁部101が下方となるように水平面上に検査用デバイス1を載置したときに、筐体10の側壁部102を指先で触れながら使用することが容易であり、ハンドリング性が良好である。側壁部102の高さは適宜設定できるが、好ましくは4mm以上であり、より好ましくは6mm以上20mm以下である。また、筐体10の担体設置部16上に担体30を設置することにより、筐体10が側壁部102の高さに応じた厚さを有するにも関わらず、担体30は上壁部103に近い位置に配置されるため、上壁部103を介した視認が容易である。また、他の特徴2を備える検査用デバイス1を、筐体10の底壁部101が下方となるように水平面上に設置したときに、担体30のうち、担体設置部16に設置された部分は、底壁部101よりも高い位置に位置するため、穿孔切開部13により容器40,40から漏出した液体Lと直接接する可能性が低く、精度の高い展開を行うことが容易である。
【0114】
他の特徴2を備える検査用デバイス1は、蓋体20を備えることは必須ではない。
【0115】
他の特徴2を備える検査用デバイス1は、より好ましくは、第1実施形態に係る検査用デバイス1について本明細書中で説明する一部又は全ての特徴を備える。
【0116】
他の特徴2を備える検査用デバイス1において、好ましくは、担体30の担体設置部16に設置された部分と上壁部103との間の距離D2(
図4A、
図4B、
図14参照)、が10mm以下である。ここで、担体30の担体設置部16に設置された部分と、上壁部103との間の距離D2とは、担体30の担体設置部16に設置された部分と上壁部103との間の距離のうち最短距離を指す。好ましくは、担体30の担体設置部16に設置された部分の全体と、上壁部103との間の距離D2が10mm以下である。距離D2が10mm以下である場合、担体30の担体設置部16に設置された部分は、上壁部103と十分に近く、可視光下において、筐体10の外側から上壁部103を介して観察する際に視認が容易である。
【0117】
他の特徴2を備える検査用デバイス1では、好ましくは、担体30の、上壁部103と対向する表面30aが、
図11、12に示すように、可視光透過性の保護フィルム36により被覆されている。
図11は、
図9に示すクロマトグラフィー担体30の上壁部103と対向する表面30aが保護フィルム36により被覆された例を示す。
図12は、
図10に示すクロマトグラフィー担体30の上壁部103と対向する表面30aが保護フィルム36により被覆された例を示す。表面30aが可視光透過性の保護フィルム36により被覆された担体30を用いることにより、担体30の表面30aが上壁部103と接触した場合でもクロマトグラフィーの展開が影響を受けにくいため好ましい。この態様は、上記の距離D2が10mm以下と近い場合に特に有効である。可視光透過性の保護フィルム36は、液体Lが実質的に透過しない可視光透過性のフィルムであることができる。保護フィルム36は、太陽光等の、可視光を含む光の照射下において、担体30の保護フィルム36の下層の表面を、目視で視認できる程度の可視光透過性を有するものであれば良い。
【0118】
他の特徴2を備える検査用デバイス1では、好ましくは、筐体10の上壁部103のうち担体30と対向する部分103cが、厚さ20μm〜10mmであり且つ全光線透過率が70%以上である部分を含む。全光線透過率は試験片の平行入射光束に対する全透過光束の割合であり、JIS7375:2008にて規格化されている。この場合、筐体10の外部から、上壁部103の部分103cを通じて担体30を視認する際に、特に鮮明に担体30を視認することができる。
【0119】
他の特徴2を備える検査用デバイス1では、好ましくは、筐体10の平面視において、筐体10の全面積に対し5面積%以上が、上壁部103の、前記担体と対向する可視光透過性の部分103cである。
図13に、筐体10の平面図を示す。
図13に示す平面図のように筐体10を平面視したときに、筐体10の全体の面積に対して、上壁部103の、前記担体と対向する可視光透過性の部分103cを5面積%以上とすることにより、筐体10の外部から、上壁部103の部分103cを通じて担体30を視認する際の視認性が特に高くなるため好ましい。
【0120】
他の特徴2を備える検査用デバイス1では、好ましくは、筐体10の上壁部103の、外側の面(上面)103a及び内側の面(下面)103bの少なくとも一方に、反射防止部材140が配置されている。ここで、上壁部の「外側の面」とは、筐体の外側となる上壁部の面を指し、上壁部の「内側の面」とは、筐体の内側となる上壁部の面を指す。筐体10の上壁部103の外側の面(上面)103a上に反射防止部材140が配置されている、この例の検査用デバイス1の、筐体10の関連部分の部分構造を
図14に示す。筐体10の上壁部103に反射防止部材140が設けられていることにより、筐体10の外部から、上壁部103を通じて担体30を視認する際に、特に鮮明に担体30を視認することができる。反射防止部材140の全光線反射率は、好ましくは2%以下であり、より好ましくは1%以下である。全光線反射率は試験片の平行入射光束に対する全反射光束の割合であり、JIS7375:2008にて規格化されている。
【0121】
他の特徴2を備える検査用デバイス1は、好ましくは、筐体10の上壁部103のうち担体30と対向する部分103cの、筐体10の外側の位置103c1に、筐体10の外側に向けて突出し担体30に沿って伸びる可視光透過性の突条部103dを備える。この態様の検査用デバイス1の筐体10の第1の例を形成するための筐体上部材10Aを
図15A、15Bに、この態様の検査用デバイス1の筐体10の第2の例を形成するための筐体上部材10Aを
図16A、16Bに示す。
図15A、15Bに示す筐体上部材10Aは、
図1Aに示す筐体下部材10Bと組み合わされて筐体10の第1の例を構成する。
図16A、16Bに示す筐体上部材10Aは、
図1Aに示す筐体下部材10Bと組み合わされて筐体10の第2の例を構成する。筐体10の第1の例では、
図15A,15Bに示すように、突条部103dの外表面103d1が、担体30に沿った突条部103dの延在方向を軸とした円筒状面の一部である。筐体10の第2の例では、
図16A,16Bに示すように、突条部103dの外表面103d1が、担体30に沿った突条部103dの延在方向を軸とした多角筒状面の一部である。突条部103dが形成された上壁部103を備える筐体10を含み、且つ、前記他の特徴2を備える検査用デバイス1によれば、可視光下において、担体30を、筐体10の上壁部103の突条部103d及び部分103cを介して観察したときに、担体30の像が、突条部103dにより拡大されるため、担体30の視認性が更に良好である。
【0122】
筐体10の上壁部103の突条部103dは、太陽光等の、可視光を含む光の照射下において、筐体10内の担体30を、筐体10の外側から、上壁部103の突条部103d及び部分103cを介して目視で視認できる程度の可視光透過性を有するものであれば良い。
<第1実施形態の検査用デバイス1の他の特徴3>
上記の第1実施形態の検査用デバイス1はまた、
クロマトグラフィー担体30(担体30)、及び
担体30を用いたクロマトグラフィーを行うための内部空間11を内包し、担体30を収容するための筐体10を備え、
筐体10は、
クロマトグラフィーに用いられる液体Lを収容した容器40,40を支持するための支持部と、
前記支持部に支持された容器40,40を穿孔又は切開し液体Lを容器40,40から内部空間11内に漏出させるための、穿孔切開部13と
を備え、
担体30は、担体30の一部分が、前記支持部と穿孔切開部13との間に位置するように筐体10に収容されており、
前記支持部には、容器40,40を支持した状態で、容器40,40が担体30の前記一部分を間に介して穿孔切開部13と対向する位置Aから、容器40,40が担体30の前記一部分と共に穿孔切開部13により穿孔又は切開される位置Bまで、容器40,40を案内する容器案内部が形成されていることを特徴とする。この特徴を「他の特徴3」とする。
【0123】
前記支持部は、クロマトグラフィー用の液体を収容した容器を支持する構造が形成された筐体の部分であればよい。前記支持部の具体例としては、容器40,40を挿通し支持する孔12,12が形成された筐体孔形成部14が例示できる。
【0124】
前記容器案内部としては、筐体孔形成部14に形成された、孔12,12が例示できる。孔12、12は、各々に挿通し支持された容器40,40を、位置Aから位置Bまで案内する案内孔として機能する。
【0125】
前記支持部と穿孔切開部13との間に位置する担体30の一部分は、図示する例では担体30の液体受容部31であるが、これには限定されず、担体30の、検出部32以外の一部分(例えば担体30の展開の上流側端部)であってもよい。
【0126】
図4A及び
図5Aは、容器40,40が位置Aにある検出用デバイス1断面の模式図である。
図4A及び
図5Aに示すように、位置Aにある容器40,40は、それぞれ、筐体孔形成部(支持部)14に形成された孔(容器案内部)12,12に挿通されて支持され、内側端42,42の側で、穿孔切開部13の先端部131と対向しており、容器40,40の内側端42,42と、穿孔切開部13の先端部131との間には、担体30の一部分である液体受容部31が位置している。
【0127】
図4B及び
図5Cは、容器40,40が位置Bにある検出用デバイス1断面の模式図である。
図4B及び
図5Cに示すように、位置Bにある容器40,40は、それぞれ、担体30の一部分である液体受容部31と共に穿孔切開部13により穿孔又は切開されている。
【0128】
位置Aにある容器40,40は、その外側部分40a,40aが、筐体10の外側に位置している。容器40,40の外側部分40a,40aは筐体10に向けて押し込まれると、容器40,40は孔(容器案内部)12,12に案内されて、位置Bに至る。位置Aから位置Bに至る過程で、容器40,40の内側端42,42と、担体30の液体受容部31とが、穿孔切開部13の先端部131に押し当てられて穿孔又は切開される。このとき、容器40,40から漏出した液体L,Lは、直ちに且つ確実に担体30の液体受容部31に接触し浸透することができる。他の特徴3を備える検出用デバイス1は、容器40,40から漏出した液体L,Lを担体30に効率的に接触させることが可能であるため好ましい。
【0129】
他の特徴3を備える検査用デバイス1は、
図1A〜
図5Cに図示する蓋体20を備えることは必須ではない。例えば,検査用デバイス1が、蓋体20を備えておらず、筐体10を備え、筐体孔形成部14の孔12,12に支持された容器40,40の外側部分40a,40aを使用者が指で押し込むように使用されるものであってもよい。
【0130】
他の特徴3を備える検査用デバイス1は、より好ましくは、第1実施形態に係る検査用デバイス1について本明細書中で説明する一部又は全ての特徴を備える。
<第2、第3実施形態>
本発明の第2実施形態(
図7)、第3実施形態(
図8)について以下に説明する。第1実施形態と共通する構成、機能については同じ番号を付し、記載を省略する。
【0131】
上記の第1実施形態に係る検査用デバイス1では、筐体10の筐体孔形成部14と蓋体20とが対向する方向であって容器40,40が穿孔切開部13に向け押し込まれる方向である方向Xと、筐体10の内部空間11に配置されるクロマトグラフィー担体30の検出部32を含む部分が延在し液体Lが展開される方向Yとが直交するように、クロマトグラフィー担体30が内部空間11に配置される。クロマトグラフィー担体30が内部空間11に配置された第1実施形態に係る検査用デバイス1は、水平面上で載置して、容器40,40が鉛直方向の上方から下方に向けて押し込まれ、クロマトグラフィー担体30の検出部32において液体Lが水平方向に展開されるように使用する。
【0132】
しかしながら、クロマトグラフィー担体30は、筐体10の内部空間11においてどのような向きに配置されてもよい。
【0133】
例えば、
図7に断面模式図を示す第2実施形態に係る検査用デバイス1では、筐体10の筐体孔形成部14と蓋体20とが対向する方向であって容器40,40が穿孔切開部13に向け押し込まれる方向である方向Xと、筐体10の内部空間11に配置されるクロマトグラフィー担体30の検出部32を含む部分が延在し液体Lが展開される方向Yとが、略同一となるように、クロマトグラフィー担体30が内部空間11に配置される。
図7に示す第2実施形態に係る検査用デバイス1は、水平面上で載置して、容器40,40が鉛直方向の上方から下方に向けて押し込まれ、クロマトグラフィー担体30の検出部32において液体Lが鉛直方向の下方から上方に向けて展開されるように使用する。第2実施形態では、クロマトグラフィー担体30は、液体受容部31と検出部32との間で屈曲し、クロマトグラフィー担体30のうち液体受容部31を含む部分は筐体孔形成部14と穿孔切開部13との間に位置するように内部空間11に配置される。
【0134】
図8に断面模式図を示す第3実施形態に係る検査用デバイス1では、筐体10の筐体孔形成部14と蓋体20とが対向する方向であって容器40,40が穿孔切開部13に向け押し込まれる方向である方向Xと、筐体10の内部空間11に配置されるクロマトグラフィー担体30の検出部32を含む部分が延在し液体Lが展開される方向Yとが、略同一となるように、クロマトグラフィー担体30が内部空間11に配置される。
図8に示す第3実施形態に係る検査用デバイス1は、水平面上で載置して、容器40,40が水平方向に押し込まれ、クロマトグラフィー担体30の検出部32において液体Lが水平方向に展開されるように使用する。第3実施形態では、クロマトグラフィー担体30は、液体受容部31と検出部32との間で屈曲し、クロマトグラフィー担体30のうち液体受容部31を含む部分は、筐体孔形成部14と穿孔切開部13との間に位置するように内部空間11に配置される。
【0135】
図示しないが、他の実施形態としては、1つの筐体内に複数のクロマトグラフィー担体が配置され、容器から漏出された液体が各クロマトグラフィー担体と接触するように構成された検査用デバイスが挙げられる。